説明

ダイアフラムポンプの運転制御方法

【課題】ポンプ部分または供給管路に検出体を配設することなく、ダイアフラムポンプの空運転を検出できるようにして、異物混入や液漏れを防ぎ、供給タンク内の液切れも確実に検出できるダイアフラムポンプの運転制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】空気駆動式のダイアフラムポンプの本体1の排気圧力を検出する空気圧センサ8と、この空気圧センサ8の検出した変動周期Fxを記憶する制御部9を有し、この制御部9は変動周期Fxが基準変動周期Fs以下のときに、空運転と判断してダイアフラムポンプの本体1の運転停止または警告表示をする構成としたことにより、液体の圧力変化に比べて即応する空気圧の変動周期を検出して、迅速かつ確実に空運転に対処できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気を駆動力とするダイアフラムポンプを用いて処理液を移送するときに、空運転となったことを検出して処理液の移送を停止することのできるダイアフラムポンプの運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のダイアフラムポンプの運転制御方法は、処理液の供給を適正に管理して、スループットの向上及び歩留まりの向上を図る運転制御方法が知られていた。
【0003】
以下そのダイアフラムポンプの運転制御方法について図7および図8を用いて説明する。
【0004】
図7に示すように、半導体ウエハWに処理液としてのレジスト103を供給するレジストタンク102とをレジスト供給管路104で接続する。レジスト供給管路104にはダイアフラム105を備えた電動ポンプ101が介設され、この電動ポンプ101のポンプ部分106またはレジスト供給管路104に検出体107を配設し、各検出体107に接続される圧力センサ108からの検出信号を制御手段109に伝達する。
【0005】
そして、図8に示すように、制御手段109は圧力センサ108からの信号により、電動ポンプ101の吐出圧の増加または吸入圧の低下と判断して、フィルタの目詰まりやレジストタンク102内のレジスト103の液切れを検知することができるものである。
【0006】
すなわち、レジストタンク102からレジスト103を供給するときに、ポンプ部分105またはレジスト供給管路104などの処理液の流通部に配設される検出体107によって、レジスト103の吸入圧および吐出圧を検出し、制御手段109は圧力センサ108の信号に基づいて電動ポンプ101の運転を制御する構成となっていた(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3166056号公報(図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来例において、フィルタの目詰まりや供給タンク内の液切れを検出するために、ダイアフラムポンプのポンプ部分、または吸入側と吐出側の供給管路中にそれぞれ検出体を配設する必要があり、ポンプ部分または供給管路を一部加工することにより、加工部分で変形や劣化が起こりやすくなり、さらに異物混入や液漏れが生じると、配管系統や生産設備の故障の原因になるという課題がある。
【0009】
また、粘性の高い処理液を供給する場合は、検出体の反応が鈍くなり、供給タンク内の液切れの検出が難しくなるという課題がある。
【0010】
そこで本発明は、ポンプ部分または供給管路に検出体を配設することなく、ダイアフラムポンプの圧力変動を検出できるようにして、異物混入や液漏れを防ぎ、供給タンク内の液切れの検出も迅速かつ確実に検出できるダイアフラムポンプの運転制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、この目的を達成するために本発明は、天面に開口部を備えた液体容器と、この液体容器の前記開口部を通して挿入される吸引管と、この吸引管の先端部から吸入した処理液を移送する空気駆動式のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動周期Fxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動周期Fxが基準変動周期Fs以下のときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をすることを特徴とするダイアフラムポンプの運転制御方法としたものである。
【0012】
また、天面に開口部を備えた液体容器と、この液体容器の前記開口部を通して挿入される吸引管と、この吸引管の先端部から吸入した処理液を移送する空気駆動式のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動幅Pxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動幅Pxが連続して変動幅Ps以下となるときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をすることを特徴とするダイアフラムポンプの運転制御方法としたものである。
【0013】
また、天面に開口部を備えた液体容器と、この液体容器の前記開口部を通して挿入される吸引管と、この吸引管の先端部から吸入した処理液を移送する空気駆動式のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動周期および変動幅を記憶する制御部を有し、この制御部は変動周期Fxが基準変動周期Fs以下のとき、かつ変動幅Pxが連続して変動幅Ps以下となるときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をすることを特徴とするダイアフラムポンプの運転制御方法としたものである。
【0014】
また、前記制御部は、空運転と判断する回数Mxが少なくとも規定回数Ms回以上のときに、前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をするようにしたものである。
【0015】
また、前記制御部は、前記ダイアフラムの往復動する累計回数Nxと、空運転と判断したときの累計回数ΣMxを記憶し、予め定めた補正係数αを用いて、演算累計回数Nyを Nx+ΣMx×αとして算出し、この演算累計回数Nyが基準累計回数Ns以上のとき、ダイアフラムの寿命と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止またはダイアフラム交換の警告表示をするようにしたものである。
【0016】
そして、これら手段により、初期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明は、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動周期Fxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動周期Fxが基準変動周期Fs以下のときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をする構成としたことにより、空気圧駆動式のダイアフラムポンプの正常運転時の空気圧波形と、液体容器が空になったときの空気圧波形の違いを、その周期の違いとして識別することにより、液体の圧力変化に比べて即応する空気圧の変動周期を検出して、迅速かつ確実に空運転を検出できるとともに、液体の吸引管に圧力検出用の検出体を設置しないので、吸引管や生産設備の異物混入や液漏れなどが生じることもなく、さらにドラム缶のような天面に開口部のある液体容器の場合に、液体容器の底面に滞留する処理液を余すことなく吸引して便利に使用できるという効果を得ることができる。
【0018】
また、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動幅Pxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動幅Pxが連続して基準変動幅Ps以下となるときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をする構成としたことにより、空気圧駆動式のダイアフラムポンプの正常運転時の空気圧波形と、液体容器が空になったときの空気圧波形の違いを、変動幅が縮小した波形の連続的な出現として識別することにより、液体の圧力変化に比べて迅速かつ確実に空運転を検出できるので、上記と同様に、異物混入や液漏れなどなく、天面に開口部のある液体容器でも便利に使用できるという効果を得ることができる。
【0019】
また、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動周期Fsおよび変動幅Pxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動周期Fxが基準変動周期Fs以下のとき、かつ変動幅Pxが連続して基準変動幅Ps以下となるときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をするという構成にしたことにより、空気圧駆動式のダイアフラムポンプの正常運転時の空気圧波形と、液体容器が空になったときの空気圧波形の違いを、その変動周期の変化および変動幅が縮小した波形の連続的な出現として識別することにより、液体の圧力変化に比べて、また空気圧波形の1つの変化だけを比較するのに比べて、より確実に空運転を検出できるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1〜3のダイアフラムポンプの運転制御方法の全体構成図
【図2】同、空気導入に伴う処理液吸引を示すダイアフラムポンプの概略断面図
【図3】(1)同、ダイアフラムポンプの正常運転時のタイムチャート、(2)同、ダイアフラムポンプの空運転時のタイムチャート
【図4】(1)本発明の実施の形態1のダイアフラムポンプの運転制御方法の変動周期検出のフローチャート、(2)同、変動幅検出のフローチャート
【図5】本発明の実施の形態2のダイアフラムポンプの運転制御方法のフローチャート
【図6】本発明の実施の形態3のダイアフラムポンプの運転制御方法のフローチャート
【図7】従来のダイアフラムポンプの運転制御方法のポンプ部付近の要部拡大図
【図8】同、ダイアフラムポンプの検出圧力変化を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の請求項1記載のダイアフラムポンプの運転制御方法は、天面に開口部を備えた液体容器と、この液体容器の前記開口部を通して挿入される吸引管と、この吸引管の先端部から吸入した処理液を移送する空気駆動式のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動周期Fxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動周期Fxが基準変動周期Fs以下のときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をするという構成を有する。これにより、空気圧駆動式のダイアフラムポンプの正常運転時の空気圧波形と、液体容器が空になったときの空気圧波形の違いを、その周期の違いとして識別することにより、液体の圧力変化に比べて即応する空気圧の変動周期を検出して、迅速かつ確実に空運転を検出できるとともに、液体の吸引管に圧力検出用の検出体を設置しないので、吸引管や生産設備の異物混入や液漏れなどが生じることもなく、さらにドラム缶のような天面に開口部のある液体容器の場合に、液体容器の底面に滞留する処理液を余すことなく吸引して便利に使用できるという効果を奏する。
【0022】
また、天面に開口部を備えた液体容器と、この液体容器の前記開口部を通して挿入される吸引管と、この吸引管の先端部から吸入した処理液を移送する空気駆動式のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動幅Pxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動幅Pxが連続して基準変動幅Ps以下となるときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をするという構成を有する。これにより、空気圧駆動式のダイアフラムポンプの正常運転時の空気圧波形と、液体容器が空になったときの空気圧波形の違いを、変動幅が縮小した波形の連続的な出現として識別することにより、液体の圧力変化に比べて迅速かつ確実に空運転を検出できるので、上記と同様に、異物混入や液漏れなどなく、天面に開口部のある液体容器でも便利に使用できるという効果を奏する。
【0023】
また、天面に開口部を備えた液体容器と、この液体容器の前記開口部を通して挿入される吸引管と、この吸引管の先端部から吸入した処理液を移送する空気駆動式のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動周期Fsおよび変動幅Pxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動周期Fxが基準変動周期Fs以下のとき、かつ変動幅Pxが連続して基準変動幅Ps以下となるときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をするという構成を有する。これにより、空気圧駆動式のダイアフラムポンプの正常運転時の空気圧波形と、液体容器が空になったときの空気圧波形の違いを、その変動周期の変化および変動幅が縮小した波形の連続的な出現として識別することにより、液体の圧力変化に比べて、また空気圧波形の1つの変化だけを比較するのに比べて、より確実に空運転を検出できるという効果を奏する。
【0024】
また、前記制御部は、空運転と判断する回数Mxが少なくとも規定回数Ms回以上のときに、前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をするという構成を有する。これにより、ダイアフラムポンプの運転開始時や別の原因で空気圧波形が歪んだ場合でも、一時的な現象であれば、制御部は空運転と判断せずに安定して運転を継続できるので、信頼性の高い運転制御ができるという効果を奏する。
【0025】
また、前記制御部は、前記ダイアフラムの往復動する累計回数Nxと、空運転累計回数ΣMxを記憶し、予め定めた補正係数αを用いて、演算累計回数NyをNy=Nx+αΣMxとして算出し、この演算累計回数Nyが基準累計回数Ns以上のとき、ダイアフラムの寿命と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止またはダイアフラム交換の警告表示をするという構成を有する。これにより、同一のダイアフラムポンプを継続して使用する場合に、ダイアフラムの往復動する累計回数N1だけでなく、空運転を行った累計回数N2を記憶して補正することにより、演算累計回数Nxを空運転も考慮した累計回数として算出するので、ダイアフラムの交換時期も的確に把握することができるという効果を奏する。
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1に示すように、空気圧駆動式のダイアフラムポンプの本体1はドラム缶などの液体容器2に収納された処理液3を吸引して固定タンク(図示せず)に移送するものであり、駆動源として圧縮空気11を本体1に供給することにより、後述するダイアフラム12a、12bを往復運動させて、ポンプ機能を発揮するものである。本体1には処理液3を移送するための吸引管4と供給管5が接続され、さらに圧縮空気11を導入する空気導入管6と、導入した圧縮空気11を排出する空気排出管7が接続されている。吸引管4は液体容器2の天面2aに設けたに開口部2bを介して液体容器2内に挿入され、吸引管4の先端部4aは液体容器2の底面2cに近接して配置されている。
【0028】
また、本体1に接続される空気導入管6の他端は、圧縮空気11の製造装置(図示せず)に接続され、空気導入管6には圧縮空気11を導入または停止するための開閉バルブ6aと、適正な空気圧に調整するためのレギュレータ6bが挿入されている。また、本体1の排気側に接続される空気排出管7の他端には、消音のためのサイレンサー7aが取り付けられている。さらに空気排出管7には、排気される圧縮空気11の空気圧の検出部として空気圧センサ8が挿入され、空気圧センサ8の検出信号を受けて、開閉バルブ6aを開閉操作するように指令する制御部9が設けられている。また制御部9は警報装置10とも接続され、液体容器2の処理液3が空になったことを検知したときに、警報装置10を駆動して使用者に報知するようになっている。
【0029】
図2において、ダイアフラムポンプ1の内部には、一対の屈曲耐久性のあるダイアフラム12a、12bが、周辺部を隔壁に固定され、中央部分は左右に往復動できる状態で取り付けられ、離間するダイアフラム12a、12bの中心部は左右動可能な金属製のシャフト13により連結され、この左右動に連動して後述する空気切替弁16bが切り替わるようになっている。またダイアフラム12a、12bの外側には液体室15a、15bが付設され、内側には空気室14a、14bが付設されている。すなわち、ダイアフラム12aは液体室15aと空気室14aとの間に介在し、ダイアフラム12bは液体室15bと空気室14bとの間に介在している。そして、空気室14a、14bは中央構造体16に内蔵された空気切替弁16bに接続され、空気切替弁16bは中央構造体16の外周にそれぞれ設けた空気導入口16aと空気排出口16cに繋がり、さらに空気導入口16aは、図2に示す空気導入管6と接続され、空気排出口16cは空気排出管7と接続されている。
【0030】
また、液体室15a、15bは、上部に逆止弁19a、19bと吐出管部18を介して、1つの吐出口18aに接続し、さらに液体室15a、15bは下部に逆止弁20a,20bと吸引管部17を介して、1つの吸入口17aに接続している。そして、逆止弁19a,19bは液体室15a、15bの内圧がプラスになれば開放し、マイナスになれば閉鎖し、また逆止弁20a、20bは液体室15a、15bの内圧がプラスになれば閉鎖し、マイナスになれば開放することで、液体室15a、15bに処理液3を吸入口17aから吸引して、吐出口18aから吐出できるものである。なお、本体1に設けた吸入口17aは吸引管4と、吐出口18aは供給管5と接続している。
【0031】
たとえば空気導入口16aから空気切替弁16bを介して空気室14aに圧縮空気11が導入されて充満すると、ダイアフラム12aが液体室15a側に湾曲して、液体室15a内にある処理液3を吐出口18aから吐出する働きをする。このとき、ダイアフラム12aはダイアフラム12bとシャフト13により連結されているので、ダイアフラム12bは空気室14b側に湾曲して、空気室14b内にある圧縮空気11を空気排出口16cから空気排出管7へと押し出すとともに、液体室15b内に処理液3を吸入する働きをする。次に、空気切替弁16bが切り替わり、空気室14bに圧縮空気が導入され、液体室15b内の処理液3を吐出口18aから吐出する。同時に空気室14aの圧縮空気が排出され、液体室15b内に処理液3が吸引される。このように、圧縮空気11を空気導入口16aから供給することにより、ダイアフラム12a、12bが交互に吸引と吐出を繰り返し、このサイクルに合わせて圧縮空気11は空気室14aと空気室14bから交互に排出される。そして、この排出される空気圧は、空気排出管7に設けた空気圧センサ8により検出されている。
【0032】
図3(1)に示すように、ダイアフラムポンプの本体1が正常に運転しているときは、空気排出管7に設けた空気圧センサ8の圧力検出値は規則的に上下する波形を描いており、その波形の変動周期Fxは予め定めた基準周期Fsより大なる値を示し、またその波形の変動幅Pxは予め定めた基準幅Psより大なる値を示している。しかし、図3(2)に示すように、液体容器2の処理液3が少なくなくなると、吸引管4の先端部4aが液面から離れるため、ダイアフラムポンプの本体1は空運転をすることになり、このときは、その波形の変動周期Fxは予め定めた基準周期Fsより小なる値を示すか、あるいは、その波形の変動幅Pxは予め定めた基準幅Psより小なる値を連続的に示すものである。また、変動周期Fxと変動幅Pxがともに基準値から外れることも多くなる。ここで、基準周期Fsと基準幅Psは設備や使用状況に応じて自由に設定できるものである。
【0033】
上記構成において、図1の構成図および図4(a)に示すフローチャートに従って説明すると、まずダイアフラムポンプの本体1に空気導入管6から圧縮空気11を通して吸引管4から液体容器2内の処理液3を吸入し、供給管5を介して処理液3の供給を開始する(S101)。そして、空気圧センサ8で空気排出管7内の空気圧を経時的に検出して、その波形の変動周期Fxを基準周期Fsと比較し(S102)、もし変動周期Fxが基準周期Fsより小ならば、空運転の警報表示を行い(S103)、しばらくして運転を停止する(S104)。
【0034】
このように、従来例に示した液体の圧力変化に比べて、より俊敏に反応する空気排気管の空気圧の変動周期を検出して基準周期と比較することにより、迅速かつ確実に空運転を検出することができるものである。
【0035】
次に、波形の変動幅Pxから空運転を検出する方法を、図1および図4(b)に示すフローチャートに従って説明する。
【0036】
まずダイアフラムポンプの本体1を運転するときに、制御部9で記録する判断回数nxは自動的にクリアされ(S111)、ダイアフラムポンプの本体1の運転により処理液3を移送始めると(S112)、空気圧センサ8で空気排出管7内の空気圧を経時的に検出して、その波形の変動幅Pxを基準変動幅Psと比較し、Px<Psならば次に進み、それ以外はS111に戻る(S113)。次に、判断回数nxに1を加えて記録し(S114)、判断回数nxが規定回数nkを超えたときに(S115)、空運転の警報表示を行い(S116)、しばらくして運転を停止する(S117)。なお、規定回数nkはポンプ特性や処理液の粘性などの使用条件に合わせて1以上の数値を設定する。
【0037】
このように、空気排気管の空気圧の変動幅を検出して基準変動幅と比較することにより、迅速かつ確実に空運転を検出することができるものである。
【0038】
また、図4(1)のステップS102の後に、サブルーチンS1として図4(2)のステップS111に飛ぶようなフローを採用すれば、波形の変動周期Fxおよび変動幅Pxの2種類の検出値を用いて判断ができるので、精度を高めて空運転を検出することができる。
【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態において、図1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0040】
図5に示すように、まずダイアフラムポンプの本体1を運転するときに、制御部9で記録する空運転と判断できる回数Mxは自動的にクリアされ(S201)、運転を開始して処理液3を移送続けると(S202)、実施の形態1で示したように、空気圧センサ8で空気排出管7内の空気圧を検出して制御部9で本体1の空運転を判別している(S203)。制御部9はさらに検出値が基準値から外れる回数、すなわち空運転と判断できる回数Mxを累計して記録する(S203)。そして、空運転と判断できる回数Mxが規定回数Msを超えたときに(S205)、空運転の警報表示を行い(S206)、しばらくして運転を停止する(S207)。なお、規定回数Msはポンプ特性や処理液の粘性などの使用条件に合わせて1以上の数値を設定する。
【0041】
これにより、ダイアフラムポンプの本体1の運転開始時や別の原因で空気圧波形が歪んだ場合でも、制御部9は空運転とは異なる一時的な現象と見なして運転を継続できるので、運転中の不要な中断を防ぐことができ、信頼性の高い運転制御ができる。
【0042】
(実施の形態3)
本実施の形態において、実施の形態2と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図6に示すように、まずダイアフラムポンプの本体1を運転するときに、制御部9の記録保持部(図示せず)で記録していたダイアフラムの往復動する累計回数Nxと、空運転と判断したときの空運転累計回数ΣMxを演算記録部(図示せず)に読み込む(S301)。次に運転を開始すると(S302)、ダイアフラムが往復動するので累計回数Nxのカウントを増加させる(S303)。さらに空気圧センサ8で空気排出管7内の空気圧を監視して、制御部9が空運転と判別した場合は(S304)、先に読み込んだ空運転累計回数ΣMxに、空運転回数Mxを加えて、最新の空運転累計回数ΣMxを計算し(S305)、さらに演算累計回数NyをNy=Nx+αΣMxとして算出する。ここで、αは本体1が空運転したときのダイアフラムの補正係数としている(S306)。そして演算累計回数Nyが基準累計回数Ns以上のときは(S307)、ダイアフラム交換の警報表示を行い(S308)、即座に運転を停止する(S309)。
【0044】
これにより、同一のダイアフラムポンプを継続して使用する場合に、ダイアフラム12a、12bの往復動する累計回数Nxだけでなく、空運転累計回数ΣMxを記憶して補正することにより、演算累計回数Nyを空運転も考慮した累計回数として算出するので、ダイアフラム12a、12bの交換時期も的確に把握することができる。
【0045】
なお、ダイアフラム12a、12bを交換したときに、制御部9に記録した演算累計回数Nyと空運転累計回数ΣMxの積算値を0に戻すことにより、繰り返してダイアフラム交換時期の検出を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
圧縮空気を駆動源とするダイアフラムポンプの排気側の圧力を検出して、空運転時には迅速かつ安全に運転を停止できるので、気体が混合するのを嫌う化学薬品・高純度液体はもちろん、高価な化粧品・医薬品・化学原料などの移送にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 本体(ダイアフラムポンプ)
2 液体容器
2a 天面
2b 開口部
2c 底面
3 処理液
4 吸引管
4a 先端部
5 供給管
6 空気導入管
6a 開閉バルブ
7 空気排出管
8 空気圧センサ(検出部)
9 制御部
10 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面に開口部を備えた液体容器と、この液体容器の前記開口部を通して挿入される吸引管と、この吸引管の先端部から吸入した処理液を移送する空気駆動式のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動周期Fxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動周期Fxが基準変動周期Fs以下のときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をすることを特徴とするダイアフラムポンプの運転制御方法。
【請求項2】
天面に開口部を備えた液体容器と、この液体容器の前記開口部を通して挿入される吸引管と、この吸引管の先端部から吸入した処理液を移送する空気駆動式のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動幅Pxを記憶する制御部を有し、この制御部は変動幅Pxが連続して基準変動幅Ps以下となるときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をすることを特徴とするダイアフラムポンプの運転制御方法。
【請求項3】
天面に開口部を備えた液体容器と、この液体容器の前記開口部を通して挿入される吸引管と、この吸引管の先端部から吸入した処理液を移送する空気駆動式のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの排気側の空気排出管に設けた検出部と、この検出部の検出した空気圧力値の変動周期および変動幅を記憶する制御部を有し、この制御部は変動周期Fxが基準変動周期Fs以下のとき、かつ変動幅Pxが連続して基準変動幅Ps以下となるときに、空運転と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をすることを特徴とするダイアフラムポンプの運転制御方法。
【請求項4】
前記制御部は、空運転と判断する回数Mxが少なくとも規定回数Ms回以上のときに、前記ダイアフラムポンプの運転停止または警告表示をするようにした請求項1〜3のいずれかに記載のダイアフラムポンプの運転制御方法。
【請求項5】
前記制御部は、前記ダイアフラムの往復動する累計回数Nxと、空運転累計回数ΣMxを記憶し、予め定めた補正係数αを用いて、演算累計回数NyをNy=Nx+αΣMxとして算出し、この演算累計回数Nyが基準累計回数Ns以上のとき、ダイアフラムの寿命と判断して前記ダイアフラムポンプの運転停止またはダイアフラム交換の警告表示をするようにした請求項4記載のダイアフラムポンプの運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−60828(P2013−60828A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198436(P2011−198436)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】