説明

ダサチニブ多結晶体、並びにその調製方法及び薬物組成物

ダサチニブ一水和物の多結晶体I及びダサチニブ一水和物の多結晶体II、それらの調製方法及びそれらを含有する薬物組成物を提供する。これらの多結晶体はより良い理化性質を有し、より安定であり、且つ工業的量産により適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物化合物の多結晶体に関し、より具体的には、ダサチニブの多結晶体に関し、また、本発明はさらに当該多結晶体の調製方法及びその薬物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ダサチニブ、商品名SPRYCELTMは、BMS社により開発された経口投与のチロシンキナーゼ阻害剤であり、成人慢性骨髄性白血病(CML)に用いられ、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ球性白血病などの病気の治療にも用いうる。その化学名称はN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−({6−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]−2−メチルピリミジン−4−イル}アミノ)1,3−チアゾール−5−カルボキサミドであり、化学構造は以下の通りである。
【0003】
【化1】

【0004】
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社は中国特許出願−出願番号CN200580011916.6の文書(公告日2007年6月13日)においてダサチニブの5種の結晶態形を記載し且つ相応の結晶態形の調製方法を開示した。当該文書により開示された調製方法は以下の通りである。
【0005】
1水和物:48gダサチニブ、1056ml (22ml/g)エタノール及び144ml水を加えて75℃まで加熱して溶解させて浄化ろ過して受取容器に移す。43mlエタノールと5ml水との混合物で反応装置及び送液パイプをリンス・溶解する。溶液を75〜80℃まで加熱してそれを完全に溶解させ、384ml水を加熱し、且つ溶液温度を75〜80℃間に維持させる。75℃まで冷却して1水和物結晶種(好ましい)を加え、70℃まで冷却して1h保温し、2h内に5℃まで冷却し且つ0〜5℃間に2h保温し、スラリーをろ過し、96mlエタノールと96ml水との混合物でろ過ケーキを洗浄し、50℃以下で減圧乾燥して41gを得る。ブタノール溶媒和物:還流(116〜118℃)下で、約1g/25ml溶剤の濃度においてダサチニブを1−ブタノールに溶解させて、ダサチニブの結晶ブタノール溶媒和物を調製した。冷却する時に、当該ブタノール溶媒和物が溶液から結晶される。ろ過を行い、ブタノールで洗浄して、その後乾燥する。エタノール溶媒和物:100ml丸底フラスコに4g (10.1mmol)の5D、6.6g (50.7mmol)の7B、80mlのn−ブチルアルコール及び2.61g (20.2mmol)のDIPEAを加える。得られたスラリーを120℃まで加熱して4.5h保温した後20℃まで冷却し且つ一夜撹拌する。結晶をろ過して、湿ケーキをn−ブチルアルコール(2×10ml)で洗浄して、白色の結晶生成物を得る。得られた湿ケーキを100ml反応装置に戻して、56ml(12ml/g)の無水エタノール(200proof)を加える。80℃でさらに25mlエタノールを加え、この混合物に10ml水を加えてそれをすみやかにに溶解させる。加熱を止め、75〜77℃で結晶を観察する。結晶スラリーをさらに20℃まで冷却し続いてろ過する。湿ケーキを10mlエタノール:水(1:1)で一回洗浄し、その後10mlノルマルヘプタンで一回洗浄する。60℃/30 in Hg下で17h乾燥して水含有量0.19%の物質3.55gを得る。
【0006】
純粋なN−6:化合物5D(175.45g,0.445mol)とヒドロキシエチルビペラジン(289.67g,2.225mol)との、NMP(1168ml)における混合物に対してDIPEA (155ml,0.89mmol)を加える。懸濁液を110℃で25分間加熱して溶液を得、その後約90℃まで冷却する。得られた熱溶液を熱水(80℃,8010ml)に滴下して80℃で15分間保温撹拌し、その後室温まで徐々に冷却する。真空ろ過して固体を収集し、水(2×1600ml)で洗浄し、55〜60℃下で真空において乾燥して、192.45g化合物を得る。
【0007】
純粋なT1H1−7(純粋でありかつ薬学的に許容される担体):ダサチニブ1水和物を脱水温度よりも高い温度下で加熱することによって得られた。
【0008】
ダサチニブは水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アミルアルコールなどの有機溶媒にほぼ溶けず、たとえ加熱条件下でも溶解するには百倍以上の大量の溶媒を使用しなければならないため、溶解が非常に難しく、工業的量産には不利であり、また、出願文書CN200580011916.6により開示される方法は結晶型の調製過程において製品における関連物質を低減し、製品の品質を有効に向上することができない。
【0009】
薬物の多結晶型にとって、異なる多結晶型は、融点、化学的安定性、見掛け溶解度、溶解速度、光学及び機械特性、蒸気圧及び密度を含む、異なる化学的及び物理的特性を持つことができる。これらの性質は原薬及び製剤の処理または生産に直接影響を与える可能性があり、且つ製剤の安定性、溶解度及び生物学的利用能に影響を与える可能性がある。そのため、薬物の多結晶型が薬物製剤の品質、安全性及び有効性に対して重要な意義を持っている。ダサチニブに関して、本分野では、工業的量産に適し、理化性能の優れている新しい多結晶型が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許出願第200580011916.6号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の発明者は鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、新しいダサチニブ多結晶体を発見し、従来の技術に存在する欠点を成功裡に解決した。当該物質は理化の性質に優れており、安定性がよく、工業的量産により適するなどの利点を有する。
【0012】
本発明の目的は新しいダサチニブ多結晶体を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに1つの目的は前記新しい多結晶体の調製方法を提供することにある。
【0014】
本発明の第3の目的は前記新しい多結晶体を含有する薬物組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
具体的には、本発明は一分子の結晶水を含有し且つその他の溶剤をほぼ含まないダサチニブ多結晶体Iを提供する。図1に示す。
【0016】
本発明により提供されるダサチニブ1水和物の多結晶体Iであって、Cu−Kα線を使用して測定されたX線回折図(XRPD)において、強度で示される2θの9.1±0.2及び19.4±0.2における回折ピークを有し、前記ダサチニブ1水和物の多結晶体Iは、前記X線回折図において、さらに9.1±0.2、11.1±0.2、13.7±0.2、15.1±0.2、17.8±0.2、19.4±0.2、23.0±0.2における1つまたは複数の(ランダムに組み合わせ、2以上または全部を含む)回折ピークを有しても良く、前記ダサチニブ1水和物の多結晶体IのX線回折図の示された例を図2に示す。
【0017】
本発明により提供されるダサチニブの多結晶体IのXRPD回折ピークは以下に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
本発明により提供されるダサチニブ1水和物の多結晶体Iは示差走査熱量(DSC)図において、約100〜130℃の間、特に約120℃における第1の吸熱ピーク、及び284〜290℃の間、特に約286.50℃における第2の吸熱ピーク、即ち最大吸熱ピークを持ち得る。本発明のダサチニブ1水和物の多結晶体IのDSCスペクトルの例としては図4−1を参照し、本発明のダサチニブ1水和物の多結晶体Iの熱重量分析(TGA)スペクトルの示された例を図4−2に示す。
【0020】
また、本発明のダサチニブ1水和物の多結晶体Iは、KBr打錠法によって測定した赤外吸収スペクトル(IR)において、約3462.42cm−1、3210.67cm−1、3003.96cm−1、2954.14cm−1、2823.49cm−1、1682.15cm−1、1629.58cm−1、1612.25cm−1、1583.84cm−1、1305.47cm−1、1290.91cm−1、1000.19cm−1、1040.60cm−1において吸収ピークを持ち得る、前記ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの赤外吸収スペクトルの示された例を図3に示す。
【0021】
本発明のダサチニブ1水和物の多結晶体Iの固体13C−NMRスペクトルにおける特徴的なシフト値が16.75±0.2ppm、24.92±0.2ppm、41.72±0.2ppm、43.23±0.2ppm、44.28±0.2ppm、54.01±0.2ppm、55.48±0.2ppm、57.53±0.2ppm、58.70±0.2ppm、62.23±0.2ppm、63.20±0.2ppm、84.66±0.2ppm、127.92±0.2ppm、128.81±0.2ppm、132.70±0.2ppm、137.68±0.2ppm、139.00±0.2ppm、157.17±0.2ppm、162.07±0.2ppm、163.54±0.2ppm、166.84±0.2ppm、167.58±0.2ppmであってもよく、前記ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの固体13C−NMRスペクトルの示された例を図5に示す。
【0022】
本発明の実施形態において、本発明は本発明のダサチニブ1水和物の多結晶体Iの調製方法を提供し、当該方法は以下のステップを含む。
【0023】
ステップ(1)、ダサチニブをジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルホルムアミド(DMF)の溶液に加え、ジメチルホルムアミドとダサチニブとの体積及び質量比が通常1:1〜200:1(ml:g)であってもよく、好ましくは、ジメチルホルムアミドとダサチニブとの体積及び質量比が2:1〜200:1で、最も好ましくは、ジメチルホルムアミドとダサチニブとの体積及び質量比が3.5:1〜4:1である。ジメチルスルホキシドとダサチニブとの体積及び質量比が通常1:1〜200:1であってもよく、好ましくは、ジメチルスルホキシドとダサチニブとの体積及び質量比が1.5:1〜200:1で、最も好ましくは、ジメチルスルホキシドとダサチニブとの体積及び質量比が2.5:1〜3:1である。
【0024】
ステップ(2)、撹拌下で加熱して溶解させる。加熱温度が室温からジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルホルムアミド(DMF)の還流温度までであってもよく、好ましくは、加熱温度が40℃〜100℃であってもよく、最も好ましくは、加熱温度が50℃〜80℃であってもよい。
【0025】
ステップ(3)、純水と有機溶媒との混合溶剤を滴下し、前記有機溶媒はダサチニブが溶けないまたはやや溶ける1種または2種以上の混合溶剤である。好ましくは、温度が40℃〜100℃で、最も好ましくは、温度が50℃〜80℃であり、純水と有機溶媒との混合溶剤の体積とジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドとの体積比が通常1:1〜200:1であり、好ましくは、水と有機溶媒との混合溶剤の体積とジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドとの体積比が2:1〜200:1で、最も好ましくは、水と有機溶媒との混合溶剤の体積とジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドとの体積比が3:1以上〜200:1である。前記有機溶媒はダサチニブが溶けないまたはやや溶ける1種または複数種の混合溶剤であり、好ましくはアセトニトリル、シクロヘキサン、1,2−塩化ビニリデン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、2−エトキシエタノール、エチレングリコール、ノルマルヘキサン、メタノール、2−メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N−メチルピロリドン、ピリジン、テトラリン、テトラヒドロフラン、トルエン、1,1,2−トリクロロエテン、ジメチルベンゼン、アセトン、アニソール、n−ブチルアルコール、ブチルアルコール、酢酸ブチル、tert− ブチルメチルエーテル、イソプロピルベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エステル、ジエチルエーテル、蟻酸エステル、ノルマルヘプタン、酢酸イソブチル、イソプロピルアセタート、酢酸メチル、イソペンチルアルコール、ブタノン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルコール、ノルマルペンタン、第一アミルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸プロピル、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシメタン、2,2−ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテルから選ばれ、最も好ましくはICHにより規定された3類または3類以上の有機溶媒、例えば、アセトン、アニソール、n−ブチルアルコール、ブチルアルコール、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル、イソプロピルベンゼン、エタノール、メタノール、プロパノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、蟻酸エチル、ノルマルヘプタン、酢酸イソブチル、イソプロピルアセタート、酢酸メチル、イソペンチルアルコール、ブタノン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルコール、ノルマルペンタン、第一アミルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸プロピル、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシメタン、2,2−ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテルなどのうちの1種または2種以上から選ばれ、混合溶剤を水と有機溶媒とからなる2成分または2成分以上の混合系であるようにする。そのうち、水と前記有機溶媒との重量比が通常10%より大きく、好ましくは、水と前記有機溶媒との重量比が20%より大きく、最も好ましくは水と前記有機溶媒との重量比が30%より大きい。
【0026】
ステップ(4)、滴下を止め、保温した後撹拌下で温度を徐々に0〜5℃まで下げて固体を完全に析出させ、且つ結晶を形成させ、保温時間は10分間以上であってもよく、好ましくは1時間以上、最も好ましくは2時間以上であり、結晶形成時間は10分間以上であってもよく、好ましくは1時間以上、最も好ましくは2時間以上である。
【0027】
ステップ(5)、ろ過して固体を収集し、且つ乾燥を行い、好ましくは、五酸化二リンで乾燥補助を行い、50℃、−0.095MPaで12時間以上減圧真空乾燥する。
【0028】
本発明の実施形態において、本発明は結晶水を含まない他種のダサチニブ有機溶媒化合物多結晶体IIを提供し、図14A及びBに示す。
【0029】
本発明により提供されるダサチニブ1水和物の多結晶体IIであって、Cu−Kα線を使用して測定されたX線回折図において、強度で示される2θの5.7±0.2及び14.5±0.2における回折ピークを有し、前記ダサチニブの多結晶体IIは、前記X線回折図において、さらに5.7±0.2、11.5±0.2、12.3±0.2、14.5±0.2、17.2±0.2、18.2±0.2、22.2±0.2、 22.6±0.2、24.7±0.2、25.2±0.2における1つまたは複数の(ランダムに組み合わせ、2以上または全部を含む)回折ピークを有しても良く、図15−1及び15−2を参照する。ここで、前記有機溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルホルムアミド(DMF)とダサチニブが溶けない1種または2種以上の混合溶剤との混合物であり、前記ダサチニブが溶けない溶剤は、好ましくはアセトニトリル、トリクロロメタン、シクロヘキサン、1,2−塩化ビニリデン、ジクロロメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、2−エトキシエタノール、エチレングリコール、ノルマルヘキサン、メタノール、2−メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N−メチルピロリドン、ピリジン、テトラリン、テトラヒドロフラン、トルエン、1,1,2−トリクロロエテン、ジメチルベンゼン、アセトン、アニソール、n−ブチルアルコール、ブチルアルコール、酢酸ブチル、tert− ブチルメチルエーテル、イソプロピルベンゼン、エタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、蟻酸エチル、ノルマルヘプタン、酢酸イソブチル、イソプロピルアセタート、酢酸メチル、イソペンチルアルコール、ブタノン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルコール、ノルマルペンタン、第一アミルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸プロピル、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシメタン、2,2−ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテルから選ばれ、最も好ましくはアセトン、アニソール、n−ブチルアルコール、ブチルアルコール、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル、イソプロピルベンゼン、エタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、蟻酸エチル、ノルマルヘプタン、酢酸イソブチル、イソプロピルアセタート、酢酸メチル、イソペンチルアルコール、ブタノン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルコール、ノルマルペンタン、第一アミルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸プロピル、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシメタン、2,2−ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテルなどのうちの1種または2種以上の混合溶剤から選ばれ、さらに好ましくは、前記有機溶媒がジメチルスルホキシドとアセトンまたは酢酸エチルとの混合物であり、またはジメチルホルムアミドとアセトンまたは酢酸エチルとの混合物である。
【0030】
本発明のダサチニブ多結晶体IIのXRPD図回折ピークを以下に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
本発明により提供されるダサチニブ多結晶体II、代表的には、ジメチルホルムアミド/アセトン溶媒和物は、そのDSC図において160〜210℃間における2つの吸熱ピークを有してよく、そのうちの1つの吸熱ピークが約193℃において比較的大きな吸熱ピークを有し、さらに280〜290℃間、特に約286.67℃における第3の吸熱ピーク、即ち最大吸熱ピークを有する。本発明のダサチニブ多結晶体IIのDSCスペクトルの示された例を図17−1に示し、TGAスペクトルの示された例を図17−2に示す。
【0033】
本発明により提供されるダサチニブ多結晶体II、代表的には、そのジメチルホルムアミド/アセトン溶媒和物は、KBr打錠法によって測定した赤外吸収スペクトルにおいて、約3395.73cm−1、3201.34cm−1、3067.99cm−1、2925.57cm−1、2842.67cm−1、2822.19cm−1、1716.01cm−1、1619.56cm−1、1578.34cm−1、1537.01cm−1、1315.41cm−1、1293.55cm−1、1006.06cm−1、984.74cm−1、1056.29cm−1に吸収ピークを持ち得、前記ダサチニブ多結晶体IIの赤外吸収スペクトルの示された例を図16に示す。
【0034】
本発明により提供されるダサチニブ多結晶体II、代表的には、そのジメチルホルムアミド/アセトン溶媒和物の、固体13C−NMRスペクトルにおける特徴的なシフト値が18.80±0.2ppm、26.22±0.2ppm、27.60±0.2ppm、30.99±0.2ppm、36.57±0.2ppm、43.62±0.2ppm、51.57±0.2ppm、52.50±0.2ppm、55.09±0.2ppm、56.98±0.2ppm、62.51±0.2ppm、83.08±0.2ppm、125.43±0.2ppm、126.61±0.2ppm、128.44±0.2ppm、129.33±0.2ppm、132.65±0.2ppm、139.50±0.2ppm、156.34±0.2ppm、161.15±0.2ppm、162.96±0.2ppm、 164.68±0.2ppm、165.47±0.2ppm、203.49 ±0.2ppmであってもよい。前記ダサチニブの多結晶体IIの固体13C−NMRスペクトルの示された例を図18に示す。
【0035】
本発明の実施形態において、本発明はダサチニブ多結晶体IIの調製方法を提供し、当該方法は以下のステップを含む。
【0036】
ステップ(1)、ダサチニブをジメチルホルムアミドまたは無水ジメチルスルホキシドに加え、無水ジメチルホルムアミドまたは無水ジメチルスルホキシドとダサチニブとの体積及び質量比が通常1:1〜200:1であり、好ましくは、無水ジメチルホルムアミドまたは無水ジメチルスルホキシドとダサチニブとの体積及び質量比が2:1〜200:1で、最も好ましくは、無水ジメチルホルムアミドまたは無水ジメチルスルホキシドとダサチニブとの体積及び質量比が3.5:1〜4:1より大きく、撹拌加熱しながら溶解させる。
【0037】
ステップ(2)、前記溶液を溶液の数倍の体積の無水有機溶媒に注ぎ、有機溶媒を選択する条件はダサチニブが溶けないまたはやや溶ける無水の有機溶媒である。ここで、有機溶媒とジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドとの体積比が通常1:1〜200:1で、好ましくは、有機溶媒とジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドとの体積比が3〜200:1よりも大きく、最も好ましくは、有機溶媒とジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドとの体積比が5〜200:1である。前記有機溶媒はダサチニブが溶けないまたはやや溶ける1種または複数種の混合溶剤であり、好ましくはアセトニトリル、トリクロロメタン、シクロヘキサン、1,2−塩化ビニリデン、ジクロロメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、2−エトキシエタノール、エチレングリコール、ノルマルヘキサン、メタノール、2−メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N−メチルピロリドン、ピリジン、テトラリン、テトラヒドロフラン、トルエン、1,1,2−トリクロロエテン、ジメチルベンゼン、アセトン、アニソール、n−ブチルアルコール、ブチルアルコール、酢酸ブチル、tert− ブチルメチルエーテル、イソプロピルベンゼン、エタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、蟻酸エチル、ノルマルヘプタン、酢酸イソブチル、イソプロピルアセタート、酢酸メチル、イソペンチルアルコール、ブタノン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルコール、ノルマルペンタン、第一アミルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸プロピル、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシメタン、2,2−ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテルから選ばれ、最も好ましくはアセトン、アニソール、n−ブチルアルコール、ブチルアルコール、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル、イソプロピルベンゼン、エタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、蟻酸エチル、ノルマルヘプタン、酢酸イソブチル、イソプロピルアセタート、酢酸メチル、イソペンチルアルコール、ブタノン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルコール、ノルマルペンタン、第一アミルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸プロピル、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシメタン、2,2−ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテルなどのうちの1種または2種以上の混合溶剤から選ばれる。
【0038】
ステップ(3)、有機溶媒を、室温から有機溶媒の還流温度までで、ダサチニブのジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシド溶液に徐々に揮発させ、ここでは、有機溶媒の揮発時間は少なくとも数時間ひいては数日であってもよく、好ましくは24時間以上であり、最も好ましくは72時間以上である。
【0039】
ステップ(4)、ろ過して固体を収集し、且つ乾燥を行い、好ましくは、五酸化ニリンの存在下で乾燥補助を行い、50℃、−0.095MPaで12時間以上減圧真空乾燥する。
【0040】
本発明において、本発明に係れるX線粉末回折測定装置及び測定条件は下記の通りである。陽極回転子ターゲットX線回折装置D/max−2500/PC型(株式会社リガク、日本)、銅ターゲット、グラファイト・モノクロメータ、電圧40kV、電流100mA、拡散スリット及び抗散乱グリッドは共に1°、入射スリット:0.3mm、スキャン速度5°/min、スキャン範囲3〜40°。
【0041】
本発明に係るDSC測定装置及び測定条件は以下の通りである。米国Perkin Elmer Diamond DSC、10℃/min速度で25℃から300℃までに加熱する。
【0042】
本発明に係るTGA測定装置及び測定条件は以下の通りである。米国Perkin Elmer Thermal Analysis Pyris 1 TGA、10℃/min速度で25℃から500℃までに加熱する。
【0043】
本発明に係る固体核磁気共鳴測定装置及び測定条件は以下の通りである。
【0044】
装置:BRUKER AVANCE III 400MHz広中空部固体核磁気共鳴装置。
【0045】
測定条件:CP−MAS、方式:回転速度14000Hz、走査回数1404、緩和遅延40s、接触時間2ms、13C周波数100.6234936MHz、1H周波数400.1413530MHz。
【0046】
本発明に係る類縁物質(ここにおいて前記類縁物質は、ダサチニブ以外の不純物を指す)の測定条件及び方法:高速液体クロマトグラフィー法(中国薬典2005年版2部付録VD)に基づいて測定する。
【0047】
カラム条件及びシステム適合性
オクタデシルシリル化シリカゲルを充填剤とし、0.05mol/Lリン二水素カリウム(0.2%トリエチルアンモニウム、リン酸でpH値を2.5まで調節した)−メタノール(45:55)を移動相とする。検出波長230nm、理論段数はダサチニブのピークに基づいて計算すれば2000以上であるべきであり、ダサチニブのピークと隣接する不純物のピークとの分解能が要求を満たす必要がある。
【0048】
測定方法 サンプルを取り、移動層を加えて溶解させ、且つ0.5mg/mlの溶液を調製する、20μlを量って、それぞれ高速液体クロマトグラフィーに注入し、メイン成分ピークの保持時間の6倍までクロマトグラムを記録する。
【0049】
ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの特性
一、溶解性:中国薬典2000年版2部凡例に基づいて試験する。
【0050】
方法:適量のダサチニブ1水和物の多結晶体Iを精密に量り、所定量の溶剤を徐々に加え、5分間毎に30秒強く振とうし、30分間の溶解具合を観察し、結果を表1に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
二、安定性
1.光照射試験
ダサチニブ1水和物の多結晶体Iを開口のシャーレに均一に分注し、厚さ≦5mm、距離を調節し、光照射強度を4500±500Lxにし、それぞれ5、10日目にサンプルを取って測定を行い、且つ0日目の結果と比較する。結果を表2に示す。10日のX線回折図は図6に示す。ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、強光照射10日のDSC図は図7に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
2.高温試験
ダサチニブ1水和物の多結晶体I原料を密封の清浄ガラスボトルに入れて、60℃の恒温乾燥装置に放置し、それぞれ5、10日目にサンプルを取って測定を行い、且つ0日目の結果と比較する。結果を表3に示す。60℃10日考察したX線回折図を図8に示す。60℃10日考察したDSC図は図9−1に示し、TGA図は図9−2に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
3.高湿試験
ダサチニブ1水和物の多結晶体I原料を開口のシャーレに均一に分注し、厚さ≦5mm、室温(約25℃)、相対湿度75±5%の恒温恒湿培養装置に放置し、それぞれ5、10日目にサンプルを取って測定を行い、且つ0日目の結果と比較する。結果を表4に示す。相対湿度75±5%の10日のX線回折図は図10に示し、DSC走査図は図11−1に示し、TGA図は11−2に示す。
【0057】
【表6】

【0058】
4.加速試験
ダサチニブ1水和物の多結晶体I原料をポリエチレンフィルムのプラスチック袋で密封包装し、40±2℃、相対湿度75±5%の恒温恒湿培養装置に6ヶ月放置し、それぞれ1、2、3、6ヶ月末にサンプルを取って測定を行い、且つ0ヶ月の結果と比較する。結果を表5に示す。6ヶ月のX線回折図は図12に示し、DSC走査図は図13−1に示し、TGA図は13−2に示す。
【0059】
【表7】

【0060】
前記実験結果から分かるように、本発明により得られたダサチニブ1水和物の多結晶体Iは光照射下でダサチニブ多結晶体Iの類縁物質がわずかに増加し、含有量が減少した。高温試験(60℃)において外観には顕著な変化が無かったが含有量がわずかに減少した。本発明の多結晶体Iは高湿試験において外観及び含有量に共に顕著な変化が無く、吸湿性が低いため、加速実験の結果からその理化性質が相対的に安定であることが示された。
【0061】
本発明の多結晶体Iは長期の参考品観察試験において、結晶型における変化が見られず、類縁物質がわずかに増加し、含有量がわずかに減少した。試験は当該多結晶体Iの結晶形態が安定であり、長期の保存に適することを示した。
【0062】
また、多結晶体Iの減量(水)過程が70℃〜150℃の間に発生し、ダサチニブ1水和物の多結晶体IのTGA走査図(図4−2)に基づいて計算した結果減量が3.60%であり、且つ当該化合物に対して測定した結果は有機溶媒の残留量がICHにより規定された限度要求に適し、カールフィッシャー水分測定による水分値が3.59%である。以上の実験結果に基づいて、本発明のダサチニブ多結晶体Iが1水和物であることが示された。
【0063】
更なる実験において、本発明の多結晶体Iを強脱水剤の密封環境(例えば変色シリカゲル、五酸化ニリンなど)に置いた際に結晶水が徐々に失われた(一部ないし全部)可能性があるが、当該結晶水を失った多結晶体を大気に一定時間露出させると、本発明の多結晶体Iが1水和物の状態に徐々に戻ることが見出された。
【0064】
ダサチニブ多結晶体IIの特性
一、溶解性:中国薬典2000年版2部凡例に基づいて試験する。
【0065】
方法:適量のダサチニブ多結晶体IIを精密に量り、所定量の溶剤を徐々に加え、5分間毎に30秒間強く振とうし、30分間の溶解の程度を観察し、結果を表6に示す。
【0066】
【表8】

【0067】
二、安定性
1.光照射試験
ダサチニブ多結晶体IIを開口のシャーレに均一に分注し、厚さ≦5mm、距離を調節し、光照射強度を4500±500Lxにし、それぞれ5、10日目にサンプルを取って測定を行い、且つ0日目の結果と比較する。結果を表7に示す。10日のX線回折図は図19に示し、光照射10日のDSC図は図20に示す。
【0068】
【表9】

【0069】
2.高温試験
ダサチニブ多結晶体II原料を密封の清浄なガラスボトルに入れて、60℃の恒温乾燥装置に放置し、それぞれ5、10日目にサンプルを取って測定を行い、且つ0日目の結果と比較する。結果を表8に示す。高温下で10日間試験したX線回折図を図21に示す。高温下で10日間試験DSC図を図22に示す。
【0070】
【表10】

【0071】
3.高湿試験
ダサチニブ多結晶体II原料を開口のシャーレに均一に分注し、厚さ≦5mm、室温(約25℃)、相対湿度75±5%の恒温恒湿培養装置に放置し、それぞれ5、10日目にサンプルを取って測定を行い、且つ0日目の結果と比較する。結果を表9に示す。高湿実験10日のX線回折図を図23に示し、高湿実験10日目のDSC図を図24−1に示し、高湿実験10日のTGA図を24−2に示す。
【0072】
【表11】

【0073】
4.加速試験
ダサチニブ多結晶体II原料をポリエチレンフィルムのプラスチック袋で密封包装し、40±2℃、相対湿度75±5%の恒温恒湿培養装置に6ヶ月放置し、それぞれ1、2、3、6ヶ月末にサンプルを取って測定を行い、且つ0ヶ月の結果と比較する。結果を表10に示す。40℃加速試験6ヶ月目のX線回折図を図25に示し、40℃加速試験6ヶ月目のDSC図を図26−1に示し、40℃加速試験6ヶ月目のTGA図を26−2に示す。
【0074】
【表12】

【0075】
前記結果から分かるように、本発明により得られたダサチニブ多結晶体IIは光照射下で外観には大きな変化が無く、類縁物質がある程度に増加し、含有量がある程度に減少した。高温試験(60℃)において外観及び含有量共に大きな変化は無かったため、その性質が相対的に安定であることが示された。本品は高湿試験においてその外観及び含有量共に顕著な変化は無かったが、わずかな吸湿性が認められた。加速実験よりその性質が相対的に安定であることが示された。
【0076】
本発明の他種の実施形態において、本発明は薬物組成物を提供し、前記薬物組成物は前記2種のダサチニブ多結晶体I及びIIのうちの1種または2種及び薬用賦形剤の薬用組成物を含有し、好ましくは、当該薬物組成物はダサチニブ多結晶体1〜500mgを含有し、特に好ましくは、ダサチニブ約20、50、70、100mg多結晶体を含有する。本発明の薬物組成物は各種の剤形に調製し、且つ適当な薬用賦形剤を選択することができる。例えば、治療待ち病気及び対象に基づき、本発明の薬物組成物は、経口投与、非経口投与(例えば筋肉内、腹膜内、静脈内、ICV、脳槽内注射または潅流、皮下注射または潅流)、吸入スプレー投与、経鼻投与、陰道投与、直腸投与、舌下投与または局部投与によって投与することができ、好ましくは、経口投与の薬物組成物、特に経口投与錠剤、カプセル剤または顆粒剤である。本分野の当業者は、例えば中国特許出願CN 101170996A(公告日2008年4月30日)の、従来の技術の教示に基づいて経口投与薬物組成物に対してコーティングすることができる。
【0077】
本発明はダサチニブ多結晶体の薬物組成物を含み、ニーズに応じてその他の治療成分、例えばイクサベピロン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、ベバシズマブ、ベンダムスチン、エルロチニブ 、ニロチニブ、Rituxima、デキサメタゾン、レナリドミド、カペシタビン、エキセメスタン、レトロゾール、ダカルバジン、バンデタニブ及びIpilimumabなどのうちの1種または複数種をさらに含有できる。
【0078】
本発明の薬物組成物は1日毎に1回または複数回の量で投与し、1日の投与量が約5−1000mg/日で、より好ましくは約10−500mg/日である。または1日おきに、約10−250mg/日、投与する。
【0079】
本発明のダサチニブは疾病及び症状の治療に用いることができる。例としては、移植片拒絶、関節リウマチ、多発性硬化症、腸炎、ルプス、移植片対宿主病、T−細胞に介在された過敏症、乾癬、橋本甲状腺炎、癌(慢性骨髄性白血病CML、消化管間質腫瘍GIST、小細胞性肺癌SCLC、非小細胞性肺癌NSCLC、卵巣癌、黒色腫、肥満細胞症、生殖細胞腫瘍、急性骨髄性白血病AML、児童肉腫、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌などを含む)、接触性皮膚炎、アレルギー症、喘息、糖尿病性網膜症、及び慢性閉塞性肺疾患などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。それ以外に、本発明の教示の下で、本分野の当業者は従来の技術に基づき、具体的な方法及び投与量を確定できる。例えば、国際公開番号WO2004085388A2を参照する。
【0080】
本発明の有益な技術効果は、従来技術のCN200580011916.6特許文献はダサチニブ多結晶体及びその調製方法を開示したが、CN200580011916.6に提供された、ダサチニブ多結晶体を調製する方法は試験によって、当該特許文献により開示された回転結晶方法は工業的な安定量産に適さないことが判明した。
【0081】
従来技術CN200580011916.6特許文献の調製方法はダサチニブを、ダサチニブがほとんど溶けないアルコール類有機溶媒またはアルコール類有機溶媒と水との混合溶液(例えばアルコール類溶剤メタノール、エタノール、ブタノールなど)に加え、加熱溶解した後温度を下げて結晶体を析出させる。
【0082】
1.ダサチニブが水またはアルコール類の有機溶剤にほとんど溶けず、加熱条件下においても大量の溶剤を使用する必要があるため、回転結晶プロセスが複雑で、製品の品質制御性が悪く、工業的な安定量産には適さない。
【0083】
2.特許文献CN200580011916.6に記載された回転結晶方法は、元の製品の類縁物質を顕著に低減し、それによって、製品の品質を向上することができない。
【0084】
3.特許文献CN200580011916.6に記載された条件に基づいて調製した結晶体Aの安定性は、本発明により調製した結晶体Iと比べて、安定性が悪いことを、実験によって証明した。
【0085】
まとめると、特許文献CN200580011916.6において開示されたダサチニブ多結晶体の調製方法は、工業的な安定した量産には適さない。
【0086】
一方、本発明は工業的量産に適用する2種のダサチニブ多結晶体を提供し、従来の技術における問題を克服した。
【0087】
本発明はダサチニブの2種の新しい多結晶体に対して、その結晶条件はダサチニブが大過剰の溶剤において溶解せず、精製しにくい特徴を充分に考慮し、簡単で、実施しやすい調製方法を採用する。
【0088】
1.本発明は調製プロセスが簡単で、操作が非常にしやすく、工業生産が簡易で、品質の制御性がよく、収率が安定である。
【0089】
2.回転結晶方法は強極性の不純物を非常に簡易に除去し、類縁物質を顕著に低減させる。
【0090】
3.本発明の調製プロセスにより得られた多結晶体は従来の方法の多結晶体と比べ、製品の外観色調問題を顕著に改善できる。
【0091】
4.本発明の調製プロセスにより得られた多結晶体は安定性がよく、長期保管に適する。
【0092】
5.本発明により開示される多結晶体I、IIの水における安定性は、従来の特許CN200580011916.6に開示された多結晶体Aと比べ、破壊試験における安定性が優れており、これは本発明の多結晶体を製剤プロセス及び製剤の長期保存の要求により適用させ、また、試験によって、本発明のダサチニブ多結晶体I、IIが製剤化された後、その結晶型がほぼ変わらなく、結晶型の安定性が優れており、且つ製剤に含有される原薬の類縁物質が増加しないため、薬物の使用により適用することが証明された。
【0093】
6.本発明の多結晶体の調製方法は回転結晶時の有機溶剤の使用量を大幅に低減でき、コストを低減した。
【0094】
7.本発明の方法は、低毒性の3類有機溶剤を選択し使用して本発明の多結晶体を調製することができ、残留有機溶媒の人体に対する害毒の潜在的な影響作用をある程度に低減した。
【0095】
前記長所は本発明を製品の品質の顕著な向上に有益なものとし、且つ工業的な生産により適するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの顕微鏡写真である。
【図2】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの典型的なXRPD図である。
【図3】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体IのIR赤外吸収スペクトル図である。
【図4−1】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体IのDSC走査図である。
【図4−2】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体IのTGA走査図である。
【図5】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの固体13C−NMRスペクトル図である。
【図6】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、強光照射10日目のXRPD図である。
【図7】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、強光照射10日目のDSC図である。
【図8】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、60℃試験10日目のXRPD図である。
【図9−1】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、60℃試験10日目のDSC図である。
【図9−2】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、60℃試験10日目のTGA図である。
【図10】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、高湿試験10日目のXRPD図である。
【図11−1】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、高湿試験10日目のDSC図である。
【図11−2】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、高湿考察10日のTGA図である。
【図12】は本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、40℃環境において6ヶ月試験後のXRPD図である。
【図13−1】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、40℃において6ヶ月目のDSC図である。
【図13−2】本発明ダサチニブ1水和物の多結晶体Iの、40℃において6ヶ月目のTGA走査図である。
【図14】図14A及びBは、本発明ダサチニブ多結晶体IIの顕微鏡写真である。
【図15−1】本発明ダサチニブ(ジメチルホルムアミド/アセトン)多結晶体IIの典型的なXRPD図である。
【図15−2】本発明ダサチニブ(ジメチルスルホキシド/酢酸エステル)多結晶体IIの典型的なXRPD図である。
【図16】本発明ダサチニブ多結晶体IIのIR赤外吸収スペクトル図である。
【図17−1】本発明ダサチニブ多結晶体IIのDSC図である。
【図17−2】本発明ダサチニブ多結晶体IIのTGA図である。
【図18】本発明ダサチニブ多結晶体IIの固体13C−NMRスペクトル図である。
【図19】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、光照射10日のXRPD図である。
【図20】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、光照射10日のDSC示差熱量走査図である。
【図21】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、60℃10日目のXRPD図である。
【図22】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、60℃10日目のDSC図である。
【図23】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、高湿10日目のXRPD図である。
【図24−1】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、高湿10日目のDSC図TGA図である。
【図24−2】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、高湿10日目のTGA図である。
【図25】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、40℃6ヶ月参考品のXRPD図である。
【図26−1】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、40℃、6ヶ月目のDSC図である。
【図26−2】本発明ダサチニブ多結晶体IIの、40℃、6ヶ月目のTGA図である。
【図27】本発明ダサチニブ多結晶体I及びIIのXRPD対比図である。
【図28】本発明ダサチニブ多結晶体I及びIIの赤外対比図である。
【図29】本発明ダサチニブ多結晶体I及びIIのDSC対比図である。
【図30】本発明ダサチニブ多結晶体I及びIIの固体13C−NMRスペクトル対比図である。
【図31】本発明ダサチニブ多結晶体I及びIIのカプセル処方1の溶出曲線である。
【図32】本発明ダサチニブ多結晶体I及びIIのカプセル処方2の溶出曲線である。
【図33】本発明ダサチニブ多結晶体I及びIIの錠剤処方1の溶出曲線である。
【図34】本発明ダサチニブ多結晶体I及びIIの錠剤処方2の溶出曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
[実施例1]
多結晶体Iの調製
A、反応フラスコに、ダサチニブ10g、ジメチルスルホキシド40mlを加え、撹拌しながら温度を60〜70℃まで上げて、溶解させた後保温下で120ml水とアセトンとの混合液(1:1)を加え、撹拌下で結晶を析出させた後温度を0℃まで下げて10分間結晶形成させる。真空ろ過して、ケーキを水で洗浄した後水とアセトンとの混合液(1:1)で洗浄を行い且つ真空乾燥する。ケーキを約50℃で減圧(−0.095MPa)乾燥を行い、五酸化二リンで補助乾燥を行い、7.7g白色固体を得た、収率が77%である。
【0098】
【表13】

【0099】
方法Aにより得た製品に対して以下の測定を行った:顕微鏡−結晶型(図1を参照)、XRPD測定(図2を参照)、IR測定(図3を参照)、DSC/TGA測定(図4−1、4−2を参照)、固体13C−NMRスペクトル測定(図5を参照)。
【0100】
B、反応フラスコに、ダサチニブ10g、ジメチルスルホキシド40mlを加え、撹拌しながら温度を60〜70℃まで徐々に上げて、溶解させた後保温下で160mlエタノール:水(1:1)の混合液を加え、撹拌下で結晶を析出させた後温度を0℃まで下げて10分間結晶形成させる。真空ろ過して、ケーキを水で洗浄した後、エタノール:水(1:1)の混合液で洗浄を行う。ケーキを約50℃で減圧(−0.095MPa)乾燥を行い、五酸化二リンで補助乾燥を行い、8.7g白色固体を得る、収率は87%である。
【0101】
【表14】

【0102】
[実施例2]
多結晶体IIの調製
A、反応フラスコに、ダサチニブ10g、ジメチルホルムアミド40mlを加え、温度を60〜70℃まで上げて撹拌しながら溶解させ、前記ダサチニブのジメチルホルムアミド溶液を、300mlの体積のアセトンの密封環境に放置する。アセトンを室温から還流温度まででダサチニブのジメチルホルムアミド溶液に揮発させる。数時間ひいては数日後溶液から堆積状の結晶が析出された後さらに数時間ひいては数日を静置する。真空ろ過して、ケーキをアセトンで洗浄する。ケーキを約50℃で減圧(−0.095MPa)乾燥し、五酸化二リンで補助乾燥を行い、6.1g白色固体を得る、収率は61%である。
【0103】
【表15】

【0104】
方法Aにより得た製品に対して以下の測定を行った:顕微鏡−結晶型(図14A及びBを参照)、XRPD測定(図15−1を参照)、IR測定(図16を参照)、DSC/TGA測定(図17−1、17−2を参照)、固体13C−NMRスペクトル測定(図18を参照)。
【0105】
B、反応フラスコに、ダサチニブ10g、ジメチルスルホキシド40mlを加え、温度を60〜70℃まで上げて撹拌しながら溶解させ、前記ダサチニブのジメチルスルホキシド溶液を、300mlの体積の酢酸エチルの密封環境に放置する。酢酸エチルを室温から還流温度以下ダサチニブのジメチルスルホキシド溶液に揮発させる。数時間ひいては数日後溶液から堆積状の結晶が析出された後さらに数時間ひいては数日間静置する。真空ろ過して、ケーキを約50℃で減圧(−0.095MPa)乾燥し、五酸化二リンで補助乾燥し、8.1g白色固体を得る、収率は81%である。
【0106】
【表16】

【0107】
[実施例3]
ダサチニブカプセル剤の処方及び調製プロセス
以下の方法に基づいて、複数種の賦形剤を使用して、前記ダサチニブ多結晶体I、II、またはI、IIの任意な割合の混合物を、50mg含有する固体製剤に調製する。
【0108】
【表17】

【0109】
ダサチニブ多結晶体I、IIまたは前記2種の多結晶体の任意な割合の混合物を含有するカプセル剤の製造方法は、下記の通りである。前記賦形剤のうちの前の4種を、ダサチニブ多結晶体I、IIまたは前記2種の多結晶体の任意な割合の混合物と均一に混合し、適量の水を加えて軟質材料に調製し、軟質材料を湿顆粒に調製した後乾燥を行い、乾燥された後の顆粒をステアリン酸マグネシウムと均一に混合した後カプセルハウジングに充填して、ダサチニブのカプセル剤を得る。
【0110】
【表18】

【0111】
カプセル処方1(ロット1#〜6#)の溶出曲線を図31に示す。
【0112】
【表19】

【0113】
カプセル処方2(ロット1#〜6#)の溶出曲線を図32に示す。
【0114】
[実施例4]
ダサチニブ錠剤の処方及び調製プロセス
以下の方法に基づいて、複数種の賦形剤を使用して、前記ダサチニブ多結晶体I、II、またはI、IIの任意な割合の混合物を、50mg含有する錠剤に調製する。
【0115】
【表20】

【0116】
ダサチニブ多結晶体I、IIまたは前記2種の多結晶体の任意な割合の混合物を含有する錠剤の製造方法は、下記の通りである。前記賦形剤のうちの前の4種を、ダサチニブ多結晶体I、IIまたは前記2種の多結晶体の任意な割合の混合物と均一に混合し、適量の水を加えて軟質材料に調製し、軟質材料を湿顆粒に調製した後乾燥を行い、乾燥された後の顆粒をステアリン酸マグネシウムと均一に混合した後、錠剤に打錠し、得られた錠剤を、OPADRYコーティング材料でフィルム被覆してダサチニブの錠剤を得る。
【0117】
【表21】

【0118】
錠剤処方1(ロット1#〜6#)の溶出曲線を図33に示す。
【0119】
【表22】

【0120】
同様な方法でダサチニブ20mg/70mg/80mg/100mg/140mg含有のカプセル及び錠剤を調製できる。
【0121】
安定性対比試験
CN200580011916.6に開示される方法で調製されたダサチニブ多結晶体A(以下“916.6多結晶体A”と略称する)を代表として、本発明の多結晶体I及びII(以下“多結晶体I及びII”と略称する)と、破壊実験の安定性考察方法及び結果を比較する。
【0122】
【表23】

【0123】
実験方法:
酸化破壊:サンプル50mgを取り、精密に量り、100mlメスフラスコに入れ、30%過酸化水素10mlを加え、室温で2時間放置した後、移動相でフルスケールまで希釈し、均一に振り混ぜて、高速液体クロマトグラフィー法によって測定を行う。
【0124】
酸破壊:サンプル50mgを取り、精密に量り、100mlメスフラスコに入れ、1mol/L塩酸溶液10mlを加え、40℃で1時間放置した後、等量の1mol/L水酸化ナトリウム溶液を加えて中和し、さらに移動相でフルスケールまで希釈し、均一に振り混ぜて、高速液体クロマトグラフィー法によって測定を行う。
【0125】
アルカリ破壊:サンプル50mgを取り、精密に量り、100mlメスフラスコに入れ、1mol/L水酸化ナトリウム溶液10mlを加え、40℃で1時間放置した後、等量の1mol/L塩酸溶液を加えて中和し、さらに移動相でフルスケールまで希釈し、均一に振り混ぜて、高速液体クロマトグラフィー法によって測定を行う。
【0126】
光照射破壊:サンプル50mgを取り、精密に量り、100mlメスフラスコに入れ、移動相で溶解し、且つ0.5mgダサチニブ/ml含有の溶液を調製し、4000lx光照射下に約6時間放置する。高速液体クロマトグラフィー法によって測定を行う。
【0127】
高温破壊:サンプル50mgを取り、精密に量り、100mlメスフラスコに入れ、移動相で溶解し、且つ0.5mgダサチニブ/ml含有の溶液を調製し、60℃恒温水浴に放置し、約4時間後取り出して、放冷する。高速液体クロマトグラフィー法によって測定を行う。
【0128】
類縁物質測定の方法
高速液体クロマトグラフィー法の条件及びシステム適合性 オクタデシルシリル化シリカゲルを充填剤とし、0.05mol/Lりん酸二水素カリウム(0.2%トリエチルアンモニウム、リン酸でpH値を2.5まで調節した)−メタノール(45:55)を移動相とする。検出波長230nm、理論段数はダサチニブのピークに基づいて計算すれば2000以上であるべき、ダサチニブのピークと隣接する不純物のピークとの分解能がが要求要求を満たす必要がある。
【0129】
測定法:サンプルを取り、移動相を加えて溶解させ、且つ0.5mg/mlの溶液に調製し、20mlを量り取り、それぞれ液体クロマトグラフィーに注入し、メインピークの保持時間の6倍までクロマトグラムを記録する。試料溶液のクロマトグラムにおいて不純物ピークがある場合、ピーク面積正規化方法に基づいて総不純物及び単一の不純物を計算する。
【0130】
製剤における結晶型の安定性
本発明の実施例3及び4において調製したカプセル及び錠剤のX線回折図を測定し、本発明の実施例1の方法Aにより調製されたダサチニブ多結晶体IのXRPD図において特徴的なピークと比較を行った。以下のように示す。
【0131】
【表24】

【0132】
前記対比表における対比結果のデータから、本発明のダサチニブ多結晶体Iは製剤プロセスによってカプセルまたは錠剤に調製された後、その結晶型がほぼ変わらないことが示された。
また、本発明の実施例3及び4において調製されたカプセル及び錠剤の類縁物質を測定し、本発明の実施例1の方法Aにより調製されたダサチニブ多結晶体Iの類縁物質と比較を行った。以下のように示す。
【0133】
【表25】

【0134】
前記対比表における対比結果のデータから、本発明のダサチニブ多結晶体Iは製剤プロセスにおいてカプセルまたは錠剤に調製された後は、安定で、類縁物質の顕著な変化はなかったことが示された。
【0135】
工業実用性
本発明はダサチニブの新型結晶体を提供し、さらにその調製方法、及び当該ダサチニブの新型多結晶体を含有する薬物組成物を提供する。本発明により提供されるダサチニブ多結晶体は理化性質が優れており且つ安定性がよく、工業的量産により適し、且つ長期的保管にも適し、製剤プロセス及び製剤の長期保管の要求をより満足できる。本発明により提供されるダサチニブ多結晶体の調製方法はプロセスが簡単で、操作が非常にしやすく、工業的量産時の操作が便利で、品質が制御しやすく且つ収率が安定である。また、本発明により提供される調製方法によって回転結晶時の有機溶剤の使用量が大幅に削減され、コストが下がった。また、毒性の低い3類有機溶剤類を選択して使用しダサチニブ多結晶体を調製することができるため、人体に対する残留有機溶媒による害毒の潜在的な影響をある程度緩和できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダサチニブ一水和物の多結晶体Iであって、Cu−Kα線を使用し、そのX線回折図は、強度で示される2θが9.1±0.2及び19.4±0.2に回折ピークを有する、ダサチニブ一水和物の多結晶体I。
【請求項2】
強度で示される2θはさらに11.1±0.2、13.7±0.2、15.1±0.2、17.8±0.2、23.0±0.2において1つまたは複数の回折ピークを有する、請求項1に記載の多結晶体I。
【請求項3】
そのDSC図は約100〜130℃の間において第1吸熱ピークを有し、284〜290℃の間において第2吸熱ピークを有する、請求項1または2に記載の多結晶体I。
【請求項4】
KBr打錠法によって測定した赤外吸収スペクトルは、その特徴として約3462.42cm−1、3210.67cm−1、3003.96cm−1、2954.14cm−1、2823.49cm−1、1682.15cm−1、1629.58cm−1、1612.25cm−1、1583.84cm−1、1305.47cm−1、1290.91cm−1、1000.19cm−1、1040.60cm−1において吸収ピークを有する、請求項1または2に記載の多結晶体I。
【請求項5】
その固体13C−NMRスペクトルの特徴シフト値が16.75±0.2ppm、24.92±0.2ppm、41.72±0.2ppm、43.23±0.2ppm、44.28±0.2ppm、54.01±0.2ppm、55.48±0.2ppm、57.53±0.2ppm、58.70±0.2ppm、62.23±0.2ppm、63.20±0.2ppm、84.66±0.2ppm、127.92±0.2ppm、128.81±0.2ppm、132.70±0.2ppm、137.68±0.2ppm、139.00±0.2ppm、157.17±0.2ppm、162.07±0.2ppm、163.54±0.2ppm、166.84±0.2ppm、167.58±0.2ppmである、請求項1または2に記載の多結晶体I。
【請求項6】
ダサチニブの多結晶体IIであって、Cu−Kα線を使用し、そのX線回折図は、強度で示される2θが5.7±0.2及び14.5±0.2において回折ピークを有する、ダサチニブの多結晶体II。
【請求項7】
Cu−Kα線を使用し、そのX線回折図は、強度で示される2θがさらに11.5±0.2、12.3±0.2、17.2±0.2、18.2±0.2、22.2±0.2、 22.6±0.2、24.7±0.2、25.2±0.2において1つまたは複数の回折ピックを有する、請求項6に記載の多結晶体II。
【請求項8】
そのDSC図は約160〜210℃の間において2つの吸熱ピークを有し、そのうち1つの吸熱ピークが約193℃において比較的大きな吸熱ピークを有し、280〜290℃の間において第3の吸熱ピーク、即ち最大な吸熱ピークを有する、請求項6または7に記載の多結晶体II。
【請求項9】
KBr打錠法によって測定した赤外吸収スペクトルは、その特徴として約3395.73cm−1、3201.34cm−1、3067.99cm−1、2925.57cm−1、2842.67cm−1、2822.19cm−1、1716.01cm−1、1619.56cm−1、1578.34cm−1、1537.01cm−1、1315.41cm−1、1293.55cm−1、1006.06cm−1、984.74cm−1、1056.29cm−1において吸収ピークを有する、請求項6または7に記載の多結晶体II。
【請求項10】
その固体13C−NMRスペクトルのシフト値が18.80±0.2ppm、26.22±0.2ppm、27.60±0.2ppm、30.99±0.2ppm、36.57±0.2ppm、43.62±0.2ppm、51.57±0.2ppm、52.50±0.2ppm、55.09±0.2ppm、56.98±0.2ppm、62.51±0.2ppm、83.08±0.2ppm、125.43±0.2ppm、126.61±0.2ppm、128.44±0.2ppm、129.33±0.2ppm、132.65±0.2ppm、139.50±0.2ppm、156.34±0.2ppm、 161.15±0.2ppm、162.96±0.2ppm、 164.68±0.2ppm、 165.47±0.2ppm、 203.49±0.2ppmである、請求項6または7に記載の多結晶体II。
【請求項11】
ダサチニブをジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドに加えるステップ(1)と、
撹拌下で加熱してそれを溶解させるステップ(2)と、
水と、ダサチニブが溶けないまたはやや溶ける1種または複数種の混合溶剤である有機溶媒との混合溶剤を滴下するステップ(3)と、
滴下を止め、保温後撹拌下で温度を徐々に0〜5℃まで下げて固体を完全に析出させ、且つ結晶を成長させるステップ(4)と、
ろ過して固体を収集し、且つ乾燥するステップ(5)とを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多結晶体Iの調製方法。
【請求項12】
ダサチニブを無水ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドに加え、撹拌加熱してそれを溶解させるステップ(1)、
ステップ(1)で得られた溶液を、無水の、ダサチニブが溶けないまたはやや溶ける1種または2種以上の混合溶剤である有機溶媒に加えるステップ(2)、
有機溶媒を、室温から有機溶媒の還流温度の間で、ダサチニブのジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシド溶液を徐々に揮発させるステップ(3)、
ろ過して固体を回収し、且つ乾燥するステップ(4)を含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載の多結晶体IIの調製方法。
【請求項13】
請求項1〜5、6〜10のいずれか1項に記載のダサチニブの多結晶体I及びIIのうちの1種または2種を含む薬物組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2013−518827(P2013−518827A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551475(P2012−551475)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国際出願番号】PCT/CN2011/000185
【国際公開番号】WO2011/095059
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512201568)南京▲か▼文迪許生物工程技術有限公司 (2)
【出願人】(512201579)
【Fターム(参考)】