説明

ダイヤフラムポンプ

【課題】 供給する流体の圧力を高めるにもかかわらず、製造コストの低減を図る。
【解決手段】 ダイヤフラムポンプ1は、2つのダイヤフラムポンプ部2A,2Bと、これらダイヤフラムポンプ部2A,2Bを駆動する1つのモータ4とを備えている。モータ4の駆動は駆動ギア5とベルト7を介してクランク台6A,6Bに伝達され、駆動体11A,11Bによってダイヤフラム19A,19Bが上下に往復動する。一方のダイヤフラムポンプ部2Aの吐出孔28Aと他方のダイヤフラムポンプ部2Bの吸入孔29Bとは連通路40によって連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを駆動源としてダイヤフラムが往復動することによりポンプ室が拡縮しポンプ作用が行われるダイヤフラムポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は従来のダイヤフラムポンプの縦断面図である。同図で全体を符号2で示すダイヤフラムポンプは略有底角筒状に形成されたケース3を備えており、このケース3の底部には、底部に設けた孔から出力軸4aがケース3内に臨むように、モータ4がねじによって固定されている。6は小円柱状に形成されたクランク台であって、モータ4の出力軸4aに軸着されており、このクランク台6の出力軸4aに軸着された中心部から偏心した部位には、駆動軸10が出力軸4aに対して傾斜した状態で固定されている。11は駆動体であって、ボス12と、このボス12の一端に互いに円周方向に180°位相をずらし径方向に一体に突設された一対の駆動子13,13とによって構成されており、ボス12の中央部の軸穴には駆動軸10が回転自在に挿入されている。一対の駆動子13,13は、中心から先端に向かって同じ角度だけ図中下方に傾斜しており、それぞれの先端部には、後述するダイヤフラム部20のピストン部21を取り付けるための取付孔14が設けられている。
【0003】
15は略箱状に形成されたダイヤフラムホルダーであって、上板16には、各ダイヤフラム部20を保持するための一対のダイヤフラム部保持孔17が設けられており、このダイヤフラムホルダー15と上記ケース3とは、互いの開口端を突き合わすことによりハウジングが形成される。19は2つのダイヤフラム部20,20を有するダイヤフラムであって、各ダイヤフラム部20にはピストン部21が一体に形成されており、これらピストン部21には係合凸部22が設けられている。このダイヤフラム19は、各ダイヤフラム部20をダイヤフラム部保持孔17に挿入し、係合凸部22を弾性変形させながら駆動子13の取付孔14に取り付けることにより、駆動体11とダイヤフラムホルダー15に保持される。
【0004】
24はバルブホルダーであって、平面視円環状に形成された環状壁25が一体に立設されており、この環状壁25の内側には吐出孔28が設けられ、外側には吸入孔29がそれぞれ設けられている。このバルブホルダー24はダイヤフラムホルダー15とともにダイヤフラム19を挟持しており、このバルブホルダー24と各ダイヤフラム部20とによって2つのポンプ室31,31が形成されている。32は吐出孔28を開閉する吐出用の弁体、33は吸入孔29を開閉する吸入用の弁体である。
【0005】
34はバルブホルダー24を覆う略箱状に形成された蓋体であって、この蓋体34とバルブホルダー24との間には、環状壁25を挟んで内側に吐出孔28と連通する吐出空間35が形成され、外側に吸入孔29と連通する吸入空間36が形成されている。また、蓋体34の中央部には吐出用筒部37が一体に突設されおり、この吐出用筒部37の中空部が吐出空間35と連通する排出通路38を形成し、蓋体34の中央部からずれた部位には、吸入空間36と連通する吸入通路39が設けられている。蓋体34、バルブホルダー24、ダイヤフラムホルダー15およびケース3は図示を省略した通しねじまたは挟持用ばね部材によって一体化されている。
【0006】
次に、このように構成されたダイヤフラムポンプ2の動作について説明する。モータ4を駆動し出力軸4aが回転すると、クランク台6も一体的に回転するから、出力軸4aから偏心した位置に出力軸4aに対して傾斜した状態で固定された駆動軸10が、出力軸4aの周りを傾斜方向を変えるようにして偏心回転する。したがって、駆動軸10に回転自在に支持された駆動体11の2つの駆動子13が順次矢印A−B方向にシーソー状に揺動し、ダイヤフラム19の2つのダイヤフラム部20も順次矢印A−B方向に往復動する。矢印B方向に移動したダイヤフラム部20のポンプ室31は拡張するので、そのポンプ室31が負圧状態になり、吸入通路39から吸入孔29を通ってエアがポンプ室31内に吸入される。
【0007】
モータ4の出力軸4aがさらに回転すると、拡張したポンプ室31のダイヤフラム部20が矢印A方向に移動するとポンプ室31が収縮するので、ポンプ室31内のエアの圧力が上昇し、ポンプ室31内のエアは吐出孔28から排出通路38を通って外部に吐出される。ポンプ室31の拡縮動作は各ポンプ室31において順次連続して行われるので、各吐出孔28から排出されたエアは、吐出空間35によって集められて1つの排出通路38から連続して吐出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来のダイヤフラムポンプにおいて、エアの供給圧力を高めようとする場合、2つのダイヤフラムポンプ2を用意し、一方のダイヤフラムポンプ2の排出通路38と他方のダイヤフラムポンプ2の吸入通路39とをホース等により接続し、一方のダイヤフラムポンプ2から吐出されるエアの圧力を使用して他方のダイヤフラムポンプ2においてさらにエアの圧力を高くすることが考えられる。しかしながら、この手法では、2つのダイヤフラムポンプ2を必要とするためモータも2つ必要になり、製造コストが増大するという問題があった。
【0009】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、供給する流体の圧力を高めるにもかかわらず、製造コストの低減を図るところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ポンプ室を形成するダイヤフラムと、このダイヤフラムを往復動させることにより前記ポンプ室を拡縮させる駆動体と、この駆動体を駆動するモータとを備え、前記ポンプ室の拡縮動作によってポンプ作用を行うダイヤフラムポンプを複数並設し、互いに隣接する一方の前記ダイヤフラムポンプの前記ポンプ室と他方の前記ダイヤフラムポンプの前記ポンプ室とを連通する連通路を設け、前記モータを一つとし、このモータの駆動を各ダイヤフラムポンプの前記駆動体に同時に伝達する駆動伝達手段を設けたものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ダイヤフラムとともに前記ポンプ室を形成し、前記ポンプ室の拡縮によりポンプ室に流体を流入させる流入通路およびポンプ室から流体を流出させる流出通路とが設けられたバルブホルダーと、このバルブホルダーを覆いこのバルブホルダーとともに前記連通路を形成する蓋体とを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、供給する流体の圧力を高めるのに、各ダイヤフラムポンプ部の駆動体を1つのモータによって駆動することができるため、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係るダイヤフラムポンプの縦断面図、図2は図1におけるII-II 線断面図、図3は図1におけるIII-III 線断面図である。これらの図において、前述した図5に示す従来技術において説明した同一または同等の部材については、同一の符号を付し詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
本発明に係るダイヤフラムポンプ1の特徴とするところは、2つのダイヤフラムポンプ部2A,2Bをポンプ室31A,31Bの拡縮方向である矢印A−Bと直交する方向である矢印C−D方向に並設するとともに、これらダイヤフラムポンプ部2A,2Bの各ポンプ室31A,31B間を接続し、かつこれらダイヤフラムポンプ部2A,2Bを1個のモータ4によって駆動するところにある。
【0015】
モータ4は、図1に示すようにケース3の底部の中央部に取り付けられ、ケース3内に臨む出力軸4aには駆動ギア5が軸着されている。この駆動ギア5の矢印C−D方向には、小円柱状で周面に歯が形成された一対のクランク台6A,6Bがケース3の底部に植設した軸6a,6bに回転自在に支持されている。これらクランク台6A,6B間には、駆動伝達手段としてのタイミングベルト7が張架され、このタイミングベルト7は一対のテンションローラ8,8によって駆動ギア5に添接されている。したがって、モータ4が駆動し駆動ギア5が回転することにより、一対のクランク台6A,6Bがタイミングベルト7を介して回転する。
【0016】
ダイヤフラムポンプ部2A,2Bの駆動軸10A,10Bの一端部は、クランク台6A,6Bの軸6a,6bから偏心した部位に、軸6a,6bに対して傾斜した状態で固定されている。これら駆動軸10A,10Bの他端部には、ダイヤフラムポンプ部2A,2Bの各駆動体11A,11Bが回転自在に支持されており、駆動体11A,11Bには、ダイヤフラムポンプ部2A,2Bの各ダイヤフラム19A,19Bのピストン部21A,21Bが取り付けられている。
【0017】
バルブホルダー24には、吐出孔28Aおよび吐出孔28Bを囲むように環状壁25Aおよび環状壁25Bが一体に立設されており、このうち環状壁25Aには、図2に示すように切欠部26が設けられている。27は一方のダイヤフラムポンプ部2Aの吸入孔29Aと、他方のダイヤフラムポンプ2Bの吸入孔29Bとの間での流体の流れを遮断するとともに、一方のダイヤフラムポンプ部2Aのポンプ室31Aと、他方のダイヤフラムポンプ2Bのポンプ室31Bとを直列に接続する仕切壁である。この仕切壁27は、一方のダイヤフラムポンプ部2Aの環状壁25Aに一端が連設され、他端が蓋体34の囲い壁34aまで延設されるようにバルブホルダー24に一体に立設されている。
【0018】
すなわち、この仕切壁27と一方の環状壁25Aの切欠部26と蓋体34とによって、一方のダイヤフラムポンプ部2Aの吐出孔28Aと他方のダイヤフラムポンプ2Bの吸入孔29Bとを連通する連通路40が形成される。同時に、この仕切壁27と一方の環状壁25Aと蓋体34とによって、蓋体34に設けた吸入通路39と、一方のダイヤフラムポンプ部2Aの吸入孔29Aとを連通させる吸入空間41が形成される。また、蓋体34に設けられた排出通路38は、吐出空間35を介して他方のダイヤフラムポンプ2Bの吐出孔28Bに連通している。
【0019】
このような構成において、モータ4の駆動によって2つのダイヤフラムポンプ部2A,2Bの各クランク台6A,6Bが、駆動ギア5およびタイミングベルト7を介して同時に回転する。一方のクランク台6Aの回転によって、一方のダイヤフラム19Aの2つのダイヤフラム部20A,20Aも順次矢印A−B方向に往復動し、矢印B方向に移動したダイヤフラム部20Aのポンプ室31Aは拡張するので、そのポンプ室31Aが負圧状態になり、吸入通路39から吸入空間41および吸入孔29Aを通ってエアがポンプ室31A内に吸入される。
【0020】
クランク台6Aがさらに回転すると、拡張したポンプ室31Aのダイヤフラム部20Aが矢印A方向に移動し、ポンプ室31Aが収縮するので、ポンプ室31A内のエアの圧力が上昇し、ポンプ室31A内のエアは吐出孔28Aから連通路40に吐出される。
【0021】
他方のクランク台6Bの回転によって、他方のダイヤフラム19Bの2つのダイヤフラム部20B,20Bも順次矢印A−B方向に往復動し、矢印B方向に移動したダイヤフラム部20Bのポンプ室31Bは拡張するので、そのポンプ室31Bが負圧状態になる。したがって、一方のダイヤフラム2Aのポンプ室31Aから連通路40に吐出されたエアは、他方のダイヤフラムポンプ2Bの吸入孔29Bからポンプ室31B内に吸入される。
【0022】
クランク台6Bがさらに回転すると、拡張したポンプ室31Bのダイヤフラム部20Bが矢印A方向に移動し、ポンプ室31Bが収縮するので、ポンプ室31B内のエアの圧力が上昇し、ポンプ室31B内のエアは吐出孔28Bから排出通路38を通って外部に吐出される。
【0023】
このように、一方のダイヤフラムポンプ部2Aのポンプ室31Aと、他方のダイヤフラムポンプ2Bのポンプ室31Bとを接続したことにより、他方のダイヤフラムポンプ2Bのポンプ室31Bには、一方のダイヤフラムポンプ部2Aから吐出圧力が加わったエアが供給される。このため、他方のダイヤフラムポンプ2Bから吐出されるエアの吐出圧力が、1つのダイヤフラムポンプによるエアの吐出圧力と比較して高くなる。また、各ダイヤフラムポンプ部2A,2Bを1つのモータ4によって駆動することができるため製造コストを低減することができる。また、2つのダイヤフラムポンプ部2A,2Bを、ポンプ室31A,31Bの拡縮方向である矢印A−B方向と直交する矢印C−D方向に並設したことにより、ダイヤフラムポンプ1全体の高さ方向の寸法Lを最小限とすることができる。
【0024】
図4は本発明における駆動伝達手段の変形例を示す、図1におけるIII-III 線断面図である。この変形例においては、駆動ギア5とクランク台6Aとに噛合する駆動伝達手段としての伝達ギア51Aがケース3の底部に植設した軸51aに回転自在に支持され、駆動ギア5とクランク台6Bとの間に、駆動伝達手段としての伝達ギア51Bがケース3の底部に植設した軸51bに回転自在に支持されている。このように構成されていることにより、モータ4の駆動により出力軸4aが回転し駆動ギア5が回転することにより、クランク台6A,6Bも伝達ギア51A,51Bを介して同時に回転する。したがって、上述した実施例と同様に、ポンプ室31A,31Bが拡縮動作を行うため、この拡縮動作によってポンプ作用が行われる。
【0025】
なお、本実施の形態においては、ダイヤフラムポンプ部2A,2Bを2つとした例を説明したが、3つ以上としてもよく、その場合にもベルトまたはギアの連結によって1つのモータ4によって各ダイヤフラムポンプを駆動することが可能である。また、本実施の形態においては、吐出ポンプとして使用した例を示したが、吸引エアを供給する吸引ポンプとして使用することもできる。また、供給する流体をエアとしたが、液体を供給することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るダイヤフラムポンプの縦断面図である。
【図2】図1におけるII-II 線断面図である。
【図3】図1におけるIII-III 線断面図である。
【図4】本発明における駆動伝達手段の変形例を示す、図1におけるIII-III 線断面図である。
【図5】従来のダイヤフラムポンプの縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…ダイヤフラムポンプ、2A,2B…ダイヤフラムポンプ部、4…モータ(駆動源)、5…駆動ギア、6A,6B…クランク台、7…タイミングベルト(駆動伝達手段)、11A,11B…駆動体、19A,19B…ダイヤフラム、24…バルブホルダー、26…切欠部、27…仕切壁、28A,28B…吐出孔、29A,29B…吸入孔、32A,32B…吐出用の弁体、33A,33B…吸入用の弁体、34…蓋体、38…排出通路、39…吸入通路、40…連通路、41…吸入空間、51A,51B…伝達ギア(駆動伝達手段)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室を形成するダイヤフラムと、このダイヤフラムを往復動させることにより前記ポンプ室を拡縮させる駆動体と、この駆動体を駆動するモータとを備え、前記ポンプ室の拡縮動作によってポンプ作用を行うダイヤフラムポンプ部を複数並設し、互いに隣接する一方の前記ダイヤフラムポンプ部の前記ポンプ室と他方の前記ダイヤフラムポンプ部の前記ポンプ室とを連通する連通路を設け、前記モータを一つとし、このモータの駆動を各ダイヤフラムポンプ部の前記駆動体に同時に伝達する駆動伝達手段を設けたことを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のダイヤフラムポンプにおいて、
前記ダイヤフラムとともに前記ポンプ室を形成し、前記ポンプ室の拡縮によりポンプ室に流体を流入させる流入通路およびポンプ室から流体を流出させる流出通路とが設けられたバルブホルダーと、このバルブホルダーを覆いこのバルブホルダーとともに前記連通路を形成する蓋体とを備えたことを特徴とするダイヤフラムポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−299897(P2006−299897A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122092(P2005−122092)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000121833)応研精工株式会社 (31)
【Fターム(参考)】