説明

ダイヤモンド被膜ドクターブレード

特に印刷版の表面から印刷インキを掻き取るための、および/またはペーパドクターナイフとして使用するためのドクターブレード(100、200)が、長手方向に作用エッジ領域(113、213)が形成された平坦かつ細長い本体部分(111、211)を有し、少なくとも作用エッジ領域(113、213)は、ニッケル−リン合金を主成分とする第1の被膜(120、220)により覆われる。このドクターブレード(100、200)は、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子(120.1、220.1)が、第1の被膜(120、220)中に分散され、ダイヤモンド粒子(120.1、220.1)の粒径が、5nm以上50nm未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に作用エッジ領域が形成された平坦かつ細長い本体部分を備え、少なくともこの作用エッジ領域がニッケル−リン合金を主成分とする第1の被膜により覆われている、特に印刷版の表面から印刷インキを掻き取るための、および/またはペーパドクターナイフとして使用するためのドクターブレードに関する。さらに、本発明は、ドクターブレードを製造するための方法と、さらにはその用途とに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷産業において、ドクターブレードは、とりわけ印刷シリンダおよび印刷用ロールの表面から余分な印刷インキを拭い取るために使用される。特にグラビア印刷およびフレキソ印刷の場合には、ドクターブレードの品質は、印刷結果に決定的な影響を有する。例としては、印刷シリンダと接触状態にあるドクターブレードの作用エッジに凹凸または不規則形状がある場合には、印刷シリンダの巻取紙からの印刷インキの拭い取りが、不完全になる。これにより、印刷基材上に印刷インキが制御されずに放出される結果となるおそれがある。
【0003】
拭い取り作業の際に、ドクターブレードの作用エッジ領域は、印刷シリンダまたは印刷用ロールの表面上に押し付けられ、その表面に対して移動される。したがって、特に輪転印刷プレスの場合には、作用エッジは、高い機械応力にさらされ、この応力は、それ相応の磨耗をもたらす。したがって、原則的には、ドクターブレードは、定期的な交換を要する消耗品である。
【0004】
通常、ドクターブレードは、特定の形状になされた作用エッジまたは作用エッジ領域を有するスチール製本体部分を基本として形成される。ドクターブレードの耐用寿命を向上させるために、ドクターブレードの作用エッジに、金属および/またはプラスチックからなる被膜または被覆を追加的に施すことが可能である。金属被膜は、しばしばニッケルまたはクロムを含み、これらは、適切な場合には、他の原子および/または化合物と混合または合金化された形態をとる。この点に関連して、被膜の材料特性は、特にドクターブレードの機械特性およびトライボロジー特性に対して著しい影響を有する。
【0005】
特許文献1(Nihon New Chrome Co. Ltd.社)は、例えば、中に硬質材料粒子が分散された化学ニッケルからなる第1の層と、表面エネルギーの低い第2の層とを有する、印刷分野用のドクターブレードについて記載している。この第2の層は、好ましくは、フッ素ベース樹脂の粒子を含む化学ニッケルから、または純有機樹脂からなる被覆より構成される。
【0006】
このように被膜を施されたドクターブレードは、被膜を施されないドクターブレードに比較して耐磨耗性が向上するが、耐用寿命は、依然として十分に満足のゆくものとはならない。さらに、かかるドクターブレードを使用した場合に、とりわけならし運転段階において制御できない印刷縞が生じるおそれがあることが判明しており、これもまた同様に望ましいものではない。
【0007】
したがって、とりわけ比較的長い耐用寿命を有し、それと同時に最適な拭い取りが可能な、改良されたドクターブレードが、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2003/064157号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、耐磨耗性が向上し、その耐用寿命の間中にわたってとりわけ印刷インキの正確な拭い取りが可能な、冒頭に述べられた技術分野に属するドクターブレードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の構成要件により達成される。本発明によれば、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子が、第1の被膜中に分散され、これらのダイヤモンド粒子の粒径は、5nm以上50nm未満である。
【0011】
このコンテクストにおいては、第1の被膜の主成分を成すニッケル−リン合金は、この合金のリン含有量がとりわけ1〜15重量%であるニッケルおよびリンの混合物を意味するものとして理解される。特に、かかる合金は、無電解めっきすることが可能であり、したがって化学ニッケルとも呼ばれる。「ニッケル−リン合金を主成分とする」という表現は、ニッケル−リン合金が、第1の被膜の主要成分を成すことを意味する。この場合に、第1の被膜が、ニッケル−リン合金に加えて、ニッケル−リン合金よりも低い比率の他のタイプの原子および/または化合物を含むことも、当然ながら可能である。ニッケル−リン合金、および存在し得る他のタイプの原子および/または化合物が、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子に対して母材を形成する。この母材中におけるニッケル−リン合金の比率は、好ましくは少なくとも50重量%であり、特に好ましくは少なくとも75重量%であり、非常に特に好ましくは少なくとも95重量%である。不可避な不純物は別として、第1の被膜の母材が、ニッケル−リン合金のみから構成されると、特に有利である。したがって、理想的には、第1の被膜は、不可避な不純物は別として、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子が中に分散されたニッケル−リン合金のみから構成される。
【0012】
本発明によれば、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子は、第1の被膜中に分散される。これは、特に、ダイヤモンド粒子が、実質的に一様に分散された態様において第1の被膜中に存在することを意味する。
【0013】
このコンテクストにおいては、粒径は、特に、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子の最大寸法および/または最大外寸を意味するものとして理解される。この粒径に関して、ダイヤモンド粒子は、概して、ある特定の分布性または分散性をさらに有する。したがって、様々な粒径を有するダイヤモンド粒子が、特に第1の被膜中に同時に存在する。
【0014】
ニッケル−リン合金を主成分とする第1の被膜中に分散され、本発明による5nm以上50nm未満の粒径を有する単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子は、ドクターブレードの作用エッジまたは作用エッジ領域の耐磨耗性を大幅に向上させることが判明している。これにより、本発明によるドクターブレードの長い耐用寿命がもたらされる。
【0015】
また同時に、作用エッジは、ダイヤモンド粒子が中に分散されたニッケル−リン合金を主成分とする第1の被膜によって、最適に安定化される。したがって、画然と規定された接触区域が、ドクターブレードと印刷シリンダまたは印刷用ロールとの間にもたらされることにより、特に極めて正確に印刷インキを拭い取るまたは掻き取ることが可能となる。この場合に、この接触区域は、ドクターブレードの耐用寿命の間中にわたり、または印刷プロセスの間中にわたり、おおむね安定した状態に留まる。
【0016】
さらに、本発明によるドクターブレードは、通常において使用される印刷シリンダまたは印刷用ロールに対して極めて好ましい摺動特性を有する。これもまた、本発明によるドクターブレードが掻き取りのために使用される場合に、印刷シリンダまたは印刷用ロールに対する磨耗を低減させる。
【0017】
ドクターブレードの作用エッジの耐磨耗性を向上させ、最適に安定化させるためには、5nm以上50nm未満の粒径を有する単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子が、理想的な選択肢であることが判明している。この点において、単結晶構造および/または多結晶構造を有するダイヤモンドは、特にその高い硬度と、多数の潜在的反応相手に対する化学的不活性性とにより、本発明による粒子について理想的な材料であることが判明している。この場合に、単結晶構造および/または多結晶構造を有するダイヤモンドは、例えばグラファイト、ガラス状炭素、グラフェン、カーボンブラック、または非晶質ダイヤモンド状炭素(DLC)などの他の形態の炭素と混同されるべきではない。これらの形態の炭素は、仮にあるとしてもごく限定的にしか本発明による利点をもたらさない。
【0018】
本発明による粒径の場合には、粒子体積に対する粒子表面積の比率は、マイクロメートル領域の粒径と比較した場合に、非常に高い。したがって、さらに周囲のニッケル−リン合金と接触状態にありかつ相互作用する粒子表面積は、ダイヤモンド粒子の特性に対して殆ど影響を有さず、これが、本発明によるドクターブレードの特性に対してプラスの影響を有することは明らかである。
【0019】
5nm未満の粒径を有するダイヤモンド粒子が使用される場合には、ドクターブレードの作用エッジの耐磨耗性がとりわけ低下し、その結果、ドクターブレード耐用寿命が短くなる。50nm以上の粒径の場合には、ドクターブレードの作用エッジの安定性がとりわけ低下し、これにより、印刷インキの正確な拭い取りが損なわれる。
【0020】
したがって、ニッケル−リン合金との組合せにおいて、5nm以上50nm未満の粒径を有するダイヤモンド粒子が追加されることによって、優れた機械特性およびトライボロジー特性を有するドクターブレードのための新規の被膜が生み出される。
【0021】
ニッケル−リン合金のリン含有量は、好ましくは7〜12重量%である。本発明による単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子との組合せにおいて、かかる被膜は、とりわけドクターブレードの耐用寿命の間中にわたってより高い耐磨耗性が得られることから、特に適切であることが判明している。さらに、7〜12重量%のリン含有量は、耐腐食性、耐変色性、およびニッケル−リン合金の不活性性を向上させる。同様に、7〜12重量%のリン含有量は、ドクターブレードの摺動特性に対してプラスの影響を有し、さらには作用エッジの安定性に対してプラスの影響を有する。その結果、とりわけ正確な態様において印刷インキを拭い取るまたは掻き取ることが可能となる。さらに、リン含有量が7〜12重量%である場合には、例えばステンレス製本体部分などの、ドクターブレードに関して通常用いられる本体部分に良好な接着性がもたらされる。
【0022】
しかし、原則的には、7重量%未満のリン含有量または12重量%超のリン含有量とすることも可能である。しかし、それにより、上述のプラスの影響は低減され、またはさらには完全に消失する。
【0023】
第1の被膜の層厚は、有利には1〜10μmである。第1の被膜のかかる厚さにより、ドクターブレードの作用エッジの最適な保護が得られる。さらに、かかる寸法を有する第1の被膜は、高い固有安定性を有し、これは、例えば印刷シリンダから印刷インキを掻き取る際などに、第1の被膜の部分的なまたは完全な剥離を効果的に低減させる。
【0024】
1μm未満の厚さが可能であるが、この場合には、作用エッジのまたはドクターブレードの耐磨耗性が急速に低下する。10μm超の厚さもまた実現可能であるが、これは、非経済的であり、時として作用エッジの品質に対してマイナスの影響を有する。
【0025】
特に、第1の被膜中の単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子の体積密度は、5〜20%であり、特に好ましくは15〜20%である。かかる体積密度を有するドクターブレードは、極めて良好な耐磨耗性および長い耐用寿命を有する。同時に、ドクターブレードと印刷シリンダまたは印刷用ロールとの間に理想的に画然と規定された接触区域がさらにもたらされ、この接触区域は、ドクターブレードの耐用寿命の間中にわたって実質的に一定または安定した状態に留まる。
【0026】
原則的には、さらに高いまたはさらに低い体積比率を有する単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子を用いることも可能である。しかし、この場合には、ドクターブレードの耐磨耗性および/または安定性は、印刷プロセスの際のいくつかの状況において損なわれる。
【0027】
さらに有利な実施形態においては、追加的な硬質材料粒子が、第1の被膜中に存在する。このコンテクストにおいて、「硬質材料粒子」という用語は、特に、好ましくは少なくとも1000HVの硬度を有する、金属炭化物、金属窒化物、セラミック、および金属間化合物相を意味するものとして理解される。これらは、例としては、立方晶窒化ホウ素(BN)、炭化ホウ素(BC)、酸化クロム(Cr2O3)、二ホウ化チタン(TiB2)、窒化ジルコニウム(ZrN)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化チタン(TiC)、炭化ケイ素(SiC)、窒化チタン(TiN)、酸化アルミニウムもしくはコランダム(Al2O3)、炭化タングステン(WC)、炭化バナジウム(VC)、炭化タンタル(TaC)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、および/または窒化ケイ素(Si3N4)を含む。
【0028】
追加的な硬質材料粒子が、第1の被膜中に存在する場合には、とりわけ、作用エッジの耐磨耗性をさらに向上させることが可能となる。理想的には、追加的な硬質材料粒子は、0.3〜0.5μmの粒径を有する酸化アルミニウム粒子またはコランダム(Al2O3)粒子を含む。かかる硬質材料粒子は、とりわけその硬度、機械的強度、耐化学性、および良好な摺動特性により傑出している。さらに、特に0.3〜0.5μmの粒径を有する酸化アルミニウム粒子は、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子との組合せにおいて、第1の被膜のまたはニッケル−リン合金の安定性を高めるため、これにより、作用エッジの品質が向上し、ドクターブレードの耐用寿命の間中にわたり特に均一かつ正確な掻き取りが可能となる。
【0029】
しかし、原則的には、酸化アルミニウム粒子以外の硬質材料粒子を使用すること、および/または、0.3μm未満および/または0.5μm超の粒径とすることもまた可能である。しかし、いくつかの状況においては、これは、ドクターブレードの耐磨耗性および/または安定性を犠牲とする。第1の被膜に追加される追加的な硬質材料粒子の有無およびそのタイプは、ドクターブレードの使用目的によって決定することも可能であり、例えば印刷シリンダおよび/または印刷用ロールの材料および表面品質によっても決定される。
【0030】
さらに有利な変形形態においては、他のニッケル−リン合金を主成分とする第2の被膜が、第1の被膜の上に配置される。他のニッケル−リン合金を主成分とする第2の被膜は、特に、第1の被膜のための保護層としての役割を果たすことができ、その結果、ドクターブレードの作用エッジの耐磨耗性および安定性をさらに高めることが可能となる。さらに、第2の被膜は、本発明によるドクターブレードを用いた掻き取りの実施に対してプラスの影響を有する他の付加物に対する安定的な母材としての役割を果たすことが可能である。
【0031】
有利には、この第2の被膜の他のニッケル−リン合金のリン含有量は、第1の被膜のニッケル−リン合金のリン含有量未満である。異なるリン含有量を有する被膜を組み合わせることにより、特に、磨耗に対する作用エッジのより高い保護が得られ、また同時に、作用エッジがさらに安定化される。6〜9重量%という第2の被膜の他のニッケル−リン合金のリン含有量は、この点において特に適していることが判明している。
【0032】
しかし、原則的には、第2の被膜の他のニッケル−リン合金のリン含有量は、6%未満または9%超であることも可能である。原則的には、第1の被膜および第2の被膜中のリン含有量を同等にすることが、または第2の被膜中のリン含有量を第1の被膜中のリン含有量よりも高くすることが、同様に可能である。しかし、これは、ドクターブレードの作用エッジの品質を犠牲にする場合がある。
【0033】
特に、第2の被膜の層厚は、0.5〜3μmである。特に、かかる層厚により、第2の被膜の高い固有安定性と同時に、第1の被膜に対する良好な保護効果が保証されるため、これは、全体としての作用エッジの安定性に利する。
【0034】
しかし、0.5μm未満または3μm超の層厚を有する第2の被膜を設けることも、本発明の範囲内に含まれる。しかし、いくつかの状況においては、これは、ドクターブレードの作用エッジの安定性および耐磨耗性を低下させる。
【0035】
特に好ましい一実施形態においては、第2の被膜は、ポリマー粒子を含む。この場合に、有利には、ポリマー粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含み、とりわけ0.5〜1μmの粒径を有する。有利には、不可避な不純物は別として、ポリマー粒子は、完全にポリテトラフルオロエチレンから構成される。
【0036】
特に、第2の被膜中のポリマー粒子は、潤滑効果を有することが可能であり、さらにこれは、掻き取りの実施の際のドクターブレードの作用エッジの摺動特性を向上させる。この点において、ポリテトラフルオロエチレンを含むポリマー粒子、および極めて特には完全にポリテトラフルオロエチレンから構成されるポリマー粒子は、とりわけ粒径が0.5〜1μmの場合に、特に有利であることが判明している。とりわけリン含有量が6〜9%であるニッケル−リン合金に関して、かかるポリマー粒子は、高品質の作用エッジの実現に寄与し、これにより、印刷シリンダおよび/または印刷用ロールを保護する極めて正確な掻き取りが可能となる。
【0037】
原則的には、ポリテトラフルオロエチレンを含むポリマー粒子は、追加的なポリマー材料を含むことも可能である。同様に、ポリテトラフルオロエチレンを含まないポリマー粒子を用いること、または0.5μm未満もしくは1μm超の粒径とすることが可能である。さらに、第2の被膜中においてポリマー粒子を完全に省くことも可能であるが、上述の利点の少なくともいくつかが得られなくなる。
【0038】
ドクターブレード、とりわけ本発明によるドクターブレードを製造するためには、ニッケル−リン合金を主成分とする第1の被膜を、平坦かつ細長い本体部分の長手方向に形成されたドクターブレードの作用エッジ領域上に析出させることが可能である。この場合には、5nm以上50nm未満の粒径を有する単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子が、第1の被膜中に分散される。
【0039】
第1の被膜は、有利には、無電解めっきプロセスまたは無電解被膜プロセスによって析出される。この場合には、ニッケル−リン合金を主成分とする第1の被膜を析出するために、電流は全く使用されず、その結果、かかる析出プロセスは、電着技術とは明らかに異なるものとなる。無電解めっきまたは無電解被膜を行うために、作用エッジ、または適切な場合にはドクターブレードの本体部分全体が、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子が中に分散された適切な電解質槽中に浸漬され、本質的に既知の態様で被膜を施される。電解質槽中に懸濁される単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子は、この被膜プロセスまたは析出プロセスの際にニッケル−リン合金中に組み込まれ、それにより実質的にランダムな分布で、析出されるニッケル−リン合金中に分散される。5nm以上50nm未満という比較的小さな粒径により、およびそれに対応して表面積/体積比が比較的高いことにより、ダイヤモンド粒子は、電解質溶液の密度がかなり高いにもかかわらず、この電解質溶液中全体に均一に分布する。ダイヤモンド粒子の表面と電解質槽中の液体との間に生じる摩擦力が、ダイヤモンド粒子に対して作用する引力よりも概して高いため、析出プロセスの際のダイヤモンド粒子の滑動は、とりわけおおむね防がれる。最後に、さらにこれにより、ダイヤモンド粒子が、第1の被膜中に極めて均一に組み込まれる。
【0040】
したがって、無電解めっきプロセスにより、特に、ドクターブレードの作用エッジに関してまたはドクターブレードの本体部分に関して高い輪郭形状精度を有し、さらに非常に均一な層厚分布を有する、高品質の第1の被膜を製造することが可能となる。換言すれば、無電解めっきにより、最適な態様でドクターブレードの作用エッジまたは本体部分の輪郭形状に倣う、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子がとりわけ均一に分布した極めて均質なニッケル−リン合金が形成され、これは、ドクターブレードの品質に大きく寄与する。
【0041】
ニッケル−リン合金の無電解めっきにより、原則的には、ドクターブレードについて本体部分としてプラスチックを使用することも可能となり、ニッケル−リン合金から構成される第1の被膜をプラスチックに簡単な態様で施すことも可能となる。
【0042】
しかし、原則的には、電気めっきプロセスにより本体部分上に第1の被膜を析出することも考えられる。しかし、このように析出された第1の被膜は、比較的均一性を欠く形態となり、安定性および本体部分への接着性が全体的に低下することが判明している。
【0043】
他のニッケル−リン合金を主成分とする第2の被膜が、第1の被膜に施される場合には、これは、無電解被膜プロセスおよび電気めっきプロセスの両方により析出させることが可能である。しかし、とりわけポリマー粒子が中に分散された他のニッケル−リン合金を主成分とする第2の被膜を析出するためには、無電解プロセスが特に適することが判明している。
【0044】
さらに好ましくは、第1の被膜は、とりわけ100〜150℃の、特に170〜300℃の温度にて、硬化プロセスのために熱処理を受ける。第2の被膜がある場合には、これは、前記熱処理を受けることがやはり有利である。熱処理は、ニッケル−リン合金において固相反応を引き起こし、これは、第1の被膜中のニッケル−リン合金の硬度を高め、適する場合には、さらに第2の被膜中のニッケル−リン合金の硬度を高める。この場合に、好ましくは、100〜500℃の、特に170〜300℃の温度が、0.5〜15時間の、特に好ましくは0.5〜8時間の保持時間にわたって保たれる。かかる温度および保持時間は、ニッケル−リン合金の十分な硬度を実現するのに理想的であることが判明している。
【0045】
この点において、100℃未満の温度が、同様に可能である。しかし、この場合には、非常に長く多分に非経済的な保持時間を要する。本体部分の材料によっては、500℃超の温度も原則的には実施可能であるが、この場合には、ニッケル−リン合金の硬化プロセスは、制御がより難しくなる。
【0046】
しかし、原則的には、熱処理を完全に省くことも可能である。しかし、これは、ドクターブレードの耐磨耗性または耐用寿命を犠牲とする。
【0047】
2つの被膜が、本体部分上に配置される場合には、有利には、熱処理は、第1の被膜上に第2の被膜を析出したまたは施した後にようやく実施される。その結果、酸化物形成が、とりわけ第2の被膜により覆われた第1の被膜の表面上においては防止される。第1に、これは、第1の被膜と第2の被膜との間により良好な接着をもたらし、第2に、作用エッジの領域におけるドクターブレードの均一性が、総じて向上する。
【0048】
第2の被膜が設けられる場合には、これは、とりわけ、長手方向に対して位置する本体部分の側方表面領域の全側部上に、特には本体部分全体上に析出される。この場合には、長手方向に対して位置する本体部分の側方表面領域、または好ましくは本体部分全体が、第2の被膜によって全側部に関して覆われる。これに従い、ドクターブレードの本体部分が、環境的影響から、およびとりわけ時としては化学的に侵食性の印刷インキから最適に保護されるのに加えて、これにより、被膜の実施が簡単になる。例としては、本体部分を、電解質槽内に完全に浸漬することが可能となる。これは、第1の被膜を備える作用エッジのみが被膜を施される場合には、不可能である。なぜならば、その場合には、本体部分が、いくつかの状況においては電解質槽内の液体の表面に対して複雑な配向にされなければならないためである。
【0049】
しかし、原則的には、第1の被膜を備える作用エッジのみが、第2の被膜を備えることもまた可能である。
【0050】
以下の詳細な説明より、および特許請求の範囲全体より、本発明の構成要件の他の有利な実施形態および組合せが明らかになろう。
【0051】
例示の実施形態を説明するために、以下の図面が示される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】作用エッジの領域に被膜を備える、本発明による第1の層状ドクターブレードの断面図である。
【図2】作用エッジの領域に二重被膜を備える、本発明による第2の層状ドクターブレードの断面図である。
【図3】ドクターブレードを製造するための方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
原則的に、図面においては、同一部分には、同一の参照符号を付している。
【0054】
図1は、本発明による第1の層状ドクターブレード100を断面において示す。層状ドクターブレード100は、スチール製本体部分111を備え、このスチール製本体部分111は、図1においては左側に、実質的に矩形の断面を有する後方領域112を有する。後方領域の上部側112.1から下部側112.2までのドクターブレードの厚さは、約0.2mmである。図面平面に対して垂直方向の層状ドクターブレード100の本体部分111の長さは、例えば1000mmである。
【0055】
図1における右側で、本体部分111は、後方領域112の上部側112.1からステップ状に先細になり、作用エッジ領域113または作業エッジを形成する。作用エッジ113の上部側113.1は、後方領域112の上部側112.1の平面より下方の平面に位置するが、後方領域112の上部側112.1に対して実質的に平行にまたは面平行に形成される。凹形状移行領域112.5が、後方領域112と作用エッジ113との間に存在する。後方領域112の下部側112.2および作用エッジ113の下部側113.2は、共通平面内に位置し、これは、後方領域112の上部側112.1に対して面平行に、および作用エッジ113の上部側113.1に対して面平行に形成される。後方領域の自由端部から作用エッジ113の端部面114までの本体部分111の幅は、例えば40mmである。作用エッジの上部側113.1から下部側113.2までの作用エッジ113の厚さは、例えば0.060〜0.150mmであり、これは、後方領域112におけるドクターブレードの厚さの半分にほぼ相当する。作用エッジ113の上部側113.1上における端部面114から移行領域112.5までの作用エッジ領域113の幅は、例えば0.8〜5mmである。
【0056】
右側の作用エッジ113の自由端部に位置する自由端部面114は、左方向に斜めに、および作用エッジ113の上部側113.1から作用エッジ113の下部側113.2の方向に下方に延在する。この場合、端部面114は、作用エッジ113の上部側113.1に対して、および作用エッジ113の下部側113.2に対して、それぞれ約45°および約135°の角度となる。作用エッジ113の上部側113.1と端部面114との間の上部移行領域が、丸みを付けられている。同様に、端部面114と作用エッジ113の下部側113.2との間の下部移行領域が、丸みを付けられている。
【0057】
さらに、層状ドクターブレード100の作用エッジ113は、第1の被膜120により囲まれている。この場合、第1の被膜120は、作用エッジ113の上部側113.1と、凹形状移行領域112.5と、本体部分111の後方領域112の上部側112.1の隣接する部分領域とを完全に覆う。同様に、第1の被膜120は、端部面114と、作用エッジ113の下部側113.2と、本体部分111の後方領域112の下部側112.2の、作用エッジ113の下部側113.2に隣接する部分領域とを覆う。
【0058】
例としては、第1の被膜120は、基本的に、例えばリン含有量が10重量%である無電解めっきニッケル−リン合金から構成される。例えば15〜40nmの粒径を有する多結晶ダイヤモンド粒子120.1が、その中に分散される。多結晶ダイヤモンド粒子120.1の体積比率は、例えば18%である。作用エッジ113の領域では、第1の被膜120の層厚さは、例えば5μmである。第1の被膜120の層厚さは、後方領域112の上部側112.1および下部側112.2の領域においては漸減し、第1の被膜120は、作用エッジ113から離れる方向に、ウェッジの形態で先細る。
【0059】
図2は、本発明による他の層状ドクターブレード200を断面において示す。層状ドクターブレード200は、スチール製本体部分211を含み、このスチール製本体部分211は、図1に図示される第1の層状ドクターブレード100の本体部分111と実質的に同一に設計される。
【0060】
第2の層状ドクターブレード200の作用エッジ213は、第1の被膜220によって囲まれる。この場合に、第1の被膜220は、作用エッジ213の上部側213.1と、移行領域212.5と、本体部分の後方領域212の上部側212.1の隣接する部分領域とを完全に覆う。同様に、第1の被膜220は、端部面214と、作用エッジ213の下部側213.2と、本体部分211の後方領域212の下部側212.2の、作用エッジ213の下部側213.2に隣接する部分領域とを覆う。
【0061】
例としては、第2の層状ドクターブレード200の第1の被膜220は、基本的に、例えばリン含有量が12重量%である無電解めっきニッケル−リン合金から構成される。多結晶ダイヤモンド粒子220.1(図2において円により記号化される)と、酸化アルミニウム(Al2O3)からなる硬質材料粒子220.2(図2において五角形により記号化される)とが、第1の被膜中に分散される。この場合に、ダイヤモンド粒子220.1は、例えば15〜40nmの粒径を有する一方で、硬質材料粒子220.2すなわち酸化アルミニウムからなる粒子は、0.4μmの粒径を有する。多結晶ダイヤモンド粒子220.1の体積比率は、例えば15%である。作用エッジ213の領域においては、第1の被膜220の層厚は、例えば5μmである。第1の被膜220の層厚は、後方領域212の上部側212.1および下部側212.2の領域において漸減し、第1の被膜220は、作用エッジ213から離れる方向に、ウェッジの形態で先細る。
【0062】
第1の被膜220、および第1の被膜220により被覆されない本体部分211の他の領域が、第2の被膜221によって完全に囲まれる。その結果、後方領域212の上部側212.1および下部側212.2と、さらには本体部分211の後方端部面とが、第2の被膜221によりさらに被覆される。したがって、図面平面に対して垂直方向に位置する本体部分211のまたは第2のドクターブレード200の長手方向に対する本体部分211の側方表面領域は、2つの被膜220、221の少なくとも一方によって完全におよび全体的に囲まれる。図面平面に対して面平行に位置し、図2においては見えない、本体部分211の前側面および後側面が、同様に第2の被膜221により被覆され得る。
【0063】
第2の被膜221は、リン含有量が約7%である他の無電解めっきニッケル−リン合金から構成される。したがって、第1の被膜220のリン含有量は、第2の被膜221のリン含有量よりも高い。第2の被膜221の層厚は、例えば1.8μmである。さらに、ポリマー粒子221.1が、第2の被膜221中に分散される。例としては、ポリマー粒子221.1は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成され、例えば0.6〜0.8μmの粒径を有する。
【0064】
図3は、例えば図1および図2に図示されるようなドクターブレードを製造するための方法300を概略的に示す。この方法においては、第1のステップ301において、被膜を施されることとなる本体部分111、211の作用エッジ113、213が、例えば粒径が10〜40nmである多結晶ダイヤモンド粒子および/または単結晶ダイヤモンド粒子120.1、220.1が中に懸濁された、本質的に既知の、適切な水性電解質槽内に浸漬される。図2に図示される層状ドクターブレードの場合のように、追加的な硬質材料粒子220が、被膜中に組み込まれるべき場合には、この追加的な硬質材料粒子220が、同様に電解質槽中に懸濁される。後の析出プロセスの際に、ニッケルイオンが、とりわけ硫酸ニッケルなどのニッケル塩から、例えば次亜リン酸ナトリウムなどの還元剤によって、水性環境内で還元されて、ニッケル元素が形成され、作用エッジ113、213上に析出し、ニッケル−リン合金を形成し、多結晶ダイヤモンド粒子および/または単結晶ダイヤモンド粒子120.1、220.1を組み込み、さらに存在する場合には追加的な硬質材料粒子220.2を組み込む。これは、例えば適度な酸性条件(pH4〜6.5)下において、70〜95°の高温にて、電圧の印加を伴わずにまたは完全な無電解状態において行われる。第1の被膜120、220中のリン含有量は、電解質槽内の試薬の濃度および混合比により、本質的に既知の態様で制御することが可能である。
【0065】
図2に図示される第2の層状ドクターブレード200の場合のように、第2の被膜220が、さらに設けられる場合には、第2のステップ302において、第1の被膜210を備える本体部分211が、0.6〜0.8μmの粒径を有する。例えばポリテトラフルオロエチレンなどのポリマー粒子220.1が中に懸濁された、本質的に既知の他の水性電解質槽内に浸漬される。その後の析出プロセスは、第1の被膜120、220のための第1のステップ301について既述した様式と同一の様式で進められる。図1に図示される第1の層状ドクターブレードの場合のように、第2の被膜が設けられない場合には、第2のステップ302は、省略され、所望に応じて第3のステップ303が、直後に実施される。
【0066】
第3のステップ303においては、被膜を施された本体部分111、211が、例えば2時間の間にわたり、300°の温度で、熱処理を施される。これにより、第1の被膜120、220、および存在する場合には第2の被膜221が、硬化される。最後に、完成した層状ドクターブレード100、200が、冷却され、それにより使用可能な状態となる。
【0067】
試験により、図1に図示される第1の層状ドクターブレード100は、その耐用寿命にわたって非常に高い耐磨耗性および安定性を有することが判明した。比較のために、第1の比較試験においては、図1に図示されるような層状ドクターブレードの場合において、第1の被膜120中へのダイヤモンド粒子120.1の添加を省いた。この場合には、ダイヤモンド粒子を含まないかかるドクターブレードは、耐磨耗性が低下し、したがって図1に図示される本発明による層状ドクターブレード100に比べてより短い耐用寿命を有することが判明した。
【0068】
第2の比較試験においては、図1に図示されるような層状ドクターブレードの場合において、約10〜40nmの粒径を有するダイヤモンド粒子120.1を使用する代わりに、約100nmの粒径を有する比較的大きなダイヤモンド粒子を使用した。しかし、この場合には、ドクターブレードの作用エッジは、ドクターブレードの耐用寿命全体にわたって考えた場合に、図1に図示される層状ドクターブレード100の場合よりも安定性が低かった。
【0069】
他の試験においては、図2に図示される第2の層状ドクターブレード200は、第1の層状ドクターブレード100に比べて、ある程度、より安定的であり、より耐磨耗性が高いことが判明した。
【0070】
上述の実施形態および製造方法は、もっぱら例示的なものとして理解されるべきであり、本発明の範囲内において所望に応じて修正することが可能である。
【0071】
例としては、図1に図示される本体部分11は、例えばステンレス鋼またはカーボンスチールなどの異なる材料から製造されてもよい。この場合、作用エッジ13の領域のみに第2の被膜21を施すことにより、被膜用の材料の消費量を減らすことが、経済的な理由から有利となり得る。しかし、原則的には、本体部分11は、例えばプラスチックなどの非金属材料から構成することも可能である。これは、特にフレキソ印刷における用途に対して有利である場合がある。
【0072】
しかし、図1および図2に図示される本体部分111、211の代わりに、異なる形状を有する本体部分を使用することも可能である。特に、本体部分は、ウェッジ形状の作用エッジ、または丸みを付けられた作用エッジを有する非テーパ状断面形状を有してもよい。右側の作用エッジ113、213の自由端部の自由端部面114、214は、例えば完全に丸みを付けられた形状を有してもよい。
【0073】
さらに、図1および図2に図示される本発明によるドクターブレード100、200は、様々な寸法を有することも可能である。したがって、例としては、作用領域113、213の上部側113.1、213.1から下部側113.2、213.2までの作用領域113、213の厚さは、0.040〜0.200mmの範囲において様々であってよい。
【0074】
同様に、2つの層状ドクターブレード100、200の全ての被膜120、220、221が、他の合金成分、および/または、例えば金属原子、非金属原子、無機化合物、および/または有機化合物などの追加の物質を含んでもよい。
【0075】
さらに、第2の層状ドクターブレード200のための第2の被膜221を省き、ダイヤモンド粒子220.1および硬質材料粒子220.2が中に分散された第1の被膜210のみが、本体部分211の上に存在するようにすることが、本発明の範囲内にやはり含まれる。
【0076】
図1および図2に図示される2つの層状ドクターブレード100、200の場合に、図面平面に対して垂直方向に位置する、本体部分111、211の長手方向に対する本体部分111、211の側方表面領域を、第1の被膜120、220により完全におよび全体的に囲むことも可能である。
【0077】
まとめると、ドクターブレードの高い耐磨耗性および安定性をもたらす新規のドクターブレード設計を発見したと言うことができる。特に、本発明によるドクターブレードにより、その耐用寿命の間中にわたって、特に印刷シリンダまたは印刷用ロール上の印刷インキの、より正確な拭い取りが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
100 第1の層状ドクターブレード
111 本体部分
112 後方領域
112.1 上部側
112.2 下部側
112.5 凹形状移行領域
113 作用エッジ
113.1 上部側
113.2 下部側
114 端部面
120 第1の被膜
120.1 多結晶ダイヤモンド粒子
200 第2の層状ドクターブレード
211 本体部分
212 後方領域
212.1 上部側
212.2 下部側
212.5 移行領域
213 作用エッジ
213.1 上部側
213.2 下部側
214 端部面
220 第1の被膜
220.1 多結晶ダイヤモンド粒子
220.2 硬質材料粒子
221 第2の被膜
221.1 ポリマー粒子
300 方法
301 第1のステップ
302 第2のステップ
303 第3のステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に作用エッジ領域(113、213)が形成された平坦かつ細長い本体部分(111、211)を備える、特に印刷版の表面から印刷インキを掻き取るための、および/またはペーパドクターナイフとして使用するためのドクターブレード(100、200)であって、少なくとも前記作用エッジ領域(113、213)は、ニッケル−リン合金を主成分とする第1の被膜(120、220)により覆われる、ドクターブレード(100、200)において、単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子(120.1、220.1)が、前記第1の被膜(120、220)中に分散され、前記ダイヤモンド粒子(120.1、220.1)の粒径が、5nm以上50nm未満であることを特徴とする、ドクターブレード(100、200)。
【請求項2】
前記第1の被膜(120、220)中の前記ニッケル−リン合金のリン含有量が、7〜12重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項3】
前記第1の被膜(120、220)の層厚が、1〜10μmであることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項4】
前記第1の被膜中の前記ダイヤモンド粒子(120.1、220.1)の体積密度が、5〜20%であり、とりわけ15〜20%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項5】
追加的な硬質材料粒子(220.2)が、前記第1の被膜(220)中に存在することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項6】
前記追加的な硬質材料粒子(220.2)は、0.3〜0.5μmの粒径を有する酸化アルミニウム粒子を含むことを特徴とする、請求項5に記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項7】
他のニッケル−リン合金を主成分とする第2の被膜(221)が、前記第1の被膜(120、220)の上に配置されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項8】
前記第2の被膜(221)の前記他のニッケル−リン合金のリン含有量が、6〜9重量%であることを特徴とする、請求項7に記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項9】
前記第2の被膜(221)の層厚が、0.5〜3μmであることを特徴とする、請求項7〜8のいずれかに記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項10】
前記第2の被膜(221)は、ポリマー粒子(221.1)を含むことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項11】
前記ポリマー粒子(221.1)は、ポリテトラフルオロエチレンを含み、特に0.5〜1μmの粒径を有することを特徴とする、請求項10に記載のドクターブレード(100、200)。
【請求項12】
ドクターブレード、特に請求項1〜11のいずれか一項に記載のドクターブレード(100、200)を製造するための方法(300)であって、ニッケル−リン合金を主成分とする第1の被膜(120、220)が、平坦かつ細長い本体部分(111、211)の長手方向に形成された前記ドクターブレード(100、200)の作用エッジ領域(113、213)上に析出される、方法(300)において、5nm以上50nm未満の粒径を有する単結晶ダイヤモンド粒子および/または多結晶ダイヤモンド粒子(120.1、220.1)が、前記第1の被膜(120、220)中に分散されることを特徴とする、方法(300)。
【請求項13】
前記第1の被膜(120、220)は、無電解被膜プロセスにより析出されることを特徴とする、請求項12に記載の方法(300)。
【請求項14】
好ましくはポリマー粒子(221.1)が中に分散された、他のニッケル−リン合金を主成分とする第2の被膜(221)が、前記第1の被膜(220)上に析出されることを特徴とする、請求項12〜13のいずれかに記載の方法(330)。
【請求項15】
前記第1の被膜(120、220)は、とりわけ100〜500℃の、特に170〜300℃の温度にて、硬化のために熱処理を受けることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項16】
印刷版、特にフレキソ印刷、グラビア印刷、および/または装飾グラビア印刷のための印刷版の表面から印刷インキを掻き取るための、請求項1〜11のいずれか一項に記載のドクターブレード(100、200)の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−505087(P2012−505087A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530343(P2011−530343)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000303
【国際公開番号】WO2010/040236
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(509058324)デートワイラー・スイステック・アーゲー (5)
【Fターム(参考)】