説明

ターミナル、モータ及び電気機器

【課題】アルミ線と銅線とを導通接続する小型化されたターミナル(接続端子)を得ること。
【解決手段】アルミ板と銅板とを圧着一体化し短冊状に形成され、前記銅板の表面には錫膜が形成され、中間部で折り曲げて略L字形に形成したクラッド材からなるターミナルであって、一端を前記アルミ板を内側としてJ字形に折り返し該J字形の内側の前記アルミ板にアルミ線を挟み込んで熱カシメし、他端の前記銅板の錫膜に銅線をハンダ付けする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ電線と銅電線とを導通接続するターミナル(接続端子)、このターミナルを備えたモータ及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性の合成樹脂による電線接続部材の内部空間内に配置されたアルミ電線の心線部と銅電線の心線部とが直接接触しない状態で挿入配設されると共に、内部空間内に導電性樹脂が充填され、該導電性樹脂を介してアルミ電線の心線部と銅電線の心線部とが電気的に導通接続されてなる電食を防止するアルミ電線の接続構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、アルミ電線が接続される端子後端部をアルミ又はアルミ合金で形成し、相手方端子と接続される端子先端部を銅又は銅合金で形成し、前記端子後端部と端子先端部を接合して接合端子を構成し、この接合端子をコネクタハウジングに組み込み、前記端子後端部と端子先端部との接合部をコネクタハウジング内に充填した絶縁体で封止したアルミ電線用コネクタが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−229184号公報
【特許文献2】特開2004−111058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、アルミ電線(以下、アルミ線という。)と銅電線(以下、銅線という。)の接続部を封止するコネクタハウジングを必要とする。そのため、接続部が大型化してしまう、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アルミ線と銅線とを導通接続する小型化されたターミナル(接続端子)、このターミナルを備えたモータ及び電気機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、アルミ板と銅板とを圧着一体化し短冊状に形成されたクラッド材からなるターミナルであって、一端を前記アルミ板を内側としてJ字形に折り返し該J字形の内側の前記アルミ板にアルミ線を挟み込んで熱カシメし、他端の前記銅板に銅線をハンダ付けすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルミ線と銅線とを導通接続する小型化されたターミナル、このターミナルを備えたモータ及び電気機器が得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1−1】図1−1は、本発明にかかるモータの実施の形態を示す部分断面図である。
【図1−2】図1−2は、実施の形態1のターミナルプレートを示す正面図である。
【図2】図2は、実施の形態1のターミナルを示す斜視図である。
【図3】図3は、実施の形態2のターミナルを示す斜視図である。
【図4】図4は、実施の形態3のターミナルを示す斜視図である。
【図5−1】図5−1は、実施の形態4のターミナルを示す斜視図である。
【図5−2】図5−2は、実施の形態4のターミナル変形例を示す斜視図である。
【図6】図6は、実施の形態5のターミナルを示す斜視図である。
【図7】図7は、実施の形態6のターミナルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかるターミナル、モータ及び電気機器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1−1は、本発明にかかるモータの実施の形態を示す部分断面図であり、図1−2は、実施の形態1のターミナルプレートを示す正面図であり、図2は、実施の形態1のターミナルを示す斜視図である。
【0012】
図1−1及び図1−2に示すように、実施の形態のモータ90は、ハウジング11と、ハウジング11の中心に回転自在に支持された回転軸12と、回転軸12に支持された回転子13と、ハウジング11内に保持されティース14aにコイル15が巻回された固定子14と、固定子14の一側に配置されたターミナルプレート16と、ターミナルプレート16上に固定されたターミナル17と、を備えている。
【0013】
L字形片に形成されたターミナル17は、ターミナルプレート16への圧入、若しくは、ターミナルプレートに設けられた固定ツメにより、ターミナルプレートに固定されている。コイル15を形成するアルミ線18とリード銅線(以下、銅線という。)19は、ターミナル17を介して接続される。
【0014】
図2に示すように、実施の形態1のターミナル17は、銅板(銅合金を含む。以下の実施の形態も同じ。)17aとアルミ板(アルミ合金を含む。以下の実施の形態も同じ。)17bとを圧着一体化したクラッド材を短冊状に打ち抜き、中間部で銅板17aを内側として略L字形に折り曲げてL字形片とし、一端をアルミ板17bを内側としてJ字形に折り返し、J字形の内側のアルミ板17bにアルミ線18の端末を挟み込んで熱カシメ(ヒュージング)したものである。アルミ線18の絶縁皮膜には、溶融温度が450℃以下のものを用いている。
【0015】
熱カシメ(ヒュージング)とは、J字形に折り返したターミナル17の折り返し部を溶接用電極で挟んで通電し、折り返し部を加熱してアルミ線18の表面の酸化被膜を破壊、除去し、アルミ線18とターミナル17のアルミ板17bとを抵抗溶接とカシメにより接合するものである。一方、銅線19の端末は、ターミナル17の銅板17aにハンダ付けする。クラッド材のアルミ板17bと銅板17aの境界面には、合金層が形成され、異種金属間の電食は発生しない。
【0016】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2のターミナルを示す斜視図である。図3に示すように、実施の形態2のターミナル27は、表面に、メッキ等により錫膜27cを形成した銅板17aとアルミ板17bとを圧着一体化したクラッド材を短冊状に打ち抜き、中間部で銅板17aを内側にしてL字形に折り曲げてL字形片とし、一端をアルミ板17bを内側にしてJ字形に折り返して形成したものである。実施の形態2のターミナル27は、錫膜27cで銅板17aを覆っているので、銅板17aの酸化を防止し、ハンダ濡れ性を向上することができる。
【0017】
実施の形態1及び2のターミナル17、27によれば、アルミ板17bと銅板17aを圧着一体化したクラッド材を用いているため、モータ製造工程で異種金属接合を行なう必要がなく、新規設備、技術の必要もなく、信頼性の高いモータを製造することができる。また、高価なアルミ用ハンダを用いないので、低コストである。さらに、アルミ線18と銅線19の接続部(ターミナル17、27)を封止するコネクタハウジングを必要とせず、接続部を小型化することができる。
【0018】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3のターミナルを示す斜視図である。図4に示すように、実施の形態3のターミナル37は、銅板17aとアルミ板17bとを圧着一体化したクラッド材を短冊状に打ち抜き、一側をアルミ板17bを内側としてJ字形に折り返し、同一方向を向くアルミ線18の接続面(アルミ面)と銅線19の接続面(銅面)を設けている。なお、一側を銅板17aを内側としてJ字形に折り返してもよい。
【0019】
アルミ線18の端末とアルミ板(アルミ面)17bは、抵抗溶接(ダイレクト又はパラレル方式のスポット溶接)により接合され、銅線19の端末と銅板(銅面)17aは、ハンダ付けにより接合されている。なお、実施の形態2と同様に、銅板17aの表面に、メッキ等により錫膜27cを形成してもよい。
【0020】
ターミナル37は、アルミ側スポットのターミナル37への溶け込み量を考慮し、通常、クラッド材厚さに対しアルミ板17bの厚さを80%程度、銅板17aの厚さを20%程度に設定する。この比率は、接合条件に合わせて変更してもよい。実用上のクラッド材厚さは、0.5mm(銅板:0.1〜0.2mm、アルミ板:0.3〜0.4mm)程度である。上記の、アルミ板17bの厚さと銅板17aの厚さを、アルミ線18又は銅線19との接合時の溶け込み深さに応じて設定することは、以下に説明する実施の形態4及び6のターミナルに適用してもよい。
【0021】
実施の形態3のターミナル37は、クラッド材をJ字形に折り返して形成され、アルミ線18と銅線19とを、同一方向を向く面に夫々接合することができ、ワークを反転することなく、同一方向から接合作業を行なうことができ、作業性がよい。また、ターミナル37は、形状が立体的でなく平面的であるため、さらなる小型化が可能である。
【0022】
実施の形態4.
図5−1は、実施の形態4のターミナルを示す斜視図であり、図5−2は、実施の形態4のターミナルの変形例を示す斜視図である。図5−1に示すように、実施の形態4のターミナル47は、突合せ型クラッド材から成り、アルミ板17bとアルミ線18とは、抵抗溶接により接合され、銅板17aとリード銅線19とは、ハンダ付けにより接合される。また、図5−2に示すように、アルミ板17b(又は銅板17a)の一部を薄く形成し、薄く形成された部分に薄い銅板17a(又はアルミ板17b)を圧着一体化したクラッド材を用いてもよい。実施の形態4のターミナル47は、アルミ線18とリード銅線19とを、折り返しのない同一面へ夫々接合することができ、実施の形態3のターミナル37以上に小型化が可能である。なお、実施の形態2と同様に、銅板17aの表面に、メッキ等により錫膜27cを形成してもよい。
【0023】
実施の形態5.
図6は、実施の形態5のターミナルを示す斜視図である。図6に示すように、実施の形態5のターミナル57は、銅板17aとアルミ板17bとを圧着一体化したクラッド材を短冊状に打ち抜き、一端をアルミ板17bを内側にしてJ字形に折り返し、J字形の内側のアルミ板17bにアルミ線18の端末を挟み込んで機械的にカシメ、また、他端を銅板17aを内側にしてJ字形に折り返し、J字形の内側の銅板17aにリード銅線19の端末を挟み込んで機械的にカシメたものである。実施の形態5のターミナル57は、モータ製造工程で異種金属接合を行なう必要がない。
【0024】
実施の形態6.
図7は、実施の形態6のターミナルを示す斜視図である。図7に示すように、実施の形態6のターミナル67は、銅板17aとアルミ板17bとを圧着一体化したクラッド材を中央部が両端部よりも幅の狭い短冊状に打ち抜き、一端をアルミ板17bを内側としてJ字形に折り返し、同一方向を向く面に、アルミ線18の接続面とリード銅線19の接続面を設けている。なお、一端を銅板17aを内側としてJ字形に折り返してもよい。
【0025】
アルミ線18の端末とアルミ板17bとの接合、及び、リード銅線19の端末と銅板17aとの接合は、パラレル方式のスポット溶接としている。この場合、ターミナルとしてアルミ材単体を用いるよりも、アルミ板17bと銅板17aのクラッド材を用いた方が、20%程度導電率が高い。
【0026】
それ故、溶接時に大電流を流すためのターミナル67の断面積が少なくて済み、従来のターミナルよりも幅を狭くすることができ、ターミナル67の括れ部分に、モータ内結線、温度ヒューズ等の電気用部品の配置スペース等を確保することができ、モータの小型化も可能である。
【0027】
スポット溶接の接合条件については、形状に合わせて電流一定制御、電力一定制御等を使い分け、また、溶接時のアルミ線18のつぶれ過ぎを防ぐため、電極の下死点制御を行うとよい。
【0028】
なお、以上説明した実施の形態1〜6のターミナルは、モータ以外の電気機器にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明にかかるターミナルは、固定子コイルをアルミ線で形成した小型誘導機モータ及びその他の電気機器に有用である。
【符号の説明】
【0030】
11 ハウジング
12 回転軸
13 回転子
14 固定子
14a ティース
15 コイル
16 ターミナルプレート
17、27、37、47、57、67 ターミナル
17a 銅板
17b アルミ板
18 アルミ線
19 銅線(リード銅線)
27c 錫膜
90 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ板と銅板とを圧着一体化し短冊状に形成されたクラッド材からなるターミナルであって、
一端を前記アルミ板を内側としてJ字形に折り返し該J字形の内側の前記アルミ板にアルミ線を挟み込んで熱カシメし、他端の前記銅板に銅線をハンダ付けすることを特徴とするターミナル。
【請求項2】
前記クラッド材を中間部で折り曲げ、略L字形に形成したことを特徴とする請求項1に記載のターミナル。
【請求項3】
アルミ板と銅板とを圧着一体化し短冊状に形成されたクラッド材からなるターミナルであって、
一端をJ字形に折り返して同一方向を向くアルミ面と銅面を形成し、前記アルミ面にはアルミ線を抵抗溶接し、前記銅面には銅線をハンダ付けすることを特徴とするターミナル。
【請求項4】
アルミ板と銅板とを突合わせて一体化し短冊状に形成された突合せ型クラッド材からなるターミナルであって、
前記アルミ板にはアルミ線を抵抗溶接し、前記銅板には銅線をハンダ付けすることを特徴とするターミナル。
【請求項5】
前記銅板の表面に錫膜を形成し該錫膜に前記銅線をハンダ付けすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のターミナル。
【請求項6】
アルミ板と銅板とを圧着一体化し中央部が両端部よりも幅の狭い短冊状に形成されたクラッド材からなるターミナルであって、
一端をJ字形に折り返して同一方向を向く面にアルミ面と銅面を形成し、前記アルミ面とアルミ線との接合、及び、前記銅面側と銅線との接合を、パラレル方式のスポット溶接で行なうことを特徴とするターミナル。
【請求項7】
前記アルミ板の厚さと銅板の厚さを、アルミ線又は銅線との接合時の溶け込み深さに応じて設定することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載のターミナル。
【請求項8】
アルミ板と銅板とを圧着一体化し短冊状に形成されたクラッド材からなるターミナルであって、
一端を前記アルミ板を内側としてJ字形に折り返し該J字形の内側の前記アルミ板にアルミ線を挟み込んでカシメ、他端を前記銅板を内側としてJ字形に折り返し該J字形の内側の前記銅板にリード銅線を挟み込んでカシメることを特徴とするターミナル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のターミナルをターミナルプレートに備え、該ターミナルを介して固定子のコイルのアルミ線とリード銅線とを接続したことを特徴とするモータ。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のターミナルを備え、該ターミナルを介してアルミ線と銅線とを接続したことを特徴とする電気機器。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−257843(P2010−257843A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108229(P2009−108229)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】