チタン製圧縮機翼車の製造方法
【課題】全面的に付けた余肉を除去代として製造過程で全面的に除去することにより加工時の寸法精度を高め、動釣り合いの修正作業の簡略化又は省略を図りつつ、製品歩留りを向上させ、高精度のチタン製圧縮機翼車を製造する方法を提供する。
【解決手段】旋盤のチャックでチタン鋳物の前方鋳物ボス部21の外周面を固定する。旋盤側から突出する複数の受け板4を各鋳物ブレード27,28の間に位置させるとともに、その先端を鋳物コア部の後半部に形成された円盤状の大径部の前端面31に押し当てる。鋳物コア部23の大径部前端面31及び前方鋳物ボス部の外周面を基準面として、チャックと受け板とでチタン鋳物を保持して旋回させる。後方鋳物ボス部24の端面及び外周面、鋳物コア部の背面及び外周面、鋳物フルブレード,鋳物スプリッターブレードのトレーリングエッジを旋削することによって、これらの部位の余肉に相当する部分がチタン鋳物から除去される。
【解決手段】旋盤のチャックでチタン鋳物の前方鋳物ボス部21の外周面を固定する。旋盤側から突出する複数の受け板4を各鋳物ブレード27,28の間に位置させるとともに、その先端を鋳物コア部の後半部に形成された円盤状の大径部の前端面31に押し当てる。鋳物コア部23の大径部前端面31及び前方鋳物ボス部の外周面を基準面として、チャックと受け板とでチタン鋳物を保持して旋回させる。後方鋳物ボス部24の端面及び外周面、鋳物コア部の背面及び外周面、鋳物フルブレード,鋳物スプリッターブレードのトレーリングエッジを旋削することによって、これらの部位の余肉に相当する部分がチタン鋳物から除去される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のターボチャージャー(排気ターボ過給機)等に用いられるチタン製の圧縮機翼車を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のターボチャージャーは、図2に示すように、1本の回転軸300の両端側にそれぞれ翼車100,200を備えている。そして、エンジンのシリンダ(図示せず)から排出される排気250を一方の翼車(タービン翼車)200に導き、排気圧力によってタービン翼車200を回転させ、その回転力によって他方の翼車(圧縮機翼車)100を駆動し、圧縮機翼車100で吸気150を圧縮してエンジンのシリンダ(図示せず)に供給する。
【0003】
図1に示すように、この圧縮機翼車100は、回転軸300(図2参照)に同芯状に固定される前方ボス部101及び後方ボス部104(図13参照)と、前方ボス部101近傍の入口側130から半径方向外方の出口側140に向って放射状に延びる複数のブレード102(羽根部)と、入口側130とは軸方向の反対側に位置する後方ボス部104において半径方向外向きに延びる円盤状のコア部103とを有している。ブレード102は、入口側130から取り込んだ吸気を圧縮して出口側140の外周部から放出するために、回転方向に対して後方側に湾曲している。また、吸入効率を上げるために長いフルブレード107と短いスプリッターブレード108とが交互に並べられ、両ブレード107,108の始端位置をずらして配置されている。なお、ブレード102はフルブレード107のみで構成される場合がある。
【0004】
具体的には、前方ボス部101と後方ボス部104とは、それぞれ端面101a,104a(図11参照)及び外周面101b,104b(図11参照)を有し、軸孔109は両端面101a,104a間を軸線方向に貫通している。また、コア部103は、前方ボス部101の外周面101bに続いて吸気の流れ面となるハブ面103aと、ハブ面103aの裏側に位置する背面103b(図11参照)と、コア部103の外縁に沿う外周面103cとを有する。
【0005】
フルブレード107とスプリッターブレード108とには、それぞれ回転方向上手側の圧力面107a,108a及び回転方向下手側の負圧面107b,108bが形成される。また、各ブレード107,108は、入口側130においてコア部103のハブ面103aから半径方向外向きに延びるリーディングエッジ107c,108cと、出口側140においてコア部103の外周面103cから入口側130に向けて延びるトレーリングエッジ107d,108dと、両エッジ107c,108c,107d,108dを3次元的に連結するシュラウド107e,108eとを有している。
【0006】
このように、圧縮機翼車100(特にブレード102)は、複雑な3次元曲面で構成されているために、ロストワックス鋳造等の精密鋳造によるか、5軸以上のNCで制御された切削加工等の機械的加工によって製造されるのが一般的である。
【0007】
さらに近年、圧縮機翼車100は、エンジンの燃焼効率を向上させて排気を清浄化するために、高回転数、高圧縮比(高圧力比)等の高性能化が求められ、また、自動車やエンジンの高機能化に伴ってコンパクト化(小型化)も求められている。このため、従来のアルミ製の圧縮機翼車に代わって、より機械的強度に優れたチタン製の圧縮機翼車が採用される場合があり、特許文献1,2にはこのようなチタン製の圧縮機翼車を製造する方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−52754号公報
【特許文献2】米国特許第6588485号明細書
【0009】
これらの文献には次のような技術が開示されている。まず、入子型(金型)がアンダーカット等の引抜き不可能な状態を発生する部分に余肉を付けて、ワックス型等のポジパターン(ニアネット形状の雄型)が作成される。その後、余肉を付けたポジパターン(ニアネット形状)を原型としてロストワックス鋳造が行なわれる。さらに、チタン鋳物(ニアネット形状)の余肉部分のみが切削加工等で除去され、これによって完成形態(最終形状)のチタン製圧縮機翼車(ネット形状)が得られる。したがって、この製造方法によれば、切削加工等に要する製造コストを抑制することができる。
【0010】
ところが、これらに開示された技術では、チタン鋳物の余肉を付けた部分のみを切削加工し、チタン鋳物で余肉を付けていない部分(すなわち、入子型が引抜き可能でアンダーカットを生じない部分)には切削加工を行なわないため、鋳造時に発生する熱応力等により、チタン鋳物の非切削部分(引抜き可能部分)が所定の寸法公差を満たさなくなる確率が高くなる。このような寸法のばらつきに伴って、動釣り合い(回転バランス)が悪化しやすく、完成後の回転バランス修正に時間を要する場合が多い。また、寸法公差内に収まらないため不良品となり、製品歩留りを低下させる場合も多い。なお、塊状のチタン材から切削加工等の機械的加工のみによって圧縮機翼車を作成する場合、アルミよりも硬く加工に困難を伴うため製造コストが上昇する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、全面的に付けた余肉を除去代として製造過程で全面的に除去することにより加工時の寸法精度を高め、動釣り合い(回転バランス)の修正作業の簡略化又は省略を図りつつ、製品歩留りを向上させ、かつ製造コストの高騰を抑制して、高精度のチタン製圧縮機翼車を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンを原型とし、前記余肉が除去代として付与された形態で前記ポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
その鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記余肉に相当する部分を、除去加工により全面的に除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、具体的には、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するワックスでポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンを原型とし、前記余肉が除去代として付与された形態で前記ポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
その鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記余肉に相当する部分を、切削加工及び/又は研削加工により全面的に除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
これらの製造方法によれば、鋳造工程により得られるチタン鋳物の外面には全面的に余肉が除去代として付与されているので、その余肉に相当する部分を除去工程で全面的に除去することにより、チタン鋳物の寸法のばらつきを均して所定の寸法公差内に収めることが比較的容易となる。これによって、チタン製圧縮機翼車の加工時の寸法精度を高め、動釣り合い(回転バランス)の修正作業を簡略化(例えば調整時間の短縮)したり省略(例えば調整不要)したりできる。また、加工時の寸法精度が高められることによって、製品歩留りを向上させ高精度のチタン製圧縮機翼車を得ることができる。その際、余肉に相当する部分を(例えば切削加工により)除去すればよいので、塊状のチタン材から削り出したりする場合に比して加工に困難を伴わず製造コストを上昇させずにすむ。なお、「動釣り合い(回転バランス)の調整(修正)」とは、ここでは、「周方向の質量分布を調整して残留動不釣合いを減少又は消滅させるために、チタン鋳物に釣合い調整部を形成すること」を意味する。
【0015】
さらに、ポジパターン工程でワックスによりポジパターン(ワックス型;雄型)を作成し、鋳造工程でそのワックス型を原型とする鋳造(ロストワックス鋳造)を行ってチタン鋳物を作成し、除去工程でそのチタン鋳物の余肉に相当する部分を切削加工及び/又は研削加工により除去するときには、チタン鋳物をさらに高精度で作成することができるので、余肉の厚さを全般的に薄くすることができる。また、除去工程でNC(5軸以上)の制御技術を導入しやすくなり、除去加工に要する時間の短縮を図ることができる。
【0016】
次に、上記課題を解決するために、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンの前記余肉に相当する部分を全面的に、又はその一部である残留余肉を残して部分的に、除去加工により除去するポジパターン除去工程と、
そのポジパターン除去工程で作成されたポジパターンを原型とし、そのポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
前記ポジパターン除去工程で前記残留余肉を残した場合には、前記鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記残留余肉に相当する部分を、除去加工により除去する鋳物除去工程と、
を含むことを特徴とする。
【0017】
このように、ポジパターン除去工程において、チタン鋳物に比べて軟らかいワックス型等のポジパターン(雄型)から余肉に相当する部分を全面的に又は一部の残留余肉を残して部分的に除去するので、除去加工が容易である。また、鋳造工程後にチタン鋳物を全く又は殆ど加工しなくてもすむため、製造時間の短縮を図ることができる。なお、「残留余肉を残して部分的に除去」とは、「ポジパターンの所定の部位(特定部位)についてのみ残留余肉を残す」ことを意味する。
【0018】
このような製造方法では、
ポジパターン除去工程において、圧縮機翼車の所定の部位については、ポジパターンの余肉の厚みの一部が残留余肉として残るように、切削加工及び/又は研削加工により除去され、かつ圧縮機翼車のその他の部位については、ポジパターンの余肉の厚みが切削加工及び/又は研削加工により全面的に除去されるとともに、
鋳物除去工程において、圧縮機翼車の所定の部位の残留余肉に相当する部分が、チタン鋳物から切削加工及び/又は研削加工により除去される場合がある。
【0019】
このように、ポジパターン除去工程で残留余肉を残し、鋳物除去工程でその残留余肉相当分を除去する部位(所定の部位)として、例えば出口側各部のように、圧縮機翼車の性能に直接的に関与したり、取付時に厳重な隙間管理を求められたりするような、特に精密な寸法精度を要する部分を設定すれば、鋳造工程で発生する熱応力等に基づくチタン鋳物の寸法のばらつきを、鋳物除去工程の仕上削りによって矯正することができる。鋳物除去工程での寸法精度がより高くなることによって、動釣り合い(回転バランス)の修正作業の簡略化・省略や製品歩留りの向上をさらに図ることができる。逆に、鋳造工程(ロストワックス鋳造)によって必要な寸法精度が得られる部位については、鋳物除去工程での仕上削りを要しないため、製造時間の短縮や製造コストの削減を図ることができる。
【0020】
具体的には、前記「所定の部位」、すなわち「ポジパターン除去工程で残留余肉を残す部位」として、
・前方ボス部の端面;
・ブレードのシュラウド及びトレーリングエッジ;
・コア部の外周面及び背面;
・後方ボス部の端面及び外周面;
を含むことが望ましい(図1参照)。
【0021】
なお、本発明で「チタン製」というとき、純チタン製とチタン合金製とを含む。「チタン鋳物」、「チタン材」についても同様である。また、「除去加工」には、例えば以下のような加工方法を含む。
(1)機械的加工……切削加工(旋削、フライス削り、ブローチ削り等)、研削加工、バフ加工、バレル加工、噴射加工(ショットブラスト、サンドブラスト等)、超音波加工等;
(2)電気的加工……放電加工、電子ビーム加工、イオンビーム加工、プラズマ加工等;
(3)電気化学的加工……電解加工、電解研削、電解研磨等;
(4)化学的加工……化学研磨、エッチング、ケミカルミリング等;
(5)光学的加工……レーザビーム加工等。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施例1)
次に、図1及び図2で説明したチタン製の圧縮機翼車を製造する方法について、図3〜図14に示す本発明の一実施例を参照して説明する。この実施例では、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
(1)放射状に配置される複数の可動式の入子型2が中心に集まるように接近して構成される金型1により、圧縮機翼車100(図1参照)の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉19が除去代として付けられるように、圧縮機翼車100の形状を象った、熱により溶融するワックス型10(ポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン工程(図3,図4参照);
(2)ワックス型10を原型とし、余肉29が除去代として付与された形態で、ロストワックス鋳造法によりワックス型10が転写されたチタン鋳物20を作成する鋳造工程(図5〜図10参照);
(3)チタン鋳物20の余肉に相当する部分29を、切削加工(除去加工)により全面的に除去して、最終完成形態の圧縮機翼車100を作成する除去工程(図11〜図14参照);
の3つの工程を含んでいる。以下、各工程ごとに説明する。
【0023】
(1)ポジパターン工程
図4に示すように、放射状に配置される複数(例えば7個)の入子型2によって圧縮機翼車100(図1参照)の形状を象った金型1を構成し、溶融状態のワックスを注入する。このとき、入子型2の各々がアンダーカット等の引抜き不可能な状態を発生することなく半径方向外側に分離・移動できるように、図3に示すワックス型10は、最終完成形態である圧縮機翼車100(図1参照)の外面に対して全面的に余肉19を付けた形で作成される。なお、図4に示す金型1では、フルブレード107の間に設置した場合の7個の入子型2のみが表わされているが、実際には、スプリッターブレード108の存在を考慮して14個の入子型2を配置することが望ましい(図1参照)。
【0024】
(2)鋳造工程
次に、図3のワックス型10を原型として、ロストワックス鋳造法によりチタン鋳物20を作成する。具体的には、図5に示すように、1個の湯口12に対して複数(例えば6個)のワックス型10を樹枝状に組み付けて、ワックス型ツリー13を組み立てる。次に、図6に示すように、ワックス型ツリー13をスラリ状の耐火性バインダ14に浸漬する(ディッピング)。さらに、粗目の耐火性粒子を振りかけて乾燥・固化させる(サンディング)。これらのディッピングとサンディングとを複数回(例えば5〜10回)繰り返すことにより、図7に示すような、耐火物のコーティング層16で被覆されたシェル状の鋳型17が作成される。
【0025】
そして、図8に示すように、湯口12を下にして鋳型17を蒸気で加熱することによって、ワックス型ツリー13(ワックス型10)のワックスを溶出させる(脱ろう)。さらに鋳型17を炉中で焼成して、鋳型17に強度を付与した後、図9に示すように、溶解したチタン材18を湯口12から吸引して鋳込む(吸引法)。チタン材18が冷却・固化した後に砂落し、切断等を行なうことにより、図10に示すような、余肉に相当する部分29を全面的に(表面全体に)有するチタン鋳物20が取り出される。このチタン鋳物20は、半径方向外向きに延びる鋳物コア部23(コア部)と、鋳物コア部23に形成され、鋳物フルブレード27と鋳物スプリッターブレード28とから構成される鋳物ブレード22(羽根部)と、鋳物コア部23の前端部及び後端部にそれぞれ形成され、回転軸300(図2参照)に取り付けられるための自身の回転中心と同芯的な前方鋳物ボス部21(ボス部)及び後方鋳物ボス部24(ボス部)と、を備えている。
【0026】
(3)除去工程
図10に示すチタン鋳物20を切削加工して、余肉に相当する部分29を全面的に除去し最終完成形態の圧縮機翼車100(図1参照)を作成する。具体的には、図11に示すように、旋盤(図示せず)のチャック3でチタン鋳物20の前方鋳物ボス部21の外周面21bを固定する。旋盤側から突出する複数(例えば7枚)の受け板4を各鋳物ブレード22の間に位置させるとともに、その先端を鋳物コア部23の後半部に形成された円盤状の大径部の前端面31に押し当てる。そして、鋳物コア部23の大径部前端面31及び前方鋳物ボス部21の外周面21bを基準面として、チャック3と受け板4とでチタン鋳物20を保持して旋回させる。
【0027】
この状態で、後方鋳物ボス部24の端面24a及び外周面24b、鋳物コア部23の背面23b及び外周面23c、鋳物フルブレード27,鋳物スプリッターブレード28のトレーリングエッジ27d,28d等を旋削することによって、これらの部位の余肉に相当する部分29がチタン鋳物20から除去される。そして、後方鋳物ボス部24は最終完成形態の後方ボス部104(ボス部)となる。なお、余肉相当部分29の旋削除去と併せて、後方鋳物ボス部24、鋳物コア部23及び前方鋳物ボス部21を貫通する軸孔109を形成しておく。
【0028】
次に、図12に示すように、チタン鋳物20の前後(表裏)を逆にして、鋳物コア部23の外周面23cを旋盤の他のチャック5で固定する。その場合、鋳物コア部23の大径部の後端面32と後方ボス部104の外周面104bとを基準面として、チャック5でチタン鋳物20を保持して旋回させる。
【0029】
この状態で、前方鋳物ボス部21の端面21a及び外周面21b、鋳物フルブレード27及び鋳物スプリッターブレード28のシュラウド27e,28e等を旋削することによって、これらの部位の余肉に相当する部分29がチタン鋳物20から除去される。そして、前方鋳物ボス部21は最終完成形態の前方ボス部101(ボス部)となる。このように、図11では主としてチタン鋳物20の後方側(裏側)の余肉相当部分29が除去され、図12では主としてチタン鋳物20の前方側(表側)の余肉相当部分29が除去される。
【0030】
ここで、チタン鋳物20は、旋盤から図13及び図14に示すフライス盤6に移動され、次にフライス削り(除去加工)が施される。図13に示すように、フライス盤6の治具7は、チタン鋳物20を下側から支持するための支持台71と、支持台7aから垂直状に起立する固定軸72とを有している。そこで、チタン鋳物20の軸孔109にフライス盤6(治具7)の固定軸72を挿通して、鋳物コア部23の大径部の後端面32(基準面)が水平状になるように、チタン鋳物20を支持台71に載置し、固定軸72の先端部に形成された雄ねじ部73にナット等の雌ねじ部74を螺合させる。これによって、チタン鋳物20のボス部101,104の軸線とフライス盤6(治具7)の加工中心線とが一致する状態で(符号30で示す鉛直線)、チタン鋳物20はフライス盤6(治具7)にしっかりと固定・保持される。
【0031】
フライス盤6は多数(例えば5軸)の加工軸(次元)を有している。図14に示すように、1又は複数の加工軸と刃物8とを用いて、鋳物フルブレード27,鋳物スプリッターブレード28の圧力面27a,28a、負圧面27b,28b、及びリーディングエッジ27c,28c、鋳物コア部23のハブ面23a等を切削することによって、チタン鋳物20においてこれまで未切削であった部位から余肉に相当する部分29が除去される。そして、鋳物ブレード22は最終完成形態のブレード102(羽根部)となり、鋳物コア部23は最終完成形態のコア部103となる。これにより、チタン鋳物20から図10に表わされた余肉相当部分29の全面的な除去が完了する。
【0032】
このようにして最終完成形態(ネット形状)となったチタン製圧縮機翼車100(図1参照)は、例えば図2で説明した自動車のターボチャージャーに用いられる。
【0033】
ところで、チタン鋳物20の外表面から余肉に相当する部分29を除去工程で全面的に除去することにより、チタン鋳物20の寸法のばらつきを均して所定の寸法公差内に収めることが比較的容易となる。これによって、チタン製圧縮機翼車100の加工時の寸法精度が高められるので、調整時間が短くなれば動釣り合い(回転バランス)の修正作業を簡略化でき、調整が不要となれば上記修正作業を省略できる。また、加工時の寸法精度が高められることによって、製品歩留りを向上させ高精度のチタン製圧縮機翼車100を得ることができる。その際、余肉に相当する部分29を切削加工により除去するので、NC(5軸以上)の制御技術を導入して高精度、高能率で除去加工が行なえ、製造コストの上昇が抑制される。
【0034】
(実施例2)
次に、図1及び図2で説明したチタン製圧縮機翼車を製造する方法について、本発明の他の実施例を図15〜図22等により説明する。この実施例では、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
(1)複数の可動式の入子型2から構成される金型1により、全面的に所定厚みの余肉19を除去代として付けたワックス型10(ポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン工程(図3,図4,図15参照);
(2)ワックス型10の余肉に相当する部分19を、その一部である残留余肉15を残して部分的に切削等の除去加工によって除去することにより、鋳込み用ワックス型110(ポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン除去工程(図16〜図19参照);
(3)鋳込み用ワックス型110を原型とするロストワックス鋳造法により、鋳込み用ワックス型110が転写されたチタン鋳物120を作成する鋳造工程(図5〜図9,図20参照);
(4)チタン鋳物120の残留余肉に相当する部分125を、切削等の除去加工により除去して、最終完成形態の圧縮機翼車100を作成する鋳物除去工程(図21,図22参照);
の4つの工程を含んでいる。このうち、ポジパターン工程は実施例1と同様であるから、ポジパターン除去工程以下の各工程について、実施例1と異なる部分を中心に説明する。
【0035】
(2)ポジパターン除去工程
ポジパターン工程で作成され、余肉に相当する部分19を全面的に(表面全体に)有するワックス型10(図3参照)の断面図を図15に示す。このワックス型10は、半径方向外向きに延びるワックスコア部113(コア部)と、ワックスコア部113に形成され、ワックスフルブレード117とワックススプリッターブレード118とから構成されるワックスブレード112(羽根部)と、ワックスコア部113の前端部及び後端部にそれぞれ形成され、回転軸300(図2参照)に取り付けられるための自身の回転中心と同芯的な前方ワックスボス部111(ボス部)及び後方ワックスボス部114(ボス部)と、を備えている。
【0036】
図15に示すワックス型10を切削加工して、一部の残留余肉15を残して部分的に除去することにより、鋳込み用ワックス型110を作成する。具体的には、図16に示すように、旋盤(図示せず)のチャック3でワックス型10の前方ワックスボス部111の外周面111bを固定する。旋盤側から突出する複数(例えば7枚)の受け板4を各ワックスブレード112の間に位置させるとともに、その先端をワックスコア部113の後半部に形成された円盤状の大径部の前端面113aに押し当てる。そして、ワックスコア部113の大径部前端面113a及び前方ワックスボス部111の外周面111bを基準面として、チャック3と受け板4とでワックス型10を保持して旋回させる。
【0037】
この状態で、後方ワックスボス部114の端面114a及び外周面114b、ワックスコア部113の背面113b及び外周面113c、ワックスフルブレード117,ワックススプリッターブレード118のトレーリングエッジ117d,118d等を旋削して、これらの各部位の余肉に相当する部分19のうち厚みの一部(例えば余肉の厚みの1〜10%)を残留余肉15(図15拡大図参照)として残しながら、ワックス型10から除去する。なお、余肉相当部分19の旋削除去と併せて、後方ワックスボス部114、ワックスコア部113及び前方ワックスボス部111を貫通するワックス軸孔119を形成しておく。
【0038】
次に、図17に示すように、ワックス型10の前後(表裏)を逆にして、ワックスコア部113の外周面113cを旋盤の他のチャック5で固定する。そして、ワックスコア部113の大径部の後端面113bと後方ワックスボス部114の外周面114bとを基準面として、チャック5でワックス型10を保持して旋回させる。
【0039】
この状態で、前方ワックスボス部111の端面111a、ワックスフルブレード117のシュラウド117e、ワックススプリッターブレード118のシュラウド118e等を旋削して、これらの各部位の余肉に相当する部分19のうち厚みの一部(例えば余肉の厚みの1〜10%)を残留余肉15(図15拡大図参照)として残しながら、ワックス型10から除去する。なお、前方ワックスボス部111の外周面111bについては、余肉に相当する部分19の厚み全部を、旋削によりワックス型10から除去する。このように、図16では主としてワックス型10の後方側(裏側)の余肉相当部分19が除去され、図17では主としてワックス型10の前方側(表側)の余肉相当部分19が除去される。
【0040】
ここで、ワックス型10は、旋盤から図18及び図19に示すフライス盤6に移動され、次にフライス削り(除去加工)が施される。図18に示すように、フライス盤6の治具7は、ワックス型10を下側から支持するための支持台71と、支持台71から垂直状に起立する固定軸72とを有している。そこで、ワックス型10のワックス軸孔119にフライス盤6(治具7)の固定軸72を挿通して、ワックスコア部113の大径部の後端面113b(基準面)が水平状になるように、ワックス型10を支持台71に載置し、固定軸72の先端部に形成された雄ねじ部73にナット等の雌ねじ部74を螺合させる。これによって、ワックス型10のワックスボス部111,114(ワックス軸孔119)の軸線とフライス盤6(治具7)の加工中心線とが一致する状態で(符号30で示す鉛直線)、ワックス型10はフライス盤6(治具7)にしっかりと固定・保持される。
【0041】
フライス盤6は多数(例えば5軸)の加工軸(次元)を有している。図19に示すように、1又は複数の加工軸と刃物8とを用いて、ワックスフルブレード117,ワックススプリッターブレード118の圧力面117a,118a、負圧面117b,118b及びリーディングエッジ117c,118c、ワックスコア部113のハブ面113a等を切削することによって、ワックス型10においてこれまで未切削であった部位から余肉に相当する部分19の厚み全部が除去される。これにより、ワックス型10から図15に表わされた余肉相当部分19の除去が完了し、鋳込み用ワックス型110が完成する。
【0042】
なお、以上で説明した通り、鋳込み用ワックス型110は、次の(a)〜(d)の各部位については余肉19の厚みの一部を残留余肉15として保持している。
(a)前方ワックスボス部111の端面111a;
(b)ワックスブレード112のシュラウド117e,118e及びトレーリングエッジ117d,118d;
(c)ワックスコア部113の外周面113c及び背面113b;
(d)後方ワックスボス部114の端面114a及び外周面114b。
【0043】
これらの部位は、圧縮機翼車100の性能に直接的に関与したり、取付時にケーシング等の壁部との間に厳重な隙間管理を求められたりするような、特に精密な寸法精度を要する部分である。そして、残留余肉15に相当する部分は、後述する鋳物除去工程での仕上削りによって除去される。つまり、残留余肉15は、鋳造工程で発生する熱応力等に基づくチタン鋳物の寸法のばらつきを、鋳物除去工程での仕上削りによって矯正するために、重要な機能を有している。なお、ワックス型10から余肉相当部分19の厚み全部が除去される部位の多くは、フライス盤でないと切削加工できない部位でもあるから、鋳物除去工程を旋盤作業のみで行なえれば作業時間の短縮となる。
【0044】
(3)鋳造工程
次に、図19で完成した鋳込み用ワックス型110を原型として、ロストワックス鋳造法によりチタン鋳物120を作成する。具体的な手順は実施例1の鋳造工程と同様であり、図5〜図9においてワックス型10の代わりに鋳込み用ワックス型110を用いる。なお、この実施例では、ワックス軸孔119の両端部にワックス等で栓をしてから鋳込み作業を行なう。
【0045】
(4)鋳物除去工程
鋳造工程で作成され、残留余肉に相当する部分125を部分的に有するチタン鋳物120の断面図を図20に示す。このチタン鋳物120は、半径方向外向きに延びる鋳物コア部123(コア部)と、鋳物コア部123に形成され、鋳物フルブレード127と鋳物スプリッターブレード128とから構成される鋳物ブレード122(羽根部)と、鋳物コア部123の前端部及び後端部にそれぞれ形成され、回転軸300(図2参照)に取り付けられるための自身の回転中心と同芯的な前方鋳物ボス部121(ボス部)及び後方鋳物ボス部124(ボス部)と、を備えている。
【0046】
そして、下記(A)〜(D)の部位には、鋳込み用ワックス型110の残留余肉15に相当する残留余肉125が保持されている。
(A)前方鋳物ボス部121の端面121a;
(B)鋳物ブレード122のシュラウド127e,128e及びトレーリングエッジ127d,128d;
(C)鋳物コア部123の外周面123c及び背面123b;
(D)後方鋳物ボス部124の端面124a及び外周面124b。
【0047】
図20に示すチタン鋳物120を切削加工して、残留余肉に相当する部分125を除去し最終完成形態の圧縮機翼車100(図1参照)を作成する。具体的には、図21に示すように、旋盤(図示せず)のチャック3でチタン鋳物120の前方鋳物ボス部121の外周面121bを固定する。旋盤側から突出する複数(例えば7枚)の受け板4を各鋳物ブレード122の間に位置させるとともに、その先端を鋳物コア部123の後半部に形成された円盤状の大径部の前端面31に押し当てる。そして、鋳物コア部123の大径部前端面31及び前方鋳物ボス部121の外周面121bを基準面として、チャック3と受け板4とでチタン鋳物120を保持して旋回させる。
【0048】
この状態で、後方鋳物ボス部124の端面124a及び外周面124b、鋳物コア部123の背面123b及び外周面123c、鋳物フルブレード127,鋳物スプリッターブレード128のトレーリングエッジ127d,128d等を旋削することによって、これらの部位の残留余肉に相当する部分125がチタン鋳物120から除去される。そして、後方鋳物ボス部124は最終完成形態の後方ボス部104(ボス部)となり、鋳物コア部123は最終完成形態のコア部103となる。なお、後方鋳物ボス部124、鋳物コア部123及び前方鋳物ボス部121を貫通する軸孔109が形成されている。
【0049】
次に、図22に示すように、チタン鋳物120の前後(表裏)を逆にして、コア部103の外周面103cを旋盤の他のチャック5で固定する。その場合、コア部103の大径部の後端面32と後方ボス部104の外周面104bとを基準面として、チャック5でチタン鋳物120を保持して旋回させる。
【0050】
この状態で、前方鋳物ボス部121の端面121a、鋳物フルブレード127のシュラウド127e、鋳物スプリッターブレード128のシュラウド128e等を旋削することによって、これらの部位の残留余肉に相当する部分125がチタン鋳物120から除去される。そして、前方鋳物ボス部121は最終完成形態の前方ボス部101(ボス部)となり、鋳物ブレード122は最終完成形態のブレード102(羽根部)となる。このように、図21では主としてチタン鋳物120の後方側(裏側)の残留余肉相当部分125が除去され、図22では主としてチタン鋳物120の前方側(表側)の残留余肉相当部分125が除去される。これにより、チタン鋳物120から図20に表わされた残留余肉相当部分125の除去が完了する。
【0051】
このようにして最終完成形態(ネット形状)となった実施例2のチタン製圧縮機翼車100(図1参照)も、実施例1と同様に、図2に示す自動車のターボチャージャー等に用いられる。
【0052】
このように、ポジパターン除去工程において、チタン鋳物に比べて軟らかいワックス型等のポジパターン(雄型)から余肉に相当する部分を一部の残留余肉を残して部分的に除去するので、除去加工が容易である。また、鋳造工程後にチタン鋳物をフライス加工しなくてもすむため、製造時間が短縮される。さらに、鋳物除去工程での寸法精度がより高くなることによって、動釣り合い(回転バランス)の修正作業が簡略化(省略)され、製品歩留りが向上する。
【0053】
(実施例3)
次に、図1及び図2で説明したチタン製圧縮機翼車を製造する方法について、本発明のさらに他の実施例を図23,図24等により説明する。この実施例では、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
(1)複数の可動式の入子型2から構成される金型1により、全面的に所定厚みの余肉19を除去代として付けたワックス型10(ポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン工程(図3,図4,図15参照);
(2)ワックス型10の余肉に相当する部分19を切削等の除去加工によって全面的に除去することにより、ほぼ最終完成形態の完成ワックス型130(最終完成形態のポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン除去工程(図16〜図19,図23参照);
(3)完成ワックス型130を原型とするロストワックス鋳造法により、ほぼ最終完成形態の完成チタン鋳物140を作成する鋳造工程(図5〜図9,図24参照);
の3つの工程を含んでいる。このうち、ポジパターン工程は実施例1,2と同様であるから、ポジパターン除去工程及び鋳造工程について、実施例2と異なる部分を中心に説明する。
【0054】
(2)ポジパターン除去工程
ポジパターン工程で作成されたワックス型10の余肉に相当する部分19(図3,図15参照)を切削等の除去加工(図16〜図19参照)によって全面的に除去する。これによって、図23に示すように、余肉相当部分19が除去されてほぼ最終完成形態となった完成ワックス型130が作成される。
【0055】
(3)鋳造工程
完成ワックス型130を原型として、ロストワックス鋳造(図5〜図9参照)を行なうと、図24に示すように、ほぼ最終完成形態の完成チタン鋳物140が作成される。ただし、完成チタン鋳物140には、軸孔109の加工(図11参照)が必要となる場合がある。
【0056】
この実施例では、ワックス型10から余肉に相当する部分19を全面除去することにより、鋳物除去工程を省略できるので、実施例2よりも除去加工がさらに容易である。また、完成チタン鋳物140を殆ど加工しなくてもすむため、製造時間が短縮される。
【0057】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の実施に際しては種々の変更や追加を加えることができる。例えば、ワックス型10,鋳込み用ワックス型110やチタン鋳物20,120に形成される余肉相当部分19,29や残留余肉相当部分15,125について、それぞれほぼ均等な厚さで図示されているが、必ずしも全体にわたって均等に設ける必要はない。要するに、余肉相当部分19,29は、ワックス型10がアンダーカット等を生じずに製造でき、かつチタン鋳物20に対して除去加工が能率的に行なえる形態であればよい。また、残留余肉相当部分15,125は、鋳物除去工程にてチタン鋳物120から除去加工が能率的に行なえる形態であればよい。
【0058】
なお、本発明によって製造されたチタン製圧縮機翼車は、吸気を圧縮してエンジンのシリンダに供給する用途(図2参照)以外に、排気を圧縮してエンジンのシリンダに供給し再燃焼させる用途等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】チタン製圧縮機翼車の概略斜視図。
【図2】チタン製圧縮機翼車を用いたターボチャージャーの一例を示す説明図。
【図3】本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法のうち、ポジパターン工程で作成されたワックス型を平面視で示す説明図。
【図4】図3のワックス型を作成するための金型の配置を平面視で示す説明図。
【図5】図3に続く鋳造工程を示す説明図。
【図6】図5に続く鋳造工程を示す説明図。
【図7】図6に続く鋳造工程を示す説明図。
【図8】図7に続く鋳造工程を示す説明図。
【図9】図8に続く鋳造工程を示す説明図。
【図10】図9の鋳造工程で作成されたチタン鋳物の断面図。
【図11】図9に続く除去工程を示す説明図。
【図12】図11に続く除去工程を示す説明図。
【図13】図12に続く除去工程を示す説明図。
【図14】図13に続く除去工程を示す説明図。
【図15】図3の断面図。
【図16】本発明に係るチタン製圧縮機翼車の他の製造方法のうち、ポジパターン除去工程を示す説明図。
【図17】図16に続くポジパターン除去工程を示す説明図。
【図18】図17に続くポジパターン除去工程を示す説明図。
【図19】図18に続くポジパターン除去工程を示す説明図。
【図20】鋳造工程で作成されたチタン鋳物の断面図。
【図21】図20のチタン鋳物に対する鋳物除去工程を示す説明図。
【図22】図21に続く鋳物除去工程を示す説明図。
【図23】本発明に係るチタン製圧縮機翼車のさらに他の製造方法のうち、ポジパターン除去工程で作成された完成ワックス型を平面視で示す説明図。
【図24】図23に続く鋳造工程で作成された完成チタン鋳物の断面図。
【符号の説明】
【0060】
1 金型
2 入子型
10 ワックス型(ポジパターン;原型;雄型)
15 残留余肉相当部分
19 余肉相当部分
20 チタン鋳物
21 前方鋳物ボス部(ボス部)
22 鋳物ブレード(羽根部)
23 鋳物コア部(コア部)
24 後方鋳物ボス部(ボス部)
29 余肉相当部分
100 チタン製圧縮機翼車
101 前方ボス部(ボス部)
102 ブレード(羽根部)
103 コア部
104 後方ボス部(ボス部)
110 鋳込み用ワックス型(ポジパターン;原型;雄型)
120 チタン鋳物
125 残留余肉相当部分
130 完成ワックス型(最終完成形態のポジパターン;原型;雄型)
140 完成チタン鋳物
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のターボチャージャー(排気ターボ過給機)等に用いられるチタン製の圧縮機翼車を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のターボチャージャーは、図2に示すように、1本の回転軸300の両端側にそれぞれ翼車100,200を備えている。そして、エンジンのシリンダ(図示せず)から排出される排気250を一方の翼車(タービン翼車)200に導き、排気圧力によってタービン翼車200を回転させ、その回転力によって他方の翼車(圧縮機翼車)100を駆動し、圧縮機翼車100で吸気150を圧縮してエンジンのシリンダ(図示せず)に供給する。
【0003】
図1に示すように、この圧縮機翼車100は、回転軸300(図2参照)に同芯状に固定される前方ボス部101及び後方ボス部104(図13参照)と、前方ボス部101近傍の入口側130から半径方向外方の出口側140に向って放射状に延びる複数のブレード102(羽根部)と、入口側130とは軸方向の反対側に位置する後方ボス部104において半径方向外向きに延びる円盤状のコア部103とを有している。ブレード102は、入口側130から取り込んだ吸気を圧縮して出口側140の外周部から放出するために、回転方向に対して後方側に湾曲している。また、吸入効率を上げるために長いフルブレード107と短いスプリッターブレード108とが交互に並べられ、両ブレード107,108の始端位置をずらして配置されている。なお、ブレード102はフルブレード107のみで構成される場合がある。
【0004】
具体的には、前方ボス部101と後方ボス部104とは、それぞれ端面101a,104a(図11参照)及び外周面101b,104b(図11参照)を有し、軸孔109は両端面101a,104a間を軸線方向に貫通している。また、コア部103は、前方ボス部101の外周面101bに続いて吸気の流れ面となるハブ面103aと、ハブ面103aの裏側に位置する背面103b(図11参照)と、コア部103の外縁に沿う外周面103cとを有する。
【0005】
フルブレード107とスプリッターブレード108とには、それぞれ回転方向上手側の圧力面107a,108a及び回転方向下手側の負圧面107b,108bが形成される。また、各ブレード107,108は、入口側130においてコア部103のハブ面103aから半径方向外向きに延びるリーディングエッジ107c,108cと、出口側140においてコア部103の外周面103cから入口側130に向けて延びるトレーリングエッジ107d,108dと、両エッジ107c,108c,107d,108dを3次元的に連結するシュラウド107e,108eとを有している。
【0006】
このように、圧縮機翼車100(特にブレード102)は、複雑な3次元曲面で構成されているために、ロストワックス鋳造等の精密鋳造によるか、5軸以上のNCで制御された切削加工等の機械的加工によって製造されるのが一般的である。
【0007】
さらに近年、圧縮機翼車100は、エンジンの燃焼効率を向上させて排気を清浄化するために、高回転数、高圧縮比(高圧力比)等の高性能化が求められ、また、自動車やエンジンの高機能化に伴ってコンパクト化(小型化)も求められている。このため、従来のアルミ製の圧縮機翼車に代わって、より機械的強度に優れたチタン製の圧縮機翼車が採用される場合があり、特許文献1,2にはこのようなチタン製の圧縮機翼車を製造する方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−52754号公報
【特許文献2】米国特許第6588485号明細書
【0009】
これらの文献には次のような技術が開示されている。まず、入子型(金型)がアンダーカット等の引抜き不可能な状態を発生する部分に余肉を付けて、ワックス型等のポジパターン(ニアネット形状の雄型)が作成される。その後、余肉を付けたポジパターン(ニアネット形状)を原型としてロストワックス鋳造が行なわれる。さらに、チタン鋳物(ニアネット形状)の余肉部分のみが切削加工等で除去され、これによって完成形態(最終形状)のチタン製圧縮機翼車(ネット形状)が得られる。したがって、この製造方法によれば、切削加工等に要する製造コストを抑制することができる。
【0010】
ところが、これらに開示された技術では、チタン鋳物の余肉を付けた部分のみを切削加工し、チタン鋳物で余肉を付けていない部分(すなわち、入子型が引抜き可能でアンダーカットを生じない部分)には切削加工を行なわないため、鋳造時に発生する熱応力等により、チタン鋳物の非切削部分(引抜き可能部分)が所定の寸法公差を満たさなくなる確率が高くなる。このような寸法のばらつきに伴って、動釣り合い(回転バランス)が悪化しやすく、完成後の回転バランス修正に時間を要する場合が多い。また、寸法公差内に収まらないため不良品となり、製品歩留りを低下させる場合も多い。なお、塊状のチタン材から切削加工等の機械的加工のみによって圧縮機翼車を作成する場合、アルミよりも硬く加工に困難を伴うため製造コストが上昇する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、全面的に付けた余肉を除去代として製造過程で全面的に除去することにより加工時の寸法精度を高め、動釣り合い(回転バランス)の修正作業の簡略化又は省略を図りつつ、製品歩留りを向上させ、かつ製造コストの高騰を抑制して、高精度のチタン製圧縮機翼車を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンを原型とし、前記余肉が除去代として付与された形態で前記ポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
その鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記余肉に相当する部分を、除去加工により全面的に除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、具体的には、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するワックスでポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンを原型とし、前記余肉が除去代として付与された形態で前記ポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
その鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記余肉に相当する部分を、切削加工及び/又は研削加工により全面的に除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
これらの製造方法によれば、鋳造工程により得られるチタン鋳物の外面には全面的に余肉が除去代として付与されているので、その余肉に相当する部分を除去工程で全面的に除去することにより、チタン鋳物の寸法のばらつきを均して所定の寸法公差内に収めることが比較的容易となる。これによって、チタン製圧縮機翼車の加工時の寸法精度を高め、動釣り合い(回転バランス)の修正作業を簡略化(例えば調整時間の短縮)したり省略(例えば調整不要)したりできる。また、加工時の寸法精度が高められることによって、製品歩留りを向上させ高精度のチタン製圧縮機翼車を得ることができる。その際、余肉に相当する部分を(例えば切削加工により)除去すればよいので、塊状のチタン材から削り出したりする場合に比して加工に困難を伴わず製造コストを上昇させずにすむ。なお、「動釣り合い(回転バランス)の調整(修正)」とは、ここでは、「周方向の質量分布を調整して残留動不釣合いを減少又は消滅させるために、チタン鋳物に釣合い調整部を形成すること」を意味する。
【0015】
さらに、ポジパターン工程でワックスによりポジパターン(ワックス型;雄型)を作成し、鋳造工程でそのワックス型を原型とする鋳造(ロストワックス鋳造)を行ってチタン鋳物を作成し、除去工程でそのチタン鋳物の余肉に相当する部分を切削加工及び/又は研削加工により除去するときには、チタン鋳物をさらに高精度で作成することができるので、余肉の厚さを全般的に薄くすることができる。また、除去工程でNC(5軸以上)の制御技術を導入しやすくなり、除去加工に要する時間の短縮を図ることができる。
【0016】
次に、上記課題を解決するために、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンの前記余肉に相当する部分を全面的に、又はその一部である残留余肉を残して部分的に、除去加工により除去するポジパターン除去工程と、
そのポジパターン除去工程で作成されたポジパターンを原型とし、そのポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
前記ポジパターン除去工程で前記残留余肉を残した場合には、前記鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記残留余肉に相当する部分を、除去加工により除去する鋳物除去工程と、
を含むことを特徴とする。
【0017】
このように、ポジパターン除去工程において、チタン鋳物に比べて軟らかいワックス型等のポジパターン(雄型)から余肉に相当する部分を全面的に又は一部の残留余肉を残して部分的に除去するので、除去加工が容易である。また、鋳造工程後にチタン鋳物を全く又は殆ど加工しなくてもすむため、製造時間の短縮を図ることができる。なお、「残留余肉を残して部分的に除去」とは、「ポジパターンの所定の部位(特定部位)についてのみ残留余肉を残す」ことを意味する。
【0018】
このような製造方法では、
ポジパターン除去工程において、圧縮機翼車の所定の部位については、ポジパターンの余肉の厚みの一部が残留余肉として残るように、切削加工及び/又は研削加工により除去され、かつ圧縮機翼車のその他の部位については、ポジパターンの余肉の厚みが切削加工及び/又は研削加工により全面的に除去されるとともに、
鋳物除去工程において、圧縮機翼車の所定の部位の残留余肉に相当する部分が、チタン鋳物から切削加工及び/又は研削加工により除去される場合がある。
【0019】
このように、ポジパターン除去工程で残留余肉を残し、鋳物除去工程でその残留余肉相当分を除去する部位(所定の部位)として、例えば出口側各部のように、圧縮機翼車の性能に直接的に関与したり、取付時に厳重な隙間管理を求められたりするような、特に精密な寸法精度を要する部分を設定すれば、鋳造工程で発生する熱応力等に基づくチタン鋳物の寸法のばらつきを、鋳物除去工程の仕上削りによって矯正することができる。鋳物除去工程での寸法精度がより高くなることによって、動釣り合い(回転バランス)の修正作業の簡略化・省略や製品歩留りの向上をさらに図ることができる。逆に、鋳造工程(ロストワックス鋳造)によって必要な寸法精度が得られる部位については、鋳物除去工程での仕上削りを要しないため、製造時間の短縮や製造コストの削減を図ることができる。
【0020】
具体的には、前記「所定の部位」、すなわち「ポジパターン除去工程で残留余肉を残す部位」として、
・前方ボス部の端面;
・ブレードのシュラウド及びトレーリングエッジ;
・コア部の外周面及び背面;
・後方ボス部の端面及び外周面;
を含むことが望ましい(図1参照)。
【0021】
なお、本発明で「チタン製」というとき、純チタン製とチタン合金製とを含む。「チタン鋳物」、「チタン材」についても同様である。また、「除去加工」には、例えば以下のような加工方法を含む。
(1)機械的加工……切削加工(旋削、フライス削り、ブローチ削り等)、研削加工、バフ加工、バレル加工、噴射加工(ショットブラスト、サンドブラスト等)、超音波加工等;
(2)電気的加工……放電加工、電子ビーム加工、イオンビーム加工、プラズマ加工等;
(3)電気化学的加工……電解加工、電解研削、電解研磨等;
(4)化学的加工……化学研磨、エッチング、ケミカルミリング等;
(5)光学的加工……レーザビーム加工等。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施例1)
次に、図1及び図2で説明したチタン製の圧縮機翼車を製造する方法について、図3〜図14に示す本発明の一実施例を参照して説明する。この実施例では、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
(1)放射状に配置される複数の可動式の入子型2が中心に集まるように接近して構成される金型1により、圧縮機翼車100(図1参照)の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉19が除去代として付けられるように、圧縮機翼車100の形状を象った、熱により溶融するワックス型10(ポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン工程(図3,図4参照);
(2)ワックス型10を原型とし、余肉29が除去代として付与された形態で、ロストワックス鋳造法によりワックス型10が転写されたチタン鋳物20を作成する鋳造工程(図5〜図10参照);
(3)チタン鋳物20の余肉に相当する部分29を、切削加工(除去加工)により全面的に除去して、最終完成形態の圧縮機翼車100を作成する除去工程(図11〜図14参照);
の3つの工程を含んでいる。以下、各工程ごとに説明する。
【0023】
(1)ポジパターン工程
図4に示すように、放射状に配置される複数(例えば7個)の入子型2によって圧縮機翼車100(図1参照)の形状を象った金型1を構成し、溶融状態のワックスを注入する。このとき、入子型2の各々がアンダーカット等の引抜き不可能な状態を発生することなく半径方向外側に分離・移動できるように、図3に示すワックス型10は、最終完成形態である圧縮機翼車100(図1参照)の外面に対して全面的に余肉19を付けた形で作成される。なお、図4に示す金型1では、フルブレード107の間に設置した場合の7個の入子型2のみが表わされているが、実際には、スプリッターブレード108の存在を考慮して14個の入子型2を配置することが望ましい(図1参照)。
【0024】
(2)鋳造工程
次に、図3のワックス型10を原型として、ロストワックス鋳造法によりチタン鋳物20を作成する。具体的には、図5に示すように、1個の湯口12に対して複数(例えば6個)のワックス型10を樹枝状に組み付けて、ワックス型ツリー13を組み立てる。次に、図6に示すように、ワックス型ツリー13をスラリ状の耐火性バインダ14に浸漬する(ディッピング)。さらに、粗目の耐火性粒子を振りかけて乾燥・固化させる(サンディング)。これらのディッピングとサンディングとを複数回(例えば5〜10回)繰り返すことにより、図7に示すような、耐火物のコーティング層16で被覆されたシェル状の鋳型17が作成される。
【0025】
そして、図8に示すように、湯口12を下にして鋳型17を蒸気で加熱することによって、ワックス型ツリー13(ワックス型10)のワックスを溶出させる(脱ろう)。さらに鋳型17を炉中で焼成して、鋳型17に強度を付与した後、図9に示すように、溶解したチタン材18を湯口12から吸引して鋳込む(吸引法)。チタン材18が冷却・固化した後に砂落し、切断等を行なうことにより、図10に示すような、余肉に相当する部分29を全面的に(表面全体に)有するチタン鋳物20が取り出される。このチタン鋳物20は、半径方向外向きに延びる鋳物コア部23(コア部)と、鋳物コア部23に形成され、鋳物フルブレード27と鋳物スプリッターブレード28とから構成される鋳物ブレード22(羽根部)と、鋳物コア部23の前端部及び後端部にそれぞれ形成され、回転軸300(図2参照)に取り付けられるための自身の回転中心と同芯的な前方鋳物ボス部21(ボス部)及び後方鋳物ボス部24(ボス部)と、を備えている。
【0026】
(3)除去工程
図10に示すチタン鋳物20を切削加工して、余肉に相当する部分29を全面的に除去し最終完成形態の圧縮機翼車100(図1参照)を作成する。具体的には、図11に示すように、旋盤(図示せず)のチャック3でチタン鋳物20の前方鋳物ボス部21の外周面21bを固定する。旋盤側から突出する複数(例えば7枚)の受け板4を各鋳物ブレード22の間に位置させるとともに、その先端を鋳物コア部23の後半部に形成された円盤状の大径部の前端面31に押し当てる。そして、鋳物コア部23の大径部前端面31及び前方鋳物ボス部21の外周面21bを基準面として、チャック3と受け板4とでチタン鋳物20を保持して旋回させる。
【0027】
この状態で、後方鋳物ボス部24の端面24a及び外周面24b、鋳物コア部23の背面23b及び外周面23c、鋳物フルブレード27,鋳物スプリッターブレード28のトレーリングエッジ27d,28d等を旋削することによって、これらの部位の余肉に相当する部分29がチタン鋳物20から除去される。そして、後方鋳物ボス部24は最終完成形態の後方ボス部104(ボス部)となる。なお、余肉相当部分29の旋削除去と併せて、後方鋳物ボス部24、鋳物コア部23及び前方鋳物ボス部21を貫通する軸孔109を形成しておく。
【0028】
次に、図12に示すように、チタン鋳物20の前後(表裏)を逆にして、鋳物コア部23の外周面23cを旋盤の他のチャック5で固定する。その場合、鋳物コア部23の大径部の後端面32と後方ボス部104の外周面104bとを基準面として、チャック5でチタン鋳物20を保持して旋回させる。
【0029】
この状態で、前方鋳物ボス部21の端面21a及び外周面21b、鋳物フルブレード27及び鋳物スプリッターブレード28のシュラウド27e,28e等を旋削することによって、これらの部位の余肉に相当する部分29がチタン鋳物20から除去される。そして、前方鋳物ボス部21は最終完成形態の前方ボス部101(ボス部)となる。このように、図11では主としてチタン鋳物20の後方側(裏側)の余肉相当部分29が除去され、図12では主としてチタン鋳物20の前方側(表側)の余肉相当部分29が除去される。
【0030】
ここで、チタン鋳物20は、旋盤から図13及び図14に示すフライス盤6に移動され、次にフライス削り(除去加工)が施される。図13に示すように、フライス盤6の治具7は、チタン鋳物20を下側から支持するための支持台71と、支持台7aから垂直状に起立する固定軸72とを有している。そこで、チタン鋳物20の軸孔109にフライス盤6(治具7)の固定軸72を挿通して、鋳物コア部23の大径部の後端面32(基準面)が水平状になるように、チタン鋳物20を支持台71に載置し、固定軸72の先端部に形成された雄ねじ部73にナット等の雌ねじ部74を螺合させる。これによって、チタン鋳物20のボス部101,104の軸線とフライス盤6(治具7)の加工中心線とが一致する状態で(符号30で示す鉛直線)、チタン鋳物20はフライス盤6(治具7)にしっかりと固定・保持される。
【0031】
フライス盤6は多数(例えば5軸)の加工軸(次元)を有している。図14に示すように、1又は複数の加工軸と刃物8とを用いて、鋳物フルブレード27,鋳物スプリッターブレード28の圧力面27a,28a、負圧面27b,28b、及びリーディングエッジ27c,28c、鋳物コア部23のハブ面23a等を切削することによって、チタン鋳物20においてこれまで未切削であった部位から余肉に相当する部分29が除去される。そして、鋳物ブレード22は最終完成形態のブレード102(羽根部)となり、鋳物コア部23は最終完成形態のコア部103となる。これにより、チタン鋳物20から図10に表わされた余肉相当部分29の全面的な除去が完了する。
【0032】
このようにして最終完成形態(ネット形状)となったチタン製圧縮機翼車100(図1参照)は、例えば図2で説明した自動車のターボチャージャーに用いられる。
【0033】
ところで、チタン鋳物20の外表面から余肉に相当する部分29を除去工程で全面的に除去することにより、チタン鋳物20の寸法のばらつきを均して所定の寸法公差内に収めることが比較的容易となる。これによって、チタン製圧縮機翼車100の加工時の寸法精度が高められるので、調整時間が短くなれば動釣り合い(回転バランス)の修正作業を簡略化でき、調整が不要となれば上記修正作業を省略できる。また、加工時の寸法精度が高められることによって、製品歩留りを向上させ高精度のチタン製圧縮機翼車100を得ることができる。その際、余肉に相当する部分29を切削加工により除去するので、NC(5軸以上)の制御技術を導入して高精度、高能率で除去加工が行なえ、製造コストの上昇が抑制される。
【0034】
(実施例2)
次に、図1及び図2で説明したチタン製圧縮機翼車を製造する方法について、本発明の他の実施例を図15〜図22等により説明する。この実施例では、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
(1)複数の可動式の入子型2から構成される金型1により、全面的に所定厚みの余肉19を除去代として付けたワックス型10(ポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン工程(図3,図4,図15参照);
(2)ワックス型10の余肉に相当する部分19を、その一部である残留余肉15を残して部分的に切削等の除去加工によって除去することにより、鋳込み用ワックス型110(ポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン除去工程(図16〜図19参照);
(3)鋳込み用ワックス型110を原型とするロストワックス鋳造法により、鋳込み用ワックス型110が転写されたチタン鋳物120を作成する鋳造工程(図5〜図9,図20参照);
(4)チタン鋳物120の残留余肉に相当する部分125を、切削等の除去加工により除去して、最終完成形態の圧縮機翼車100を作成する鋳物除去工程(図21,図22参照);
の4つの工程を含んでいる。このうち、ポジパターン工程は実施例1と同様であるから、ポジパターン除去工程以下の各工程について、実施例1と異なる部分を中心に説明する。
【0035】
(2)ポジパターン除去工程
ポジパターン工程で作成され、余肉に相当する部分19を全面的に(表面全体に)有するワックス型10(図3参照)の断面図を図15に示す。このワックス型10は、半径方向外向きに延びるワックスコア部113(コア部)と、ワックスコア部113に形成され、ワックスフルブレード117とワックススプリッターブレード118とから構成されるワックスブレード112(羽根部)と、ワックスコア部113の前端部及び後端部にそれぞれ形成され、回転軸300(図2参照)に取り付けられるための自身の回転中心と同芯的な前方ワックスボス部111(ボス部)及び後方ワックスボス部114(ボス部)と、を備えている。
【0036】
図15に示すワックス型10を切削加工して、一部の残留余肉15を残して部分的に除去することにより、鋳込み用ワックス型110を作成する。具体的には、図16に示すように、旋盤(図示せず)のチャック3でワックス型10の前方ワックスボス部111の外周面111bを固定する。旋盤側から突出する複数(例えば7枚)の受け板4を各ワックスブレード112の間に位置させるとともに、その先端をワックスコア部113の後半部に形成された円盤状の大径部の前端面113aに押し当てる。そして、ワックスコア部113の大径部前端面113a及び前方ワックスボス部111の外周面111bを基準面として、チャック3と受け板4とでワックス型10を保持して旋回させる。
【0037】
この状態で、後方ワックスボス部114の端面114a及び外周面114b、ワックスコア部113の背面113b及び外周面113c、ワックスフルブレード117,ワックススプリッターブレード118のトレーリングエッジ117d,118d等を旋削して、これらの各部位の余肉に相当する部分19のうち厚みの一部(例えば余肉の厚みの1〜10%)を残留余肉15(図15拡大図参照)として残しながら、ワックス型10から除去する。なお、余肉相当部分19の旋削除去と併せて、後方ワックスボス部114、ワックスコア部113及び前方ワックスボス部111を貫通するワックス軸孔119を形成しておく。
【0038】
次に、図17に示すように、ワックス型10の前後(表裏)を逆にして、ワックスコア部113の外周面113cを旋盤の他のチャック5で固定する。そして、ワックスコア部113の大径部の後端面113bと後方ワックスボス部114の外周面114bとを基準面として、チャック5でワックス型10を保持して旋回させる。
【0039】
この状態で、前方ワックスボス部111の端面111a、ワックスフルブレード117のシュラウド117e、ワックススプリッターブレード118のシュラウド118e等を旋削して、これらの各部位の余肉に相当する部分19のうち厚みの一部(例えば余肉の厚みの1〜10%)を残留余肉15(図15拡大図参照)として残しながら、ワックス型10から除去する。なお、前方ワックスボス部111の外周面111bについては、余肉に相当する部分19の厚み全部を、旋削によりワックス型10から除去する。このように、図16では主としてワックス型10の後方側(裏側)の余肉相当部分19が除去され、図17では主としてワックス型10の前方側(表側)の余肉相当部分19が除去される。
【0040】
ここで、ワックス型10は、旋盤から図18及び図19に示すフライス盤6に移動され、次にフライス削り(除去加工)が施される。図18に示すように、フライス盤6の治具7は、ワックス型10を下側から支持するための支持台71と、支持台71から垂直状に起立する固定軸72とを有している。そこで、ワックス型10のワックス軸孔119にフライス盤6(治具7)の固定軸72を挿通して、ワックスコア部113の大径部の後端面113b(基準面)が水平状になるように、ワックス型10を支持台71に載置し、固定軸72の先端部に形成された雄ねじ部73にナット等の雌ねじ部74を螺合させる。これによって、ワックス型10のワックスボス部111,114(ワックス軸孔119)の軸線とフライス盤6(治具7)の加工中心線とが一致する状態で(符号30で示す鉛直線)、ワックス型10はフライス盤6(治具7)にしっかりと固定・保持される。
【0041】
フライス盤6は多数(例えば5軸)の加工軸(次元)を有している。図19に示すように、1又は複数の加工軸と刃物8とを用いて、ワックスフルブレード117,ワックススプリッターブレード118の圧力面117a,118a、負圧面117b,118b及びリーディングエッジ117c,118c、ワックスコア部113のハブ面113a等を切削することによって、ワックス型10においてこれまで未切削であった部位から余肉に相当する部分19の厚み全部が除去される。これにより、ワックス型10から図15に表わされた余肉相当部分19の除去が完了し、鋳込み用ワックス型110が完成する。
【0042】
なお、以上で説明した通り、鋳込み用ワックス型110は、次の(a)〜(d)の各部位については余肉19の厚みの一部を残留余肉15として保持している。
(a)前方ワックスボス部111の端面111a;
(b)ワックスブレード112のシュラウド117e,118e及びトレーリングエッジ117d,118d;
(c)ワックスコア部113の外周面113c及び背面113b;
(d)後方ワックスボス部114の端面114a及び外周面114b。
【0043】
これらの部位は、圧縮機翼車100の性能に直接的に関与したり、取付時にケーシング等の壁部との間に厳重な隙間管理を求められたりするような、特に精密な寸法精度を要する部分である。そして、残留余肉15に相当する部分は、後述する鋳物除去工程での仕上削りによって除去される。つまり、残留余肉15は、鋳造工程で発生する熱応力等に基づくチタン鋳物の寸法のばらつきを、鋳物除去工程での仕上削りによって矯正するために、重要な機能を有している。なお、ワックス型10から余肉相当部分19の厚み全部が除去される部位の多くは、フライス盤でないと切削加工できない部位でもあるから、鋳物除去工程を旋盤作業のみで行なえれば作業時間の短縮となる。
【0044】
(3)鋳造工程
次に、図19で完成した鋳込み用ワックス型110を原型として、ロストワックス鋳造法によりチタン鋳物120を作成する。具体的な手順は実施例1の鋳造工程と同様であり、図5〜図9においてワックス型10の代わりに鋳込み用ワックス型110を用いる。なお、この実施例では、ワックス軸孔119の両端部にワックス等で栓をしてから鋳込み作業を行なう。
【0045】
(4)鋳物除去工程
鋳造工程で作成され、残留余肉に相当する部分125を部分的に有するチタン鋳物120の断面図を図20に示す。このチタン鋳物120は、半径方向外向きに延びる鋳物コア部123(コア部)と、鋳物コア部123に形成され、鋳物フルブレード127と鋳物スプリッターブレード128とから構成される鋳物ブレード122(羽根部)と、鋳物コア部123の前端部及び後端部にそれぞれ形成され、回転軸300(図2参照)に取り付けられるための自身の回転中心と同芯的な前方鋳物ボス部121(ボス部)及び後方鋳物ボス部124(ボス部)と、を備えている。
【0046】
そして、下記(A)〜(D)の部位には、鋳込み用ワックス型110の残留余肉15に相当する残留余肉125が保持されている。
(A)前方鋳物ボス部121の端面121a;
(B)鋳物ブレード122のシュラウド127e,128e及びトレーリングエッジ127d,128d;
(C)鋳物コア部123の外周面123c及び背面123b;
(D)後方鋳物ボス部124の端面124a及び外周面124b。
【0047】
図20に示すチタン鋳物120を切削加工して、残留余肉に相当する部分125を除去し最終完成形態の圧縮機翼車100(図1参照)を作成する。具体的には、図21に示すように、旋盤(図示せず)のチャック3でチタン鋳物120の前方鋳物ボス部121の外周面121bを固定する。旋盤側から突出する複数(例えば7枚)の受け板4を各鋳物ブレード122の間に位置させるとともに、その先端を鋳物コア部123の後半部に形成された円盤状の大径部の前端面31に押し当てる。そして、鋳物コア部123の大径部前端面31及び前方鋳物ボス部121の外周面121bを基準面として、チャック3と受け板4とでチタン鋳物120を保持して旋回させる。
【0048】
この状態で、後方鋳物ボス部124の端面124a及び外周面124b、鋳物コア部123の背面123b及び外周面123c、鋳物フルブレード127,鋳物スプリッターブレード128のトレーリングエッジ127d,128d等を旋削することによって、これらの部位の残留余肉に相当する部分125がチタン鋳物120から除去される。そして、後方鋳物ボス部124は最終完成形態の後方ボス部104(ボス部)となり、鋳物コア部123は最終完成形態のコア部103となる。なお、後方鋳物ボス部124、鋳物コア部123及び前方鋳物ボス部121を貫通する軸孔109が形成されている。
【0049】
次に、図22に示すように、チタン鋳物120の前後(表裏)を逆にして、コア部103の外周面103cを旋盤の他のチャック5で固定する。その場合、コア部103の大径部の後端面32と後方ボス部104の外周面104bとを基準面として、チャック5でチタン鋳物120を保持して旋回させる。
【0050】
この状態で、前方鋳物ボス部121の端面121a、鋳物フルブレード127のシュラウド127e、鋳物スプリッターブレード128のシュラウド128e等を旋削することによって、これらの部位の残留余肉に相当する部分125がチタン鋳物120から除去される。そして、前方鋳物ボス部121は最終完成形態の前方ボス部101(ボス部)となり、鋳物ブレード122は最終完成形態のブレード102(羽根部)となる。このように、図21では主としてチタン鋳物120の後方側(裏側)の残留余肉相当部分125が除去され、図22では主としてチタン鋳物120の前方側(表側)の残留余肉相当部分125が除去される。これにより、チタン鋳物120から図20に表わされた残留余肉相当部分125の除去が完了する。
【0051】
このようにして最終完成形態(ネット形状)となった実施例2のチタン製圧縮機翼車100(図1参照)も、実施例1と同様に、図2に示す自動車のターボチャージャー等に用いられる。
【0052】
このように、ポジパターン除去工程において、チタン鋳物に比べて軟らかいワックス型等のポジパターン(雄型)から余肉に相当する部分を一部の残留余肉を残して部分的に除去するので、除去加工が容易である。また、鋳造工程後にチタン鋳物をフライス加工しなくてもすむため、製造時間が短縮される。さらに、鋳物除去工程での寸法精度がより高くなることによって、動釣り合い(回転バランス)の修正作業が簡略化(省略)され、製品歩留りが向上する。
【0053】
(実施例3)
次に、図1及び図2で説明したチタン製圧縮機翼車を製造する方法について、本発明のさらに他の実施例を図23,図24等により説明する。この実施例では、本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法は、
(1)複数の可動式の入子型2から構成される金型1により、全面的に所定厚みの余肉19を除去代として付けたワックス型10(ポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン工程(図3,図4,図15参照);
(2)ワックス型10の余肉に相当する部分19を切削等の除去加工によって全面的に除去することにより、ほぼ最終完成形態の完成ワックス型130(最終完成形態のポジパターン;原型;雄型)を作成するポジパターン除去工程(図16〜図19,図23参照);
(3)完成ワックス型130を原型とするロストワックス鋳造法により、ほぼ最終完成形態の完成チタン鋳物140を作成する鋳造工程(図5〜図9,図24参照);
の3つの工程を含んでいる。このうち、ポジパターン工程は実施例1,2と同様であるから、ポジパターン除去工程及び鋳造工程について、実施例2と異なる部分を中心に説明する。
【0054】
(2)ポジパターン除去工程
ポジパターン工程で作成されたワックス型10の余肉に相当する部分19(図3,図15参照)を切削等の除去加工(図16〜図19参照)によって全面的に除去する。これによって、図23に示すように、余肉相当部分19が除去されてほぼ最終完成形態となった完成ワックス型130が作成される。
【0055】
(3)鋳造工程
完成ワックス型130を原型として、ロストワックス鋳造(図5〜図9参照)を行なうと、図24に示すように、ほぼ最終完成形態の完成チタン鋳物140が作成される。ただし、完成チタン鋳物140には、軸孔109の加工(図11参照)が必要となる場合がある。
【0056】
この実施例では、ワックス型10から余肉に相当する部分19を全面除去することにより、鋳物除去工程を省略できるので、実施例2よりも除去加工がさらに容易である。また、完成チタン鋳物140を殆ど加工しなくてもすむため、製造時間が短縮される。
【0057】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の実施に際しては種々の変更や追加を加えることができる。例えば、ワックス型10,鋳込み用ワックス型110やチタン鋳物20,120に形成される余肉相当部分19,29や残留余肉相当部分15,125について、それぞれほぼ均等な厚さで図示されているが、必ずしも全体にわたって均等に設ける必要はない。要するに、余肉相当部分19,29は、ワックス型10がアンダーカット等を生じずに製造でき、かつチタン鋳物20に対して除去加工が能率的に行なえる形態であればよい。また、残留余肉相当部分15,125は、鋳物除去工程にてチタン鋳物120から除去加工が能率的に行なえる形態であればよい。
【0058】
なお、本発明によって製造されたチタン製圧縮機翼車は、吸気を圧縮してエンジンのシリンダに供給する用途(図2参照)以外に、排気を圧縮してエンジンのシリンダに供給し再燃焼させる用途等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】チタン製圧縮機翼車の概略斜視図。
【図2】チタン製圧縮機翼車を用いたターボチャージャーの一例を示す説明図。
【図3】本発明に係るチタン製圧縮機翼車の製造方法のうち、ポジパターン工程で作成されたワックス型を平面視で示す説明図。
【図4】図3のワックス型を作成するための金型の配置を平面視で示す説明図。
【図5】図3に続く鋳造工程を示す説明図。
【図6】図5に続く鋳造工程を示す説明図。
【図7】図6に続く鋳造工程を示す説明図。
【図8】図7に続く鋳造工程を示す説明図。
【図9】図8に続く鋳造工程を示す説明図。
【図10】図9の鋳造工程で作成されたチタン鋳物の断面図。
【図11】図9に続く除去工程を示す説明図。
【図12】図11に続く除去工程を示す説明図。
【図13】図12に続く除去工程を示す説明図。
【図14】図13に続く除去工程を示す説明図。
【図15】図3の断面図。
【図16】本発明に係るチタン製圧縮機翼車の他の製造方法のうち、ポジパターン除去工程を示す説明図。
【図17】図16に続くポジパターン除去工程を示す説明図。
【図18】図17に続くポジパターン除去工程を示す説明図。
【図19】図18に続くポジパターン除去工程を示す説明図。
【図20】鋳造工程で作成されたチタン鋳物の断面図。
【図21】図20のチタン鋳物に対する鋳物除去工程を示す説明図。
【図22】図21に続く鋳物除去工程を示す説明図。
【図23】本発明に係るチタン製圧縮機翼車のさらに他の製造方法のうち、ポジパターン除去工程で作成された完成ワックス型を平面視で示す説明図。
【図24】図23に続く鋳造工程で作成された完成チタン鋳物の断面図。
【符号の説明】
【0060】
1 金型
2 入子型
10 ワックス型(ポジパターン;原型;雄型)
15 残留余肉相当部分
19 余肉相当部分
20 チタン鋳物
21 前方鋳物ボス部(ボス部)
22 鋳物ブレード(羽根部)
23 鋳物コア部(コア部)
24 後方鋳物ボス部(ボス部)
29 余肉相当部分
100 チタン製圧縮機翼車
101 前方ボス部(ボス部)
102 ブレード(羽根部)
103 コア部
104 後方ボス部(ボス部)
110 鋳込み用ワックス型(ポジパターン;原型;雄型)
120 チタン鋳物
125 残留余肉相当部分
130 完成ワックス型(最終完成形態のポジパターン;原型;雄型)
140 完成チタン鋳物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン製の圧縮機翼車を製造する方法であって、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンを原型とし、前記余肉が除去代として付与された形態で前記ポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
その鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記余肉に相当する部分を、除去加工により全面的に除去する除去工程と、
を含むことを特徴とするチタン製圧縮機翼車の製造方法。
【請求項2】
チタン製の圧縮機翼車を製造する方法であって、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するワックスでポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンを原型とし、前記余肉が除去代として付与された形態で前記ポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
その鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記余肉に相当する部分を、切削加工及び/又は研削加工により全面的に除去する除去工程と、
を含むことを特徴とするチタン製圧縮機翼車の製造方法。
【請求項3】
チタン製の圧縮機翼車を製造する方法であって、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンの前記余肉に相当する部分を全面的に、又はその一部である残留余肉を残して部分的に、除去加工により除去するポジパターン除去工程と、
そのポジパターン除去工程で作成されたポジパターンを原型とし、そのポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
前記ポジパターン除去工程で前記残留余肉を残した場合には、前記鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記残留余肉に相当する部分を、除去加工により除去する鋳物除去工程と、
を含むことを特徴とするチタン製圧縮機翼車の製造方法。
【請求項4】
前記ポジパターン除去工程において、前記圧縮機翼車の所定の部位については、前記ポジパターンの前記余肉の厚みの一部が前記残留余肉として残るように、切削加工及び/又は研削加工により除去され、かつ前記圧縮機翼車のその他の部位については、前記ポジパターンの前記余肉の厚みが切削加工及び/又は研削加工により全面的に除去されるとともに、
前記鋳物除去工程において、前記圧縮機翼車の所定の部位の前記残留余肉に相当する部分が、前記チタン鋳物から切削加工及び/又は研削加工により除去される請求項3に記載のチタン製圧縮機翼車の製造方法。
【請求項1】
チタン製の圧縮機翼車を製造する方法であって、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンを原型とし、前記余肉が除去代として付与された形態で前記ポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
その鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記余肉に相当する部分を、除去加工により全面的に除去する除去工程と、
を含むことを特徴とするチタン製圧縮機翼車の製造方法。
【請求項2】
チタン製の圧縮機翼車を製造する方法であって、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するワックスでポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンを原型とし、前記余肉が除去代として付与された形態で前記ポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
その鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記余肉に相当する部分を、切削加工及び/又は研削加工により全面的に除去する除去工程と、
を含むことを特徴とするチタン製圧縮機翼車の製造方法。
【請求項3】
チタン製の圧縮機翼車を製造する方法であって、
放射状に配置される複数の可動式の入子型が中心に集まるように接近して構成される金型により、前記圧縮機翼車の最終完成寸法と比較してその外面に対して全面的に所定厚みの余肉が除去代として付けられるように、前記圧縮機翼車の形状を象った、熱により溶融するポジパターンを作成するポジパターン工程と、
そのポジパターンの前記余肉に相当する部分を全面的に、又はその一部である残留余肉を残して部分的に、除去加工により除去するポジパターン除去工程と、
そのポジパターン除去工程で作成されたポジパターンを原型とし、そのポジパターンが転写されたチタン鋳物を作成する鋳造工程と、
前記ポジパターン除去工程で前記残留余肉を残した場合には、前記鋳造工程により得られるチタン鋳物の前記残留余肉に相当する部分を、除去加工により除去する鋳物除去工程と、
を含むことを特徴とするチタン製圧縮機翼車の製造方法。
【請求項4】
前記ポジパターン除去工程において、前記圧縮機翼車の所定の部位については、前記ポジパターンの前記余肉の厚みの一部が前記残留余肉として残るように、切削加工及び/又は研削加工により除去され、かつ前記圧縮機翼車のその他の部位については、前記ポジパターンの前記余肉の厚みが切削加工及び/又は研削加工により全面的に除去されるとともに、
前記鋳物除去工程において、前記圧縮機翼車の所定の部位の前記残留余肉に相当する部分が、前記チタン鋳物から切削加工及び/又は研削加工により除去される請求項3に記載のチタン製圧縮機翼車の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2007−50444(P2007−50444A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238644(P2005−238644)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000100735)アイコクアルファ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000100735)アイコクアルファ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
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