説明

ダイ供給機

【課題】 ウェハをダイシングしてなるダイ集合体からダイをピックアップして供給するダイ供給機の実用性を向上させる。
【解決手段】 ピックアップヘッドが有する複数のノズル被装着具に複数の吸着ノズルがそれぞれ装着されるダイ供給機に、それら複数の吸着ノズル44を格納するノズル格納装置100を設置する。そして、そのノズル格納装置を、それら複数の吸着ノズルが複数のノズル被装着具の相対位置関係と同じ相対位置関係で格納されるようにし、そのノズル格納装置に、ピックアップヘッドへの同時装着のためにそれら複数の吸着ノズルを同時に動作させるノズル作動機構120,122,124,126,128を設ける。複数の吸着ノズルを迅速に装着することができ、ヒップアップヘッドの構造の単純化,軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハをダイシングしてなるダイ集合体からダイをピックアップして供給するダイ供給機に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイ集合体からダイをピックアップして供給するダイ供給機は、例えば、下記特許文献に記載されているようなものであり、ピックアップヘッドが有する吸着ノズルによってダイを吸着保持し、ピックアップヘッドを移動させて、その保持されたダイを所定の供給位置にて供給する。多くの場合、その供給されたダイは、部品装着機によって、基板に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−129949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイが装着されたダイ装着品の製造速度を向上させるには、ダイ供給機によるダイの供給速度(単位時間あたりに供給可能なダイの数)を向上させる必要があり、そのため、ピックアップヘッドに複数の吸着ノズルを装備させることも検討されている。その一方で、例えば、種々のサイズのダイに対応可能とするといった理由から、ダイ供給機には、吸着ノズルが交換可能であることが望まれている。したがって、複数の吸着ノズルを装備させる場合、複数のノズルを交換して装着することが要求される。この複数の吸着ノズルの装着の技術については、改良の余地が残されており、工夫を凝らすことにより、複数のノズルを備えたダイ供給機の実用性を向上させることが可能である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いダイ供給機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のダイ供給機は、ピックアップヘッドに装着される複数の吸着ノズルを格納する格納装置に、それら複数の吸着ノズルをピックアップヘッドに同時に装着するためにそれら複数の吸着ノズルを同時に動作させるノズル作動機構が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のダイ供給機によれば、ピックアップヘッドに複数の吸着ノズルを迅速に装着することが可能であり、また、その装着のために吸着ノズルを動作させる機構をピックアップヘッドに設ける必要がないため、ヒップアップヘッドの構造の単純化,軽量化を図ることができる。そのような利点を有することで、本発明のダイ供給機は、実用性の高いものとなる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に、(2)項が請求項2に、(5)項ないし(9)項が請求項3ないし請求項7に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)ウェハをダイシングしてなるダイ集合体からダイをピックアップして供給するダイ供給機であって、
ダイ集合体を保持するダイ集合体保持装置と、
それぞれがダイを吸着保持する複数の吸着ノズルをそれぞれ装着可能な複数のノズル被装着具と、それら複数のノズル被装着具を昇降させることでそれら複数のノズル被装着具に装着された複数の吸着ノズルを昇降させるノズル昇降機構とを有し、前記ダイ集合体保持装置によって保持されたダイ集合体からダイをピックアップするためのピックアップヘッドと、
そのピックアップヘッドを、ダイのピックアップおよびピックアップされたダイの所定の供給位置における供給のために移動させるヘッド移動装置と、
前記複数の吸着ノズルを、前記複数のノズル被装着具の相対位置関係と同じ相対位置関係で格納するように構成されており、かつ、格納されたそれら複数の吸着ノズルを前記複数のノズル被装着具に同時に装着するためにそれら複数の吸着ノズルを同時に動作させるノズル作動機構を有するノズル格納装置と
を備えたダイ供給機。
【0010】
本項の態様のダイ供給機によれば、ノズル格納装置に格納された複数の吸着ノズルの相対位置関係と複数のノズル被装着具の相対位置関係とが等しくされている。つまり、複数の吸着ノズルの相対位置関係が、それら複数の吸着ノズルがピックアップヘッドに装着されている場合と、ノズル格納装置に格納されている場合とで、等しくされている。そのため、複数の吸着ノズルの装着に際し、ヘッド移動装置,ノズル昇降機構を利用するだけで、ノズル格納装置に格納された複数の吸着ノズルを、同時に、複数のノズル被装着具に対して係合状態とする若しくは係合する寸前の状態とすることができる。吸着ノズルの装着の際、係合状態とされた吸着ノズルをノズル被装着具に固定等する必要があるが、本項の態様のダイ供給機では、その固定等のために行われる吸着ノズルの動作、詳しくは、ノズル被吸着具に対する相対動作を複数の吸着ノズルについて同時に行わせる機構として、上記ノズル作動機構が設けられている。したがって、本項の態様のダイ供給機によれば、迅速に、複数の吸着ノズルを、自動で、かつ、迅速に、ピックアップヘッドに装着させることが可能である。また、本項の態様のダイ供給機では、上記ノズル作動機構が、ノズル格納装置に設けられているため、その機構をピックアップヘッドに設ける必要がなく、ピックアップヘッドの構造の単純化,軽量化が図られることとなる。そのような利点を有することで、本項の態様のダイ供給機は、実用性の高いものとなる。
【0011】
本項の態様におけるノズル作動機構によってなされる吸着ノズルの動作は、上記ヘッド移動装置およびノズル昇降機構によっては行い得ない吸着ノズルとノズル被装着具との相対動作であることが望ましい。そのような動作である場合に、上記ノズル作動機構をノズル格納装置に設けたことによる利点を、充分に享受できることとなる。なお、そのような動作には、例えば、先に説明したように吸着ノズルのノズル被装着具に固定等するための動作が該当し、具体的には、吸着ノズルをそれの軸線回りに回転させる動作,吸着ノズルを何らかの回動軸線回りに回動させるような動作が含まれる。
【0012】
本項の態様における「ヘッド移動装置」は、例えば、ピックアップヘッドを、ダイ集合体保持装置によって保持されたダイ集合体に平行な一直線に沿って移動させるものや、そのダイ集合体に平行な一平面に沿って移動させるものが含まれる。つまり、一次元的に移動させるものや、二次元的に移動させるものが含まれる。さらに、ピックアップヘッドを、ダイ集合体保持装置によって保持されたダイ集合体に直角な方向にも移動可能なものであってもよい。その場合、ヘッド移動装置は、「ノズル昇降機構」を兼ねるものとされていてもよいのである。
【0013】
(2)前記ノズル格納装置が、前記複数の吸着ノズルをそれぞれ保持する複数のノズル保持具を有して、それら複数のノズル保持具がそれら複数の吸着ノズルを保持した状態で、それら複数の吸着ノズルを格納するように構成されており、
前記ノズル作動機構が、それら複数のノズル保持具を同期して動作させることで、それら複数のノズル保持具に保持された前記複数の吸着ノズルを同時に動作させるように構成された(1)項に記載のダイ供給機。
【0014】
本項の態様は、上記ノズル作動機構の構造に関して限定を加えた態様である。ノズル保持具を動作させて吸着ノズルを動作させれば、ノズル格納装置に格納された吸着ノズルを簡便に動作させることができる。
【0015】
(3)前記ノズル格納装置が、前記複数のノズル保持具を複数セット有して、複数の吸着ノズルを複数セット格納するように構成された(2)項に記載のダイ供給機。
【0016】
本項の態様のダイ供給機によれば、ノズル格納装置は、同時に装着可能な複数の吸着ノズルを複数セット格納することができ、例えば、セットごとにサイズ,能力等の異なる複数の吸着ノズルを格納させれば、それらを交換してピックアップヘッドに装着することにより、当該ダイ供給機の汎用性,利便性が向上することになる。
【0017】
(4)前記ノズル作動機構が、各セットの前記複数のノズル保持具を同期して動作させるように構成された(3)項に記載のダイ供給機。
【0018】
本項の態様によれば、どのセットの複数の吸着ノズルも同期して動作させられる。したがって、複数の吸着ノズルを複数セット格納可能なノズル格納装置であっても、ノズル作動機構の構造を比較的単純なものとすることが可能である。
【0019】
(5)前記ノズル作動機構が、1つのアクチュエータを有し、そのアクチュエータによって前記複数のノズル保持具を同期して動作させるように構成された(2)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のダイ供給機。
【0020】
本項の態様のダイ供給装置では、ノズル作動機構に単一のアクチュエータしか必要としないことから、当該ノズル作動機構、ひいては、当該ダイ供給機のコスト、特に、ノズル作動機構のコストを低く抑えることが可能となる。「アクチュエータ」は、特に限定されるものではなく、例えば、電磁モータ,ソレノイドのような電磁力によって作動するようなものであってもよく、エアシリンダ,油圧シリンダのような流体圧によって作動するようなものであってもよい。なお、複数の吸着ノズルを複数セット格納可能なノズル格納装置である場合、複数のノズル保持具のセットごとに1つのアクチュエータを有するように構成してもよいが、上記コストの観点からすれば、いずれのセットの複数のノズル保持具も、1つのアクチュエータで同期して動作するように構成することが望ましい。
【0021】
(6)前記ノズル作動機構が、前記アクチュエータによって動作させられる1つの駆動部材と、その駆動部材と係合してその駆動部材によって駆動される被駆動部材と、その被駆動部材の動作を前記複数のノズル保持具の動作に変換する動作変換機構とを有する(5)項に記載のダイ供給機。
【0022】
本項の態様によれば、ノズル作動機構がアクチュエータを1つしか有しない構造のものであったとしても、簡便に、そのアクチュエータの力によって、複数の吸着ノズルを同期して動作させることが可能である。「駆動部材」と「被駆動部材」の組み合わせは具体的に限定されるものではない。例えば、後の項によって限定されるラック,ピニオンを始めウォームとウォームホイール、互いに噛合する各種のギヤどうし、カムとカムフォロアといった機械的に直接係合するものや、間接的に係合するもの、例えば、駆動部材の動作が流体圧,磁力等によって被駆動部材の動作に変換されるようなもの等、種々の組み合わせを採用することが可能である。また、同様に、「動作変換機構」も種々の構造のものを採用することが可能である。なお、複数の吸着ノズルを複数セット格納可能なノズル格納装置の場合、複数のノズル保持具のセットに対応して複数の被駆動部材を有し、それら複数の被駆動部材が、1つの駆動部材と係合してその駆動部材によって駆動されるように構成することが可能である。
【0023】
(7)前記ノズル格納装置が、
前記複数のノズル保持具と、前記被駆動部材と、前記動作変換機構とがユニット化されたノズル収容ユニットを含んで構成され、
そのノズル収容ユニットが、別のノズル収容ユニットと交換可能とされた(6)項に記載のダイ供給機。
【0024】
本項の態様によれば、ノズル収容ユニットを構成の異なるノズル収容ユニットと交換することができる。例えば、ノズル保持具のサイズ,配置数,配置態様等において異なるノズル収容ユニットと交換可能とすることで、交換可能な吸着ノズルのバリエーションを、当該ダイ供給機の使用態様等に応じて、種々に変更することが可能となり、当該ダイ供給機の利便性,汎用性が向上する。特に、複数の吸着ノズルを複数セット格納可能なノズル格納装置の場合、セット数,内容において異なる別のノズル収容ユニットと交換可能とすることで、上記利便性,汎用性は、さらに向上することとなる。また、本項の態様によれば、ノズル収容ユニットが、アクチュエータ、つまり、ノズル作動機構の駆動源を含んでいないことから、交換可能とされた各ノズル収容ユニット自体の低コスト化を図ることが可能となる。
【0025】
(8)前記駆動部材がラックであり、前記被駆動部材がそのラックと噛合するピニオンである(6)項または(7)項に記載のダイ供給機。
【0026】
本項の態様では、駆動部材,被駆動部材がラック,ピニオンに限定されている。ラック&ピニオン機構は、比較的簡素な機構であり、その機構を採用すれば、比較的構造の簡素なノズル作動機構を実現させることが可能となる。また、ラックとピニオンは、容易に互いを噛合させることおよび噛合を解除することが可能であり、それらを分離して上記ノズル収容ユニットを構築する場合においても便利である。複数の吸着ノズルを複数セット格納可能なノズル格納装置の場合、例えば、セットごとに対応する複数のピニオンが1つのラックとそれの軸線方向における任意の箇所において噛合するように構成すればよく、ラックの軸線方向におけるセットごとの複数のノズル保持具の配置の自由度が高いものとなる。そのことは、セット数,内容において異なる別のノズル収容ユニットに交換可能とされたノズル格納装置の場合、特に、大きな利点となる。
【0027】
(9)前記複数の吸着ノズルの各々が、前記複数のノズル被装着具のうちの対応するものに対して自身の軸線回りに回転動作させられることによりそのものに装着されるように構成されており、
前記ノズル作動機構が、前記複数のノズル保持具を、それらの各々によって保持された複数の吸着ノズルの各々の軸線回りに同期して回転させるよう構成された(2)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のダイ供給機。
【0028】
本項の態様は、後に例示するような場合、つまり、吸着ノズルの装着に際し、吸着ノズルをノズル被装着具に対して回転させることで、掛合ピンがスロット内を移動させられて吸着ノズルがノズル被装着具に固定されるような場合に、便利な態様である。一般に、ダイ供給機のピックアップヘッドには、吸着ノズルをそれの軸線回りに回転させるための機構が設けられていない。吸着ノズルを回転させてノズル被装着具に固定させるような機構を採用する場合であっても、本項の態様によれば、ピックアップヘッドに吸着ノズルを回転させる機構を搭載する必要がないため、ピックアップヘッドの構造の簡素化,軽量化が図れるのである。なお、螺子機構を採用して吸着ノズルをノズル被装着具に捻じ込んで固定するような場合においても、本項の態様は便利な態様となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】請求可能発明の実施例であるダイ供給機を示す全体斜視図である。
【図2】ダイ供給機を構成するダイ集合体保持装置を示す斜視図である。
【図3】ダイ供給機を構成するピックアップヘッドを示す斜視図である。
【図4】ピックアップヘッドに装着される吸着ノズルを示す斜視図である。
【図5】ピックアップヘッドのノズルホルダに吸着ノズルが装着された状態を示す斜視図である。
【図6】ピックアップヘッドが有するノズル昇降機構の作動を説明するための模式図である。
【図7】ダイ供給機を構成するノズルストッカを示す斜視図である。
【図8】ノズルストッカを別の視点において示す斜視図である。
【図9】ノズルストッカの内部の一部分を拡大して示す斜視図である。
【図10】ノズルストッカのノズル作動機構を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、請求可能発明を実施するための形態として、請求可能発明の実施例であるダイ供給機を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【実施例】
【0031】
≪ダイ供給機の全体構成≫
図1に斜視図を示すダイ供給機は、ウェハにダイシングシートを貼着したものをダイシングしてなるダイ集合体DSから、ダイシングによって得られた複数のダイDの各々を供給するための機械である。ちなみに、ダイシングシートは、可撓性を有し、ダイ集合体DSの裏面に貼着されており、ダイ集合体DSは、各ダイDをそのダイシングシートから剥がし易くするために、そのダイシングシートが張り広げられた状態とされている。なお、ダイ集合体DSは、単に「ウェハ」と呼ばれることもあり、また、ダイDは、「チップ」と呼ばれることもある。
【0032】
図に示すように、本ダイ供給機は、大まかには、当該ダイ供給機の基体として機能するメインフレーム10と、メインフレーム10に併設されて複数のダイ集合体DSを収容するダイ集合体スタッカ12と、メインフレーム10上に配設されて1つのダイ集合体DSを固定的に保持するダイ集合体保持装置14と、ダイ集合体保持装置14によって固定保持されたダイ集合体DSからダイをピックアップするピックアップヘッド16と、ピックアップヘッド16をダイ集合体保持装置14によって固定保持されたダイ集合体DSに平行な一平面に沿って移動させるヘッド移動装置18とを含んで構成されている。なお、当該ダイ供給機は、図における右手前が前側,左手前が左側であり、以下の説明において、方向を表す場合に、当該ダイ供給機の前後,左右,上下に関連して、前後方向(X方向),左右方向(Y方向),上下方向(Z方向)という場合がある。
【0033】
ダイ集合体スタッカ12は、ダイ集合体収容装置として機能するものであり、昇降テーブル22と、昇降テーブル22上に配設されたラック24(詳しい構造の図示は省略)とを有しており、複数のダイ集合体Dが、そのラック24に、あたかも積み重ねられるようにして収容される。ラック24からは、複数のダイ集合体DSのいずれをも独立して引き出し可能とされており、昇降テーブル22の昇降によって所定の高さ位置に位置させられた1のダイ集合体DSが、引き出される(詳しくは後述する)。つまり、ダイ集合体スタッカ12は、いわゆるマガジンタイプの収容装置とされているのである。
【0034】
ダイ集合体保持装置14は、図2に示すように、メインフレーム10上に固定されてX方向に延びる1対のガイドレール26と、それら1対のガイドレール26にガイドされてX方向に移動可能な保持フレーム28と、その保持フレーム28をX方向に移動させるフレーム移動機構30と、ダイ集合体DSを左右両側において押え付けるようにして保持フレーム28に固定するためのダイ集合体固定機構32とを含んで構成されている。図では、保持フレーム28が、ダイ供給機24の前方側寄りに位置させられており、その位置は、保持されたダイ集合体DSからダイDがピックアップされる際に位置させられる位置(作業位置)である。
【0035】
ピックアップヘッド16は、図3に示すように、基体34と、4つのロッド36と、基体34に支持されて4つのロッド36をそれらの各々の軸線方向(図では上下方向)に移動可能に保持するロッド保持体38と、それらロッド36を昇降させるロッド昇降機構40とを含んで構成されている。4つのロッド36の各々の下端部には、ノズル被装着具としてのスリーブ42が付設されており、そのスリーブ42には、図4に拡大して示す吸着ノズル44が、図5に示すように装着される。つまり、ピックアップヘッド16は、4つまでの吸着ノズル44を装着可能とされているのである。
【0036】
吸着ノズル44は、主筒46と、主筒46から張り出すようにして設けられたフランジ48と、主筒46の下端部において主筒46に対して進退可能に保持された可動筒50と、可動筒50の下端に形成されて先端がノズル口として機能する先端筒52とを含んで構成されている。可動筒50は、スプリング54によって、先端に向かって付勢されている。吸着ノズル44の内部には、図示しない負圧源に接続されるとともにノズル口に至る負圧路が形成されており、その負圧路を介して、ノズル口に負圧が供給される(「負圧路が減圧される」という意味である)。この負圧の作用によって、吸着ノズル44は、先端部において、ダイDを吸着保持する。
【0037】
吸着ノズル44のスリーブ42への装着に関して説明すれば、スリーブ42の内径は、吸着ノズル44の主筒46の外径より僅かに大きくされており、吸着ノズル44は、主筒46がスリーブ42に嵌め入れられるようにして装着される。吸着ノズル44は、主筒46からそれの径方向に延び出す1対の掛合ピン56を有し、一方で、スリーブ42には、それら1対の掛合ピン56に対応して、1対の概してJ字状のスロット58が形成されている。詳しく言えば、各スロット58は、一端が当該スリーブ42下端に開口するとともに当該スリーブ42の軸線方向(吸着ノズル44の軸線方向)に延びる部分(以下、「軸線方向部」と言う場合がある)と、その部分と連続して当該スリーブ42の周方向に延びる部分(以下、「周方向部」と呼ぶ場合がある)とからなり、周方向部の止端部(以下、単に「止端部」という場合がある)は、それ以外の部分より若干下方に曲げられている。また、スリーブ42の下部には、スプリング60によって下方に向かって付勢されたリテーナリング62が設けられている。
【0038】
吸着ノズル44を装着する場合には、吸着ノズル44の各掛合ピン56がスリーブ42の各スロット58の軸線方向部に沿って移動するように、吸着ノズル44の主筒46をスリーブ42に嵌入させ、次いで、吸着ノズル44がスリーブ42の奥にまで入った状態で、各掛合ピン56が各スロット58の周方向部に沿って移動するように、吸着ノズル44をそれの軸線回りに回転させる。止端部に各掛合ピン56が嵌り込んだ状態において、スプリング60の付勢力によってリテーナリング62が各掛合ピン56を下方に押し付けることで、吸着ノズル44がスリーブ42に固定される。吸着ノズル44をスリーブ42から離脱させる場合には、吸着ノズル44を、逆方向に回転させた後、軸線方向にスリーブ44から抜き出せばよい。
【0039】
吸着ノズル44は、ダイDを吸着保持する際に、昇降させられる。吸着ノズル44の昇降は、ロッド昇降機構40がロッド36を昇降させることによって行われる。つまり、ロッド昇降機構40は、吸着ノズル44を昇降させるノズル昇降機構として機能する。図3を参照しつつロッド昇降機構40について詳しく説明すれば、ロッド昇降機構40は、ロッド36に係合する複数のレバー64を有するレバーブロック66と、レバーブロック66を回転させかつ昇降させるレバーブロック作動機構68とを含んで構成されている。上方からの視点において模式的に示す図6から解るように、レバーブロック66は、5つのレバー64を有している。それら5つのレバー64のうちの4つのレバー64aは、90°ピッチで配置されており、残る1つのレバー64bは、4つのレバー64aのうちの2つのものの間に、それら2つのものに対して45°ズレた位置に配置されている。
【0040】
レバーブロック作動機構68は、レバーブロック66を支持する支持軸70を有しており、その支持軸70をそれの軸線回りに回転させることで、レバーブロック66を回転させる機能を有している。図6(a)は、レバー64bが4つのロッド36のうちの1つの真上に位置する状態、つまり、1ロッド係合可能状態である。この状態では、4つのレバー64aは、いずれもが、4つのロッド36のいずれの上方にも位置しない。一方、図6(b)は、4つのレバー64aがそれぞれ4つのロッド36の真上に位置する状態、つまり、4ロッド係合可能状態である。この状態では、残る1つのレバー64bは、4つのロッド36のいずれの上方にも位置しない。レバーブロック作動機構68は、それら2つの状態のいずれかとなるように、レバーブロック66を回転させる。
【0041】
また、レバーブロック作動機構68は、支持軸70を昇降させることによってレバーブロック66を昇降させる機能をも有している。上記1ロッド係合可能状態において、レバーブロック66を下降させることによって、4つのロッド36のうちの係合可能とされた1つを押し下げ、そのロッド36に付設されたスリーブ42に装着されている吸着ノズル44が下降させられる。つまり、レバーブロック66の回転位置に応じた1つの吸着ノズル44が下降させられる。一方、上記4ロッド係合可能状態において、レバーブロック66を下降させることによって、4つのロッドの各々に付設されたスリーブ42に装着されている吸着ノズル44が、つまり、4つの吸着ノズル44が下降させられる。下降させられたレバーブロック66を上昇させることで、レバー64が係合している1つのロッド36若しくは4つのロッド36は、4つのロッドに対応して設けられた4つのスプリング72のうちの1つ若しくはそれらの全部の弾撥力によって上昇させられ、下降させられていた4つの吸着ノズル44のうちの1つ若しくは4つが、上昇させられる。このように、ロッド昇降機構40は、4つの吸着ノズル44を同時に、若しくは、4つの吸着ノズル44のうちの任意に選択された1つを昇降させる機能を有しているのである。
【0042】
ピックアップヘッド16は、吸着ノズル44の上下を逆さまにする機構であるノズル反転機構74を有している。図3に示すように、ロッド保持体38は、左右に延びる姿勢で基体34に付設された支持軸76によって、回転可能に支持されており、ロッド保持体38の側面に付設されたピニオン78をそれと噛合するラック80によって回転させることで、反転させられる(図3の太矢印が示す動作を行う)。この反転により、ロッド36に付設されたスリーブ42に装着された吸着ノズル44が、反転させられるのである。詳しく言えば、ロッド36の下端部においてノズル口が下に向いた姿勢で装着されている吸着ノズル44が、ノズル口が上を向くような姿勢に変更されるのである。ダイ集合体DSからピックアップされたダイDは、このノズル反転機構によって反転させられた状態で供給される。
【0043】
ピックアップヘッド16を移動させるヘッド移動装置18は、図1から解るように、XYロボット型の移動装置である。ヘッド移動装置18は、ピックアップヘッド16を支持するスライドベース82と、Y方向に延びる姿勢で配置されてスライドベース82をY方向に移動可能に支持するビーム84と、X方向に延びる姿勢でメインフレーム10に固定されてビーム84をX方向に移動可能に支持する1対のガイド部材86と、スライドベース82をY方向に移動させるY方向移動機構88と、ビーム84をX方向に移動させるX方向移動機構(図では隠れて見えない)とを含んで構成されている。ヘッド移動装置18は、スライドベース82が支持するピックアップヘッド16を、ダイ集合体保持装置14によって保持されたダイ集合体DSの表面に平行な平面に沿って移動させることができ、ダイ集合体DSからのダイDのピックアップの際、および、ピックアップされたダイDの供給の際等に、ピックアップヘッド16を、任意の位置若しくは設定された位置に移動させる。
【0044】
スライドベース82には、ダイ集合体保持装置14によって保持されたダイ集合体DSの表面(上面)を撮像可能な撮像装置としてのダイカメラ90が固定されており、ヘッド移動装置18は、そのカメラ90をも、ピックアップヘッド16と共に移動させる。また、ビーム84の背面側には、ダイ集合体スタッカ12のラック24からダイ集合体保持装置14の保持フレーム28へのダイ集合体DSの引き出しの際、および、ダイDがピックアップされた後のダイ集合体DS(厳密には、ダイ集合体とは呼べなくなっている)の保持フレーム28からラック24への収容の際に下降させられて、ダイ集合体DSを把持するダイ集合体クランプ92が設けられており、ヘッド移動装置18、詳しくはそれのX方向移動機構は、そのクランプ92をもX方向に移動させる機能を有している。
【0045】
図1では、ダイ集合体DSによって隠れて見えないが、ダイ集合体保持装置14の下方には、ダイ突上装置が配設されている。このダイ突上装置は、突上具と、その突上具を上昇させる突上具昇降機構と、その突上具をダイ集合体DSに沿った一平面内において移動させる突上具移動機構とを含んで構成されている。ダイ突上装置は、ダイDのピックアップの際、そのピックアップを円滑に行うための補助装置である。ピックアップされるダイDの下方に突上具が位置させられ、その位置において突上具が上昇させられることで、そのダイDが、ダイシングシートを介して、突上具によって突上げられる、つまり、持ち上げられる。
【0046】
≪ダイ供給機の基本的動作≫
以下に、ダイDのピックアップおよび供給を行う場合におけるダイ供給機の動作を説明する。まず、ダイ集合体スタッカ12のラック24に収容されているダイ集合体DSの1つが、ダイ集合体保持装置14の保持フレーム28に載置される。このとき、保持フレーム28は、フレーム移動機構30によって、ヘッド移動装置18のビーム84の下方を通過させられて、ダイ集合体スタッカ12に近い位置、つまり、後方側の位置に位置させられる。一方で、ダイ集合体スタッカ12の昇降テーブルによって、載置されるダイ集合体DSが、上下方向における所定の引出可能位置に位置させられる。ビーム84がヘッド移動装置18のX方向移動機構によって後方側に移動させられ、ダイ集合体クランプ92によって、載置されるダイ集合体DSが把持される。次いで、ビーム84がX方向移動機構によって前方側に移動させられ、把持されたダイ集合体DSが、保持フレーム28に載置される。載置されたダイ集合体DSは、ダイ集合体固定機構32によって保持フレーム28に固定され、その状態で、フレーム移動機構30によって保持フレーム28が、前方側に移動させられて、所定の作業位置に位置させられる。
【0047】
次いで、ダイカメラ90が、ヘッド移動装置18によって、ピックアップされるダイDの上方に位置させられ、その位置において、そのダイDが撮像される。ダイDの撮像によって得られた撮像データに基づいて、ダイDのX方向およびY方向の正確な位置が特定される。後に説明するが、4つの吸着ノズル44によって、4つのダイDが吸着保持されるため、ダイDの撮像および撮像データに基づく位置の特定の処理は、一度に、4つのダイDについて行われる。
【0048】
1つのダイDの上記特定された位置の上方に1つの吸着ノズル44が位置する位置に、ヘッド移動装置18によって、ピックアップヘッド16が移動させられる。その位置において、その1つの吸着ノズル44のみが、ロッド昇降機構40によって下降させられ、その吸着ノズル44のノズル口がその1つのダイに接触した時点で、その吸着ノズル44に負圧が供給されて、その1つのダイDがその吸着ノズル44によって吸着される。そのダイDを吸着保持した後、その吸着ノズル44が、ロッド昇降機構40によって上昇させられ、そのダイDのピックアップが完了する。なお、ピックアップの際には、吸着ノズル44の上昇に伴って、ピックアップされるダイDに対して、上記ダイ突上装置による突上が行われる。このようなピックアップ動作が、4つの吸着ノズル44の各々について、つまり、4つのダイDの各々について、順次行われ、4つのダイDについてピップアップが完了する。
【0049】
4つのダイDのピックアップが完了した後、ピックアップヘッド16は、ヘッド移動装置18によって、所定の供給位置に移動させられ、その位置に位置する状態で、上記ノズル反転機構によって、4つの吸着ノズル44が反転させられる。これにより、4つの吸着ノズル44にそれぞれ吸着保持されている4つのダイDは、裏返しの姿勢で、それぞれについての所定の供給位置において供給される。供給された4つのダイDは、その姿勢のまま、部品装着機の装着ヘッドの部品保持デバイスによって保持されて、基板への装着に供される。つまり、4つの吸着ノズル44から、部品装着機の部品保持デバイスに受け渡されるようにして供給されるのである。この受け渡しの際、各吸着ノズル44に供給されていた負圧は解除される。
【0050】
上記一連の動作が、1つのダイ集合体DSに対して繰り返され、そのダイ集合体DSのダイDが無くなった場合に、そのダイ集合体DSが、上記動作の逆の動作によって、ダイ集合体ストッカ12に戻される。そして、別の新たなダイ集合体DSが、上記動作によって、ダイ集合体保持装置14に保持され、そのダイ集合体DSからのダイDの供給が行われる。
【0051】
上述したダイDのピックアップおよび供給のための動作は、ピックアップヘッド16に吸着ノズル44が4つ装着されている場合の動作である。本ダイ供給機は、必ずしも4つの吸着ノズル44を装着しなければならない訳ではない。例えば、ダイDのサイズが大きい場合には、大きな吸着ノズル44を装着させる必要があり、その場合には、例えば吸着ノズル44のフランジ48の外径とピックアップヘッド16が有する4つのロッド36相互の間隔との関係で、4つの吸着ノズル44を装着できない場合がある。その場合には、対角位置に存在する2つのロッド36だけに、2つの吸着ノズル44を装着したり、また、いずれか1つにだけ、吸着ノズル44を装着したりして、ピックアップおよび供給のための動作を行うことが可能とされている。なお、その場合には、1度のピックアップ動作は、2つダイD若しくは1つのダイDごとに行われることになる。
【0052】
≪吸着ノズルの交換のための構成≫
吸着ノズル44は、供給されるダイDのサイズ等に応じて適切なものを使用するのが望ましく、そのため、本ダイ供給機は、吸着ノズル44を、自動で交換するように構成されている。つまり、ピックアップヘッド16に装着されている吸着ノズル44を自動で離脱させ、別の吸着ヘッド44を自動で装着可能とされているのである。その場合、複数の吸着ノズル44がピックアップヘッド16に装着されているときに、それら複数の吸着ノズル44を同時に離脱させ、別の複数の吸着ノズル44を同時に装着することも可能とされている。以下に、吸着ノズル44の自動交換を可能とするための構成について説明する。
【0053】
本ダイ供給機は、ノズル格納装置として機能するノズルストッカ100を備えている。ノズルストッカ100は、図1および図2から解るように、上記作業位置に位置する場合のダイ集合体保持装置14の保持フレーム28と、ダイ集合体スタッカ12との間の箇所において、メインフレーム10上に配設されている。図7,図8に示すように、ノズルストッカ100は、基台102と、基台102に取り付けられたノズル収容ユニット104と、基台102を昇降させる基台昇降機構106とを含んで構成されている(図7では、基台昇降機構104は省略されており、図8では、ノズル収容ユニット104については内部構造の一部のみが示されている)。
【0054】
内部構造の一部分を示す図9をも参照しつつ説明すれば、ノズル収容ユニット104は、ユニットベース108と、そのユニットベース108に回転可能に支持された複数のノズル収容具110と、ユニットベース108にスライド可能に支持されるとともに複数のノズル収容具110を覆うカバー112とを含んで構成されている(図8では,ユニットベース108,カバー112は省略されている)。ノズル収容具110は、筒状をなしてノズル保持具として機能する収容筒114を有しており、吸着ノズル44のフランジ48がその収容筒114の上端部に載せ置かれるようにして、その吸着ノズル44を収容する。収容筒114の上端部には、係止ピン116が突出して設けられており、その係止ピン116が、吸着ノズル44のフランジ48の外周端に設けられた複数のノッチ118(図4,図5参照)のうちの1つに嵌り込む状態で、かつ、吸着ノズル44の軸線とノズル収容具110の軸線とが一致させられた状態で、吸着ノズル44が収容される。なお、図9では、1つのノズル収容具110の収容筒114は省略されている。ちなみに、係止ピン116およびそれが嵌るノッチ118は、収容された状態における吸着ノズル44のノズル収容具110に対する回転位置規定手段として、また、後に説明するように、ノズル収容具110の回転によって吸着ノズル44を回転させるための回転力伝達手段として機能する。
【0055】
ノズル収容ユニット104には、12のノズル収容具110が配設されている。詳しく説明すれば、当該ダイ供給機の左側から右側に向かって(図7では、右側から左側に向かって)、1つのセットをなす比較的外径の小さな4つのノズル収容具110,別の1つのセットをなす比較的外径の小さな4つのノズル収容具110,比較的大きな外径をなす4つのノズル収容具110が、順に並んでいる。左側のセット,中央のセットのそれぞれの4つのノズル収容具110は、左右に2列,前後に2列、詳しくは、上方から見て、四角形の4つの頂点の位置に配置されている。それに対し、右側の4つのノズル収容具110は、左右方向に1列に配置されている。つまり、本ノズル収容ユニット104には、4つの吸着ノズル44からなる吸着ノズルのセットを2セット収容可能とされている。言い換えれば、ノズルストッカ100は、複数の吸着ノズルを複数セット格納可能とされているのである。
【0056】
左側のセット,中央のセットそれぞれの4つのノズル収容具110の各々の中心軸線の相対位置関係は、ピックアップヘッド16の4つのスリーブ42の各々の中心軸線の相対位置関係と一致させられている。つまり、4つの吸着ノズル44がピックアップヘッド16に装着されている場合のそれら吸着ノズル44の相対位置関係と、ノズルストッカ100に格納されている場合のそれら吸着ノズル44の相対位置関係とが、等しくされているのである。なお、中央のセットの4つのノズル収容具110は、ピックアップヘッド16に現に装着されている4つの吸着ノズル44のためのノズル収容具110であるため、図では、それら4つのノズル収容具110は、それらのいずれにも吸着ノズル44は収容されておらず、空とされている。
【0057】
各ノズル収容具110は、収容筒114の下方においてそれと一体的かつ同軸的に付設されたギヤ120を有している。一方、基台102には、ラック122が、左右に延びる姿勢で、かつ、それの軸線方向に移動可能に配設されている。図10にも示すように、上記右側の4つのノズル収容具110のギヤ120は、そのラック122と噛合しており、上記左側,中央の各々のセットの4つのノズル収容具の各々のギヤ120は、ユニットベース108に互いが一体的に回転するように支持された2つのギヤ124,126を介して、ラック122に連結されている。詳しく言えば、4つのノズル収容具の各々のギヤ120がユニットベース108の上方に位置させられているギヤ124に、ギヤ126がラック122に、それぞれ噛合している。つまり、ラック122と噛合するギヤ120,ギヤ126が、ピニオンとして機能する。基台102には、アクチュエータ128が固定されており、このアクチュエータ128によって、ラック122が、それの軸線方向に所定量往復動作するようにされている。このラック122の往復動作に伴って、各ノズル収容具110は、それによって保持された吸着ノズル44の軸線回りに、同期して所定角度回転する。ちなみに、吸着ノズル44の主筒46に形成されたスロット58の周方向部の長さは、その所定角度に対応している。
【0058】
以上のような構造から、ノズルストッカ100は、ノズル作動機構、詳しく言えば、それぞれがノズル保持具として機能する複数の収容筒114を、1つのアクチュエータ128によって同期して回転動作させることで、それら複数の収容筒114にそれぞれ保持された複数の吸着ノズル44を同時に動作させる機構を有しているのである。さらに、左側のセット,中央のセットの4つのノズル収容具110に関して言えば、そのノズル作動機構は、アクチュエータ128によって動作させられる1つの駆動部材であるラック122と、そのラック122と係合して駆動される被駆動部材であるピニオンとされたギヤ126と、ギヤ124,ギヤ120を含んで構成されてギヤ126の回転動作を複数の収容筒114の回転動作に変換する動作変換機構とを含んで構成されているのである。なお、各ギヤ126は、1つのセットを構成する4つのノズル収容具110に対応しており、図に示すノズルストッカ100では、それぞれが4つのノズル収容具110によって構成される2つのセットに対応する2つの被駆動部材が、1つの駆動部材に噛合するものとされている。
【0059】
図7に示すように、ノズル収容ユニット104の外殻部材であるカバー112は、上面に、複数のノズル収容具110に対応して、複数の開口130を有している。一方、基台102には、アクチュエータ132と、そのアクチュエータ132によって左右に移動させられるレバー134とを含んで構成されたカバー移動機構136(図8,図10参照)が設けられており、図示は省略するが、そのレバー134の上端が、カバー112に係合するようにされている。このアクチュエータ132によって、カバー112は、左右に所定距離移動させられる。図7に示す状態は、カバー112が一方の移動端に位置している状態であり、その状態では、各開口130が、対応するノズル収容具110に対してズレている。つまり、その状態では、フランジ48が開口130に干渉し、吸着ノズル44を、開口130を通してノズル収容具110に収容することはできず、また、ノズル収容具110に収容されている吸着ノズル44を、開口130を通して取り出すことはできない。一方、図示は省略するが、カバー112が他方の移動端に位置している状態は、各開口130が対応するノズル収容具110と一致する位置に位置する状態であり、その状態においては、開口130を通しての吸着ノズル44の収容,取り出しが可能とされる。つまり、カバー112およびカバー移動機構136は、ノズル収容具110に対する開口130の状態を、半開状態と全開状態とに切換えるシャッターとして機能するものとなっているのである。
【0060】
ダイ集合体DSが載置される保持フレーム28は、ダイ集合体DSの当該保持フレーム28への載置,当該保持フレーム28からの取除きの際に、ダイ集合体スタッカ12に近い位置に位置させられる。図1から解るように、その際、保持フレーム28は、ノズルストッカ100の上方に位置する。基台昇降機構106は、吸着ノズル44の交換の際に、ノズルストッカ100を上方に位置させるために設けられている。
【0061】
ノズルストッカ100が有するノズル収容ユニット104は、ノズル収容具110のサイズ,配置等において異なる別のノズル収容ユニットに交換可能である。具体的に言えば、例えば、1列に配置されている4つのノズル収容具110に代えて、4つのノズル収容具110のセットをさらに2つ追加したような構成のノズル収容ユニットに交換したり、また、逆に、4つのノズル収容具のセットに代えて、1列に配置されている4つのノズル収容具110の列の延長上に、1以上のノズル収容具110が配置されたような構成のノズル収容ユニットに交換したりすることも可能である。基台102に支持されているラック122と噛合するギヤ120,ギヤ124は、ノズル収容ユニット104を上方に向かって基台102から外すことにより、そのラック122との噛合が容易に解除でき、また、別のノズル収容ユニットを上方から基台102に取り付けることにより、そのノズル収容ユニットのそれらのギヤを容易にラック122に噛合させることができるため、ノズル収容ユニットの他のノズル収容ユニットへの交換は、容易に行うことができる。また、異なる構成のノズル収容ユニットに交換した場合であっても、ラック122を動作させることにより、そのノズル収容ユニットが有する複数のノズル収容具110を同期して回転動作させることができるのである。
【0062】
≪吸着ノズルの交換の際のダイ供給機の動作≫
以下に、ピックアップヘッド16に装着されている吸着ノズル44を別の吸着ノズル44に自動で交換する際のダイ供給機の動作を、先に説明した各図に示す状態において4つの吸着ノズル44を別の4つの吸着ノズル44に同時に交換する場合を例にとって、説明する。
【0063】
吸着ノズル44を交換する場合、まず、ダイ集合体保持装置14の保持テーブル28を、上記作業位置に位置させ、その状態において、基台昇降機構106によって、ノズルストッカ100のノズル収容ユニット104を、基台102ごと所定の交換位置に上昇させる。このとき、ノズル収容ユニット104のカバー112は、カバー移動機構136により、開口130が上記全開状態となるように位置させられる。次いで、4つのスリーブ42の軸線が、空になっている4つのノズル収容具110、つまり、中央のセットの4つのノズル収容具110の軸線とそれぞれと一致する位置まで、ピックアップヘッド16が、ヘッド移動装置18によって移動させられる。この位置において、ロッド昇降機構40により、4つのスリーブ42に装着されている4つの吸着ノズル44が、同時に下降させられ、空になっていた4つのノズル収容具110に収容される。このとき、各収容筒114の上端の係止ピン116が各吸着ノズル44のフランジ48に設けられたノッチ118に嵌る回転位置に、各ノズル収容具110は位置させられており、各係止ピン116は、各吸着ノズル44のノッチ118に嵌り込む。なお、ノズル収容具110は、ノズル作動機構を構成するアクチュエータ128によってラック122が一方の移動端に位置させられていることで、上記回転位置に位置させられている。
【0064】
4つの吸着ノズル44の各々が対応するノズル収容具110に収容された後、ラック122がアクチュエータ128によって一方の移動端から他方の移動端に位置させられて、各ノズル収容具110が互いに同期して回転させられる。この回転により、収容された各吸着ノズル44は、ピックアップヘッド16の4つのスリーブ42に対して互いに同期して回転する。この回転により、各吸着ノズル44の主筒46に設けられた1対の掛合ピン56は、スリーブ42に形成された1対のスロット58の周方向部の止端部から、軸線方向部の上端に位置させられることになる。この状態において、ノズル収容ユニット104のカバー112が、カバー移動機構136により、開口130が上記半開状態となるように位置させられる。そして、ロッド昇降機構40によって4つのロッド36が同時に上昇させられ、4つの吸着ノズル44は、4つのノズル収容具110にそれぞれ残存したままで、4つのスリーブ42から抜き出される。つまり、4つの吸着ノズル44の各々と4つのノズル収容具110の各々との係合状態が解除されるのである。
【0065】
次に、4つのスリーブ42の軸線が、左側のセットの4つのノズル収容具110の軸線とそれぞれ一致する位置まで、ピックアップヘッド16が、ヘッド移動装置18によって移動させられる。その位置において、ロッド昇降機構40により、4つのスリーブ42が、同時に下降させられ、それら4つのノズル収容具110に収容されている4つの吸着ノズル44の主筒46が、4つのスリーブ42にそれぞれ嵌め入れられる。つまり、4つの吸着ノズル44の各々と4つのノズル収容具110の各々とが、係合状態とされるのである。このとき、各吸着ノズル44の主筒46に設けられた1対の掛合ピン56が、対応するスリーブ42に形成された1対のスロット58のそれぞれの軸線方向部に嵌り込むような回転位置に、4つのノズル収容具110は回転させられている。各吸着ノズル44の主筒46がスリーブ42の奥まで嵌め入れられた状態において、ラック122がアクチュエータ128によって上記他方の移動端から上記一方の移動端に位置させられて、各ノズル収容具110が互いに同期して先の方向とは逆の方向に回転させられる。この回転により、収容された各吸着ノズル44は、ピックアップヘッド16の4つのスリーブ42に対して互いに同期して先の方向とは逆の方向に回転する。この回転により、各吸着ノズル44の主筒46に設けられた1対の掛合ピン56は、スリーブ42に形成された1対のスロット58の周方向部の止端部にまで回転させられることになる。
【0066】
次いで、ノズル収容ユニット104のカバー112が、カバー移動機構136により、開口130が上記全開状態となるように位置させられる。その後、ロッド昇降機構40によって4つのロッド36が同時に上昇させられ、4つの吸着ノズル44は、4つのスリーブ42に嵌り入ったままで、それら4つのスリーブ42とともに上昇させられる。このようにして、先に装着されていた4つの吸着ノズル44とは別の4つの吸着ノズル44が、同時に、ピックアップヘッド16に装着されるのである。その後、カバー移動機構136により、カバー112が、開口130が上記半開状態となる位置に戻され、そして、ノズル収容ユニット104が、基台昇降機構106によって、退避位置まで下降させられて、一連の吸着ノズル44の交換の動作が終了する。
【0067】
上述のように、本ダイ供給機では、複数の吸着ノズル44を別の複数の吸着ノズル44に交換する際、複数の吸着ノズル44を同時にピックアップヘッド16から離脱させ、別の複数の吸着ノズル44を同時にピックアップヘッド16に装着させるように構成されていることから、その交換を迅速に行うことが可能とされている。また、離脱のための複数の吸着ノズル44の同時動作、および、装着のための複数の吸着ノズル44の同時動作を行わせる機構、つまり、上記ノズル作動機構が、ピックアップヘッド16にではなく、ノズルストッカ100に設けられているため、ピックアップヘッドの構造の単純化,軽量化を図ることが可能となっている。
【0068】
上記吸着ノズルの交換のための動作は、複数の吸着ノズル44を別の複数の吸着ノズルに交換する場合の動作であるが、本ダイ供給機では、複数の吸着ノズル44を1つずつ交換することも可能であり、また、1つしか装着されていない吸着ノズル44を、別の1つに交換することも可能である。なお、ノズルストッカ100の右側において1列に並ぶ4つのノズル収容具110は、左側,中央の各セットのノズル収容具110と、ラック122の移動方向に対する回転方向が逆になっている。したがって、1列に並ぶ4つのノズル収容具110に関する装着動作,離脱動作を適切に行わせるためには、ラック122が上記一方の移動端に位置する場合の回転位置において、ノズル収容具110に収容された吸着ノズル44の主筒42に設けられた1対の掛合ピン56がスリーブ42に形成された1対のスロット58の軸線方向部と一致するように、収容筒114の上端の係止ピン116の位置を設定し、その回転位置において、ロッド昇降機構40によるスリーブ42の昇降を行って吸着ノズル44の主筒46のスリーブ42に対する嵌入,抜出を行い、かつ、上記他方の移動端に位置する場合に、1対の掛合ピン56がスリーブ42の1対のスロット58の周方向部の止端部に位置するように構成すればよい。簡単に言えば、交換の際のラック122の動作の方向が反対となるようにすればよいのである。
【符号の説明】
【0069】
12:ダイ集合体スタッカ〔ダイ集合体収容装置〕 14:ダイ集合体保持装置 16:ピックアップヘッド 18:ヘッド移動装置 36:ロッド 40:ロッド昇降機構〔ノズル昇降機構〕 42:スリーブ〔ノズル被装着具〕 44:吸着ノズル 56:掛合ピン 58:スロット 100:ノズルストッカ〔ノズル格納装置〕 104:ノズル収容ユニット 110:ノズル収容具 114:収容筒〔ノズル保持具〕 120:ギヤ〔動作変換機構,ノズル作動機構〕 122:ラック〔駆動部材,ノズル作動機構〕 124:ギヤ〔動作変換機構,ノズル作動機構〕 126:ギヤ〔ピニオン,被駆動部材,ノズル作動機構〕 128:アクチュエータ〔ノズル作動機構〕 D:ダイ DS:ダイ集合体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハをダイシングしてなるダイ集合体からダイをピックアップして供給するダイ供給機であって、
ダイ集合体を保持するダイ集合体保持装置と、
それぞれがダイを吸着保持する複数の吸着ノズルをそれぞれ装着可能な複数のノズル被装着具と、それら複数のノズル被装着具を昇降させることでそれら複数のノズル被装着装具に装着された複数の吸着ノズルを昇降させるノズル昇降機構とを有し、前記ダイ集合体保持装置によって保持されたダイ集合体からダイをピックアップするためのピックアップヘッドと、
そのピックアップヘッドを、ダイのピックアップおよびピックアップされたダイの所定の供給位置における供給のために移動させるヘッド移動装置と、
前記複数の吸着ノズルを、前記複数のノズル被装着具の相対位置関係と同じ相対位置関係で格納するように構成されており、かつ、格納されたそれら複数の吸着ノズルを前記複数のノズル被装着具に同時に装着するためにそれら複数の吸着ノズルを同時に動作させるノズル作動機構を有するノズル格納装置と
を備えたダイ供給機。
【請求項2】
前記ノズル格納装置が、前記複数の吸着ノズルをそれぞれ保持する複数のノズル保持具を有して、それら複数のノズル保持具がそれら複数の吸着ノズルを保持した状態で、それら複数の吸着ノズルを格納するように構成されており、
前記ノズル作動機構が、それら複数のノズル保持具を同期して動作させることで、それら複数のノズル保持具に保持された前記複数の吸着ノズルを同時に動作させるように構成された請求項1に記載のダイ供給機。
【請求項3】
前記ノズル作動機構が、1つのアクチュエータを有し、そのアクチュエータによって前記複数のノズル保持具を同期して動作させるように構成された請求項2に記載のダイ供給機。
【請求項4】
前記ノズル作動機構が、前記アクチュエータによって動作させられる1つの駆動部材と、その駆動部材と係合してその駆動部材によって駆動される被駆動部材と、その被駆動部材の動作を前記複数のノズル保持具の動作に変換する動作変換機構とを有する請求項3に記載のダイ供給機。
【請求項5】
前記ノズル格納装置が、
前記複数のノズル保持具と、前記被駆動部材と、前記動作変換機構とがユニット化されたノズル収容ユニットを含んで構成され、
そのノズル収容ユニットが、別のノズル収容ユニットと交換可能とされた請求項4に記載のダイ供給機。
【請求項6】
前記駆動部材がラックであり、前記被駆動部材がそのラックと噛合するピニオンである請求項4または請求項5に記載のダイ供給機。
【請求項7】
前記複数の吸着ノズルの各々が、前記複数のノズル被装着具のうちの対応するものに対して自身の軸線回りに回転動作させられることによりそのものに装着されるように構成されており、
前記ノズル作動機構が、前記複数のノズル保持具を、それらの各々によって保持された複数の吸着ノズルの各々の軸線回りに同期して回転させるよう構成された請求項2ないし請求項6のいずれか1つに記載のダイ供給機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−80791(P2013−80791A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219488(P2011−219488)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】