説明

ターボ圧縮機システムの運転方法

【課題】
吸込弁と放風弁を使用して複数台のターボ圧縮機を台数制御するシステムにおいて、運転するターボ圧縮機の故障や増設等に対応できる信頼性高いシステムとする。
【解決手段】
ターボ圧縮機システム100は、それぞれが吸込側に流量可変の吸込弁12、22、32を、吐出側に作動ガスを放風可能な放風弁14、24、34を有するターボ圧縮機10、20、30を複数台並列に接続している。複数のターボ圧縮機だけで容量制御する。ターボ圧縮機の各々の運転時には、最大運転モードと、吸込絞り運転モードと、ミニマム運転モードと、部分負荷運転モードと、放風運転モードとを有する。吸込弁と放風弁をPI制御またはPID制御してそれぞれのターボ圧縮機に予め定められた所定吐出圧力になるよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のターボ圧縮機を用いたターボ圧縮機システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台のターボ圧縮機を用いて台数制御運転する例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載のシステムでは、圧縮機設備において圧縮空気貯蔵用のタンクを省いても圧送空気の圧力を変動させないことを目的としている。この目的を達成するために、圧縮機設備は、圧送流量を検出する流量計と圧送流量に応じて必要な圧縮機の台数を選定し、各圧縮機をロード、アンロード切り換え、あるいは起動、停止させる台数制御盤を有する。また、各圧縮機は吸い込み絞り弁を有し、この吸い込み絞り弁の開度を調節することにより、圧力一定制御が可能になっている。さらに、吸込絞り制御を利用できない容量では、圧送ガスの一部を放風運転して圧送圧力を略一定に保っている。
【0003】
特許文献2には、1台のターボ圧縮機と複数台の容積形圧縮機を組み合わせて台数制御し、ターボ圧縮機を定風圧制御するときにはターボ圧縮機の回転数制御圧力を容積形圧縮機の放風弁開設定圧力よりも低くし、ターボ圧縮機の放風弁開設定圧力を容積形圧縮機の放風弁開設定圧力よりも高くすることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6-249190号公報
【0005】
【特許文献2】特開平11-303792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の圧縮機システムでは、容量の違う複数台の圧縮機と検出されたガス流量から最適な運転機を選定して運転停止させているが、流量毎に運転する圧縮機が定まっており、不測の事態で1台の圧縮機が運転できなくなったときには、システム全体を停止せざるを得ないという不具合を生じる。また、流量毎に運転する圧縮機が定まっているので、流量の増減に応じて圧縮機を頻繁に起動または停止せざるを得ない。
【0007】
しかしながら、ターボ圧縮機の特性として頻繁な起動、停止は故障の発生や寿命の低下の要因となる。この逆に負荷がほとんど変化しない、すなわち流量一定の場合には、特定の圧縮機だけが運転し、全く運転しな圧縮機が生じて、圧縮機相互で運転時間が変化する。これは、圧縮機システムのメインテナンス周期を著しく短くし望ましくない。
【0008】
上記特許文献2に記載の圧縮機システムでは、ターボ型と容積形という特性の異なる圧縮機を使用している。一般にターボ型圧縮機の吐出圧力は低く、容積形の圧縮機の吐出圧力は高いから、需要元の圧力レベルに合わせて最良の組み合わせを形成するのが難しい。
【0009】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は吸込弁と放風弁を使用して複数台のターボ圧縮機を台数制御するシステムにおいて、運転するターボ圧縮機の故障や増設等に対応できる信頼性高いシステムとすることにある。また、ターボ圧縮機の起動、停止回数を低減して信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の特徴は、それぞれが吸込側に流量可変の吸込弁を、吐出側に作動ガスを放風可能な放風弁を有するターボ圧縮機を複数台並列に接続し、この複数のターボ圧縮機だけで容量制御するターボ圧縮機システムの運転方法において、複数台のターボ圧縮機の各々を運転いているときの運転モードとして、最大運転モードと、吸込絞り運転モードと、ミニマム運転モードと、部分負荷運転モードと、放風運転モードとを有し、吸込弁と放風弁をPI制御またはPID制御してそれぞれのターボ圧縮機に予め定められた所定吐出圧力になるよう制御する。
【0011】
そしてこの特徴において、最大運転モードと吸込絞り運転モードとミニマム運転時には、放風弁を全閉とし、部分負荷運転モードと放風運転モードでは、吸込弁開度を許容最小開度とし、放風弁を開いて運転するのが望ましい。
【0012】
また、複数のターボ圧縮機の中の1台を流量調節機に定め、この流量調節機に要求される流量が最大運転モードの流量に等しいか大きくなったら台数制御盤が他のターボ圧縮機の運転状態を調べ、運転中の他のターボ圧縮機がミニマム運転モードであれば、このミニマム運転モードにあるターボ圧縮機を新たに流量調節機とするとともにそれまでの流量調節機を最大運転モードに設定し、運転中の他のターボ圧縮機がすべて最大運転モードであれば、停止中のターボ圧縮機を最大運転モードで起動するとともに流量調節機を部分負荷運転モードまたは吸込絞り運転モードで運転させるのがよく、流量調節機に要求される流量がミニマム運転モードの流量と等しいか少なくなったら台数制御盤が他のターボ圧縮機の運転状態を調べ、運転中の他のターボ圧縮機の1台が最大運転モードであればその圧縮機を吸込絞り運転モードで運転する流量調節機に定めるとともにそれまでの流量調節機をミニマム運転モードに設定し、運転中の他のターボ圧縮機がすべてミニマム運転モードであればそのミニマム運転モードにあるターボ圧縮機の中の1台を次に停止させるターボ圧縮機に設定するのがよい。
【0013】
さらに、流量調節機に要求される流量が放風弁を開く部分負荷運転モードの流量になったら台数制御盤が他のターボ圧縮機の運転状態を調べ、運転中の他のターボ圧縮機がミニマム運転モードであればミニマム運転モードにあるターボ圧縮機の全てを最大運転モードにするとともに流量調節機を部分負荷運転モードまたはアンロード運転モードとし、アンロード運転が所定時間継続したターボ圧縮機があれば運転を停止するのが好ましく、流量調節機に要求される流量が放風弁を全開にするアンロード運転モードの流量になったら台数制御盤が他のターボ圧縮機の運転状態を調べ、運転中の他のターボ圧縮機が最大運転モードまたはミニマム運転モードであればそのターボ圧縮機を流量調節機に定めそれまでの流量調節機をアンロード運転モードにし、アンロード運転が所定時間継続したターボ圧縮機があれば運転を停止するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、起動または停止させるターボ圧縮機を使用流量に対応することなく、任意に設定できるようにしたので、ターボ圧縮機の故障や増設にも容易に対応できる。また、起動、停止回数も低減できる。さらに、最大開度で運転している圧縮機の目標圧力を許容最大圧力としているので、需要元の必要流量が減少し、需要元の圧力が急激に高くなっても、最大開度で運点している圧縮機の目標圧力を低下させるだけで需要元の圧力が低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る圧縮機システム100の一実施例について、図面を用いて説明する。図1は、圧縮機システム100のブロック図である。本実施例では、圧縮機システム100は同一仕様の3台のターボ圧縮機10、20、30を有している。各ターボ圧縮機本体13、23、33の吸込側には、入口ガイドベーン(以下吸込弁と称す)12、22、32が取り付けられている。ターボ圧縮機本体13、23、33の吐出配管17、27、37から分岐して放風弁14、24、34が取り付けられている。吐出配管17、27、37には逆止弁15、25、35が介在しており、逆止弁15、25、35の下流側は集合配管41に接続されている。逆止弁15、25、35の下流側であって集合配管41の上流側には、各ターボ圧縮機本体13、23、33から吐出されるガスの圧力を検出する圧力検出装置が取り付けられている。さらに、集合配管41の途中であってターボ圧縮機30の吐出配管37との連結部よりも下流側に、圧縮機システム100から吐出されるガスの全体の吐出圧力を検出する吐出圧力検出器が取り付けられている。
【0016】
各ターボ圧縮機10、20、30には、ターボ圧縮機本体13、23、33を制御する圧縮機制御盤11、21、31が備えられている。各圧縮機制御盤11、21、31には、その圧縮機制御盤11、22、33が属するターボ圧縮機10、20、30に対応する圧力検出装置16、26、36が検出したターボ圧縮機本体13、23、33の吐出ガス圧が入力される。圧縮機制御盤11、21、31は、吸込弁12、22、32および放風弁14、24、34に開度指令を出力する。
【0017】
圧縮機制御盤11、21、31は、台数制御盤1に接続されており、台数制御盤1には集合配管41に設けた吐出圧力検出器2が検出した圧縮機システム100の吐出圧力が入力される。図2に示すように、圧縮機制御盤11、21、31からは放風運転中、最大開度運転中、ミニマム運転中等の各ターボ圧縮機10、20、30の運転状態が、台数制御盤1に送信される。一方、台数制御盤1から圧縮機制御盤11、21、31には、各ターボ圧縮機10、20、30の運転または停止指令、アンロード、目標圧力切り換え、ミニマム運転等の指令が送信される。
【0018】
このように構成した本実施例の圧縮機システム100では、吸込弁12、22、32を経て吸込まれた作動ガスは、ターボ圧縮機本体13で圧縮されて高圧となり、逆止弁15、25、35から集合配管41を経由して需要元へと圧送される。需要元の圧力は、集合配管41の吐出圧力検出器2で検出される。吸込弁12、22、32または放風弁14、24、34の開度を、圧力検出装置16、26、36が検出したターボ圧縮機本体13、23、33の吐出圧力と詳細を後述する目標圧力の偏差からPI制御またはPID制御して、作動ガスの圧送量を調節する。
【0019】
圧送ガス量が少ない場合には、吸込弁12、22、32の開度をサージングが生じない最小の開度に保持する。そして、放風弁14、24、34の開度を調節して、余剰ガスの廃棄量を調整し需要元へ圧送するガス量を制御する。需要元で消費するガス量が所定量より多くなると、放風弁16、26、36を全閉状態に保持し、吸込弁12、22、32の開度を調整して、ターボ圧縮機本体13、23、33に吸込む作動ガス量を調整する。放風弁14、24、34を開いて放風制御しているときは、需要元に送る作動ガスの圧送流量に関わらず動力は一定となる。吸込弁12、22、32をサージングが生じない最小開度から全開までの間で変化させる吸込絞り制御しているときは、需要元に送る作動ガスの圧送流量に応じた動力となる。したがって省エネルギ運転するために、放風制御の運転時間をできるだけ少なくする。
【0020】
図3に、ターボ圧縮機10、20、30の運転モードの例を示す。横軸はターボ圧縮機システム100で消費される作動ガスの吸込み基準の流量Qcであり、縦軸はターボ圧縮機本体13、23、33から吐出される作動ガスの流量Qgである。横軸でULDで示したのは、以下に述べるアンロード運転であり、MINはサージライン上(実際は余裕を見てサージラインよりわずかに大流量側)の運転点で最小運転、MAXは最大風量運転である。ULD〜MIN間はPLDであり、MIN〜MAX間はCCである。これら各運転モードを以下に説明する。
(1)アンロード運転(ULD)
需要元の消費ガス量が少なく、ターボ圧縮機10(20、30)で発生した圧縮ガスを、放風弁14(24、34)を全開にして捨て去るモードである。ターボ圧縮機本体13(23、33)は容量型の圧縮機等に比べて起動してから安定した運転になるまで時間がかかるので、起動回数をできるだけ少なくすることが望ましい。そのため、圧縮機システム100の消費ガス量が少なくなっていても、ターボ圧縮機本体13(23、33)を運転し続ける。
【0021】
ただし、圧縮機本体13(23、33)をサージング限界以上の流量で運転しなければならないので、放風弁14(24、34)を閉じると圧縮機システム100の圧力が上昇し過ぎる。そこで、圧力上昇を防ぐために、放風弁14(24、34)を全開にする。このとき、吸込弁12(22、32)の開度βを、許容最小開度βminにする。アンロード運転(ULD)はターボ圧縮機10、20、30でした仕事が全部無駄になる運転であるから、できるだけ避けたい。そこで、アンロード運転(ULD)が所定時間、本実施例では10分間以上継続したら、ターボ圧縮機本体13(23、33)を停止する。
(2)部分負荷運転(PLD)
後述する容量調整運転をしているターボ圧縮機が最大容量運転となっても、なお消費ガス量が多く停止しているターボ圧縮機を起動する場合や、起動している圧縮機が1台もなく、最初の圧縮機を起動するモードである。ただし、初号機の起動時には必ずしも、本モードによる必要はない。新たに起動したターボ圧縮機10(20、30)を最大容量で運転すると、発生流量が多すぎて圧縮機システム100の圧力が異常に上昇する恐れがある場合には、追加起動したターボ圧縮機10(20、30)から吐出される圧縮ガスの一部だけを需要元に送給する。この場合、追加起動したターボ圧縮機10(20、30)の放風弁14(24、34)を適宜量だけ開け、ターボ圧縮機10(20、30)が発生する圧縮ガス量と、消費ガス量および放風量とをバランスさせる。このときの吸込弁12(22、32)の開度βはβ=βminである。
(3)ミニマム運転(MIN)
消費ガス量はそんなに多くはないが、運転中の1台のターボ圧縮機10(20、30)を停止またはアンロード運転させると、消費ガス量よりも発生ガス量が少なくなる場合のモードである。吸込弁12(22、32)の開度βをサージングが生じない最小開度βminとし、放風弁14(24、34)を全閉とする。
(4)吸込絞り運転(CC)
サージングを引き起こす運転点よりも大流量域の運転で、ターボ圧縮機本体13(23、33)の吸込側に設けた吸込弁12(22、32)の弁開度βを変化させて、消費ガス量に対応する圧縮ガスを発生する運転モードである。需要元の消費ガス量が比較的多い状態である。放風弁14(24、34)は、全閉である。
(5)最大運転(MAX)
吸込絞り運転の上限点である。吸込弁12(22、32)の弁開度βは、最大開度β=βmaxまたは全開に設定される。放風弁14(24、34)は全閉である。需要元のガス消費量が増えても、最大運転(MAX)に達した圧縮機10(20、30)からは、これ以上多くの圧縮ガスを発生することはできない。そのような場合には、他のターボ圧縮機20(30、10)の運転モードを変化させる。
【0022】
本圧縮機システム100は、このような5つの運転モードと停止モードとを各ターボ圧縮機10、20、30に設定して、需要元の消費ガス量に対応している。3台のターボ圧縮機10、20、30を並列に接続した図1に示した実施例における、ターボ圧縮機10、20、30の運転モードの切り換え手順を、図4および図5を用いて説明する。図4は、圧縮機システム100の動作のフローチャートであり、図5は各ターボ圧縮機10、20、30の運転状態を示す図である。図5において、2台のターボ圧縮機が運転中のときのモード変化について説明する。主として容量調整をするターボ圧縮機がI号機、現在一定状態に維持されているターボ圧縮機をII号機、停止中の圧縮機をIII号機とする。上述したように、I号機は必ずしもターボ圧縮機10に相当するものではなく、状況に応じてターボ圧縮機10は、II号機、III号機にもなり得る。また、消費ガス量が低下したときに、次に停止させる圧縮機をII号機とする。
(ケースA)
2台のターボ圧縮機10、20(30)を運転している。いずれかのターボ圧縮機10、20(30)は吸込絞り運転をしている。この圧縮機を、I号機とする。I号機は見かけ上、容量調整(CC)機として作用する。II号機は、アンロード運転(ULD)またはミニマム運転(MIN)、最大運転(MAX)のいずれかである。III号機は停止している。この状態で、需要元のガス消費量が増加すると、容量調節機であるI号機は吸込弁12(22、32)の開度βを大きくし、ついには最大開度βmaxまで開いた最大運転(Max)になる(ステップA1)。
【0023】
さらに、圧縮ガスの発生量を増大させることを求められているので、台数制御盤1はII号機およびIII号機の運転状態を調べる。II号機またはIII号機がミニマム運転(MIN)になっているか否かを調べ(ステップA2)、II号機がミニマム運転(MIN)であれば、I号機を最大運転(MAX)に保持し(ステップA3)、II号機を容量調節機に設定する(ステップA4)。以後のターボ圧縮機の制御においては、このII号機を新I号機として取り扱う。
【0024】
ステップA2において、II号機がミニマム運転(MIN)していないときは、II号機が最大運転(MAX)か否かを調べる(ステップA6)。最大運転(MAX)であれば(ステップA7)、III号機の状態がアンロード運転(ULD)であるか否かを調べる(ステップA9)。III号機は停止中に設定しているので、ステップA12に飛んで、III号機を起動する。一方、II号機が最大運転(MAX)でもミニマム運転(MIN)でもなければ、II号機は起動されている前提なので、ステップA9においてアンロード運転(ULD)と判断し、圧縮ガス発生能力に余裕があるII号機を最大運転(MAX)させる。そして、I号機を容量調節機として作動させる。
【0025】
I、II号機の能力では圧縮ガス量が不足しているときには、III号機を起動する。III号機の起動時には、既に最大能力である最大運転(MAX)しているII号機はそのまま最大運転(MAX)を保持し、III号機も最大運転(MAX)させる。容量調節機であるI号機は吐出流量を減らして、需要元の消費ガス量に対応させる。つまり、容量調節の初期においては、I号機を部分負荷運転(PLD)させ、その後容量調節運転(CC)させる。これにより、急激な流量変化に起因する圧縮機システム100の吐出圧力検出器2が検出する吐出圧力の変動を防止する。
(ケースB)
需要元のガス消費が減少し、容量調節機として作動していたI号機の吸込弁開度βがβminに達し、ミニマム運転(MIN)になった状態である(ステップB1)。I号機をミニマム運転(MIN)機とし(ステップB2)する。台数制御盤1は、II号機が最大運転(MAX)しているか否かを調べる(ステップB3)。II号機が最大運転(MAX)していたら、II号機を吸込絞り運転(CC)する容量調節機とし、新I号機に設定する(ステップB4)。II号機が最大運転(MAX)していなければ、容量調節機として吸込絞り運転(CC)、ミニマム運転(MIN)、アンロード運転(ULD)のいずれかを設定する。その際、それまでのII号機の運転状態に応じて、設定運転モードを定める(ステップB6)。
(ケースC)
ケースBの状態で、さらに消費ガス流量が減少し、容量調節機であるI号機の流量を減少させて部分負荷運転(PLD)する場合である。I号機に要求される流量は、放風弁14(24、34)を全閉にしたミニマム運転(MIN)以下の流量であるので、吸込弁12(22、32)の開度βをβ=βminにし、放風弁14(24、34)を開けて放風運転する(ステップC1)。なお、本実施例ではサージング開始流量を、最大流量の70%としている。すなわち、需要元のガス消費量が減り、ターボ圧縮機本体13(23、33)に要求される圧縮ガス量が、ターボ圧縮機本体13(23、33)の最大圧縮ガス流量の70%を下回ったら、そのターボ圧縮機本体13(23、33)を部分負荷運転させる。
【0026】
ところで、部分負荷運転(PLD)はターボ圧縮機本体13(23、33)で発生した圧縮ガスの一部を捨てることであり、アンロード運転(ULD)は発生した圧縮ガスの全てを捨てることであるから、できるだけ部分負荷運転(PLD)やアンロード運転(ULD)の運転時間を短縮することが望ましい。上述したようにアンロード運転(ULD)になったときは、その状態が10分間以上継続したらターボ圧縮機本体13(23、33)を停止させるから、部分負荷運転(PLD)を長時間継続するよりはアンロード運転(ULD)にできるだけ早く突入させてターボ圧縮機本体13(23、33)を停止させれば、消費動力を低減できる。
【0027】
本実施例では、運転中のII号機やIII号機のターボ圧縮機本体23(33、13)を最大容量で運転し、I号機に要求される流量をできるだけ減らして、アンロード運転(ULD)状態になるようにする。II号機が最大運転(MAX)しているか否かを台数制御盤1が調べる(ステップC2)。II号機が最大運転(MAX)しているのであれば(ステップC3)、運転中の他の圧縮機の吐出流量をこれ以上増加できない。そこで、III号機がミニマム運転(MIN)しているか否かを台数制御盤1が調べる(ステップC5)。
【0028】
ステップC2でII号機が最大運転(MAX)していないのであれば、II号機がミニマム運転しているか否かを台数制御盤1が調べる(ステップC5)。ステップC5でII号機がミニマム運転していないのであれば、II号機はアンロード運転(ULD)で停止待ちであるから、これ以上ターボ圧縮機本体13、23(33)の流量制御はできないので、流量制御を終了する。
【0029】
II号機がミニマム運転(MIN)中であれば、II号機の吐出流量を増大させ、I号機の吐出流量を減少させることが可能になる。そこで、II号機を最大運転(MAX)し、I号機の放風弁14(24、34)開度を増加させ、放風量を増す(ステップC6)。なお、このケースCの運転では、II号機の流量増大と、I号機の放風量の増加は同期させて、急激な流量変化が生じるのを防止する。
【0030】
例えば、I号機に要求される流量が最大流量の30%であり、II号機がミニマム運転(MIN)しているときは、II号機の現在の流量は最大流量の70%である。したがって、II号機を最大運転(MAX)にすれば、I号機の流量は0%となりアンロード運転(ULD)に移行できる。本実施例では、容量の等しい3台のターボ圧縮機10、20、30を用いた場合を想定しているので、ケースCによりアンロード運転(ULD)や部分負荷運転(PLD)を回避できる割合が少なく、ケースCによる消費動力の低減効果は少ない。しかし、4台以上のターボ圧縮機を用いた場合には、アンロード運転(ULD)させる圧縮機の発生割合が格段に増えるので、消費動力を低減できる。
(ケースD)
需要元の消費ガス量が減少し、ケースCよりもさらに圧縮機本体13(23、33)に要求されるガス量が低減した場合である。容量調節機であるI号機は、部分負荷運転(PLD)を超えて放風弁14(24、34)を全開したアンロード運転(ULD)に移行している(ステップD1)。そこでI号機をアンロード機に設定し(ステップD2)、II号機が最大運転(MAX)しているか否かを台数制御盤1が調べる(ステップD3)。II号機が最大運転(MAX)していれば、II号機を新I号機として容量調節機に設定する(ステップD4)。II号機が最大運転(MAX)していなければ、ミニマム運転(MIN)か、停止待ちのアンロード運転(ULD)である。ミニマム運転(MIN)であれば、新I号機として容量調節機に設定する(ステップD6)。アンロード運転(ULD)であれば、そのままアンロード運転(ULD)を続け、アンロード運転(ULD)開始から10分経過したら、II号機を停止する。
(ケースE)
アンロード運転(ULD)が所定時間以上継続したら、ターボ圧縮機本体13(23、33)を停止させる場合である。容量調整機であるとないとに係らず、全てのターボ圧縮機本体13、23、33はのアンロード運転(ULD)が10分間継続した(ステップE1)ら、アンロード運転(ULD)して10分以上継続したターボ圧縮機本体13(23、33)を停止する。これにより、放風ガス量を低減するとともに、消費動力を低減する。
【0031】
以上、等容量のターボ圧縮機を3台並列に接続して台数制御する場合について、各ターボ圧縮機の運転モードを組み合わせて運転させることにより、放風量を低減し、消費動力を低減させることについて述べた。本発明は各ターボ圧縮機の容量が等しい場合のみならず、異なる容量のターボ圧縮機の組み合わせについても適用できることは言うまでもない。その際、需要元の圧縮ガス使用パターンに応じて各圧縮機の起動/停止が同程度になるように各運転モードを組み合わせることができ、各圧縮機のメンテナンス時期を調整できる。その結果、メンテナンスを各圧縮機とも同じ周期で行える。
【0032】
また、ターボ圧縮機の台数を4台以上または2台しか有しない圧縮機システムでも、本発明を適用できる。上述したように、圧縮機の台数が多ければ多いほど、ケースCの運転モード設定による利点を発揮でき、消費動力を低減できる。さらに、アンロード運転継続時間の限界を10分にしているが、この時間も需要元の圧縮ガスの使用パターンに応じて適宜定めるのが望ましい。いずれにしても、ターボ圧縮機は頻繁な起動/停止には不適であるので、起動/停止をできるだけ抑えた運転パターンになるように設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るターボ圧縮機システムの一実施例のブロック図。
【図2】制御系の信号伝達を説明する図。
【図3】ターボ圧縮機の運転モードを説明する図。
【図4】図1に示したターボ圧縮機システムの動作フローチャート。
【図5】各ターボ圧縮機の運転モード状態を説明する図。
【符号の説明】
【0034】
1…台数制御盤、2…吐出圧力検出器、10…ターボ圧縮機、11…圧縮機制御盤、12…吸込弁、13…圧縮機本体、14…放風弁、15…逆止弁、16…圧力検出装置、20…ターボ圧縮機、21…圧縮機制御盤、22…吸込弁、23…圧縮機本体、24…放風弁、25…逆止弁、26…圧力検出装置、30…ターボ圧縮機、31…圧縮機制御盤、32…吸込弁、33…圧縮機本体、34…放風弁、35…逆止弁、36…圧力検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが吸込側に流量可変の吸込弁を、吐出側に作動ガスを放風可能な放風弁を有するターボ圧縮機を複数台並列に接続し、この複数のターボ圧縮機だけで容量制御するターボ圧縮機システムの運転方法において、前記複数台のターボ圧縮機を運転しているときの運転モードとして、最大運転モードと、吸込絞り運転モードと、ミニマム運転モードと、部分負荷運転モードと、放風運転モードとを有し、前記吸込弁と放風弁をPI制御またはPID制御してそれぞれのターボ圧縮機に予め定められた所定吐出圧力になるよう制御することを特徴とするターボ圧縮機システムの運転方法。
【請求項2】
前記最大運転モードと吸込絞り運転モードとミニマム運転時には、前記放風弁を全閉とすることを特徴とする請求項1に記載のターボ圧縮機システムの運転方法。
【請求項3】
前記部分負荷運転モードと放風運転モードでは、吸込弁開度を許容最小開度とし、前記放風弁を開いて運転することを特徴とする請求項1に記載のターボ圧縮機システムの運転方法。
【請求項4】
複数のターボ圧縮機の中の1台を流量調節機に定め、この流量調節機に要求される流量が最大運転モードの流量に等しいか大きくなったら台数制御盤が他のターボ圧縮機の運転状態を調べ、運転中の他のターボ圧縮機がミニマム運転モードであれば、このミニマム運転モードにあるターボ圧縮機を新たに流量調節機とするとともにそれまでの流量調節機を最大運転モードに設定し、運転中の他のターボ圧縮機がすべて最大運転モードであれば、停止中のターボ圧縮機を最大運転モードで起動するとともに流量調節機を部分負荷運転モードまたは吸込絞り運転モードで運転させることを特徴とする請求項1に記載のターボ圧縮機システムの運転方法。
【請求項5】
複数のターボ圧縮機の中の1台を流量調節機に定め、この流量調節機に要求される流量がミニマム運転モードの流量と等しいか少なくなったら台数制御盤が他のターボ圧縮機の運転状態を調べ、運転中の他のターボ圧縮機の1台が最大運転モードであればその圧縮機を吸込絞り運転モードで運転する流量調節機に定めるとともにそれまでの流量調節機をミニマム運転モードに設定し、運転中の他のターボ圧縮機がすべてミニマム運転モードであればそのミニマム運転モードにあるターボ圧縮機の中の1台を次に停止させるターボ圧縮機に設定することを特徴とする請求項1に記載のターボ圧縮機システムの運転方法。
【請求項6】
複数のターボ圧縮機の中の1台を流量調節機に定め、この流量調節機に要求される流量が放風弁を開く部分負荷運転モードの流量になったら台数制御盤が他のターボ圧縮機の運転状態を調べ、運転中の他のターボ圧縮機がミニマム運転モードであればミニマム運転モードにあるターボ圧縮機の全てを最大運転モードにするとともに流量調節機を部分負荷運転モードまたはアンロード運転モードとし、アンロード運転が所定時間継続したターボ圧縮機があれば運転を停止することを特徴とする請求項1に記載のターボ圧縮機システムの運転方法。
【請求項7】
複数のターボ圧縮機の中の1台を流量調節機に定め、この流量調節機に要求される流量が放風弁を全開にするアンロード運転モードの流量になったら台数制御盤が他のターボ圧縮機の運転状態を調べ、運転中の他のターボ圧縮機が最大運転モードまたはミニマム運転モードであればそのターボ圧縮機を流量調節機に定めそれまでの流量調節機をアンロード運転モードにし、アンロード運転が所定時間継続したターボ圧縮機があれば運転を停止することを特徴とする請求項1に記載のターボ圧縮機システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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