説明

チオアミド不純物を最小限に抑えるための方法

反応中、例えばニトリル基含有カルボニル化合物のチオ化において、おとり剤を使用してチオアミド化合物の形成を最小限に抑えるための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
チオアミド不純物を最小限に抑えるための方法。
【背景技術】
【0002】
プロゲステロン受容体調節剤は、カルボニル化合物のチオ化によって製造することができる。2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(ローソン(Lawesson)試薬)又は五硫化リンのいずれかを使用するベンズオキサジン−2−オンのチオ化は公知である(米国特許第6,436,929号)。スキーム1参照。
【化9】

【0003】
そのような化合物は、避妊、ホルモン置換療法、発情の同期化、並びにホルモン腫瘍性疾患、腺癌及び癌腫を含む病気の治療において有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、チオ化の間に形成されるある種の不純物は除去が困難である。当技術分野において求められているのは、不純物の形成を低減する又は排除するための方法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、本発明は、チオアミド不純物の形成を予防する、低減する又は最小限に抑えるための方法を提供する。
【0006】
もう1つの態様では、本発明は、おとり剤(decoy agent)を用いてチオアミド不純物の形成を予防する、低減する又は最小限に抑えるための方法を提供する。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、ニトリル基含有カルボニル化合物のチオ化の間のチオアミド不純物の形成を予防する、低減する又は最小限に抑えるための方法を提供する。
【0008】
さらにもう1つの態様では、本発明は、Y、R7〜R9が以下で定義される、構造:
【化10】

のチオアミド不純物の形成を予防するための方法を提供する。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、R1、R7及びR8が以下で定義される、構造:
【化11】

のチオアミド不純物の形成を予防するための方法を提供する。
【0010】
もう1つの態様では、本発明は、R1〜R5が以下で定義される、構造:
【化12】

のチオアミド不純物の形成を予防するための方法を提供する。
【0011】
もう1つの態様では、本発明は、式:
【化13】

[式中、
1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであり;
2及びR3は、独立して、H、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであるか;
又はR2とR3は、−CH2(CH2nCH2−、−CH2CH2C(CH32CH2CH2−、−O(CH2pCH2−、−O(CH2qO−、−CH2CH2OCH2CH2−又は−CH2CH2NR6CH2CH2−を含む環を形成するように縮合したものであり;
nは1〜5であり;
pは1〜4であり;
qは1〜4であり;
4は、H、OH、NH2、CN、ハロゲン、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル又は置換C2−C6アルキニルであり;
5は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル又は置換C1−C6アミノアルキルであり;
6は、H又はC1−C6アルキルであり;
Xは、O、S又は不在である。]
を有する化合物又はその製薬上許容し得る塩を製造するための方法であって、式:
【化14】

[式中、R1〜R6、n、p、q及びXは上記で定義したとおりである。]
を有するカルボニル化合物とチオ化剤を反応させることを含む前記方法における、ニトリル基含有おとり剤の使用を提供し、前記おとり剤は、前記カルボニル化合物中に存在する1又はそれ以上のニトリル基のチオ化を予防又は低減する。
【0012】
チオ化剤は、硫化水素、ローソン試薬、五硫化リン及びジエチルジチオホスフェートからなる群より選択され得る。
【0013】
おとり剤は、ベンゾニトリル、p−クロロベンゾニトリル、p−エトキシベンゾニトリル、p−メトキシベンゾニトリル、o−ニトロベンゾニトリル、p−アセチルベンゾニトリル、p−メチルベンゾニトリル、p−フルオロベンゾニトリル及び1,3−ジシアノベンゼンからなる群より選択されるアリールニトリルであり得る。
【0014】
あるいは、おとり剤は、N−メチル−2−ピロールカルボニトリル、2−チオフェンカルボニトリル、2−シアノピリジン、3−シアノピリジン及び4−シアノピリジンからなる群より選択されるヘテロアリールニトリルであり得る。
【0015】
おとり剤は、あるいは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、クロロアセトニトリル、トリクロロアセトニトリル及びマロノニトリルからなる群より選択される脂肪族ニトリルであり得る。
【0016】
1つの実施形態では、前記おとり剤対前記カルボニル化合物のモル比は1:1より大きい。
【0017】
さらなる実施形態では、チオ化反応は、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、塩化メチレン及びトルエンからなる群より選択される溶媒中で実施することができる。
【0018】
本発明の他の態様及び利点を、その好ましい実施形態についての以下の詳細な説明においてさらに述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、おとり剤を使用してチオアミド化合物の形成を最小限に抑えるための方法を提供する。特に、本発明は、望ましくない副作用を回避するためにおとり剤を添加するための方法を提供する。
【0020】
I.定義

「アルキル」という用語は、本明細書では1〜約10個の炭素原子、望ましくは1〜約8個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を指すために使用される。「アルケニル」という用語は、本明細書では1又はそれ以上の炭素−炭素二重結合を有し、及び約2〜約10個の炭素原子を含む直鎖及び分枝鎖の両方のアルキル基を指すために使用される。望ましくは、アルケニルという用語は、1又は2個の炭素−炭素二重結合を有し、及び2〜約6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。「アルキニル」基という用語は、本明細書では1又はそれ以上の炭素−炭素三重結合を有し、及び2〜約8個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖の両方のアルキル基を指すために使用される。望ましくは、アルキニルという用語は、1又は2個の炭素−炭素三重結合を有し、及び2〜約6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0021】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書では構造が環状であり、及び約4〜約10個の炭素原子、望ましくは約5〜約8個の炭素原子を有する、先に述べたアルキル基を指すために使用される。
【0022】
「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」及び「置換シクロアルキル」という用語は、それぞれ、限定を伴わずに、各々の基が場合により置換されている、ハロゲン、CN、OH、NO2、アミノ、アリール、ヘテロ環式、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ及びアリールチオを含む、同じか又は異なる1又はそれ以上の置換基を有する、アルキル、アルケニル、アルキニル及びシクロアルキル基を指す。これらの置換基は、その結合が安定な化学成分を構成することを条件として、アルキル、アルケニル又はアルキニル基のいずれかの炭素に結合することができる。
【0023】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、単環あるいは縮合又は結合環の少なくとも一部が、例えば6〜14個の炭素原子を有する、共役芳香族系を形成する、縮合又は結合した多芳香環を含み得る芳香族系を指す。アリール基は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、テトラヒドロナフチル、フェナントリル、インデン、ベンゾナフチル、フルオレニル及びカルバゾリルを含み得るが、これらに限定されない。
【0024】
「置換アリール」という用語は、各々の基が場合により置換されていてもよい、ハロゲン、CN、OH、NO2、アミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アミノアルキル及びアリールチオを含む、同じか又は異なる1又はそれ以上の置換基で置換されているアリール基を指す。望ましくは、置換アリール基は1、2、3又は4個の置換基で置換されている。
【0025】
本明細書で使用する「ヘテロ環式」又は「ヘテロアリール」という用語は、飽和、部分不飽和又は完全不飽和である安定な4〜10員の単環式又は多環式ヘテロ環を指す。ヘテロ環は、炭素原子、及び窒素、酸素及び硫黄原子を含む1又はそれ以上のヘテロ原子を有する。望ましくは、ヘテロ環は、環の骨格内に1〜約4個のヘテロ原子を有する。ヘテロ環が環の骨格内に窒素又は硫黄原子を含むとき、その窒素又は硫黄原子は酸化されていてもよい。「ヘテロ環式」という用語はまた、ヘテロ環が、例えば6〜14個の炭素原子の、アリール環に縮合した多環式環を指す。ヘテロ環は、生じるヘテロ環構造が化学的に安定であることを条件として、ヘテロ原子又は炭素原子を介してアリール環に結合することができる。
【0026】
様々なヘテロ環式又はヘテロアリール基が当技術分野において公知であり、限定を伴わずに、酸素含有環、窒素含有環、硫黄含有環、混合へテロ原子含有環、縮合へテロ原子含有環、及びそれらの組合せを含む。酸素含有環は、フリル、テトラヒドロフラニル、ピラニル、ピロニル及びジオキシニル環を含むが、これらに限定されない。窒素含有環は、限定を伴わずに、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピペリジニル、2−オキソピペリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル、アゼピニル、トリアジニル、ピロリジニル及びアゼピニル環を含む。硫黄含有環は、限定を伴わずに、チエニル及びジチオリル環を含む。混合へテロ原子含有環は、オキサチオリル、オキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサトリアゾリル、ジオキサゾリル、オキサチアゾリル、オキサチオリル、オキサジニル、オキサチアジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、オキセピニル、チエピニル及びジアゼピニル環を含むが、これらに限定されない。縮合へテロ原子含有環は、ベンゾフラニル、チオナフテン、インドリル、ベナザゾリル、プリンジニル、ピラノピロリル、イソインダゾリル、インドキサジニル、ベンズオキサゾリル、アントラニリル、ベンゾピラニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾジアゾニル、ナフチルリジニル、ベンゾチエニル、ピリドピリジニル、ベンズオキサジニル、キサンテニル、アクリジニル及びプリニル環を含むが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用する「置換ヘテロ環式」又は「置換へテロアリール」という用語は、各々の基が場合により置換されていてもよい、ハロゲン、CN、OH、NO2、アミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アミノアルキル及びアリールチオを含む、同じか又は異なる1又はそれ以上の置換基を有するヘテロ環式基を指す。望ましくは、置換ヘテロ環式基は1、2、3又は4個の置換基で置換されている。
【0028】
本明細書で使用する「アルコキシ」という用語は、結合点が酸素原子を介してであり、及びアルキル基が場合により置換されている、O(アルキル)基を指す。
【0029】
本明細書で使用する「アリールオキシ」という用語は、結合点が酸素原子を介してであり、及びアリール基が場合により置換されている、O(アリール)基を指す。
【0030】
「アルキルオキシ」という用語は、ヒドロキシアルキルを含み、本明細書で使用するとき、結合点がアルキル基を介してである、アルキルOH基を指す。
【0031】
本明細書で使用する「アリールチオ」という用語は、結合点が硫黄原子を介してであり、及びアリール基が場合により置換されていてもよい、S(アリール)基を指す。
【0032】
本明細書で使用する「アルキルカルボニル」という用語は、結合点がカルボニル部分の炭素原子を介してであり、及びアルキル基が場合により置換されている、C(O)(アルキル)基を指す。
【0033】
本明細書で使用する「アルキルカルボキシ」という用語は、結合点がカルボキシ部分の炭素原子を介してであり、及びアルキル基が場合により置換されている、C(O)O(アルキル)基を指す。
【0034】
「アミノアルキル」という用語は、アルキルアミノを含み、本明細書で使用するとき、結合点が窒素原子を介してであり、及びアルキル基が場合により置換されている、第二級及び第三級アミンを指す。アルキル基は同じか又は異なり得る。
【0035】
本明細書で使用する「チオアルコキシ」又は「チオアルキル」という用語は、結合点が硫黄原子を介してであり、及びアルキル基が場合により置換されている、S(アルキル)基を指す。
【0036】
本明細書で使用する「ハロゲン」という用語は、Cl、Br、F又はI基を指す。
【0037】
本明細書で使用する「アミド」という用語は、結合点が炭素原子を介してである、C(O)NH2基を指す。同様に、本明細書で使用する「チオアミド」という用語は、C(S)NH2置換基を指す。
【0038】
本明細書で使用する「ニトリル」又は「シアノ」という用語は、CN基を指す。
【0039】
本明細書で使用する「ケトン」という用語は、結合点が炭素原子を介してである、C(O)基を指す。同様に、本明細書で使用する「アルデヒド」という用語は、結合点が炭素原子を介してである、C(O)H基を指す。
【0040】
本明細書で使用する「ラクトン」という用語は、環の骨格内にエステル部分を有する環を指す。ラクトン環は、場合により、環への安定な結合を形成する何らかの置換で置換されていてもよい。
【0041】
「カルバメート」及び「ウレタン」という用語は、本明細書では、結合点が窒素及び酸素原子を介してである、N−C(O)O基を指すために交換可能に使用される。
【0042】
「カルボネート」という用語は、本明細書ではO−C(O)−O基を指すために使用される。
【0043】
「エノン」という用語は、本明細書ではアルケン基、すなわち−C=C−、及びケトン基を含む分子を指すために使用される。望ましくは、エノンは、結合点がアルケンの炭素原子及びカルボニルの炭素原子を介してである、C=C−C(O)である。
【0044】
「エナミノン」という用語は、本明細書では、結合点がアルケンの炭素原子及びカルボニルの炭素原子を介してである、−N−C=C−C(O)基を含む分子を指すために使用される。
【0045】
本明細書で使用する「精製された」又は「純粋な」という用語は、約10%未満の不純物を含む化合物を指す。望ましくは、「精製された」又は「純粋な」という用語は、約5%未満の不純物、より望ましくは約2%未満の不純物、最も望ましくは1%未満の不純物を含む化合物を指す。「精製された」又は「純粋な」という用語はまた、約0%の不純物を含む化合物を指すことができる。1つの実施形態では、不純物はチオアミドである。
【0046】
II.おとり剤

不純物、例えばチオアミドの形成を予防するか又は最小限に抑えるための方法が提供される。望ましくは、本発明は、ニトリル基含有カルボニル化合物のチオ化の間のチオアミド不純物の形成を予防するか又は最小限に抑えるための方法を提供する。この方法は、ニトリル基含有おとり剤を利用する。スキーム2参照。
【化15】

【0047】
理論に縛られるのは望むところではないが、発明者は、チオアミド不純物が、硫化水素(H2S)、H2S副産物又はジチアホスフェタン副産物、例えば特にローソン試薬副産物、のニトリル成分への添加によって形成されると仮定した。スキーム3参照。それ故発明者は、チオアミド不純物の形成を予防するか又は最小限に抑える反応混合物へのおとり剤の添加は有益であることを見出した。
【化16】

【0048】
本発明において使用するおとり剤は、チオ化の間カルボニル化合物のニトリル置換基と競合する。1つの実施形態では、おとり剤は、H2S、反応の間に形成されるH2S副産物、又はニトリル化合物が結合しているカルボニル化合物のチオ化の間に形成されるローソン試薬副産物との反応に関してニトリル置換基と競合する。しかし、おとり剤は、望ましくは実際のチオ化試薬と最小限にだけ反応する又は全く反応しない。
【0049】
本明細書で使用する「おとり剤」は、「スカベンジャー」、「捕捉剤」又は「モッピング試薬」とは区別される。当業者に公知のように、スカベンジャー、捕捉剤又はモッピング試薬は過剰の試薬、生成物又は他の形成される不純物を除去するために使用される。例えばH2Sは、酢酸鉛で除去されるか、分子ふるいで捕捉されるか、又は水で清掃され得る。おとり剤は、しかし、副反応を再指令するために意図的に添加され、生成物を汚染源から保護する自己犠牲試薬である。
【0050】
当業者は、反応条件、おとり剤のコスト、おとり剤の反応性、カルボニル化合物の反応性及びカルボニル化合物のカルボニル基の反応性に依存して適切なおとり剤を容易に選択することができる。望ましくは、おとり剤は、カルボニル化合物のニトリル基と構造において類似する。
【0051】
おとり剤に結合した電子求引性置換基は、おとり剤の反応性、特におとり剤上のニトリル基の反応性を上昇させ得る。望ましくは、電子求引性置換基はハロゲン、より望ましくは塩素を含む。望ましくは、おとり剤はクロロアセトニトリル(ClCH2CN)、トリクロロアセトニトリル又は1,3−ジシアノベンゼンである。
【0052】
1つの実施形態では、カルボニル化合物は、非常に反応性の高いカルボニル基と反応性の低いニトリル基を含み、それによってカルボニル基はチオ化化合物と容易に反応する。この場合、反応性の低いおとり剤は、チオ化反応の間チオアミド不純物の形成を予防するために利用できる。しかし、より反応性のおとり剤は、反応性カルボニル化合物と共に利用できる。典型的には、カルボニル化合物のカルボニル基がチオ化剤と容易に反応する場合はアセトニトリルが利用される。
【0053】
もう1つの実施形態では、カルボニル化合物は、反応性カルボニル基と反応性ニトリル基を含む。この場合、中等度に反応性のおとり剤は、チオ化反応の間チオアミド不純物の形成を予防するために利用できる。典型的には、中等度に反応性のおとり剤、例えばベンゾニトリル、p−クロロベンゾニトリル、p−メチルベンゾニトリル、1,3−ジシアノベンゼン、3−及び4−シアノピリジン及びマロノニトリルが利用できる。
【0054】
さらなる実施形態では、炭素含有化合物は、より反応性の低いカルボニル基と高度に反応性のニトリルを含む。この場合、高度反応性おとり剤は、チオ化反応の間チオアミド不純物の形成を予防するために利用できる。典型的には、高度反応性のおとり剤、例えばN−メチル−2−ピロールカルボニトリル、2−チオフェンカルボニトリル、2−シアノピリジン、クロロアセトニトリル及びトリクロロアセトニトリルが利用できる。
【0055】
本発明に従って使用できるおとり剤の例は、限定を伴わずに、ベンゾニトリル、p−クロロベンゾニトリル、p−エトキシベンゾニトリル、p−メトキシベンゾニトリル、o−ニトロベンゾニトリル、p−アセチルベンゾニトリル、p−メチルベンゾニトリル、p−フルオロベンゾニトリル及び1,3−ジシアノベンゼンを含むアリールニトリル;脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリル(CH3CN)、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、クロロアセトニトリル、トリクロロアセトニトリル及びマロノニトリル;1又はそれ以上の電子求引性置換基を有するニトリル化合物;又はN−メチル−2−ピロールカルボニトリル、2−チオフェンカルボニトリル及び2−シアノピリジンを含むヘテロアリールニトリルを含む。しかし、一部のおとり剤は、利用し得るが、その使用に関して採算の取れない法外なコストがかかる場合がある。例えばCH3CNは、安価で、低沸点の、N−メチル−2−ピロールカルボニトリルと比較して2倍のモル数のニトリル基を有する一般的な試薬である。さらに、2−チオフェンカルボニトリルはベンゾニトリルより2倍反応性であるが、かなり高価である。より望ましくは、おとり剤はN−メチル−2−ピロールカルボニトリルと構造的に類似しており、アセトニトリル又は2−チオフェンカルボニトリルである。
【0056】
過剰モルのおとり剤を、典型的には、ニトリル部分を有する化合物を含む反応混合物に添加する、すなわちおとり剤のモル数はニトリル化合物のモル数よりも大きい。しかし、おとり剤対ニトリル部分を有する化合物の1:1未満の比率、すなわちおとり剤のモル数がニトリル化合物のモル数よりも低い比率も使用できる。1つの実施形態では、約10モル以上過剰のおとり剤が使用される。もう1つの実施形態では、約20モル以上過剰、さらなる実施形態では、約40モル以上過剰、さらにもう1つの実施形態では、100モル以上過剰のおとり剤が使用される。1つの実施形態では、おとり剤は溶媒として利用できる。当業者は、実施する反応、使用する試薬及びおとり剤の反応性に依存して必要なおとり剤の量を容易に決定することができる。
【0057】
III.本発明の方法

本発明は、それにより、チオアミド不純物の形成を予防するか又は最小限に抑えるための方法を提供する。典型的には、本発明に従って形成されるチオアミド不純物は、チオアミド分子の骨格上のいずれかの位置で結合したチオアミド基を含む。
【0058】
1つの実施形態では、チオアミド不純物は、構造:
【化17】

のチオアミド基を含む。
【0059】
もう1つの実施形態では、チオアミド不純物は、構造:
【化18】

[式中、Yは、O又はSであり;R7は、H、NH2、NHR10、N(R102、C(O)R10、C(S)R10、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;R8は、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであるか;又はR7とR8は、(i)飽和炭素ベースの4〜8員環;(ii)不飽和炭素ベースの4〜8員環;又は(iii)O、N及びSからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む4〜8員ヘテロ環、を形成するように縮合したものであり、但し、環(i)〜(iii)は、場合によりH、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、C1−C6アミノアルキル及び置換C1−C6アミノアルキルの中から選択される1〜3個の置換基によって置換されており;R9は、不在、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;R10は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、NH2、NHR11及びN(R112の中から選択されるものであり;及びR11は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル及びNH2の中から選択されるものである。]
である。
【0060】
さらなる実施形態では、チオアミド不純物は、構造:
【化19】

[式中、R7は、H、NH2、NHR10、N(R102、C(O)R10、C(S)R10、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;R8は、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであるか;又はR7とR8は、(i)飽和炭素ベースの4〜8員環;(ii)不飽和炭素ベースの4〜8員環;又は(iii)O、N及びSの中から選択される1〜3個のヘテロ原子を含む4〜8員ヘテロ環、を形成するように縮合したものであり、但し、環(i)〜(iii)は、場合によりH、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、C1−C6アミノアルキル及び置換C1−C6アミノアルキルの中から選択される1〜3個の置換基によって置換されており;R10は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、NH2、NHR11及びN(R112の中から選択されるものであり;及びR11は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル及びNH2の中から選択されるものである。]
又はそれらの組合せである。
【0061】
さらなる実施形態では、チオアミド不純物は、ピロール環に結合している又はピロール環の置換基に結合しているチオアミド基を含む。チオアミド不純物は、それ故、R1がC1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルである、以下のチオアミド置換基:
【化20】

を有し得る。
【0062】
もう1つの実施形態では、チオアミド不純物は、構造:
【化21】

[式中、R1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルの中から選択されるものであり、及びR7とR8は上記で定義されるものである。]
である。
【0063】
さらなる実施形態では、チオアミド不純物は、構造:
【化22】

[式中、R1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルの中から選択されるものであり;R2及びR3は、独立して、H、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルの中から選択されるものであるか;又はR2とR3は、−CH2(CH2nCH2−、−CH2CH2C(CH32CH2CH2−、−O(CH2pCH2−、−O(CH2qO−、−CH2CH2OCH2CH2−又は−CH2CH2NR6CH2CH2−を含む環を形成するように縮合したものであり;nは1、2、3、4又は5であり、pは1、2、3又は4であり、及びqは1、2、3又は4であり;R4は、H、OH、NH2、CN、ハロゲン、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル又は置換C2−C6アルキニルの中から選択されるものであり;R5は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル又は置換C1−C6アミノアルキルの中から選択されるものであり;R6は、H又はC1−C6アルキルの中から選択されるものであり;Qは、O又はSの中から選択されるものであり;及びXは、不在であるか又はO又はSの中から選択されるものである。]
である。
【0064】
さらなる実施形態では、チオアミド不純物は、構造:
【化23】

[式中、R1〜R5、X及びQは上記で定義されるものである。]
である。
【0065】
本発明において使用されるニトリル基を含むカルボニル化合物は、少なくとも1個のカルボニル基と少なくとも1個のニトリル基を含む。本発明はまた、2個以上のカルボニル基、例えば2、3、4、5又は5個以上のカルボニル基、及び2個以上のニトリル基、例えば2、3、4又は5個又はそれ以上のニトリル基、又はそれらの組合せを有するカルボニル化合物を提供する。
【0066】
1つの実施形態では、カルボニル化合物は、構造:
【化24】

[式中、R7は、H、NH2、NHR10、N(R102、C(O)R10、C(S)R10、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;R8は、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであるか;又はR7とR8は、(i)飽和炭素ベースの4〜8員環;(ii)不飽和炭素ベースの4〜8員環;又は(iii)O、N及びSの中から選択される1〜3個のヘテロ原子を含む4〜8員ヘテロ環、を形成するように縮合したものであり、但し、環(i)〜(iii)は、場合によりH、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、C1−C6アミノアルキル及び置換C1−C6アミノアルキルの中から選択される1〜3個の置換基によって置換されており;R9は、不在、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;R10は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、NH2、NHR11及びN(R112の中から選択されるものであり;及びR11は、H、C1−C6アルキル、置換C1〜C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル及びNH2の中から選択されるものである。]
である。
【0067】
さらなる実施形態では、カルボニル化合物は、構造:
【化25】

[式中、R1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであり;R7及びR8は上記で定義されるものである。]
である。
【0068】
さらにもう1つの実施形態では、カルボニル化合物は、構造:
【化26】

[式中、R1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであり;R2及びR3は、独立して、H、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであるか;又はR2とR3は、−CH2(CH2nCH2−、−CH2CH2C(CH32CH2CH2−、−O(CH2pCH2−、−O(CH2qO−、−CH2CH2OCH2CH2−又は−CH2CH2NR6CH2CH2−を含む環を形成するように縮合したものであり;nは1〜5であり;pは1〜4であり;qは1〜4であり;R4は、H、OH、NH2、CN、ハロゲン、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル又は置換C2−C6アルキニルであり;R5は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル又は置換C1−C6アミノアルキルであり;R6は、H又はC1−C6アルキルであり;Xは、O、S又は不在である。]
又はその製薬上許容し得る塩である。
【0069】
さらなる実施形態では、カルボニル化合物は、構造:
【化27】

[式中、R1〜R5及びXは上記で定義されるものである。]
である。
【0070】
典型的には、おとり剤は溶媒の存在下で使用される。当業者は、中でも特に、使用する他の試薬及び反応条件に依存して、おとり剤と共に使用するための適切な溶媒を容易に選択することができる。望ましくは、溶媒は、反応において使用する試薬のいずれとも反応せず、いかなる過酸化物も含まない。1つの実施形態では、溶媒は、中でも特に、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、トルエン及び塩化メチレンを含む。
【0071】
おとり剤は、反応を促進し、当業者によって容易に決定され得るいかなる温度でも使用できる。望ましくは、おとり剤は少なくとも室温で使用され、より望ましくは溶媒の沸点で使用される。
【0072】
おとり剤をチオ化反応において使用するとき、反応はチオ化剤を用いて実施される。O原子をS原子で置換するいくつかのチオ化剤が当技術分野で公知であり、限定を伴わずに、五硫化リン(P410)、硫化水素、ローソン試薬、及びジアルキルジチオホスフェート、例えばジエチルジチオホスフェートを含む(Phosphorous and Sulfur 1985, 25, 297参照)。スキーム4参照。
【化28】

【0073】
望ましくは、チオ化剤はおとり試薬(decoy reagent)と反応しない。チオ化はまた、反応の間に形成される、
【化29】

を含むチオ化副産物でも実施することができる。
【0074】
1つの実施形態では、本発明は、ニトリル基を有するおとり剤の存在下でチオ化を実施することを含む、カルボニル基含有ニトリル化合物のチオ化の間のチオアミド不純物の形成を予防するか又は最小限に抑えるための方法を提供する。
【0075】
もう1つの実施形態では、本発明は、本発明の方法によって製造される生成物を提供する。
【0076】
生じる本発明の化合物は、生理的に適合性の担体中で製剤することができ、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,509,334号;同第6,391,907号;同第6,417,214号;及び同第6,407,101号に述べられているようにPR調節剤として使用できる。本発明はさらに、前記生成物を含むキットを提供する。
【0077】
以下の実施例は本発明を例示するために提供するものであり、その範囲を限定しない。特定試薬及び条件を以下の実施例において概説するが、当業者は、変更を行うことができ、それらは本発明の精神及び範囲に包含されることが意図されていることを認識する。

実施例
【実施例1】
【0078】
おとり剤の反応性

表1に示す芳香族ニトリルおとり剤1mmolを、含水THF(6mL)中のチオ化剤、ジエチルジチオホスフェート(0.2mL)と還流で反応させ、それぞれのチオアミドを得る。
【0079】
【表1】

【0080】
この実施例は、2−チオフェンカルボニトリルがチオ化剤と最も反応性であったことを示す。
【実施例2】
【0081】
チオ化の間のおとり剤の使用

DME(505kg)中のローソン試薬(28.3kg、70mol)を用いて還流で、5−(4,4−ジメチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−ベンズオキサジン−6−イル)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボニトリル(34kg、126mol)のチオ化においてアセトニトリル(21kg、512mol)をおとり剤として使用して、すなわち4:1のモル比で、5−(4,4−ジメチル−2−チオキソ−1,4−ジヒドロ−ベンズオキサジン−6−イル)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボニトリル(26.7kg、74%収率)を得た。
【0082】
5−(4,4−ジメチル−2−チオキソ−1,4−ジヒドロ−ベンズオキサジン−6−イル)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボニトリルの粗反応混合物は、約2.6%だけの5−(4,4−ジメチル−2−チオキソ−1,4−ジヒドロ−ベンズオキサジン)−1−メチル−ピロール−2−チオアミド不純物を含んだ。再結晶化後、精製5−(4,4−ジメチル−2−チオキソ−1,4−ジヒドロ−ベンズオキサジン−6−イル)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボニトリルは、約99.90%純粋であった。
【0083】
おとり剤不在で反応を実施したとき、チオアミド不純物は約11〜約12%存在した。
【実施例3】
【0084】
2−チオフェンカルボニトリルとアルキルニトリルの間の競合

2−チオフェンカルボニトリル(1mmol)を、表2に示す芳香族ニトリル(1mmol)の存在下で含水THF(6mL)中のジエチルジチオホスフェート(200μL)と還流で反応させた。その後、望ましくないチオフェン−2−チオカルボン酸アミドの転化率を測定した。
【0085】
【表2】

【0086】
この実施例は、おとり剤を使用しないとき、反応性ニトリル、例えば2−チオフェンカルボニトリルのチオアミド不純物への転化率が高いことを示す。しかし、おとり剤を使用するときはチオアミド不純物への転化率が低下する。
【実施例4】
【0087】
2−チオフェンカルボニトリルとアセトニトリルの間の競合

2−チオフェンカルボニトリル(1mmol)を、表3に示すモル当量物を使用して含水THF中のジエチルジチオホスフェート(200μL)と還流で反応させた。その後、望ましくないチオフェン−2−カルボチオ酸アミドの転化率を測定した。
【0088】
【表3】

【0089】
この実施例は、アセトニトリルの量が上昇すると共にチオアミド不純物への転化率が低下したことを示す。
【実施例5】
【0090】
チオアミド不純物の形成へのアセトニトリルの作用

表4に示すニトリルを、含水THF(5mL)及びアセトニトリル(1mL=20モル当量)中のジエチルジチオホスフェート(200μL)と還流で反応させた。対照セットはTHF6mLを含み、アセトニトリルを含まなかった。66℃で5時間後、チオアミド不純物の存在を検出するために混合物をGC/MS分析に供した。
【0091】
【表4】

【0092】
この実施例は、アセトニトリルを含む試料中ではチオアミド不純物への転化が抑制されたことを示す。さらに、アセトニトリル及びp−メトキシベンゾニトリルを含む試料は、チオアミド不純物への転化が極めてわずかであった。
【実施例6】
【0093】
チオ化の間のおとり剤の使用

2Lフラスコに、1,2−ジメトキシエタン(2.1L)及び5−(スピロ[シクロヘキサン−1,3’−[3H]インドール]−2’−オキソ−5’−イル)−1H−ピロール−1−メチル−2−カルボニトリル(150g、0.49mol)、次いでローソン試薬(119g、0.295mol)及びアセトニトリル(0.3L、5.75mol)を負荷した、すなわちおとり剤対ニトリル化合物は12:1のモル比であった。この懸濁液を加熱して還流し、1時間保持した。周囲温度への冷却後、水(2.51L)を、30℃以下の温度を保持する速度で懸濁液に添加した。黄緑色がかった沈殿物を半融ガラス漏斗(fritted funnel)でろ過した。固体を反応フラスコに戻し、水(0.75L)中で一晩スラリーにした。黄色の懸濁液をろ過し、水(0.45L)で洗って、乾燥し、5−(2’−チオキソスピロ[シクロヘキサン−1,3’−[3H]インドール]−5’−イル)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボニトリル154gを得た(収率98%、HPLC面積により純度99.0%、融点269〜271.5℃、チオアミド不純物0.60%)。
【実施例7】
【0094】
チオ化の間のおとり剤の使用(スケールアップ)

本実施例では、[5−(2’−チオキソスピロ[シクロヘキサン−1,3’−[3H]インドール]−5’−イル)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボニトリル]のより大規模な生産を実施した。
【0095】
100ガロンの容器に、1,2−ジメトキシエタン(155.1kg、178.8L)及び5−(スピロ[シクロヘキサン−1,3’−[3H]インドール]−2’−オキソ−5’−イル)−1H−ピロール−1−メチル−2−カルボニトリル(12.78kg)、次いでローソン試薬(10.14kg)及びアセトニトリル(20.1kg、25.6L)を負荷した。容器の内容物を加熱して還流し、1時間保持した。橙褐色溶液を70℃に冷却し、0.2%未満の出発物質を示した試料を反応完了試験のために回収した。バッチを周囲温度に冷却し、水(213.9kg)を、23〜29℃の温度を保持する速度で負荷した。黄緑色がかった懸濁液を0.3SQM PSLフィルター/乾燥装置でろ過した。固体をフィルター/乾燥装置において水(63.9kg)中で15分間スラリーにした。黄色の懸濁液を100ガロン容器に移し、フィルターを容器内への水(2×10kg)で洗浄した。スラリーを18〜26℃で12時間攪拌し、0.3SQM PSLフィルター/乾燥装置でろ過して、水(2×19.2kg)で洗った。固体を真空オーブンにおいて最初は20〜30℃で、次に45℃で乾燥して、粗5−(2’−チオキソスピロ[シクロヘキサン−1,3’−[3H]インドール]−5’−イル)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボニトリル12.8kgを得た(収率95%、チオアミド不純物0.45%)。
【0096】
本明細書の中で引用する全ての刊行物は参照により本明細書に組み込まれる。本発明を特に好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明の精神から逸脱することなく変更を行い得ることは認識される。そのような変更は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリル基含有カルボニル化合物のチオ化においてチオアミド不純物の形成を予防する、低減する又は最小限に抑えるための方法であり、ニトリル基含有おとり剤の存在下で前記チオ化を実施することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記おとり剤のモル数が前記カルボニル化合物のモル数よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記おとり剤のモル数が前記カルボニル化合物のモル数よりも小さい、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記チオアミド不純物が、構造:
【化1】

[式中、
Yは、O又はSであり;
7は、H、NH2、NHR10、N(R102、C(O)R10、C(S)R10、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;
8は、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;又は
7とR8とは、
(i) 飽和炭素ベースの4〜8員環;
(ii) 不飽和炭素ベースの4〜8員環;又は
(iii) O、N及びSからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む4〜8員ヘテロ環
(但し、環(i)〜(iii)は、場合によりH、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、C1−C6アミノアルキル及び置換C1−C6アミノアルキルからなる群より選択される1〜3個の置換基によって置換されている。)
を形成するように縮合したものであり;
9は、不在、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;
10は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、NH2、NHR11及びN(R112からなる群より選択されるものであり;及び
11は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル及びNH2からなる群より選択されるものである。]
である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記チオアミド不純物が、構造:
【化2】

[式中、
1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであり;
7は、H、NH2、NHR10、N(R102、C(O)R10、C(S)R10、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;
8は、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;又は
7とR8とは、
(i) 飽和炭素ベースの4〜8員環;
(ii) 不飽和炭素ベースの4〜8員環;又は
(iii) O、N及びSからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む4〜8員ヘテロ環
(但し、環(i)〜(iii)は、場合によりH、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、C1−C6アミノアルキル及び置換C1−C6アミノアルキルからなる群より選択される1〜3個の置換基によって置換されている。)
を形成するように縮合したものであり;
10は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、NH2、NHR11及びN(R112からなる群より選択されるものであり;及び
11は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル及びNH2からなる群より選択されるものである。]
である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記チオアミド不純物が、構造:
【化3】

[式中、
1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであり;
2及びR3は、独立して、H、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであるか;
又はR2とR3は、−CH2(CH2nCH2−、−CH2CH2C(CH32CH2CH2−、−O(CH2pCH2−、−O(CH2qO−、−CH2CH2OCH2CH2−又は−CH2CH2NR6CH2CH2−を含む環を形成するように縮合したものであり;
nは1〜5であり;
pは1〜4であり;
qは1〜4であり;
4は、H、OH、NH2、CN、ハロゲン、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル又は置換C2−C6アルキニルであり;
5は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル又は置換C1−C6アミノアルキルであり;
6は、H又はC1−C6アルキルであり;
Qは、O又はSであり;
Xは、O、S又は不在である。]
又はその製薬上許容し得る塩である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記カルボニル化合物が、ケトン、エトン、アルデヒド、エステル、ラクトン、アミド、カルバメート、カルボネート又はエナミノンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記カルボニル化合物が、構造:
【化4】

[式中、
7は、H、NH2、NHR10、N(R102、C(O)R10、C(S)R10、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;
8は、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;又は
7とR8とは、
(i) 飽和炭素ベースの4〜8員環;
(ii) 不飽和炭素ベースの4〜8員環;又は
(iii) O、N及びSからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む4〜8員ヘテロ環
(但し、環(i)〜(iii)は、場合によりH、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、C1−C6アミノアルキル及び置換C1−C6アミノアルキルからなる群より選択される1〜3個の置換基によって置換されている。)
を形成するように縮合したものであり;
9は、不在、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;
10は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、NH2、NHR11及びN(R112からなる群より選択されるものであり;及び
11は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル及びNH2からなる群より選択されるものである。]
である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記カルボニル化合物が、構造:
【化5】

[式中、
1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであり;
7は、H、NH2、NHR10、N(R102、C(O)R10、C(S)R10、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;
8は、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換へテロアリールであり;又は
7とR8とは、
(i) 飽和炭素ベースの4〜8員環;
(ii) 不飽和炭素ベースの4〜8員環;又は
(iii) O、N及びSからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む4〜8員ヘテロ環
(但し、環(i)〜(iii)は、場合によりH、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、置換C2−C6アルキニル、C3−C8シクロアルキル、置換C3−C8シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、C1−C6アミノアルキル及び置換C1−C6アミノアルキルからなる群より選択される1〜3個の置換基によって置換されている。)
を形成するように縮合したものであり;
10は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル、NH2、NHR11及びN(R112からなる群より選択されるものであり;及び
11は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、アリール、置換アリール、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル、置換C1−C6アミノアルキル、C1−C6チオアルキル、置換C1−C6チオアルキル及びNH2からなる群より選択されるものである。]
である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記カルボニル化合物が、構造:
【化6】

[式中、
1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであり;
2及びR3は、独立して、H、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであり;
又は、R2とR3とは、−CH2(CH2nCH2−、−CH2CH2C(CH32CH2CH2−、−O(CH2pCH2−、−O(CH2qO−、−CH2CH2OCH2CH2−又は−CH2CH2NR6CH2CH2−を含む環を形成するように縮合したものであり;
nは1〜5であり;
pは1〜4であり;
qは1〜4であり;
4は、H、OH、NH2、CN、ハロゲン、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル又は置換C2−C6アルキニルであり;
5は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル又は置換C1−C6アミノアルキルであり;
6は、H又はC1−C6アルキルであり;
Xは、O、S又は不在である。]
又はその製薬上許容し得る塩である、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記おとり剤が、前記カルボニル化合物のニトリル基と構造において類似する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記おとり剤がアセトニトリルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記おとり剤が電子求引性置換基を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記おとり剤がクロロアセトニトリル又はトリクロロアセトニトリルである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記おとり剤が、ベンゾニトリル、p−クロロベンゾニトリル、p−エトキシベンゾニトリル、p−メトキシベンゾニトリル、o−ニトロベンゾニトリル、p−アセチルベンゾニトリル、p−メチルベンゾニトリル、p−フルオロベンゾニトリル及び1,3−ジシアノベンゼンからなる群より選択されるアリールニトリルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記おとり剤が、N−メチル−2−ピロールカルボニトリル、2−チオフェンカルボニトリル、2−シアノピリジン、3−シアノピリジン及び4−シアノピリジンからなる群より選択されるヘテロアリールニトリルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記チオ化が、硫化水素、ローソン試薬、五硫化リン及びジエチルジチオホスフェートからなる群より選択されるチオ化剤で実施される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって製造される生成物。
【請求項19】
式:
【化7】

[式中、
1は、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであり;
2及びR3は、独立して、H、C1−C6アルキル又は置換C1−C6アルキルであるか;
又はR2とR3は、−CH2(CH2nCH2−、−CH2CH2C(CH32CH2CH2−、−O(CH2pCH2−、−O(CH2qO−、−CH2CH2OCH2CH2−又は−CH2CH2NR6CH2CH2−を含む環を形成するように縮合したものであり;
nは1〜5であり;
pは1〜4であり;
qは1〜4であり;
4は、H、OH、NH2、CN、ハロゲン、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、置換C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル又は置換C2−C6アルキニルであり;
5は、H、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、置換C1−C6アルコキシ、C1−C6アミノアルキル又は置換C1−C6アミノアルキルであり;
6は、H又はC1−C6アルキルであり;
Xは、O、S又は不在である。]
を有する化合物又はその製薬上許容し得る塩を製造するための方法であり、式:
【化8】

[式中、R1〜R6、n、p、q及びXは上記で定義したとおりである。]
を有するカルボニル化合物とチオ化剤を反応させることを含む前記方法における、ニトリル基含有おとり剤の使用であって、
前記おとり剤が前記カルボニル化合物中に存在する1又はそれ以上のニトリル基のチオ化を予防又は低減する、
前記使用。
【請求項20】
前記チオ化剤が、硫化水素、ローソン試薬、五硫化リン及びジエチルジチオホスフェートからなる群より選択されるものである、請求項19記載の使用。
【請求項21】
前記おとり剤が、ベンゾニトリル、p−クロロベンゾニトリル、p−エトキシベンゾニトリル、p−メトキシベンゾニトリル、o−ニトロベンゾニトリル、p−アセチルベンゾニトリル、p−メチルベンゾニトリル、p−フルオロベンゾニトリル及び1,3−ジシアノベンゼンからなる群より選択されるアリールニトリルである、請求項19又は20記載の使用。
【請求項22】
前記おとり剤が、N−メチル−2−ピロールカルボニトリル、2−チオフェンカルボニトリル、2−シアノピリジン、3−シアノピリジン及び4−シアノピリジンからなる群より選択されるヘテロアリールニトリルである、請求項19又は20記載の使用。
【請求項23】
前記おとり剤が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、クロロアセトニトリル、トリクロロアセトニトリル及びマロノニトリルからなる群より選択される脂肪族ニトリルである、請求項19又は20記載の使用。
【請求項24】
前記おとり剤対前記カルボニル化合物のモル比が1:1より大きい、請求項19〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記チオ化反応が、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、塩化メチレン及びトルエンからなる群より選択される溶媒中で実施される、請求項19〜25のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2007−532581(P2007−532581A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507577(P2007−507577)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/013657
【国際公開番号】WO2005/100347
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】