説明

ダイヤフラム弁

【課題】閉弁時にリーク流通路以外からの流体の流出を抑制することができ、しかも閉弁時における微小流量の変更を容易に行うことができるダイヤフラム弁を提供する。
【解決手段】流入路11aと流出路11bとを形成すると共にその経路中途部に弁室11cを形成した弁箱11と、弁室11cの底壁に開口する流入路出口縁部を取り巻く厚肉筒体状の弁座補強部材としての弁座カラー12と、弁座カラー12から一部が突出するように嵌合保持された樹脂製の弁座13と、弁座13の突出部に接近・離反することで閉弁・開弁するダイヤフラム15と、少なくとも弁座カラー12を弁室11cの底壁に向けて押圧する押圧部材としてのシートリング14と、を備えると共に、弁座カラー12に、流入路11aと流出路11bとを連通するリーク流通路20と、弁室11cの底壁との接触面から突出する環状リブ12aと、が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置や液晶製造装置等の各種製造装置による製品製造時に用いられる各種流体の供給系又は排出系の経路中に配置され、その弁閉時に希望する微小流量の流体を流すリーク弁座構造を備えたダイヤフラム弁に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平08−014415号公報
【特許文献2】特開平10−026240号公報
【特許文献3】実開平05−050254号公報
【特許文献4】特開平07−027253号公報
【0003】
従来から、半導体や液晶等の各種製品を製造する製造装置では、製造ラインで用いられる超高純度ガスのガス配管系において、パージ用のガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス)を流し続ける場合に、ブリード弁やブロック弁といったダイヤフラム弁が周知である。
【0004】
図4は、このような半導体製造装置や液晶製造装置等による製造ラインの超高純度ガスのガス配管系の一例を示す(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図4に示したガス配管系において、ガスボンベ100を交換する際には、ライン中に腐食性ガスが残存した状態でガスボンベ100を取り外した場合には、その腐食性ガスが大気中の水分と反応し、これがラインやコンポーネント等を腐食させる原因となる。
【0006】
従って、このような腐食を防止するため、ガスボンベ100の取り外しの際には、パージ用のガスによる配管系のパージがなされる。
【0007】
図示例においては、パージ用のガスとして窒素ガスが用いられている。ここで、窒素ガスは、バキュームジェネレータ140の真空発生(排気)用のガスとして用いられ、ラインへの封入には用いないものである。そして、上述したパージは、窒素ガスのラインへの封入並びに窒素ガスを用いた真空発生によるラインからの真空排気の繰り返しにより行われる。
【0008】
尚、図4において、111〜117はストップ弁、121、122はニードル弁、131〜134は逆止弁、151、152はフィルター、161、162は圧力ゲージ、170は圧力調整器である。
【0009】
ここで、真空排気時における真空発生源としてバキュームジェネレータ140が使用されている。
【0010】
このバキュームジェネレータ140は、ノズルの内部で流体(窒素ガス)の流速が高められ、またノズル出口付近で負圧を発生させて流体を引き込む性質(エゼクター効果)を利用したものである。また、逆止弁131、132の存在により、窒素ガスを流さなくてもベントラインからライン中に腐食性ガスが逆流することがないものの、バキュームジェネレータ140の所までは腐食性ガスが届いてしまう。
【0011】
このため、バキュームジェネレータ140のノズル等に腐食が生じてノズルの詰まりが発生する等のトラブルが発生する虞が生じていた。
【0012】
そこで、真空排気を行わない場合、つまりストップ弁111を閉弁した場合には、ストップ弁112を開弁し、ニードル弁121を所定の開度で維持することで流量を絞り、バキュームジェネレータ140に窒素ガスを常時一定流量流すようにしている。
【0013】
このように、ガス配管系に一定量の窒素ガスを流通させて、ベントラインからのガスの流入が防止される。
【0014】
しかしながら、このような複数の弁を用いた構成では、部品点数が多くなってしまい、コストの高騰を招いてしまうという問題が生じていた。
【0015】
そこで、図5乃至図8に示すように、このようなベントラインからのガス流入防止対策として、閉弁状態にある一次側と二次側とを定流量ガス流通孔で常時連通状態とする技術が知られている(例えば、特許文献1乃至特許文献4参照)。
【0016】
図5は、このような定流量ガス流通孔を設けたダイヤフラム弁の一例を示し(特許文献1,2参照)、1は流入路1aと流出路1bとを形成すると共にその経路中途部に弁室1cを形成した弁箱、2は弁室1cの底壁に開口する流入路1aの出口縁部を取り巻く環状鍔2aを有する筒状の弁座カラー、3は弁座カラー2の外周に嵌合保持されて弁座カラー2よりも高さを有する弁座、4は弁座3の外周段部に周方向で係合し且つ流出路1bと連通する複数の流通穴4aを複数個等間隔に形成したシートリング、5は弁座3に押圧密着するダイヤフラム、6はダイヤフラム5の上面側外周縁部を支持してその下面外周縁部をシートリング4の外周寄り上面に押圧するダイヤフラム押え、7は弁室1cの上方空間を閉成すると共にダイヤフラム押え6を締め付け固定するボンネット、8はボンネット7の中央部を貫通して駆動部9の駆動によってダイヤフラム5の中央部分を弁座3に押圧密着させる押えピースである。
【0017】
また、弁座カラー2と弁室1cとの間には、流入路1aと流出路1bとを連通するためのリーク流通路10が設けられている。このリーク流通路10は、図6(A)に示すように、弁座カラー2の下面に加工した溝によって形成されており、図6(B)に示すように、流入路1aと流出路1bとの間を、リーク流量や加工性を考慮して非直線状に連通している。
【0018】
また、リーク流通路10は、例えば、図7に示すように、弁座カラー2を貫通する孔によって形成しても良い。
【0019】
さらに、図7に示すように、弁座カラー2とシートリング4とを廃止すると共に弁座3を弁箱1に直接保持させて脱落を防止するようにした構成のダイヤフラム弁では、弁座3にリーク流通路10を形成することが困難となる。
【0020】
従って、リーク流通路10は、例えば、流入路1aと流出路1bとを隔絶する壁面に設けた貫通孔として構成される(例えば、特許文献3,4参照)。尚、このような貫通孔方式のリーク流通路10は、例えば、流入路1aと弁室1cとを隔絶する壁面に設けた貫通孔としても良い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、上記の如く構成されたダイヤフラム弁にあっては、リーク流通路10を弁座カラー2に形成した溝又は貫通孔で構成すると、例えば、高圧流体用のダイヤフラム弁に適用した場合には、閉弁状態の高圧流体によって、弁室1cの底壁を構成する弁箱1と弁座カラー2との間に隙間が発生し易く、この隙間から流体が流出路1bへと流れ込んでしまい、弁閉時の微小流量が設計流量から逸脱してしまうという問題が生じていた。尚、この隙間の発生は、弁箱1と弁座カラー2との間の表面粗さ等の仕上がり状態によって流出量が変化するため、その漏れを考慮したリーク流通路10の開口断面積や経路長とすることは困難である。
【0022】
また、弁箱1に直接貫通孔を形成することでリーク流通路10を構成した場合には、弁閉時に適正な微小流量を流すためには、リーク流通路10の直径(開口断面積)を0.5mm以下にするのが好ましいが、弁箱1の奥まった部位にこのような微小直径の貫通孔を形成するのは困難で、加工性が悪いという問題が生じていた。
【0023】
また、弁箱1に直接貫通孔を形成することでリーク流通路10を構成した場合には、ダイヤフラム弁の組立後に閉弁時の微小流量を変更したい場合や、修理時等に閉弁時の微小流量を変更したい場合には、弁箱1自体を交換しなければならないため、部品コストや交換作業コストが大幅に高騰してしまうという問題が生じていた。
【0024】
本発明は、上記問題を解決するため、閉弁時にリーク流通路以外からの流体の流出を抑制することができ、しかも閉弁時における微小流量の変更を容易に行うことができるダイヤフラム弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
その目的を達成するため、請求項1に記載のダイヤフラム弁は、流入路と流出路とを形成すると共にその経路中途部に弁室を形成した弁箱と、前記弁室の底壁に開口する流入路出口縁部を取り巻く厚肉筒体状の弁座補強部材と、該弁座補強部材から一部が突出するように嵌合保持された樹脂製の弁座と、該弁座の突出部に接近・離反することで閉弁・開弁するダイヤフラムと、少なくとも前記弁座補強部材を前記弁室の底壁に向けて押圧する押圧部材と、を備えたダイヤフラム弁において、前記弁座補強部材には、前記流入路と前記流出路とを連通するように内周壁面から外周壁面に貫通するリーク流通路と、前記弁室の底壁との接触面から突出する環状リブと、が形成されていることを特徴とする。
【0026】
これにより、ダイヤフラム弁は、環状リブの存在により、リーク流通路以外からの流体の流出を抑制することができ、しかも閉弁時における微小流量の変更を容易に行うことができる。
【0027】
また、請求項2に記載のダイヤフラム弁は、前記弁座補強部材は、前記弁座よりも機械的強度が強く且つ弾性を有する材質から構成されていることを特徴とする。
【0028】
これにより、弁座の構成材料である樹脂よりも機械的強度の高い材質を用いて弁座補強部材を構成することができるため、高圧流体用で高出力駆動装置を使用した場合であっても弁座補強部材に設けられたリーク流通路が変形して開口面積が変化することを避けることができ、リーク流通路からの流体流出量を容易に安定させることができるばかりでなく、閉弁時の微小流量を設計流量に対して精密に設定することが可能となる。
【0029】
さらに、請求項3に記載のダイヤフラム弁は、前記環状リブは、内外周方向に複数設けた多条リブ構造であることを特徴とする。
【0030】
これにより、弁室の底壁と弁座補強部材との密閉性をより一層向上することができる。
【0031】
しかも、請求項4に記載のダイヤフラム弁は、前記環状リブは、前記押圧部材に形成されて前記弁座補強部材を押圧する押圧部位の押圧方向に対応して形成されていることを特徴とする。
【0032】
これにより、環状リブへの押圧力を効率良くすることができ、弁室の底壁との密着性をより一層確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のダイヤフラム弁によれば、閉弁時にリーク流通路以外からの流体の流出を抑制することができ、しかも閉弁時における微小流量の変更を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明のダイヤフラム弁に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
図1は本発明の一実施形態に係るダイヤフラム弁の断面図、図2は本発明の一実施形態に係るダイヤフラム弁の要部の拡大断面図である。
【0036】
図1及び図2において、本発明の一実施形態に係るダイヤフラム弁は、流入路11aと流出路11bとを形成すると共にその経路中途部に弁室11cを形成した弁箱11と、弁室11cの底壁に開口する流入路出口縁部を取り巻く厚肉筒体状の弁座補強部材としての弁座カラー12と、弁座カラー12から一部が突出するように嵌合保持された樹脂製の弁座13と、弁座13の突出部に接近・離反することで閉弁・開弁するダイヤフラム15と、少なくとも弁座カラー12を弁室11cの底壁に向けて押圧する押圧部材としてのシートリング14と、を備えると共に、弁座カラー12に、流入路11aと流出路11bとを連通するように内周壁面から外周壁面に貫通するリーク流通路20と、弁室11cの底壁との接触面から突出する環状リブ12aと、が形成されている。
【0037】
これにより、閉弁時にリーク流通路20以外からの流体の流出を抑制することができ、しかも閉弁時における微小流量の変更を容易に行うことができる。
【0038】
具体的には、本発明のダイヤフラム弁は、流入路11aと流出路11bとを形成すると共にその経路中途部に弁室11cを形成した弁箱11と、弁室11cの底壁に開口する流入路11aの出口縁部を取り巻く筒状の弁座カラー12と、弁座カラー12に嵌合保持されて弁座カラー12よりも高さを有する弁座13と、弁座13の外周段部に周方向で係合し且つ流出路11bと連通する複数の流通穴14aを複数個等間隔に形成したシートリング14と、弁座13に押圧密着するダイヤフラム15と、ダイヤフラム15の上面側外周縁部を支持してその下面外周縁部をシートリング14の外周寄り上面に押圧するダイヤフラム押え16と、弁室11cの上方空間を閉成すると共にダイヤフラム押え16を締め付け固定するボンネット17と、ボンネット17の中央部を貫通して駆動部19の駆動によってダイヤフラム15の中央部分を弁座13に押圧密着させる押えピース18と、を備えている。
【0039】
弁箱11は、略円柱形状の本体11dと、本体11dの外壁面から突出して流入路11a及び流出路11bを構成した管体部11e,11fと、弁室11cの底壁を包囲する外周壁11gと、が一体に形成されている。尚、弁箱11の材質や大きさ、或いは流入路11a及び流出路11bの開口断面積は、適用される弁本来の機能や流体種類・流体温度等に応じたものが適用される。
【0040】
弁座カラー12は、金属あるいは弁座13よりも機械的強度の高い樹脂材料(例えば、ポリイミドやポリベンゾイミダゾールなど)により厚肉の略円筒体に構成されており、その周壁によって弁室11cの底壁に開口する流入路11aの出口縁部を包囲している。また、弁座カラー12には、ダイヤフラム15と接触可能となるように図示上面から一部を突出させた状態で弁座13が埋設されている。さらに、弁座カラー12には、その下面から弁室11cの底壁に向けて突出したガスケット構造を呈する環状リブ12aが一体に形成されている。また、弁座カラー12には、その内周壁面から外周壁面に貫通するリーク流通路20が形成されている。尚、環状リブ12aは、内周側と外周側といったように、複数設けて多条リブ構造とすることにより、弁室11cの底壁への密閉性をより一層向上することができる。また、弁座カラー12の材質や厚さ、環状リブ12aの突出量や条数、リーク流通路20の開口断面積や経路長(例えば、V字型等の経路形状)等は、適用される弁本来の機能や流体種類・流体温度等に応じたものが適用される。
【0041】
弁座13は、本実施の形態においては、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)等の合成樹脂から構成されている。また、弁座13は、弁座カラー12よりも機械的強度に劣り且つ弾性を有する材質から構成されており、ダイヤフラム15が接触した際の変形に伴う密着性、即ち、閉弁状態の維持が確保されている。尚、弁座13は、その材質、厚さ、高さ(弁座カラー12からの突出量)等は、適用される弁本来の機能や流体種類・流体温度等に応じたものが適用される。
【0042】
シートリング14はステンレススチールから構成されている。また、シートリング14は、弁座カラー12と弁座13とを一体的に押さえつける環状舌部14bが形成されている。尚、リーク流通路20は、シートリング14の下端よりも下方に形成され、且つダイヤフラム15を弁座13に接触させた閉弁状態のときに圧縮変形が発生したとしても、シートリング14によって遮れられない位置に形成されている。この際、弁座カラー12の圧縮変形は、リーク流通路20の開口断面積が変わらない程度となるように、押えピース18の変位量等が設定される。
【0043】
ダイヤフラム15は、ニッケル合金等の積層体から構成されており、開弁状態にあるときに抑えピース18の先端中心側に向かって膨出するように、略ドーム形状に形成されている。尚、ダイヤフラム15は、その材質や厚さに伴う剛性(変形容易性)や耐久性(腐食性等)等は、適用される弁本来の機能や流体種類・流体温度等に応じたものが適用される。
【0044】
ダイヤフラム押え16は、外方に環状の鍔が突出形成された略円筒形状のものが用いられ、その中心開口と同軸上で押さえピース18が貫通している。また、ダイヤフラム押え16は、その下端外周寄りに向かう程厚肉とされ、これにより、その下端外周寄りでダイヤフラム15の外周上面を支持している。
【0045】
ボンネット17は、例えば、駆動部19を固定(支持)しており、弁箱11の外周壁11gの内壁側に螺着されている。この際、ボンネット17は、ダイヤフラム押え16を弁室11cの底壁側に押さえ付け、これにより、ダイヤフラム押え16がダイヤフラム15を介してシートリング14を弁室11cの底壁に押さえ付けている。
【0046】
押えピース18には、円柱体が用いられており、駆動部19に連動又は連結されることによって駆動部19の駆動を受けて軸線方向に沿って進退動(伸縮)し、その退避位置(収縮位置・上死点)から進出位置(伸張位置・下死点)までのストロークで弁開度を調節可能とすることもできる。
【0047】
駆動部19は、例えば、ソレノイド、ピストン、アクチュエータ等の直線運動機構或いは手動操作ダイヤル等を用いることにより、押さえピース18を軸線方向に沿って進退動させるもので、上死点(図1の状態)にあってダイヤフラム15と弁座13とが離間しているときに開弁し、下死点(図2の状態)にあってダイヤフラム15と弁座13とが密着しているときに閉弁する。尚、この駆動部19の機構等は特に限定されるものではない。
【0048】
上記の構成において、ダイヤフラム15は、その外周面がダイヤフラム押え16の外周下面とシートリング14の外周上面との間で挟持されており、これによりダイヤフラム15の下面中央部付近が弁座13に接触・離間して流入路11aと流出路11bとの間の通路を開閉する弁体として機能する。
【0049】
また、ダイヤフラム15による開閉は、駆動部19の駆動によって、押さえピース18を上下移動させて、弁座13に対するダイヤフラム15との相対位置を調整することで行われる。
【0050】
ここで、弁座カラー12にリーク流通路20が形成されていることにより、図2に示したダイヤフラム15による閉弁状態にあっても、リーク流通路20を介して弁箱11の流入路11aと流出路11bとの間の流路が微量開いた状態となり、流入路11aから流出路11bへの流体の流通を確保することができる。
【0051】
この際、弁室11cの底壁と弁座カラー12との間は、弁座カラー12に形成された環状リブ12aの存在により、ダイヤフラム押え16からの締め付け圧接力をシートリング14を介して弁座カラー12aに伝達することによって環状リブ12aが弁室11cの底壁に圧接し、隙間の発生を抑制することができる。尚、環状リブ12aは、図3に示すように、環状舌部14bの直下に対応して形成すれば、環状リブ12aからの押圧を効率良く受けることができ、弁室11cの底壁との密着性をより一層確実なものとすることができる。
【0052】
また、リーク流通路20の開口断面積や経路長等を変えることで、流体の流通量を微調整することができる。
【0053】
この際、リーク流通路20の開口断面積や経路長等を変えるには、弁座カラー12そのものを所望の開口断面積や経路長等のリーク流通路20が形成されたものに交換するだけで良い。
【0054】
このように、本発明のダイヤフラム弁にあっては、流入路11aと流出路11bとを形成すると共にその経路中途部に弁室11cを形成した弁箱11と、弁室11cの底壁に開口する流入路出口縁部を取り巻く厚肉筒体状の弁座補強部材としての弁座カラー12と、弁座カラー12から一部が突出するように嵌合保持された樹脂製の弁座13と、弁座13の突出部に接近・離反することで閉弁・開弁するダイヤフラム15と、少なくとも弁座カラー12を弁室11cの底壁に向けて押圧する押圧部材としてのシートリング14と、を備えると共に、弁座カラー12に、流入路11aと流出路11bとを連通するように内周壁面から外周壁面に貫通するリーク流通路20と、弁室11cの底壁との接触面から突出する環状リブ12aと、が形成されていることにより、閉弁時にリーク流通路20以外からの流体の流出を抑制することができ、しかも閉弁時における微小流量の変更を容易に行うことができる。
【0055】
この際、弁座13の構成材料である樹脂よりも機械的強度の高い材質を用いて弁座カラー12を構成することにより、高圧流体用で高出力駆動装置を使用した場合であっても弁座カラー12に設けられたリーク流通路20が変形して開口面積が変化することを避けることができ、リーク流通路20からの流体流出量を容易に安定させることができるばかりでなく、閉弁時の微小流量を設計流量に対して精密に設定することができる。
【0056】
また、弁座カラー12に設けた環状リブ12aにより、ダイヤフラム押え16から伝達された組立時の押し付け力を押圧部材としてのシートリング14を介して環状リブ12aに作用するため、弁室11cの底壁と弁座カラー12との間の隙間の発生を抑制することができる。
【0057】
さらに、弁座カラー12の外周壁面から内周壁面に向かって貫通孔を形成することによりリーク流通路20を構成することができるため、弁箱1にリーク流通路10を直接設ける場合に比べて容易に加工することができ、しかも、弁組立後や修理時等における弁閉時の微小流量の変更は弁座カラー12の交換によって容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイヤフラム弁の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るダイヤフラム弁の要部の拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るダイヤフラム弁の変形例の要部の拡大断面図である。
【図4】半導体又は液晶製造ラインにおけるガス配管系の一例の説明図である。
【図5】従来例1のダイヤフラム弁の断面図である。
【図6】従来例1のダイヤフラム弁を示し、(A)は弁座カラーの底面図、(B)はリーク流通路における流入路及び流出路との関係の説明図である。
【図7】従来例2のダイヤフラム弁の断面図である。
【図8】従来例3のダイヤフラム弁の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
11…弁箱
11a…流入路
11b…流出路
11c…弁室
12…弁座カラー(弁座補強部材)
13…弁座
14…シートリング(押圧部材)
14a…流通穴
15…ダイヤフラム
16…ダイヤフラム押え
17…ボンネット
18…押えピース
19…駆動部
20…リーク流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入路と流出路とを形成すると共にその経路中途部に弁室を形成した弁箱と、前記弁室の底壁に開口する流入路出口縁部を取り巻く厚肉筒体状の弁座補強部材と、該弁座補強部材から一部が突出するように嵌合保持された樹脂製の弁座と、該弁座の突出部に接近・離反することで閉弁・開弁するダイヤフラムと、少なくとも前記弁座補強部材を前記弁室の底壁に向けて押圧する押圧部材と、を備えたダイヤフラム弁において、
前記弁座補強部材には、前記流入路と前記流出路とを連通するように内周壁面から外周壁面に貫通するリーク流通路と、前記弁室の底壁との接触面から突出する環状リブと、が形成されていることを特徴とするダイヤフラム弁。
【請求項2】
前記弁座補強部材は、前記弁座よりも機械的強度が強く且つ弾性を有する材質から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム弁。
【請求項3】
前記環状リブは、内外周方向に複数設けた多条リブ構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダイヤフラム弁。
【請求項4】
前記環状リブは、前記押圧部材に形成されて前記弁座補強部材を押圧する押圧部位の押圧方向に対応して形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のダイヤフラム弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−144765(P2010−144765A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320265(P2008−320265)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(504429987)株式会社ハムレット・モトヤマ・ジャパン (7)
【Fターム(参考)】