説明

ダイオキシン類の分解能を有する新規微生物

【課題】毒性の高いダイオキシン類を分解すること、環境中に含まれるダイオキシン類を無毒化すること、及び毒性の高いダイオキシン類を分解できる新規分解微生物を単離すること。
【解決手段】ロドコッカス属細菌を宿主としたタンパク質発現系を構築し、これにビフェニル分解酵素遺伝子群を導入することで得られた組換え微生物により毒性の高いダイオキシン類を分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難分解性のダイオキシン類を分解することができる新規微生物に関し、また、当該微生物を利用したダイオキシン類の分解方法並びに環境浄化方法に関する。また、本発明は、難分解性のダイオキシン類を分解することができる微生物を単離するためのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオキシン類は発ガン性、催奇形性、内分泌かく乱性を有する毒性物質であり、日本国内においては主に焼却過程に伴い排出され、周囲の土壌等に蓄積されることが知られている。近年、このダイオキシン類による環境汚染が社会的に大きな問題となっている。ダイオキシン類は高い脂溶性の性質により土壌粒子などに吸着し、更には生物濃縮による濃縮効果をもたらすことから、たとえ低レベルの汚染であっても、生態系に大きな影響を与えている。なお、ダイオキシン類の毒性は、その塩素置換数に依存して異なることが知られており、4塩素置換のダイオキシン類(例えば、2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン)が最も高い毒性を示す。
【0003】
ダイオキシン類汚染土壌処理の現状は、埋め立てやコンクリート固化、アルカリ触媒化学分解等の物理的、化学的手法が採用されている。しかし物理的、化学的手法では、高コストで環境に与える影響が大きいといった問題がある。一方、低コスト、低環境負荷の環境浄化処理技術として、ダイオキシン類分解能を有する微生物を使用した、いわゆるバイオレメディエーションが知られている。
【0004】
例としては、これまでに大腸菌や根粒菌を発現宿主として細菌由来の酸化酵素を発現させて、ダイオキシン類の分解処理を行う方法が公開されている(特許文献1:特開平10-257895号公報、特許文献2:特開2002-65268号公報及び特許文献3:特開2003-250545号公報)。しかしながら、これら既知の分解細菌では、塩素置換数が1〜3の低毒性ダイオキシン類の分解能はみられるものの、2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシンの分解能は未解析であった。よって、バイオレメディエーションにこれら既知の分解細菌を使用しても、有効な環境浄化処理技術として確立することができないといった問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平10-257895号公報
【特許文献2】特開2002-65268号公報
【特許文献3】特開2003-250545号公報
【非特許文献1】工藤俊章、前田理久、鄭 宣龍、堀越弘毅 (特開平7−265062)
【非特許文献2】Arai H et al. (1998) Two sets of biphenyl and PCB degradation genes on a linear plasmid in Rhodococcus erythropolis TA421. J Ferment Bioeng 86:595-599
【非特許文献3】Hashimoto Y, Nishiyama M, Yu F, Watanabe I, Horinouchi S, Beppu T (1992) Development of a host-vector system in a Rhodococcus strain and its use for expression of the cloned nitrile hydratase gene cluster. J Gen Microbiol 138:1003-1010
【非特許文献4】Iida T, Mukouzaka Y, Nakamura K, Kudo T (2002a) Plasmid-borne genes code for an angular dioxygenase involved in dibenzofuran degradation by Terrabacter sp. strain YK3. Appl Environ Microbiol 68:3716-3723
【非特許文献5】Iida T, Mukouzaka Y, Nakamura K, Yamaguchi I, Kudo T (2002b) Isolation and characterization of dibenzofuran-degrading actinomycetes: analysis of multiple extradiol dioxygenase genes in dibenzofuran-degrading Rhodococcus species. Biosci Biotechnol Biochem 66:1462-1472
【非特許文献6】茂木, 飯田, 田口, 工藤 (2004) Rhodococcus属細菌を宿主とした芳香環ジオキシゲナーゼ高発現系の構築と解析. 日本農芸化学会2004年度大会 [広島] 講演要旨集 p10、2A03a10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述したような実状に鑑み、毒性の高いダイオキシン類を分解することができる新規微生物を提供することを目的とし、当該微生物を使用することによって環境中に含まれるダイオキシン類を無毒化することができるダイオキシン類の分解方法及び環境浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、ロドコッカス属細菌を宿主としたタンパク質発現系を構築し、これにビフェニル分解酵素遺伝子群を導入することで得られた組換え細菌において4塩素置換のダイオキシンを分解できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
【0009】
(1)ビフェニル資化性放線菌に芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群を機能しうる形で導入してなる組換え微生物。
上記ビフェニル資化性放線菌は、Rhodococcus erythropolis TA421株であることが好ましい。上記芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群は、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子からなる遺伝子群であることが好ましい。上記芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群は、高発現プロモーターによる転写制御下に位置するように導入されていることが好ましい。上記高発現プロモーターとしては、Rhodococcus sp. YK2株由来のジベンゾフラン代謝系遺伝子であるdfdB遺伝子の5’側上流に位置するプロモーターを使用することができる。上記高発現プロモーター及び上記芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群は、Rhodococcus-Escherichia coliシャトルベクターに組み込まれていることが好ましい。
【0010】
(2)4塩素置換のダイオキシン類を上記(1)記載の組換え微生物により分解する、ダイオキシン類の分解方法。
本分解方法においては、上記4塩素置換のダイオキシン類として2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシンを分解することができる。
【0011】
(3)4塩素置換のダイオキシン類を含む環境に上記(1)記載の組換え微生物を接触させる、環境浄化処理方法。
本処理方法においては、上記4塩素置換のダイオキシン類として2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシンを分解することができる。
【0012】
(4)供試微生物のゲノム又はcDNAに対して、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子又はこれら遺伝子の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする工程と、
ハイブリダイズしたゲノム又はcDNAを有する供試微生物を、4塩素置換のダイオキシン類の分解微生物として選択する工程とを備える、ダイオキシン類の分解微生物のスクリーニング方法。
【0013】
本スクリーニング方法において、上記ハイブリダイズする工程は、緩衝液として6×SSC(0.9M NaCl、0.09M クエン酸ナトリウム)、温度55℃の条件下で実施することができる。また、本スクリーニング方法においては、上記4塩素置換のダイオキシン類として2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシンを分解できる微生物を単離することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、4塩素置換のダイオキシン類を無毒化することができる新規微生物を提供することができる。本発明に係る組換え微生物は、環境中に含まれるダイオキシン類を分解して無毒化することができる。よって、本発明に係る組換え微生物によれば、環境に含まれるダイオキシン類を分解することができるダイオキシン類の分解方法及び環境浄化方法を提供することができる。
【0015】
また、本発明により、4塩素置換のダイオキシン類を無毒化することができる新規な微生物を単離するためのスクリーニング方法が提供される。本発明に係るスクリーニング方法によれば、環境浄化処理技術に好適な新規微生物を単離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
組換え微生物
本発明に係る組換え微生物は、難分解性のダイオキシン類を分解することができるといった特徴を有する。当該組換え微生物は、ビフェニル資化性放線菌を宿主として、芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群を機能しうる形で導入することで作製される。宿主となるビフェニル資化性放線菌としては、例えば、Rhodococcus erythropolis TA421株を使用することができる。その他にも、ビフェニル資化性放線菌としては、ビフェニル資化能を有するRhodococcus属の細菌を使用することができる。
【0018】
一方、芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群は、例えば、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子からなる遺伝子群を挙げることができる。これらRhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子は、Chung SYらの「A gram-positive polychlorinated biphenyl-degrading bacterium, Rhodococcus erythropolis strain TA421, isolated from a termite ecosystem. Biosci Biotechnol Biochem 58:2111-2113 (1994)」を参照することで、容易に取得することができる。
【0019】
Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号1に示す。bphA2遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。bphA3遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号3に示す。bphA4遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0020】
なお、bphA1遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号1に示すアミノ酸配列)は、bphA2遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号2に示すアミノ酸配列)とともにヘテロダイマーを構成してターミナル・ジオキシゲナーゼ活性を示す。BphA3遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号3に示すアミノ酸配列)は、フェレドキシン活性を示す。BphA4遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号4に示すアミノ酸配列)は、レダクターゼ活性を示す。
【0021】
また、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子を含む領域の塩基配列を配列番号5に示す。なお、配列番号5に示す塩基配列はDDBJ accession number D88020として登録されている。
【0022】
本発明においては、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子としては、それぞれ配列番号1乃至4に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなるものを使用することができる。また、本発明においては、bphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子としては、それぞれ配列番号1乃至4に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなるものを使用することもできる。ここで、相同性の数値は、配列解析ソフトウェアであるDNASIS(日立ソフトウェアエンジニアリング)を用いて、例えば、マキシムマッチング法のコマンドを実行することにより求められる。その際のパラメータは、デフォルトの設定(初期設定)とする。
【0023】
配列番号1に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、配列番号1に示すタンパク質と同様に、ターミナル・ジオキシゲナーゼ活性を有している必要がある。また、配列番号2に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、配列番号2に示すタンパク質と同様に、ターミナル・ジオキシゲナーゼ活性を有している必要がある。さらに、配列番号3に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、配列番号3に示すタンパク質と同様に、フェレドキシン活性を有している必要がある。さらにまた、配列番号4に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、配列番号4に示すタンパク質と同様に、リダクターゼ活性を有している必要がある。
【0024】
また、「芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群を機能しうる形で導入する」とは、当該遺伝子がコードする酵素群が宿主内において活性を示すように当該遺伝子群を導入することを意味する。例えば、芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群の上流に高発現型のプロモーターを配置したり、芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群の上流にシス配列を配置することで、芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群を機能しうる形で導入することができる。
【0025】
ここで、高発現型のプロモーターとしては、Rhodococcus sp. YK2株由来のジベンゾフラン代謝系遺伝子であるdfdB遺伝子の5’側上流に位置するプロモーター(以下、当該プロモーターをdfdBpと称する)を挙げることができる。dfdBpは、Iida Tらの「Isolation and characterization of dibenzofuran-degrading actinomycetes: analysis of multiple extradiol dioxygenase genes in dibenzofuran-degrading Rhodococcus species. Biosci. Biotechnol. Biochem. 66:1462-1472 (2002)」を参照することで、容易に取得することができる。
【0026】
また、高発現プロモーター及び芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群は、宿主内で複製が可能なベクターに組み込み、当該ベクターを用いて宿主を形質転換することにより、宿主に対して機能しうる形で導入することができる。当該ベクターとしては、例えば、Rhodococcus-Escherichia coliシャトルベクターを挙げることができる。より具体的に、Rhodococcus-Escherichia coliシャトルベクターとしては、pK4(Hashimoto Yらの「Development of a host-vector system in a Rhodococcus strain and its use for expression of the cloned nitrile hydratase gene cluster. J. Gen. Microbiol. 138:1003-1010 (1992)参照」に改良を加えたベクターを例示することができる。
【0027】
その他にもベクターとしては、pFAJ2574(Microbiology 143:3137-3147 (1997)参照)やpKSΔ6-1(Appl. Environ. Microbiol. 64:4363-4367 (1998)参照)を使用することができる。
【0028】
本発明に係る組換え微生物は、有毒な難分解性ダイオキシン類を分解することができる。本発明において難分解性ダイオキシン類とは、4塩素置換のダイオキシン類を挙げることができる。4塩素置換のダイオキシン類としては、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin)を挙げることができる。なお、本発明に係る組換え微生物は、4塩素置換のダイオキシン類を分解できるといった特性を示すが、4塩素置換のダイオキシン類以外に1〜3塩素置換のダイオキシン類や5塩素置換のダイオキシン類をも分解できる。
【0029】
本発明に係る組換え微生物による4塩素置換のダイオキシン類の推測される分解反応を図1に示す。図1には、ポリ塩素化ジベンゾ-p-ダイオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフラン及びコプラナ-ポリ塩素化ビフェニルの推定分解反応を示している。図1に示すように、本発明に係る組換え微生物によれば、有毒な4塩素置換のダイオキシン類に複数の水酸基を導入する結果、ダイオキシン類の平面構造を破壊することができる。その結果、本発明に係る組換え微生物は、4塩素置換のダイオキシン類の毒性を低下させることができる。
【0030】
環境浄化処理方法
上述した本発明に係る組換え微生物を利用することによって、環境中に含まれる難分解性ダイオキシンを分解し、環境浄化処理を実行することが可能となる。本発明に係る組換え微生物は、従来公知のバイオレメディエーションを適用した如何なる環境浄化処理方法にも適用することができる。ここで環境とは、土壌、汚泥、水域及び空気等の如何なる環境も含む意味である。本発明に係る組換え微生物は、浄化処理対象の環境に応じて適宜利用形態を最適化して利用することができる。なお、本発明の環境浄化方法は、閉鎖系、開放系いずれにも適用することができる。
【0031】
浄化処理対象の環境が水域である場合、最も簡便な方法としては、例えば対象の水域に直接、本発明に係る組換え微生物を導入するという方法がある。この場合、水性媒体のpH、塩濃度、温度や汚染物質の濃度等の調整が望ましい。また別の利用形態としては、培養槽を設けて本発明に係る組換え微生物を培養し、これに処理対象の水域から採取した汚染水を導入する方法が挙げられる。汚染水は、連続して導入してもよいし、バッチ式で導入してもよい。
【0032】
また、浄化処理対象の環境が土壌や汚泥の場合には、処理対象の土壌に本発明に係る組換え微生物を接触させることによって、土壌や汚泥に含まれる難分解性のダイオキシン類を分解することができる。例えば、最も簡便な方法としては、処理対象の土壌や汚泥中に直接、本発明に係る組換え微生物を導入するという方法がある。導入の方法としては、土壌表面に散布する方法や、地中を掘削して形成された井戸やトンネル等を介して導入する方法がある。また、本発明に係る組換え微生物を担体に付着させ、この担体を反応槽に充填し、この反応槽に処理対象の土壌や汚泥を導入する方法も適用することができる。担体は、いかなるものでも利用可能であるが、微生物の保持能力に優れ、通気性が維持されているようなものがより望ましい。
【0033】
さらに、浄化処理対象の環境が空気である場合には、処理対象の空気に本発明に係る組換え微生物を接触させることによって、空気中に含まれる難分解性のダイオキシン類を分解することができる。例えば、培養槽を設けて本発明に係る組換え微生物を培養し、これに処理対象の空気を導入する方法が挙げられる。処理対象の空気の導入法については特に限定されない。処理対象の空気の導入は連続して行ってもよいし、バッチ式で導入しても良い。
【0034】
スクリーニング方法
本発明においては、上述したように、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子からなる遺伝子群をビフェニル資化性放線菌に導入することによって、難分解性のダイオキシン類を分解できるといった特徴的な技術を示している。すなわち、本発明では、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子の新規機能として、難分解性のダイオキシン類の分解能を示している。
【0035】
このような知見に基づけば、難分解性ダイオキシンを分解することができる新規な分解菌のスクリーニング系を構築することができる。本スクリーニング系では、先ず、供試微生物のゲノム又はcDNAに対して、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子又はこれら遺伝子の相補鎖をストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせる。
【0036】
ここで、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリダイズが形成されるが非特異的なハイブリダイズは形成されない条件を意味する。例えば、緩衝液として6×SSC(0.9M NaCl、0.09M クエン酸ナトリウム)、温度55℃といった条件を挙げることができる。
【0037】
本スクリーニング系では、次に、ハイブリダイズしたゲノム又はcDNAを有する供試微生物を、4塩素置換のダイオキシン類の分解微生物として選択する。すなわち、上記遺伝子群とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子を有する微生物は、上記遺伝子群と同様な酵素をコードする遺伝子群を有している蓋然性が極めて高いと判断することができる。よって、本スクリーニング系によれば、本発明に係る組換え微生物と同様に、難分解性のダイオキシン類を分解することができる新規な微生物を単離することが可能となる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
1.実験材料と方法
1-1使用した遺伝子
Rhodococcus属細菌におけるタンパク質発現プロモーターとして、Rhodococcus sp. YK2株より単離されたジベンゾフラン代謝系遺伝子の一つdfdBのプロモーター領域(dfdBp)を用いた(Iida Tら「Isolation and characterization of dibenzofuran-degrading actinomycetes: analysis of multiple extradiol dioxygenase genes in dibenzofuran-degrading Rhodococcus species.」Biosci. Biotechnol. Biochem. 66:1462-1472 (2002))。dfdBp領域を含む組換え体pDMR5を鋳型とし、開始コドンから629bp上流の領域をPCR増幅した。その際、開始コドン直下流にSfoIサイトを導入した。dfdBp断片のpGEM-T easy上の組換え体を、発現組換え体構築に用いた。
【0040】
Rhodococcus-Escherichia coliシャトルベクターには、pK4(Hashimoto Yら「Development of a host-vector system in a Rhodococcus strain and its use for expression of the cloned nitrile hydratase gene cluster.」J. Gen. Microbiol. 138:1003-1010 (1992))を元に改良を加えたものを用いた。Rhodococcus属細菌中での複製に関与する領域を含むpK4のSacI-SmaI断片(約1.68kb)を末端平滑化後、pHSG299のAflIIIサイト(末端平滑化)に導入したものをpRK401とした (Iida Tら「Plasmid-borne genes code for an angular dioxygenase involved in dibenzofuran degradation by Terrabacter sp. strain YK3.」Appl Environ Microbiol 68:3716-3723 (2002))。pRK401の遺伝子地図と代表的な制限酵素認識部位を図2に示す。
【0041】
ダイオキシン類分解酵素としてビフェニル資化性放線菌R. erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子産物(BphATA421)を用いた(Araiら「Two sets of biphenyl and PCB degradation genes on a linear plasmid in Rhodococcus erythropolis TA421.」J Ferment Bioeng 86:595-599 (1998))。また、ビフェニル資化性放線菌R. rhodochrous K37株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子産物(BphAK37)及びジベンゾフラン資化性放線菌Terrabacter sp. YK3株由来のdfdA1遺伝子、dfdA2遺伝子、dfdA3遺伝子及びdfdA4遺伝子産物(DfdA)を用いた(Iida Tら「Plasmid-borne genes code for an angular dioxygenase involved in dibenzofuran degradation by Terrabacter sp. strain YK3.」Appl Environ Microbiol 68:3716-3723 (2002))。
【0042】
1-2 3種の放線菌に由来する芳香環ジオキシゲナーゼ高発現組換え体の構築
ビフェニルまたはジベンゾフラン資化性放線菌に由来する3種の芳香環ジオキシゲナーゼについて、構成的高発現プロモーター組換え体を構築した(図3)。組換え体構築に用いたPCRプライマーを表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
1-2-1 構成的発現プロモーター、dfdBp
Rhodococcus sp. YK2株のdfdBpを情報化したクローンpDMR5を鋳型とし、dfdB-5’上流の629 bpをPCR増幅後(primer No.1、2)、pGEM-T easyにてクローン化した(図3中、[1]として示す。以下同様。)。この際にdfdB開始コドン直下流にSfoIサイトを導入した。
【0045】
1-2-2 R. erythropolis TA421株のbphA1-A4TA421
bphA1-A4TA421遺伝子を情報化したクローンpTB1([2])を鋳型とし、bphA1-A4領域をPCR増幅した(primer No.3、4)。このPCR産物断片を[1]のSfoIサイトへ導入し、dfdBp-bphA融合組換え体[3]を構築した。これをEcoRI-SpeIで切断後、シャトルベクターpRK401のEcoRI-XbaIサイトに導入した。
【0046】
1-2-3 R. rhodochrous K37株のbphA1-A4K37
R. rhodochrous K37株のbphA1-A4K37遺伝子を含むクローンpBph-K37[4]を鋳型とし、bphA1-A2領域をKOD polymeraseを用いPCR増幅 (primer No.5、6)後、末端にdATPを付加し、pGEM-T easyにてクローン化した([5])。この際、bphA1開始コドン直下流にEcoRVサイトを、bphA2終止コドン直下流にSpeIを導入した。[5]をEcoRV-SpeIで切り出し、[1]のSfoI-SpeI領域へ導入した([6])。続いて、[4]を鋳型とし、bphA3-A4領域をKOD polymeraseを用いPCR増幅後 (primer No.7、8)、末端にdATPを付加させ、pGEM-T easyにてクローン化した([7])。この際に、bphA3のSD配列直上流とbphA4終止コドン下流にXbaIサイトを導入した。このクローンのbphA3-A4領域をXbaIで切り出し、[6]のSpeIサイトに導入し、dfdBp-bphA融合組換え体([8])を構築した。これをNotIで切り出し、平滑末端処理後、シャトルベクターpRK401のHincIIサイトへ導入した。なお、この融合組換え体のBphA1のN-末端配列は、Met-Thr-Val(ATG ACA GTT)からMet-Gly-Ile-Thr-Val(GTG GGC ATC ACA GTT)へと置換された。
【0047】
1-2-4 Terrabacter sp. YK3株のdfdA1-A4
YK3株のdfdA1-A4遺伝子を情報化したクローンdfdA-PstI[9]を鋳型とし、dfdA1情報化領域をPCR増幅(primer No.9及びM13 reverse primer)し、pGEM-T easyにてクローン化した[10]。その際に、dfdA1開始コドン直下流にEcoRVサイトを導入すると同時に、dfdA1開始コドン近傍のスレオニンをコードするACTをRhodococcus属細菌の頻出コドンACCに置換した(primer No.9、太字で表記)。塩基配列を確認後、[1]のSfoIサイトに[10]のEcoRV-EcoRI[fill-in]領域を組み込み、dfdBp-dfdA融合組換え体[11]を構築した。EcoRI-SpeI断片の末端平滑化処理後、シャトルベクターpRK401のHincIIサイトに導入した。なお、この融合組換え体のDfdA1のN-末端配列は、Met-Leu-Thr-Val(ATG CTG ACT GTG)からMet-Gly-Ile-Thr-Val(GTG GGC ATC ACC GTG)へと置換された。
【0048】
1-3 培地
放線菌の培養にはLBG培地(1.0% Bacto Trypton、0.5% Bacto Yeast Extract、1.0% NaCl、10 mM Glucose)を用いた。最小培地として、MM3Y培地(30 mM (NH4)2SO4、1 mM MgSO4・7H2O、0.02 mM FeSO4・7H2O、0.1 mM CaCl2・2H2O、0.05% NaCl、15.5 mM Na2HPO4・12H2O、9.5 mM KH2PO4、0.005% yeast extract、これに0.002%(v/v)のtrace element solution[0.01% MoO3、0.07% ZnSO4・5H2O、0.005% CuSO4・5H2O、0.01% H3BO3、0.01% MnSO4・5H2O, 0.01% CoCl2・6H2O及び0.01% NiSO4・7H2O] を加えたもの)に適当な炭素源を添加したものを用いた。遺伝子組換え体の培養には、これらの培地に25〜100μg ml-1のカナマイシンを添加した。
【0049】
1-4 宿主放線菌と形質転換
1塩素置換、2塩素置換及び3塩素置換のダイオキシン類に対するダイオキシン類分解酵素の能力評価における発現宿主として、Rhodococcus sp. RD2株を用いた(Iida Tら「Isolation and characterization of dibenzofuran-degrading actinomycetes: analysis of multiple extradiol dioxygenase genes in dibenzofuran-degrading Rhodococcusspecies.」Biosci. Biotechnol. Biochem. 66:1462-1472 (2002))。2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxinの分解に対する評価には、ビフェニル資化性放線菌Rhodococcus erythropolis TA421株を用いた(Chung SYら「A gram-positive polychlorinated biphenyl-degrading bacterium, Rhodococcus erythropolis strain TA421, isolated from a termite ecosystem.」 Biosci Biotechnol Biochem 58:2111-2113 (1994))。
【0050】
Rhodococcus属細菌の形質転換は、エレクトロポレーションにより行った(Desomer Jら「Transformation of Rhodococcus fasciansby high-voltage electroporation and development of R. fascians cloning vectors.」Appl. Environ. Microbiol. 56:2818-2825 (1990))。対数増殖期のLBG培養菌体を集菌し、冷却滅菌水にて二回洗浄後、培養液量の1%体積の冷却30% polyethylene glycol (PEG) #1000水溶液に懸濁した。エレクトロポレーションには2 mm-gapのキュベットを用い、BIO-RAD社のジーンパルサーにて、capacitor 25μF、parallel resistor 800Ω、initial voltage 2.0 kVの条件で行った。
【0051】
1-5 ダイオキシン類分解酵素の能力評価
分解酵素及び発現組換え体の能力評価には、Rhodococcus sp. RD2株の発現組換え体を用いた。LBG培養菌体を集菌、SP-buffer (0.8% NaCl、15.5 mM Na2HPO4・12H2O、9.5 mM KH2PO4)にてペレットを洗浄後、5 mMのグルコースを加えたMM3Y培地に懸濁し、600 nmの吸光度(OD600)における濁度を約20に調整した。2 mlの菌体懸濁液を試験管に分注し、塩素化ダイオキシン類を最終濃度10 μg ml-1となるよう添加し、30℃で二日間の振とう培養を行った。なお、ネガティブコントロールとしてRD2株のpRK401形質転換体を用いた。
【0052】
R. erythropolis TA421株の発現組換え体の分解解析では、LBG培養菌体を0.5 %のbiphenylを炭素源としたMM3Y培地に移し、30℃で8時間の誘導培養を行った。濾紙にて残存biphenylを濾過後、MM3Y培地に懸濁し、OD600を約20に調整した。菌体懸濁液は二分割し、一方をオートクレーブ滅菌してネガティブコントロールとした。分解基質として2,3,7-trichlorodibenzo-p-dioxin(2,3,7-TrCDD)を最終濃度10μg ml-1となるよう添加し、30℃で7日間の培養を行った。
【0053】
残存ダイオキシン類の検出は以下の手順で行った。培養液に4 mlの酢酸エチルを加え、1 mg ml-1のdibenzo-p-dioxinのトルエン溶液を100μl(100μg)添加後、5分間激しく攪拌した。遠心分離後酢酸エチル層を別の試験管に移し、再度4 mlの酢酸エチルにて抽出操作を行った。回収した酢酸エチルは窒素ガスを吹きつけ揮発させ、残渣を1 mlのトルエンに溶解し、1μlをGC-MS分析に供した。分析には島津製作所製のGCMS-QP5050A及び内径0.25 mm、長さ30 mのキャピラリーカラム(DB5-MS)を用いた。カラム漕温度50℃、気化室及び検出部の温度は300℃、ヘリウムガス圧力は80 kPaとし、スプリットレスモードに設定した。サンプル注入後カラム漕を50℃で2分間保持し、一分あたり15℃ずつ300℃まで上昇させ、5分間保持した。抽出スパイクとして添加したdibenzo-p-dioxinと塩素化ダイオキシン類の定量を行なった。全てのサンプルで3検体分析を行い、その平均値を分解率算出に用いた。
【0054】
1-6 2,3,7,8-tetrachrolodibenzo-p-dioxin (2,3,7,8-TeCDD) 分解解析
1-4に従い、R. erythropolis TA421株の発現組換え体分解培養液を調製した。50 ml容量のガラス遠心管に1 mlの菌体懸濁液を分注し、最終濃度9 mMのビフェニルと45 ng ml-1の2,3,7,8-TeCDDを添加、密封し、30℃で7日間振とう培養した。培養後の残存2,3,7,8-TeCDDの抽出及び定量解析は、財団法人日本食品分析センターに委託した。
【0055】
2. 実験結果
2-1 Rhodococcus sp. RD2株を宿主とした三種の芳香環ジオキシゲナーゼの高発現株による各種塩素化ダイオキシン類の分解
三種の芳香環ジオキシゲナーゼのダイオキシン類分解能力を評価した。塩素化ダイオキシン類分解能が無いRhodococcus sp. RD2株に発現組換え体を導入し、2-monochlorodibenzo-p-dioxin (MCDD)、1,3-dichlorodibenzo-p-dioxin (1,3-DiCDD)、2,3-DiCDD、2,7-DiCDD、2,8-dichlorodibenzofuran (2,8-DiCDF)の分解能を調べた。シャトルベクターpRK401形質転換株の結果を対照として求めた各基質の残存率を、表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
この結果から、二日間の分解培養により、全ての組換え体は2-MCDDをほぼ完全分解した。DfdAは1,3-DDを29%、2,8-DFを100%分解した。またBphAK37は1,3-DDを99%、2,3-DDを67%分解したが、2,8-DF等はほとんど分解できなかった。BphApTB1は2,3-、2,7-DD及び2,8-DFを96〜99%分解したが、1,3-DDの分解率は18%に留まった。1,4-DDは今回の培養条件では強力に分解できるものは見られなかったが、DfdAにおいて11%分解された。
【0058】
次に、三塩素化ダイオキシン類である2,3,7-TrCDDの分解能を調べた。その結果、BphATA421発現組換え体のみが40%分解できることが明らかになった。
【0059】
以上の結果は、BphATA421が三種の放線菌由来の芳香環ジオキシゲナーゼの中で最も分解基質特異性の広い酵素であることを示している。
【0060】
2-2 R. erythropolis TA421株を宿主としたBphATA421高発現株による2,3,7-trichloro- dibenzo-p-dioxin分解解析
BphATA421の由来株であるビフェニル資化性放線菌Rhodococcus erythropolis TA421株は、ビフェニルを炭素源とした培養によりBphATA421を誘導発現する。BphATA421によるダイオキシン類分解効果をより高めるため、TA421株にBphATA421発現組換え体を導入し、2,3,7-TrCDD分解を見た(表3)。7日間のビフェニルを炭素源、エネルギー源とした分解培養の結果、分解率は野生株が88.2%であったのに対し、BphATA421発現株では92.4%となり、発現組換え体導入の効果が認められた。
【0061】
【表3】

【0062】
2-3 R. erythropolis TA421株のBphATA421高発現株による2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p- dioxinの分解
TA421株のBphATA421高発現株を用い、ダイオキシン類の中で最も毒性が高いとされる2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(2,3,7,8-TeCDD)の分解能を解析した。7日間の分解培養の後、残存基質の定量解析を行った(表4)。その結果、オートクレーブ処理したネガティブコントロールサンプルが22.2 ng ml-1、発現組換え体サンプルでは16.4 ng ml-1であり、およそ31.1%の2,3,7,8-TeCDDが分解されていた。
【0063】
【表4】

【0064】
以上の結果から、TA421株のBphATA421高発現株によれば、4塩素置換のダイオキシン類である2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxinを効果的に分解できることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】4又は5塩素置換のダイオキシン類の推定される分解反応を示す図である。
【図2】実施例で作製したシャトルベクターpRK401の遺伝子地図と代表的な制限酵素認識部位を示す図である。
【図3】実施例で作製したビフェニルまたはジベンゾフラン資化性放線菌に由来する3種の芳香環ジオキシゲナーゼについて、構成的高発現プロモーター組換え体の作製工程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフェニル資化性放線菌に芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群を機能しうる形で導入してなる組換え微生物。
【請求項2】
上記ビフェニル資化性放線菌は、Rhodococcus erythropolis TA421株であることを特徴とする請求項1記載の組換え微生物。
【請求項3】
上記芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群は、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子からなることを特徴とする請求項1又は2記載の組換え微生物。
【請求項4】
上記芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群は、高発現プロモーターによる転写制御下に位置するように導入されたことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項5】
上記高発現プロモーターは、Rhodococcus sp. YK2株由来のジベンゾフラン代謝系遺伝子であるdfdB遺伝子の5’側上流に位置するプロモーターであることを特徴とする請求項4記載の組換え微生物。
【請求項6】
上記高発現プロモーター及び上記芳香環ジオキシゲナーゼ遺伝子群は、Rhodococcus-Escherichia coliシャトルベクターに組み込まれていることを特徴とする請求項4記載の組換え微生物。
【請求項7】
4塩素置換のダイオキシン類を、請求項1乃至6いずれか1項記載の組換え微生物により分解する、ダイオキシン類の分解方法。
【請求項8】
上記4塩素置換のダイオキシン類は、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシンであることを特徴とする請求項7記載のダイオキシン類の分解方法。
【請求項9】
4塩素置換のダイオキシン類を含む環境に、請求項1乃至6いずれか1項記載の組換え微生物を接触させる、環境浄化処理方法。
【請求項10】
上記4塩素置換のダイオキシン類は、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシンであることを特徴とする請求項9記載の環境浄化処理方法。
【請求項11】
供試微生物のゲノム又はcDNAに対して、Rhodococcus erythropolis TA421株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子及びbphA4遺伝子又はこれら遺伝子の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする工程と、
ハイブリダイズしたゲノム又はcDNAを有する供試微生物を、4塩素置換のダイオキシン類の分解微生物として選択する工程とを備える、ダイオキシン類の分解微生物のスクリーニング方法。
【請求項12】
上記ハイブリダイズする工程は、緩衝液として6×SSC(0.9M NaCl、0.09M クエン酸ナトリウム)、温度55℃の条件下で実施することを特徴とする請求項11記載のスクリーニング方法。
【請求項13】
上記4塩素置換のダイオキシン類は、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシンであることを特徴とする請求項11記載のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−215404(P2007−215404A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340982(P2005−340982)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(501273886)独立行政法人国立環境研究所 (30)
【出願人】(505437402)
【Fターム(参考)】