説明

チエノピリミジン化合物類

式(I)の化合物はA2B 受容体 アンタゴニストであり:


ここで、R1は、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されている5-もしくは6-員のヘテロアリール環であり;R2およびR3は、水素、C1-C6アルキル、C3-C8 シクロアルキル、C3-C8 シクロアルキル-(C1-C6)-アルキル、その環部分において任意に置換されているアリール-(C1-C6)-アルキル、C1-C6 アルキレン鎖を介して任意に結合しかつその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式へテロ環式基、ベンズイミダゾール-2-イル-メチル、ピリド-3-イル-カルボニル、または(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-カルボニル-メチルから独立して選択され;あるいは、R2およびR3は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に置換されている5-もしくは6-員環を形成し;R4は、C1-C3アルキル、C2-C3アルケニル、−N(-R5)-R6、または任意に置換されているヘテロアリールメチルアミノであり;そしてR5およびR6は、水素またはC1-C3 アルキルから独立して選択され;あるいは、R5およびR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって任意に置換されている4-〜6-員の飽和環を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A2B受容体アンタゴニスト作用を有する新規なチエノピリミジン誘導体類、痛覚、喘息、COPD、炎症性疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症および癌のようなA2B受容体の拮抗作用に応答する疾患の治療に関する医薬におけるそのような化合物類の使用、およびそのような化合物類を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
アデノシンは天然に存在するプリンヌクレオシドであり、その効果は、求心性痛覚、気管支拡張、免疫抑制、血管拡張、血小板凝集阻害、心臓抑制および神経伝達物質放出抑制の刺激を含む。
【0003】
アデノシンは、G-蛋白質共役型受容体ファミリーのメンバーである特定細胞表面受容体の活性化により媒介される幅広い薬理効果を生じる。アデノシ受容体の4つのサブタイプが確認され、A1、A2A、A2BおよびA3と称された。
【0004】
A2Bアデノシン受容体サブタイプは、Gs G-蛋白質に結合し、アデニルシクラーゼ活性を刺激する。A2Bアデノシン受容体の分子薬理学および生理学の理解において顕著な進歩がなされたが、この受容体サブタイプに対する高い効力および選択的リガンドの欠如により、A2B受容体の病態生理学的役割についての多くの疑問が、いまだに解明されていない(Feoktistov and Biaggioni、Pharmacological Reviews (1997)、49(4)、381-402)。
【0005】
A2B 受容体は:
(i) 肥満細胞分泌の調節(Feoktistov and Biaggioni.、Journal of Clinical Investigation (1995)、96(4)、1979-86);
(ii) 疼痛(Abo-Salemら、Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics (2004)、308(1)、358-366.);
(iii) 炎症(Yangら、Journal of Clinical Investigation (2006)、116(7)、1913-1923);
【0006】
(iv) 癌(Zengら、Drug Development Research (2003)、58(4)、405-411);
(v) 糖尿病(Haradaら、Journal of Medicinal Chemistry (2001)、44(2)、170-179);
(vi) 遺伝子発現(Boyleら、Arthritis & Rheumatism (1996)、39(6)、923-930);
(vii) 細胞増殖(Dubeyら、Hypertension (1996)、27(3 Pt 2)、786-93 Hypertension (1996)、27(3 Pt 2)、786-93、Dubeyら、Hypertension (1998)、31(1 Pt 2)、516-21);
(viii) 腸機能(Murthyら、Journal of Neurochemistry (1995)、64(1)、77-84);
【0007】
(ix) 神経分泌(Mateoら、1995);
(x) 血管緊張(Haynesら、American Journal of Physiology (1995)、268(5、Pt. 2)、H1862-H1868);
(xi) 喘息 (Feoktistovら、Trends in pharmacological sciences (1998)、19(4)、148-153;Holgate、British Journal of Pharmacology (2005)、145(8)、1009-1015);
(xii) COPD (Van den Bergeら、Drugs in R&D (2007)、8(1)、13-23);
に関わる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、医薬品としての使用に適するようにする薬物動態学および薬理学的特性を有するA2B受容体の低分子量で選択的なアンタゴニストに対する医学的必要性が残っている。また、A2B受容体、A2B 受容体の選択的拮抗作用により媒介される疾患の新たな治療、特に痛覚、喘息、COPD、炎症性疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症および癌の治療に対する医学的必要性も残っている。本発明の目的は、そのような医薬品および治療を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定のチエノピリミジン誘導体類が、選択的A2Bアンタゴニストとして有効性を示すことを今ここに見出した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の簡単な説明
我々の同時継続中の国際特許出願第PCT/GB00/02517号は、アデノシンA2A受容体のアンタゴニストであるチエノ−およびフロ−ピリミジンの種類に関している。本発明は、PCT/GB00/02517の部類内の化合物の一部に関するが、そこには具体的には記載されていない。
【0011】
本発明は、例えば、痛覚、喘息、COPD、炎症性疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症および癌の治療のための選択的A2Bアンタゴニストとして有用な置換されているチエノピリミジン化合物類の種類に関している。チエノ部分にアミノ基による置換基を有し、ビリミジン部分に(ヘテロ)アリール-カルボニル基による置換基を有する、核であるチエノ-ピリジン二環式環は、本発明が関する化合物を本質的に特徴付ける特性である。
【0012】
本発明の詳細な発明
本発明によれば、式(I):
【化1】

[式中、
1は、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されている5-もしくは6-員のヘテロアリール環であり;
【0013】
2およびR3は、水素、C1-C6アルキル、C3-C8 シクロアルキル、C3-C8 シクロアルキル-(C1-C6)-アルキル、その環部分において任意に置換されているアリール-(C1-C6)-アルキル、C1-C6 アルキレン鎖を介して任意に結合しかつその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式へテロ環式基、ベンズイミダゾール-2-イル-メチル、ピリド-3-イル-カルボニル、または(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-カルボニル-メチルから独立して選択され;
【0014】
あるいは、R2およびR3は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に置換されている5-もしくは6-員環を形成し;
4は、C1-C3アルキル、C2-C3アルケニル、−N(-R5)-R6、または任意に置換されているヘテロアリールメチルアミノであり;そして
【0015】
5およびR6は、水素またはC1-C3 アルキルから独立して選択され;
あるいは、R5およびR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって任意に置換されている4-〜6-員の飽和環を形成する]
の化合物またはその医薬的に許容な塩、水和物もしくは溶媒和物が提供される。
【0016】
式(I)の活性化合物は、A2B受容体の選択的アンタゴニストであり、A2B受容体により媒介される障害の 治療、予防および抑制に有用である。そのような障害は、痛覚; 喘息; 慢性閉塞性肺疾患(COPD); リウマチ性関節炎、多発性硬化症、狼瘡、乾癬および炎症性腸疾患のような炎症性疾患;真性糖尿病または尿崩症; 糖尿病性網膜症および癌を含む。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、アデノシンA2B受容体により媒介される障害の治療用医薬品の製造における式(I)の化合物、またはその医薬的に許容な塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用が提供される。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容な塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグの有効量の、そのような治療を必要としている患者への投与を含む、A2B受容体により媒介される障害の治療方法が提供される。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容な塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグおよび医薬的に許容な担持体を含む医薬組成物が提供される。
【0020】
本明細書で用いられているように、aおよびbが整数である用語「(Ca-Cb)アルキル」は、炭素原子a〜bを有する直鎖または分枝鎖状アルキル基を指す。したがって、aが1でありbが6である場合、例えば、該用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシルを含む。
【0021】
本明細書で用いられているように、aおよびbが整数である用語「2価の(Ca-Cb)アルキレン基」は、炭素原子a〜bおよび2つの満たされていない原子価を有する飽和の炭化水素鎖を指す。
【0022】
本明細書で用いられているように、aおよびbが整数である用語「(Ca-Cb)アルケニル」は、当てはまる場合、EまたはZ立体化学のどちらかの少なくとも1つの二重結合を有し、炭素原子a〜bを有する直鎖または分枝鎖状のアルケニル部分を指す。該用語は、例えば、ビニル、アリル、1-および2-ブテニルならびに2-メチル-2-プロペニルを含む。
【0023】
本明細書で用いられているように、用語「2価の(Ca-Cb)アルケニレン基」は、炭素原子a〜b、少なくとも1つの二重結合および2つの満たされていない原子価を有する炭化水素鎖を指す。
【0024】
本明細書で用いられているように、用語「シクロアルキル」は、炭素原子3-8を有する飽和の炭素環式基を指し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含む。
【0025】
本明細書で用いられているように、用語「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含み炭素原子3-8を有する炭素環式基を指し、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルを含む。
【0026】
本明細書で用いられているように、用語「炭素環式」は、環原子が全て炭素である単環式または二環式基を指し、単環式アリール、シクロアルキルおよびシクロアルケニル基を含むが、但し、8員環以上を有する単環は存在しない。「炭素環式」基は、単架橋しているか、または複架橋している環状アルキル基を含む。
【0027】
本明細書で用いられているように、用語「アリール」は、単環式、2環式または3環式炭素環式芳香族基を指す。そのような基の例は、フェニル、ビフェニルおよびナフチルである。
【0028】
本明細書で用いられているように、用語「ヘテロアリール」は、S、NおよびOから選択される1以上のヘテロ原子を含む単環式、2環式または3環式芳香族基を指す。そのような基の例は、チエニル、ベンズチエニル、フリル、ベンズフリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンズチアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、ベンズトリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリルおよびインダゾリルである。
【0029】
本明細書で用いられているように、非限定的な用語「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」または「ヘテロ環式」は、上記で定義したとおりの「ヘテロアリール」を含み、特に、S、NおよびOから選択される1以上のヘテロ原子を含む単環式、2環式または3環式非芳香族基;もう1つのそのような基または単環式炭素環式基に共有結合しているそのようなヘテロ原子を1以上含む単環式非芳香族基からなる基;およびS、NおよびOから選択される1以上のヘテロ原子を含み、単架橋しているか、または複架橋している単環式、2環式または3環式非芳香族基を指す。
【0030】
そのような基の例は、ピロリル、フラニル、チエニル、ピペリジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピロリジニル、ピリミジニル、モルホリニル、ピペラジニル、インドリル、モルホリニル、ベンズフラニル、ピラニル、イソオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、マレイミドおよびスクシンイミド基である。
【0031】
それが現れる文脈において他に特に規定がない限り、本明細書中のいずれかの部分で適用されている用語「置換されている」は、例えば(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、メルカプト、メルカプト(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオ、(フッ素および塩素を含む)ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、二トリル (-CN)、オキソ、フェニル、−COOH、−COORA、−CORA、−SO2RA
【0032】
−CONH2、−SO2NH2、−CONHRA、−SO2NHRA、−CONRARB、−SO2NRARB、−NH2、−NHRA、−NRARB、-OCONH2、-OCONHRA 、-OCONRARB、−NHCORA、−NHCOORA、−NRBCOORA、−NHSO2ORA、−NRBSO2ORA、−NHCONH2、−NRACONH2、−NHCONHRB、−NRACONHRB、−NHCONRARBまたは-NRACONRARB(ここで、RAおよびRB は、独立して(C1-C6)アルキル基であるか、またはRAおよびRBが同一の窒素に結合している場合には、モルホリニル、ピペリジニルまたはピペラジニル環のような環状アミノ環を形成できる)から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていることを意味する。「任意の置換基」または「置換基」は、前記の置換基の1つであり得る。
【0033】
本明細書で用いられているように、用語「塩」は、塩基添加塩、酸添加塩および第4級塩を含む。酸性である本発明の化合物類は塩類を形成でき、水酸化アルカリ金属類、例えば、水酸化ナトリウムおよびカリウム;水酸化アルカリ土類金属類、例えば、水酸化カルシウム、バリウムおよびマグネシウムのような塩基との;例えばN-エチルピペリジン、ジベンジルアミンなどの有機塩基との、医薬的または獣医薬的に許容な塩を含む。塩基であるそれらの化合物(I)は塩を形成でき、例えば塩化水素または臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸またはリン酸などの無機酸と、および例えば酢酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸などの有機酸との、医薬的または獣医薬的に許容な塩を含む。
【0034】
好適な塩についてのレビューは、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties、Selection、and Use by Stahl and Wermuth (Wiley-VCH、Weinheim、Germany、2002)を参照されたい。
【0035】
用語「溶媒和物」は、本発明の例えばエタノールのような、1以上の医薬的に許容な溶媒分子の化学量論量を含む分子複合体を説明するために、本明細書中で用いられている。用語「水和物」は、該溶媒が水の場合に用いられる。
【0036】
本発明の化合物は、不斉原子または回転制限の存在のために、1以上の立体異性体で存在し得、各キラル中心におけるRもしくはS立体化学を有するいくつかの立体異性体としてか、または各キラル軸におけるRもしくはS立体化学を有するアトロプ異性体として存在し得る。本発明は、全てのそのような光学異性体およびジアステレオ異性体ならびにそれらの混合物を含む。
【0037】
式(I)の化合物のいわゆる「プロドラッグ」はまた、本発明の範囲内でもある。したがって、それ自身が僅かな薬理活性を有し得るか、または薬理活性を有し得ない式(I)の化合物類の特定の誘導体類は、体内または体表面に投与された場合に、例えば加水分解により、所望の活性を有する式(I)の化合物に変換され得る。そのような誘導体類は、「プロドラッグ類」と称される。プロドラッグの使用に対するさらなるインフォメーションは、Pro-drugs as Novel Delivery Systems、Vol. 14、ACS Symposium Series (T. HiguchiおよびW. Stella)およびBioreversible Carriers in Drug Design、Pergamon Press、1987 (E. B. Roche編、American Pharmaceutical Association)に見出され得る。
【0038】
本発明によるプロドラッグ類は、例えば、式(I)の化合物類に存在する好適な官能性を、例えばDesign of Prodrugs by H. Bundgaard (Elsevier、1985)に記載されているように「前駆部分」として当業者に公知の特定の部分で置き換えることにより製造され得る。
また、式(I)の化合物類の代謝物、すなわち、該薬物の投与に対してインビボで形成された化合物類も本発明の範囲内に含まれる。
【0039】
代謝物のいくつかの例は:
(i) 式(I)の化合物が、メチル基、そのヒドロキシメチル誘導体(-CH3 -> -CH2OH)を含むもの;
(ii) 式(I)の化合物が、アルコキシ基、そのヒドロキシ誘導体(-OR -> -OH)を含むもの;
(iii) 式(I)の化合物が、第3級アミノ基、その第2級アミノ誘導体(-NR1R2 -> -NHR1もしくは-NHR2)を含むもの;
【0040】
(iv) 式(I)の化合物が、第2級アミノ基、その第1級誘導体(-NHR1 -> -NH2)を含むもの;
(v) 式(I)の化合物が、フェニル部分、そのフェノール誘導体(-Ph -> -PhOH)を含むもの;および
(vi) 式(I)の化合物が、アミド基、そのカルボン酸誘導体(-CONH2 -> COOH)を含むもの
を含む。
【0041】
化合物(I)に存在する変わりやすい基は、ここでさらに定義される。いずれかに記載されている置換基または置換基の種類は、その他の記載されている置換基の種類とのどんな組み合わせにおいても存在し得るものと推定される。
【0042】
基R1
本発明による化合物類において、R1は、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されている5-または6-員のヘテロアリール環である。
【0043】
本発明が関する化合物類の1つのサブクラスにおいて、R1は、任意に置換されているフェニルである。置換されているとき、該フェニル環は、好ましくはメチル、メトキシ、フッ素、塩素、またはシアノから選択される1つの置換基を有する。
【0044】
本発明が関する化合物類のその他のサブクラスにおいて、R1は、任意に置換されている5-または6-員のヘテロアリール環である。そのようなケ−スにおいて、ヘテロアリール環は、例えばフラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾールまたはピリジンであり得る。好ましい置換基は、メチル、エチル、塩素またはシュウ素を含む。
今のところ、R1は、任意に置換されているチエニル、特に、チエン-2-イルであることが好ましい。
【0045】
基−N(R2)-R3
本発明による化合物類において、R2およびR3は、水素、C1-C6アルキル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルキル-(C1-C6)-アルキル、その環部分において任意に置換されているアリール-(C1-C6)-アルキル、C1-C6アルキレン鎖を介して任意に結合し、かつその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式へテロ環式基、ベンズイミダゾール-2-イル-メチル、ピリド-3-イル-カルボニル、または(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-カルボニル-メチルから独立して選択される。
【0046】
本発明が関する化合物類の1つのサブクラスにおいて、R2は水素であり、そしてR3は、C1-C6アルキレン鎖を介して任意に結合し、かつその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式へテロ環式基である。そのようなケ−スにおいてヘテロ環式環は、例えばピラン、ピペリジン、モルホリン、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジンまたはテトラゾールであり得る。存在する場合には、C1-C6アルキレン鎖にとってはメチレンまたはエチレンが好ましい。
【0047】
本発明が関する化合物類のその他のサブクラスにおいて、R2は水素であり、そしてR3は、その環部分において任意に置換されているアリール-(C1-C6)-アルキルである。アリールにとってはフェニルが好ましく、置換されている場合には、該フェニル環は、好ましくはメチル、エチル、メトキシまたは塩素から選択される1つの置換基を有する。C1-C6アルキルにとっては、メチルまたはエチルが好ましい。
【0048】
本発明が関する化合物類のさらなるサブクラスにおいて、R2およびR3は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に置換されている5-もしくは6-員環を形成する。
今のところ、R2は水素であり、そしてR3はピリド-3-イルメチルであるのが好ましい。
【0049】
基R4
本発明による化合物類において、R4は、C1-C3アルキル、C2-C3アルケニル、−N(-R5)-R6または任意に置換されているヘテロアリールメチルアミノである。
【0050】
本発明が関する化合物類の1つのサブクラスにおいて、R4は、C1-C3アルキル、好ましくはエチルである。
本発明が関する化合物類のその他のサブクラスにおいて、R4は、C2-C3アルケニル、好ましくはエテニルである。
【0051】
本発明が関する化合物類のさらなるサブクラスにおいて、R4は、任意に置換されているヘテロアリールメチルアミノである。そのようなケ−スにおいて、ヘテロアリールは5-もしくは6-員の 単環式ヘテロアリール環を表し、ピリジルが好ましく、特にピリド-3-イルが好ましい。
【0052】
本発明が関する化合物類のさらにもう1つのサブクラスにおいて、R4は、アミノ、モノ-(C1-C3-アルキル)アミノまたはジ-(C1-C3-アルキル)アミノである。
【0053】
本発明が関する化合物類のさらなるサブクラスにおいて、R4は、−N(-R5)-R6(ここで、R5およびR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になってを、任意に置換されている4-〜6-員の飽和環形成している)である。そのようなケ−スにおいて、−N(-R5)-R6はアゼチジン-1-イル、ピロリジン-1-イルおよびピペリジン-1-イルを含み、アゼチジン-1-イルおよびピロリジン-1-イルが好ましく、特に、アゼチジン-1-イルが好ましい。
【0054】
今のところ、R4は、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、エチル、エテニルまたはピリド-3-イルメチルアミノである。
特に、R4が、アミノまたはメチルアミノであるものが好ましい。
【0055】
本発明が関する特定の化合物類は、実施例のものを含む。
本発明は、ヒトまたは動物の被験者、より好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトである患者に使用され得る。
【0056】
本明細書で用いられているように、本明細書で用いられている用語「治療」は予防的治療を含む。
式(I)の化合物は、上記の障害の治療に有益な1以上の追加的な薬物との組み合わせで用いることができ、該成分は、同時または逐次投与用の同一製剤または分離製剤中に在る。
【0057】
任意の特定の患者についての具体的な用量レベルが、用いられる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食餌、投与の時間、投与経路、排出経路、薬物の組み合わせ及び原因の機構並びに療法を受ける特定の疾患の重篤度を含む様々な因子に依存することが理解されるだろう。一般に、経口投与可能な製剤の適切な用量は、通常、0.1〜3000 mgの範囲で、1日あたりに1、2もしくは3回、または注入もしくはその他の経路により投与される等価な1日量であろう。しかし、最適な用量レベル及び投与頻度は、当該技術において通常行われているように、臨床試験により決定される。
【0058】
本発明が関係する化合物は、その薬物動態学的特性に矛盾しない任意の経路による投与のために製造できる。経口投与可能な組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ロゼンジ、液剤もしくはゲル製剤、例えば経口、局所または滅菌の非経口液剤もしくは懸濁剤であり得る。経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、単位用量剤形であり得、通常の賦形剤、例えば結合剤、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントまたはポリビニルピロリドン;充填剤、例えばラクトース、糖類、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン;打錠滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ;崩壊剤、例えばバレイショデンプン、または許容される湿潤剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムを含有し得る。
【0059】
錠剤は、通常の製薬のプラクティスにおいて公知の方法に従って被覆されて得る。経口液剤は、例えば、水性もしくは油性の懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップまたはエリキシルの形であり得るか、或いは水もしくはその他の適切な媒体で使用前に再構成するための乾燥製品であり得る。このような液剤は、通常の添加剤、例えば懸濁化剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン水素添加食用油脂;乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアカシア;非水性媒体(食用油を含み得る)、例えばアーモンド油、ヤシ油、油状エステル、例えばグリセリン、プロピレングリコールまたはエチルアルコール;防腐剤、例えばメチルもしくはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸、並びに所望により通常の香料または着色料を含み得る。
【0060】
皮膚への局所的な塗布のために、薬物は、クリーム、ローションまたは軟膏剤として製造できる。薬物に使用し得るクリームまたは軟膏の製剤は、例えば英国薬局方のような製薬の標準的な参考書に記載されるような当該技術において公知の通常の製剤である。
【0061】
有効成分は、滅菌媒体中で非経口的に投与することもできる。媒体及び用いられる濃度に応じて、薬物は、媒体中に懸濁または溶解され得る。有利には、局所麻酔薬のようなアジュバント、防腐剤及び緩衝剤を媒体中に溶解させ得る。
【0062】
本発明が関する化合物(I)の合成のために多数の合成戦略があるが、しかし全てが、合成有機化学者に知られている公知の化学に頼る。したがって、式(I)による化合物類は、標準的な文献に記載され、かつ当業者に周知の方法に従って合成され得る。典型的な文献出典は、"Advanced organic chemistry"、第4版(Wiley)、J March、"Comprehensive Organic Transformation"、第2版(Wiley)、R.C. Larock、"Handbook of Heterocyclic Chemistry"、第2版(Pergamon)、A.R. Katritzky、"Synthesis"、"Acc. Chem. Res."および"Chem. Rev"に見られるような総説であり、あるいはオンラインの標準的な文献検索により、または"Chemical Abstracts"もしくは"Beilstein"のような2次的な出典から明らかにされる1次的な文献出典である。そのような文献の方法は、本明細書中の製造実施例のものおよびそれらに類似の方法を含む。
【0063】
スキーム1は、一般に有機化学の当業者に公知の方法を表し、それにより本発明の化合物類が製造され得る。
スキーム1
【0064】
【化2】

【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明の具体的な化合物類の製造を説明するが、本発明の全範囲を限定することを意図しない。
実施例1〜5は、スキーム1に記載の方法に関する。
【0066】
製造実施例 1
1H-チエノ[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジオン
メチル-3-アミノチオフェン-2-カルボキシレート(76g、480mmol)および尿素 (189g、3140mmol)の固体混合物を、撹拌しながら180℃に5時間加熱した。この混合物を90 ℃に冷却し、水(1000ml)を加えた。室温で16時間撹拌後、クリーム色した固体をろ過し、更に水で2回洗浄した。この固体を真空中40℃で乾燥し、標記化合物を94%収率、>95%純度で得た。LC-MS m/z=169.0 [M+H]+;RT=1.29分;LC-MS 方法 2。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 6.90 (1H、d、J 5.5Hz)、8.04 (1H、d、J 5.5Hz)、11.10-11.80 (2H、b)。
【0067】
製造実施例 2
6-ニトロ-1H-チエノ[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジオン
濃硫酸(98%、270ml)および発煙硝酸(270ml)の0 ℃での撹拌混合物を、実施例 1 (90g、530mmol)の化合物で少しずつ処理した。完全に溶解してから室温で更に20 分間撹拌を継続した。この溶液を、激しく撹拌した氷/水 (2000ml)にゆっくり添加した。室温で30分間撹拌後、黄色固体をろ過し、水洗し、真空中40 ℃で乾燥し、標記化合物を、61%収率、>95% 純度で得た。LC-MS m/z=251.0 [M+H]+;RT=2.92;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 7.66 (1H、s)、11.71 (1H、b)、11.79 (1H、b)。
【0068】
製造実施例 3
2,4,6-トリクロロ-チエノ[3,2-d]ピリミジン
二塩化フェニルホスホン酸(320ml、2310mmol)中の実施例 2 の化合物(70g、330mmol) の懸濁液を撹拌しながら180 ℃に4時間加熱した。この混合物を、100 ℃に冷却して激しく撹拌した氷/水 (2500ml)にゆっくり移した。2時間室温で撹拌後、黄褐色固体をろ過し、真空中40 ℃で乾燥した。この固体を最少量のテトラヒドロフランに溶解し、酢酸エチルを溶離剤として用いてシリカの短い詰め物を通した。このろ液を真空中で濃縮し、残渣をイソ−ヘキサン:酢酸エチル(10:1)から再結晶し、標記化合物を45%収率、>95%純度で得た。LC-MS m/z=239.0 [M+H]+;RT=3.39分;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 7.94 (1H、s)
【0069】
製造実施例 4
(2,6-ジクロロ-チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-チオフェン- 2-イル-メタン-オン
テトラヒドロフラン (200ml) Aの撹拌溶液中の実施例 3 の化合物(6.86g、29mmol)を、ヨウ化ジメチルイミダゾリウム (2.13g、9.6mmol)、チオフェン-2-カルボアルデヒド(carbaldehyde) (3.19ml、35mmol)および水素化ナトリウム(1.51g、38mmol)で処理した。この混合物を最初に室温で25分間撹拌し、次いで撹拌しならが、70 ℃に3時間加熱した。この反応混合物を室温に冷却し、真空中で濃縮した。残渣を水とジクロロメタンとの間で分配した。有機画分を分離し、乾燥硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した。メタノールで磨砕し、標記化合物を72%収率、95%純度で得た。LC-MS m/z=279.1 [M+H]+;RT=3.77分;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 7.40-7.42 (1H、m)、7.95 (1H、s)、8.31 (1H、d、J 4.5Hz)、8.61 (1H、d、J 4.5Hz)。
【0070】
製造実施例 5
[6-クロロ-2-[(ピリジン-3-イルメチル)-アミノ]-チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル ]-チオフェン-2-イル-メタノン
n-ブタノール(120ml)中の実施例 4 の化合物(5g、16mmol)の撹拌溶液を3-ピコリルアミン(8.1ml、80mmol)で処理し、100 ℃に2時間加熱した。この反応混合物を室温に冷却して真空中で濃縮し、残渣をシリカゲル(100g)カラムクロマトグラフィー(3% MeOH/DCM)により精製し、標記化合物を38%収率、>95% 純度で得た。LC-MS m/z=387.0 [M+H]+;RT=3.30分;LC-MS 方法1。
1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 4.73 (2H、b)、7.31-7.36 (2H、m)、7.47 (1H、s)、7.80 (1H、d、J 6.0Hz)、8.20-8.28 (2H、m)、8.44 (1H、d、J 6.0Hz)、8.64 (1H、bd)。
【0071】
実施例 6
[6-メチルアミノ-2-[(ピリジン-3-イルメチル)-アミノ]-チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル ]-チオフェン-2-イル-メタノン
【化3】

ジメチルアセトアミド(10ml)中の 実施例 5 の化合物(0.4g、1mmol)の撹拌溶液をメチルアミン(MeOH中2.0M、4.96 ml、10mmol)で処理した。この溶液をシールドチューブ中で150 ℃に1時間加熱した。この溶液を室温に冷却し、撹拌した氷水(100ml)にゆっくり注いだ。15分間撹拌後、薄いオレンジ色の固体をろ過した。熱酢酸エチルからの再結晶で58%収率、>95% 純度の標記化合物を生じた。LC-MS m/z=382.0 [M+H]+;RT=2.73;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 2.89 (3H、d、J 5.0Hz)、4.67 (2H、d、J 6.0Hz)、5.81 (1H、s)、7.23 (1H、t、J 4.5Hz)、7.77 (1H、d、J 8.0Hz)、7.96 (1H、b)、8.09 (1H、d、J 5.0Hz)、8.41 (1H、d、J 5.0Hz)、8.36-8.50 (1H、b)、8.61 (1H、bd)。
【0072】
実施例 7
[6-ジメチルアミノ-2-[(ピリジン-3-イルメチル)-アミノ]-チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル ]-チオフェン-2-イル-メタノン
【化4】

ジメチルアセトアミド (1.5ml)中の実施例 5 の化合物(0.02g、0.052mmol)の撹拌溶液をジメチルアミン(THF中2.0M、0.52mmol)で処理した。この溶液を、マイクロ波反応器中で170 ℃に30分間加熱した。冷却した溶液撹拌した氷水(20ml)に注いだ。15分間撹拌後、オレンジ色固体をろ過した。熱酢酸エチルからの再結晶で42%収率、>95% 純度の標記化合物を生じた。LC-MS m/z=396.0 [M+H]+;RT=2.97;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 3.13 (6H、s)、4.68 (2H、bd)、5.91 (1H、s)、7.26-8.61 (8H、m)。
【0073】
実施例 8
[6-エチルアミノ-2-[(ピリジン-3-イルメチル)-アミノ]-チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル ]-チオフェン-2-イル-メタノン
【化5】

ジメチルアセトアミド(1.5ml)中の実施例 5 の化合物(0.025g、0.065mmol)の撹拌溶液をエチルアミン(THF中2.0M、0.65mmol)で処理した。この溶液をマイクロ波反応器で170 ℃に30分間加熱した。冷却した溶液をHCl水溶液(2.5M、 25ml) に注いだ。水溶液を酢酸エチル(50ml)で洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液(5M)を用いて塩基性(pH 9)にした。標記化合物をオレンジ色固体としてろ過した。40%収率、>90%純度。LC-MS m/z=396.0 [M+H]+;RT=2.78;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 1.21 (3H、t、J 7.0Hz)、3.22-3.33 (2H、m)、4.68 (2H、bd)、5.82 (1H、s)、7.23-8.63 (11H、m)。
【0074】
実施例 9
[6-アミノ-2-[(ピリジン-3-イルメチル)-アミノ]-チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル ]-チオフェン-2-イル-メタノン
【化6】

ジメチルアセトアミド (2ml)中の実施例 5 の化合物(0.055g、0.143mmol)の撹拌溶液を3,4-ジメトキシベンジルアミン(0.22ml、1.43mmol)で処理した。この溶液をマイクロ波反応器中で170 ℃に30分間加熱した。冷却した溶液をを真空中で濃縮し、純粋なトリフルオロ酢酸(3ml)中に採取した。この混合物を70 ℃で48時間撹拌し、冷却し、真空中で濃縮した。残渣を酢酸エチル(25ml)中に採取し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(15ml)で洗浄して乾燥硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した。シリカゲル(10g)カラムクロマトグラフィー(10% MeOH/EtOAc)で9%収率、>95%純度のオレンジ色固体として標記化合物を得た。LC-MS m/z=368.0 [M+H]+;RT=2.58;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 4.67 (2H、bd)、5.81 (1H、s)、7.23-7.25 (1H、m)、7.33-7.36 (1H、m)、7.51 (2H、b)、7.79 (1H、bd)、8.09 (1H、bd)、8.38-8.62 (4H、bm)
【0075】
実施例 10
[2-[(ピリジン-3-イルメチル)-アミノ]-6-ビニル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル ]-チオフェン-2-イル-メタノン
【化7】

テトラヒドロフラン (3ml)中の実施例 5 の化合物(0.05g、0.13mmol)の撹拌溶液を室温で、トリス[ジ(ベンジリデン)アセトン]パラジウム (0) (0.006g、0.0065mmol)、トリ-tert-ブチルホスフィン (0.01ml、0.04mmol)、トリブチルビニルスズ(0.06ml、0.0.195mmol)および炭酸セシウム(0.046g、0.14mmol)で処理した。この混合物をマイクロ波反応器中で140 ℃に20分間加熱した。冷却した反応混合物をHCl水溶液 (2.5M、25ml)に注ぎ、酢酸エチルで洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液 (5M)を用いて塩基性(pH9)にした。水相を酢酸エチルで抽出(2×30ml)した。抽出物を合わせ乾燥硫酸ナトリウムで乾燥して真空中で濃縮した。
【0076】
シリカゲル(10g)カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で、51%収率、>95% 純度の黄色固体として標記化合物を得た。LC-MS m/z=379.0 [M+H]+;RT=3.15;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 4.73 (2H、b)、5.57 (1H、d、J 10.5Hz)、6.00 (1H、d、J 17.5Hz)、7.06-7.14 (1H、m)、7.29-7.35 (3H、m)、7.79 (1H、d、J 8.0Hz)、8.11-8.19 (2H、m)、8.43 (1H、d、J 4.5Hz)、8.64 (1H、bd)、8.43-8.64 (1H、b)
【0077】
実施例 11
[6-エチル-2-[(ピリジン-3-イルメチル)-アミノ]-チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル ]-チオフェン-2-イル-メタノン
【化8】

エタノール (5ml)中の実施例 10 の化合物(0.025g、0.066mmol)の撹拌溶液をパラジウム/活性炭(10%、0.0025g)およびHCl (MeOH中1.25M、0.19mmol)で処理した。フラスコを完全に排気し、水素ガス1気圧で置換した。この混合物を水素下、室温で終夜撹拌し、排気してセライトろ過した。このろ液を真空中で濃縮し、70%収率、>95% 純度の黄色固体として標記化合物を得た。LC-MS m/z=381.0 [M+H]+;RT=3.19;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 1.33 (3H、t、J 7.5Hz)、2.95 (2H、q、J 7.5Hz)、4.71 (2H、b)、7.08 (1H、s)、7.28-7.35 (2H、m)、7.78 (1H、d、J 8.0Hz)、8.06 (1H、bt)、8.17 (1H、d、J 4.5Hz)、8.43 (1H、d、J 4.5Hz)、8.63 (1H、bd)、8.40-8.65 (1H、b)。
【0078】
実施例 12
[6-(3-ピコリルアミノ)-2-[(ピリジン-3-イルメチル)-アミノ]-チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル ]-チオフェン-2-イル-メタノン
【化9】

ジメチルアセトアミド (1.5ml)中の実施例 5 の化合物(0.02g、0.052mmol)の撹拌溶液を3-ピコリルアミン(0.105ml、1.04mmol)で処理した。この溶液をマイクロ波反応器中170 ℃に30分間加熱した。冷却した溶液をHCl水溶液(2.5M、25ml)に注いだ。水溶液を酢酸エチル(50ml)で洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液 (5M)で塩基性にした(pH 9)。標記化合物をろ過し、オレンジ色固体として59%収率、>95% 純度で得た。LC-MS m/z=459.0 [M+H]+;RT=2.67;LC-MS 方法1。1H NMR:δH (400MHz、D6-DMSO) 4.51 (2H、d、J 5.5Hz)、4.66 (2H、bd)、5.93 (1H、s)、7.23-7.41 (3H、m)、7.55 (1H、bt)、7.75-7.81 (2H、m)、8.10 (1H、d、J 5.0Hz)、8.40-8.63 (6H、m)。
【0079】
基本手順
商業的供給源から入手した全ての試薬は、さらに精製せずに用いた。無水溶媒は商業的供給源から入手し、さらに乾燥せずに用いた。フラッシュクロマトグラフィーは、プレ-パックシリカゲルカートリッジ(Strata Si-1; 61Å、Phenomenex、Cheshire UKまたはIST Flash II、54Å、Argonaut、Hengoed、UK)を用いて行なった。薄層クロマトグラフィーは、Merck Type 60 F254 シリカゲルで被覆された5×10 cmのプレートを用いて行なった。マイクロ波加熱は、Biotage Initiator (商標) 2.0 装置を用いて行った。
【0080】
本発明の化合物類は、以下の方法を用いる液体クロマトグラフィー−質量スペクトル(LC-MS)法により特徴付けた。
LC-MS 方法1
装置: Waters 2695ポンプおよび2700サンプルマネージャー
Waters ZQ2000、M/zは100〜900 amuを範囲とする
カラム: Gemini 5μm、C18 110A、30 mm×2mm、Phenomenex製。
Pt no 00A-4435-B0
【0081】
温度: 室温
移動層: A − 水 + 10 mMol / ギ酸アンモニウム + 0.04% (v/v) ギ酸 約pH3.5
B − 100%アセトニトリル + 0.04% (v/v) ギ酸
注入量: 10μL
濃度勾配:
【0082】
【表1】

検出: 220〜400nmのUV検出 (1:3 にMSをUVに分離)
【0083】
LC-MS 方法 2
装置: Waters 2695ポンプおよび2700サンプルマネージャー
Waters ZQ2000、M/zは100〜900 amuを範囲とする
カラム: Gemini 5μm、C18 110A、30 mm×2mm、Phenomenex製。
Pt no 00A-4435-B0
【0084】
温度: 室温
移動層: A − 水 + 10 mMol / ギ酸アンモニウム + 0.04% (v/v) ギ酸 約pH3.5
B − 100%アセトニトリル + 0.04% (v/v) ギ酸
注入量: 5μL
濃度勾配:
【0085】
【表2】

検出: UV 検出 220〜400nm
【0086】
核磁気共鳴(NMR)分析は、Brucker DPX-400 MHz NMRスペクトロメータを用いて行ない、そしてプロトンNMRスペクトルは400 MHzで測定した。スペクトルの基準は、溶媒の既知のケミカルシフトであった。プロトンNMRデータは次のとおり報告される:ppmでのケミカルシフト(δ)、次いで積分が続き、多重度(ここで、s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、p=ペンテット、 m=マルチプレット、dd= ダブルダブレット、br=ブロード)、および最も近くて0.1 Hzに端数を切り上げたカップリング定数。
【0087】
本発明のいくつかの化合物は、分取(preparative)HPLCにより精製された。分取HPLC精製は、UVダイオード アレイ検出(210〜400 nm)および質量-指向の回収を用いて20 mL 分-1 の流速で稼動する、PhenomenexからのGemini(登録商標) 5μM C18(2)、100 mm × 20 mm i.d. カラムを有するWaters FractionLynx MS Autopurificationシステムで行なわれた。各化合物に用いられた勾配は、表1に示される。
【0088】
pH 4で:溶媒A=HPLCグレード水中の10mM酢酸アンモニウム+0.08% v/vギ酸。
溶媒B=95% v/v HPLCグレードアセトニトリル+5% v/v溶媒A+0.08% v/vギ酸。
【0089】
pH 9で:溶媒A=HPLCグレード水中の10 mM酢酸アンモニウム+0.08% v/vアンモニア溶液。
溶媒B=95% v/v HPLCグレードアセトニトリル+5% v/v溶媒A+0.08% v/vアンモニア溶液。
【0090】
質量スペクトロメータは、150〜1000の分子量スキャン範囲で、ポジティブまたはネガティブイオン電子スプレーイオン化モードで稼動するWaters Micromass ZQ2000スペクトロメータであった。
【0091】
テーブル 1 分取HPLC濃度勾配
【表3】

IUPAC化学名は、AutoNom Standardを用いて作成した。
【0092】
アッセイの説明
アデノシン-レセプター発現細胞におけるカルシウム流出を測定するための蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)の使用は確立した技術である。このアッセイにおいて、カルシウム流出は、受容体活性化により引き起こされ、取り込まれたカルシウム-高感度染料の蛍光を通して測定される。示された有効性は、哺乳類の細胞株において発現されたヒトアデノシン A2B受容体を用いて測定された。選択性の値は、ヒトアデノシンA1、A2AおよびA3受容体を発現する哺乳類の細胞株を用いることにより得られた。化合物の潜在能力は用量-応答効果から測定され、IC50値として報告される。
【0093】
全ての実施例は上記の機能アッセイにおいて活性について試験された。その結果の各実施例についての実験データを以下のテーブル 2に記す。
全ての実施例は、A2A 受容体に対するA2B 受容体の結合についての予想外の選択性を証明する。実施例のこの結合親和性は、A2A 受容体に対してA2B 受容体について12〜198倍も高い大きさであり、同時にA1およびA3 サブタイプについての選択性もまた維持している。
【0094】
テーブル 2
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
1は、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されている5-もしくは6-員のヘテロアリール環であり;
2およびR3は、水素、C1-C6アルキル、C3-C8 シクロアルキル、C3-C8 シクロアルキル-(C1-C6)-アルキル、その環部分において任意に置換されているアリール-(C1-C6)-アルキル、C1-C6 アルキレン鎖を介して任意に結合しかつその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式へテロ環式基、ベンズイミダゾール-2-イル-メチル、ピリド-3-イル-カルボニル、または(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-カルボニル-メチルから独立して選択され;
あるいは、R2およびR3は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に置換されている5-もしくは6-員環を形成し;
4は、C1-C3アルキル、C2-C3アルケニル、−N(-R5)-R6、または任意に置換されているヘテロアリールメチルアミノであり;そして
5およびR6は、水素またはC1-C3 アルキルから独立して選択され;
あるいは、R5およびR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって任意に置換されている4-〜6-員の飽和環を形成する]
の化合物またはその医薬的に許容な塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項2】
1が、任意に置換されている5-または6-員のヘテロアリール環である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1が、任意に置換されている5-員のヘテロアリール環である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
1が、任意に置換されているチエニルである請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項5】
1が、フッ素、塩素、シュウ素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、エチル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチルまたはヒドロキシエチルにより任意に置換されているチエニルである請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
1が、チエン-2-イルである請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項7】
2が、水素またはC1-C6 アルキレン鎖を介して任意に結合し、かつその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式へテロ環式基である請求項1〜6のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項8】
2が、水素である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
2が、C1-C6 アルキレン鎖を介して結合している任意に置換されている5-もしくは6-員の 単環式ヘテロアリール基である請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
2が、C1-C6 アルキレン鎖を介して結合し、かつフッ素、塩素、シュウ素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、エチル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチルまたはヒドロキシエチルによりその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式ヘテロアリール基である請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
3は、水素、またはC1-C6アルキレン鎖を介して任意に結合し、かつその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式へテロ環式基である請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項12】
3が、C1-C6 アルキレン鎖を介して結合し、任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式ヘテロアリール基である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
3が、C1-C6 アルキレン鎖を介して結合し、かつフッ素、塩素、シュウ素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、エチル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチルまたはヒドロキシエチルによりその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式ヘテロアリール基である請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
4が、アミノである請求項1〜13のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項15】
4が、モノC1-C3アルキルアミノである請求項1〜13のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項16】
4が、メチルアミノである請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
4が、エチルアミノである請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
4が、C1-C3 アルキルである請求項1〜13のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項19】
4が、エチルである請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
式(II):
【化2】

[式中、
1は、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されている5-もしくは6-員のヘテロアリール環であり;
2およびR3は、水素、C1-C6アルキル、C3-C8 シクロアルキル、C3-C8 シクロアルキル-(C1-C6)-アルキル、その環部分において任意に置換されているアリール-(C1-C6)-アルキル、C1-C6 アルキレン鎖を介して任意に結合しかつその環部分において任意に置換されている5-もしくは6-員の単環式へテロ環式基、ベンズイミダゾール-2-イル-メチル、ピリド-3-イル-カルボニル、または(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-カルボニル-メチルから独立して選択され;
あるいは、R2およびR3は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に置換されている5-もしくは6-員環を形成し;そして
4は、水素またはC1-C3 アルキルである]
の化合物またはその医薬的に許容な塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項21】
1が、チエン-2-イルである請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
2が水素であり、そしてR3がピリド-3-イルメチルである請求項20または21に記載の化合物。
【請求項23】
4が、水素またはメチルである請求項20〜22のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物および医薬的に許容な担持体を含む医薬組成物。
【請求項25】
アデノシン A2B 受容体により媒介される障害の治療用医薬品の製造における請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項26】
アデノシン A2B 受容体により媒介される障害に罹患した患者への請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物の有効量の投与を含むアデノシン A2B 受容体により媒介される障害の治療方法。
【請求項27】
アデノシン A2B 受容体により媒介される障害が、痛覚、喘息、COPD、炎症性障害、糖尿病、糖尿病性網膜症または癌である請求項25に記載の使用あるいは請求項26に記載の方法。
【請求項28】
A2A 活性にまさるA2B 活性の選択的拮抗作用による痛覚、喘息、COPD、炎症性疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症または癌のための請求項27に記載の使用または方法。

【公表番号】特表2010−540422(P2010−540422A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525422(P2010−525422)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003173
【国際公開番号】WO2009/037463
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(507404019)ヴァーナリス アールアンドディー リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】VERNALIS R&D LIMITED
【住所又は居所原語表記】Oakdene Court,613 Reading Road,Winnersh,Berkshire,RG41 5UA,United Kingdom
【Fターム(参考)】