説明

ターボチャージャ

【課題】可変ノズル機構をベアリングハウジングに押し当てた状態に保持する。
【解決手段】タービンハウジング14と可変ノズル機構30の組立体48との間の間隙Gに皿ばね50を配置し、その組立体48をタービンシャフト11の軸線方向へ付勢してベアリングハウジング12に押し当てるようにしたターボチャージャ10を対象とする。組立体48のシュラウドプレート41には、タービンハウジング14側へ延び、皿ばね50よりもスクロール通路16側に位置する第1遮熱部42を設ける。タービンハウジング14には、シュラウドプレート41側へ延び、皿ばね50よりもスクロール通路16側に位置する第2遮熱部18を設ける。こうした構成により、スクロール通路16を流れた排気Eが皿ばね50に直接当たる現象が第2遮熱部18及び第1遮熱部42によって妨げられ、排気Eによる皿ばね50の昇温が抑制されて付勢力の低下が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変ノズルを開閉動作させることで、タービンホイールに吹付けられる排気の流速を可変とする可変ノズル機構が組込まれたターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンに搭載されるターボチャージャとして、可変ノズルを開閉動作させることでタービンホイールに吹付けられる排気の流速を可変とする可変ノズル機構が組込まれたものがある。図4はその一例を示している。
【0003】
このターボチャージャ70では、タービンシャフト(図示略)がベアリングハウジング71に回転可能に支持されている。タービンシャフトの軸線L1に沿う方向についてベアリングハウジング71の一側(図4の左側)には、タービンハウジング72が配置されている。タービンハウジング72はタービン室73を中心部に有するとともに、同タービン室73の周りに渦巻き状のスクロール通路74を有している。タービンシャフト上には、上記タービン室73内で回転するタービンホイール75が設けられている。そして、このターボチャージャ70では、エンジンから排出され、かつスクロール通路74に沿って流れた排気Eがタービンホイール75に吹付けられて、同タービンホイール75が回転駆動される。これに伴い、タービンホイール75と同軸上のコンプレッサホイール(図示略)がタービンホイール75と一体となって回転し、過給が行なわれる(吸入された空気が圧縮されてエンジンに送り込まれる)。
【0004】
上記スクロール通路74及びタービン室73間には、複数の可変ノズル81を有する可変ノズル機構80が設けられている。可変ノズル機構80は、可変ノズル81の開度を変更することにより、タービンホイール75に吹付けられる排気Eの流速を可変とする機構である。そして、上記排気Eの流速の変更に伴い、ターボチャージャ70の回転速度が変更され、エンジンの過給圧(吸気圧)が調整される。
【0005】
さらに、上記ターボチャージャ70では、タービンハウジング72及び可変ノズル機構80間に皿ばね82が配置されている。皿ばね82は、軸線L1に沿う方向の寸法が小さくなるように弾性変形させられた状態で、外周縁部83において可変ノズル機構80に接触し、内周縁部84においてタービンハウジング72に接触している。この皿ばね82により、可変ノズル機構80が軸線L1に沿う方向へ付勢されてベアリングハウジング71に押し当てられている。この押し当てにより、可変ノズル機構80が、ベアリングハウジング71及びタービンハウジング72に固定されることなく、フローティング状態で位置決めされている。
【0006】
また、特許文献1に記載されたターボチャージャでは、上記皿ばね82が可変ノズル機構80及びタービンハウジング72間の間隙Gをシールしている。そのため、スクロール通路74の排気Eが間隙Gを通じて漏れ出ることが規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−47027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1を含め、上記従来のターボチャージャ70では、皿ばね82が、スクロール通路74を流れる排気Eに直接晒される。この排気Eにより皿ばね82が熱せられて昇温し、付勢力(ばね力)の低下をきたす。その結果、可変ノズル機構80をベアリングハウジング71に押し当てた状態に保持することが難しくなるおそれがある。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、可変ノズル機構をベアリングハウジングに押し当てた状態に保持することのできるターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、タービンシャフトが回転可能に支持されるベアリングハウジングと、前記タービンシャフトの軸線に沿う方向について前記ベアリングハウジングの一側に配置され、タービン室を有するとともに、同タービン室の周りにスクロール通路を有するタービンハウジングと、前記タービンシャフト上に設けられ、前記タービンハウジングの前記タービン室内で回転するタービンホイールとを備え、エンジンから排出され、前記スクロール通路に沿って流れた排気を前記タービンホイールに吹付けて、同タービンホイールを回転駆動するターボチャージャであり、前記スクロール通路及び前記タービン室間に複数の可変ノズルを有し、前記可変ノズルの開度の変更により、前記タービンホイールに吹付けられる排気の流速を可変とする可変ノズル機構と、前記タービンハウジング及び前記可変ノズル機構間に配置され、同可変ノズル機構を前記軸線に沿う方向へ付勢して前記ベアリングハウジングに押し当てる皿ばねと、前記皿ばね及び前記スクロール通路間に設けられた遮熱部とをさらに備えることを要旨とする。
【0011】
上記の構成によれば、可変ノズル機構は、皿ばねにより、タービンシャフトの軸線に沿う方向へ付勢されてベアリングハウジングに押し当てられる。この押し当てにより、可変ノズル機構が、ベアリングハウジング及びタービンハウジングに固定されることなく、フローティング状態で位置決めされる。
【0012】
ここで、皿ばねは、スクロール通路を流れる排気に直接晒されると、熱せられて昇温し、付勢力の低下を招くおそれがある。この点、皿ばね及びスクロール通路間に遮熱部が設けられた請求項1に記載の発明では、スクロール通路を流れ、かつ皿ばねに向かう排気は、その皿ばねに到達する前に遮熱部に当たり、皿ばねに直接当たることを妨げられる。排気のうち、流れの向きを変えて遮熱部を迂回したものが皿ばねに当たることとなる。その結果、排気による皿ばねの昇温が抑制されて付勢力の低下が抑制され、可変ノズル機構がベアリングハウジングに押し当てられた状態に保持される。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記可変ノズル機構は、前記可変ノズルを開閉可能に支持するプレートを、同可変ノズル及び前記タービンハウジング間に備えており、前記プレートには、前記タービンハウジング側へ延び、前記皿ばねよりも前記スクロール通路側に位置する第1遮熱部が設けられており、前記第1遮熱部により前記遮熱部の少なくとも一部が構成されていることを要旨とする。
【0014】
上記の構成によれば、プレートからタービンハウジング側へ延び、皿ばねよりもスクロール通路側に位置する第1遮熱部は、皿ばね及びスクロール通路間に位置し、スクロール通路を流れる排気が皿ばねに直接当たることを妨げる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第1遮熱部は、前記プレートを前記タービンハウジング側へ曲げることにより形成されたものであることを要旨とする。
【0016】
上記の構成によれば、プレートをタービンハウジング側へ曲げるといった簡単な加工を行なうだけで、第1遮熱部がプレートに一体に設けられる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記可変ノズル機構は、前記可変ノズルを開閉可能に支持するプレートを、同可変ノズル及び前記タービンハウジング間に備えており、前記タービンハウジングには、前記プレート側へ延び、前記皿ばねよりも前記スクロール通路側に位置する第2遮熱部が設けられており、前記第2遮熱部により前記遮熱部の少なくとも一部が構成されていることを要旨とする。
【0017】
上記の構成によれば、タービンハウジングからプレート側へ延び、皿ばねよりもスクロール通路側に位置する第2遮熱部は、皿ばね及びスクロール通路間に位置し、スクロール通路を流れる排気が皿ばねに直接当たることを妨げる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記可変ノズル機構は、前記可変ノズルを開閉可能に支持するプレートを、同可変ノズル及び前記タービンハウジング間に備えており、前記プレートには、前記タービンハウジング側へ延び、前記皿ばねよりも前記スクロール通路側に位置する第1遮熱部が設けられ、前記タービンハウジングには、前記プレート側へ延び、前記皿ばねよりも前記スクロール通路側に位置する第2遮熱部が設けられており、前記第1遮熱部及び前記第2遮熱部により前記遮熱部が構成されていることを要旨とする。
【0019】
上記の構成によれば、プレートからタービンハウジング側へ延び、皿ばねよりもスクロール通路側に位置する第1遮熱部と、タービンハウジングからプレート側へ延び、皿ばねよりもスクロール通路に位置する第2遮熱部とは、ともに皿ばね及びスクロール通路間に位置し、スクロール通路を流れる排気が皿ばねに直接当たることを妨げる。
【0020】
このように、皿ばね及びスクロール通路間の遮熱部は、第1遮熱部及び第2遮熱部によって構成される。しかも、皿ばねは、軸線に沿う方向についての両側から、第1遮熱部及び第2遮熱部によって覆われた状態となる。そのため、皿ばねが軸線に沿う方向についての片側のみから覆われる場合よりも、排気が皿ばねに直接当たることが起こりにくくなる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記第1遮熱部及び前記第2遮熱部は、前記タービンシャフトの径方向の互いに異なる箇所に設けられていることを要旨とする。
【0022】
上記の構成によれば、スクロール通路を流れる排気は、皿ばねに到達するまでに、タービンシャフトの径方向の互いに異なる箇所に設けられた第1遮熱部及び第2遮熱部によってそれぞれ流れを妨げられることとなり、皿ばねに直接当たることが一層起こりにくくなる。
【0023】
ここで、第2遮熱部が第1遮熱部よりもスクロール通路側に設けられた場合には、その第2遮熱部によってスクロール通路の内壁面の一部を構成することが可能である。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記第1遮熱部及び前記第2遮熱部は前記軸線に沿う方向に重なっていることを要旨とする。
【0024】
上記の構成によれば、スクロール通路を流れる排気は、皿ばねに到達するまでに、第1遮熱部及び第2遮熱部間の隙間を経由することとなる。この隙間が排気の流れの抵抗となり、排気が、タービンハウジング及び可変ノズル機構間の間隙に入り込みにくくなる。この点においても、排気が皿ばねに直接当たることを規制するうえで有効である。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の発明において、前記皿ばねは、前記軸線に沿う方向の寸法が小さくなるように弾性変形させられた状態で、外周縁部及び内周縁部の一方において前記可変ノズル機構に接触し、他方において前記タービンハウジングに接触することにより、前記可変ノズル機構を前記ベアリングハウジングに押し当てるとともに、前記可変ノズル機構及び前記タービンハウジング間の間隙をシールするものであることを要旨とする。
【0026】
上記の構成によれば、皿ばねは、外周縁部及び内周縁部の一方において可変ノズル機構に接触した箇所を通じ、その可変ノズル機構を付勢し、ベアリングハウジングに押し当てる。また、皿ばねは、外周縁部及び内周縁部の一方において可変ノズル機構に接触し、他方においてタービンハウジングに接触することで、可変ノズル機構及びタービンハウジング間の間隙をシールする。
【0027】
このように1つの部材(皿ばね)が可変ノズル機構を付勢する付勢部材と、間隙をシールするシール部材とを兼ねるため、付勢部材とシール部材とを異なる部材によって構成する場合に比べターボチャージャの部品点数が少なくてすむ。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を具体化した一実施形態を示す図であり、可変ノズル機構が組込まれたターボチャージャの概略構成を示す部分断面図。
【図2】一実施形態における可変ノズル機構の一部を示す図であり、(A)は図1の左方から見た側面図、(B)は図1の右方から見た側面図。
【図3】一実施形態における可変ノズル機構及びその周辺部分について、図1とは異なる断面での断面構造を拡大して示す部分断面図。
【図4】従来のターボチャージャにおける可変ノズル機構及びその周辺部分を拡大して示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
車両には、吸気通路を通じて燃焼室に吸入される空気と、同燃焼室に供給される燃料との混合気を燃焼するエンジンが搭載されている。このエンジンには、図1に示すターボチャージャ10が設けられている。このターボチャージャ10では、タービンシャフト11がベアリング13によってベアリングハウジング12に回転可能に支持されている。タービンシャフト11の軸線L1に沿う方向(以下「軸線方向」という)についてベアリングハウジング12の一側(図1の右側)には、タービンハウジング14が隣接して配置され、他側(図1の左側)には、複数の部材からなるコンプレッサハウジング(図示略)が隣接して配置されている。タービンハウジング14及びコンプレッサハウジングは、ベアリングハウジング12に対しそれぞれ締結されている。そして、これらのベアリングハウジング12、タービンハウジング14及びコンプレッサハウジングによって、ターボチャージャ10のハウジングが構成されている。
【0030】
タービンハウジング14の中心部には、上記軸線方向に延びる円筒状のタービン室15が形成されている。タービンハウジング14内において、タービン室15の周りには、渦巻き状のスクロール通路16が形成されている。タービン室15及びスクロール通路16は連通路17を介して相互に連通されている(図3参照)。
【0031】
なお、ベアリングハウジング12において連通路17に面する内壁面12Aと、タービンハウジング14において連通路17に面する内壁面14Aとは、それぞれ上記軸線L1に対し直交した状態又はそれに近い状態となっている。
【0032】
タービンシャフト11の一方(図1の右方)の端部上には、タービン室15内で回転するタービンホイール26が固定されている。タービンシャフト11の他方(図1の左方)の端部上には、コンプレッサハウジング内で回転するコンプレッサホイール(図示略)が固定されている。
【0033】
そして、上記の基本構成を有するターボチャージャ10では、エンジンから排出され、かつスクロール通路16に沿って流れた排気Eが連通路17を通じてタービンホイール26に吹付けられて、同タービンホイール26が回転駆動される。この回転は、タービンシャフト11を介してコンプレッサホイールに伝達される。その結果、エンジンでは、ピストンの移動に伴って燃焼室内に発生する負圧によって吸入される空気が、ターボチャージャ10のコンプレッサホイールの回転によって強制的に燃焼室に送り込まれる(過給される)。このようにして、燃焼室への空気の充填効率が高められる。
【0034】
上記ターボチャージャ10には、可変ノズル機構(バリアブルノズル機構)30が組込まれている。可変ノズル機構30は、連通路17の排気流通面積を変更し、タービンホイール26に吹付けられる排気Eの流速を可変とし、もって、ターボチャージャ10の回転速度を調整し、燃焼室に強制的に送り込まれる空気の量を調整するための機構である。
【0035】
次に、この可変ノズル機構30の概略構成について説明する。図2(A)は、可変ノズル機構30の一部(ノズルプレート31等)を図1の左方から見た状態を示し、図2(B)は可変ノズル機構30の一部(ノズルプレート31等)を図1の右方から見た状態を示している。図1及び図2(A),(B)に示すように、可変ノズル機構30は、連通路17にそれぞれ配置されたノズルプレート31及びユニゾンリング35を備えている。これらのノズルプレート31及びユニゾンリング35は、上記軸線L1を中心とする円環状をなしている。
【0036】
ノズルプレート31において、上記軸線L1を中心とする円上には、複数の軸32が略等角度毎に配置されている。各軸32は、軸線L1に平行に延びており、ノズルプレート31に対し回動可能に挿通されている。各軸32について、ノズルプレート31から露出する一方(図1の右方)の部分には、可変ノズル(ノズルベーン)33が固定されている。図1では、可変ノズル33は二点鎖線で図示されている。また、各軸32について、ノズルプレート31から露出する他方(図1の左方)の端部には、アーム34の基端部が固定されている。
【0037】
ユニゾンリング35は、内周面の複数箇所に凹部36を有している。これらの凹部36には、上記アーム34の先端部が係合されている。ユニゾンリング35は、リンク37(図1参照)等を介してターボチャージャ10の外部から回転される。すなわち、リンク37の回動軸37Aにはアーム39が固定されており、そのアーム39の先端部は、ユニゾンリング35の内周面に設けられた凹部40に係合されている。そして、ユニゾンリング35がターボチャージャ10の外部から、リンク37、回動軸37A、アーム39等を介して上記軸線L1の周りで回動させられると、そのユニゾンリング35の複数の凹部36に係合している各アーム34が軸32を中心として各々同期した状態で回動(開閉)される。各軸32の回動によって可変ノズル33の開度が変化し、連通路17の上記排気流通面積が変更される。そして、隣り合う可変ノズル33間を通じてタービンホイール26に吹付けられる排気Eの流速が調整される。
【0038】
例えば、図2(A)において、リンク37等により回動軸37Aを支点としてアーム39を反時計回り方向へ回動させると、これに伴ってユニゾンリング35は同図2(A)及び図2(B)においてそれぞれ矢印に示す方向へ回動する。ユニゾンリング35の上記回動によって、各軸32が、図2(A)では反時計回り方向へ回動し、図2(B)では時計回り方向へ回動する。各軸32の上記回動に伴い、可変ノズル33が閉じ側に回動し、タービンホイール26に吹付けられる排気Eの流速が高くなる。上記とは逆に、可変ノズル33が開き側に回動すると、タービンホイール26に吹付けられる排気Eの流速が低くなる。
【0039】
図3は、可変ノズル機構30及びその周辺部分について、上記図1とは異なる断面(後述するスペーサ47を通る断面)での断面構造を拡大して示している。図1及び図3に示すように、可変ノズル機構30は、上述した構成に加え、上記連通路17に配置されたシュラウドプレート41を備えている。シュラウドプレート41は、特許請求の範囲における「プレート」に該当するものであり、上記軸線L1を中心とする円環状をなしている。シュラウドプレート41は、ノズルプレート31に対し、ベアリングハウジング12から遠ざかる側(図1及び図3の各右側)に配置されている。一方、可変ノズル33毎の軸32は、同可変ノズル33からシュラウドプレート41側へ露出しており、この軸32の露出部分がシュラウドプレート41に回動可能に挿通されている。従って、各可変ノズル33は、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41において、軸32と一体で回動し得るように支持されていることとなる。
【0040】
シュラウドプレート41は、上記軸線L1を中心とする円上において略等角度毎に配置された複数本のピン46によってノズルプレート31に連結されている。各ピン46は、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41にそれぞれ圧入されている。
【0041】
ノズルプレート31及びシュラウドプレート41間において、各ピン46上には円管状のスペーサ47が被せられており、これらのスペーサ47によって、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41間に可変ノズル33の厚み程度の間隔が確保されている。上記連結により、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41は、相互に一体的に結合された「組立体48」となっている。
【0042】
さらに、ターボチャージャ10では、タービンホイール26の周りであって、組立体48のシュラウドプレート41とタービンハウジング14の内壁面14Aとの間の間隙Gに、金属板等の弾性体によって円環状に形成された皿ばね50が配置されている。この間隙Gは、タービンハウジング14等が冷間時と熱間時とで熱変形(収縮・膨張)を起したり、ターボチャージャ10の構成部品に精度上のばらつきがあったりしても、ベアリングハウジング12及びタービンハウジング14間に組立体48の設置スペースを確保できること等を考慮して設けられている。
【0043】
上記皿ばね50の1つの機能は、組立体48を軸線方向に付勢し、ベアリングハウジング12の内壁面12Aに押し当てることである。皿ばね50の別の機能は、上記間隙Gをシールすることである。皿ばね50は、中心部に近付くほどタービンハウジング14の内壁面14Aに近付く円錐状(テーパ状)に形成されている。
【0044】
皿ばね50の外周縁部52は、軸線L1を中心とした円環状をなし、全ての軸32及び全てのピン46よりも軸線L1から遠い箇所においてシュラウドプレート41に接触している。皿ばね50の内周縁部51は、軸線L1を中心とした円環状をなし、タービンハウジング14の内壁面14Aに接触している。
【0045】
皿ばね50は、上記内周縁部51及び外周縁部52において荷重が加えられることにより、軸線方向の寸法が小さくなる方向に撓ませられ(弾性変形させられ)ており、外周縁部52において、組立体48(シュラウドプレート41)を軸線方向についてのベアリングハウジング12側へ付勢している。この付勢により、ノズルプレート31がベアリングハウジング12の内壁面12Aに押し当てられている。
【0046】
さらに、本実施形態では、皿ばね50及びスクロール通路16間に遮熱部が設けられている。この遮熱部は、本実施形態では第1遮熱部42及び第2遮熱部18からなる。
第1遮熱部42は、シュラウドプレート41からタービンハウジング14側へ延び、皿ばね50の外周縁部52よりもスクロール通路16側に位置している。第1遮熱部42は、シュラウドプレート41をタービンハウジング14側へ曲げることにより形成されている。
【0047】
第2遮熱部18は、タービンハウジング14からシュラウドプレート41側へ延び、皿ばね50の外周縁部52よりもスクロール通路16側に位置している。第2遮熱部18は、第1遮熱部42からスクロール通路16側へ僅かに離れた箇所に位置している。第2遮熱部18において、軸線L1から遠い側の面は、スクロール通路16の内壁面16Aの一部を構成している。第2遮熱部18の先端面は、第1遮熱部42の先端面よりもベアリングハウジング12側に位置していて、第2遮熱部18は、第1遮熱部42に対し軸線方向に重なっている。
【0048】
上記のようにして、本実施形態のターボチャージャ10が構成されている。次に、このターボチャージャ10の作用について説明する。
エンジンの運転に伴い生じた排気Eは、排気通路を流れる過程でターボチャージャ10に流入し、タービンハウジング14のスクロール通路16に沿って流れる。この排気Eは、隣り合う可変ノズル33間を通り、タービン室15内のタービンホイール26に吹付けられる。この排気Eの吹付けにより、タービンホイール26が回転駆動される。これに伴い、タービンホイール26と同軸上のコンプレッサホイールがタービンホイール26と一体となって回転して過給が行なわれる。
【0049】
ターボチャージャ10の外部からリンク37等の操作を通じて可変ノズル33が回動されることにより、同可変ノズル33の開度が変更される。これに伴い、タービンホイール26に吹付けられる排気Eの流速が変更されて、ターボチャージャ10の回転速度が変更され、エンジンの過給圧が調整される。
【0050】
ところで、上記ターボチャージャ10では、組立体48(シュラウドプレート41)とタービンハウジング14の内壁面14Aとの間で、皿ばね50が軸線方向に弾性変形させられて、弾性エネルギを蓄積した状態で組込まれている。
【0051】
皿ばね50の外周縁部52が接触しているシュラウドプレート41は、皿ばね50の弾性エネルギを放出しようとする力(弾性復元力、付勢力)により軸線方向に常に付勢される。この皿ばね50の付勢力は、スペーサ47及びピン46を介してノズルプレート31に伝達される。
【0052】
付勢力の上記伝達により、組立体48がベアリングハウジング12側へ変位する。そして、ノズルプレート31がベアリングハウジング12の内壁面12Aに押し当てられる。この押し当てにより、組立体48が、ベアリングハウジング12及びタービンハウジング14に固定されることなく、フローティング状態で位置決めされる。
【0053】
また、上記ターボチャージャ10では、シュラウドプレート41とタービンハウジング14の内壁面14Aとの間に間隙Gがあるが、この間隙Gは皿ばね50によってシールされる。
【0054】
ここで、皿ばね50は、スクロール通路16を流れる排気Eに直接晒されると、熱せられて昇温し、付勢力の低下を招くおそれがある。この点、本実施形態では、シュラウドプレート41からタービンハウジング14側へ延び、皿ばね50の外周縁部52よりもスクロール通路16側に位置する第1遮熱部42が、皿ばね50及びスクロール通路16間に位置する。また、タービンハウジング14からシュラウドプレート41側へ延び、皿ばね50の外周縁部52よりもスクロール通路16側に位置する第2遮熱部18が、皿ばね50及びスクロール通路16間に位置する。スクロール通路16から皿ばね50に向かう排気Eは、その皿ばね50に到達する前に、上記第2遮熱部18及び第1遮熱部42に当たり、皿ばね50に直接当たることを妨げられる。
【0055】
特に、本実施形態では、第2遮熱部18及び第1遮熱部42が、皿ばね50及びスクロール通路16間において、タービンシャフト11の径方向に互いに異なる箇所に位置している。そのため、スクロール通路16を流れる排気Eは、皿ばね50に到達するまでに、第2遮熱部18及び第1遮熱部42によってそれぞれ流れを妨げられることとなり、皿ばね50に直接当たることが一層起こりにくくなる。そして、排気Eのうち、流れの向きを変えて、第1遮熱部42及び第2遮熱部18を迂回したものが、皿ばね50に当たることとなる。
【0056】
さらに、本実施形態では、第2遮熱部18及び第1遮熱部42が軸線L1に沿う方向に重なっていることから、スクロール通路16を流れる排気Eは、皿ばね50に到達するまでに、第1遮熱部42及び第2遮熱部18間で軸線方向に延びる隙間を経由することとなる。この隙間が排気Eの流れの抵抗となり、排気Eが間隙Gに入り込みにくくなる。この点においても、排気Eが皿ばね50に直接当たることが起こりにくくなる。
【0057】
そして、上記のように、スクロール通路16を流れた排気Eが皿ばね50に直接当たる現象が妨げられると、排気Eによる皿ばね50の昇温が抑制されて付勢力の低下が抑制される。
【0058】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)タービンハウジング14と可変ノズル機構30の組立体48との間の間隙Gに皿ばね50を配置し、その組立体48をタービンシャフト11の軸線方向へ付勢してベアリングハウジング12に押し当てるようにしたターボチャージャ10を対象とする。
【0059】
シュラウドプレート41には、タービンハウジング14側へ延び、皿ばね50よりもスクロール通路16側に位置する第1遮熱部42を設ける。タービンハウジング14には、シュラウドプレート41側へ延び、皿ばね50よりもスクロール通路16側に位置する第2遮熱部18を設けている。このように、皿ばね50及びスクロール通路16間に第1遮熱部42及び第2遮熱部18を設けている。
【0060】
そのため、スクロール通路16を流れた排気Eが皿ばね50に直接当たるのを、第1遮熱部42及び第2遮熱部18によって妨げることができる。
また、皿ばね50を、軸線方向についての両側から、第1遮熱部42及び第2遮熱部18によって覆うことになるため、片側のみから覆う場合よりも、排気Eが皿ばね50に直接当たるのを起こりにくくすることができる。
【0061】
その結果、排気Eによる皿ばね50の昇温を抑制して付勢力の低下を抑制することができ、可変ノズル機構30の組立体48を、ベアリングハウジング12に押し当てられた状態に保持することができる。
【0062】
(2)シュラウドプレート41をタービンハウジング14側へ曲げるといった簡単な加工を行なうだけで、第1遮熱部42をシュラウドプレート41に一体に設けることができる。
【0063】
(3)第1遮熱部42及び第2遮熱部18を、タービンシャフト11の径方向に互いに異なる箇所に設けている。
そのため、スクロール通路16を流れる排気Eが皿ばね50に到達するまでに、その流れを第2遮熱部18及び第1遮熱部42によってそれぞれ妨げることができ、排気Eが皿ばね50に直接当たる現象をより起こりにくくすることができる。
【0064】
(4)第2遮熱部18を、第1遮熱部42よりもスクロール通路16側に位置させている。
そのため、スクロール通路16を流れる排気Eが皿ばね50に直接当たるのを第2遮熱部18によって妨げることができるだけでなく、第2遮熱部18によってスクロール通路16の内壁面16Aの一部を構成させることができる。
【0065】
(5)第2遮熱部18の先端面を、第1遮熱部42の先端面よりもベアリングハウジング12側に位置させ、第2遮熱部18を第1遮熱部42に対し、軸線方向に重ならせている。
【0066】
そのため、第1遮熱部42及び第2遮熱部18間の隙間によって、排気流れに抵抗を付与し、排気Eが皿ばね50に対し直接当たるのをより規制することができる。
(6)皿ばね50の付勢力のみによって、可変ノズル機構30の組立体48をベアリングハウジング12に対して押し当てて位置決めさせている。表現を変えると、組立体48をターボチャージャ10のハウジング(ベアリングハウジング12、タービンハウジング14)に固定することなく、フローティング状態で位置決めしている。
【0067】
そのため、組立体48を比較的小さく構成することができ、組立体48の構成部品内の温度差を小さくでき、高温時における熱変形を低減することができる。
また、ノズルプレート31等の外径側で組立体48を強制的に固定していないため、変形に対する拘束を少なくし、熱変形を小さくすることができる。
【0068】
これらのことから、ノズルプレート31及び可変ノズル33間の隙間や、シュラウドプレート41及び可変ノズル33間の隙間を縮小しても、高温時における可変ノズル33の渋り等から開放される。可変ノズル33の渋りとは、可変ノズル33が回動(開閉)時に、ノズルプレート31及びシュラウドプレート41との接触により動きにくくなったり動かなくなったりする現象である。その結果、ターボ性能の改善、すなわち、タービン効率の向上を図ることが可能となる。
【0069】
(7)皿ばね50を、軸線方向の寸法が小さくなるように弾性変形させた状態で、同皿ばね50の外周縁部52をシュラウドプレート41に接触させ、内周縁部51をタービンハウジング14の内壁面14Aに接触させている。
【0070】
そのため、皿ばね50によって組立体48を付勢して、ベアリングハウジング12の内壁面12Aに押し当てることができるほか、可変ノズル機構30の組立体48とタービンハウジング14との間の間隙Gをシールすることができる。
【0071】
このように1つの部材(皿ばね50)がシュラウドプレート41を付勢する付勢部材と、間隙Gをシールするシール部材とを兼ねるため、付勢部材とシール部材とを異なる部材によって構成する場合に比べ、ターボチャージャ10の部品点数を少なくすることができる。
【0072】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・上記実施形態では、第1遮熱部42及び第2遮熱部18の両者によって遮熱部が構成されたが、いずれか一方のみによって遮熱部が構成されてもよい。
【0073】
・第1遮熱部42はシュラウドプレート41とは別体によって構成されてもよい。同様に、第2遮熱部18は、タービンハウジング14とは別体によって構成されてもよい。
・第1遮熱部42及び第2遮熱部18は、タービンシャフト11の径方向に互いに同じ箇所、すなわち軸線L1から同じ距離離れた箇所に設けられてもよい。この場合、第1遮熱部42及び第2遮熱部18は、皿ばね50及びスクロール通路16間で軸線L1に沿う方向に対向することとなる。
【0074】
・第1遮熱部42及び第2遮熱部18が、タービンシャフト11の径方向に互いに異なる箇所(軸線L1から異なる距離離れた箇所)に設けられる場合、必ずしも軸線方向に重ねられなくてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、皿ばね50に、可変ノズル機構30の組立体48を付勢する機能と、同組立体48及びタービンハウジング14間の間隙Gをシールする機能とを担わせたが、シールする機能を、皿ばね50とは別の部材によって担わせてもよい。例えば、シールする部材は、ガスケットによって構成されてもよい。
【0076】
・第1遮熱部42は、シュラウドプレート41において、タービンシャフト11の径方向の互いに異なる複数箇所に設けられてもよい。同様に、第2遮熱部18は、タービンハウジング14において、タービンシャフト11の径方向の互いに異なる複数箇所に設けられてもよい。
【0077】
・第1遮熱部42は、第2遮熱部18よりもスクロール通路16側に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…ターボチャージャ、11…タービンシャフト、12…ベアリングハウジング、14…タービンハウジング、15…タービン室、16…スクロール通路、18…第2遮熱部、26…タービンホイール、30…可変ノズル機構、33…可変ノズル、41…シュラウドプレート(プレート)、42…第1遮熱部、50…皿ばね、51…内周縁部、52…外周縁部、E…排気、G…間隙、L1…軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンシャフトが回転可能に支持されるベアリングハウジングと、
前記タービンシャフトの軸線に沿う方向について前記ベアリングハウジングの一側に配置され、タービン室を有するとともに、同タービン室の周りにスクロール通路を有するタービンハウジングと、
前記タービンシャフト上に設けられ、前記タービンハウジングの前記タービン室内で回転するタービンホイールと
を備え、
エンジンから排出され、前記スクロール通路に沿って流れた排気を前記タービンホイールに吹付けて、同タービンホイールを回転駆動するターボチャージャであり、
前記スクロール通路及び前記タービン室間に複数の可変ノズルを有し、前記可変ノズルの開度の変更により、前記タービンホイールに吹付けられる排気の流速を可変とする可変ノズル機構と、
前記タービンハウジング及び前記可変ノズル機構間に配置され、同可変ノズル機構を前記軸線に沿う方向へ付勢して前記ベアリングハウジングに押し当てる皿ばねと、
前記皿ばね及び前記スクロール通路間に設けられた遮熱部と
をさらに備えることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記可変ノズル機構は、前記可変ノズルを開閉可能に支持するプレートを、同可変ノズル及び前記タービンハウジング間に備えており、
前記プレートには、前記タービンハウジング側へ延び、前記皿ばねよりも前記スクロール通路側に位置する第1遮熱部が設けられており、前記第1遮熱部により前記遮熱部の少なくとも一部が構成されている請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記第1遮熱部は、前記プレートを前記タービンハウジング側へ曲げることにより形成されたものである請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記可変ノズル機構は、前記可変ノズルを開閉可能に支持するプレートを、同可変ノズル及び前記タービンハウジング間に備えており、
前記タービンハウジングには、前記プレート側へ延び、前記皿ばねよりも前記スクロール通路側に位置する第2遮熱部が設けられており、前記第2遮熱部により前記遮熱部の少なくとも一部が構成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記可変ノズル機構は、前記可変ノズルを開閉可能に支持するプレートを、同可変ノズル及び前記タービンハウジング間に備えており、
前記プレートには、前記タービンハウジング側へ延び、前記皿ばねよりも前記スクロール通路側に位置する第1遮熱部が設けられ、
前記タービンハウジングには、前記プレート側へ延び、前記皿ばねよりも前記スクロール通路側に位置する第2遮熱部が設けられており、
前記第1遮熱部及び前記第2遮熱部により前記遮熱部が構成されている請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項6】
前記第1遮熱部及び前記第2遮熱部は、前記タービンシャフトの径方向の互いに異なる箇所に設けられている請求項5に記載のターボチャージャ。
【請求項7】
前記第1遮熱部及び前記第2遮熱部は前記軸線に沿う方向に重なっている請求項6に記載のターボチャージャ。
【請求項8】
前記皿ばねは、前記軸線に沿う方向の寸法が小さくなるように弾性変形させられた状態で、外周縁部及び内周縁部の一方において前記可変ノズル機構に接触し、他方において前記タービンハウジングに接触することにより、前記可変ノズル機構を前記ベアリングハウジングに押し当てるとともに、前記可変ノズル機構及び前記タービンハウジング間の間隙をシールするものである請求項1〜7のいずれか1つに記載のターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104413(P2013−104413A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250913(P2011−250913)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】