説明

チタン表面上の一体型ホウ化チタンコーティングおよび関連方法

ホウ化されたチタンの物品は、一ホウ化チタンウィスカーを有するチタン塊を含み得、この一ホウ化チタンウィスカーがそのチタン塊の表面から内部に溶浸して、一体化した表面硬化領域を形成する。このチタン塊は、高純度チタン、商業グレードチタン、α−チタン合金、α+β チタン合金、β−チタン合金、チタン複合材およびこれらの組み合わせなどの、ほとんど任意のチタンベースの金属または合金であり得る。ホウ化されたチタンの物品は、チタン塊を提供する工程、このチタン塊の表面をホウ素源媒体と接触させる工程、およびこのチタン塊およびこのホウ素源媒体を約700℃〜約1600℃の温度に加熱する工程を包含する方法により、生成され得る。このホウ素源媒体は、ホウ素源、および一ホウ化チタンウィスカーの促進された成長を提供するために選択される活性化剤を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2002年11月15日出願の米国仮特許出願第60/426,636号の利益を主張し、この米国仮特許出願は、本宣言によって、参考として援用される。本発明は、陸軍研究事務所(Army Research Office)により授与された助成金番号DAAL−19−99−1−0281の下で、政府の支援を受けて実施された。米国政府は、本発明に対して、所定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般にチタンコーティングに関する。さらに詳細には、本発明はチタン表面上のホウ化チタンコーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
チタンおよびチタン合金は、実にさまざまな構造的および工業的適用において有用である。チタンおよびその合金は、一般に、低密度、高剛性、高強度、および良好な腐食耐性により特徴付けられる。航空宇宙産業が、現在、チタンおよびその合金の主な消費者である。さらに、チタンを使用することに対する最近の興味が、化学産業、石油化学産業、および医薬品産業などの他の産業において増加し始めてきている。しかしながら、現在の超硬合金代替物に比較すると、チタンおよびその合金は、より低い表面硬度、磨耗耐性、腐食耐性、より低い酸化耐性、かじり、および機械的接触における場合の表面の溶着、という欠点を有する。
【0004】
チタンおよびその合金の表面特性を改善するために、多くの方法が開発されている。例えば、チタン表面は、イオン注入、レーザー気体窒化処理、電子ビーム表面合金化、ならびに物理的蒸着および化学的蒸着など、多くの公知の技術を用いて、窒化チタンおよび炭化チタンで被覆されうる。さらに、チタン表面のホウ素合金化が、レーザー照射および電子ビーム照射などの手法により達成されている。これらの方法のいくつかは、著しく改善された表面特性を有するチタンを生産してきた。しかしながら、そのような方法は、しばしば、かなりの装置費用および延長された製造時間を包含し、このことが最終製品を相対的に高価なものにする。加えて、これらの方法のいくつかは、達成可能なコーティング厚みに関して限界を有している。さらに、レーザー法および電子ビーム法はまた、チタンの表面領域の融解を引き起こし、このことがこの金属の酸化、表面構造の粗雑化、および劣等な特性につながる。しばしば、これらの方法はまた、チタン表面上に、モノリシックなコーティング構造を生成し、その表面は、適用された応力の下で、ひび割れたり剥落したりする傾向がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この理由および他の理由から、チタンおよびその合金の表面特性を改善しうる方法および材料に対する必要性が依然としてある。そのチタンおよびその合金は低減された製造コストならびに磨耗および酸化に対する改善された耐性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
それゆえに、高い磨耗耐性、腐食耐性、および酸化耐性、ならびにかじりに対する耐性および他の表面と接触した場合における溶着に対する耐性を有するチタン材料を生産する、改善された方法および材料を開発することは有利である。本発明は、上記の難点の多くを回避するウィスカーでホウ化されたチタンの物品を生産する方法および材料を提供する。
【0007】
本発明の一つの局面において、ホウ化されたチタンの物品は、一ホウ化チタンウィスカー(titanium monoboride whisker)を有するチタン塊を含み得、この一ホウ化チタンウィスカーがそのチタン塊を溶浸して、表面硬化領域を形成する。この表面硬化領域は、従来のコーティングとは異なり、チタン塊の一体となった部分となり得る。このチタン塊は、高純度チタン、商業グレードチタン、α−チタン合金、α+β チタン合金、β−チタン合金、およびこれらの組み合わせなどの、ほとんど任意のチタンベースの金属または合金であり得る。
【0008】
本発明の別の局面において、そのホウ化されたチタンの物品は、1個以上の二ホウ化チタン層を表面硬化領域に隣接して含み得る。
【0009】
本発明の一つの局面に従って、ウィスカーでホウ化されたチタンの物品を生成する方法は、チタン塊を提供する工程、このチタン塊の表面をホウ素源媒体と接触させる工程、およびこのチタン塊およびこのホウ素源媒体を約700℃〜約1600℃の温度に加熱する工程を包含しうる。このホウ素源媒体は、ホウ素源、および一ホウ化チタンウィスカーの促進された成長を提供するために選択される任意の活性化剤を含み得る。本発明の一局面において、このホウ素源媒体は、本質的にホウ素源からなり得る。あるいは、このホウ素源媒体は、ホウ素源および活性化剤を含み得る。このホウ素源媒体は、固体粒子状混合物として、液体混合物として、または気体状混合物として提供され得る。加熱工程の間、ホウ素源媒体由来のホウ素がチタン塊に向かって拡散し、そのチタン塊の中へ溶浸し、一ホウ化チタンウィスカーが形成され、このことが、この処理された表面の表面硬度、腐食耐性、および磨耗耐性を向上させる。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な記載から明白であり、その記載は、例として本発明の特徴を例示する。
【0011】
図面のいくつかは一定の比率で描かれているわけではなく、本発明の物理的寸法に関する限定はそれにより意図されていないことに注意しなければならない。例えば、上記層および領域の厚さは例示されたものから著しく変化してもよい。当業者は、下記の詳細な説明を考慮して様々な適用に対して使用され得る厚みおよび寸法を認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(詳細な説明)
ここで、例示的な実施形態に対して言及がなされ、この実施形態を記述するために、特定の用語が本明細書中で使用される。しかしながら、本発明の範囲の限定はそれによって意図されていないことは理解される。当業者および本開示を考慮したときに浮かぶであろう、本明細書中で記載される発明の特徴を有する変更物およびさらなる改変物、ならびに本明細書中で記載される通りの本発明の原理のさらなる適用は、本発明の範囲内と考えられるべきである。さらに、本発明の特定の実施形態が開示され、そして記載される前に、本発明が、本明細書中に開示される特定のプロセスおよび材料に限定されないこともまた理解されるべきである。なぜなら、本明細書中に開示される特定のプロセスおよび材料はある程度変化してもよいからである。本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲およびそれの均等物によってのみ定義されるので、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を記述するためにだけ使用され、その用語が限定的であることを意図されていないこともまた理解されるべきである。
【0013】
(定義)
本発明を記述し、本発明を権利主張する場合に、以下の用語が使用される。
【0014】
単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに異なる意味を示さない限り、複数形表示を含む。従って、例えば、「表面硬化領域(a surface hardened region)」への言及は、1個以上のそのような領域への言及を含み、「ホウ素源(a boron source)」は1個以上のそのような材料への言及を含む。
【0015】
本明細書で使用される場合には、「ウィスカー」とは、高い縦横比、すなわち5:1より大きい縦横比を有するナノ構造体をいう。代表的には、ウィスカーはほぼ多角形の断面を有し;しかしながら、断面は、図2に見られるように、例えば、6角形状、ダイヤモンド状、および円形状に多少は変化するかも知れない。ウィスカーの直径は、もっとも頻繁には、ナノメーターの範囲にある;しかしながら、好適な直径は約100nm〜約600nmであるが、直径は約50nm〜約3μmの間を変動しうる。
【0016】
本明細書で使用される場合には、「溶浸する(infiltrating)」とは、外部の位置から、代表的には、別の材料の表面から、この別の材料の間隙空間を浸透する材料をいう。
【0017】
本明細書で使用される場合には、「ホウ化された(borided)」とは、組成物または材料中のホウ素の存在をいう。さらに、ホウ化された、は、この組成物または材料を密着した塊の形にするのに引き続いて、このホウ素がこの組成物または材料に導入されることを示すために使用される。
【0018】
本明細書で使用される場合には、「活性化剤(activator)」とは、一ホウ化チタンウィスカーの成長を助長しうる任意の材料をいう。正確なメカニズムは決して限定されないが、この活性化剤は基体中へのホウ素原子の移動性および拡散を増加するために作用し得る。加えて、適切な活性化剤は一ホウ化チタンウィスカーの生成に必要とされる活性化エネルギーを低下させ得る。
【0019】
本明細書で使用される場合には、「非晶質(amorphous)」とは、材料の非結晶の状態をいう。従って、非晶質の材料は、完全にまたは少なくとも実質的に、非晶質であり得る。非晶質固体は、代表的には、個々の原子が結晶格子を形成することを許さない、液体材料の急冷によって製造される。
【0020】
本明細書で使用される場合には、「高純度チタン(high purity titanium)」とは、0.1未満の原子百分率の不純物を有する、実質的に純粋なチタンをいう。
【0021】
本明細書で使用される場合には、「商業グレードのチタン(commercial grade titanium)」とは、約0.1原子百分率〜約2原子百分率の不純物を有する、実質的に純粋なチタンをいう。通常の不純物としては、O、Fe、Pd、および他の痕跡量の元素が挙げられ得る。
【0022】
本明細書で使用される場合には、「α−チタン合金(α−titanium alloy)」とは、Al、O、Zr、Sn、Mo、N、V、C、Ta、Si、およびこれらの組み合わせを含有するチタンの合金をいう。いくつかの例示的なα−チタン合金としては:Ti−5Al−2.5Sn、Ti−8Al−1Mo−1V、およびTi−6Al−2Nb−1Ta−1Mo(組成は、重量パーセントで提供される)が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される場合には、「α+β チタン合金(α+β titanium alloy)」とは、Al、O、Zr、Sn、Mo、N、V、C、Ta、Si、およびこれらの組み合わせ、ならびにFe、V、Mo、Cr、Nb、W、Ta、およびこれらの組み合わせなどのβ−安定化元素を含有するチタンの合金をいう。いくつかの例示的なα+β チタン合金としては:Ti−6Al−4V、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo、およびTi−6Al−2Sn−4Zr−6Mo(組成は、重量パーセントで提供される)が挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される場合には、「β−チタン合金(α−titanium alloy)」とは、相対的に大量のFe、V、Mo、Cr、Nb、W、Ta、およびこれらの組み合わせ、ならびにより少量のAl、O、Zr、Sn、Mo、N、V、C、Ta、Si、およびこれらの組み合わせを含有するチタンの合金をいう。いくつかの例示的なβ−チタン合金としては:Ti−10V−2Fe−3Al、Ti−15Mo−5Zr−3Al、およびTi−13V−11Cr−3Al(組成は、重量パーセントで提供される)が挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される場合には、「β−トランザス温度(β−transus temperature)」とは、材料がα相からβ相への相転移、すなわち、特定の材料に関連するβ相への結晶構造の変化、を受ける温度をいう。チタンおよびその合金のβ−トランザス温度は組成の関数であることに注意すべきである。例えば、商業グレードのチタンは、約860℃のβ−トランザス温度を有し、その一方で6wt%Alおよび4wt%Vを有するα+β チタン合金は、約1010℃のβ−トランザス温度を有する。
【0026】
本明細書で使用される場合には、「基体(substrate)」とは、一材料に力学的支持および力学的特性を賦与しうる、ひとかたまりの材料をいう。
【0027】
本明細書で使用される場合には、「領域(region)」とは、材料の、規定された面積または体積をいう。領域は、異なる組成を有する2個の材料の間の明瞭な界面、または一領域から隣接する領域へのゆるやかな組成変化のいずれかにより識別され得、そして結合され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合には、「隣接する(adjacent)」とは、少なくとも2個の材料の空間的関係をいい、ここでそれらの材料は共通の境界を有する。
【0029】
本明細書で使用される場合には、「主に(primarily)」とは、組成物の50%を超える割合を占める、識別された要素の量をいう。
【0030】
本明細書で使用される場合には、「実質的に含まない(substantially free of)」とは、組成物中における有意義な量の識別された要素または薬剤の欠如をいう。とりわけ、「実質的に含まない」と識別された要素は、その組成物に完全に不在であるか、またはその組成物の識別された性質に対して測定可能な効果を及ぼさないほどに十分少ない量を含有するかのいずれかである。
【0031】
濃度、寸法、量、および他の数値データは、本明細書中で範囲の書式で提示されるかもしれない。そのような範囲の書式は単に便宜および簡潔のために使用されており、その範囲の限界として明示的に列挙される数値を含むだけでなく、まるで各数値および部分的範囲が明示的に列挙されるかのように、その範囲内に含まれる個々の数値または部分的範囲のすべてをも含むと柔軟に解釈されるべきであるということが理解されるべきである。例えば、約1μm〜約200μmのサイズ範囲は、約1μmおよび約200μmという明示的に列挙される限界だけを含むのではなく、2μm、3μm、4μmなどの個々のサイズ、ならびに10μm〜50μm、20μm〜100μmなどの部分的範囲をも含むと解釈されるべきである。
【0032】
(ホウ化されたチタンの物品)
ここで、図1に言及すると、本発明の一実施形態に従って、ウィスカーでホウ化されたチタンの物品10は、チタン塊12を含有し得、このチタン塊12は一ホウ化チタンウィスカーを有し、この一ホウ化チタンウィスカーがそのチタン塊を溶浸して、表面硬化領域14を形成する。この表面硬化領域は、このチタン塊の表面全体を被覆してもよく、または単にその表面の一部を被覆してもよい。本発明の一局面において、その表面硬化領域はチタン基体の中へ成長される一ホウ化チタンウィスカーにより特徴付けられうる。これらの一ホウ化チタンウィスカーは、そのチタン塊の外部表面から主に開始され得る。従って、そのウィスカーは、主に、そのチタン塊の内部へと溶浸される。図2に見られるように、そのウィスカーの多数は、小さい針状構造体として見られ、その表面から離れる、方向付けられたパターンで、配向されている。一般に、そのウィスカーは、図2に示されるように、そのチタン塊の結晶学上の面に沿って2方向のパターンで成長しうる。このウィスカーは、所定の条件下では多少ランダムになりうるが、もっとも通常には、その一ホウ化チタンウィスカーは二方向性であり、代表的には、そのウィスカーが溶浸されるチタン塊の表面に対する法線から約45°未満である。さらに、本発明のウィスカーは、図2に示されるもののように、相互に織られたウィスカー構造または相互に連結したウィスカー構造を形成する傾向がある。本発明の詳細な一局面において、この一ホウ化チタンウィスカーは、表面からの識別されうる成長起点を示す構造を有し得る。本発明の一ホウ化チタン構造は、チタン塊の中へ溶浸され、最終のホウ化されたチタンの物品の一体化した部分を形成する。従って、本発明の表面硬化領域は、簡単には剥離されず、また簡単には表面から分離されない。そのような構造体は、このチタン塊の外部表面上に付加的な層を代表的に形成する、炭化チタンおよび窒化チタンなどの典型的なコーティング工程を超える、改善された表面特性を有すると考えられる。
【0033】
本発明の一ホウ化チタンウィスカーは実にさまざまな寸法を有し得る。一局面において、この一ホウ化チタンウィスカーは、約10μm〜約700μmの平均長を有し得る。現在好適な局面において、この一ホウ化チタンウィスカーは、約50μm〜約300μmの平均長を有し得る。同様に、この一ホウ化チタンウィスカーの平均直径は、約100nm〜約2μmであり得、好適には約100nm〜約600nmの範囲であり得る。さらに別の詳細な局面において、この一ホウ化チタンウィスカーは、約5:1〜約1000:1の平均縦横比を有し得る。これらの範囲外の寸法もまた使用され得るが、上記の範囲が、硬度、磨耗耐性、酸化耐性、腐食耐性、ならびに低減されたかじりおよび低減された溶着などのチタン表面特性において、顕著な改善を提供する。
【0034】
使用されるチタン塊およびこの一ホウ化チタンウィスカーを生成する際に用いられる特定の条件に依存して、この表面硬度は、一般に、約150kgf/mm〜約3500kgf/mmの範囲であり得る。本発明の一局面において、このホウ化されたチタンの物品の表面硬度は、約1800kgf/mm〜約3500kgf/mmの範囲であり得る。
本発明のさらなる局面では、最終のホウ化されたチタンの物品の表面硬度が、非ホウ化のチタン塊よりも約2〜約8倍硬く、好適には約4〜約5倍硬くなり得る。
【0035】
図1の実施形態は、チタン領域16のどちらかの側に表面硬化領域14を示す。この実施形態において、チタン塊12は、その中に一ホウ化チタンウィスカーが溶浸されている。表面硬化領域14は高濃度のウィスカーにより特徴付けられる。代表的には、この一ホウ化チタンウィスカーは、この表面硬化領域の約50wt%〜約95wt%を構成し得る。図2から見られるように、この表面硬化領域とバルクのチタン領域との間の境界は、図1に示されるほどには、必ずしも明瞭ではない。とりわけ、ウィスカーの濃度は、代表的には、チタン塊の中へさらに深くなるにつれて減少する。本発明の詳細な一局面において、この表面硬化領域が、約15μm〜約400μmの平均厚みを有し得る。当業者なら、この範囲の外側の、有益な厚みもまた、下記の方法を用いて製造され得、そのような厚みは本発明の範囲内であると考えられることを認識する。研究は、少量(例えば、数重量パーセント未満)の二ホウ化チタンもまたこの表面硬化領域中に存在し得ることを示した。
【0036】
そのようなホウ化されたチタンの物品を生成するために用いられる、以下に記述される方法に関連して記述されるように、少数のウィスカーが存在する領域が、しばしば存在し得る。代表的には、この領域は約0.5wt%未満の一ホウ化チタンウィスカーを有し得る。図3から見られるように、少量の一ホウ化チタンウィスカーでさえ、改善された硬度に影響し得る。図3は、いくつかの、本発明に従う、薄い、すなわち1mmのホウ化された物品の硬度プロフィールを示す。この表面硬化領域は、その物品の両側に、約100μm〜約200μmの間の厚みで存在する。本発明のこの実施形態において、表面硬度は、約150kgf/mm〜約550kgf/mmの範囲にわたり得る。図3の実施形態で使用された、商業的に純粋なチタン基体箔が、Vickerの尺度で約98kgf/mmの硬度を有することに注意すべきである。従って、非常に少ないウィスカーを有する中心領域でさえも、わずかに改善された特性を有する。図4は、少痕跡量の一ホウ化チタンウィスカーをその中心領域内に有する、そのような中心領域の顕微鏡写真を示す。これらのウィスカーは、代表的には、表面からは成長されず、むしろランダムに沈降してバルクのチタン塊内部で様々な点で成長を始める。本発明のホウ化されたチタンの物品は、磨耗耐性などの劇的に改善された表面特性を示す。例えば、100μmガーネット粒子を含む150グリットのガーネットクロスに対して、約2MPaの表面圧力を伴い研磨されたときに、非ホウ化チタン塊に対する約40mgの物質損失と比較して、このホウ化されたチタンの物品の代表的な磨耗性能は、約1mg未満の物質損失であり得る。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態において、上記ホウ化されたチタンの物品が表面硬化領域と実質的に一ホウ化チタンウィスカーを含まないチタン領域とを有するほどに、このチタン塊は大きな塊であり得る。チタン塊が、そのチタン塊の内部がウィスカーを含有するに十分に薄い以前の実施形態とは異なり、数ミリメートルの厚みからほとんど任意の実用的な厚みを有するより大きなチタン塊が、本質的にウィスカーが存在しない領域を持ち得る。本発明のさらに別の代替的実施形態において、この表面硬化領域は、実質的にすべてのチタン塊を構成し得る。一ホウ化チタンウィスカーの特定の寸法および特定の特徴は、より詳細に以下に記述される、プロセス条件および使用された材料により、およそ決定される。
【0038】
ふたたび、図1に言及すると、このホウ化されたチタンの物品10は、この表面硬化領域14に隣接して、1個以上の二ホウ化チタン層18(図5の下部の灰色の層としても示され、破線でマークされている)をさらに含み得る。その外部表面の一部が、この灰色の範囲の下のより明るい範囲として目に見えるように、図5に示される二ホウ化チタン層は、印刷されたページの法線からわずかに傾いていることに注意すべきである。この任意の二ホウ化チタン層は、さらなる表面磨耗耐性、硬度、酸化耐性、および腐食耐性を賦与し得る。加えて、そのような二ホウ化層は、上記一ホウ化チタンウィスカーに対するアンカーとして作用し得、上記表面硬化領域の特性をさらに向上させ得る。この実施形態の詳細な一局面において、この二ホウ化チタン層は、約5μm〜約10μmの厚みを有し得るが、意図された適用に依存して、他の厚みが使用され得る。
【0039】
本発明のホウ化されたチタンの物品は、かなり多数の適用において使用され得る。この表面硬化されたチタンの物品は、高強度、低密度、高剛性、ならびに良好な腐食耐性および良好な酸化耐性を有する一方で、良好な磨耗耐性および高表面硬度を示す材料が要求される適用において、とりわけ興味深くあり得る。本発明のホウ化されたチタンの物品を組み込み得る、適切な適用のいくつかの非限定的な例としては、整形外科デバイス、歯車、軸受(玉軸受、棒軸受などを含む)、ピン、リベット、ナイフ、剃刀、メス、および銃身などが挙げられる。本発明のさらなる局面において、この表面硬化領域および随意の二ホウ化チタン層はまた、電気伝導性でもある。この電気的特性はスパークによって誘起される浸食に対する耐性が望ましい適用において有用であり得る。
【0040】
(例示的な製造方法)
本発明のホウ化されたチタンの物品を製造するために、様々な方法が用いられ得る。ここで、図6に言及すれば、ホウ化されたチタンの物品を製造する方法は、チタン塊22を提供する工程を包含し得、このチタン塊22は、図1に示される最終物品のチタン塊12にほぼ対応する。このチタン塊は、後で表面処理される固体チタン基体として提供され得る。あるいは、そのチタン塊は、上記基体の固化および生成が、一ホウ化チタンウィスカーの生成とほとんど同時に達成される粉末として提供され得る。従って、このチタン塊は、固体の塊でも、燒結された塊でも、部分的に焼結された塊でも、多孔性の塊でも、半多孔性の塊でも、または粉末状にされた塊でもあり得る。燒結された塊、部分的に焼結された塊、多孔性の塊、および半多孔性の塊は、上記チタン塊の表面へのウィスカーの成長の、向上した溶浸をもたらし得る。しかしながら、時には、既存の固体チタン基体を表面硬化することが望ましいこともあり得る。当業者は、特定の適用に適切かもしれないチタン塊の、異なるバリエーションを認識する。
【0041】
上記チタン塊の使用のための適切な材料は、ほとんど任意のチタンベースの金属、複合材、または合金を含み得る。本発明の詳細な一局面において、このチタン塊は、高純度チタン、商業グレードチタン、α−チタン合金、α+β チタン合金、β−チタン合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含み得る。本発明のさらなる詳細な局面において、このチタン塊は、商業グレードチタンを含み得る。チタン含量はかなり変化し得るが、代表的には、このチタン塊は、約60wt%を超えるチタン含量を有するチタン合金であり得る。さらには、実に様々なチタン複合材もまた、本発明の方法を用いて処理され得ることが理解される。適切なチタン複合材の、いくつかの非限定的な例としては、チタンコーティグされた材料、セラミック炭化物、セラミック窒化物、セラミック酸化物、または他の研磨剤を含むチタン塊、SiC、TiC、TiB、SiおよびAlなどの補強材を含む微粒子状、繊維状、もしくは短繊維の強化チタン複合材などが挙げられる。
【0042】
再び、図6に言及すれば、チタン塊22の表面は、ホウ素源媒体24と接触されて、チタンホウ素前駆体20が形成され得る。このホウ素源媒体は、一ホウ化チタンウィスカーの成長を提供するために選択されるホウ素源を含み得る。このホウ素源媒体は、固体粒子状混合物、液体混合物、または気体混合物として提供され得、これらの各々は以下でより詳細に記載される。本発明の一局面において、このホウ素源媒体は、ホウ素源および活性化剤を含み得る。あるいは、このホウ素源媒体は、本質的にホウ素源からなり得る。次いで、上記チタン塊およびホウ素源媒体は、一ホウ化チタンウィスカーがこのチタン塊の領域に溶浸されるように、約700℃〜約1600℃の温度に加熱され得る。代表的には、常圧〜中程度の圧力のいくつかの雰囲気が用いられ得る。さらには、本発明の方法は、水素または希ガスなどの不活性雰囲気中で、好適に実施され得る。
【0043】
一般に、チタンホウ素前駆体20を加熱するのと同時に、このホウ素源はチタンと、このホウ素源媒体24とチタン塊22との界面26で反応し、二ホウ化チタン層を生成する。この二ホウ化チタンは、その後、上記チタンと反応して、一ホウ化チタンウィスカーを生成し得る。式1〜2は、主な関与する反応式を記述する。
【0044】
Ti+2B → TiB (1)
Ti+TiB → 2TiB (2)
それゆえに、一局面において、この二ホウ化チタン層は、ホウ素がチタン塊の中へホウ素源媒体から溶浸するための中間体移動機構として作用する。現在好適な条件は、一ホウ化チタン生成の領域において、約18未満〜約18.5wt%のホウ素濃度を提供する。このことは、上記ウィスカーが、より低い濃度のホウ素を含む、バルクの非ホウ素化チタン塊に向かって主に内部へ溶浸することの、少なくとも一つの理由である。ホウ素がチタン塊を通って溶浸するにつれて、そのホウ素のほとんどが沈降し、図2に示されるようなウィスカーが生成する。
【0045】
一代替的実施形態において、上記二ホウ化チタン層は、レーザー、ワイヤー放電加工、酸エッチングなどの機械的手法または化学的手法のいずれかを用いて除去され得る。あるいは、上記プロセス条件は、有意な二ホウ化チタン層の生成を最小にし、または除去さえするように制御され得る。例えば、上記ホウ素源、プロセス温度、およびチタン塊の組成が、それぞれ、生成する上記二ホウ化チタン層の厚みに影響を及ぼし得る。相対的に高いプロセス温度(例えば、そのβ−トランザス温度より高い)、希薄なホウ素源(例えば、約18wt%未満)、およびより長いプロセス時間(例えば、24時間より長い)は、上記二ホウ化チタン層を減少させ得るか、または除去し得る。逆に、相対的に低いプロセス温度(例えば、そのβ−トランザス温度より低い)、源中の高濃度のホウ素(例えば、約18wt%より高い)、およびより短いプロセス時間(例えば、24時間より短い)は、上記二ホウ化チタン層を増加させ得る。
【0046】
ウィスカーが生成する速度は、上記特定のホウ素源、ホウ素濃度勾配、および使用される温度に依存する。例えば、商業グレードのチタン基体を使用すると、約1000℃のプロセス温度は、図7に見られるように、図2および図5で見られるような約850℃の温度で生成されたウィスカーよりも厚くて大きなウィスカーを生じた。一般的な指針として、特定のプロセス温度が上記ウィスカーの形状および直径に強く影響を及ぼす。例えば、いくつかの実施形態において、そのβ−トランザス温度より下のプロセス温度は、約100nm〜約600nmの直径を有するウィスカーを生成する。プロセス温度が上昇するにつれて、一部のウィスカーの直径は約2μmまで上昇し得る。従って、本発明のいくつかの実施形態において、このβ−トランザス温度から約1600℃までのプロセス温度は、約100nm〜数μmまでの直径を有するウィスカーを生じる。同様に、プロセス時間は、ウィスカーの長さ、従って、上記表面硬化領域の厚みに影響し得る。プロセス時間が長くなることによって、またウィスカーがまた厚くなり得る。代表的なプロセス時間は、約1時間〜約24時間の範囲であり得る。本発明のさらなる局面において、この一ホウ化チタンウィスカーは、図8に示されるように、相互に連結した構造を生成し得、この構造は、図2、図5、および図7において示されるウィスカーよりも、多少、よりランダムである。最適のウィスカー寸法は、意図される適用に依存し得る。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態において、硬度は、達成可能な最高温度であって、β−トランザス温度より下でもあるプロセス温度において最適化され得ることが見出された。この特定の加熱方法は、現実の達成可能な温度を限定し得、そして使用される特定の装置に対する制御のばらつきに依存し得る。例えば、加熱デバイスに依存して、上記温度は、β−トランザス温度の下2〜3℃以内に、または約5〜8℃以内に維持されるかも知れない。しかしながら、当業者は、これが単に指針であり、改善された表面特性を達成するために、示されたもの以外の温度および時間が用いられてもよいことを認識する。
【0047】
本発明の一局面では、このチタン塊およびホウ素源媒体は、このチタン塊のβ−トランザス温度の約25℃下から、このチタン塊のβ−トランザス温度の約20℃上までの温度に加熱され得る。本発明のより詳細な局面において、このチタン塊およびホウ素源媒体は、このチタン塊のβ−トランザス温度の約15℃下から、このチタン塊のβ−トランザス温度まで温度に加熱され得る。この範囲のプロセス温度は、代表的には、図2に示されるもののような、相対的に細いウィスカーを生成する。あるいは、このチタン塊およびホウ素源媒体は、このチタン塊のβ−トランザス温度から、このチタン塊のβ−トランザス温度の約100℃上までの温度に加熱され得る。このチタン塊が商業グレードのチタン基体である実施形態において、現在好適なプロセス温度は、約840℃〜約880℃の範囲であり得、約860℃、すなわち、純粋なチタンのだいたいβ−トランザス温度、がもっとも好適である。いくつかの場合には、このチタン塊に溶浸した、より太いウィスカー構造体が生成されることが所望され得る。これらのより大きいウィスカー構造体は、例えば、β−トランザス温度の約100℃上から約1600℃までの、より高温で生成し得るが、正確な範囲は、少なくとも部分的に、このチタン塊の特定の組成に依存する。高純度チタンまたは商業的に純粋なチタン基体は、より大きいウィスカーを生成するために、約1000℃〜約1600℃に加熱され得る。加えて、例えば、α+β チタン合金Ti−6Al−4Vのβ−トランザス温度は、約1010℃である。それゆえに、相対的に細いウィスカーをこのチタン塊中に生成するための好適なプロセス温度範囲は、約985℃〜約1020℃であり、もっとも好適には、約1010℃である。対照的に、より大きいウィスカー構造体をこのチタン合金中に生成するために、好適な温度範囲は、約1110℃〜約1600℃であり得る。当業者は、様々な他のチタン合金に対する適切な温度範囲を、上記の議論に基づいて決定することができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、上記ホウ素源媒体24は、ホウ素源、活性化剤、および充填剤の粒子状混合物であり得る。このホウ素源は、元素状ホウ素をチタン塊中へ溶浸させて一ホウ化チタンを生成させる、任意のホウ素源であり得る。適切なホウ素源の非限定的な例としては、非晶質ホウ素、結晶性ホウ素、フェロボロン、炭化ホウ素、窒化ホウ素、およびこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の一局面では、このホウ素源は、非晶質ホウ素であり得る。
【0049】
代表的には、このホウ素源は、上記ホウ素源媒体の約30wt%〜約80wt%を構成し得、約40wt%〜約65wt%が現在好適である。しばしば、上記粒子状混合物は上記チタン塊の周囲にパックされ、またはそうでなければ上記チタン塊に接触して置かれて、チタンホウ素前駆体20が生成され得る。この粒子状混合物の厚みは、特定の組成に依存して変化し得る;しかしながら、約15mm〜約40mmの厚みが、代表的には、一ホウ化チタンの溶浸および成長のために十分なホウ素供給を提供し得る。このチタンホウ素前駆体は、その後、セラミックるつぼまたは耐火性金属るつぼなどの適切な加熱アセンブリの中に置かれ得る。一代替的実施形態において、上記粒子状混合物は、硬化されるべきチタン塊の表面に、単に接して置かれ得る。本発明のいくつかの実施形態において、このチタン塊全体よりもむしろ、このチタン塊の表面を選択的に処理することが望ましいことがあり得る。そのような実施形態において、選択された領域が、炭素粉末などの不活性な充填剤物質で覆われ得る。
【0050】
上記粒子状混合物中での使用のための適切な活性化剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、重炭酸アルカリ、NaClおよびNaFなどのアルカリハライド、KBF、CaF、NHCl、BaF、ならびにこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、この活性化剤は炭酸ナトリウムであり得る。代表的には、この活性化剤は、上記ホウ素源媒体の約2wt%〜約40wt%を構成し得る一方で、約10wt%〜約25wt%が、現在好適である。加えて、例えば、TiClなどのハロゲン化チタンなどの公知の促進剤もまた、本発明において使用され得、その促進剤は、米国特許第5,464,699号において議論され、この米国特許は、本宣言によって、参考として援用される。
【0051】
上記ホウ素源媒体の残りの部分は、上記チタン塊中へのホウ素の溶浸に有害には影響を与えない、任意の充填剤物質であり得る。実に様々な充填剤物質が使用され得るが、いくつかの非限定的な例としては、活性炭、タルク、Al、ZrO、TiO、SiO、MgOなどのセラミック酸化物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。活性炭が良好な結果を与えることが見出されている。この活性炭は、除去されなければ一ホウ化チタンウィスカーの成長を、酸化チタンTiOを生成することにより、妨害するかもしれない酸素の除去にも寄与し得る。
【0052】
本発明の代替的な実施形態において、上記ホウ素源媒体は、ホウ素源、活性化剤、および充填剤の液体混合物であり得る。適切な液体ホウ素源のいくつかの非限定的な例としては、ほう砂、無水ほう砂、メタホウ酸、ホウフッ化ナトリウム、ホウフッ化カリウム、ホウ酸、フッ化ホウ素、およびこれらの組み合わせが挙げられる。少量、例えば、1〜5wt%、の固体炭化ホウ素はまた、上記チタン塊に向かうホウ素の拡散を増加させるために、任意に添加され得る。一局面において、このホウ素源は、無水ほう砂であり得る。濃度は変化し得るが、この液体ホウ素源は、上記ホウ素源媒体の約10wt%〜約80wt%を構成し得る。液体混合物中での使用にとって適切な活性化剤としては、NaCl、KClおよびNHClなどのハライド活性化剤が挙げられ得る。適切な液体充填剤物質としては、溶融金属、炭素、NaCl、BaClなどの溶融塩、または他の適切な不活性材料などの任意の液体キャリアが挙げられ得る。本発明の適切な液体ホウ素源媒体としては、代表的には、室温においては固体である材料が挙げられることに注意すべきである。しかしながら、そのような固体混合物は、代表的には、ウィスカーの溶浸および成長のために本明細書中で使用されるプロセス温度に加熱されたときには、液体である。本発明の詳細な一局面において、液体ホウ素源媒体は、溶融塩混合物であり得る。上記液体充填剤は、望まれるコーティング厚みに依存して、この混合物の粘度を上昇または減少させるために選ばれ得る。望まれる一ホウ化チタンウィスカー構造体を達成するために、上記チタン塊は、完全にまたは部分的に、上記で議論される望まれるプロセス温度および時間で、この液体ホウ素源中に浸漬され得る。
【0053】
本発明のさらに別の代替的実施形態において、上記ホウ素源媒体は、ホウ素源、活性化剤、および充填剤の気体状混合物としても提供され得る。適切な気体状ホウ素源のいくつかの非限定的な例としては、BF、BCl、およびBBrなどのハロゲン化ホウ素;Bなどのジボラン;(CHBrおよび(CBなどの有機ボラン;およびこれらの組み合わせが挙げられ得る。現在好適な気体状ホウ素源は、ハロゲン化ホウ素である。適切な気体状活性化剤としては、水素、希ガス、または、ホウ素源のチタン表面への輸送を可能にするためのキャリアもしくは不活性充填剤ガスとして使用され得る任意の他の気体が挙げられ得るが、これらに限定されない。代表的には、気体状ホウ素源は、上記チタン塊の表面で活性化剤と反応して、表面上で元素状ホウ素を遊離し得る。この元素状ホウ素が、その後、二ホウ化チタンを生成し得、従って、ホウ素がこのチタン塊の中へ溶浸して、前に議論されたように、一ホウ化チタンウィスカーが生成することを可能にし得る。十分なホウ素を上記チタン塊の表面に供給するのに十分な、任意の濃度のホウ素源および活性化剤が使用され得る。しかしながら、一般的な指針として、上記気体状混合物は、約1:10〜約1:20のホウ素源対活性化剤比を有し得る。特定の一実施形態において、BClおよびHの混合物は、約1:15の比を有し得る。
【0054】
当業者は、列挙されるホウ素源材料、活性化剤、および充填剤の多くは、上記固相法、液相法、または気相法のいずれかにおいて、互換して使用され得、そしてそのようなバリエーションは本発明の範囲内であると考えられるということを認識する。ウィスカーでホウ化されたチタンの物品を生成するための、上記固相法、液相法、および気相法は、実に様々な適用において、有利に使用され得る。例えば、上記液相法および気相法の各々は、固体粉末と接触するのが困難なチタン基体をホウ化するために使用され得る。そのような表面の一例は、ライフル銃および銃身の内部表面である。さらには、固相法は、ウィスカーの生成に対して高濃度のホウ素を供給し得、従ってプロセス時間を改善し得る。本発明の方法を使用して、複雑な形状および輪郭を有する表面と同様、相対的に平らなチタン表面が処理され得る。本発明の方法は、向上した表面硬度、腐食耐性、改善された磨耗耐性、低減されたかじり、向上した酸化耐性、磨耗耐性、ひっかき耐性、および改善された機械的接触損傷耐性をもたらし得る。
【0055】
当業者は、本発明のホウ化されたチタンの物品に対する多数の適用をもまた認識する。例えば、本発明のホウ化されたチタンの物品は、成形され、そして整形外科デバイス、歯車、軸受、ピン、リベット、ナイフ、剃刀、メス、高圧ノズル、および銃身などの最終製品の中に組み込まれ得る。チタン表面を有する整形外科デバイスは、とりわけ興味を惹き得る。そのようなデバイスの例としては、大腿部端部、寛骨臼カップ、膝関節、脊椎インプラントなどが挙げられる。本発明のホウ化されたチタン表面はまた、拳銃、ライフル銃、および装甲車上に装備される、より大口径の銃などの銃身の内孔の磨耗特性および酸化特性を改善するために、有利に使用され得る。そのようなホウ化されたチタンの銃身は、延長された実用的な寿命、一定期間にわたる改善された精度、および多数回の発射の後でさえの口径形状の維持などを示す。本発明のホウ化されたチタンの物品のさらなる適用としては、注ぎ口、ノズル、およびるつぼなどの、溶融アルミニウムを扱う際の器具が挙げられ得る。特定すれば、ボーキサイト鉱石からの抽出の間のアルミニウムの電解は、腐食に対して高度に抵抗性のある器具表面を必要とする。特定の適用にかかわらず、本発明の方法はまた、繰返される表面処理を許容する。従って、ひとたび上記表面硬化領域が磨り減り、またはさもなければ損傷したら、上記の物品は上記の方法を用いて安価に処理されて、新しい表面硬化領域が提供され得る。
【0056】
さらに、上記方法は、強いホウ化物生成体である金属に対して適用することができ、それはまた金属ホウ化物ウィスカーの生成をも可能にする。これらの材料は、チタンに関連して上記に記載される方法と類似の方法で、ホウ素の溶浸および金属ホウ化物ウィスカーの生成を可能にし得る。強いホウ化物生成体とは、室温で熱力学的に安定なホウ化された化合物を生成する金属である。ジルコニウム、コバルト−クロム合金、およびそれらの合金などの、さらなる適切な金属基体が使用され得る。鉄、ニッケル、およびそれらの合金は、一般に強いホウ化物生成体であると考えられているが、これらの材料は、金属ホウ化物ウィスカーを生成せず、むしろモノリシックな層構造体を生成する。
【0057】
例えば、本発明の一局面において、金属塊は、六方最密充填(HCP)金属を含有することができ、そのような金属としては、Ti、Zr、Mg、およびこれらの合金などが挙げられるが、これらに限定されない。一つの好適な実施形態において、この金属塊はジルコニウムまたはその合金を含み得る。ジルコニウム合金は、代表的には、整形外科適用、核適用、および他の高温での適用において使用される。適切なジルコニウム合金のいくつかの例としては、Zr−4.5Hf合金、Zr−2.5Nb合金、Zr−4.5Hf−2.5Nb合金、およびZr−Cr−Cu合金が挙げられ得るが、これらに限定されない。Zrのβ−トランザス温度は863℃である。従って、本発明の原理に従って、863℃より下のプロセス温度は、図2および図5と類似の、ジルコニウム塊を溶浸して、二方向に成長したZrBウィスカーを生成する。同様に、863℃より上のプロセス温度では、処理された金属塊の表面に対してほとんど垂直に、比較的太いウィスカーが成長される。ZrBウィスカーの機械的特性は、一ホウ化チタンに対して記載される特性に匹敵し、それゆえに、類似の実用的な適用としては、整形外科デバイス、歯車、軸受、ピン、リベット、ナイフ、剃刀、およびメスが挙げられ得る。
【0058】
本発明の別の局面において、この金属塊は、コバルト−クロム合金であり得る。適切なコバルト−クロム合金の非限定的な例としては、Co−30Cr、Co−29Cr−7Mn−1Mo、およびCo−25Cr−3Fe−3Ni(ステライト(stellite))が挙げられる。上記のホウ素源媒体、材料、および方法は、コバルト−クロム合金の表面特性を向上するために適用されうる。この場合、上記固相の方法、液相の方法、または気相の方法は、バルクのコバルト−クロム合金の中へ溶浸する、ホウ化コバルトウィスカーおよびホウ化クロムウィスカーの成長を生じ得る。2つの金属ホウ化物組成物の存在は、未処理のコバルト−クロム塊と比較して、数倍以上改善された表面硬度および改善された摩耗耐性を提供し得る。しかしながら、この金属ホウ化物ウィスカーの構造は、チタン基体およびジルコニウム基体中で生成されるウィスカーとは異なり得る。これは、部分的には、体心立方構造である、コバルト−クロム合金の結晶構造の結果である。その表面硬化領域は、それゆえに、上に記載されるウィスカー構造体とモノリシックな層状構造との間の中間の構造を有し得る。ホウ化コバルトウィスカーおよびホウ化クロムウィスカーを有する表面硬化領域は、かじりに対する向上した耐性および機械的接触の間の溶着に対する向上した耐性に加えて、硬度、摩耗耐性、酸化耐性、および腐食耐性などの、改善された表面特性を示し得る。例えば、コバルト−クロム製整形外科インプラントは、表面硬度を向上し、接触表面間の摩耗を低減するために、本発明の原理に従って処理され得る。
【0059】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態を例証する。しかしながら、以下の例は、例示的であるにすぎず、または本発明の原理の適用を例示的に示すにすぎないことは理解されるべきである。数多くの改変ならびに代替的な組成、方法、およびシステムが、当業者によって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、工夫されるかも知れない。添付の特許請求の範囲は、そのような改変および配置を含むことが意図されている。従って、本発明は上記に詳細に記載されている一方で、以下の実施例は、本発明の実用的な実施形態であると現在考えられるものに関連して、さらなる詳細を提供する。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
1mmの厚みを有する商業グレードのチタンシートを供給した。50wt%非晶質ホウ素(325メッシュ、Alfa Aesar Inc.より入手可能)、15wt%無水炭酸ナトリウム、および35wt%活性炭の、粉にされた混合物を、酸化を回避するためアルゴン環境中で均一に混合し、24時間、転動ミル中でブレンドした。この粉にされた混合物を、その後、約25mmの深さまで上記チタンシートの周りにパックし、ホウ素チタン前駆体を形成した。この前駆体をその後、抵抗加熱炉の中に置き、約850℃まで約24時間加熱した。そのチタンシートをその後放冷した。その表面硬化領域は、78μmの平均長、0.2mmを超える最大表面硬化領域厚み、および411kgf/mmの最大表面硬度を有する、図2のものと類似のウィスカーで特徴付けられた。
【0061】
(実施例2)
25wt%の無水ほう砂、45wt%のNaCl、および30wt%の炭素の、溶融溶液を調製することにより、液体ホウ素源媒体を供給する。この液体ホウ素源をタンタル製るつぼの中に置き、34−歯のβ−チタン(Ti−10V−2Fe−3Al)歯車をその後、その液体ホウ素源中に浸漬する。その液体ホウ素溶液を約860℃まで加熱し、約15時間保持する。約0.1mmの厚みを有する薄いホウ化領域が生成される。
【0062】
(実施例3)
気体状ホウ素源媒体を、2vol.%ボロンクロリド、40vol.%wt%水素、および残りアルゴンの混合物を囲われたチャンバの中で調製することにより、供給する。この混合物を1cm/secの速度で、0.22インチ内径を有するα−チタン(Ti−5Al−2.5Sn)銃身を含む、閉じられたチャンバに注入する。このチャンバを、その気体の導入に先立って、抵抗加熱素子を用いて、約880℃に加熱する。そのチャンバをこの温度で約10時間保持する。約0.25mmの厚みを有するホウ化された領域が、内部銃身表面およびむき出しの外側の表面上に生成される。
【0063】
上記で参照された配置は、本発明の原理の適用についての例示であることが理解されるべきである。従って、本発明が、本発明の例示的な実施形態に関連して上記に記載されている一方で、数多くの改変および代替的な配置が、特許請求の範囲に述べられるような、本発明の原理および概念から逸脱することなく、なされ得ることは当業者に明確である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明に従いウィスカーでホウ化されたチタン物品を示す実施形態の側断面図を図示する。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従って作製された、ウィスカーでホウ化されたチタンの物品における表面硬化領域の顕微鏡写真を、2000倍の倍率で示す。
【図3】図3は、様々な温度およびプロセス時間における、ウィスカーでホウ化されたチタンの物品の断面に沿っての深さに対する、硬度のグラフである。
【図4】図4は、図2のホウ化されたチタンの物品の中間厚みの顕微鏡写真であって、ランダムに沈殿したTiBウィスカーを示す。
【図5】図5は、図2の表面硬化領域の顕微鏡写真を5000倍の倍率で示す。
【図6】図6は、図1のホウ化されたチタンの物品を本発明の一実施形態に従って生成するために使用される、ホウ素チタン前駆体の側断面図を図示する。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に従って1000℃で生成された、ウィスカーでホウ化されたチタンの物品における表面硬化領域の、2000倍の倍率の顕微鏡写真である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に従って生成された、ウィスカーでホウ化されたチタンの物品における表面硬化領域の、7000倍の倍率の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ化されたチタンの物品であって、該物品が、表面硬化領域を有し、チタン塊および一ホウ化チタンウィスカーを含み、該一ホウ化チタンウィスカーが該チタン塊を溶浸して、該表面硬化領域を形成する、ホウ化されたチタンの物品。
【請求項2】
前記一ホウ化チタンウィスカーが、約10μm〜約700μmの平均長および約100nm〜約2μmの平均直径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記一ホウ化チタンウィスカーが、約50μm〜約300μmの平均長および約100nm〜約600nmの平均直径を有する、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記一ホウ化チタンウィスカーが、約5:1〜約1000:1の平均縦横比を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記一ホウ化チタンウィスカーが、前記表面硬化領域の約50wt%〜約95wt%を構成する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記表面硬化領域が、約15μm〜約400μmの平均厚みを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記一ホウ化チタンウィスカーが、前記チタン塊の表面の法線から約45°未満の角度で実質的にすべて2方向に配向されている、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記表面硬化領域に隣接する二ホウ化チタン層をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記二ホウ化チタン層が、約5μm〜約10μmの平均厚みを有する、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記チタン塊が、高純度チタン、商業グレードチタン、α−チタン合金、α+β チタン合金、β−チタン合金、チタン複合材、冶金的に燒結された粉末チタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記チタン塊が商業グレードチタンを含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記チタン塊が、約60wt%を超えるチタン含量を有するチタン合金である、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記ホウ化されたチタンの物品が、整形外科デバイス、歯車、軸受、ピン、リベット、ナイフ、剃刀、メス、および銃身からなる群から選択される製品の中に組み込まれるよう形作られる、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
ホウ化されたチタンの物品であって、該物品が、以下:
a)商業グレードのチタン塊であって、該チタン塊が、一ホウ化チタンウィスカーを伴っており、該一ホウ化チタンウィスカーが該チタン塊を溶浸して表面硬化領域を形成し、該表面硬化領域が、約10μm〜約300μmの平均長および約100nm〜約600nmの平均直径を有する一ホウ化チタンウィスカーによって特徴付けられる、チタン塊;ならびに
b)該表面硬化領域に隣接する二ホウ化チタン層であって、該二ホウ化チタン層が、約5μm〜約10μmの厚みを有する、二ホウ化チタン層、
を含む、ホウ化されたチタンの物品。
【請求項15】
ホウ化されたチタンの物品であって、該物品がチタン領域および表面硬化領域を有し、該表面硬化領域が一ホウ化チタンウィスカーによって特徴付けられ、該チタン領域が約0.5wt%未満の一ホウ化チタンウィスカーを有する、ホウ化されたチタンの物品。
【請求項16】
ホウ化されたチタンの物品であって、該物品が、チタン塊および一ホウ化チタンウィスカーを含み、該一ホウ化チタンウィスカーが主に該チタン塊の内部へ溶浸して、表面硬化領域を形成する、ホウ化されたチタンの物品。
【請求項17】
ホウ化されたチタンの物品であって、該物品がチタン塊を含み、該チタン塊が、該チタン塊中に一ホウ化チタンウィスカーを有し、該ウィスカーが、該チタン塊の表面付近での識別可能な成長起点によって主に特徴付けられる、ホウ化されたチタンの物品。
【請求項18】
ホウ化されたチタンの物品を生成する方法であって、該方法が、下記の工程:
a)チタン塊を提供する工程;
b)該チタン塊の表面をホウ素源媒体と接触させる工程であって、該ホウ素源媒体が一ホウ化チタンウィスカーの成長を提供するために選択されるホウ素源を含む、工程;ならびに
c)一ホウ化チタンウィスカーが該チタン塊の一領域に形成されるよう、該チタン塊および該ホウ素源媒体を約700℃〜約1600℃の温度に加熱する工程、
を包含する、方法。
【請求項19】
前記ホウ素源媒体が、本質的にホウ素源からなる粒子状混合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ホウ素源媒体が、ホウ素源、活性化剤、および充填剤の粒子状混合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ホウ素源が、非晶質ホウ素、フェロボロン、炭化ホウ素、チッ化ホウ素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記ホウ素源が、非晶質ホウ素である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記活性化剤が、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ハロゲン化アルカリ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記活性化剤が炭酸ナトリウムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記充填剤が、活性炭、タルク、セラミック酸化物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記充填剤が活性炭である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記チタン塊が、β−トランザス温度を有し、高純度チタン、商業グレードチタン、α−チタン合金、α+β チタン合金、β−チタン合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記加熱工程が、前記チタン塊のβ−トランザス温度の約15℃下から、該チタン塊のβ−トランザス温度までの温度で行なわれる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記加熱工程が、前記チタン塊のβ−トランザス温度から、該チタン塊のβ−トランザス温度の約100℃上までの温度で行なわれる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記加熱工程が、約840℃〜約880℃の温度でおこなわれ、ここで前記チタン塊が商業グレードのチタンである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記加熱工程が、約860℃の温度で行なわれる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記加熱工程が、約1000℃と約1600℃との間の温度で行なわれる、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
前記ホウ素源媒体が、ホウ素源、活性化剤、および充填剤の液体混合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記ホウ素源が、ほう砂、メタホウ酸、ホウフッ化ナトリウム、ホウフッ化カリウム、ホウ酸、フッ化ホウ素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ホウ素源がほう砂である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記活性化剤がハライド活性化剤である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記加熱工程が、前記チタン塊のβ−トランザス温度の約15℃下から、該チタン塊のβ−トランザス温度までの温度で行なわれる、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記ホウ素源媒体が、ホウ素源、活性化剤、および充填剤の気体混合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項39】
前記ホウ素源が、ハロゲン化ホウ素、ジボラン、有機ボラン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
上記ホウ素源がハロゲン化ホウ素である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
上記活性化剤が水素である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
上記気体混合物が、約1:10〜約1:20のホウ素源対活性化剤比を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ホウ化されたチタンの物品を生成する方法であって、該方法が、下記の工程:
a)商業グレードのチタン塊を提供する工程;
b)該チタン塊の表面をホウ素源媒体と接触させる工程であって、該ホウ素源媒体が、非晶質ホウ素、一ホウ化チタンウィスカーの成長を提供するために選択される炭酸アルカリ活性化剤、および活性炭充填剤の微粒子混合物を含む、工程;ならびに
c)一ホウ化チタンウィスカーが該チタン塊の一領域に形成されるよう、該チタン塊および該ホウ素源媒体を約840℃〜約880℃の温度に加熱する工程、
を包含する、方法。
【請求項44】
ホウ化された物品であって、該物品が表面硬化領域を有し、金属塊および金属ホウ化物ウィスカーを含み、該ホウ化金属ウィスカーが該金属塊を溶浸して、該表面硬化領域を形成する、ホウ化された物品。
【請求項45】
前記金属塊が、チタン、ジルコニウム、コバルト−クロム、およびこれらの合金からなる群から選択されるメンバーを含む、請求項44に記載のホウ化された物品。
【請求項46】
ホウ化されたチタンの物品を生成する方法であって、該方法が、下記の工程:
a)金属塊を提供する工程;
b)該金属塊の表面をホウ素源媒体と接触させる工程であって、該ホウ素源媒体がホウ素源を含み、該金属塊および該ホウ素源が、金属ホウ化物ウィスカーの成長を提供するために配置される、工程;ならびに
c)金属ホウ化物ウィスカーが該チタン塊の一領域に形成されるよう、該金属塊および該ホウ素源媒体を約700℃〜約1600℃の温度に加熱する工程、
を包含する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ化されたチタンの物品であって、該物品が、表面硬化領域を有し、チタン塊および一ホウ化チタンウィスカーを含み、該一ホウ化チタンウィスカーが該チタン塊を溶浸して、該表面硬化領域を形成し、ここで該一ホウ化チタンウィスカーが、該表面硬化領域の約50wt%〜約95wt%を構成する、ホウ化されたチタンの物品。
【請求項2】
前記一ホウ化チタンウィスカーが、約10μm〜約700μmの平均長および約100nm〜約2μmの平均直径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記一ホウ化チタンウィスカーが、約5:1〜約1000:1の平均縦横比を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記表面硬化領域が、約15μm〜約400μmの平均厚みを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記一ホウ化チタンウィスカーが、前記チタン塊の表面の法線から約45°未満の角度で実質的にすべて2方向に配向されている、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記表面硬化領域に隣接する二ホウ化チタン層をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記チタン塊が、高純度チタン、商業グレードチタン、α−チタン合金、α+β チタン合金、β−チタン合金、チタン複合材、冶金的に燒結された粉末チタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記チタン塊が、約60wt%を超えるチタン含量を有するチタン合金である、請求項に記載の物品。
【請求項9】
前記ホウ化されたチタンの物品が、整形外科デバイス、歯車、軸受、ピン、リベット、ナイフ、剃刀、メス、および銃身からなる群から選択される製品の中に組み込まれるよう形作られる、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記チタン塊が、前記チタン領域および前記表面硬化領域を含み、該表面硬化領域が一ホウ化チタンウィスカーによって特徴付けられ、該チタン領域が約0.5wt%未満の一ホウ化チタンウィスカーを有する、請求項1に記載の物品
【請求項11】
ホウ化されたチタンの物品を生成する方法であって、該方法が、下記の工程:
a)チタン塊を提供する工程;
b)該チタン塊の表面をホウ素源媒体と接触させる工程であって、該ホウ素源媒体が一ホウ化チタンウィスカーの成長を提供するために選択されるホウ素源を含む、工程;ならびに
c)一ホウ化チタンウィスカーが該チタン塊の表面硬化領域に形成され、該一ホウ化チタンウィスカーが、該表面硬化領域の約50wt%〜約95wt%を構成するよう、該チタン塊および該ホウ素源媒体を約700℃〜約1600℃の温度に加熱する工程、
を包含する、方法。
【請求項12】
前記ホウ素源媒体が、本質的にホウ素源からなる粒子状混合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ホウ素源媒体が、ホウ素源、活性化剤、および充填剤の粒子状混合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ホウ素源が、非晶質ホウ素、フェロボロン、炭化ホウ素、チッ化ホウ素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記チタン塊が、β−トランザス温度を有し、前記加熱工程が、チタン塊のβ−トランザス温度の約15℃下から、該チタン塊のβ−トランザス温度までの温度で行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記チタン塊が、β−トランザス温度を有し、前記加熱工程が、チタン塊のβ−トランザス温度から、該チタン塊のβ−トランザス温度の約100℃上までの温度で行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ホウ素源媒体が、ホウ素源、活性化剤、および充填剤の液体混合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記ホウ素源が、ほう砂、メタホウ酸、ホウフッ化ナトリウム、ホウフッ化カリウム、ホウ酸、フッ化ホウ素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ホウ素源媒体が、ホウ素源、活性化剤、および充填剤の気体混合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記ホウ素源が、ハロゲン化ホウ素、ジボラン、有機ボラン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
記気体混合物が、約1:10〜約1:20のホウ素源対活性化剤モル比を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ホウ化された物品であって、該物品が表面硬化領域を有し、金属塊および金属ホウ化物ウィスカーを含み、該金属ホウ化物ウィスカーが該金属塊を溶浸して、該表面硬化領域を形成する、ホウ化された物品。
【請求項23】
前記金属塊が、チタン、ジルコニウム、コバルト−クロム、およびこれらの合金からなる群から選択されるメンバーを含む、請求項22に記載のホウ化された物品。
【請求項24】
ホウ化されたチタンの物品を生成する方法であって、該方法が、下記の工程:
a)金属塊を提供する工程;
b)該金属塊の表面をホウ素源媒体と接触させる工程であって、該ホウ素源媒体がホウ素源を含み、該金属塊および該ホウ素源が、金属ホウ化物ウィスカーの成長を提供するために配置される、工程;ならびに
c)金属ホウ化物ウィスカーが該金属塊の一領域に形成されるよう、該金属塊および該ホウ素源媒体を約700℃〜約1600℃の温度に加熱する工程、
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−506525(P2006−506525A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553881(P2004−553881)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/036833
【国際公開番号】WO2004/046262
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(500189230)ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンデーション (11)
【Fターム(参考)】