説明

ダイコータ用分解・組立台

【課題】ダイコータの受渡し、分解及び組立てを、トータル的に安全かつ迅速に行うことが可能なダイコータ用分解・組立台の提供。
【解決手段】ダイコータ用分解・組立台1aは、ダイコータ11の第一ブロック111が着脱自在に固定される固定部材3aと、ダイコータ11の第二ブロック112が着脱自在に固定される移動用固定部材4aと、移動用固定部材4aを移動させる移動装置5と、ダイコータ11を搬送するダイコータ用台車との間で、ダイコータ11を受け渡しする受渡し装置6とを備えた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイコータ用分解・組立台に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムやシートなどの被コーティング材は、ダイコータを用いて、コーティングが行われている。
ダイコータは、コーティング液の噴射ノズルであり、通常、複数のブロックとシムなどを有している。このダイコータは、ポンプ又はエアー若しくは窒素等による圧送によって供給されたコーティング液を、塗布幅方向にほぼ均一となるように、バックロールに掛けられた被コーティング材に吹き付ける。
【0003】
また、たとえば、コーティングの幅替やコーティング液を変更する際などには、ダイコータに対して、洗浄、分解、組立て、及び、保管が行われる。この際、ダイコータは、ホイスト式クレーンなどの搬送装置によってダイコータ用分解・組立台に搬送され、搬送装置とダイコータ用分解・組立台との間で、ダイコータの受渡しが行われ、さらに、ダイコータ用分解・組立台において、ダイコータの分解及び組立てが行われる。
【0004】
(従来例)
図示してないが、上記のダイコータの分解・組立作業において、通常、ダイコータ用分解・組立台として、定盤が用いられてきた。すなわち、ダイコータは、一般的に、ホイスト式クレーンによって搬送され、定盤上に載置され、この定盤上で、ダイコータの分解及び組立てが行われてきた。
【0005】
また、生産性などを向上させるために、本発明に関連する技術として、様々な技術が研究開発されている。
たとえば、特許文献1には、移動可能な台枠、リフターテーブル、対向して配置された一対以上の揺動可能な引き離しアーム、型体との結合装置の設けられた支持台、及び、アーム駆動装置を備えたTダイ分解組立用リフター台車の技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、塗布液を塗布幅方向に広げるポケットと、塗布液をポケットから被塗布物に吐出するスリットを、少なくとも2組備えた同時重層用ダイコータで構成されるダイコータの組立方法において、上面の平面度が0.1〜10μmの台上で組み立てることを特徴とするダイコータの組立方法及び組立装置などの技術が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、複数のバーが接合されることで、バーとバーの間にスリットおよびポケットが形成されてなるダイコータの組立方法において、接合が、油圧、空圧、磁石又は真空チャックによる接合手段によって行われていることを特徴とするダイコータの組立方法などの技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、第1Tダイ本体の下部に着脱自在に設けられたダイリップと、第1Tダイ本体にノズル隙間を介して配設された第2Tダイ本体と、第2Tダイ本体に設けられた第1ストッパと、ダイリップに設けられ第1ストッパと摺動可能に設けられた第2ストッパと、第1Tダイ本体に設けられガイド開口を有する第1ガイド体と、ガイド開口を貫通しダイリップに設けられた軸体と、軸体をガイド開口に沿って移動させるための移動部材とを備え、移動部材を介して軸体を移動させることによりダイリップを第1Tダイ本体から離脱させるように構成したことを特徴とするTダイのダイリップ分解装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭61−6771号公報
【特許文献2】特開2004−33882号公報
【特許文献3】特開2000−271522号公報
【特許文献4】実開平6−50833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したホイスト式クレーンや定盤を用いて、ダイコータの分解・組立作業を行うには、たとえば、ダイコータが500kgを超える重量物である場合、取扱い(マテリアルハンドリング)に優れた技能を有する作業者を必要とし、さらに、作業性や安全性をさらに向上させることが、実質的に困難であった。そのため、ダイコータの分解・組立作業においては、ダイコータの受渡し、分解及び組立てを、トータル的に安全かつ迅速に行うことが可能なダイコータ用分解・組立台が要望されていた。
なお、上記の特許文献1〜4の技術では、本発明の課題を解決することはできない。
【0011】
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、ダイコータの受渡し、分解及び組立てを、トータル的に安全かつ迅速に行うことが可能なダイコータ用分解・組立台の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のダイコータ用分解・組立台は、ダイコータを構成する複数のダイ要素のうちの一つのダイ要素が着脱自在に固定される固定部材と、前記複数のダイ要素のうちの他のダイ要素が着脱自在に固定される移動用固定部材と、移動用固定部材を移動させる移動装置とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダイコータ用分解・組立台によれば、数百キログラム(たとえば、500キログラム)の重量を有するダイコータの受渡し、分解及び組立てを、トータル的に(すなわち、受渡し、分解及び組立ての全てにおいて、)安全かつ迅速に行うことができ、作業性や安全性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台の概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
【図2】図2は、本発明の第二実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台の概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
【図3】図3は、本発明の第二実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台が用いられる、ダイコータ用マテリアルハンドリングシステムを説明するための概略縮小平面図を示している。
【図4】図4は、本発明の第二実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台との間で、ダイコータを受け渡しする、ダイコータ用台車を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
【図5】図5は、本発明の第二実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台の動作を説明するための要部の概略図であり、(a)はダイコータ受け渡し前の側面図を示しており、(b)は第一ブロック固定後の側面図を示しており、(c)はダイコータ回動後の側面図を示しており、(d)は第二ブロック固定後の側面図を示しており、(e)は第二ブロック移動後の側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ダイコータ用分解・組立台の第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台の概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
図1において、ダイコータ用分解・組立台1は、台枠2、ダイコータ11の第一ブロック111が着脱自在に固定される固定部材3、ダイコータ11の第二ブロック112が着脱自在に固定される移動用固定部材4、及び、移動用固定部材4を移動させる移動装置5を備えている。
また、本実施形態のダイコータ11は、複数のダイ要素として、第一ブロック111及び第二ブロック112を有している。
【0016】
台枠2は、直方体状としてあり、一対の固定部材3、移動用固定部材4及び移動装置5が設けられている。また、台枠2の上面において、ダイコータ11の分解及び組立てが行われる。なお、図示してないが、台枠2に、溶剤用受けパン、シム用受けパン、又は、ボルトと締め付け工具用受けパンなどを設けてもよい。
【0017】
固定部材3は、台枠2の上面の左右方向両端部の前方向側に、直方体状の基台33を介して、固定されている。また、各固定部材3は、第一ブロック111の左右方向の両端部が載置される載置面31と、第一ブロック111の固定される固定面32とを有しており、第一ブロック111が着脱自在に固定される。すなわち、ダイコータ11は、通常、ホイスト式クレーン(図示せず)によって搬送され、ダイコータ11の第一ブロック111の一面(図1(b)においては、下面)が載置面31に載置され、さらに、第一ブロック111の他面(図1(b)においては、前方側の側面)が固定面32に螺着される。
【0018】
ここで、好ましくは、載置面31が後方向に延長され、ダイコータ11の第二ブロック112(図1(b)においては、下面)が載置面31に載置されるとよい。このようにすると、載置面31の後側の部分が、第二ブロック112を分解又は組み立てる際、第二ブロック112をガイド(あるいは、支持)することができるので、第二ブロック112を第一ブロック111にぶつけてしまうといった不具合を効果的に防止することができ、作業性及び安全性を向上させることができる。なお、載置面31の後側の部分を設ける代わりに、ガイド(あるいは、支持)用ブロック(図示せず)を、基台33などに螺着する構成としてもよく、ほぼ同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態の固定部材3は、載置面31を有する載置板と固定面32を有する固定板とからなる、断面がほぼL字状の構造としてあるが、この構造に限定されるものではない。
【0019】
移動用固定部材4は、ダイコータ11の第二ブロック112の左右方向の中央部の一面(図1(b)においては、下面)が載置される載置面41と、第二ブロック112の他面(図1(b)においては、後方側の側面)が螺着などによって固定される固定面42とを有しており、第二ブロック112が着脱自在に固定される。
なお、本実施形態の移動用固定部材4は、載置面41を有する載置板と固定面42を有する固定板とからなる、断面がほぼL字状の構造としてあるが、この構造に限定されるものではない。
【0020】
移動装置5は、移動用固定部材4を水平方向に移動させる水平移動機器50と、移動用固定部材4を昇降させる昇降機器55とを有している。この移動装置5は、移動用固定部材4を前後方向及び上下方向に移動させることができるので、たとえば、第二ブロック112を第一ブロック111に組み立てる際、第一ブロック111に対する第二ブロック112の位置合わせを、精度よくかつ円滑に行うことができる。
【0021】
水平移動機器50は、スライド軸受51、移動機器用基材52及び移動防止用部材53などを有している。
たとえば、スライド軸受51は、一対のリニアベアリングとしてあり、ほぼ矩形板からなる移動機器用基材52上に設けられている。また、移動防止用部材53は、止めねじや位置決めピンなどとしてあり、後方向に移動させた移動用固定部材4が水平方向に移動しないように、移動用固定部材4を係止する。このようにすると、作業者が、ダイコータ11の第二ブロック112を容易に水平方向へ移動させることができ、また、構造を単純化でき、製造原価のコストダウンを図ることができる。
なお、上記の水平方向は、水平及びほぼ水平な方向である。
【0022】
昇降機器55は、移動機器用基材52のほぼ四隅に設けられたリニアブッシュ58、移動機器用基材52のほぼ中央に設けられたジャッキ、このジャッキと連結されたベベルギアボックス、このベベルギアボックスにトルクを伝達するシャフト、このシャフトと連結された昇降用ハンドル56、及び、上記シャフトの回転を防止する昇降防止用部材57(通常、止めねじ機構を利用する部材である。)などを有している。このようにすると、昇降用ハンドル56を回転させることにより、移動機器用基材52を昇降させることができ、また、昇降防止用部材57によって、移動機器用基材52の昇降を止め、移動機器用基材52を所定の高さに維持することができる。
なお、昇降機器55の構成は、上記に限定されるものではなく、様々な構成とすることができる。たとえば、昇降機器55は、昇降の高さを表示する高さ表示器(図示せず)を有する構成としてもよい。
【0023】
次に、上記構成のダイコータ用分解・組立台1の動作などについて説明する。
まず、ダイコータ用分解・組立台1は、図1(b)に示すように、移動機器用基材52が下限の位置にあり、移動用固定部材4は、移動防止用部材53によって、後方向の位置に係止されている。
次に、ダイコータ11は、通常、ホイスト式クレーン(図示せず)によって搬送され、ダイコータ11の第一ブロック111の一面(図1(b)においては、下面)が固定部材3の載置面31に載置され、第一ブロック111の他面(図1(b)においては、前方側の側面)が固定部材3の固定面32に螺着される。
なお、ダイコータ11の刃先は、非常に精密な加工が施されており、ダメージを与えないように、慎重に作業が行われる。
【0024】
次に、移動防止用部材53が取り外され、移動用固定部材4は、前方向に(第二ブロック112が載置面41の上方に位置するように)移動される。続いて、昇降防止用部材57のロックが解除され、昇降用ハンドル56によって、移動用固定部材4は、移動機器用基材52とともに上昇し、載置面41が、ダイコータ11の第二ブロック112の左右方向の中央部の一面(図1(b)においては、下面)と接触し、第二ブロック112は、載置面41に載置される。そして、昇降防止用部材57によって、移動用固定部材4の高さ位置が保持される。続いて、第二ブロック112の他面(図1(b)においては、後方側の側面)は、固定面42に螺着される。
【0025】
次に、第二ブロック112を介して第一ブロック111に締め込まれていた固定用ボルト(図示せず)が取り外され、続いて、通常、押ボルト(図示せず)によって、第二ブロック112がゆっくり第一ブロック111から離される。
次に、移動用固定部材4が後方向に(たとえば、数mm〜十数cm)移動され、シム(図示せず)が取り外され、さらに、移動用固定部材4が後方向に移動され、移動防止用部材53によって係止される。続いて、取り外したシムや第一ブロック111及び第二ブロック112の合せ面が清掃され、さらに、新たに取り付けられるシムが清掃される。
続いて、上記の手順を戻ることにより、分解されたダイコータ11は、安全かつ迅速に組み立てられ、組み立てられたダイコータ11は、ホイスト式クレーン(図示せず)によって搬送される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のダイコータ用分解・組立台1によれば、数百キログラム(たとえば、500キログラム)の重量を有するダイコータ1の分解及び組立てを、安全かつ迅速に行うことができ、作業性や安全性を大幅に向上させることができる。
【0027】
[ダイコータ用分解・組立台の第二実施形態]
図2は、本発明の第二実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台の概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
図2において、本実施形態のダイコータ用分解・組立台1aは、上述した第一実施形態のダイコータ用分解・組立台1と比べると、ダイコータ11を搬送するダイコータ用台車105との間で、ダイコータ11を受け渡しする受渡し装置6を有する点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、ダイコータ用分解・組立台1とほぼ同様としてある。
したがって、図2において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0028】
受渡し装置6は、台枠2の前方向の左右両側に設けられており、一対の固定部材3aを回動させる回動機器61を有している。
ここで、各固定部材3aは、第一実施形態の固定部材3とほぼ同様な構成としてあり、分解や組立が行われる際、第一ブロック111の左右方向の両端部が載置される載置面31aと、第一ブロック111の螺着される固定面32aとを有しており、第一ブロック111が着脱自在に固定される。ただし、固定部材3aは、ダイコータ用台車105からダイコータ11を受け取る際、受渡し装置6によって、前方向に回動されるので、第一ブロック111の他面(図2(b)においては、分解や組立が行われる際の前方側の側面)が固定面32aに載置され、かつ、第一ブロック111の一面(図2(b)においては、分解や組立が行われる際の下面)が載置面31aと接触した状態で、第一ブロック111は、固定面32aに螺着される。
なお、本実施形態の載置面31aは、第一ブロック111のみを載置する構造としてある。
【0029】
回動機器61は、一対の固定部材3aと連結された回動軸、各回動軸と連結された大歯車、各大歯車と噛み合う小歯車、各小歯車にトルクを伝達するシャフト、左方向のシャフトと連結された回動用ハンドル62、この回動用ハンドル62の回転を停止する回動防止用部材63(通常、止めねじ機構を利用する部材である。)、並びに、回動用ハンドル62からのトルクを右方向のシャフトに伝達するためのスプロケット、チャーン及び伝達シャフトなどを有する。このようにすると、回動用ハンドル62を回転させることにより、一対の固定部材3aが回動し、ダイコータ11を安全かつ迅速に受け渡すことができる。また、回動防止用部材63によって、固定部材3aを所定の回動角度に維持することができる。
【0030】
また、回動機器61は、固定部材3aの回動角度を表示する角度表示器64を有するとよい。この角度表示器64は、左方向の回動軸と連結されており、このようにすると、回動角度を確認しながら、回動用ハンドル62を回転させることができ、安全性などを向上させることができる。
なお、回動機器61の構成は、上記構成に限定されるものではない。 たとえば、上記の回動軸は、ダイコータ11の重心に近いほうがよく、このようにすると、小さなトルクでダイコータ11を回動させることができる。また、回動用ハンドル62は、ラチェット機能を有するとよく、このようにすると、安全性を向上させることができる。さらに、回動の行き過ぎを防止するストッパを設けてもよい。
【0031】
また、本実施形態の移動用固定部材4aは、二以上のボルト穴(図示せず)の形成された載置面41aを有している。すなわち、載置面41aは、ダイコータ11の第二ブロック112の左右方向の中央部の一面(図2(b)においては、分解や組立が行われる際の下面)が載置されるとともに、下方から上記のボルト穴に挿入されるボルトによって、第二ブロック112が着脱自在に固定される。このように、本発明においては、載置面41aが、固定面として機能してもよい。
なお、その他の構成は、上記ダイコータ用分解・組立台1とほぼ同様としてある。
【0032】
次に、ダイコータ用分解・組立台1aの動作などをより理解しやすいように、本実施形態のダイコータ用分解・組立台1aが用いられるダイコータ用マテリアルハンドリングシステム101などについて、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の第二実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台が用いられる、ダイコータ用マテリアルハンドリングシステムを説明するための概略縮小平面図を示している。
図3において、ダイコータ用マテリアルハンドリングシステム101は、コーティングを行うための設置台12、洗浄台102、保管台103、ダイコータ用台車105、106、スライドベース107、中間用ローラコンベア108、及び、ダイコータ用分解・組立台1aなどを有している。また、ダイコータ11は、設置フロア14に立設された一対の設置台12に取り付けられており、バックロール13に掛けられた被コーティング材(図示せず)に、コーティング液を吹き付ける。
なお、図3に示すレイアウトは、一例であり、設置フロア14の形状などに応じて、様々なレイアウトが選択される。
【0033】
洗浄台102、保管台103、ダイコータ用台車106、中間用ローラコンベア108、及び、ダイコータ用台車105は、ローラコンベアを有しており、スライドベース107に着脱自在に固定されたダイコータ11は、上記のコンベア上を安全かつ迅速に移動することができる。すなわち、ダイコータ11は、ダイコータ用台車106によって、洗浄台102、保管台3、設置台12及び中間用ローラコンベア108の間を、安全かつ迅速に移動することができる。また、ダイコータ11は、ダイコータ用台車105によって、中間用ローラコンベア108とダイコータ用分解・組立台1aとの間を、安全かつ迅速に移動することができる。
【0034】
次に、ダイコータ用台車105について、図面を参照して説明する。
図4は、本発明の第二実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台との間で、ダイコータを受け渡しする、ダイコータ用台車を説明するための概略図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は側面図を示している。
図4において、ダイコータ用台車105は、台枠150、ローラコンベア151、ガイドレール152、車輪153、昇降用基材154、昇降機器155、及び、走行機器156を有しており、本実施形態のダイコータ用分解・組立台1aに、ダイコータ11を搬送する。
【0035】
ローラコンベア151は、ハウジング511及びローラ512などを有しており、ダイコータ11の螺着されたスライドベース107は、所定の方向(左右方向)に円滑にかつ安全に移動することができる。
また、昇降機器155は、昇降用基材154のほぼ四隅に設けられたリニアブッシュ、昇降用基材154のほぼ中央に設けられたジャッキ、このジャッキと連結されたベベルギアボックス、このベベルギアボックスにトルクを伝達するシャフト、このシャフトと連結された昇降用ハンドル551、及び、昇降用ハンドル551の回転を止める昇降防止用部材552などを有している。ローラコンベア151は、昇降用基材154上に固定されており、この昇降機器155は、ローラ512上のスライドベース107を昇降させる。
【0036】
さらに、走行機器156は、後方向の車輪153どうしを連結する連結シャフト、この連結シャフトにトルクを伝達するベベルギアボックス、このベベルギアボックスにトルクを伝達するシャフト、このシャフトと連結された走行用ハンドル561、及び、走行用ハンドル561の回転を止める走行防止用部材562などを有している。
このダイコータ用台車105は、設置フロア14に敷設されたガイドレール152に沿って走行し、中間用ローラコンベア108とダイコータ用分解・組立台1aとの間で、ダイコータ11を移動させる。
【0037】
次に、上述した構成のダイコータ用分解・組立台1aの動作などについて、図面を参照して説明する。
図5は、本発明の第二実施形態にかかるダイコータ用分解・組立台の動作を説明するための要部の概略図であり、(a)はダイコータ受け渡し前の側面図を示しており、(b)は第一ブロック固定後の側面図を示しており、(c)はダイコータ回動後の側面図を示しており、(d)は第二ブロック固定後の側面図を示しており、(e)は第二ブロック移動後の側面図を示している。
図5(a)において、まず、ダイコータ用分解・組立台1aは、回動機器61によって、固定部材3aが前方向に約90°回動されており、また、移動用固定部材4aは、後方向かつ下方に位置している。
また、ダイコータ用台車105は、中間用ローラコンベア108からダイコータ11及びスライドベース107を受け取り、昇降機器155などによって、ダイコータ11及びスライドベース107を上限位置まで上昇させる。
【0038】
次に、図5(b)に示すように、ダイコータ用台車105は、走行機器156などによって、後方向に(ダイコータ11が固定面32aの上方に位置するように)移動され、スライドベース107へのダイコータ11の固定状態が解除される。続いて、昇降機器155などによって、ダイコータ11及びスライドベース107を降下させ、ダイコータ11が固定面32aに載置される。この際、スライドベース107は、ダイコータ11の左右方向のほぼ中央部を支持しているので、ダイコータ11の左右方向のほぼ端部を支持する固定部材3aと緩衝しない構成としてある。
続いて、第一ブロック111は、一面(図2(b)においては、分解や組立が行われる際の下面)が載置面31aと接触した状態で、他面(図2(b)においては、分解や組立が行われる際の前方側の側面)が固定面32aに螺着される。
なお、分解作業の内容などによっては、ダイコータ用台車105は、スライドベース107がさらに降ろされた位置で、待機していてもよい。
【0039】
次に、図5(c)に示すように、ダイコータ用分解・組立台1aは、回動機器61によって、固定部材3aが後方向に約90°回動される。なお、ダイコータ11の刃先が、真上方向を向いている状態を、回動角度0°とする。
ここで、ダイコータ11は、約90°回動されることにより(回動角度が0°となり)、第一ブロック111の下面が載置面31aに載置され、かつ、第一ブロック111の側面が固定面32aに螺着されている。このように、ダイコータ用分解・組立台1aは、回動機器61の回動用ハンドル62や回動防止用部材63などを操作することによって、重量物であるダイコータ11を安全かつ迅速に受け渡しすることができ、ホイスト式クレーン(図示せず)を用いる場合と比べて、大幅に生産性や安全性を向上させることができる。また、ダイコータ11は、ダイコータ用台車105からダイコータ用分解・組立台1aに受け渡しされると、ほぼ分解可能な状態となるので、ダイコータ11の分解作業及び組立作業においては、ダイコータ11の受渡し、分解及び組立てを、トータル的に安全かつ迅速に行うことができる。
続いて、移動防止用部材53が取り外され、移動用固定部材4aは、前方向(第二ブロック112が載置面41aの上方に位置するように)移動される。
【0040】
次に、図5(d)に示すように、ダイコータ用分解・組立台1aは、昇降防止用部材57のロックが解除され、昇降用ハンドル56の操作によって、移動用固定部材4aは、移動機器用基材52とともに上昇し、載置面41aが、ダイコータ11の第二ブロック112の左右方向の中央部の一面(図2(b)においては、分解や組立が行われる際の下面)と接触し、第二ブロック112は、載置面41に載置される。そして、昇降防止用部材57によって、移動用固定部材4aの高さ位置が保持される。続いて、第二ブロック112の一面は、載置面41aに螺着される。
【0041】
次に、第二ブロック112を介して第一ブロック111に締め込まれていた固定用ボルト(図示せず)が取り外され、続いて、通常、押ボルト(図示せず)によって、第二ブロック112がゆっくり第一ブロック111から離される。
次に、図5(e)に示すように、移動用固定部材4が後方向に(たとえば、数mm〜十数cm)移動され、シム(図示せず)が取り外され、さらに、移動用固定部材4が後方向に移動され、移動防止用部材53によって係止される。続いて、取り外したシムや第一ブロック111及び第二ブロック112の合せ面が清掃され、さらに、新たに取り付けられるシムが清掃される。
【0042】
続いて、上記の手順を戻ることにより、分解されたダイコータ11は、安全かつ迅速に組み立てられ、組み立てられたダイコータ11は、受渡し装置6によって、ダイコータ用台車105に渡され、ダイコータ用台車105によって搬送される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のダイコータ用分解・組立台1aによれば、第一実施形態のダイコータ用分解・組立台1とほぼ同様の効果を奏するとともに、回動機器61の回動用ハンドル62や回動防止用部材63などを操作することによって、重量物であるダイコータ11を安全かつ迅速に受け渡しすることができ、ホイスト式クレーン(図示せず)を用いる場合と比べて、大幅に生産性や安全性を向上させることができる。すなわち、ダイコータ用分解・組立台1aによれば、ダイコータ11の分解作業及び組立作業において、ダイコータ11の受渡し、分解及び組立てを、トータル的に安全かつ迅速に行うことができる。
【0044】
以上、本発明のダイコータ用分解・組立台について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るダイコータ用分解・組立台は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0045】
たとえば、ダイコータ11は、二分割された構成(すなわち、第一ブロック111及び第二ブロック112を有する構成)としてあるが、これに限定されるものではない。図示してないが、第一ブロック111と第二ブロック112との間に、一又は二以上のブロック(図示せず)を有する構成としてもよい。かかる場合であっても、たとえば、第二実施形態のダイコータ用分解・組立台1aは、スライド軸受51に第二(又は第二、第三、…の)の移動用固定部材(図示せず、第一ブロックと第二ブロックとの間に位置する一又は二以上のブロック用の移動用固定部材)を備えることにより、第二実施形態とほぼ同様の効果を発揮しつつ、三分割以上のダイコータ11に対応することができる。
【0046】
また、三分割以上された各ブロックの下面が、同一平面を形成する場合は、第二実施形態とほぼ同様の動作により、支障なく分解及び組立を行うことができる。
さらに、図示してないが、三分割以上された各ブロックの下面が、多角平面(通常、凸状の多角平面)などを形成する場合であっても、多角平面の各平面を水平とするように、固定部材3aを回動角度0°から後方向(通常、後方向であるが、前方向であってもよい。)に回動させ、続いて、水平となった各平面の高さ位置に、各載置面の高さ位置を合わせる(調整する)ことにより、各ブロックを順番に各移動用固定部材に載置し固定することができる。すなわち、上記の動作を各ブロックに対して行うことにより、三分割以上された各ブロックの下面が、多角平面を形成する場合であっても、第二実施形態とほぼ同様の効果を発揮しつつ、各ブロックを順番に分解することができ、また、分解した各ブロックを組み立てることができる。
【0047】
また、受渡し装置6及び昇降機器55などは、作業者によって動かされる構成としてあるが、この構成に限定されるものではなく、たとえば、モータなどの駆動装置を用いて動かす構成としてもよい。このようにすると、自動化又は半自動化を行うことができ、生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1、1a ダイコータ用分解・組立台
2 台枠
3、3a 固定部材
4、4a 移動用固定部材
5 移動装置
6 受渡し装置
11 ダイコータ
12 設置台
13 バックロール
31、31a 載置面
32、32a 固定面
33 基台
41、41a 載置面
42 固定面
50 水平移動機器
51 スライド軸受
52 移動機器用基材
53 移動防止用部材
55 昇降機器
56 昇降用ハンドル
57 昇降防止用部材
58 リニアブッシュ
61 回動機器
62 回動用ハンドル
63 回動防止用部材
64 角度表示器
101 ダイコータ用マテリアルハンドリングシステム
102 洗浄台
103 保管台
105 ダイコータ用台車
106 ダイコータ用台車
107 スライドベース
108 中間用ローラコンベア
111 第一ブロック
112 第二ブロック
150 台枠
151 ローラコンベア
152 ガイドレール
153 車輪
154 昇降用基材
155 昇降機器
156 走行機器
511 ハウジング
512 ローラ
551 昇降用ハンドル
552 昇降用ストッパ
561 走行用ハンドル
562 走行用ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイコータを構成する複数のダイ要素のうちの一つのダイ要素が着脱自在に固定される固定部材と、
前記複数のダイ要素のうちの他のダイ要素が着脱自在に固定される移動用固定部材と、
前記移動用固定部材を移動させる移動装置と
を備えたことを特徴とするダイコータ用分解・組立台。
【請求項2】
前記固定部材及び前記移動用固定部材が、前記ダイ要素の載置される載置面と、前記ダイ要素の固定される固定面とを有することを特徴とする請求項1に記載のダイコータ用分解・組立台。
【請求項3】
前記ダイコータを搬送するダイコータ用台車との間で、前記ダイコータを受け渡しする受渡し装置を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のダイコータ用分解・組立台。
【請求項4】
前記受渡し装置が、前記固定部材を回動させる回動機器であり、前記回動機器が、前記固定部材を回動させる回動用ハンドル、及び、前記固定部材の回動を止める回動防止用部材を有することを特徴とする請求項3に記載のダイコータ用分解・組立台。
【請求項5】
前記回動機器が、前記固定部材の回動角度を表示する角度表示器を有することを特徴とする請求項4に記載のダイコータ用分解・組立台。
【請求項6】
前記移動装置が、前記移動用固定部材を水平方向に移動させる水平移動機器と、前記移動用固定部材を昇降させる昇降機器とを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイコータ用分解・組立台。
【請求項7】
前記水平移動機器が、移動機器用基材、スライド軸受、及び、前記移動用固定部材の水平方向の移動を止める移動防止用部材を有することを特徴とする請求項6に記載のダイコータ用分解・組立台。
【請求項8】
前記昇降機器が、前記移動機器用基材を昇降させる昇降用ハンドル、及び、前記移動機器用基材の昇降を止める昇降防止用部材を有することを特徴とする請求項6又は7に記載のダイコータ用分解・組立台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−183251(P2011−183251A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48165(P2010−48165)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】