説明

ダイナミックフォトリソグラフィを行うための空間光変調器及び方法

空間光変調器(110)は、帯域幅を低減して画像を基板(150)上にフォトリソグラフィ転写するように構成される。空間光変調器(110)は、データを記憶し相互間でデータを移動させるように構成された複数のメモリ素子(902)を備える。光変調素子(210)は、メモリ素子(902)のそれぞれと通信し、各メモリ素子(902)に記憶されているデータに応答して変化するように動作可能である。メモリ素子(902)は、データをメモリ素子(902)間で双方向にシフトするシフトレジスタとして構成することができる。各メモリ素子(902)はフィードバック素子(920)をさらに備えることができ、フィードバック素子は、光電流効果を最小化するように電圧を維持する一助とするために利用される「弱」フィードバック素子である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的にはフォトリソグラフィに関し、特にダイナミックフォトリソグラフィシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、それぞれ本願と同日に出願された特許代理人整理番号10030518、「REAL TIME IMAGE RESIZING FOR DYNAMIC DIGITAL PHOTOLITHOGRAPHY」と題する米国特許出願、特許代理人整理番号10031375、「DEFECT MITIGATION IN SPATIAL LIGHT MODULATOR USED FOR DYNAMIC PHOTOLITHOGRAPHY」と題する米国特許出願、及び特許代理人整理番号10040070、「LIQUID CRYSTAL CELL THAT RESISTS DEGRADATION FROM CXPOSURE TO RADIATION」という名称の米国特許出願に主題により関連する。
【0003】
[関連技術の説明]
フォトリソグラフィとは、基板上にパターン又は画像を転写する方法である。フォトリソグラフィのいくつかの工業用途としては、フラットパネルディスプレイ、集積回路(IC)、ICパッケージ、平面光波回路(フォトニクス)、プリント回路基板、フレキシブル回路/ディスプレイ、及びウェハバンプ等の製品の製造が挙げられる。その最も単純な形態では、フォトリソグラフィシステムは、フォトレジスト層等の感光表面を有する基板の上に配置されたマスク又は器具に光を透過させることによって動作する。通常、マスクは、固定で不透明のパターンが表面上に刻まれた透明材料で形成される。基板表面の感光性により、マスクに接触して露光されると、マスクに刻まれたパターンが基板表面上に転写される。
【0004】
マスクの使用は高度の精度及び反復性をもたらすが、従来の接触フォトリソグラフィシステムにはいくつかの制約がある。1つの制約は、基板のサイズをマスクのサイズ以下に制約する製造仕様である。大きな基板の場合、基板面積全体を覆うのに十分なサイズのマスクを製造して取り扱うことは困難である。これに加えて、技術が進歩したため、基板表面上にフォトリソグラフィ転写される外観(feature:特徴)のサイズは0.5μm以下に微細化した。このような小さな外観サイズを実現するには、より高度なシステムにおいて投射光学系を使用してマスクを基板から切り離し、転写される外観のサイズを光学的に低減することができる。しかし、光学的低減システムを使用して基板全体のパターンを転写するには、マスクのサイズは必然的に基板のサイズよりも大きいであろう。大きなマスクは扱いにくいとともに製造費が高い。大きなマスクに関連する問題を解消するために、多くのフォトリソグラフィシステムが、パターン全体の異なる部分を含む複数のマスクを使用している。パターンは、マスクに対して基板表面の位置を変えることにより基板表面上で共につなぎ合わせられる。
【0005】
しかし、マスクを設計し、パターンをマスクに埋め込むコストは相当なものであるため、多数のマスクを製作するには法外なコストがかかり得る。同様に、頻繁な変更が行われる用途では、変更が行われる度に新しいマスクを製作することは費用効率的ではないであろう。そのため、製造業者が、変更の都度、新しいマスクを必要とすることなくマスクパターンを動的に変更可能なダイナミックフォトリソグラフィシステムが開発された。ダイナミックフォトリソグラフィシステムは一般に、空間光変調器(SLM)を採用して、基板表面上にイメージングされるパターンを画定する。SLMは、電気信号に応答して画像のピクセルを画定する個々に制御可能な光変調素子を含む電気的に制御される装置である。
【0006】
通常、0.5μm以下の外観サイズでは、数平方cm以下の面積のSLM内に数千万もの光変調素子がある。SLMサイズが小さい場合、基板の全面積のイメージングに複数回の露光が一般に必要である。SLMにより形成される画像は容易に再構成可能なため、最終画像をセクションに分け、画像セクションの1つを基板表面の適切な領域に転写するようにSLMを構成し、基板とSLMとの相対位置をシフトさせ、画像全体が基板表面上に転写されるまで画像セクション毎にこのプロセスを繰り返すという比較的単純なプロセスである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、SLMに欠陥がないと仮定するのは非現実的である。統計上、SLMの数千万もの光変調素子のうち少なくとも数個に欠陥があることになる。複数のイメージングプロセスにより、欠陥のある各光変調素子は基板表面上に多くの欠陥を生じさせることになる。欠陥のある光変調素子の影響を軽減するためのメカニズムが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明の概要]
本発明の実施の形態は、フォトリソグラフィシステムに使用するための空間光変調器を提供する。空間光変調器は、データを記憶し相互間でデータを移動させるように構成された複数のメモリ素子を備える。光変調素子は、各メモリ素子と通信し、各メモリ素子に記憶されているデータに応答して変化するように動作可能である。一実施の形態では、データをメモリ素子間で移動させるには、メモリ素子をシフトレジスタとして構成することができる。更なる実施の形態では、シフトレジスタ構成は、データを双方向にシフトするように構成することができる。別の実施の形態では、各メモリ素子はフィードバック素子を備えることができ、このフィードバック素子は、光電流効果を最小化するように電圧を維持する一助とするために利用することができる「弱」フィードバック素子である。
【0009】
本発明の他の実施の形態は、画像を表すデータが、各光変調素子と通信するメモリ素子にロードされる、フォトリソグラフィを行うプロセスを提供する。光変調素子のうちの特定のものが、各メモリ素子にロードされたデータに応答して変化し、画像を基板上に転写する。データはメモリ素子間でシフトされ、光変調素子のうちの更なるものが、シフトされたデータに応答して変化し、画像を基板上に転写する。
【0010】
フォトリソグラフィシステム内の空間光変調器のメモリ素子を通してデータをシフトすることにより、画像転写毎に空間光変調器にロードされるデータ量が低減し、それによってスループットレートが上がる。これに加えて、空間光変調器のメモリは、データを双方向に移動するように構成することができるため、基板を双方向に平行移動することができ、これによりスループットレートをさらに上げることができる。さらに、本発明は、上述した特徴及び利点に加えて、又はこれらに代えて他の特徴及び利点を有する実施の形態を提供する。こういった特徴及び利点の多くは、以下の図面を参照して以下の説明から明らかである。
【0011】
開示する本発明について、本発明のサンプルの実施の形態を示し、参照により本明細書に援用される添付図面を参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[例示的な実施形態の詳細な説明]
図1は、本発明の実施形態による、画像を基板150上にフォトリソグラフィ転写するダイナミックフォトリソグラフィシステム100を示す。フォトリソグラフィシステム100は、光104を出力するように動作可能な光源102を備える。光源102は、エキシマレーザ等のレーザ、又は当該技術分野において理解される他の非レーザ源であることができる。光源102は、ビーム整形光学系106に光学的に結合される。ビーム整形光学系106の出力は、空間光変調器110に向けられる光108である。空間光変調器110は、光108を選択的に伝達するように動作可能な光変調素子(図示せず)を備える。光変調素子については図2A及び図2Bと併せて以下さらに詳述する。一実施形態では、光変調素子は液晶素子である。しかし、他の実施形態では、光変調素子はマイクロミラー又は反射、透過、又は別の方法で光を選択的に伝達することができる別の種類の光学素子であることを理解されたい。
【0013】
空間光変調器110の出力は、光のない暗領域及び選択された光変調素子により伝達された複数の光ビーム112a〜112n(まとめて112)で構成される明領域を含み、パターンを含む画像の少なくとも一部を成すようにしている。光ビーム112は投射光学系(projection optics)114に向けられ、光ビーム112を基板150上に向けるように投射光学系114は光学的に位置合わせされる。フォトレジスト層等の感光層(図示せず)が、基板150の表面上にある。感光層は、光ビーム112に応答して反応し、基板150の表面上にパターンを生成する。一実施形態では、基板150は走査台120に取り付けられて、基板150を空間光変調器110に対して任意の方向に移動させる。走査台120は、例えば、高精度走査台であることができる。別の実施形態では、基板150は静止したままであり、光学系及び/又は光ビーム112が基板150に対して移動する。いずれの構成でも、基板150及び空間光変調器110のうちのいずれか一方が他方に対して移動して、画像を基板150上に転写する。
【0014】
空間光変調器110は、光変調素子に一意に結合されるピクセル駆動回路(図示せず)をさらに備える。ピクセル駆動回路については図2A、図2B、及び図9と併せてより詳細に後述する。ピクセル駆動回路は、光変調素子の状態を定義するデータを記憶する。例えば、反射式の光変調素子は、光変調素子に関連するピクセル駆動回路にデータ(例えば、論理ローデータ値及び論理ハイデータ値)を記憶することによって、受け取った光108を、基板150上に反射させるか、又は反射させないように、反射状態又は非反射状態に選択的に変更することが可能である。実質的に、空間光変調器110は、基板150の感光層上にイメージングされるパターンを形成するダイナミックマスク(dynamic mask:動的マスク)として動作する。
【0015】
図2A及び図2Bは、画像のピクセルを画定する液晶(LC)光変調素子210を有するSLM110の例を示す。図2A及び図2BでのSLMは、特定の偏光の光を選択的に反射して、1つ又は複数の特徴を含むパターン画像を基板上に転写する個々のLC光変調素子210を備えた反射型液晶(LCOS:liquid crystal on silicon)SLM100である。図2AはLCOS SLMの部分の分解組立図であり、図2BはLCOS SLM110のLC光変調素子210の断面図である。図2Aに見ることができるように、LCOS SLM110は、上にピクセル電極215が配置された基板200を備える。ピクセル電極215は、行列配列に、又は非直交パターンに配置することができる。各ピクセル電極215の下の基板200内には、上にあるピクセル電極215を駆動するために接続されたピクセル駆動回路250が配置される。基板200の上には、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電材料の層235が被覆された透明ガラス230が配置される。ITO層235は、LCOS SLM110の共通電極である。基板200とガラス230の間には、共通電極235とピクセル電極215の間に電界が確立されることに応答して反応する液晶材料の層220が封入される。
【0016】
したがって、図2Bに示すように、ピクセル電極215は液晶材料220、共通電極235、ピクセル駆動回路250、及び偏光子260と併せて、画像のピクセルを画定する個々の光変調素子210のそれぞれを形成する。ピクセル電極215と共通電極235の間に印加される電圧に応じて、液晶材料220は各光変調素子210において、入射光の偏光状態を変化させるか、又は変化させないように反応する。光変調素子210はSLM110の偏光子260と併せて、特定の偏光の光を図1の基板150上に向けて反射させるか、又は反射させないことを可能とする。偏光子260は当該技術分野において既知のように1つ又は複数の偏光子を含むことを理解されたい。
【0017】
別の実施形態では、光変調素子210が非2値(すなわち、完全にオン又はオフではない)状態になって「グレースケール」反射を生成するように、ピクセル電極215を、液晶材料220の不完全反応(partial reaction:部分反応)を発生させる電圧で駆動することができる。例えば、液晶材料220の部分反応を発生させる電圧は通常、完全に位相があっていない、すなわち位相がずれた信号をピクセル電極215及び共通電極235に印加し、それによって当該技術分野において理解されるように0パーセントと100パーセントの間のデューティサイクルを発生させることによって生成される。
【0018】
数個の光変調素子210しか図2A及び図2Bに示していないが、各LCOS SLM110は通常、数千万もの光変調素子を備える。例えば、一実施形態では、LCOS SLM110は、光変調素子の16,384列×606行の行列を備える。このような多数の光変調素子の場合、欠陥のないLCOS SLM110を製造することは難しく、また費用がかさむ。これに加えて、LCOS SLM110の面積は通常、数平方cm以下である。
【0019】
このため、これより図3を参照すると、基板150の全面積をイメージングするには複数回の露光が一般に必要である。各露光において、最終画像300の異なるセクション300a〜300g、…、300Nが基板150の対応する領域320上に転写される。大きな基板150の場合、基板面積全体をイメージングするには基板150の列320を複数回通過する必要があり得る。精密ステージを使用する場合、各露光の位置合わせを入念に制御して、画像セクション300a〜300g、…、300Nを共にシームレスに(seamlessly:継ぎ目なく)つなぎ合わせることができる。しかし、欠陥のある各光変調素子では、対応するピクセル欠陥310が基板表面上に現れる。複数回の露光により、欠陥のある各光変調素子は基板表面上にN個のピクセル欠陥310を発生させる。但し、Nは、最終画像300が分けられるセクション300a〜300g、…、300Nの数である。
【0020】
したがって、本発明の実施形態によれば、図4に示すように、各画像セクション(例えば、図3からの画像セクション300a)が画像サブセクション400a〜400fに分けられ、このうちの1つ又は複数が画像の一部に対応し、空間光変調器110の光変調素子210は光変調バンク450a〜450fに論理的に分けられる。図4では、SLM110の光変調素子210を行列状に配置して示す。行数及び列数は用途に依存する。光変調バンク450a〜450fは、光変調素子210の1つ又は複数の行、光変調素子210の1つ又は複数の列、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。例えば、図4では、光変調素子210の行が6つの行バンク450a〜450fに分けられた。各バンク450a〜450fは、1つのみの画像サブセクション400a〜400fを転写する。したがって、バンク450aは画像サブセクション400aを転写し、バンク450bは画像サブセクション400bを転写し、以下同様である。欠陥のある光変調素子の影響を最小化するために、各画像サブセクション400a〜400fは、SLM110内の2つ以上の光変調バンク450a〜450fにより複数回基板上に転写される。このプロセスを本明細書では光学的オーバーサンプリングと呼ぶ。
【0021】
光学的オーバーサンプリングの例を図5及び図6に示す。図5は、タイムシーケンスT〜Tにわたり画像の画像サブセクションをフォトリソグラフィ転写する場合の例示的なSLM110を示し、図6は、同じタイムシーケンスT〜Tにわたり画像の転写された画像サブセクションをフォトリソグラフィにより受け取る場合の例示的な基板の部分を示す。図5では、時間Tにおいて、画像セクション300aのすべての画像サブセクション400a〜400eが、基板への転写のためにSLM110の各バンク450a〜450fにロードされて示される。時間tにおいて、画像サブセクション400aはSLM110の外へ移されており、画像サブセクション400b〜400fは、SLM110内のバンク450a〜450eにそれぞれ移されている。これに加えて、新しい画像セクション300bの画像サブセクション500aがSLM110のバンク450fにロードされている。時間Tにおいて、画像サブセクション400bはSLM110の外へ移され、画像サブセクション400c〜400fがSLM110内のバンク450a〜450dにそれぞれ移されている。これに加えて、画像セクション300bの画像サブセクション500aがSLM110のバンク450eに移され、画像セクション300bの新しい画像サブセクション500bがSLM110のバンク450fにロードされている。
【0022】
これより図6を参照して、基板150の一部(例えば、列320)を複数の行r〜rに分けて示す。各行r〜rは、画像の画像サブセクションの1つを受け取る基板150の領域を画定する。各行r〜rは、随時、空間光変調器のバンク450a〜450f(図5に示す)のうちの1つのみによって露光される。図5の考察と併せて、時間Tにおいて、SLM110のフットプリント600aが、SLM110の6つのバンク450a〜450fに対応する、基板150の6つの行r〜rを覆って示される。フットプリント600内の基板150の各行は、SLMのバンク450a〜450f内の光変調素子の状態に応じて照明源(例えば、図1のレーザ102)のフラッシュ又はストロボによって露光される。その結果、画像サブセクション400a〜400fが各行r〜r上に転写される。時間Tにおいて、基板150は空間光変調器に対して1行に等しい距離だけ移動しており、照明源の次のストロボにおいて、SLM110のフットプリント600bが、SLM110の6つのバンク450a〜450fに対応する、基板150の6つの行r〜rを覆って示される。SLMのバンク450a〜450fに記憶されている画像サブセクション400b〜400fは、基板150の各行r〜r上に転写される。時間Tにおいて、基板150は空間光変調器に対してさらに1行移動しており、照明源の次のストロボにおいて、SLM110のフットプリント600cが、SLM110の6つのバンク450a〜450fに対応する、基板150の6つの行r〜rを覆って示される。SLMのバンク450a〜450fに記憶されている画像サブセクション400c〜400f及び500a、500bは、基板150の各行r3〜r8上に転写される。一般に、基板150の行は基板150と空間光変調器との相対移動により上向きにシフトするために、空間光変調器の光変調バンクに記憶されている画像サブセクションもそれに従って、光変調バンク内で上向きにシフトする。
【0023】
画像サブセクションをバンク450a〜450fの間で、基板150が空間光変調器110に対して移動する距離に光学的に等しい空間光変調器110上の距離だけ移動させることにより、各画像サブセクションは各バンク毎に基板150上に別個に転写され、それによって各画像サブセクションが複数回でイメージング又は転写される。6回の露光の過程で(このうちの3つのみを図6に示す)、基板150の各行(例えば、行r〜r)が、空間光変調器110の6つの異なる組(バンク)の光変調素子により別々に6回露光される。各画像サブセクションの基板のこの「オーバーサンプリング」は、欠陥のある「オフのままの(stuck off)」光変調素子による、最終製品中の欠陥を最小化する。更なる実施形態では、欠陥のある「オンのままの(stuck on)」光変調素子による欠陥の数を低減するために、基板150上の感光層は2回以上の露光に等しい反応しきい値を有する。
【0024】
したがって、光変調バンク450aに欠陥のあるオン又はオフの光変調素子がある場合であっても、残りのバンク450b〜450fのそれぞれの行及び列により対応する光変調素子に欠陥がある可能性はかなり低い。したがって、基板上に最終的に転写されるパターンに欠陥がある確率は低い。基板150の各領域を露光する回数は、空間光変調器内の光変調素子の数及び空間光変調器110を光変調バンク450a〜450fに分ける様式に依存することを理解されたい。さらに、用途に応じて、基板及び画像サブセクションを更なる光学的オーバーサンプリングのために双方向に移動させることができる。
【0025】
基板上に転写されるパターンの欠陥を低減することに加えて、光学的オーバーサンプリングはいくつかの他の利益ももたらす。オーバーサンプリングにより、基板が露光される光エネルギーの総量が、複数回の露光にわたって積分され、それによって基板上により多くのエネルギーを衝突させることができる。光学的オーバーサンプリングは、光変調素子が「オン」又は「オフ」であるような2値特性を有するSLMを使用する場合に、画像にグレースケールを実現するためにも使用することができる。画像サブセクションは、露光毎に、所望のグレースケールを生成するように光変調素子の状態を変更することができる。光学的オーバーサンプリングの別の利益は、レーザベースのフォトリソグラフィシステムでのスペックルの低減である。当該技術分野において理解されるように、レーザにより発生する光のコヒーレント性質により、干渉パターンが光強度にスペックル又は空間的なばらつきを発生させ、これはリソグラフィプロセスの品質を劣化させる恐れがある。光学的オーバーサンプリングは、欠陥のある光変調素子の影響を低減するのと同じように、基板上のスペックルパターンの影響を低減する。
【0026】
図7Aは、本発明の実施形態による、基板の光学的オーバーサンプリングを行う例示的なフォトリソグラフィプロセス700を示すフローチャートである。フォトリソグラフィプロセスはブロック702において開始する。ブロック704において、感光層を有する基板がSLMに対して位置決めされる。ブロック706において、感光層の領域が、SLMの第1の組の光変調素子の状態によって画定される画像の部分で露光される。ブロック708において、基板とSLMとの相対位置が変更される。ブロック710において、感光層の同じ領域が、SLMの第2の組の光変調素子の状態によって画定される画像の同じ部分で露光される。一実施形態では、第2の組の光変調素子内の個々の光変調素子の状態は、第1の組の光変調素子内の対応する光変調素子の状態と同じである。別の実施形態では、第2の組の光変調素子内の個々の光変調素子の状態は、第1の組の光変調素子内の対応する光変調素子の状態から変更される。フォトリソグラフィプロセスはブロック712において終了する。
【0027】
図7Bは、本発明の実施形態による画像の部分の複数回の転写を行う例示的なフォトリソグラフィプロセス750を示すフローチャートである。フォトリソグラフィプロセスはブロック752において開始する。ブロック754において、SLMに、基板の領域上にフォトリソグラフィ転写する画像の一部が提供される。ブロック756において、SLMは、SLM内の第1の組の光変調素子を使用して画像の一部を基板の領域上に転写する。ブロック758において、SLMは、SLM内の第2の組の光変調素子を使用して画像の一部を基板の同じ領域上に転写する。フォトリソグラフィプロセスはブロック760において終了する。
【0028】
図8は、図1のフォトリソグラフィシステム100を制御するように動作可能なコンピューティングシステム802の構成800を示すブロック図である。コンピューティングシステム802は、ソフトウェア806を実行するように動作可能な処理ユニット804を備える。処理ユニット804は、いずれの種類のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス、デジタル信号プロセッサ、又は他の処理装置であってもよい。処理ユニット804は、メモリユニット808及び入出力(I/O)ユニット810に結合される。I/Oユニット810は有線であっても無線であってもよい。処理ユニット804は、記憶ユニット812、及びフォトリソグラフィシステム100にタイミング信号816を生成するタイミング回路814にさらに結合される。電子ディスプレイ820がコンピューティングシステム802に拡張的に(optionaly:随意に)結合され、図1の基板150上にイメージングするために空間光変調器110に伝達する画像(又は画像の一部)300を表示するように動作可能である。
【0029】
一実施形態では、タイミング信号816は、露光サイクル中に台120、空間光変調器110、及びレーザ102の動作を制御する。タイミング信号816の例としては、画像300の一部を表すデータ822を空間光変調器110に順次クロックするアクセス制御信号、レーザ102のフラッシュを開始するストロボ又は露光信号、並びに空間光変調器110、レーザ102、及び台102を駆動する他のクロック信号が挙げられる。プロセッサ804はタイミング回路814及びI/Oユニット810と通信して、データ822及びタイミング信号816を、空間光変調器110並びにレーザ102及び台120等のフォトリソグラフィシステム100の他の構成要素に伝達する。例えば、露光サイクル中、データ822は、アクセス制御信号を使用してコンピューティングシステム802から空間光変調器110に送られ、クロック信号がSLM110、台120、及びレーザ102を駆動して、データ822に応じてSLM110内の光変調素子の状態を変更し、画像転写のためにSLM110と台120を位置合わせし、レーザ102のフラッシュを開始するストロボ又は露光信号のタイミングを制御する。
【0030】
光学的オーバーサンプリングを実施するために、各露光サイクル中にSLM110に伝達されるデータ822は、画像の少なくとも1つの新しい画像サブセクションを含む(図4に示すように)。一実施形態では、データ822は新しい画像サブセクション(複数可)及び前の露光サイクル中に基板に転写された1つ又は複数の画像サブセクションの両方を含む。例えば、各画像セクションが6つの画像サブセクションに分けられる場合、データ822は、先に基板に転写されている5つの画像サブセクション及び1つの新しい画像サブセクションを含む。しかし、数千万もの光変調素子があり得る状態であれば、全ての画像サブセクションを表すために必要なデータ822をSLM110に毎回書き込むには、多量のデータ822をI/Oユニット810とSLM110の間でやりとりする必要がある。このような大きなI/O帯域幅により、フォトリソグラフィシステム100の消費電力は高く、スループットスピードは制限される。
【0031】
したがって、別の実施形態では、各露光サイクル中にSLM110に伝達されるデータ822は、帯域幅低減のために画像の新しい画像サブセクション(複数可)のみを含み、先に転送済みの画像サブセクションはいずれも含まず、それによって消費電力を低減するとともにスループットスピードを上げる。基板に先に転写済みの画像サブセクションはSLM110内に記憶され、SLM110内部で移動する。
【0032】
図9は、リソグラフィプロセス中に内部でデータを移動することができる例示的な空間光変調器110の部分概略図である。SLMは光変調素子210のアレイ900を備え、各光変調素子210は、光変調素子210により画定されるピクセルの状態の制御を少なくとも部分的に担当する関連のピクセルコントローラ904と通信する、図2A及び図2Bのピクセル駆動回路250の少なくとも一部に対応するメモリ素子902を備える。図9では、各メモリ素子902は、入力ライン906及びフォワードアクセス制御素子908を含むスタティック(static:静的な)メモリ素子である。図示の例では、フォワードアクセス制御素子908は、シフトフォワード動作中にフォワードアクセス制御素子908の状態を制御するように動作可能なフォワードアクセス制御ライン910を有するトランジスタである。各メモリ素子902は、シフトリバース動作中にリバースアクセス制御素子912の状態を制御するように動作可能なリバースアクセス制御ライン914を有するリバースアクセス制御素子912をさらに備える。したがって、メモリ素子902は、データをアレイ900の隣接する列の間で双方向にシフトするように構成される。これに加えて、アレイ900内の光変調素子210の単一の行しか示していないが、メモリ素子902は、データをアレイ900の隣接する、又は隣接しない行及び/又は列の間で双方向にシフトするようにさらに構成可能なことを理解されたい。
【0033】
フォワードアクセス制御素子908及びリバースアクセス制御素子912のそれぞれの共通ノード916が、メモリセル917に結合される。一実施形態では、メモリセル917は画像の1つのピクセルを表すデータを記憶するために利用される双安定回路又はスタティックラッチである。メモリセル917は、リプルクロック(ripple clock:脈動的なクロック)を使用してデータをメモリセル917間で伝搬させるラッチ(すなわち、スイッチ及びバックツーバック(back-to-back:相互補完の)インバータ)として実施されて示される。リプルクロックについては図11A及び図11Bを参照して以下さらに詳細に説明する。しかし、他の実施形態では、メモリセル917は、データをメモリセル917間で伝搬するためにリプルクロックを必要としないマスタ−スレーブフリップフロップとして実施することができる。
【0034】
各メモリセル917は、フォワードインバータ918及びフィードバックインバータ920を備える。フィードバックインバータ920は、現在の状態(すなわち、ロー状態又はハイ状態)を安定位置に向けて補強するために利用される「弱」フィードバック素子である。したがって、共通ノード916がロー電圧レベル(すなわち、ロー状態)である場合、フォワードインバータ918は、出力ノード922に結合された出力においてロー状態をハイ状態に反転させる。出力ノード922でのハイ状態はフィードバックインバータ920への入力であり、フィードバックインバータ920はノード916上にロー電圧レベルを出力する。弱フィードバックインバータ920から出力されたロー電圧レベルは、ノード916上のロー状態を補強するが、制御はしない。同様に、弱フィードバックインバータ920から出力されたハイ電圧レベルは、ノード916上のハイ状態を補強するが、制御はしない。
【0035】
出力ノード922はピクセルコントローラ904に結合され、これもまた光変調素子210の出力ノードである。一実施形態では、ピクセルコントローラ904は、LC光変調素子のピクセル電極(図2A及び図2Bに示す215)である。出力ノード922上の電圧レベルは、LC光変調素子のピクセル電極に印加されて、ピクセル電極に印加された電圧レベルがLC光変調素子の共通電極235に印加された電圧と異なる場合に、LC光変調素子の状態を変更させる。他の実施形態では、ピクセルコントローラ904は、マイクロミラーの状態又は位置を制御する電気機械装置である。
【0036】
複数の光変調素子210が電子的に相互接続される。一実施形態では、光変調素子210は、図9に示すようなシフトレジスタ構成で接続される。シフトレジスタ構成では、第1の光変調素子(例えば、光変調素子210a)の出力ノード922は、第2の光変調素子(例えば、光変調素子210b)の入力ライン906に接続される。第2の光変調素子210bの出力ノード922は、第3の光変調素子(図示せず)の入力ラインに接続され、(N−1)番目のピクセル(図示せず)の出力ノードがN番目のピクセル(図示せず)の入力ライン906に接続されるまで以下同様であり、それによってフォワード接続回路網が形成される。入力データをフォワード接続回路網にロードするには、入力データが第1の光変調素子210aの入力ライン906に提供され、データが第1の光変調素子210aから第2の光変調素子210bにシフトされ、以下同様である。並列データロード及びシフト構成を、データがアレイ900内の最後の光変調素子210に入力されるリバース接続回路網について実施することができることを理解されたい。
【0037】
別の実施形態では、図10に示すように、従来のダイナミックメモリセル800が、図9に示すスタティックメモリセル917に代えて空間光変調器110に使用される。図示するように、メモリセル800は、データを記憶する充電コンデンサ802を備える。充電コンデンサ802はインバータ804に結合される。しかし、メモリセル800は、メモリセル800のシリコンへの照射入射によって発生する、光で誘起されたキャリアを受ける。光で誘起されたキャリアは、充電コンデンサ802の電荷又は電圧の値を増加させる傾向がある。増加した電荷は、充電コンデンサ802のロー状態を望ましくないことにハイ状態に切り替えてしまう恐れがある。しかし、光によって発生するキャリアの影響を最小化するように取りはからうことができる。遮光等の物理的な技法を使用して、この問題の程度を軽減することができる。不要なキャリアを収集することに頼る他の技法について、米国特許第6,586,283号に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。しかし、光で誘起されるキャリアに関連する問題を実質的に回避するには、SLM110に、図9に示すスタティックメモリセル917を設計することができる。
【0038】
図11Aは、光変調素子210の例示的な構成1100のブロック図である。光変調素子210には、入力ライン906上のデータがメモリ素子902(図9に示す)を通して伝搬するようにするためのフォワードアクセス制御ライン910が結合される。光変調素子210は素子N、N−1、N−2、N−3等と見なすことができ、N番目の光変調素子210は最後の光変調素子であり、(N−3)番目の光変調素子210は第1の光変調素子である。
【0039】
図11Bは、データを図11Aの光変調素子210間でシフトするためのタイミング図1105である。図11Bに示すように、リプルクロックにより、又は他の方法で発生する非重複パルスシーケンスを利用して、光変調素子を通してデータをシフトする。図示するように、アクセスパルス1102が、時間tとtの間にフォワードアクセス制御910ラインを介してN番目の光変調素子のフォワードアクセス制御素子908に印加されて、N番目の光変調素子の外へデータを移動させる。(N−1)番目、(N−2)番目、及び(N−3)番目の光変調素子のメモリ素子の他のアクセスパルス1102のそれぞれは、データが、時間tとtの間に(N−1)番目の光変調素子からN番目の光変調素子に、時間tとtの間に(N−2)番目の光変調素子から(N−1)番目の光変調パルスに、時間tとtの間に(N−3)番目の光変調素子から(N−2)番目の光変調素子に順次移動するように順次パルスされて、データが光変調素子を通してシフトされる際に保持されるように保証する。同様のシフトメカニズムを使用して、データを逆順にシフトして双方向でのデータ移動を可能にできることを理解されたい。
【0040】
光変調素子が、図2A及び図2Bに示すように液晶素子である場合、液晶素子の両端の正味DC値は、液晶素子への損傷を回避するためにゼロであるべきである。本発明の実施形態では、共通電極の電圧を交互にし、露光間隔間でデータを反転させることによりDCバランスを実現することができる。
【0041】
例えば、図12Aは、交互になっている共通電極電圧1202を示すタイミング図である。当該技術分野において理解されるように、液晶素子の状態は、共通電極とピクセル電極の間の電位差によって決まる。図示の例では、オフ状態1210が、共通電極信号1202とピクセル電極信号1204の間に電位差が存在しない場合であり、したがって電界は発生せず、光を基板150上に反射させる。オン状態1212(すなわち、共通電極信号1202とピクセル電極信号1204の間に電位差が存在する場合)では、電界が発生し、光は基板150上に反射されない。他の構成では、オン状態とオフ状態とを逆にすることができる。
【0042】
電界の符号は、共通電極信号1202の値及びピクセル電極信号1204の値に依存する。例えば、電界は、ピクセル電極信号1204をゼロ電位にし、共通電極信号1202を単位電位(unit potential)(論理1に対応する)にすることにより、又は共通電極信号1202をゼロ電位にし、ピクセル電極信号1204を単位電位にすることによって得ることができる。いずれの場合でも、共通電極とピクセル電極の間に電位差が存在し、したがって図12Aに示す例では、電界は非ゼロであり、液晶素子はオン状態にある。電界の符号は液晶素子の状態を決定するに際して重要ではないが、液晶素子のイオン化を回避するために、電界の正味値は平均してゼロになるべきである。
【0043】
図12Aに示すように、時間間隔t中、共通電極信号1202は電圧レベル0ボルトを有し、ピクセル電極信号1204は電圧レベル0ボルトを有する。共通電極信号1202とピクセル電極信号1204の間の電圧差はゼロであるため、液晶素子のピクセル状態1206はオフ1210である。時間間隔t及びt中でも、共通電極信号1202とピクセル電極信号1204の間の電圧差はゼロであるため、ピクセル状態1206はオフ状態1210に保たれる。時間間隔t及びt中、共通電極信号1202とピクセル電極信号1204の間の電圧差により、ピクセル状態1206はオン1212になる。しかし、オン状態1212は、ピクセル電極信号1204に対して共通電極信号1202を交番することによって実現されるため、電界の符号は時間t及びtで逆になる。したがって、DCバランスが保たれる。時間間隔t及びt中、ピクセル状態1206は再びオフ1210である。
【0044】
共通電極はデータシフト毎に交番してDCバランスを保つことから、液晶素子を通してデータをシフトさせ、画像の光学的オーバーサンプリングに正しいピクセル状態を保持するためにデータ反転技法が必要である。図12Bは例示的なデータ反転技法を示す。図12Bは、図11Aに示す例示的なピクセル構成を使用して、液晶素子を通してのデータのシフトを示す。図12Bに見て取ることができるように、共通電極信号1102の電圧レベル(論理状態)は時間t〜tにわたって交互になる。ピクセル電極信号に対応するデータが(N−3)番目の液晶素子から(N−2)番目の液晶素子、(N−1)番目の液晶素子、N番目の液晶素子に液晶素子を通して伝搬するにつれ、ピクセル電極信号の論理状態は各シフト毎に反転して同じピクセル状態を保つ。例えば、時間tにおいて、共通電極信号は論理1状態であり、(N−3)番目の液晶素子のピクセル電極信号もまた論理1状態である。したがって、電界は時間tにおいて(N−3)番目の液晶素子において発生せず、(N−3)番目の液晶素子はオフ状態である。時間tにおいて、データは(N−3)番目の液晶素子から(N−2)番目の液晶素子にシフトされており、時間tにおいて(N−2)番目の液晶素子を、時間tにおける(N−3)番目の液晶素子の状態と同じ状態(オフ状態)にさせる。しかし、DCバランスを保つために、共通電極信号は時間tでは0論理状態に反転している。したがって、データが(N−3)番目の液晶素子から(N−2)番目の液晶素子にシフトするとき、(N−2)番目の液晶素子も時間tにおいて0論理状態であるようにデータは反転され、それによって(N−2)番目の液晶素子を時間tでオフ状態にすることを可能にする。再び図9を参照すると、このようなデータ反転技法は、メモリセル917内のインバータ918によって行われる。
【0045】
図13は、光学的オーバーサンプリング及びデータシフトを使用した例示的な基板露光タイミングシーケンスを示す。図13は、LC材料が露光後に安定する一連のLC安定(LC settling)間隔1302a〜1302e(まとめて1302)を示す。各LC安定間隔1302の終了後、レーザがフラッシュする(1310で表す)。各LC安定間隔1302の間に、遷移時間間隔tt〜ttがある。各遷移時間間隔tt〜ttの間に、データは、次の露光に備えるためにSLM内のメモリ素子間を移動する。タイミング回路814(図8に示す)を利用してタイミング信号を生成し、アクセス制御ライン910(図9に示す)上のアクセス制御信号、共通電極信号1202(図12A及び図12Bに示す)、及びクロック信号(図示せず)を介してデータ伝搬を駆動して、SLM、台、及びレーザを制御する。
【0046】
共通電極信号1302は、各時間間隔tt〜tt毎に交互になる。共通電極信号1302の遷移間隔1308a〜1308eは、レーザがフラッシュした(1310)後に時間間隔tt〜tt中に発生する。図13では、2つの例示的なピクセル電極信号1304及び1306を示し、ピクセル電極信号1304はオン液晶素子を表し、ピクセル電極信号1306はオフ液晶素子を表す。各レーザフラッシュ1310でのピクセル信号1304は、ピクセル電極上で、共通電極と同じ電位を有し、ピクセル電極信号1306は、レーザフラッシュ1310時にピクセル電極上で、共通電極と逆の電位を有する。遷移時間間隔tt〜ttの間、データがメモリアレイを通してシフトするにつれてデータ反転が行われ、液晶素子のDCバランスが保たれる。一実施形態では、データは、遷移時間間隔tt〜tt中に液晶素子のメモリ素子間を約60マイクロ秒でシフトし、1ミリ秒のデューティサイクルの940マイクロ秒で、液晶材料がピクセル電極と共通電極の間に印加された電界に応答することができる。レーザの20ナノ秒(20ns)フラッシュ1310が、液晶材料が遷移した後にLC安定間隔1302の終了時に行われる。液晶材料の遷移速度及び空間光変調器に対する基板の移動速度に基づいて、他のタイミングを確立してLC安定間隔1302及びデータシフト速度を増減することができることを理解されたい。
【0047】
図14は、データを内部で移動させることによって画像を基板上に動的にフォトリソグラフィ転写する例示的なプロセス1400を示すフローチャートである。フォトリソグラフィプロセスはブロック1402において開始する。ブロック1404において、画像を表すデータが、空間光変調器内の各光変調素子と通信するメモリ素子にロードされる。ブロック1406において、光変調素子は、メモリにロードされたデータに応答して変更される。ブロック1408において、変更された光変調素子が照射され、照射パターンが基板上に向けられる。ブロック1410において、画像が必要な回数分転写されたかが判断される。転写されていない場合、ブロック1412において、データがメモリ素子間で移動され、ブロック1414において、基板と光変調素子の相対的な位置決めが変更される。プロセスはブロック1406に戻り、メモリ素子を移動するデータに応答して再び光変調素子を変更する。ブロック1410において画像が必要な回数分転写されている場合、フォトリソグラフィプロセスはブロック1416において終了する。
【0048】
図15は、空間光変調器内でデータをシフトして、画像を基板上に動的にフォトリソグラフィ転写する例示的なプロセス1500を示すフローチャートである。フォトリソグラフィプロセスはブロック1502において開始する。ブロック1504において、画像の第1のセクションを表す第1のデータが空間光変調器にロードされる。ブロック1506において、空間光変調器が照射され、画像の第1のセクションが基板上に向けられる。ブロック1508において、第1のデータの一部が空間光変調器の外へ移され、ブロック1510において、残りのデータがSLM内で移され、ブロック1512において、画像の第2のセクションを表す第2のデータの一部が空間光変調器にロードされる。ブロック1514において、空間光変調器が照射され、第1の画像セクション及び第2の画像セクションの部分が基板上に向けられる。フォトリソグラフィプロセスはブロック1516において終了する。
【0049】
本願に記載した革新的な概念は、広範囲の用途にわたって変更及び変形が可能である。したがって、特許請求する主題の範囲は、説明した特定の例示的な教示のいずれにも限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲によって規定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態による、空間光変調器を利用して画像を基板にフォトリソグラフィ転写するフォトリソグラフィシステムを示す。
【図2A】液晶光変調素子を利用した空間光変調器の分解組立図である。
【図2B】図2Aの液晶光変調素子の断面図である。
【図3】図1のフォトリソグラフィシステムを使用して、転写された画像を画像セクションでフォトリソグラフィにより受け取る基板の図である。
【図4】空間光変調器内の光変調バンクへの画像サブセクションのマッピングの図である。
【図5】本発明の実施形態による、空間光変調器により基板上に光学的なオーバーサンプリングを行うタイムシーケンスの図である。
【図6】本発明の実施形態による、空間光変調器により基板上に光学的なオーバーサンプリングを行うタイムシーケンスの図である。
【図7A】本発明の実施形態による、基板の光学的なオーバーサンプリングを行う例示的なフォトリソグラフィプロセスを示すフローチャートである。
【図7B】本発明の実施形態による、画像の部分の複数の転写を行う例示的なフォトリソグラフィプロセスを示すフローチャートである。
【図8】図1のフォトリソグラフィシステムを制御するように動作可能なコンピューティングシステムを示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態による、光変調素子と通信するメモリ素子を有し、メモリ素子を通してデータをシフトする例示的な空間光変調器の概略図である。
【図10】図9の空間光変調器において使用する代替のメモリ素子の概略図である。
【図11A】図9の空間光変調器の例示的な構成のブロック図である。
【図11B】図11Aのメモリ素子間でのデータシフトのタイミング図である。
【図12A】液晶光変調素子を制御し、DCバランスを保つための例示的な制御信号を示すタイミング図である。
【図12B】液晶光変調素子のDCバランスを保つためのデータシフト技法を示す。
【図13】例示的な基板露光タイミングシーケンスを示す。
【図14】データを内部で移動させることによって画像を基板上に動的にフォトリソグラフィ転写する例示的な方法を示すフローチャートである。
【図15】空間光変調機内でデータをシフトして画像を基板上に動的にフォトリソグラフィ転写する例示的な方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間光変調器(110)であって、
データを記憶すると共に相互間でデータをシフトするように構成される複数のメモリ素子(902)と、
前記メモリ素子(902)のそれぞれに記憶されている前記データに応答して変更可能な光変調素子(210)と、
を備える、空間光変調器。
【請求項2】
前記メモリ素子は、行及び列を有するアレイに配置され、該メモリ素子は、前記データを行間及び列間で双方向にシフトするように構成される、請求項1記載の空間光変調器。
【請求項3】
前記メモリ素子のそれぞれはフィードバック素子を備える、請求項1記載の空間光変調器。
【請求項4】
前記メモリ素子はシフトレジスタ構成で相互接続される、請求項1記載の空間光変調器。
【請求項5】
前記メモリ素子のそれぞれと通信して前記データを前記メモリ素子間でシフトするためのタイミング回路をさらに備える、請求項1記載の空間光変調器。
【請求項6】
前記タイミング回路はリプルクロックを含む、請求項5記載の空間光変調器。
【請求項7】
前記光変調素子は液晶材料を含み、
前記光変調素子の共通電極信号を受け取るように構成される共通電極と、
前記メモリ素子のそれぞれに記憶されている前記データを受け取るように構成される各ピクセル電極と、
をさらに備える、請求項5記載の空間光変調器。
【請求項8】
前記タイミング回路は、反転データを前記メモリ素子のうちの第1のメモリ素子から第2のメモリ素子にシフトし、該反転データに応じて前記第2のメモリ素子に関連する前記光変調素子を変更するように前記共通電極信号を切り替えるように動作可能である、請求項7記載の空間光変調器。
【請求項9】
フォトリソグラフィを行う方法であって、
画像を表すデータを、各光変調素子と通信する複数のメモリ素子にロードすること(1404)、
前記画像を基板上に転写するためにロードされた前記データに応答して前記光変調素子のそれぞれを変更すること(1406)、
前記データを前記メモリ素子間でシフトすること(1412)、
前記画像を前記基板上に転写するためにシフトされた前記データに応答して前記光変調素子のそれぞれを変更すること(1406)、
を含む、フォトリソグラフィを行う方法。
【請求項10】
前記基板及び前記光変調素子のうちの少なくとも一方を他方に対して移動させること
をさらに含む、請求項9記載のフォトリソグラフィを行う方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−515679(P2007−515679A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544133(P2006−544133)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/042280
【国際公開番号】WO2005/059598
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】5301 Stevens Creek Boulevard Santa Clara California U.S.A.
【Fターム(参考)】