説明

ターボ機械

【課題】軸受を潤滑するためにグリースを用いる場合であっても、軸受からグリースが過度に排出されることを防止し、軸受に適切な量のグリースを保持し、軸受の円滑な回転を維持できるターボ機械を提供する。
【解決手段】本発明に係るターボ機械S1は、少なくとも駆動装置2が配置される第1空間55aと、第1空間55aと区画され且つ軸受4を介して第1空間55aに連通される第2空間51e,54aと、を有するケーシング5と、第1空間55a内を吸引する吸引装置6と、を備え、ケーシング5には、軸受4と異なる位置に配されるとともに第1空間55aと第2空間51e,54aとを互いに連通させて軸受4を通る気体の流量を調整する連通孔53a,54b,56bが形成されている、という構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、気体を流動させるターボブロア等のターボ機械が使用されている。このようなターボ機械には、回転することで気体を流動させるインペラ(回転翼)と、インペラを回転駆動させるモータ等(駆動装置)と、モータの回転駆動力をインペラに伝達する回転軸と、を備えている。インペラ、モータ及び回転軸は、ターボ機械の外形を成すケーシング内に収容されている。ケーシング内には、インペラが配置されるインペラ配置空間と、インペラ配置空間と区画されるとともにモータが配置されるモータ配置空間とが形成されている。回転軸は、ケーシングに設けられる軸受(例えば転がり軸受)を介して回転自在に支持されている。なお、インペラ配置空間とモータ配置空間とは、軸受を介して互いに連通されている。
【0003】
回転軸の円滑な回転を維持するため、軸受には潤滑油が供給されている。また、潤滑油を貯留するためのタンクを省略又は小型化でき、メンテナンスの手間を削減できる等の理由から、軸受にグリースを供給するグリース潤滑が使用されつつある(例えば特許文献1参照)。グリースとは、基油となる潤滑油に増ちょう材を分散させて半固体状にした潤滑剤である。グリース潤滑の方法としては、ターボ機械の使用開始時にグリースを供給した後は無給油とする方法や、ターボ機械にグリース供給装置を設置し、例えば一定時間毎にグリースを供給する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−216437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようにインペラ配置空間及びモータ配置空間は軸受を介して互いに連通されているため、軸受に供給されたグリースの潤滑油が揮発し、インペラ配置空間内においてインペラが流動させる気体内に混入する虞がある。例えば、ターボ機械が、ガスレーザー(炭酸ガスレーザー等)において使用されるレーザーガスを流動・循環させるために使用される場合には、レーザーガス内に揮発した潤滑油が混入すると、ガスレーザーの発振性能等に影響を与える虞がある。そのため、モータが配置されているモータ配置空間内を吸引ポンプ等で吸引して、軸受を介してインペラ配置空間からモータ配置空間に向かう気体の流れを作り出し、揮発した潤滑油のインペラ配置空間への流入を防止する対策が採られている。
【0006】
しかしながら、軸受の潤滑方法としてグリース潤滑を用いる場合には、上述したようにグリースは半固体状となっており、インペラ配置空間からモータ配置空間に向かう気体の流動に伴って、グリースが軸受内から排出され除去されてしまう可能性がある。グリースが軸受から排出・除去されると、軸受に対する適切な潤滑が行われなくなり、軸受の焼き付き等が発生し、結果としてターボ機械を損傷させてしまうという虞があった。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、軸受を潤滑するためにグリースを用いる場合であっても、軸受からグリースが過度に排出されることを防止し、軸受に適切な量のグリースを保持し、軸受の円滑な回転を維持できるターボ機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明に係るターボ機械は、回転することで気体を流動させるインペラと、インペラを回転駆動させる駆動装置と、駆動装置の回転駆動力をインペラに伝達する回転軸と、回転軸を回転自在に支持する軸受と、を備えるターボ機械であって、少なくとも駆動装置が配置される第1空間と、第1空間と区画され且つ軸受を介して第1空間に連通される第2空間と、を有するケーシングと、第1空間内を吸引する吸引装置と、を備え、ケーシングには、軸受と異なる位置に配されるとともに第1空間と第2空間とを互いに連通させて軸受を通る気体の流量を調整する連通孔が形成されている、という構成を採用する。
【0009】
吸引装置の作動によって、第1空間内が吸引される。この吸引により、第2空間の気圧に比べて第1空間の気圧は低くなる。そのため、軸受を介して第2空間から第1空間に向かう気体の流れが生じる。このような流れが生じることで、グリースの潤滑油(基油)が揮発して第2空間に流入することを防止できる。もっとも、第1空間と第2空間との間の気圧の差が大きくなると、軸受を通る気体の流量が増加する。気体の流量が増加すると、気体の流動に伴って、軸受に供給されているグリースが軸受から排出され除去される虞がある。しかしながら、本発明では、第1空間と第2空間とを互いに連通させる連通孔がケーシングに形成されており、第2空間の気体は、軸受だけでなく連通孔をも通りつつ第1空間に流入する。軸受を通る気体の流量を調整する連通孔が形成されることで、軸受を通る気体の流量は適切に維持される。
【0010】
また、本発明に係るターボ機械は、ケーシングが、第1空間を有するケーシング本体と、ケーシング本体に着脱自在に設置されるとともに軸受を支持する軸受支持部と、を具備し、第1空間及び第2空間は軸受支持部によって区画され、連通孔は軸受支持部に形成されている、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明に係るターボ機械は、第2空間が、インペラとケーシングとの間に形成される空間である、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明に係るターボ機械は、第2空間が、軸受に供給されたグリースが排出される空間である、という構成を採用する。
【0013】
また、本発明に係るターボ機械は、連通孔の孔径を調整する孔径調整部を備える、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、第2空間の気体は、軸受だけでなく連通孔をも通りつつ第1空間に流入する。軸受を通る気体の流量を調整する連通孔が形成されることで、軸受を通る気体の流量は適切に維持される。よって、軸受を潤滑するためにグリースを用いる場合であっても、軸受からグリースが過度に排出されることを防止し、軸受に適切な量のグリースを保持し、軸受の円滑な回転を維持できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるターボブロアの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるターボブロアの概略構成を示す分解断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態におけるターボブロアの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図3を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態におけるターボブロアS1の概略構成を示す断面図である。
ターボブロアS1は、外部から導入された気体を圧縮して流動させるターボ機械である。ターボブロアS1は、例えばガスレーザー(炭酸ガスレーザー等)で使用される。ガスレーザーで使用されるターボブロアS1は、ガスレーザーの媒体であるレーザーガスを、レーザー発振器に向けて流動させるために用いられる。
ターボブロアS1は、インペラ1と、モータ2(駆動装置)と、回転軸3と、軸受4と、ケーシング5と、吸引ポンプ6(吸引装置)と、を備えている。なお、図1及び図2おいて、回転軸3の軸線方向を鉛直方向とし、インペラ1が設けられている側を上側とする。
【0018】
インペラ1は、回転することで気体を流動させる回転翼である。また、インペラ1は、回転することで、その回転軸線方向での一方側から気体を吸引し、吸引した気体を径方向外側に送り出すものである。
【0019】
モータ2は、インペラ1を回転させる駆動力を発生する駆動装置である。本実施形態におけるモータ2は、誘導モータであって、かご形に組まれたコア(鉄心)からなるロータ21と、ロータ21を囲んで設けられる巻線からなるステータ22とを備えている。モータ2は、ステータ22に電力が供給されることで、ロータ21が回転する構成となっている。なお、モータ2は、誘導モータ以外のモータであってもよい。さらに、モータ以外の駆動装置を用いてもよい。
【0020】
回転軸3は、モータ2の回転駆動力をインペラ1に伝達するための軸部材である。回転軸3は、鉛直方向に延在して設けられ、ロータ21に挿通されて固定されている。また、回転軸3の上側端部には、インペラ1が固定されている。回転軸3とインペラ1との固定方法としては、締結部材による締結や溶接が例示される。
【0021】
軸受4は、回転軸3を回転自在に支持するものである。軸受4は、ケーシング5に設置されている。すなわち、回転軸3は、軸受4を介してケーシング5に回転自在に支持されている。軸受4は、転がり軸受であり、より詳細にはアンギュラ玉軸受である。なお、軸受4はアンギュラ玉軸受に限定されず、深溝玉軸受や円錐ころ軸受等の、ラジアル荷重及びスラスト荷重をいずれも支持できる軸受を用いてもよい。
本実施形態における軸受4としては、上側軸受41(軸受)と下側軸受42(軸受)とが用いられている。上側軸受41は、回転軸3の上側の端部、すなわちインペラ1側の端部を支持している。下側軸受42は、回転軸3の下側の端部、すなわちインペラ1と逆側の端部を支持している。本実施形態の上側軸受41及び下側軸受42には、グリースが供給されている。このグリースは、上側軸受41及び下側軸受42の円滑な回転を維持するためのものであり、ターボブロアS1の製造時に供給されるのみで使用中には供給されない構成となっている。なお、上側軸受41を、グリースの外部への排出を抑制できるシール付き軸受としてもよい。このようなシールは、上側軸受41における転動体の、上側及び下側のいずれにも設けられることが好ましい。
【0022】
ケーシング5は、ターボブロアS1の外形を成すとともに、インペラ1、モータ2及び回転軸3を収容するためのものである。ケーシング5は、スクロールケーシング51と、ケーシング本体52と、上側軸受支持部53(軸受支持部)と、下側軸受支持部54(軸受支持部)と、を具備している。
【0023】
スクロールケーシング51は、インペラ1を囲んで設けられるものである。スクロールケーシング51には、インペラ配置空間51aと、吸入口51bと、ディフューザ51cと、スクロール室51dと、インペラ背面空間51e(第2空間)とが形成されている。
インペラ配置空間51aは、スクロールケーシング51内に形成され、インペラ1が配置される空間である。また、インペラ配置空間51aは、インペラ1の回転に伴って気体が流動する空間である。吸入口51bは、インペラ1に向けて気体が導入される箇所である。ディフューザ51cは、インペラ1を囲んで環状に形成されており、インペラ1が回転することで送り出された気体が導入される流路である。ディフューザ51cに導入された気体は圧縮され、その圧力は上昇する。スクロール室51dは、インペラ1を囲んで環状に形成されており、ディフューザ51cと連通して設けられる流路である。スクロール室51dには不図示の吐出口が設けられており、インペラ1の回転によって送り出された気体はディフューザ51c及びスクロール室51dを介して、この吐出口からケーシング5の外部に供給される。
インペラ背面空間51eは、インペラ1とケーシング5との間に形成される空間である。より詳細には、インペラ背面空間51eは、インペラ1の背面側(インペラ1における吸入口51bの逆側)と、ケーシング5における上側軸受支持部53との間に形成される空間である。なお、上述した上側軸受41は、インペラ背面空間51eに臨む位置に設けられている。
【0024】
ケーシング本体52は、モータ2及び回転軸3を収容するものであって、モータケーシング55と、ベースプレート56とを具備している。
【0025】
モータケーシング55は、モータ2を収容するものである。モータケーシング55には、上述したスクロールケーシング51が締結ボルト等を用いて着脱自在に接続されている。モータケーシング55には、モータ配置空間55a(第1空間)と、コネクタ55bと、水冷ジャケット55cと、吸引口55dとが形成されている。
【0026】
モータ配置空間55aは、モータケーシング55内に形成され、モータ2が配置される空間である。なお、モータ配置空間55aは、上側軸受41を介してインペラ背面空間51eと連通している。
コネクタ55bは、モータ2に電力を供給する電源ケーブル(図示せず)との接続に用いられるものである。また、コネクタ55bとステータ22とは、所定の配線によって電気的に接続されている。なお、ターボブロアS1がガスレーザー等で使用される場合には、ケーシング5を密閉構造とする必要があるため、コネクタ55bには接続部分を密閉できるハーメチックコネクタが用いられる。
水冷ジャケット55cは、モータ2を冷却するためのものであって、モータ2を回転軸線周りで囲んで設けられている。
吸引口55dは、モータケーシング55を貫通して形成される開口部であって、モータ配置空間55aを吸引するための吸引ポンプ6が接続される箇所である。
【0027】
ベースプレート56は、モータケーシング55の下部に締結ボルト等を用いて固定されており、ターボブロアS1の台座部として用いられるものである。なお、本実施形態においては、モータケーシング55とベースプレート56とを別体で構成したが、これに限定されずケーシング本体52を一体的に成形してもよい。
【0028】
上側軸受支持部53は、上側軸受41を支持するものであり、ケーシング本体52のモータケーシング55に締結ボルト等を用いて着脱自在に設置されている。すなわち、上側軸受41は、上側軸受支持部53に設置されている。なお、上側軸受支持部53は、モータケーシング55に形成された凹部55e内に設置されている。
上側軸受支持部53は、スクロールケーシング51内のインペラ背面空間51eと、モータケーシング55内のモータ配置空間55aとの間に設けられている。すなわち、インペラ背面空間51eとモータ配置空間55aとは、上側軸受支持部53によって区画されている。上側軸受支持部53は、円板状に成形された部材である。上側軸受支持部53のモータケーシング55に対する着脱の方向は、鉛直方向と同一である。上側軸受支持部53の中央部には回転軸3が隙間をあけて貫通しており、上側軸受41も上側軸受支持部53の中央部に設置されている。
【0029】
上側軸受支持部53には、上側軸受41と異なる位置に配されるとともにインペラ背面空間51eとモータ配置空間55aとを互いに連通させて上側軸受41を通る気体の流量を調整する上側連通孔53a(連通孔)が形成されている。なお、上側連通孔53aの孔径を調整する孔径調整部(図示せず)が設けられていてもよい。
【0030】
下側軸受支持部54は、下側軸受42を支持するものであり、ケーシング本体52のベースプレート56に着脱自在に設置されている。すなわち、下側軸受42は、下側軸受支持部54に設置されている。なお、下側軸受支持部54は、ベースプレート56に形成された凹部56a内に設置されている。下側軸受支持部54のベースプレート56に対する着脱の方向は、鉛直方向と同一である。
下側軸受支持部54は、有底の円筒状に成形された部材であり、その内部には支持部空間54a(第2空間)が形成されている。すなわち、支持部空間54aとモータ配置空間55aとは、下側軸受支持部54によって区画されている。下側軸受支持部54の上側開口部からは、支持部空間54a内に回転軸3の下側端部が突入して設けられている。下側軸受42は、下側軸受支持部54の上側開口部の近傍に設置されている。そのため、支持部空間54aは、下側軸受42を介してモータ配置空間55aに連通している。なお、支持部空間54aは、下側軸受42から排出された排グリースが貯留される貯留部となっている。
【0031】
下側軸受支持部54には、下側軸受42と異なる位置に配されるとともに下側軸受支持部54を貫通して設けられる第1下側連通孔54b(連通孔)が形成されている。なお、第1下側連通孔54bの孔径を調整する孔径調整部(図示せず)が設けられていてもよい。
ベースプレート56には、第1下側連通孔54bと協働して支持部空間54aとモータ配置空間55aとを互いに連通させる第2下側連通孔56b(連通孔)が形成されている。なお、凹部56aの深さが浅く、第1下側連通孔54bのみで支持部空間54aとモータ配置空間55aとが互いに連通される場合には、第2下側連通孔56bを設けずともよい。
また、より詳細には、下側軸受支持部54は下側に向かうに従い僅かにその径が小さくなる形状となっており、下側軸受支持部54と凹部56aとの間には隙間54cが形成されている。よって、支持部空間54aとモータ配置空間55aとは、第1下側連通孔54b、隙間54c及び第2下側連通孔56bを介して、互いに連通されている。隙間54cが形成されていることで、下側軸受支持部54が回転軸3の回転軸線周りで回転しどのような姿勢になったとしても、第1下側連通孔54bと第2下側連通孔56bとの間の連通を確保することができる。
【0032】
下側軸受支持部54の支持部空間54a内には、下側軸受42を上側に向かって付勢する予圧バネ54dが設けられている。なお、下側軸受42は、回転軸3を介して上側軸受41と連結されている。そのため、予圧バネ54dの上側への付勢力は、下側軸受42だけでなく上側軸受41にも伝わり、上側軸受41及び下側軸受42のいずれに対しても鉛直方向での付勢力(すなわち予圧)を加えられる構成となっている。上側軸受41及び下側軸受42はアンギュラ玉軸受であることから、鉛直方向で適切な予圧が加えられることで、転動体(玉)が適切な位置に保持され、回転に伴う振動や騒音等が低減される。
【0033】
次に、ターボブロアS1の分解構造を、より詳細に説明する。図2は、本実施形態におけるターボブロアS1の概略構成を示す分解断面図である。
【0034】
上述したように、上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54は、ケーシング本体52に着脱自在に設置されている。また、図2に示すように、インペラ1、ロータ21及び回転軸3は一体的に固定されており、回転軸3は上側軸受41及び下側軸受42を介して上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54に回転自在に支持されている。そのため、インペラ1、ロータ21、回転軸3、上側軸受41、下側軸受42、上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54は、一体的に組み立てられたモジュール部7として構成されている。
例えばターボブロアS1のメンテナンス時においては、ケーシング本体52からスクロールケーシング51を離脱させ、上側軸受支持部53をケーシング本体52に固定している締結ボルト等を取り外すのみで、モジュール部7をケーシング本体52から離脱させることが可能となっている。
【0035】
また、上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54の、ケーシング本体52に対する着脱の方向は、いずれも鉛直方向と同一である。そのため、モジュール部7のケーシング本体52に対する着脱の方向は、鉛直方向と同一である。
【0036】
続いて、本実施形態におけるターボブロアS1の作用を説明する。
吸引ポンプ6の作動によって、モータ配置空間55a内が吸引される。この吸引により、インペラ背面空間51eの気圧に比べてモータ配置空間55aの気圧は低くなる。そのため、上側軸受41を介してインペラ背面空間51eからモータ配置空間55aに向かう気体の流れが生じる。このような気体の流れが生じることで、グリース及びその潤滑油(基油)がインペラ背面空間51eやディフューザ51c、スクロール室51dに飛散・流入することを抑制できる。また、上側軸受41としてシール付き軸受を用いた場合には、グリース及びその潤滑油のインペラ背面空間51e側への飛散・流入をより抑制できる。
もっとも、モータ配置空間55aとインペラ背面空間51eとの間の気圧の差が大きくなると、上側軸受41を通る気体の流量が増加する。気体の流量が増加すると、気体の流動に伴って、上側軸受41に供給されているグリースが上側軸受41からモータ配置空間55aに向けて排出され除去される虞がある。
【0037】
また、モータ配置空間55aは、下側軸受42を介して支持部空間54aと連通されている。モータ配置空間55aと支持部空間54aとの間の気圧の差が大きくなると、上側軸受41と同様に、下側軸受42に供給されているグリースが下側軸受42からモータ配置空間55aに向けて排出され除去される虞がある。
グリースが除去されると、上側軸受41及び下側軸受42を潤滑できなくなり、それらの円滑な回転が確保できず、結果として上側軸受41及び下側軸受42の焼き付き等が生じる虞がある。
【0038】
しかしながら、本実施形態では、モータ配置空間55aとインペラ背面空間51eとを互いに連通させる上側連通孔53aが、ケーシング5に形成されている。そのため、インペラ背面空間51eの気体は、上側軸受41だけでなく上側連通孔53aをも通ってモータ配置空間55aに流入する。上側軸受41を通る気体の流量を調整する上側連通孔53aが形成されることで、上側軸受41を通る気体の流量は適切に維持される。
【0039】
また、モータ配置空間55aと支持部空間54aとを互いに連通させる第1下側連通孔54b及び第2下側連通孔56bが、ケーシング5に形成されている。そのため、支持部空間54aの気体は、下側軸受42だけでなく第1下側連通孔54b及び第2下側連通孔56bをも通ってモータ配置空間55aに流入する。下側軸受42を通る気体の流量を調整する第1下側連通孔54b及び第2下側連通孔56bが形成されることで、下側軸受42を通る気体の流量は適切に維持される。
【0040】
よって、上側軸受41及び下側軸受42を潤滑するためにグリースを用いる場合であっても、上側軸受41及び下側軸受42からグリースが過度に排出されることを防止でき、上側軸受41及び下側軸受42に適切な量のグリースを保持できる。また、上側軸受41としてシール付き軸受を用いた場合には、上側軸受41からモータ配置空間55aへのグリースの排出をより抑制することができる。
【0041】
また、上側連通孔53a及び第1下側連通孔54bは、上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54にそれぞれ形成されている。上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54は、いずれもモジュール部7の構成要素であることから、例えばターボブロアS1のメンテナンス時において、モジュール部7をケーシング本体52から離脱させたときに、上側連通孔53a及び第1下側連通孔54bに対するメンテナンスを実施できる。なお、上側連通孔53a及び第1下側連通孔54bに、その孔径を調整できる孔径調整部が設けられる場合には、モジュール部7のケーシング本体52からの離脱時に、それぞれの孔径を調整することが可能となる。
【0042】
したがって、本実施形態によれば、上側軸受41及び下側軸受42を潤滑するためにグリースを用いる場合であっても、上側軸受41及び下側軸受42からグリースが過度に排出されることを防止し、上側軸受41及び下側軸受42に適切な量のグリースを保持し、上側軸受41及び下側軸受42の円滑な回転を維持できるという効果がある。
【0043】
〔第2実施形態〕
図3は、本実施形態におけるターボブロアS2の概略構成を示す断面図である。なお、図3において、図1に示す第1の実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
上側軸受支持部53には、グリース受け皿57が設けられている。グリース受け皿57は、上側軸受41から排出される排グリースを貯溜するための部材である。
なお、本実施形態の上側軸受41としてシール付き軸受を用いる場合には、シールは上側軸受41における転動体の上側のみに設けられる。このようなシール付き軸受を用いた場合には、グリース及びその潤滑油のインペラ背面空間51e側への飛散・流入をより抑制できる。
【0045】
ターボブロアS2におけるケーシング5には、上側軸受41及び下側軸受42に対してグリースを供給するための、上側グリース流路58と下側グリース流路59とが形成されている。
【0046】
上側グリース流路58は、第1上側流路55fと、第2上側流路53bとを有している。
第1上側流路55fは、ケーシング本体52のモータケーシング55に形成されている。第2上側流路53bは、上側軸受支持部53に形成されている。第1上側流路55f及び第2上側流路53bが形成されていることで、外部から供給されるグリースを上側軸受41に供給できる構成となっている。
【0047】
下側グリース流路59は、第1下側流路56cと、第2下側流路54eとを有している。
第1下側流路56cは、ケーシング本体52のベースプレート56に形成されている。第2下側流路54eは、下側軸受支持部54に形成されている。第1下側流路56c及び第2下側流路54eが形成されていることで、外部から供給されるグリースを下側軸受42に供給できる構成となっている。
【0048】
また、ターボブロアS2は、グリース供給装置8を備えている。
グリース供給装置8は、ケーシング5の外部に設置され、上側軸受41及び下側軸受42にグリースを供給するためのものである。グリース供給装置8の内部には、グリースが充填された一対のシリンジ81が収容されている。また、グリース供給装置8の内部には、シリンジ81を動作させる駆動装置が設けられており、この駆動装置の作動によってシリンジ81が動作し、シリンジ81内のグリースを供給できる構成となっている。
【0049】
一対のシリンジ81には、それぞれ第1供給管82及び第2供給管83が接続されている。第1供給管82は、一方のシリンジ81と、モータケーシング55の第1上側流路55fとを互いに連結している。第2供給管83は、他方のシリンジ81と、ベースプレート56の第1下側流路56cとを互いに連結している。すなわち、グリース供給装置8の作動によって、ターボブロアS2における上側軸受41及び下側軸受42にグリースを供給することが可能となっている。
【0050】
続いて、本実施形態におけるターボブロアS2の作用を説明する。
インペラ1を回転させて気体を圧送するために、モータ2は回転軸3を高速で回転させる。そのため、上側軸受41及び下側軸受42は高速で回転し、軸受に供給されたグリースは攪拌される。また、インペラ1における流動の損失やモータ2の動作を原因として、熱が生じる。この熱は上側軸受41及び下側軸受42に伝わり、軸受に供給されたグリースの温度は上昇する。
このような回転による攪拌や熱の影響により、グリースが変質・劣化し、劣化したグリースが下方に向けて排出され、基油である潤滑油が枯渇する虞がある。グリースの潤滑油が枯渇すれば、上側軸受41及び下側軸受42の焼き付きが生じる虞がある。
なお、上側軸受41から排出される排グリースは、グリース受け皿57に貯留され、下側軸受42から排出される排グリースは、支持部空間54a内に貯留される。
【0051】
しかしながら、本実施形態におけるターボブロアS2には、グリース供給装置8が設けられ、且つ上側軸受41及び下側軸受42に対してグリースを供給するための上側グリース流路58及び下側グリース流路59が形成されている。よって、一定量のグリースを定期的に、上側軸受41及び下側軸受42に対して供給することができ、上側軸受41及び下側軸受42の円滑な回転を維持しつつ焼き付き等の不具合を防止できるという効果がある。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…インペラ、2…モータ(駆動装置)、3…回転軸、4…軸受、41…上側軸受(軸受)、42…下側軸受(軸受)、5…ケーシング、51e…インペラ背面空間(第2空間)、52…ケーシング本体、53…上側軸受支持部(軸受支持部)、53a…上側連通孔(連通孔)、54…下側軸受支持部(軸受支持部)、54a…支持部空間(第2空間)、54b…第1下側連通孔(連通孔)、55a…モータ配置空間(第1空間)、56b…第2下側連通孔(連通孔)、6…吸引ポンプ(吸引装置)、S1,S2…ターボブロア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することで気体を流動させるインペラと、前記インペラを回転駆動させる駆動装置と、前記駆動装置の回転駆動力を前記インペラに伝達する回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、を備えるターボ機械であって、
少なくとも前記駆動装置が配置される第1空間と、前記第1空間と区画され且つ前記軸受を介して前記第1空間に連通される第2空間と、を有するケーシングと、
前記第1空間内を吸引する吸引装置と、を備え、
前記ケーシングには、前記軸受と異なる位置に配されるとともに前記第1空間と前記第2空間とを互いに連通させて前記軸受を通る気体の流量を調整する連通孔が形成されていることを特徴とするターボ機械。
【請求項2】
請求項1に記載のターボ機械において、
前記ケーシングは、前記第1空間を有するケーシング本体と、前記ケーシング本体に着脱自在に設置されるとともに前記軸受を支持する軸受支持部と、を具備し、
前記第1空間及び前記第2空間は、前記軸受支持部によって区画され、
前記連通孔は、前記軸受支持部に形成されていることを特徴とするターボ機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のターボ機械において、
前記第2空間は、前記インペラと前記ケーシングとの間に形成される空間であることを特徴とするターボ機械。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のターボ機械において、
前記第2空間は、前記軸受に供給されたグリースが排出される空間であることを特徴とするターボ機械。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のターボ機械において、
前記連通孔の孔径を調整する孔径調整部を備えることを特徴とするターボ機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−17712(P2012−17712A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156676(P2010−156676)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】