説明

チエノ[2,3−b]チオフェンのモノマー、オリゴマーおよびポリマー

本発明は、構造(I)を有する新規なチエノ[2,3−b]チオフェンのモノマー、オリゴマーおよびポリマー、半導体もしくは電荷輸送材料としての、光学的、電気光学的もしくは電子デバイス、例えばLCD、光学フィルム、TFT−LCDおよびICデバイス、例えばRFIDタグ、フラットパネルディスプレイにおけるエレクトロルミネセントデバイスのためのFETもしくはOFETにおける、または光起電もしくはセンサーデバイスにおけるこれらの使用、並びにさらに新規なポリマーを含むFET、発光デバイスまたはIDタグに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規なチエノ[2,3−b]チオフェンのモノマー、オリゴマーおよびポリマーに関する。本発明はさらに、半導体または電荷輸送材料としての、光学的、電気光学的または電子デバイス、例えば液晶ディスプレイ、光学フィルム、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイおよび集積回路デバイス、例えばRFIDタグ、フラットパネルディスプレイにおけるエレクトロルミネセントデバイスのための有機電界効果トランジスタ(FETまたはOFET)における、並びに光起電およびセンサーデバイスにおけるこれらの使用に関する。本発明はさらに、新規なポリマーを含む電界効果トランジスタ、発光デバイスまたはIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
背景および従来技術
有機材料は、近年、有機ベース薄膜トランジスタおよび有機電界効果トランジスタにおける活性層として有望であると示されている[H. E. Katz, Z. BaoおよびS. L. Gilat, Acc. Chem. Res., 2001, 34, 5, 359を参照]。このようなデバイスは、スマートカード、セキュリティータグおよびフラットパネルディスプレイにおける切換部品における潜在的用途を有する。有機材料は、これらを溶液から溶着させることができる場合には、これが、迅速な大面積の製作経路を可能にするため、これらのシリコン類似物にまさる実質的な費用上の利点を有すると考えられる。
【0003】
このデバイスの性能は、主に半導電性材料の電荷キャリア移動度および電流オン/オフ比に基づいており、従って理想的な半導体は、オフ状態における低い導電性およびこれと組み合わせて、高い電荷キャリア移動度(>1×10−3cm−1−1)を有しなければならない。さらに、酸化により、デバイス性能の低下に至るため、半導電性材料が、酸化に対して比較的安定である、即ち、これが、高いイオン化ポテンシャルを有することが重要である。
【0004】
位置規則性(regioregular)頭尾ポリ(3−ヘキシルチオフェン)は、1×10−5〜4.5×10−2cm−1−1の電荷キャリア移動度を有するが、10〜10のむしろ低い電流オン/オフ比を有することが報告されている[Z. Baoら、Appl. Pys. Lett., 1996, 69, 4108を参照]。この低いオン/オフ電流は、部分的に、ポリマーの低いイオン化ポテンシャルのためであり、これは、周囲条件下でポリマーの酸素ドーピングおよびその後の高いオフ電流をもたらし得る[H. Sirringhausら、Adv. Solid State Phys., 1999, 39, 101を参照]。
【0005】
高い位置規則性により、改善されたパッキングおよび最適化された微細構造がもたらされ、改善された電荷キャリア移動度がもたらされる[H. Sirringhausら、Science, 1998, 280, 1741-1744;H. Sirringhausら、Nature, 1999, 401, 685-688;およびH. Sirringhausら、Synthetic Metals, 2000, 111-112, 129-132を参照]。一般的に、ポリ(3−アルキルチオフェン)類は、改善された溶解性を示し、加工されて大面積フィルムを製作する溶液であり得る。しかし、ポリ(3−アルキルチオフェン)類は、比較的低いイオン化ポテンシャルを有し、空気中でドーピングされやすい。
【発明の開示】
【0006】
本発明の目的は、合成するのが容易であり、高い電荷移動度、良好な加工性および酸化安定性を有する、半導体または電荷輸送材料として用いるための新規な材料を提供することにある。
本発明の他の目的は、これらの部品、例えば集積回路の部品としての電界効果トランジスタ(FET)もしくは薄膜トランジスタ(TFT)の、および有機発光ダイオード(OLED)用途、例えばエレクトロルミネセントディスプレイまたは液晶ディスプレイのバックライトを含む、新規な半導体および電荷輸送部品、並びに新規なおよび改善された電気光学的、電子およびエレクトロルミネセントデバイスを提供することにある。
本発明の他の目的は、以下の記載から、当業者に直ちに明らかである。
【0007】
本発明者らは、これらの目的は、本発明においてクレームされているチエノ[2,3−b]チオフェンのモノマー、オリゴマーおよびポリマーを提供することにより達成することができることを見出した。
G. Kossmehlら、Makromol. Chem. 1982, 183, 2747-2769には、ポリ(チエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジビニレンアリーレン)類および対応するアルデヒドモノマーからのこれらの製造方法が開示されているが、本発明の化合物は開示されていない。
【0008】
発明の概要
本発明は、式I
【化1】

式中、
およびRは、互いに独立して、H、ハロゲン、随意に置換されているアリールもしくはヘテロアリール、P−Sp−、P−Sp−または1〜20個のC原子を有し、非置換であるか、F、Cl、Br、IもしくはCNにより単置換もしくは多置換されていてもよい直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルであり、また、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基は、各々の場合において互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CX=CX−または−C≡C−により、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置換されていることが可能であり、
およびRは、互いに独立して、Rの意味の1つを有するか、または−Sn(R、−B(OR’)(OR”)、−CHCl、−CHO、−CH=CHもしくは−SiR00000を示し、
、R00、R000は、互いに独立して、H、1〜12個のC原子を有するアリールまたはアルキルであり、
【0009】
R’およびR”は、互いに独立して、Hもしくは1〜12個のC原子を有するアルキルであるか、またはOR’およびOR”は、ホウ素原子と共に、2〜20個のC原子を有する環状基を形成し、
およびXは、互いに独立して、H、F、ClまたはCNであり、
Pは、重合性基であり、
は、重合性基Pに変換されているか、またはこれにより置換されていてもよい基であり、
Spは、スペーサー基または単結合であり、
nは、≧1の整数であり、
ここで、繰り返し単位が、同一であるかまたは異なっていてもよく、nが1であり、RおよびRがHである場合には、RおよびRの一方または両方が、P−Sp−、ハロゲン、−Sn(R、−B(OR’)(OR”)、−CHCl、−CH=CH、−SiR00000である、
で表されるモノマー、オリゴマーおよびポリマー化合物に関する。
【0010】
本発明はさらに、本明細書中に定義する少なくとも1種の化合物を含む、半導電性、エレクトロルミネセントまたは電荷輸送材料、部品またはデバイスに関する。
【0011】
本発明はさらに、本発明の化合物の、特に光学的、電気光学的もしくは電子デバイスにおける半導体もしくは電荷輸送材料としての、例えば集積回路の部品としての電界効果トランジスタ(FET)における、フラットパネルディスプレイ用途、例えば液晶ディスプレイ(LCD)における薄膜トランジスタとしての、無線IC(RFID)タグのための、または電荷輸送およびエレクトロルミネセント層を共に含むディスプレイもしくは有機発光ダイオード(OLED)のための半導電性部品における使用に関する。
【0012】
本発明はさらに、本発明の化合物の、エレクトロルミネセント材料としての、OLED用途、例えばエレクトロルミネセントディスプレイまたはディスプレイのバックライトのための、光起電またはセンサーデバイスにおける、電池における電極材料としての、光伝導体としての、電子写真用途、例えば電子写真式記録のための、有機記憶デバイスのための、DNA配列を検出し、識別するための、およびLCDまたはOLEDデバイスにおける配向層としての使用に関する。
【0013】
本発明はさらに、本発明の半導電性または電荷輸送材料、部品またはデバイスを含む、光学的、電気光学的または電子デバイス、FET、集積回路(IC)、TFT、OLEDまたは配向層に関する。
本発明はさらに、本発明の半導電性もしくは電荷輸送材料、部品もしくはデバイスまたはFET、IC、TFTもしくはOLEDを含む、フラットパネルディスプレイ用のTFTまたはTFTアレイ、無線IC(RFID)タグ、エレクトロルミネセントディスプレイまたはバックライトに関する。
本発明はさらに、本発明のFETまたはRFIDタグを含む、セキュリティーマーキングまたはデバイスに関する。
【0014】
発明の詳細な説明
式Iは、チエノ[2,3−b]チオフェンのモノマー、オリゴマーおよびポリマーを包含する。ポリマーは、ホモポリマー、即ち同一の繰り返し単位を有するもの、または式Iで表される異なる繰り返し単位を有するコポリマーであってもよい。特に好ましいのは、同一の繰り返し単位を有する式Iで表されるホモポリマーである。
【0015】
特に好ましいのは、位置規則性3−置換ポリ(チエノ[2,3−b]チオフェン)、特に式Iで表される位置規則性3−アルキル置換ポリ(チエノ[2,3−b]チオフェン)である。この物質を、ポリ(3−アルキルチオフェン)の類似体と考慮することができ、これは、位置規則性が高く(>96%)、従って半導体デバイス、例えばトランジスタにおいて用いるのに適する場合に、極めて高い電荷キャリア移動度を示す。高度に位置規則性ポリマーは、良好に秩序づけられた薄片状シートに自己組織化され得、この結果高い電荷キャリア移動度がもたらされる。
【0016】
しかし、PATの欠点は、これが、限定された空気安定性のみを有し、デバイスを空気中で適切な酸素障壁を用いずに作動させた場合に、高いオフ電流およびトランジスタ挙動の損失がもたらされることである。材料の酸素によるドーピングは、共役ポリマーの低いイオン化ポテンシャルに関連する。
【0017】
対照的に、本発明のポリマーは、これらがまた良好に密集した構造に自己組織化される能力のために、所望の高い電荷キャリア移動度を維持するが、材料の空気安定性を、イオン化ポテンシャルを低下させ、酸素によるドーピングを防止することにより決定的に改善する。ポリマーは、チエノ[2,3]チオフェン単位が隣接する芳香族単位と共に脱局在化したキノイド型の共鳴構造を形成することができないため、改善された空気安定性を示す。これにより、有効な共役長のポリマーを制限し、従ってHOMOレベルが低下し、イオン化ポテンシャルが増大する。
【0018】
本発明の化合物は、このように、電荷輸送半導体として特に有用である。アルキル側鎖をチエノチオフェン基中に導入すると、ポリマーの溶解性および溶液加工性がさらに改善される。
【0019】
特に好ましいのは、
−nが2〜5000、好ましくは10〜5000、極めて好ましくは100〜1000の整数である、
−分子量(Mw)が、5000〜300,000、特に20,000〜100,000である、
−nが1である、
−RまたはRがHである、
−RおよびRがHとは異なる、
−RおよびRが同一である、
【0020】
−RおよびRの一方がHであり、他方が、C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20チオアルキル、C〜C20シリル、C〜C20エステル、C〜C20アミノ、C〜C20フルオロアルキルおよび随意に置換されているアリールまたはヘテロアリール、極めて好ましくはC〜C20アルキルまたはC〜C20フルオロアルキルから選択される、
−RおよびRが、C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20チオアルキル、C〜C20シリル、C〜C20エステル、C〜C20アミノ、C〜C20フルオロアルキルおよび随意に置換されているアリールまたはヘテロアリール、極めて好ましくはC〜C20アルキルまたはC〜C20フルオロアルキルから選択される、
−RおよびRの一方または両方が、4〜20個、好ましくは6〜15個のC原子を有するアルキルまたはフルオロアルキルから選択される、
【0021】
−Pが、−OHまたは−O−Si−R00000であり、好ましくはここで、R、R00およびR000が、アリールまたはC1〜12アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチルまたはフェニルから選択された同一の、または異なる基である、
−RおよびRが、H、ハロゲン、Sn(R、B(OR’)(OR”)、CHCl、CHO、CH=CH、SiR00000および随意に置換されているアリールまたはヘテロアリールから選択される、
−nが1であり、RおよびRの一方または両方が、好ましくはBr、ClもしくはIであるハロゲン、Sn(R、B(OR’)(OR”)、CHCl、CHO、CH=CHまたはSiR00000である、
−R、R、RおよびRの少なくとも1つがP−Sp−である、
−nが1であり、RおよびRの一方または両方が、P−Sp−またはP−Sp−である、
式Iで表される化合物である。
【0022】
さらに好ましいのは、高い百分率の式I1
【化2】

で表される頭尾(HT)カップリングを有する位置規則性ポリマーである。
本発明のポリマーにおける位置規則性は、好ましくは少なくとも90%、特に95%またはこれ以上、極めて好ましくは98%またはこれ以上、最も好ましくは99〜100%である。
【0023】
位置規則性ポリマーは、これらが強力な鎖間π−πスタッキング相互作用および高い結晶化度を示し、これらを高いキャリア移動度を有する有効な電荷輸送材料とするため、有利である。
さらに好ましいのは、メソゲン性であるかまたは液晶性であるモノマー、オリゴマーおよびポリマー、特にカラミティック(calamitic)相を形成するポリマーおよび1つまたは2つ以上の基P−Sp−を含み、カラミティック相を形成する式Iで表される重合性モノマーである。
【0024】
極めて好ましいのは、以下のポリマーである。
【化3】

ここで、R1〜4は、互いに独立して、Hとは異なる式Iの意味の1つを有し、nは、式Iにおいて定義した通りであり、mは、n/2である。
【0025】
1〜4の1つがアリールまたはヘテロアリールである場合には、これは、好ましくは、25個までのC原子を有する単環式、二環式または三環式芳香族または複素芳香族基であり、ここで、環は、縮合していてもよい。複素芳香族基は、好ましくはN、OおよびSから選択された少なくとも1個の複素環原子を含む。芳香族または複素芳香族基は、随意に、1つまたは2つ以上の基Lで置換されている。
【0026】
Lは、F、Cl、Br、I、CNまたは、1〜20個のC原子を有し、非置換であるか、F、Cl、Br、I、−CNもしくは−OHにより単置換もしくは多置換されており、ここで、1つもしくは2つ以上の隣接していないCH基が随意に、各々の場合において互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、OCO−、−OCO−O、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−もしくは−C≡C−により、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置換されている、直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルである。
【0027】
特に好ましいアリールおよびヘテロアリール基は、フェニル、フッ素化フェニル、ピリジン、ピリミジン、ビフェニル、ナフタレン、随意にフッ素化またはアルキル化またはフルオロアルキル化されているベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン、随意にフッ素化またはアルキル化またはフルオロアルキル化されているチエノ[3,2−b]チオフェン、随意にフッ素化またはアルキル化またはフルオロアルキル化されている2,2−ジチオフェン、チアゾールおよびオキサゾールであり、これらのすべては、非置換であるか、上記に定義したLで単置換または多置換されている。
【0028】
1〜4の1つが、アルキルまたはアルコキシ基である、即ち、ここで末端CH基が−O−により置換されている場合には、これは、直鎖状または分枝状であってもよい。これは、好ましくは直鎖状であり、2〜8個の炭素原子を有し、従って好ましくは、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプトキシまたはオクトキシ、さらにメチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシである。
【0029】
フルオロアルキルまたはフッ素化されたアルキルまたはアルコキシは、好ましくは直鎖状(O)C2i+1であり、ここで、iは、1〜20、特に1〜15の整数であり、極めて好ましくは、(O)CF、(O)C、(O)C、(O)C、(O)C11、(O)C13、(O)C15または(O)C17、最も好ましくは(O)C13である。
CX=CXは、好ましくは、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CH=C(CN)−または−C(CN)=CH−である。
ハロゲンは、好ましくは、F、BrまたはClである。
ヘテロ原子は、好ましくは、N、OおよびSから選択される。
【0030】
重合性基Pは、重合反応、例えばラジカル性もしくはイオン性連鎖重合、重付加もしくは重縮合に関与することができるか、または、例えば縮合もしくは付加により、重合類似反応においてポリマー主鎖にグラフトすることができる基である。特に好ましいのは、連鎖重合反応、例えばラジカル性、カチオン性またはアニオン性重合のための重合性基である。極めて好ましいのは、C−C二重結合または三重結合を含む重合性基、および開環反応により重合することができる重合性基、例えばオキセタンまたはエポキシドである。
【0031】
重合性基Pは、好ましくは、
【化4】

から選択され、Wは、H、Cl、CN、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特にH、ClまたはCHであり、WおよびWは、互いに独立して、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特にメチル、エチルまたはn−プロピルであり、W、WおよびWは、互いに独立して、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルであり、Pheは、1,4−フェニレンであり、kおよびkは、互いに独立して0または1である。
【0032】
特に好ましい基Pは、
【化5】

である。
極めて好ましいのは、アクリレートおよびオキセタン基である。オキセタンは、重合(架橋)により比較的低い収縮を生じ、これにより、フィルム内の比較的低い応力発生が得られ、秩序化の一層高い保持および一層少ない欠陥がもたらされる。オキセタン架橋はまた、カチオン性開始剤を必要とし、これは、フリーラジカル開始剤とは異なり、酸素に対して不活性である。
【0033】
スペーサー基Spとして、当業者にこの目的で知られているすべての基を、用いることができる。スペーサー基Spは、好ましくは、P−Sp−がP−Sp’−X−であり、P−Sp−がP−Sp’−X−であるように、式Sp’−Xで表され、ここで、
Sp’は、非置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNにより単置換または多置換されていてもよい、20個までのC原子を有するアルキレンであり、また、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基は、各々の場合において互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−または−C≡C−により、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置換されていることが可能であり、
【0034】
Xは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CX=CX−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
、R00、XおよびXは、上記で示した意味の1つを有する。
【0035】
Xは、好ましくは、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CX=CX−、−C≡C−または単結合であり、特に−O−、−S−、−C≡C−、−CX=CX−または単結合、極めて好ましくは、共役系を形成することができる基、例えば−C≡C−もしくは−CX=CX−、または単結合である。
【0036】
代表的な基Sp’は、例えば、−(CH−、−(CHCHO)−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−または−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00−O)−であり、pは、2〜12の整数であり、qは、1〜3の整数であり、RおよびR00は、上記で示した意味を有する。
【0037】
好ましい基Sp’は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレン−チオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0038】
さらに好ましいのは、1つまたは2つの基P−Sp−またはP−Sp−を有する化合物であり、ここで、Spは、単結合である。
それぞれ2つの基P−SpまたはP−Sp−を有する化合物の場合において、各々の基PまたはPおよびスペーサー基Spは、同一であるかまたは異なっていてもよい。
【0039】
他の好ましい態様は、1つまたは2つ以上の基P−Sp−を含み、式中Pは、上記で定義した重合性基Pに変換するか、またはこれにより置換されていてもよい基である化合物に関する。好ましくは、Pは、例えば自発的重合について、Pより反応性が低い基である。これらの化合物は、例えば、1つもしくは2つ以上の基Pを有する、式I1で表される重合性化合物の合成における中間体として、または比較的長い期間にわたり貯蔵もしくは輸送するには反応性が高すぎる、重合性化合物のための前駆体物質として用いることができる。基Pは、好ましくは、これが、既知の方法により基Pに容易に変換されるか、またはこれにより置換され得るように、選択する。例えば、これは、基Pの保護された形態であってもよい。他の好ましい基Pは、例えば、−OHまたはシリル基、例えば−O−Si−R00000、例えば−O−Si(CH、−O−Si−(イソプロピル)、−O−Si−(フェニル)、−O−Si−(CH(フェニル)、−O−Si(CH(tert−ブチル)などであり、これは、例えば、重合性(メタ)アクリレート末端基に反応することができる。
【0040】
本発明の化合物または混合物から重合または共重合により得られたSCLCPは、重合性基Pにより形成した主鎖を有する。
【0041】
本発明のモノマー、オリゴマーおよびポリマーを、既知の方法により、またはこれと同様にして合成することができる。いくつかの好ましい方法を、以下に記載する。
スキーム1:
【化6】


【0042】
チオフェン−2−チオールは、1−クロロ−2−ドデカノン(C. Mahatsekake (Phosphorus, Sulfur and Silicon, 1990, 47, p35)の手順による)で容易にアルキル化される。得られたケトンは、クロロベンゼン中の酸触媒(アンバーリスト(amberlyst)15)での処理により、2−アルキル−チエノ[2,3−b]チオフェンに容易に環化される。得られたモノマーを、THF中の1または2当量のN−ブロモスクシンイミド(NBS)のいずれかで処理することにより、一臭素化または二臭素化する(スキーム1)。
【0043】
位置規則性ポリマーへの重合は、例えば、以下の5つの方法の1つにより達成される。第1の方法により、先ず2−ブロモ−3−アルキル−チエノ[2,3−b]チオフェンを、強塩基、例えばLDAでの処理により5位においてリチウム化して、リチウム塩を生成する。これを、無水塩化亜鉛での処理により有機亜鉛試薬に変換し、この中間体を、二座のニッケル触媒を加えることにより、インサイチュで重合する(R. D. McCulloughら、J. Org. Chem., 1993, 58, 904に開示されているチオフェン誘導体についての方法と同様にして)。
【0044】
第2の方法において、2−5−ジブロモ−3−アルキル−チエノ[2,3−b]チオフェンを、活性化された亜鉛での処理により直接有機亜鉛誘導体に変換し、これを、二座のニッケル触媒を加えることにより重合する(T.-A. Chen, R. D. Rieke, J. Am. Chem. Soc., 1992, 114, 10087と同様にして)。
【0045】
第3の方法において、2,5−ジブロモ−3−アルキル−チエノ[2,3−b]チオフェンを、1当量のグリニヤール試薬で処理して、モノグリニヤール試薬を生成し、これを再びニッケル触媒を加えることにより重合させる(S. M. K. Robert S. Loeweおよび;R. D. McCullough*, Adv. Mater., 1999, 11, 250と同様にして)。
【0046】
第4の方法(スキーム2)において、2−ブロモ−3−アルキル−チエノ[2,3−b]チオフェンを、5位において、強塩基、例えばLDAで処理することによりリチウム化して、リチウム塩を生成する。これを、塩化トリアルキルスズで処理することにより有機スズ試薬に変換し、これを単離し、クロマトグラフィー方法により精製することができる。この中間体の遷移金属触媒、例えばPd(PPhでのその後の処理により、生成物が得られる(A. Iragi, G. W. Barker, J. Mater. Chem., 1998, 8, 25と同様にして)。
【0047】
第5の方法(スキーム2)において、2−ブロモ−3−アルキル−チエノ[2,3−b]チオフェンを、5位において、強塩基、例えばLDAで処理することによりリチウム化して、リチウム塩を生成する。これを、適切なトリアルコキシホウ素試薬で処理することにより有機ホウ素試薬に変換し、これを単離し、クロマトグラフィー方法により精製することができる。この中間体の遷移金属触媒、例えばPd(PPhおよび塩基、例えばCsFまたは水性炭酸カリウムでのその後の処理により、生成物が得られる(S. Guillerez, G. Bidan, Synth. Metals, 1998, 93, 123と同様にして)。
【0048】
スキーム2:
【化7】


【0049】
3,4−ジアルキル−チエノ[2,3−b]チオフェンを、スキーム3に示すように、チエノ[2,3−b]チオフェンから3段階で好都合に合成することができる。チエノ[2,3−b]チオフェンを、4当量の臭素で氷酢酸中で処理することにより四臭素化する。酢酸中での亜鉛での還元により、2,5位における臭素置換基を除去する。得られた3,4−ジブロモチエノ[2,3−]チオフェンは、遷移金属触媒の存在下でハロゲン化有機亜鉛で処理することにより種々の亜鉛試薬で容易にアルキル化される。得られたモノマーを、塩化鉄(III)で処理することにより化学的に重合して、ホモポリマーを得ることができる。あるいはまた、臭素化により、2,5−ジブロモ−3,4−ジアルキルチエノ[2,3−b]チオフェンが得られ、これを、共重合における成分として用いることができる。従って、パラジウム触媒の存在下での2,5−ビス(トリメチルスタンニル)チエノ[2,3−b]チオフェンとの反応により、コポリマーが得られる。
【0050】
スキーム3:
【化8】


【0051】
本発明の他の観点は、本発明の化合物および材料の酸化形態および還元形態の両方に関する。電子の損失または獲得の結果、高い導電性を有する高度に非局在化されたイオン性形態を形成する。このことは、一般的なドーパントへの曝露の際に生じ得る。好適なドーパントおよびドーピング方法は、例えば、EP 0 528 662、US 5,198,153またはWO 96/21659から、当業者に知られている。
【0052】
ドーピングプロセスは、代表的には、半導体材料を酸化剤または還元剤でレドックス反応において処理して、対応する対イオンが適用したドーパントから由来する、材料中の非局在化したイオン性中心部を形成することを含む。好適なドーピング方法は、例えば、大気圧または減圧下においてドーピング蒸気に曝露し、ドーパントを含む溶液中で電気化学的にドーピングし、ドーパントを、熱的に拡散されるべき半導体材料と接触させ、ドーパントを半導体材料中にイオン注入することを含む。
【0053】
電子がキャリアとして用いられる場合には、好適なドーパントは、例えば、ハロゲン(例えば、I、Cl、Br、ICl、ICl、IBrおよびIF)、ルイス酸(例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、SbCl、BBrおよびSO)、プロトン酸、有機酸またはアミノ酸(例えば、HF、HCl、HNO、HSO、HClO、FSOHおよびClSOH)、遷移金属化合物(例えば、FeCl、FeOCl、Fe(ClO、Fe(4−CHSO、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、NbCl、TaCl、MoF、MoCl、WF、WCl、UFおよびLnCl(ここで、Lnは、ランタノイドである))、アニオン(例えば、Cl、Br、I、I、HSO、SO2−、NO、ClO、BF、PF、AsF、SbF、FeCl、Fe(CN)3−および種々のスルホン酸のアニオン、例えばアリール−SO)である。
【0054】
正孔がキャリアとして用いられる場合には、ドーパントの例は、カチオン(例えば、H、Li、Na、K、RbおよびCs)、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、RbおよびCs)、アルカリ土類金属(例えば、Ca、SrおよびBa)、O、XeOF、(NO)(SbF)、(NO)(SbCl)、(NO)(BF)、AgClO、HIrCl、La(NO・6HO、FSOOOSOF、Eu、アセチルコリン、R(Rは、アルキル基である)、R(Rは、アルキル基である)、RAs(Rは、アルキル基である)およびR(Rは、アルキル基である)である。
【0055】
本発明の化合物および材料の導電性形態を、用途、例えば有機発光ダイオード用途における電荷注入層およびITO平坦化層、フラットパネルディスプレイおよびタッチスクリーン用のフィルム、帯電防止フィルム、印刷された導電性基板、電子的用途におけるパターンまたは区域、例えば印刷回路板およびコンデンサであるが、これらには限定されない用途における有機「金属」として用いることができる。
【0056】
本発明の好ましい態様は、メソゲン性または液晶性であり、極めて好ましくは1つまたは2つ以上の重合性基を含む、式Iおよびこの好ましい従属式で表されるモノマー、オリゴマーおよびポリマーに関する。このタイプの極めて好ましい物質は、nが1〜15の整数であり、Rおよび/またはRがP−Sp−を示す、式Iおよびこの好ましい従属式で表されるモノマーおよびオリゴマーである。
【0057】
これらの材料は、これらが、既知の手法によりこれらの液晶相において均一な高度に秩序化された方向に配向することができ、従って特に高い電荷キャリア移動度をもたらす一層高い程度の秩序を示すため、特に、半導体または電荷輸送材料として有用である。高度に秩序化された液晶状態を、基Pを介してのインサイチュ重合または架橋により固定して、高い電荷キャリア移動度並びに高い熱的、機械的および化学的安定性を有するポリマーフィルムを得ることができる。
【0058】
例えば、デバイスを重合性液晶材料からインサイチュでの重合により製造する場合には、液晶材料は、好ましくは、式Iおよびこの好ましい従属式で表される1種または2種以上のモノマーまたはオリゴマーを含み、ここで、RおよびRの一方または両方は、P−Sp−を示す。液晶ポリマーを先ず例えば溶液中での重合により製造し、次に単離されたポリマーを用いてデバイスを製造する場合には、ポリマーを、好ましくは、RおよびRの一方がP−Sp−を示す式Iおよびこの好ましい従属式で表される1種または2種以上のモノマーまたはオリゴマーを含む液晶材料から製造する。
【0059】
また、本発明の重合性モノマー、オリゴマーおよびポリマーを、従来技術から知られている他の重合性メソゲン性または液晶モノマーと共重合させて、液晶相挙動を誘発するかまたは増強することが可能である。
【0060】
従って、本発明の他の観点は、少なくとも1つの重合性基を含み、および随意に、1種または2種以上の他の重合性化合物を含む、本明細書中に記載した本発明の1種または2種以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマーを含む重合性液晶材料に関し、ここで、本発明の少なくとも1種の重合性モノマー、オリゴマーおよびポリマーおよび/または他の重合性化合物は、メソゲン性または液晶性である。
【0061】
特に好ましいのは、ネマティックおよび/またはスメクティック相を有する液晶材料である。FET用途のために、スメクティック材料が特に好ましい。OLED用途のために、ネマティックまたはスメクティック材料が、特に好ましい。
本発明の他の観点は、液晶相において巨視的に均一な方向に配向し、重合または架橋して、配向した状態を固定する、上記に定義した重合性液晶材料から得られる、電荷輸送特性を有する異方性ポリマーフィルムに関する。
【0062】
好ましくは、重合は、好ましくは本発明の半導体材料を含む電子的または光学的デバイスの製作中の、材料の被覆された層のインサイチュ重合として、行われる。液晶材料の場合において、これらは、好ましくは、重合前に、これらの液晶状態において、ホメオトロピックな方向に配向し、ここで、共役π電子系は、電荷輸送の向きに直交する。これにより、分子間距離が最小になり、従って次に、分子間で電荷を移動させるのに必要なエネルギーが最小になることが確実になる。次に、分子は、重合または架橋されて、液晶状態の均一な方向が固定される。配向および硬化は、材料の液晶相または中間相において行われる。この手法は、当該技術分野において知られており、一般的に、例えば、D.J. Broerら、Angew. Makromol. Chem. 183, (1990), 45-66に記載されている。
【0063】
液晶材料の配向は、例えば、材料が被覆される基板の処理、被覆の最中または被覆後の材料の剪断、被覆された材料への磁場もしくは電場の適用、または界面活性化合物の液晶材料への添加により達成することができる。配向手法の概要は、例えば、I. Sageにより、"Thermotropic Liquid Crystals"、G. W. Gray編、John Wiley & Sons, 1987, 75-77頁中に、並びにT. UchidaおよびH. Sekiにより、"Liquid Crystals - Applications and Uses Vol. 3"、B. Bahadur編、World Scientific Publishing, Singapore 1992, 1-63頁中に示されている。配向材料および手法の概要は、J. Cognard, Mol. Cryst. Liq. Cryst. 78, Supplement 1 (1981), 1-77頁により示されている。
【0064】
重合は、熱または化学線への曝露により起こる。化学線は、光、例えばUV光、IR光もしくは可視光線での照射、X線もしくはガンマ線での照射または高エネルギー粒子、例えばイオンもしくは電子での照射を意味する。好ましくは、重合は、非吸収性波長におけるUV照射により行われる。化学線のための線源として、例えば単一のUVランプまたはUVランプのセットを用いることができる。高いランプ出力を用いた場合には、硬化時間を減少させることができる。化学線のための他の可能な線源は、レーザー、例えばUVレーザー、IRレーザーまたは可視レーザーである。
【0065】
重合は、好ましくは、化学線の波長において吸収を示す開始剤の存在下で行う。例えば、UV光により重合する場合には、UV照射下で分解して重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を、用いることができる。アクリレートまたはメタクリレート基を有する重合性材料を硬化させる場合には、好ましくはラジカル光開始剤を用い、ビニル、エポキシドおよびオキセタン基を有する重合性材料を硬化させる場合には、好ましくはカチオン系光開始剤を用いる。また、加熱された際に分解して、重合を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する重合開始剤を用いることも可能である。ラジカル重合のための光開始剤として、例えば、商業的に入手できるイルガキュア(Irgacure)651、イルガキュア184、ダロキュア(Darocure)1173またはダロキュア4205(すべてCiba Geigy AGから)を用いることができ、一方カチオン性光重合の場合には、商業的に入手できるUVI6974(Union Carbide)を用いることができる。
【0066】
重合性材料は、さらに、1種または2種以上の他の好適な成分、例えば触媒、増感剤、安定剤、阻害剤、連鎖移動剤、同時反応(co-reacting)モノマー、界面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水剤(hydrophobing agent)、接着剤、流動改善剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、染料または顔料を含むことができる。
【0067】
1つまたは2つ以上の基P−Sp−を含むモノマー、オリゴマーおよびポリマーはまた、重合性メソゲン性化合物と共重合して、液晶相挙動を誘発するかまたは増強することができる。コモノマーとして適する重合性メソゲン性化合物は、従来技術において知られており、例えばWO 93/22397;EP 0,261,712;DE 195,04,224;WO 95/22586およびWO 97/00600に開示されている。
【0068】
本発明の他の観点は、重合または重合類似反応により、上記に定義した重合性液晶材料から得られた側鎖型液晶ポリマー(SCLCP)に関する。特に好ましいのは、RおよびRの一方もしくは両方、好ましくは一方が重合性もしくは反応性基である、式I1およびこの好ましい従属式で表される1種もしくは2種以上のモノマー、または、1種もしくは2種以上の前記モノマーを含む重合性混合物から得られるSCLCPである。
【0069】
本発明の他の観点は、RおよびRの一方もしくは両方が重合性基である、式I1およびこの好ましい従属式で表される1種もしくは2種以上のモノマー、または上記に定義した重合性液晶混合物から、1種もしくは2種以上の追加のメソゲン性もしくは非メソゲン性コモノマーとの共重合もしくは重合類似反応により得られるSCLCPに関する。
【0070】
半導電性部品が、脂肪族スペーサー基により柔軟な主鎖から分離されたペンダント基として位置されている、側鎖型液晶ポリマーまたはコポリマー(SCLCP)は、高度に秩序化された薄片状形態を得る可能性を提供する。この構造は、極めて密な(代表的には<4Å)π−πスタッキングが生じ得る、密に密集した共役芳香族メソゲンからなる。このスタッキングは、分子間電荷輸送を一層容易に発生させ、高い電荷キャリア移動度をもたらす。SCLCPは、これらを、加工前に容易に合成することができ、次に、例えば有機溶媒中で溶液から加工することができるため、特定の用途に有利である。SCLCPを溶液中で用いる場合には、これらは、適切な表面上にコーティングされた場合および、これらの中間相温度における場合に自発的に配向することができ、大面積の、高度に秩序化された領域をもたらすことができる。
【0071】
SCLCPは、本発明の重合性化合物または混合物から、前記した方法により、または、例えば、ラジカル性、アニオン性もしくはカチオン性連鎖重合、重付加もしくは重縮合を含む、当業者に知られている慣用の重合手法により製造することができる。重合は、例えば、コーティングおよび前配向を必要とせずに、溶液中での重合として、またはインサイチュでの重合として行うことができる。
【0072】
また、SCLCPを、好適な反応性基を有する本発明の化合物またはこれらの混合物を重合類似反応において予め合成されたアイソトロピックまたは異方性ポリマー主鎖にグラフトすることにより形成することが、可能である。例えば、末端水酸基を有する化合物を、側方カルボン酸またはエステル基を有するポリマー主鎖に付着させることができ、末端イソシアネート基を有する化合物を、遊離の水酸基を有する主鎖に加えることができ、末端ビニルまたはビニルオキシ基を有する化合物を、例えば、Si−H基を有するポリシロキサン主鎖に加えることができる。
【0073】
また、SCLCPを、慣用のメソゲン性または非メソゲン性コモノマーと共に、本発明の化合物から共重合または重合類似反応により形成することが可能である。好適なコモノマーは、当業者に知られている。原則的に、所望のポリマー形成反応を受けることができる反応性または重合性基、例えば上記に定義した重合性または反応性基Pを担持する、当該技術分野において知られているすべての慣用のコモノマーを用いることが可能である。代表的なメソゲン性コモノマーは、例えば、WO 93/22397、EP 0 261 712、DE 195 04 224、WO 95/22586、WO 97/00600およびGB 2 351 734に述べられているものである。代表的な非メソゲン性コモノマーは、例えば、1〜20個のC原子を有するアルキル基を有するアルキルアクリレート類またはアルキルメタクリレート類、例えばメチルアクリレートまたはメチルメタクリレートである。
【0074】
本発明のモノマー、オリゴマーおよびポリマーは、光学的、電子的および半導体材料として、特に、例えば、集積回路の部品、IDタグまたはTFT用途としての電界効果トランジスタ(FET)における電荷輸送材料として有用である。あるいはまた、これらを、エレクトロルミネセントディスプレイ用途における有機発光ダイオード(OLED)において、または例えば液晶ディスプレイのバックライトとして、光起電またはセンサー材料として、電子写真式記録のため、および他の半導体用途のために用いることができる。
【0075】
特に、本発明のオリゴマーおよびポリマーは、これらの化合物の溶液を用いた製造方法を可能にする、有利な可溶特性を示す。従って、層およびコーティングを含むフィルムを、低費用の生産手法、例えばスピンコーティングにより生じさせることができる。好適な溶媒または溶媒混合物は、アルカン類および/または芳香族化合物、特にこれらのフッ素化誘導体を含む。
【0076】
本発明の材料は、光学的、電子的および半導体材料として、特に電界効果トランジスタ(FET)における電荷輸送材料として、光起電またはセンサー材料として、電子写真式記録用に、および他の半導体用途用に有用である。有機半導電性材料を、ゲート誘電体とドレインおよびソース電極との間にフィルムとして配置した、このようなFETは、一般的に、例えばUS 5,892,244、WO 00/79617、US 5,998,804並びに背景および従来技術の章において引用されている、および以下に列挙する参考文献から知られている。利点、例えば本発明の化合物の可溶特性を用いた低費用生産および従って大面積の加工性のために、これらのFETの好ましい用途は、例えば集積回路、TFTディスプレイおよびセキュリティー用途である。
【0077】
本発明のOFETデバイスは、好ましくは:
−ソース電極、
−ドレイン電極、
−ゲート電極、
−半導電性層、
−1つまたは2つ以上のゲート絶縁層、
−随意に基板
を含み、ここで、半導体層は、式Iで表される化合物を含む。
【0078】
OFETデバイスは、最上部のゲートのデバイスまたは底部のゲートのデバイスであり得る。OFETデバイスの好適な構造および製造方法は、当業者に知られており、文献、例えばWO 03/052841中に記載されている。
【0079】
セキュリティー用途において、電界効果トランジスタおよび半導電性材料を有する他のデバイス、例えばトランジスタまたはダイオードを、有価証券、例えば貨幣、クレジットカードまたはIDカード、国家のIDドキュメント、免許証または金銭的価値を有するすべての製品、例えば切手、チケット、株券、小切手などを証明し、偽造を防止するためのIDタグまたはセキュリティーマーキングのために用いることができる。
【0080】
あるいはまた、本発明のモノマー、オリゴマーおよびポリマーを、有機発光デバイスまたはダイオード(OLED)、例えばディスプレイ用途において、または例えば液晶ディスプレイのバックライトとして用いることができる。一般的なOLEDは、多層構造を用いて実現される。発光層は、一般的に、1つまたは2つ以上の電子輸送および/または正孔輸送層の間にはさまれる。電圧を印加することにより、電荷キャリアとしての電子および正孔は、発光層の方向に移動し、ここで、これらの組み替えにより、励起および従って発光層中に含まれるルモフォア(lumophor)単位のルミネセンスが得られる。
【0081】
本発明の化合物、材料およびフィルムを、これらの電気的および/または光学的特性に対応して、1つまたは2つ以上の電荷輸送層および/または発光層において用いることができる。さらに、発光層内でのこれらの使用は、本発明の化合物、材料およびフィルムが、これら自体エレクトロルミネセント特性を示すか、またはエレクトロルミネセント基もしくは化合物を含む場合に、特に有利である。OLEDにおいて用いるための好適なモノマー、オリゴマーおよびポリマー化合物または材料の選択、特徴づけおよび加工は、一般的に、当業者により知られている。例えばMeerholz, Synthetic Materials, 111-112, 2000, 31-34, Alcala, J. Appl. Phys., 88, 2000, 7124-7128およびここに引用されている文献を参照。
【0082】
他の使用において、本発明の化合物、材料またはフィルム、特にフォトルミネセント特性を示すものは、例えばEP 0 889 350 A1に、またはC. Wederら、Science, 279, 1998, 835-837により記載されているディスプレイデバイスの光源の材料として用いることができる。
【0083】
他の使用において、本発明の化合物、材料またはフィルムを、例えばUS 2003/0021913に記載されているように、単独で、または他の材料と共に、LCDもしくはOLEDデバイスにおける配向層において、または配向層として用いることができる。本発明の電荷輸送化合物の使用により、配向層の導電性を増大させることができる。LCDにおいて用いられる場合には、この増大した導電性により、切換可能なLCDセルにおける負の残留dc効果を減少させ、残像(image sticking)を抑制し、または、例えば強誘電性LCDにおいて、強誘電性LCの自発分極電荷の切換により生じる残留電荷を減少させることができる。
【0084】
配向層上に設けられた発光材料を含むOLEDデバイスにおいて用いる場合には、この増大した導電性により、発光材料のエレクトロルミネセンスを増強することができる。メソゲン特性または液晶特性を有する本発明の化合物または材料は、上記のように、配向した異方性フィルムを形成することができ、これは、配向層として、前述の異方性フィルム上に設けられた液晶媒体における配向を誘発または増大するのに、特に有用である。本発明の材料はまた、US 2003/0021913に記載されているように、光配向層において、または光配向層として用いるための光異性化可能な化合物および/または発色団と組み合わせることができる。
【0085】
他の使用において、本発明のポリマー、特にこれらの水溶性誘導体(例えば極性の、もしくはイオン性の側基を有する)またはイオン的にドーピングされた形態を、DNA配列を検出し、識別するための化学的センサーまたは物質として用いることができる。このような使用は、例えば、L. Chen, D. W. McBranch, H. Wang, R. Helgeson, F. WudlおよびD. G. Whitten, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1999, 96, 12287;D. Wang, X. Gong, P. S. Heeger, F. Rininsland, G. C. BazanおよびA. J. Heeger, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2002, 99, 49;N. DiCesare, M. R. Pinot, K. S. SchanzeおよびJ. R. Lakowicz, Langmuir 2002, 18, 7785;D. T. McQuade, A. E. Pullen, T. M. Swager, Chem. Rev. 2000, 100, 2537中に記載されている。
【0086】
以下の例は、本発明を、これを限定せずに例示する役割を有する。前記および以下において、他に述べない限り、すべての温度は、摂氏度で示し、すべての百分率は、重量百分率である。
【0087】
例1
ポリ(3−デシルチエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル)(1)を、以下のようにして調製する。
【化9】

【0088】
1−(チオフェン−2−イルスルファニル)−ドデカン−2−オン:
チオフェン−2−チオール(2.0g、17.2mmol)を乾燥アセトン(100ml)に溶解した溶液に、無水炭酸カリウム(2.8g;20mmol)を加え、続いて1−クロロドデカン−2−オン(3.8g、17.2mmol)を滴加する。反応を、30分間RTで攪拌し、濾過し、減圧下で濃縮する。粗製の生成物を、さらにカラムクロマトグラフィー(溶離液:ガソリン/酢酸エチル 100:0〜95:5)により精製して、生成物を無色油状物(3.66g、71%)として得る。
【化10】

【0089】
3−デシル−チエノ[2,3−b]チオフェン:
1−(チオフェン−2−イルスルファニル)−ドデカン−2−オン(3.40g、11.4mmol)およびアンバーリスト15(5.5g)をクロロベンゼン(200mL)に溶解した溶液を、4A分子ふるい(ソックスレー)上で16時間還流させる。反応を冷却し、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ガソリンに溶解し、シリカの小さいプラグを通して濾過して、着色した不純物を除去する。有機化合物を、減圧下で濃縮し、RP18シリカ上でのカラムクロマトグラフィー(溶離剤:アセトニトリル)によりさらに精製する。最初の画分を採集して、生成物を無色油状物(1.8g、56%)として得る。
【化11】

【0090】
2,5−ジブロモ−3−デシルチエノ[2,3−b]チオフェン:
3−デシルチエノ[2,3−b]チオフェン(1.50g、5.35mmol)をTHF(20ml)に溶解した溶液に、0℃で、N−ブロモスクシンイミド(1.98g、11.1mmol)を5つの等しい部分で30分にわたり加える。反応を、RTで72時間攪拌する。NBS(0.2g、1.1mmol)のさらなる部分を加え、反応を、さらに1時間攪拌する。溶媒を、減圧下で除去し、残留物を、酢酸エチル(50ml)に溶解し、水(2×25ml)およびブライン(2×25ml)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧下で濃縮する。残留物を、ガソリン中に懸濁させ、シリカプラグを通して濾過し、ガソリンで溶離させる。有機化合物を、減圧下で濃縮して、生成物を無色油状物(2.01g、86%)として得る。
【化12】

【0091】
ポリ(3−デシルチエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル):
2,5−ジブロモ−3−デシルチエノ[2,3−b]チオフェン(0.88g、2mmol)を乾燥THF(10ml)に溶解した溶液に、0℃で、臭化ジイソプロピルマグネシウム(ジエチルエーテルに溶解した2.0M溶液1.02ml、2.04mmol)の溶液を加える。反応を、室温に加温し、当該温度で1時間攪拌する。反応混合物のアリコートを、水で反応停止し、有機抽出物を、GCMSにより分析して、98%のモノグリニヤール生成物が9:1の比率の異性体で生成していることが明らかになる。Ni(dppf)Cl(28.0mg、2mol%)の部分を、固体として1回で加え、反応を、マイクロ波反応器(Emrys Creator, Personal Chemistry)中で160℃で20分間加熱する。反応を冷却し、メタノール中に注入し、1時間攪拌する。得られた沈殿物を濾過し、さらにメタノール、アセトンおよびヘキサンで洗浄する。得られた茶色の粉末を、クロロホルムに溶解し、メタノールの溶液中に沈殿させ、乾燥して、赤色粉末(235mg)を得る。
【0092】
【化13】

(注意 位置規則性は、80〜85%であると見積もられる。末端基からの干渉を生じるポリマーの低い分子量のために、およびまたおそらく凝集効果により主鎖に隣接するプロトンの解明が乏しいため、測定するのは困難である)。
【0093】
例2
ポリ(3,4−ジドデシル−チエノ[2,3−b]チオフェン)(2)を、以下のようにして調製する。
【化14】

【0094】
2,3,4,5−テトラブロモ−チエノ[2,3−b]チオフェン:
チエノ[2,3−b]チオフェン(0.74g、5.3mmol)を酢酸(60ml)に溶解した溶液に、臭素(2ml、39mmol)を加える。反応を、1.5時間還流させる。冷却後、水性亜硫酸ナトリウム溶液(10%w/v)を、過剰の臭素の色が消失するまで加える。反応混合物を、ジクロロメタンで抽出し、飽和水性炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧下で濃縮する。生成物を、高温メタノール/ジクロロメタンからの再結晶により精製して、微細な淡い黄色の針状物(1.59g、66%)を得る。M/Z(455、quintet、M)。観測値、C、16.1;Br、69.7。CBrについての計算値、C、15.8;Br 70.1。NMRにより、予測されたシグナルが得られた。
【0095】
3,4−ジブロモ−チエノ[2,3−b]チオフェン:
2,3,4,5−テトラブロモチエノ[2,3−b]チオフェン(0.83g、1.8mmol)、亜鉛微粉(0.29g、4.4mmol)および酢酸(30ml)の混合物を、2時間還流させる。反応混合物を、水中に注入し、DCMで抽出し、水性飽和炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮する。生成物を、高温メタノールからの再結晶により精製して、白色繊維状結晶(389mg、72%)を得る。
【化15】

【0096】
3,4−ジドデシル−チエノ[2,3−b]チオフェン:
マイクロ波バイアルに、3,4−ジブロモ−チエノ[2,3−b]チオフェン(1.02g、3.42mmol)、Pd(dppf)Cl(57mg、0.09mmol)を装入し、密閉し、窒素をパージする。無水テトラヒドロフラン(2ml)、次に臭化ドデシル亜鉛(THF中0.5M16.8ml、8.4mmol)を加え、反応混合物を、室温で10秒間攪拌し、次にマイクロ波中で150℃で7分間加熱する。反応混合物を、希水性塩酸中に注入し、ジクロロメタンで抽出する。有機化合物を、水で洗浄し(pH〜7まで)、乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧下で濃縮する。生成物を、ガソリン(40〜60℃)で溶離させてシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し、次に高温メタノール/ジクロロメタン中で再結晶して、微細な白色針状物(666mg、41%)を得る。
【化16】

【0097】
ポリ(3,4−ジドデシル−チエノ[2,3−b]チオフェン)(2):
3,4−ジドデシル−チエノ[2,3−b]チオフェン(206mg、0.43mmol)をクロロホルム(5ml)に溶解した溶液を、塩化第二鉄(300mg、1.84mmol)をクロロホルム(50ml)に溶解した攪拌した溶液に滴加する。反応を、48時間室温で攪拌し、窒素の定常的な流れを、反応混合物中に吹き込んで、発生した塩酸を除去する。深い青色の残留物がクロロホルムに溶解した濃溶液を、メタノール(300ml)中に沈殿させる。得られた沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄する。物質を、濃水性アンモニア溶液(100ml、33%)中で1時間攪拌することにより脱ドーピングし(dedoped)、濾過し、水、次にメタノールで洗浄して、茶色固体を得る。ポリマーを、18時間にわたるメタノールでの、次に18時間にわたるアセトンでのソックスレー抽出により連続的に洗浄する。ポリマーを、クロロホルムに溶解し、メタノール中に沈殿させて、茶色固体を得、これを、真空下で乾燥する(94mg、46%)。
【化17】

【0098】
例3
ポリ(3,4−ジドデシル−チエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル−コ−チエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル−)(3)を、以下のようにして調製する。
【化18】

【0099】
2,5−ジブロモ−3,4−ジドデシルチエノ[2,3−b]チオフェン:
3,4−ジドデシルチエノ[2,3−b]チオフェン(0.316g、0.75mmol)を酢酸(15ml)およびクロロホルム(15ml)に溶解した溶液に、臭素(0.28ml、5.5mmol)を加え、混合物を、2時間還流させる。水性亜硫酸ナトリウム溶液(10%w/v)を、過剰の臭素の色が消失するまで加える。反応混合物を、ジクロロメタンで抽出し、飽和水性炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧下で濃縮する。生成物を、ガソリン(40〜60℃)で溶離させてシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し、次に高温メタノール/ジクロロメタン中で再結晶して、白色粉末(325mg、75%)を得る。
【化19】

【0100】
ポリ(2−チエノ[2,3−b]チオフェン−2−イル−コ−3,4−ジドデシル−チエノ[2,3−b]チオフェン)(3):
乾燥マイクロ波管に、2,5−ジブロモ−3,4−ジドデシルチエノ[2,3−b]チオフェン(150mg、0.236mmol)、2,5−ビス(トリメチルスタンニル)チエノ[2,3−b]チオフェン(110mg、0.236mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(4.3mg、4.7μmol)、トリ−o−トリルホスフィン(5.7mg、19μmol)およびクロロベンゼン(4.5ml)を装入する。管を密閉し、窒素で1分間ガス抜きし、次にマイクロ波中で140℃で60秒間、続いて160℃で60秒間、次に180℃で60秒間、および最後に200℃で600秒間(固定された保持時間)加熱する。反応を、50℃に冷却し、次にメタノール(90ml)/濃塩酸(10ml)中に注入し、一晩攪拌する。反応を、ソックスレー円筒濾材を通して濾過し、次にアセトン(72時間)、メタノール(8時間)およびガソリン(40〜60℃;14時間)で抽出する(ソックスレー)。残留物を、ジクロロベンゼンに溶解し、温(50℃)メタノール中に沈殿させて、茶色粉末(45mg)を得る。
【化20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

式中、
およびRは、互いに独立して、H、ハロゲン、随意に置換されているアリールもしくはヘテロアリール、P−Sp−、P−Sp−または1〜20個のC原子を有し、非置換であるか、F、Cl、Br、IもしくはCNにより単置換もしくは多置換されていてもよい直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルであり、また、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基は、各々の場合において互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CX=CX−または−C≡C−により、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置換されていることが可能であり、
およびRは、互いに独立して、Rの意味の1つを有するか、または−Sn(R、−B(OR’)(OR”)、−CHCl、−CHO、−CH=CHもしくは−SiR00000を示し、
、R00、R000は、互いに独立して、H、1〜12個のC原子を有するアリールまたはアルキルであり、
R’およびR”は、互いに独立して、Hもしくは1〜12個のC原子を有するアルキルであるか、またはOR’およびOR”は、ホウ素原子と共に、2〜10個のC原子を有する環状基を形成し、
およびXは、互いに独立して、H、F、ClまたはCNであり、
Pは、重合性基であり、
は、重合性基Pに変換されているか、またはこれにより置換されていてもよい基であり、
Spは、スペーサー基または単結合であり、
nは、≧1の整数であり、
ここで、繰り返し単位が、同一であるかまたは異なっていてもよく、nが1であり、RおよびRがHである場合には、RおよびRの一方または両方が、P−Sp−、ハロゲン、−Sn(R、−B(OR’)(OR”)、−CHCl、−CH=CH、−SiR00000である、
で表される化合物。
【請求項2】
およびRの一方がHであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRがHとは異なることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
およびRが、H、C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20チオアルキル、C〜C20シリル、C〜C20エステル、C〜C20アミノまたはC〜C20フルオロアルキルから選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
nが2〜5000の整数であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
95%またはこれ以上の頭尾カップリングの位置規則性を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
nが1であり、RおよびRの一方または両方が、ハロゲン、−Sn(R、−B(OR’)(OR”)、−CHCl、−CHO、−CH=CHまたは−SiR00000であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
nが1であり、RおよびRの一方または両方がP−Sp−またはP−Sp−であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
以下の式
【化2】

【化3】

式中、R1〜4は、互いに独立して、Hとは異なる式Iの意味の1つを有し、nは、式Iにおいて定義した通りであり、mは、n/2である、
から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
少なくとも1つの重合性基を含む請求項1〜9のいずれかに記載の1種または2種以上のチエノチオフェン化合物を含み、随意に1種または2種以上の他の重合性化合物を含む重合性液晶材料であって、前記チエノチオフェン化合物または前記他の重合性化合物の少なくとも1種がメソゲン性または液晶性である、前記重合性液晶材料。
【請求項11】
電荷輸送特性を有し、請求項1〜10のいずれかに記載の重合性液晶材料から得られる異方性ポリマーフィルムであって、その液晶相において、巨視的に均一な方向に配向し、重合または架橋して、配向した状態が固定される、前記異方性ポリマーフィルム。
【請求項12】
側鎖液晶ポリマーであって、請求項1〜11のいずれかに記載の1種もしくは2種以上の化合物もしくは重合性材料の重合により、または前記化合物もしくは材料を、ポリマー主鎖に、重合類似反応において、随意に1種もしくは2種以上の追加のメソゲン性もしくは非メソゲン性コモノマーでグラフトすることにより得られる、前記側鎖液晶ポリマー。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の化合物、重合性材料およびポリマーの、光学的、電気光学的もしくは電子デバイスにおける半導体もしくは電荷輸送材料としての、集積回路の部品としての電界効果トランジスタ(FET)としての、フラットパネルディスプレイ用途、液晶ディスプレイ(LCD)における薄膜トランジスタ(TFT)としての、無線IC(RFID)タグのための、またはディスプレイもしくは有機発光ダイオード(OLED)のための半導電性部品における使用。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の化合物、重合性材料およびポリマーの、エレクトロルミネセント材料としての、OLED、エレクトロルミネセントディスプレイ、ディスプレイのバックライトのための、光起電もしくはセンサーデバイスにおける、電池における電極材料としての、光伝導体としての、電子写真用途、例えば電子写真式記録のための、有機記憶デバイスのための、DNA配列を検出し、識別するための、またはLCDもしくはOLEDデバイスにおける配向層としての使用。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の化合物、材料またはポリマーの少なくとも1種を含む、半導電性、エレクトロルミネセントまたは電荷輸送材料、部品またはデバイス。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の材料、部品またはデバイスを含む、光学的、電気光学的または電子デバイス、FET、集積回路(IC)、TFT、OLEDまたは配向層。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の材料、部品、デバイス、FET、IC、TFTまたはOLEDを含む、フラットパネルディスプレイ用のTFTまたはTFTアレイ、無線IC(RFID)タグ、エレクトロルミネセントディスプレイまたはバックライト。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載のFETまたはRFIDタグを含む、セキュリティーマーキングまたはデバイス。
【請求項19】
酸化的にまたは還元的にドーピングされて、導電性イオン種を形成する、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物、材料またはポリマー。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の化合物、材料またはポリマーを含む、電荷注入層、平坦化層、帯電防止フィルムまたは電子的用途もしくはフラットパネルディスプレイ用の導電性基板もしくはパターン。

【公表番号】特表2008−512503(P2008−512503A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526329(P2007−526329)
【出願日】平成17年7月23日(2005.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008045
【国際公開番号】WO2006/021277
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】