説明

チタン−銅−ニッケルベースの合金の使用

チタン−銅−ニッケルベースの合金の使用を提供する。前記チタン−銅−ニッケルベースの合金は、高分子基板上に少なくとも1つの抵抗薄膜を形成することに使用される。前記合金は、50から80重量%のチタンと、10から25重量%の銅と、10から25重量%のニッケルと、を含み、前記薄膜の厚さは、約100から160ナノメートルである。前記合金は、有利には、69重量%のチタンと、15.5重量%の銅と、15.5重量%のニッケルとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも側部の一方が加熱帯を構成するように配置された高分子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に抵抗発熱体を用意するために様々な技術的解決手段が提案されている。例えば、銅線を含む抵抗の形態の発熱体は、例えば基板に接続することができる。しかしながら、この解決手段は、時間と費用がかかる製造工程を必要とし、集積化の制約を生じるので、満足がいくものではない。また、この解決手段は、その環境の湿度の変化に関連する発熱体の少なくとも部分的な剥離を加熱サイクル中に起こす傾向にある。
【0003】
この結合に置き換わる他の解決手段は、抵抗物質の電界析出である。しかしながら、得られる付着レベルが満足のいくものではないことに加え、発熱体には、選択的な堆積、エッチングまたはマーキングの複合法によって抵抗回路を用意することなく発熱体を構成するためには抵抗が低すぎる僅かな材料しか堆積できないという限界がある。
【0004】
上記の点において、満足がいく抵抗を有する材料の選択の幅を広くし、高くて耐久性のある付着性を得ることをもたらすこの問題を解決するために、真空蒸着技術、特にカソードスパッタリングは、満足のいく解決方法を提供するだろう。
【0005】
米国特許6,365,483号には、当業者に良く知られた抵抗材料を真空蒸着することによる発熱システムの製造方法が記述されている。この文献に記載された技術的な解決手段は、時間と費用がかかる工程をもたらし、所望の抵抗の膜を得るためのフォトリソグラフィ技術によって抵抗回路を用意するための少なくとも1つのステップを必要とするので、満足がいくものではない。
【0006】
解決されるべき他の技術的な課題は、加熱システムが腐食環境で動作しなければならい場合において、用途に応じて使用される材料に関するものである。これは、例えば、自動車の後方ミラーの曇り除去における場合であり、ここで、反射部を受容する基板は加熱されることができる。この抵抗薄膜、すなわち加熱薄膜は、このようなタイプの環境に耐えなければならない。さらに、この抵抗薄膜は、有利には、例えば12Vまたは48Vの電圧が印加可能でなければならないが、完全に当業者に周知の理由(クラッキング、残留応力など)で費用を増大し、寿命を低下させることを防止するために厚すぎてはいけないし、通常の方法によって容易に制御されるほど薄過ぎてもいけない。一方で所定の厚さから生じ、他方で電源電圧における要求から生じるこの二重の制約は、材料の選択において避けることができない必須の抵抗範囲を限定する。
【0007】
現在利用可能でそれらの抵抗特性において知られた材料がこれらの目的を達成するために相応しくないことは明らかである。
【0008】
驚くことに、そして予期せぬことに、チタン−銅−ニッケルベースの合金は、提示された問題を解決するために満足のいく解決方法を構成する。それは、このような合金が、200から300μΩ/cmの抵抗率と、NFX41002標準に従って優れた耐食性(塩霧中で400時間以上)とを有するからである。
【0009】
このようなチタン−銅−ニッケル合金は、生体適合性(米国特許4,774,953号)に利用可能なろう付け合金(米国特許3,651,099号、3,652,237号)、または、金属マトリクス複合材の接着促進剤(米国特許410,133号、米国特許5,645,747号、米国特許5,530,228号)として当業者に完全に知られているが、それらがどのような抵抗特性を有するかは知られておらず、このような特性を報告する文献は無い。
【0010】
薄膜に堆積されるほとんどの材料に反して、いくつかの加熱冷却サイクルの後でさえも、この範囲のチタン−銅−ニッケル合金が一定の抵抗率を維持する特定の特徴を有するということが見られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発見を考慮して、本発明は、基板上に少なくとも1つの抵抗薄膜を形成するためのチタン−銅−ニッケルベースの合金の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
所定の厚さを有する抵抗薄膜を用意するために提示された問題を解決するために、本発明の合金は、カソードスパッタリングによって基板に付けられる。この薄膜の厚さは、約100から160ナノメートルである。
【0013】
有利には、前記合金は、質量分率で69重量%のチタンと、15.5重量%の銅と、15.5重量%のニッケルと、を含む。より一般的には、前記合金は、50から80重量%のチタンと、10から25重量%の銅と、10から25重量%のニッケルと、を含む。
【0014】
ある典型的な実施形態によれば、前記基板は、前記チタン−銅−ニッケル合金を含む前記抵抗薄膜で被覆された側に対向する側の平面であって反射膜で被覆された平面を構成し、前記抵抗薄膜は、約12Vまたは48Vの電圧を前記抵抗薄膜に加える電源に提供される。
【0015】
前記基板は、有利には、特に前記ミラーの曇り除去用の前記抵抗薄膜を用いることによって自動車の後方ミラーの“ミラー”部分における支持体を構成する。
【0016】
本発明は、以下に提供される例からより明らかになるであろう。しかし、それらは限定的なものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(本発明による例)
長方形状のポリカーボネート基板に12Vの電源電圧を用いて12Wの電力を供給する必要があり、それによって12Ωの総抵抗を有する抵抗膜を画定することがもたらされる。Ti:69、Cu:15.5、Ni:15.5(質量分率)を有するチタン−銅−ニッケル合金薄膜をプラズマ蒸着(PVD)によってこの表面に付けることによって、その抵抗率は、250μΩ/cmであると測定され、130ナノメートルの膜厚において12Ωの抵抗が得られる。それによって得られた抵抗薄膜は、この薄膜のあらゆる剥離及び劣化なしに、12Vの電圧下で1000時間にわたって12Wの電力を供給するのに役立つ。この試験が完成すると、抵抗率は、その初期値からほんの3%だけ変化した。さらに、NFX41002標準による塩霧に晒しても、その抵抗率は変化しなかった(他の例が、本発明によって同様に提供された。)。
【0018】
(本発明を構成しない例)
この例は、Ti:2、Cu:66、Ni:32の重量組成を有するチタン−銅−ニッケル合金である。その抵抗率は42μΩ/cmであり、例1と同じ条件において、22ナノメートルの膜厚において12Ωの抵抗をもたらし、それは、非平面部材上で全く非実現的である。
【0019】
純粋なチタン膜を用いて試験が行われ、その抵抗率は140μΩ/cmであると測定された。従って、この膜に必要な厚さは、90から100ナノメートルである。同様に、4%のバナジウムを含むニッケル/バナジウム合金は、この用途において知られており、その80μΩ・cmの抵抗率は、厚さが20から50ナノメートルの膜をもたらす。これらの厚さは、周知の工業的方法によって得られる十分な信頼性を有する厚さの限界に近い。さらに、100ナノメートル未満の厚さにおける高分子基板上において、この抵抗薄膜の早期の破壊を引き起こすことなしに12Wの電力を供給することが不可能であることが見られる。
【0020】
本発明は、明確に記載された実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲の範囲内に包含される多岐にわたる代案及びその一般化を含む。
【0021】
これらの利点は、詳細な説明に明らかに現れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子基板に少なくとも1つの抵抗薄膜を形成するためのチタン−銅−ニッケルベースの合金の使用。
【請求項2】
前記合金は、蒸着によって前記基板に付けられることを特徴とする、請求項1に記載の合金の使用。
【請求項3】
前記合金は、50から80重量%のチタンと、10から25重量%の銅と、10から25重量%のニッケルと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の合金の使用。
【請求項4】
前記薄膜の厚さは、約100から160ナノメートルであることを特徴とする、請求項1に記載の合金の使用。
【請求項5】
前記合金は、有利には、69重量%のチタンと、15.5重量%の銅と、15.5重量%のニッケルとを含むことを特徴とする、請求項3に記載の合金の使用。
【請求項6】
前記基板は、前記チタン−銅−ニッケル合金を含む前記抵抗薄膜で被覆された側に対向する側の表面であって反射膜で被覆された表面を構成し、前記抵抗薄膜は、約12Vの電圧を前記抵抗薄膜に加える電源に提供されることを特徴とする、請求項1に記載の合金の使用。

【公表番号】特表2008−519162(P2008−519162A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539619(P2007−539619)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050882
【国際公開番号】WO2006/048568
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(506126266)
【Fターム(参考)】