説明

ダンパおよび携帯電子機器

【課題】厚み方向の寸法が増加することなく、構成が簡単で、かつ、常に同じ耐衝撃性を得ることができるダンパを提供する。
【解決手段】携帯電子機器を下から支える底壁を有するゴム製のダンパ20は、その底壁22に、底壁22の平面方向の変形張り出し部を受入れる受入部として作動する切欠き24が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はダンパおよび携帯電子機器に関し、特に、衝撃の吸収性に優れた、ダンパおよび携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクを搭載した携帯電子機器が知られている。ハードディスクは衝撃に弱い。特に落下時の衝撃に弱いため、その耐衝撃性を高めるための構成が、たとえば特開2006−153108号公報(特許文献1)に開示されている。図9は特許文献1に開示された携帯電子機器用のダンパを示す図である。
【0003】
図9を参照して、携帯電子機器100のダンパ101は、ハードディスク110とハードディスク支持体104との間に介在されて、ハードディスク110にかかる衝撃を吸収する。ダンパ101はコの字状のベース部を構成する第1の構成部材102と第1の構成部材102よりも低硬度の素材で作られた第2の構成部材103とを備えている。第2の構成部材103は第1の構成部材102のハードディスク支持体104と対向する面から略半球形状または錘形状に突出して頂部がハードディスク支持体104に接触するように構成されている。
【特許文献1】特開2006−153108号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の携帯電子機器のハードディスクを支持するダンパは上記のように構成されていた。従来のダンパは、たとえば、70cm程度の高さからの落下時の大きな衝撃力は、高硬度の第1の構成部材102によって受け、たとえば、30cm以下のような、低い高さからの落下時の小さな衝撃は、低硬度(やわらかいクッション性)の第2の構成部材103でその衝撃を吸収していた。
【0005】
従来のダンパにおいては、低硬度の第2の構成部材103は、第1の構成部材102の中に埋め込まれて複数設けられ、第1の構成部材102よりも突出させていたので、その分だけ、厚さ方向の寸法が増すという問題があった。また、それぞれが硬度の異なる2種類の構成部材を用いて、それらを組み合わせた複雑な構成を有しているため、コストが上がるという問題があった。さらに、複数の突起部を設けているため、突起部の高さにばらつきが生じ、常に同じ耐衝撃性を得ること困難であるという問題もあった。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、厚み方向の寸法が増加することなく、構成が簡単で、かつ、常に同じ耐衝撃性を得ることができる、携帯電子機器およびダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る、携帯電子機器を下から支える底壁を有する弾性体より成るダンパは、ダンパの底壁に、底壁の平面方向の変形張り出し部を受入れる受入部が設けられる。
【0008】
ダンパの底壁に、その平面方向の変形張り出し部を受入れる受入部を設けたため、小さい衝撃力は、衝撃による張り出し部が受入部で吸収されて、弾性体が低硬度に作用する。一方、大きい衝撃力がかかったときは、受入部で張り出し部どうしが当接し、弾性体の変形が押さえられて硬い弾性体として作用し、当接後はほとんど変形することなく大きな衝撃力を受ける。
【0009】
その結果、厚み方向の寸法が増加することなく、構成が簡単で、かつ、常に同じ耐衝撃性を得ることができるダンパを提供できる。
【0010】
なお、受入部は、切欠き、穴、凹部等であってもよい。
【0011】
また、弾性体はゴムであることが好ましい。
【0012】
さらに好ましくは、携帯電子機器は直方体であり、ダンパは携帯電子機器の4隅の下面を覆うように設けられる。
【0013】
さらに好ましくは、ダンパは、携帯電子機器の4隅の上面を覆うように設けられる。
【0014】
この発明の他の局面においては、携帯電子機器は、筐体と、筐体内に収納された弾性体から成るダンパと、ダンパによって保持されたハードディスクとを含む。ダンパの底壁には、底壁の平面方向の変形張り出し部を受入れる受入部が設けられる。
【0015】
好ましくは、弾性体はゴムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。図1はこの発明にかかる携帯電子機器の概略構成を示す平面図である。図1を参照して、携帯電子機器10は、筐体11と、筐体11内に収納された弾性体で形成された4つのダンパ20a〜20dと、4つのダンパ20a〜20dで4隅を保持されたハードディスク12とを含む。ここでは弾性体として、ゴムを使用した場合について説明する。
【0017】
図2は、図1に示した4つのダンパ20a〜20dのうちの1つのダンパ20aを取り出して、その上面側から見た斜視図であり、図3は図2に示したダンパ20aをその下面側から見た平面図であり、図4は、図2に示したダンパ20aを図1において、IV−IVで示す方向から見た図である。
【0018】
図2〜図4を参照して、ダンパ20aは、全体として三角柱状であり、上面21と、上面21に対向する下面となる底壁22a、22bと、上面21および底壁22a,22bとを縦方向に接続する隣接する壁部23a,23bとを含む。底壁は受入部として作動する切欠き24によって、2つの部分22a,22bに分かれている。上面21、底壁22a,22b、壁部23a,23bによってハードディスク12を挿入するための開口部26が形成されている。図に示すように、底壁22a,22bの方が、上面21よりも厚く形成されている。
【0019】
この実施の形態においては、受入部として作動する切欠き24が設けられているため、携帯電子機器12が落下して底壁22a,22bがその衝撃荷重を受けると、まず底壁22a,22bが図3および図4において矢印で示す平面方向に突出して変形張り出し部を形成し、互いの変形張り出し部が当接する。したがって、小さな衝撃であれば、そのときのゴムの変形はこの切欠き24で吸収される。一方で、衝撃が大きいときは、先端部が当接するため、それ以上の荷重は、ゴムが硬くなった状態で衝撃を受ける。
【0020】
図5は、通常のゴムと、この実施の形態に係るダンパ20aのようにゴムに切欠きを設けた場合の、荷重と変位との関係を示すグラフである。ここでは、理解の容易のために、30cmおよび70cmから携帯電子機器を落下させた場合の衝撃荷重をあわせて示している。図5を参照して、切欠きがなければ荷重が増えるに従って変位も曲線71に沿って、その限界まで増加する。これに対して、ゴムに切欠きを設けたダンパ20aにおいては、荷重の増加に応じて変位は曲線72のように変化する。すなわち、このように、切欠きを設けることにより、荷重の小さい範囲(たとえば、30cmから携帯電子機器を落下させた場合)においては、荷重が増加すると、切欠きがあるため、上記したように、その分容易に変形し、変位が大きくなる。一方、荷重の大きい範囲(たとえば、70cmから携帯電子機器を落下させた場合)においては、切欠き部分においてゴムが当接するため、荷重が増加しても、変位はほとんど増加しない。すなわち、図5において矢印で示すように、通常のゴムを用いながら、軽荷重(小さい衝撃値)においては、ゴムが柔らかいクッション性を有し、重荷重(大きな衝撃値)においては、硬いゴムとして作動するという特性を有するダンパを得ることができる。
【0021】
その結果、厚みを増すことなく、小さな衝撃荷重から大きな衝撃荷重までを受けることができる。また、簡単な構成でかつ単一の材質で形成されるため、安価である。
【0022】
次に、ダンパの他の実施の形態について説明する。図6は、他の実施の形態にかかる携帯電子機器の概略構成を示す平面図である。図6を参照して、携帯電子機器10aは、ハードディスク12と、ハードディスク12をその両側端部で保持するための、ゴムで形成された2つのダンパ30a、30bを含む。
【0023】
ダンパ30a,30bは、ハードディスク12を上下方向から支持する上面31および底壁32と、上面および底壁31,32を接続するための壁部33を含む。図に示すように、底壁32の方が、上面31よりも厚く形成されている。
【0024】
底壁32には受入部として作動する凹部34が形成されており、この凹部は、先の実施の形態における切欠き24と同様の作用を行う。
【0025】
次に、ダンパのさらに他の実施の形態について説明する。図7は、さらに他の実施の形態にかかる携帯電子機器を示す図である。図7(A)は携帯電子機器の底壁を示す平面図であり、図7(B)は、図7(A)において、矢印B-Bで示す部分の断面図である。図7(A)および(B)を参照して、携帯電子機器は、ハードディスク12と、ハードディスク12をその底壁の4隅で保持するための、ゴムで形成された4つのダンパ40a〜40dを含む。
【0026】
ダンパ40a〜40dは、ハードディスク12を下方向から支持する。ダンパ40a〜40dは、所定の厚みを有し、その中央部に突出部41、42に挟まれるように溝43が設けられる。この溝43は、先の実施の形態における切欠き24と同様の受入部として作動する。
【0027】
この実施の形態においては、ハードディスク12の底壁にのみダンパが設けられているが、このような構成でも、携帯電子機器がその底壁側から落下したときは、先の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0028】
次に、ダンパのさらに他の実施の形態について説明する。図8は、さらに他の実施の形態にかかるダンパを示す図であり、第1実施の形態における図3に対応する。図8に示すように、この実施の形態においては、ダンパの底壁に切欠きではなく、両端部が半円形でその両端部を直線で結んだ形状の開口部51が設けられている。この開口部51は受入部として作動する。なお、この開口部は、円形や楕円形であってもよい。
【0029】
なお、上記実施の形態においては、ダンパを構成する弾性体がゴムである場合について説明したが、これに限らず、弾性を有する樹脂であってもよいし、粘弾性体であってもよい。
【0030】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明に係るダンパおよび携帯電子機器は、厚み方向の寸法が増加することなく、構成が簡単で、かつ、常に同じ耐衝撃性を得ることができるため、ダンパおよび携帯電子機器として、有利に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施の形態に係る携帯電子機器の平面図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係るダンパの斜視図である。
【図3】この発明の一実施の形態に係るダンパの裏面図である。
【図4】図3においてIV-IVで示す部分の矢視図である。
【図5】通常のゴムとダンパとの荷重と変位との関係を示す図である。
【図6】この発明の他の実施の形態に係るダンパを示す図である。
【図7】この発明のさらに他の実施の形態に係るダンパを示す図である。
【図8】この発明のさらに他の実施の形態に係るダンパを示す図である。
【図9】従来の携帯電子機器用のダンパを示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 携帯電子機器、11 筐体、12 ハードディスク、20,30,40,50 ダンパ、21 上面、22 底壁、23 壁部、24 切欠き。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電子機器を下から支える底壁を有する弾性体より成るダンパであって、
前記ダンパの底壁に、前記底壁の平面方向の変形張り出し部を受入れる受入部が設けられる、ダンパ。
【請求項2】
前記受入部は、切欠き、穴、凹部を含む、請求項1に記載のダンパ。
【請求項3】
前記弾性体はゴムである、請求項1または2に記載のダンパ。
【請求項4】
前記携帯電子機器は直方体であり、前記ダンパは前記携帯電子機器の4隅の下面を覆うように設けられる、請求項1から3のいずれかに記載のダンパ。
【請求項5】
前記ダンパは、前記携帯電子機器の4隅の上面を覆うように設けられる、請求項4に記載のダンパ。
【請求項6】
筐体と、
前記筐体内に収納された弾性体より成るダンパと、
前記ダンパによって保持されたハードディスクとを含み、
前記ダンパの底壁には、前記底壁の平面方向の変形張り出し部を受入れる受入部が設けられる、携帯電子機器。
【請求項7】
前記弾性体はゴムである、請求項6に記載の携帯電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−95706(P2008−95706A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274315(P2006−274315)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】