説明

タービン静翼の流体供給構造

【課題】タービン静翼の焼損を抑制することを課題とする。
【解決手段】ロータ1の周囲を囲うケーシング21とタービン静翼24の基端部31との間にキャビティ40が形成され、ロータ1側に向けて延びる静翼本体32の内部Sに、キャビティ40を介して外部から流体Aが供給されるタービン静翼24の流体供給構造であって、静翼本体32は、キャビティ40に開口する冷却流路入口52aから静翼本体32の表面に開口する冷却流路排出口まで連通する冷却流路35と、キャビティ40に開口するシール流路入口36aからロータ1の外周に区画されたシール空間Mまで連通するシール流路36とを有し、キャビティ40には、外部からキャビティ40に供給された流体Aをシール流路36のシール流路入口36aに案内する案内筒51が設けられ、キャビティ40に供給された流体Aの冷却流路入口52aまでの流入経路が折り曲げられて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン静翼の流体供給構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、各種産業や航空機に用いられているガスタービンにおいては、タービンを構成する各構成部材が高温の燃焼ガスに曝されることとなる。このため、タービンの構成部材の焼損を防ぐために、種々の技術が用いられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1のタービン静翼は、ケーシングに支持されると共にケーシングとの間にキャビティを形成する基端部と、この基端部からロータに向けて延びると共に、その内部に冷却流路が形成された静翼本体とを備えている。この冷却流路は、キャビティに開口する冷却流路入口から静翼本体の後縁表面に開口するフィルム冷却口まで連通しており、上述したキャビティを介して、圧縮機から抽気した高圧空気が導入されるようになっている。そして、冷却流路入口からフィルム冷却口まで流れる高圧空気で静翼本体を冷却させると共に、この高圧空気をフィルム冷却口から排出して後縁表面をフィルム冷却することで、静翼本体の焼損を防止している。
【0004】
また、下記特許文献1のタービン静翼は、キャビティからロータ近傍までシールチューブが延びており、このシールチューブを介してキャビティの高圧空気をロータ外周に区画されたシール空間に導いている。すなわち、シール空間に高圧空気を絶えず供給することで、シール空間に燃焼ガスが侵入することを防止して、ロータ外周に設けられた部材の焼損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−13487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の構成においては、圧縮機から抽気した高圧空気をタービン静翼に供給するために、圧縮機とタービンとの間を配管で接続し、場合によっては抽気した高圧空気を冷却するためのクーラ等を配設して冷却系を構成している。しかしながら、この冷却系の流路壁面に生じた錆びや塗装膜が配管内に脱落することがあり、この脱段したダストが翼内部の冷却流路に流入してしまうことがある。そして、このダストが冷却通路を閉塞することで高圧空気の流通を阻害し、タービン静翼の冷却不足を招いて焼損させてしまう恐れがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、タービン静翼の焼損を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るタービン静翼の流体供給構造は、ロータの周囲を囲うケーシングと前記ケーシングに支持されたタービン静翼の基端部との間にキャビティが形成され、前記タービン静翼の基端部から前記ロータ側に向けて延びる静翼本体の内部に、前記キャビティを介して外部から流体が供給されるタービン静翼の流体供給構造であって、前記静翼本体は、前記キャビティに開口する冷却流路入口から前記静翼本体の表面に開口する冷却流路排出口まで連通する冷却流路と、前記キャビティに開口するシール流路入口から前記ロータの外周に区画されたシール空間まで連通するシール流路とを有し、前記キャビティには、外部から前記キャビティに供給された前記流体を前記シール流路のシール流路入口に案内する案内筒が設けられ、前記キャビティに供給された前記流体の前記冷却流路入口までの流入経路が折り曲げられて形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、キャビティに案内筒が設けられ、冷却流路入口までの流入経路が折り曲げられて形成されているので、流体にダストが含まれていた場合に、ダストが流体に随伴してシール流路入口に案内される。そして、流体に対して相対的に質量が大きくなるダストは、流体と比較して大きい慣性力が作用するので、流れ方向を殆ど変化させずにシール流路入口に流入する。換言すれば、流入経路の折曲部において、ダストが流入経路外に流れていくので、冷却流路入口にダストが到達し難くなる。これにより、冷却流路がダストで閉塞され難くなるので、タービン静翼を長期間安定して継続的に冷却することができる。よって、タービン静翼の焼損を抑制することができる。
【0009】
また、前記流入経路は、複数回折り曲げられていることを特徴とする。
この構成によれば、流入経路が複数回折り曲げられているので、ダストが更に冷却流路入口に到達し難くなる、
【0010】
また、前記シール流路入口は、前記キャビティと前記静翼本体とを区画する区画壁に形成され、前記案内筒は、前記ケーシングに形成されていると共に前記流体を前記キャビティに供給する流体供給口から前記シール流路入口に向けて延びていることを特徴とする。
この構成によれば、流体供給口から供給される流体に混入するダストを、シール流路入口に案内することができる。
【0011】
また、前記冷却流路入口は、前記案内筒の先端開口に比べて前記ケーシング側に開口していることを特徴とする。
この構成によれば、冷却流路入口が案内筒の先端開口に比べてケーシング側に開口しているので、冷却流路入口までの流入経路を簡素な構成で複数回折り曲げることができる。
【0012】
また、前記シール流路入口の周囲から前記ケーシング側に向けて延び、延在方向の先端開口と前記案内筒の先端開口とを前記主半径方向に重ねて見た場合に、前記延在方向の先端開口が前記案内筒の先端開口を囲うサポート筒を備えることを特徴とする。
この構成によれば、主半径方向に重ねて見た場合に、延在方向の先端開口が案内筒の先端開口を囲うサポート筒を備えるので、案内筒の先端開口から流出したダストがシール流路入口に直接流入しなかったとしても、ダストが拡散することを邪魔して、再度ダストをシール流路入口に案内することができる。
【0013】
また、前記案内筒は、前記ケーシング側から前記静翼本体側に向かうに従って、前記案内筒の外周側から内周側に向かうスリットが形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、スリットが形成されているので、案内筒を流れる流体が案内筒の内部において開口するスリットの開口部で折れ曲がった後にスリットを通過してキャビティ内に流出することができるのに対して、流体に含まれるダストがスリットの流入部で折れ曲がれずにシール流路入口まで案内される。これにより、シール流路入口にダストを案内しつつ、案内筒の流体流出部を大きく確保することができる。
【0014】
また、前記案内筒の先端開口は、前記シール流路入口に対向していることを特徴とする。
この構成によれば、案内筒の先端開口が、シール流路入口に対向しているので、流体に含まれるダストをシール流路入口まで、より確実に導くことができる。
【0015】
また、前記案内筒の先端開口は、その開口面積が前記シール流路入口の開口面積の大きさ以下に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、案内筒の先端開口が、その開口面積がシール流路入口の開口面積の大きさ以下に形成されているので、案内筒の先端開口まで導いたダストをシール流路入口から外さずに容易に流入させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るタービン静翼の流体供給構造によれば、焼損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態に係るガスタービンGTの全体構成を示す概略構成断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るタービンT1の要部拡大断面図ある。
【図3】本発明の第一実施形態に係る静翼本体32の要部断面図であって、主半径方向に交差する断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るタービンT1の第一の作用説明図であって、外側キャビティ40近傍を拡大して示した断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係るタービンT1の第二の作用説明図であって、外側キャビティ40近傍を拡大して示した断面図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る第一変形例のタービンT1aの要部拡大断面図ある。
【図7】本発明の第一実施形態に係る第二変形例のタービンT1bの要部拡大断面図ある。
【図8】本発明の第二実施形態に係るタービンT2の要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係る静翼本体60の要部断面図であって、主半径方向に交差する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
<第一実施形態>
図1は本発明の第一実施形態に係るガスタービンGTの全体構成を示す概略構成断面図である。
図1に示すように、このガスタービンGTは、圧縮機Cと複数の燃焼器BとタービンT1とで概略構成されている。
【0019】
圧縮機Cは、空気を作動流体として取り込んで高圧空気(流体)Aを生成する。
複数の燃焼器Bは、圧縮機Cの出口に連通しており、圧縮機Cから供給された高圧空気Aに燃料を混合すると共に燃焼させて高温・高圧の燃焼ガスGを発生させる。
タービンT1は、燃焼器Bから送り出された燃焼ガスGの熱エネルギ・圧力エネルギをロータ1の回転エネルギに変換する。そして、この回転エネルギをロータ1に連結された発電機(不図示)に伝達する。なお、以下の説明においては、ロータ1の主軸Pの延在方向を「主軸方向」、ロータ1の半径方向を「主半径方向」、ロータ1の円周方向を単に「円周方向」と称する。
【0020】
図2はタービンT1の要部拡大断面図ある。
図2に示すように、タービンT1は、ロータ1とステータ2とで概略構成されている。
ロータ1は、それぞれの軸方向を主軸方向に向けた状態で重ねられて全体として軸状になった複数のロータディスク11と、各ロータディスク11の外周において放射状となるように複数個ずつ配設されたタービン動翼12とで概略構成されている。複数個のタービン動翼12は、ロータディスク11毎に、円周方向に配列されてなる環状動翼列を構成している。
なお、このロータ1は、主軸方向の一端側が圧縮機Cのロータと連続している(図1参照)。
【0021】
ステータ2は、ロータ1の周囲を囲むケーシング21と、複数のタービン静翼24とで概略構成されている。
ケーシング21は、タービンT1の内部を外部から区画するケーシング本体22と、ケーシング本体22の内周部22aに支持された翼環23とを有している。
【0022】
翼環23は、ケーシング本体22の内周部22aにおいて円周方向に延びており、その翼環内周部23aにタービン静翼24を支持していると共に、翼環外周部23bがケーシング本体22の内周部22aとの間に円周方向に延びる翼環フィードホール3を形成している。
この翼環フィードホール3には、圧縮機Cの中段とケーシング本体22とを接続する配管4と、この配管4の途中に配設されたクーラ5(図1参照)とを介して、圧縮機Cから抽気した高圧空気Aが供給されるようになっている。
【0023】
タービン静翼24は、各環状動翼列の上流において複数個ずつ放射状に配設されている。この複数個ずつ配設されたタービン静翼24は、それぞれ下流に隣接する環状動翼列と組(段)をなすように、環状静翼列を構成している。
【0024】
タービン静翼24は、主半径方向の外周側においてケーシング21の翼環23に支持された外側シュラウド(基端部)31と、この外側シュラウド31からロータ1に向けて延びている静翼本体32と、この静翼本体32に連続して形成された内側シュラウド33とを有している。
【0025】
各タービン静翼24の外側シュラウド31は、それぞれ、周方向に向けて延びており、翼環23との間に外側キャビティ40を形成している。各外側キャビティ40は、円周方向に連通することによって全体として環状に連続しており、翼環23に形成された流体供給口23cを介して翼環フィードホール3に連通している。すなわち、この外側キャビティ40には、翼環フィードホール3を介して、圧縮機Cから抽気した高圧空気Aが供給されるようになっている。
【0026】
図3は、静翼本体32の主半径方向に交差する断面図である。
図3に示すように、各タービン静翼24は、それぞれの静翼本体32の内部に、所謂サーペンタイン方式の冷却流路35と、シールチューブ(シール流路)36とを有している。
冷却流路35は、静翼本体32の内部に形成された内側空間Sが、外側シュラウド31から内側シュラウド33に向けて延びる前縁側リブ37と、内側シュラウド33から外側シュラウド31に向けて延びる後縁側リブ38とによって、三つに仕切られることで構成されている。具体的には、冷却流路35は、静翼本体32の内壁面と前縁側リブ37とによって画定された上流流路35Aと、静翼本体32の内壁面と前縁側リブ37と後縁側リブ38とによって画定された中流流路35Bと、静翼本体32の内壁面と後縁側リブ38とで形成された下流流路35Cとで構成されており、上流流路35Aの主半径方向の内周端と中流流路35Bの主半径方向の内周端とが断面視U字状に転回するようにして連通しており、中流流路35Bの主半径方向の外周端と下流流路35Cの主半径方向の外周端とが断面視U字状に転回するようにして連通している。
この冷却流路35は、図2に示すように、外側区画壁(区画壁)31aによって外側キャビティ(キャビティ)40と区画され、内側区画壁33dによって内側キャビティ45(後述する。)と区画されている。
【0027】
また、外側区画壁31aにおける静翼本体32の前縁側には、主半径方向に延在して上流流路35Aと外側キャビティ40とを連通させる入口孔35aが形成されている。また、図3に示すように、静翼本体32の後縁側の表面には、主半径方向に亘って複数個のフィルム冷却孔(冷却流路排出口)25aが形成されており(図3参照)、外部(ガスパス)と下流流路35Cとを連通させている。このフィルム冷却孔25aは、孔径が略1mm程度と微小に形成されており、シールチューブ36の管内径よりも小さく形成されている。
【0028】
このような構成により、図2及び図3において白抜きの矢印で図示するように、入口孔35aから冷却流路35に流入した高圧空気Aは、上流流路35Aを主半径方向の内周側に向けて流れた後にU字状(略180°)に転回して、中流流路35Bに流入して主半径方向の外周側に向けて流れ、再びU字状(略180°)に転回して下流流路35Cに流入して主半径方向の内周側に向けて流れ、この下流流路35Cを流れる過程において複数のフィルム冷却孔25aから排出される。
【0029】
各タービン静翼24の内側シュラウド33は、それぞれ、周方向に向けて延びており、図2に示すように、主軸方向における端部は、主軸方向において互いに隣接するタービン動翼12のプラットホーム12aの端部との間でシールされている。各内側シュラウド33は、主軸方向に間隔を空けて二つのフランジ33a,33bが延出しており、一方のフランジ33aがシールリング保持環41に嵌合されている共に、他方のフランジ33bがリテーナ部材42を介してシールリング保持環41に係止されている。なお、シールリング保持環41は、円周方向に連続して環状に形成されており、内周部にシール機構(ラビリンスシール)41bを保持している。
【0030】
各内側シュラウド33の内側区画壁33dとシールリング保持環41とリテーナ部材42とは、内側キャビティ45を区画しており、各内側キャビティ45が円周方向に連続することで全体として環状の空間を形成している。
【0031】
シールチューブ36は、外側シュラウド31と静翼本体32と内側シュラウド33とを主半径方向に貫通して、外側キャビティ40と内側キャビティ45とを連通させている。
シールチューブ36のシール流路入口36aは、外側キャビティ40において外側区画壁31aに開口し、シール流路出口36bが内側キャビティ45に開口しており、外側キャビティ40に流入した高圧空気Aが内側キャビティ45に供給されるようになっている。
【0032】
内側キャビティ45に供給された高圧空気Aは、シールリング保持環41に形成された流出孔41aを介して、内側キャビティ45の外側に区画されたシール空間Mに流出するようになっており、ロータ1の周囲の空間を所定の圧力に保つことで燃焼ガスGがシール空間Mに侵入することを防止している。
【0033】
このタービンT1においては、翼環23に形成された流体供給口23cに接続されると共に、主半径方向の内方側に向けて延びる案内筒51と、外側シュラウド31の入口孔35aに接合されたガード筒52とを備えている。
【0034】
案内筒51は、漏斗状に形成されており、翼環23に固定された基端開口51aから主半径方向に延在して、その先端開口51bをシールチューブ36のシール流路入口36aに近接対向させている。この案内筒51の内径は、基端開口51aが流体供給口23cと同径に設定される一方で、先端開口51bがシールチューブ36の管径と同径に設定されており、基端開口51aから先端開口51bに向かうに従って漸次縮径されるようになっている。
【0035】
ガード筒52は、図2に示すように、その筒軸方向の一端側を、外側シュラウド31を貫通する入口孔35aに挿し込まれた状態で外側シュラウド31に接合されている。すなわち、ガード筒52は、外周側の開口が冷却流路入口52aとされている。この冷却流路入口52aは、外側シュラウド31の外側区画壁31aよりも翼環23側に突出して開口しており、外側キャビティ40と冷却流路35とを連通させている。
【0036】
なお、図4に示すように、ガード筒52の冷却流路入口52aの端面は、案内筒51の先端開口51bの端面よりも、主半径方向のより外側に位置させることが望ましい。すなわち、冷却流路入口52aの端面の主半径方向の位置が、先端開口51bの端面の主半径方向の位置よりロータ1の主軸Pから離れている場合、ガード筒52に流入する圧縮空気A中のダストDをより多く除去できる。
【0037】
次に、上述した構成からなるタービン静翼24に流通する高圧空気Aの防塵作用について主に図4及び図5を用いて説明する。
まず、圧縮機Cの中段から抽気された高圧空気Aは、図1及び図2に示すように、配管4及びクーラ5を介して、翼環フィードホール3に流入する。この際、配管4及びクーラ5を介した高圧空気Aには、配管4表面の結露によって発生していた錆びや流路表面の塗装膜が脱落してダストDが混入する場合がある。
【0038】
この高圧空気AとダストDとは、流体供給口23cを通過し、案内筒51に流入した後に先端開口51bまで案内されて、この先端開口51bから外側キャビティ40に流出する。
【0039】
案内筒51の先端開口51bから流出した高圧空気Aは、図4に示すように、その一部が外側キャビティ40を介してシール流路入口36aに流入すると共に、図5に示すように、他の一部がシール流路入口36aの径方向外方側に拡径するようにして外側キャビティ40に流出する。
そして、シール流路入口36aの径方向外方側に拡径するようにして流出した高圧空気Aは、案内筒51の先端開口51bから折れ曲がって主半径方向を外方側に向かった後に、再度ガード筒52の冷却流路入口52aに対して折れ曲がってガード筒52の内部に流入し、冷却流路35を下流側に向けて流れていく。
【0040】
一方、高圧空気Aに随伴して案内筒51の先端開口51bから流出したダストDは、高圧空気Aに比べて質量が大きいことから、比較的に大きな慣性力が作用する。すなわち、図4に示すように、ダストDは、案内筒51によって案内された流れ方向が変わり難く、案内筒51の先端開口51bに対向するシール流路入口36aから殆ど外れずに、シール流路入口36aに流入していく。
また、図5に示すように、仮にガード筒52の冷却流路入口52aに向かう高圧空気AにダストDが混入していたとしても、冷却流路入口52aに向かう流れ方向が変わり難いことから、冷却流路入口52aの上流において冷却流路入口52aに対して折れ曲がらずに、冷却流路入口52aを通過する、そして、最終的に外側キャビティ40の内壁(例えば、外側シュラウド31の外側区画壁31a)に落下する。
このようにして、ダストDが高圧空気Aに混入していたとしても、冷却流路35に流入するダストDが殆どなくなる。そして、冷却流路35は、ダストDによってフィルム冷却孔25aが閉塞することなく、高圧空気Aを安定して流通させ、タービン静翼25を継続して冷却する。
【0041】
以上説明したように、本発明の第一実施形態によれば、外側キャビティ40に案内筒51が設けられているので、高圧空気AにダストDが含まれていた場合に、ダストDが高圧空気Aに随伴してシール流路入口36aに案内される。そして、高圧空気Aに対して相対的に質量が大きくなるダストDは、高圧空気Aと比較して大きい慣性力が作用するので、流れ方向を殆ど変化させずにシール流路入口36aに流入する。
換言すれば、案内筒51の先端開口51bの下流(流入経路の折曲部)において、ダストDが流入経路外に流れていくので、冷却流路入口52aにダストDが到達し難くなる。これにより、冷却流路35がダストDで閉塞され難くなるので、タービン静翼24を長期間安定して継続的に冷却することができる。よって、タービン静翼24の焼損を抑制することができる。
【0042】
また、流入経路が案内筒51の先端開口51bの下流と冷却流路入口52aの上流とで二回折り曲げられているので、冷却流路入口52aにダストDが更に到達し難くなる。
また、冷却流路入口52aが案内筒51の先端開口51bに比べてケーシング21側に開口しているので、冷却流路入口52aまでの流入経路を簡素な構成で複数回折り曲げることができる。さらに、先端開口51bを通過して外側区画壁31aに落下したダストDから先端開口51bが離間するので、外側区画壁31aに落下したダストDが冷却流路入口52aに流入するのを十全に防止することができる。
【0043】
また、案内筒51の先端開口51bが、シール流路入口36aに対向しているので、高圧空気Aに含まれるダストDをシール流路入口36aに確実に導くことができる。
【0044】
また、案内筒51の先端開口51bがシールチューブ36の管径と同径に設定されており、先端開口51bの開口面積がシール流路入口36aの開口面積の大きさと同じ大きさに形成されているので、案内筒51の先端開口51bまで導いたダストDをシール流路入口36aから外さずにシール流路入口36aに流入させることができる。
なお、案内筒51の先端開口51bの開口面積を、シール流路入口36aの開口面積よりも小さく形成すれば、案内筒51の先端開口51bまで導いたダストDがシール流路入口36aから更に外れ難くなり、ダストDをシール流路入口36aにより確実に流入させることができる。
【0045】
<第一実施形態の第一変形例>
図6は、上述した第一実施形態の第一変形例であるタービンT1aの要部拡大断面図である。なお、以下の説明及びこの説明に用いる図面において、上述した構成と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図6に示すように、このタービンT1aは、シール流路入口36aの周囲から翼環23側に向けて延び、延在方向の先端開口53bと案内筒51の先端開口51bとを主半径方向に重ねて見た場合に、案内筒51の先端開口51bの周囲を囲うサポート筒53を備えている。
サポート筒53は、漏斗状に形成されており、先細りになった基端開口53aをシール流路入口36aに接続させている一方、拡径された先端開口53b側で案内筒51の周囲を覆っている。
【0047】
この変形例によれば、案内筒51の先端開口51b側の周囲を囲うサポート筒53を備えるので、案内筒51の先端開口51bから流出したダストDがシール流路入口36aから外れたとしても、シール流路入口36aの径方向に拡散することを邪魔して、再度シール流路入口36aにダストDを導くことができる。
【0048】
<第一実施形態の第二変形例>
図7は、上述した第一実施形態の第二変形例であるタービンT1bの要部拡大断面図である。なお、以下の説明及びこの説明に用いる図面において、上述した構成と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
図7に示すように、このタービンT1bは、ガード筒52が省略されていると共に、案内筒51に代えてシール流路入口36aの周囲から翼環23側に向けて筒状に延びる慣性フィルタ(案内筒)54を備えている。
この慣性フィルタ54は、その軸方向を主半径方向に向けた状態で、相対的に大径に形成されたフィルタ基端開口54aが流体供給口23cの周囲に固定されていると共に、相対的に小径に形成されたフィルタ先端開口(先端開口)54bがシール流路入口36aに対向配置されている。
【0050】
この慣性フィルタ54は、基端開口から先端開口に向けて漸次縮径する傘部材54cが、それぞれの先端開口をシール流路入口36aに向けた状態で四つ重ねられて構成されている。そして、相互に隣接する二つの傘部材54cのうちシール流路入口36a側に位置する一方の傘部材54cの先端開口が、他方の傘部材54cの基端開口の内部に位置させることで、これら二つの傘部材54cの間にスリット54dが構成されている。すなわち、このスリット54dは、フィルタ基端開口54a側からフィルタ先端開口54b側に向かうに従って、慣性フィルタ54の外周側から内周側に向かうように形成されている。
なお、慣性フィルタ54は、主半径方向の内周端における傘部材54cの先端開口がフィルタ先端開口54bとなっており、主半径方向の外周端における傘部材54cの基端開口がフィルタ基端開口54aとなっている。
変形例においては、ガード筒52が省略されていることから、入口孔35aが冷却流路35の冷却流路入口として機能することとなる。
【0051】
この変形例によれば、案内筒51(慣性フィルタ54)にスリット54dが形成されているので、フィルタ基端開口54aにおいて折り曲げられた流入経路の他に、案内筒51の内部に開口するスリット54dの開口部において折り曲げられた流入経路が加わることとなる。これにより、案内筒51を流れる高圧空気Aが、案内筒51のスリット54dの開口部で折れ曲がった後にスリット54dを通過して外側キャビティ40内に流出することができるのに対して、高圧空気Aに含まれるダストDがスリット54dの開口部で折れ曲がれずにシール流路入口36aまで順次案内される。これにより、シール流路入口36aにダストDを案内しつつ、案内筒51の高圧空気Aの流出部を大きく確保することができる。
なお、本変形例においても、サポート筒53を用いてもよい。
【0052】
<第二実施形態>
図8は、本発明の第二実施形態に係るタービンT2の要部拡大断面図である。なお、以下の説明及びこの説明に用いる図面において、上述した構成と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
上述したタービンT1が所謂サーペンタイン方式の冷却構造を採用したタービン静翼24を備えていたのに対し、本実施形態に係るタービンT2は、図8に示すように、所謂インピンジメント冷却構造を採用したタービン静翼25を有している。
タービン静翼25は、図8に示すように、外側シュラウド31と静翼本体60と内側シュラウド33とを有している。
【0054】
図9は、静翼本体60の要部断面図であって、主半径方向に交差する断面図である。
各タービン静翼25は、図9に示すように、翼表面にインピンジ孔(冷却流路排出口)25aが多数形成されている。各タービン静翼25は、内側空間Sがリブ61によって前縁側空間62と後縁側空間63とに区画されている。
これら前縁側空間62と後縁側空間63とには、それぞれ、インサート部材72,73が挿入されている。
【0055】
インサート部材72,73は、それぞれ中空状に形成されており、それぞれの表面に多数のインピンジメント孔72a,73aが形成されている。
【0056】
インサート部材72は、外側シュラウド31に接合されたガード筒52に連通しており、外側キャビティ40に供給された高圧空気Aがガード筒52を介して供給されるようになっている。つまり、外側区画壁31aに開口する冷却流路入口52aから静翼本体60の表面に開口するフィルム冷却孔25aまで連通する冷却流路75が形成されている。具体的には、冷却流路75の高圧空気Aは、ガード筒52を介してインサート部材72に流入した後にインピンジメント孔72aから噴出し、前縁側空間62の内面に衝突して静翼本体60を冷却する。そして、フィルム冷却孔25aから静翼本体60の外部に流出した後に表面に沿って流れることにより、静翼本体60をフィルム冷却する。
【0057】
同様に、インサート部材73は、外側キャビティ40の高圧空気Aがガード筒55を介して供給されるようになっている。ガード筒55は、その筒軸方向の一端側が外側区画壁31aを貫通する入口孔35cに挿し込まれた状態で外側区画壁31aに接合されている。
すなわち、外側キャビティ40に開口する冷却流路入口55aから静翼本体60の表面に開口するフィルム冷却孔25aまで連通する冷却流路76が形成されている。具体的には、冷却流路76の高圧空気Aは、ガード筒55を介してインサート部材73に流入した後にインピンジメント孔73aから噴出し、後縁側空間63の内面に衝突して静翼本体60を冷却する。そして、フィルム冷却孔25aから静翼本体60の外部に流出した後に表面に沿って流れることにより、静翼本体60をフィルム冷却する。
【0058】
この構成によれば、外側キャビティ40に供給された高圧空気Aの冷却流路入口52a,55aまでの各流入経路が、案内筒51の先端開口51bと、冷却流路入口52a,55aとの二箇所でそれぞれ折り曲げられているので、上述した第一実施形態の主要な効果と同様の効果を得ることができる。
特に、インピンジメント孔72a,73aが閉塞すると、前縁側空間62と後縁側空間63との圧力が低下して、燃焼ガスGが前縁側空間62と後縁側空間63とに逆流する恐れがあるが、本実施形態によって有効に阻止することが可能である。
【0059】
本実施形態においても、上述した第一実施形態と同様に、サポート筒53を用いてもよいし、案内筒51に代えて慣性フィルタ54を用いてもよい。
また、静翼本体60の内側空間Sは、三つ以上に仕切ってもよく、必ずしも仕切る必要はない。
【0060】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、外側キャビティ40を円周方向に連通させる構成としたが、必ずしも連通させる必要はなく仕切ってもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態では、案内筒51を漏斗状に形成したが、真直筒状に形成してもよい。
また、上述した実施の形態では、案内筒51,慣性フィルタ54を翼環23から独立した部材として構成したが、翼環23と一体的に形成してもよい。同様に、シールチューブ36,サポート筒53をタービン静翼24,25と一体的に形成してもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、産業用(より詳しくは発電用)のガスタービンGTに本発明を適用したが、航空機のガスタービンに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…ロータ
21…ケーシング
23c…流体供給口
24,25…タービン静翼
25a…フィルム冷却孔(冷却流路排出口)
31…外側シュラウド(基端部)
31a…外側区画壁(区画壁)
32…静翼本体
35…冷却流路
35a…入口孔(冷却流路入口)
36…シールチューブ(シール流路)
36a…シール流路入口
40…外側キャビティ(キャビティ)
51…案内筒
51b…先端開口
52a…冷却流路入口
53…サポート筒
54…慣性フィルタ(案内筒)
54b…フィルタ先端開口(先端開口)
54d…スリット
55a…冷却流路入口
60…静翼本体
75,76…冷却流路
GT…ガスタービン
T1,T1a,T1b,T2…タービン
A…圧縮空気(流体)
D…ダスト
M…シール空間
P…主軸
S…内側空間(内側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの周囲を囲うケーシングと前記ケーシングに支持されたタービン静翼の基端部との間にキャビティが形成され、前記タービン静翼の基端部から前記ロータ側に向けて延びる静翼本体の内部に、前記キャビティを介して外部から流体が供給されるタービン静翼の流体供給構造であって、
前記静翼本体は、前記キャビティに開口する冷却流路入口から前記静翼本体の表面に開口する冷却流路排出口まで連通する冷却流路と、
前記キャビティに開口するシール流路入口から前記ロータの外周に区画されたシール空間まで連通するシール流路とを有し、
前記キャビティには、外部から前記キャビティに供給された前記流体を前記シール流路のシール流路入口に案内する案内筒が設けられ、前記キャビティに供給された前記流体の前記冷却流路入口までの流入経路が折り曲げられて形成されていることを特徴とするタービン静翼の流体供給構造。
【請求項2】
前記流入経路は、複数回折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載のタービン静翼の流体供給構造。
【請求項3】
前記シール流路入口は、前記キャビティと前記静翼本体とを区画する区画壁に形成され、
前記案内筒は、前記ケーシングに形成されていると共に前記流体を前記キャビティに供給する流体供給口から前記シール流路入口に向けて延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタービン静翼の流体供給構造。
【請求項4】
前記冷却流路入口は、前記案内筒の先端開口に比べて前記ケーシング側に開口していることを特徴とする請求項3に記載のタービン静翼の流体供給構造。
【請求項5】
前記シール流路入口の周囲から前記ケーシング側に向けて延び、延在方向の先端開口と前記案内筒の先端開口とを前記主半径方向に重ねて見た場合に、前記延在方向の先端開口が前記案内筒の先端開口を囲うサポート筒を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載のタービン静翼の流体供給構造。
【請求項6】
前記案内筒は、前記ケーシング側から前記静翼本体側に向かうに従って、前記案内筒の外周側から内周側に向かうスリットが形成されていることを特徴とする請求項3から5のうちいずれか一項に記載のタービン静翼の流体供給構造。
【請求項7】
前記案内筒の先端開口は、前記シール流路入口に対向していることを特徴とする請求項3から6のうちいずれか一項に記載のタービン静翼の流体供給構造。
【請求項8】
前記案内筒の先端開口は、その開口面積が前記シール流路入口の開口面積の大きさ以下に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のタービン静翼の流体供給構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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