説明

ダイヤフラム構造体を有する半導体素子の製造方法

【課題】ウエハをメタルマスクで覆ってスパッタリングを行う際に、ウエハを覆うメタルマスクの位置を精度良く定めることができるダイヤフラム構造体を有する半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化性ガスを検知するガスセンサ素子の製造工程において、周知の方法によりシリコンウエハ100の第二面101に電極50,発熱体40等を形成した後に、第一面102に、空洞部12と、メタルマスクを保持する保持部材を取り付ける孔部70を形成するための空洞部14のパターニングを行う。そして、エッチング処理を行い空洞部12,14を形成し(図3(a)参照)、空洞部14の底部をなす絶縁層20を針等の貫通部材で貫通することにより、シリコンウエハ100のデッドスペースに孔部70を形成する(図3(b)参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラム構造体を有する半導体素子の製造方法に関するものであり、その製造過程において、スパッタリングによる成膜がなされるものに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤフラム構造体を有する半導体素子として、NOx等の特定のガスを検出するガスセンサ(ガスセンサ素子)が知られている。このようなガスセンサ素子は、空洞部を有するシリコンなどの半導体基板及びこの空洞部を覆うように半導体基板上に形成された絶縁膜からなるダイヤフラム構造体や、ダイヤフラム構造体の絶縁膜上に形成された酸化スズ等の材料にて構成される感応体や、絶縁膜の内部であって、空洞部に面する位置に設けられた発熱体等から構成されている。このダイヤフラム構造体は、ガスセンサ素子の熱容量を低下させるためのものであり、発熱体により加熱した状態で特定のガスに反応して変化する感応体の抵抗値を測定することにより、特定のガスの検出がなされる。
【0003】
また、このガスセンサ素子の製造方法の一例として、シリコンウエハの一方の主表面に絶縁膜や発熱体等を形成し、シリコンウエハの反対側の主表面をエッチングして空洞部を設けてダイヤフラム構造体を形成し、その後に絶縁膜上にスパッタリングにより酸化スズ層を形成し、該酸化スズ層にウエットエッチング等を行うことにより感応体を形成するというものがある。
【0004】
ここで、特許文献1には、マスクパターンが形成されたメタルマスクによりウエハを覆い、該メタルマスクの上からスパッタリングを行うことにより、ウエハの被処理面にマスクパターンに対応する形状の被膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−107121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法により上述したガスセンサ素子の感応体を形成する場合には、感応体の形状に対応するマスクパターンが形成されたメタルマスクにより、ダイヤフラム構造体が形成されたウエハの主表面を覆い、該メタルマスクの上からスパッタリングを行うと考えられる。ここで、上述したガスセンサ素子のシリコン基板の面積は数mm2程度と大変微少であるため、シリコンウエハを覆うメタルマスクの位置決めの際には、高い精度が要求されるが、特許文献1では、ウエハやメタルマスクに形成されたオリエンテーションフラットにより位置決めを行うことが記載されている。しかしながら、ウエハの感応体形成予定位置とオリエンテーションフラットとの位置関係は高い精度で一定に保たれているわけではなく、このような方法では、メタルマスクの位置決めをウエハの感応体形成予定位置に対して精度良く行うことはできない。
【0007】
本願発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ウエハをメタルマスクで覆ってスパッタリングを行う際に、ウエハを覆うメタルマスクの位置を精度良く定めることができるダイヤフラム構造体を有する半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為になされた本願発明は、空洞部を有する半導体基板及び該空洞部を覆うように該半導体基板上に形成される絶縁膜を含むダイヤフラム構造体を有する半導体素子の製造方法であって、絶縁膜が形成されており、かつ、空洞部が形成される前の状態である、半導体素子を切り出すウエハに対し、空洞部が形成される位置である空洞部形成位置を設定すると共に、該ウエハのデッドスペース上に形成される孔部の位置である孔部形成位置を、空洞部形成位置を基準として設定するためのパターニングを行う形成位置設定ステップと、ウエハの空洞部形成位置に空洞部を形成してダイヤフラム構造体を形成すると共に、孔部形成位置に孔部を形成するダイヤフラム形成ステップと、ウエハの孔部に取り付けられた保持部材により、マスクパターンが形成されたメタルマスクを、ウエハを覆った状態で保持させる保持ステップと、メタルマスクの上からウエハに対してスパッタリングを行い、ウエハに、メタルマスクに形成されたマスクパターンに応じた形状の被膜を形成する被膜形成ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
このような製造方法によれば、空洞部(ダイヤフラム構造体)の位置と、ウエハのデッドスペースに形成される孔部との位置関係を高い精度で一定に保つことができる。このため、この孔部に取り付けられた保持部材によりウエハを覆うメタルマスクを保持することにより、ウエハを覆うメタルマスクの位置を精度良く定めることができ、ひいては被膜をウエハの狙いとする被処理位置(例えば、ウエハのうち空洞部に対応する位置)に適切に形成することができる。
【0010】
尚、半導体素子としては、被膜が特定のガスを検出するための感応体であり、この感応体を絶縁膜上に形成してなるガスセンサ素子であっても良い。
既に述べたように、このようなガスセンサ素子を製造する際、ウエハに対してダイヤフラム構造体を形成した後に、このウエハ(詳細にはウエハの絶縁膜上)にスパッタリングにより感応体を形成する場合がある。上記製造方法を適用してガスセンサ素子を製造する場合には、メタルマスクによりウエハの一面を覆って感応体を形成するためのスパッタリングを行う際に、メタルマスクの位置決めを精度良く行うことができ、ひいては感応体をウエハの狙いとする被処理位置(例えば、ウエハのうち空洞部に対応する位置)に適切に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ガスセンサ素子や、ガスセンサ素子を製造するためのシリコンウエハの断面図である。
【図2】ガスセンサ素子を製造するためのシリコンウエハの断面図である。
【図3】ガスセンサ素子を製造するためのシリコンウエハの断面図及び上面図である。
【図4】メタルマスクの上面図や、メタルマスクをシリコンウエハ上に載置する際の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0013】
[構成の説明]
まず、本実施形態のガスセンサ素子の構成について説明する。本実施形態のガスセンサ素子は、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)の濃度変化を検出するものであり、NOxの濃度に応じて電気抵抗値が変化する特性を有している。
【0014】
図1(a)には、ガスセンサ素子1の断面図が記載されている。ガスセンサ素子1は、シリコンからなる半導体基板10(以後、単に基板とも記載)と、基板10の両面に形成された絶縁層20と、基板10の一方の面(第一面11とも記載)から基板10をエッチングすることにより形成された空洞部12と、を有しており、空洞部12の一方を覆うように基板10の第一面とは反対側の面(第二面13とも記載)上に絶縁層20を形成することによりダイヤフラム構造体が形成されている。また、ガスセンサ素子1は、基板10の第二面13に形成された絶縁層20上に、空洞部12の底部(換言すれば、絶縁層20のうち、空洞部12に露出する部位)に対面するように配置された感応体30と、基板10の第二面13に形成された絶縁層20の内部であって、空洞部12の底部に対応する位置(換言すれば、絶縁層20の厚み方向に見たときに、空洞部12の底部と重なる位置)に配置された発熱体40と、感応体30に覆われた状態で配置された一対の電極50を備える。なお、感応体30は、金属酸化物半導体(具体的には、後述する酸化スズ)から構成されている。
【0015】
そして、このようなガスセンサ素子1は、発熱体40により感応体30が加熱されて活性化され、電極50から感応体30の抵抗値変化に応じた出力の変化を測定することにより、NOxの濃度変化が検出される。
【0016】
絶縁層20は、基板10に積層された酸化ケイ素(SiO2)で構成される第1絶縁層21と、第1絶縁層21に積層された窒化ケイ素(Si34)で構成される第2絶縁層22とを備える。また、基板10の第二面13に形成された絶縁層20は、さらに、第2絶縁層22に積層された酸化ケイ素(SiO2)により構成され、内部に発熱体40が配置される発熱体絶縁層23と、発熱体絶縁層23に積層された窒化ケイ素(Si34)により構成される感応体側絶縁層24とを備える。
【0017】
一対の電極50は、感応体側絶縁層24上に積層されたTi層と、Ti層上にさらに積層されたPt層により構成されている。
感応体30は、電極50に接続された状態で感応体側絶縁層24上に形成されており、酸化スズ(SnO2)を主体とする材料により構成されている。
【0018】
発熱体40は、発熱体絶縁層23内部に形成されており、Pt層とTa層の2層により構成されている。この発熱体40は、ガスセンサ素子1を感応体30の上面から投影したときに、略渦巻き状のパターンに形成されている。
【0019】
また、ガスセンサ素子1は、発熱体40に電力供給を行うための発熱体用リード部41と、発熱体用リード部41を外部の電力供給ラインに接続するためのコンタクト部42と、電極50に接続される電極用リード部51と、電極用リード部51を外部の出力取出しラインに接続するコンタクト部52とを備える。
【0020】
[製造方法について]
次に、ガスセンサ素子1の製造方法について説明する。本実施形態では、後述の第11〜12工程によりダイヤフラム構造体を有するシリコンウエハを作製し、第14〜15工程によりダイヤフラム構造体を有するシリコンウエハの一面をメタルマスクで覆い、該メタルマスクの上から酸化スズのスパッタリングを行うことにより、ガスセンサ素子1の感応体30を形成する。尚、シリコンウエハの主表面のうち、空洞部12の開口部が形成される面を第一面、第一面の反対側の面を第二面とする。
【0021】
また、本実施形態の製造方法に用いるシリコンウエハは、複数のガスセンサ素子1を切り出せる大きさを有しており、外縁寄り部位にガスセンサ素子1が形成されないデットスペースが存在している(図3(c)参照)。尚、図1(b),(c)、図2、図3(a),(b)に示すシリコンウエハの断面図では、説明を容易にするために、1つのガスセンサ素子1を対象にした発熱体40や空洞部12等、及び、1つの孔部70を示しているが、実際は複数のガスセンサ素子1に対応した発熱体40や空洞部12等、及び、複数の孔部70が各工程を経ることでそれぞれ形成されるものである。
【0022】
まず、第1工程では、基板10が取り出されるシリコンウエハを洗浄液中に浸し、該シリコンウエハの主表面を洗浄する。
第2工程では、第1絶縁層21となる酸化ケイ素膜を形成する。つまり、シリコンウエハを熱処理炉に入れ、熱酸化処理にて膜厚が100nmの酸化ケイ素膜を形成し、第1絶縁層21とする。
【0023】
第3工程では、第2絶縁層22となる窒化ケイ素膜を形成する。つまり、シリコンウエハの各主表面に、SiH2Cl2,NH3をソースガスとするLP−CVDにより層厚が200nmの窒化ケイ素膜を形成し、第2絶縁層22とする。
【0024】
第4工程では、発熱体絶縁層23のうち下部発熱体絶縁層231となる酸化ケイ素膜を形成する。つまり、シリコンウエハ100の第二面101に、TEOS,O2をソースガスとするプラズマCVDにて層厚100nmの酸化ケイ素膜を形成し、下部発熱体絶縁層231とする。尚、図1(b)には、第4工程が終了した時点のシリコンウエハ100の断面図が記載されている。
【0025】
第5工程では、発熱体40と発熱体用リード部41を形成する。つまり、DCスパッタ装置を用いて、下部発熱体絶縁層231の表面に層厚20nmのTa層を形成し、その上に、層厚220nmのPt層を形成する。その後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で所定のパターン形状を有する発熱体40と発熱体用リード部41を形成する。尚、図1(c)には、第5工程が終了した時点のシリコンウエハ100の断面図が記載されている。
【0026】
第6工程では、発熱体絶縁層23のうち上部発熱体絶縁層232となる酸化ケイ素膜を形成する。つまり、下部発熱体絶縁層231の表面に、TEOS,O2をソースガスとするプラズマCVDにて層厚100nmの酸化ケイ素膜を形成し、上部発熱体絶縁層232とする。
【0027】
第7工程では、感応体側絶縁層24となる窒化ケイ素膜を形成する。つまり、発熱体絶縁層23の表面に、SiH2Cl2,NH3をソースガスとするLP−CVDにて層厚200nmの窒化ケイ素膜を形成し、感応体側絶縁層24とする。尚、図2(a)には、第7工程が終了した時点のシリコンウエハ100の断面図が記載されている。
【0028】
第8工程では、一対の電極50と電極用リード部51とを形成する。つまり、DCスパッタ装置を用いて、感応体側絶縁層24に対して下層電極としての層厚20nmのTi層を形成した後、上層電極としての層厚40nmのPt層を形成する。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理を行うことで、所定のパターン形状を有する電極50及び電極用リード部51を形成する。
【0029】
第9工程では、発熱体用リード部41のコンタクト部42が配される凹部25を形成する。つまり、フォトリソグラフィによりパターニングを行い、ドライエッチング法で発熱体絶縁層23と感応体側絶縁層24のエッチングを行い、凹部25を形成する。尚、図2(b)には、第9工程が終了した時点のシリコンウエハ100の断面図が記載されている。
【0030】
第10工程では、発熱体用リード部41のコンタクト部42と、電極用リード部51のコンタクト部52とを形成する。
第11工程では、空洞部12と、メタルマスクを保持する保持部材を取り付けるための孔部のパターニングを行う。つまり、空洞部12とシリコンウエハのデッドスペースに配される孔部のパターンが形成されたフォトマスクを用いて、シリコンウエハ100の第一面102に形成された第2絶縁層22に対し、フォトリソグラフィによりレジスト60のパターニングを行う。尚、図2(c)には、第11工程が終了した時点のシリコンウエハの断面図が記載されている。
【0031】
第12工程では、空洞部12と上記孔部を形成するための空洞部14とを形成する。つまり、第11工程におけるパターニングによりマスクとなる絶縁膜をドライエッチングし、第1絶縁層21が露出したシリコンウエハ100をTMAH溶液中に浸してシリコンの異方性エッチングを行い、空洞部12,14を形成する。これにより、空洞部12の一方を絶縁層20にて覆うダイヤフラム構造体が形成される。尚、図3(a)には、第12工程が終了した時点のシリコンウエハ100の断面図が記載されている。
【0032】
第13工程では、シリコンウエハ100に形成された空洞部14の底部をなす第二面101側の絶縁層20を針等の貫通部材により貫通し、孔部70を形成する。空洞部12(ダイヤフラム構造体)と、シリコンウエハ100のデッドスペースに形成された空洞部14とは、第11工程におけるパターニングにより形成位置が定められたものであるため、孔部70の形成位置と空洞部12(ダイヤフラム構造体)との位置関係は、空洞部12を配置する精度と同程度の高い精度で一定に保たれる。尚、図3(b),(c)には、第13工程が終了した時点のシリコンウエハ100の断面図と、該シリコンウエハ100の上面図が記載されている。図3(c)に記載されているように、シリコンウエハ100のデッドスペース80には、8個の孔部70が外径に沿って等間隔に配置されている。
【0033】
第14工程では、複数の感応体30をシリコンウエハ100に形成するための感応体形成用開口部が複数形成されたメタルマスク300(図4(a)参照)を、シリコンウエハ100の第二面101に載置する。
【0034】
尚、図4(a)に記載されているように、メタルマスク300の外縁寄り部位のスペース310にも、シリコンウエハ100に形成された孔部70に対応するように、外径に沿って等間隔に配置された8個の孔部320が形成されている。このメタルマスク300を製作する工程においては、孔部320と感応体形成用開口部の形成位置は、シリコンウエハ100上の空洞部12(ダイヤフラム構造体)と孔部70の形成位置を基準として定められる。このため、メタルマスク300上の孔部320と各感応体形成用開口部との位置関係と、シリコンウエハ100上の孔部70と各空洞部12(ダイヤフラム構造体)との位置関係とは、一致したものとなっている。
【0035】
そして、図4(b)に記載されているように、シリコンウエハ100の孔部70に、上述の保持部材としての棒状部材200を挿通させると共に、オリエンテーションフラットを合わせてメタルマスク300の孔部320に棒状部材200を挿通させ、メタルマスク300を、シリコンウエハ100の第二面を覆った状態で保持する。このとき、メタルマスク300上の各感応体形成用開口部は、シリコンウエハ100の第二面101における、空洞部12(ダイヤフラム構造体)の底部をなす絶縁層20の略中央の感応体30の形成予定位置に配置される。
【0036】
第15工程では、ターゲットとして酸化スズを準備し、シリコンウエハ100を50〜400℃に加熱し、RFスパッタ装置を用いてメタルマスク300の上からシリコンウエハ100の第二面に対しスパッタリングを行い、層厚200nmの酸化スズ層を形成する。これにより、メタルマスク300に形成された感応体形成用開口部(マスクパターン)と同形状の感応体30が形成される。
【0037】
第16工程では、複数の感応体30が形成されたシリコンウエハ100をダイシングソーにより切断し、ダイヤフラム構造体を有する複数のガスセンサ素子1を切り出す。
以上の工程を実施することで製造された各ガスセンサ素子1は、Auワイヤなどを介して配線基板と接続され、その後大気中にて250℃で100時間にわたりエージング処理がなされ、最終的にガスセンサ素子1(あるいは、ガスセンサ素子1が備えられたガスセンサ)として完成される。
【0038】
[効果]
本実施形態の製造方法によれば、第11工程のパターニングにより空洞部12(ダイヤフラム構造体)とシリコンウエハ100のデッドスペース80上の孔部70の形成位置が定められ、第12工程のエッチングにより、これらの位置に空洞部12(ダイヤフラム構造体)と、上記孔部70を形成するための空洞部14が形成される。このため、空洞部12(ダイヤフラム構造体)の位置と、空洞部14の底部を貫通させて形成される孔部70との位置関係を、空洞部12(ダイヤフラム構造体)を配置する際の精度と同程度の高い精度で一定に保つことができる。
【0039】
また、第14,15工程で用いられるメタルマスク300は、感応体形成用開口部と外径に沿って形成されている孔部320との位置関係が、シリコンウエハ100上の空洞部12(ダイヤフラム構造体)と孔部70の位置関係と一致している。
【0040】
このため、孔部70,320に保持部材200を挿通させた状態でシリコンウエハ100の第二面101上にメタルマスク300を載置することで(第14工程)、メタルマスク300上の各感応体形成用開口部を、シリコンウエハ100の空洞部12(ダイヤフラム構造体)の底部をなす絶縁層20における感応体30の形成予定位置に精度良く配置することができるのである。
【0041】
したがって、シリコンウエハ100の第二面101上に載置されたメタルマスク300の上からスパッタリングを行い、ガスセンサ素子1の感応体30を形成することが可能となる。
【0042】
[他の実施形態]
(1)本実施形態では、ダイヤフラム構造体を有するガスセンサ素子1の製造工程を例に挙げて説明したが、本実施形態における製造方法は、ダイヤフラム構造体を有する他の半導体素子の製造にも適用することができる。
(2)また、本実施形態では、一例として、メタルマスクを保持するための孔部をシリコンウエハのデッドスペースに8個設けているが、この孔部の数はこれに限定されることは無い。シリコンウエハのデッドスペースに、少なくとも3個の孔部が外径に沿って等間隔に配置されていれば、シリコンウエハに載置されたメタルマスクを安定して保持できると考えられる。
(3)また、本実施形態では、第13工程にて、シリコンウエハ100に形成された空洞部14の底部をなす第二面101側の絶縁層20を針等の貫通部材により貫通し、孔部70を形成している。しかしながら、例えば、フォトリソグラフィによりパターニングを行った後にドライエッチングを行うことで、該絶縁層20を貫通させても良い。
(4)さらに、本実施形態では、NOxを検出するガスセンサ素子を例に説明したが、感応体の材質を変更したり、適宜の触媒を担持させたりして、HCやCO,H2などの特定のガスの濃度変化を検出するガスセンサ素子としてもよい。なお、感応体30の材質も、酸化スズに限られず、酸化インジウムや酸化タングステン等を用いてもよい。
【0043】
[特許請求の範囲との対応]
上記実施形態の説明で用いた用語と、特許請求の範囲の記載に用いた用語との対応を示す。
【0044】
第11工程が形成位置設定ステップに、第12工程及び第13工程がダイヤフラム形成ステップに、第14工程が保持ステップに、第15工程が被膜形成ステップに相当する。
【符号の説明】
【0045】
1…ガスセンサ素子、10…シリコン基板、11…第一面、12…空洞部、13…第二面、14…空洞部、20…絶縁層、21…第1絶縁層、22…第2絶縁層、23…発熱体絶縁層、231…下部発熱体絶縁層、232…上部発熱体絶縁層、24…感応体側絶縁層、25…凹部、30…感応体、40…発熱体、41…発熱体用リード部、42…コンタクト部、50…電極、51…電極用リード部、52…コンタクト部、60…レジスト、70…孔部、80…デッドスペース、100…シリコンウエハ、101…第二面、102…第一面、200…棒状部材、300…メタルマスク、310…デッドスペース、320…孔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部を有する半導体基板及び該空洞部を覆うように該半導体基板上に形成される絶縁膜を含むダイヤフラム構造体を有する半導体素子の製造方法であって、
前記絶縁膜が形成されており、かつ、前記空洞部が形成される前の状態である、前記半導体素子を切り出すウエハに対し、前記空洞部が形成される位置である空洞部形成位置を設定すると共に、該ウエハのデッドスペース上に形成される孔部の位置である孔部形成位置を、前記空洞部形成位置を基準として設定するためのパターニングを行う形成位置設定ステップと、
前記ウエハ上の前記空洞部形成位置に前記空洞部を形成して前記ダイヤフラム構造体を形成すると共に、前記孔部形成位置に前記孔部を形成するダイヤフラム形成ステップと、
前記ウエハの前記孔部に取り付けられた保持部材により、マスクパターンが形成されたメタルマスクを、前記ウエハを覆った状態で保持させる保持ステップと、
前記メタルマスクの上から前記ウエハに対してスパッタリングを行い、前記ウエハに、前記メタルマスクに形成された前記マスクパターンに応じた形状の被膜を形成する被膜形成ステップと、
を有することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
前記半導体素子とは、前記被膜が特定のガスを検出するための感応体であり、この感応体を前記絶縁膜上に形成してなるガスセンサ素子であること、
を特徴とする半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2590(P2012−2590A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136267(P2010−136267)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】