説明

チップコンベアにおける濾過装置

【課題】シール室に進入したチップを廃液貯溜槽側へ戻すことにより濾過性能を向上しシール機構のシール性及び耐久性を向上できるチップコンベアにおける濾過装置を提供する。
【解決手段】ホルダ34の開口部と対応して設けられた濾過用ディスクプレート42の外周縁にシール機構51を形成する。シール機構51のケーシング35に対し、シール機構51のシール室54内に進入したチップを回収する膨出室82aを有する膨出部82を設ける。前記濾過用ディスクプレート42の回転によりシール室54の下部からシールリップ53aに沿って上方向に移動されたチップを前記膨出室82aに取り込む。前記膨出室82aには該膨出室82aに取り込まれたチップを濾過液貯溜槽からポンプ及び配管を介してノズルプレート74の噴射孔74bから膨出室82a内に噴射される濾過液によってチップコンベア本体の廃液貯溜槽側へ戻すための進入チップ還元手段81を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械から排出される切削屑等のチップを搬送するためのチップコンベアにおいて、チップを含んだクーラント(切削液)の廃液を濾過する濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の濾過装置として特許文献1に開示されたものがある。この濾過装置は、設置スペースを低減することができると共に、濾過膜に付着したチップを容易に除去して、その保守点検作業を少なくすることができるように構成されている。この濾過装置は、工作機械からクーラントの廃液と共に排出されるチップを受取位置から排出位置に搬送するコンベア本体と、前記コンベア本体の廃液貯溜槽から外部に排出される廃液を濾過するフラット状の濾過用ディスクプレートと、前記濾過用ディスクプレートを濾過室と付着チップ分離室との間で連続的に又は間欠的に回転して切り換えるための回転駆動機構と、前記付着チップ分離室に切り換えられた濾過用ディスクプレートに付着しているチップを分離して前記廃液貯溜槽に還元するための付着チップ分離・還元手段とを備えている。又、この濾過装置には、前記濾過用ディスクプレートの外周縁に対して、前記廃液貯溜槽から廃液が前記濾過用ディスクプレートの外周縁を下方に迂回してクーラントの濾過液を貯溜する濾過液貯溜槽に排出されるのを阻止する二つのシールリングを備えたシール機構が設けられている。(特許文献1の図1のシール機構51と明細書の段落番号0026の説明参照)
【特許文献1】特開2001−252848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の濾過装置には、シール機構のシール室にチップが進入すると、チップの排出通路が設けられていないので、次のような問題があった。即ち、シール室にチップが徐々に堆積し、この堆積チップがシールリングのシールリップと、このシールリップが接触される濾過用ディスクプレートの一側面との間のシール界面に進入してシール性を低下させたり、シールリングを損傷させたり、あるいはチップがシール界面を通って濾過液貯溜槽に進入して濾過性能を低下させたりするという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、シール室に進入したチップを廃液貯溜槽側へ還元することにより濾過性能を向上することができると共に、シール機構のシール性及び耐久性を向上することができるチップコンベアにおける濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、工作機械からクーラントの廃液と共に排出されるチップを受取位置から排出位置に搬送するコンベア本体と、前記コンベア本体の廃液貯溜槽から外部に排出される廃液を濾過するフラット状の回転濾過体と、前記回転濾過体を濾過室と付着チップ分離室との間で連続的に又は間欠的に回転して切り換えるための回転駆動機構と、前記付着チップ分離室に切り換えられた回転濾過体に付着しているチップを分離して前記廃液貯溜槽に還元するための付着チップ分離・還元手段とを備えたチップコンベアにおいて、前記回転濾過体の外周縁に対して、前記廃液貯溜槽から廃液が前記回転濾過体の外周縁を迂回してクーラントの濾過液を貯溜する濾過液貯溜槽に還元されるのを阻止するシール機構を備えたシール室を設け、該シール室に進入したチップを濾過室から上方に離隔した進入チップ還元室において前記コンベア本体側に還元する進入チップ還元手段を設けたことを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記シール機構のシール部材は、前記回転濾過体の周縁の両側面のうち前記濾過液貯溜槽側の側面に接触するシールリップを備えたシールリングであることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記進入チップ還元手段は、前記進入チップ還元室において前記シール室の一部に外側に膨出するように形成された膨出室と、該膨出室にクーラントの濾過液を供給する濾過液供給機構又は空気を供給する空気供給機構とによって構成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記濾過液供給機構又は空気供給機構は、前記付着チップ分離・還元手段と並列に配設され、同じ動力源によって作動されるように構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明によれば、廃液貯溜槽からシール室に進入したチップを前記回転濾過体の回転によって前記進入チップ還元室側のシール室に導き、進入チップ還元手段によりコンベヤ本体側に還元することができる。このため、濾過性能を向上することができると共に、チップによるシール部材の損傷を抑制して、シール機構のシール性及び耐久性を向上することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、シール機構のシール部材が、シールリップを備えたシールリングであるため、シール部材のコストを低減することができる。
請求項3記載の発明は、前記シール室の一部に外側に膨出するように膨出室を形成したので、該膨出室にチップをスムーズに取り込むことができ、又、該膨出室からチップをコンベヤ本体側に容易に還元することができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記濾過液供給機構又は空気供給機構が前記付着チップ分離・還元手段と並列に配設され、同じ動力源によって作動されるように構成されている。このため、部品点数を少なくして、製造及び組み付け作業を容易に行うことができ、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を工作機械に使用されるチップコンベアの濾過装置に具体化した一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
最初に、図8及び図9に基づいてチップコンベアの概要を説明すると、工作機械11の付近には後述するクーラントの廃液の濾過装置によって濾過されたクーラントの濾過液を貯溜する濾過液貯溜槽12が設けられている。この濾過液貯溜槽12と工作機械11の間には動力源としてのポンプ13と配管14が設けられ、クーラントの濾過液を工作機械11の切削機構部Kに供給するようになっている。工作機械11には配管15及び樋16が設けられ、切削機構部Kから廃棄されたチップをクーラントの廃液と共に、チップコンベア17に供給するようになっている。このチップコンベア17にはクーラントの廃液を濾過して前記濾過液貯溜槽12に排出するための濾過装置18が二箇所に設けられている。
【0013】
そこで、前記チップコンベア17及び濾過装置18の構成を順次説明する。
チップコンベア17を構成するトラフ21は、下部において水平に延びる受取部22と、その受取部22の下流端から上方へ傾斜するように延びる上昇部23と、その上昇部23の上端から下方へ延びる排出部24とにより構成されている。前記トラフ21の受取部22及び排出部24内にはスプロケット25,26が回転可能に支持され、それらのスプロケット25,26間には無端状の搬送体27が掛装されている。この搬送体27は、図1に示すように前記トラフ21の左右両側壁の内側に装着した上部案内レール28及び下部案内レール29に沿って案内移動される。前記搬送体27は多数のフラッパ30を連結軸31により屈曲可能に連結して構成されている。そして、前記各連結軸31の両端部に嵌合した案内ローラ32を前記上部案内レール28及び下部案内レール29に転動接触させている。さらに、図示しないモータの駆動により搬送体27は受取部22、上昇部23、排出部24に沿って図8に示す反時計回り方向へ周回するようになっている。
【0014】
前記受取部22の基端部、つまりチップ受取位置αと対応して前記樋16が配置されている。前記受取部22は樋16からチップと共に供給されたクーラントの廃液を貯溜する廃液貯溜槽22aを備えている。
【0015】
前記フラッパ30には搬送スクレーパ30aが設けられており、搬送体27の上面に堆積したチップをチップ受取位置αから、受取部22の下流端側のチップ回収位置βへ搬送するようになっている。このチップ回収位置βは浮遊チップ回収位置としての機能を有している。
【0016】
次に、前記受取部22の一側壁部に装着された一対の濾過装置18について説明する。なお、両濾過装置18は構成が同じであるため、図8の右側の濾過装置18について説明する。
【0017】
図1に示すように受取部22(廃液貯溜槽22a)の右側壁部には、前記チップ受取位置αに近接するようにクーラントの廃液の排出口33が形成されている。そして、前記搬送体27の上部案内レール28に支持される上側部、つまり搬送体27の往行部27aと、下側に位置する搬送体27の復行部27bとの間に形成される空間R内のクーラントの廃液を前記廃液の排出口33を通して前記濾過液貯溜槽12側に排出するようになっている。
【0018】
図1に示すように前記受取部22の右側壁の外面には、前記廃液の排出口33と対応するように円板状をなすホルダ34が溶接等により固定されている。このホルダ34には、前記廃液の排出口33と対応して開口部34a(図2,図7参照)が形成されている。前記ホルダ34の外周寄り右側面には横円筒状をなすケーシング35の左端縁に形成された外側フランジ35aがボルト36によって取り付けられている。前記ケーシング35の右端開口縁には、取付板37が溶接により固定されている。前記取付板37の中間部には回転軸38が前記ケーシング35の中心に位置するように貫通支持されている。この回転軸38は図4に示すように前記取付板37に対しボルト41により取り付けられた一対の取付筒39と、該取付筒39に収容された一対のラジアルベアリング40とにより支持されている。
【0019】
前記回転軸38の先端部には回転濾過体としての濾過用ディスクプレート42が装着されている。この濾過用ディスクプレート42は図7に示すように三つの部材43、46、47を組み合わせて構成されている。第1の部材である取付枠43は内側リング部43a、外側リング部43b及び前記内側及び外側リング部43a,43b間に放射状に接続された複数のスポーク部43cにより構成され、例えば板材によりプレス成形される。そして、図4に示すように前記内側リング部43aの中心部に溶接固定したボス部44を前記回転軸38にキー嵌合してボルト45により固定している。
【0020】
前記濾過用ディスクプレート42を構成する第2の部材である濾過膜46は、ステンレス製の篩い(100メッシュ:篩い目の開きが0.149mm)により構成されている。前記濾過用ディスクプレート42を構成する第3の部材である挟着枠47は、前記取付枠43とほぼ同外形状にプレス成形されている。前記挟着枠47は内側リング部47a、外側リング部47b及び放射状の複数のスポーク部47c及び各スポーク部47cに取り付けた補強リブ47dにより構成されている。前記取付枠43と挟着枠47は濾過膜46を挟着した状態で複数のボルトにより締め付け固定されている。
【0021】
次に、前記濾過用ディスクプレート42の外周部に対応するように前記ホルダ34、ケーシング35及び取付板37に設けられたシール機構51について説明する。
図4に示すように前記取付板37の左側面には前記ケーシング35の内周面から内側に所定間隔をおいた位置に円環状をなす取付リング52が溶接によって固定されている。前記取付リング52の外周にはシールリング53が装着され、そのシールリップ53aが前記濾過用ディスクプレート42の取付枠43の外側リング部43bの右側面に接触されている。前記シールリング53の右側面は前記取付板37の左側面によって位置規制されている。前記ケーシング35、取付板37、濾過用ディスクプレート42、取付リング52及びシールリング53によってシール室54が形成されている。このシール室54は、前記ケーシング35の内周面と、前記濾過用ディスクプレート42の外周縁との間に形成されたリング状の隙間55によって、ホルダ34と、濾過用ディスクプレート42の間に形成されたクーラントの廃液の濾過室P1と連通されている。この濾過室P1は、ホルダ34の前記開口部34aを介して前記空間Rと連通されている。
【0022】
前記シール機構51によって、排出口33から濾過室P1へ流動したクーラントの廃液が濾過用ディスクプレート42の外周縁を下方に迂回しないで濾過膜46を通過するようにしている。
【0023】
次に、濾過用ディスクプレート42を回転駆動する回転駆動機構61について説明する。
図1に示すように、前記取付板37の左側面にはモータ62が横向きに固着され、そのモータ62の出力軸63には駆動スプロケットホイール64が取り付けられている。前記回転軸38の左端部には被動スプロケットホイール65が嵌合固定され、前記駆動スプロケットホイール64との間にチェーン66が掛装されている。従って、前記モータ62が作動されると駆動スプロケットホイール64、チェーン66、被動スプロケットホイール65及び回転軸38を介して濾過用ディスクプレート42が連続的に又は間欠的に回転される。この回転方向は図2において反時計回り方向になっている。このため濾過用ディスクプレート42の濾過膜46が前記排出口33と対応する濾過室P1と、それよりも上方の付着チップ分離室P2との間で位置切り換えされる。
【0024】
次に、前記濾過室P1から付着チップ分離室P2に回転移動された濾過膜46に付着されているチップを濾過膜46から分離して前記受取部22側に排出するためのチップの分離・還元機構(手段)71について説明する。
【0025】
前記取付板37には、図3及び図5に示すように付着チップ分離室P2と対応するように開口部37bが形成され、該開口部37bには給液ケース72が溶接等により固定され、該給液ケース72の背面には給液筒73が溶接等により固定されている。この給液筒73は前記配管14から分岐された分岐管14aに接続されている。前記給液ケース72の内部には、複数の噴射孔74aを有するノズルプレート74が傾斜状態で収容され、前記噴射孔74aからクーラントの濾過液を濾過膜46に向かって噴射するようになっている。
【0026】
前記ホルダ34には前記付着チップ分離室P2と対応するように開口部34bが形成され、濾過膜46に付着されたチップが分離されて前方(図1及び図5の左方)へ還元されるようになっている。前記ホルダ34の左側面には前記開口部34bと対応するようにチップ案内筒75が設けられ、分離されたチップをチップコンベア17の受取部22側に案内して還元するようになっている。
【0027】
次に、前記シール室54内に進入したチップを付着チップ分離室P2の近傍の進入チップ還元室P3において前記チップコンベア17側へ還元するための進入チップ還元手段81について説明する。
【0028】
図6及び図7に示すように、前記ケーシング35の外周の一部には、前記給液ケース72の高さと同じ高さに位置するように前記シール室54の容積を拡大して膨出室82aを形成するための膨出部82が形成されている。この膨出部82及び膨出室82aと対応するように前記ホルダ34には、膨出板部34cが形成され、この膨出板部34cに開口部34dが形成されている。同様に前記外側フランジ35aにも膨出板部35bが形成され、この膨出板部35bに前記開口部34dと連通する開口部35cが形成されている。さらに、前記取付板37には前記膨出板部35bと対応するように膨出板部37cが形成され、この膨出板部37cには開口部37dが形成されている。前記給液ケース72及びノズルプレート74は図6に示すように前記開口部37dと対応する位置まで延びるように延長して設けられ、前記ノズルプレート74に形成された噴射孔74bから前記開口部37dを通して、前記膨出室82a内に濾過液を噴射供給するように構成されている。この実施形態では、前記濾過液貯溜槽12、ポンプ13、配管14、分岐管14a、ノズルプレート74の噴射孔74b、開口部37d、膨出部82、膨出室82a、開口部35c及び開口部34d等によって進入チップ還元手段81が構成されている。
【0029】
次に、前記のように構成したチップコンベア17及び濾過装置18についてその動作を説明する。
図8,9において工作機械11から廃棄されるチップはクーラントの廃液と共に樋16によりチップコンベア17の受取部22のチップ受取位置αに供給される。チップ受取位置αにおいてクーラントの廃液から下方に沈むチップは搬送体27の往行部27a上に堆積されて周回する搬送体27によりチップ回収位置β側に搬送される。又、クーラントの廃液に浮遊するチップは、チップ回収位置βにおいて搬送スクレーパ30aにより上昇部23に沿って上昇され、排出部24から排出される。
【0030】
図1に示す受取部22において、搬送体27の往行部27aと復行部27bとにより形成された空間R内には往行部27aによって排出されなかった微細なチップの一部が複数のフラッパ30の隙間から進入し、前記廃液の排出口33を通して濾過装置18の濾過用ディスクプレート42に供給される。廃液の排出口33を通ったクーラントの廃液は回転する濾過用ディスクプレート42の濾過膜46を通って濾過液貯溜槽12内に流れる。このとき、濾過膜46により微細なチップが捕捉されるので、濾過液貯溜槽12内には濾過されたクーラントの濾過液が貯溜される。前記濾過用ディスクプレート42はモータ62によって所定の速度で連続的に又は間欠的に回転されるので、濾過室P1において捕捉されたチップは付着チップ分離室P2に移動される。そして、ポンプ13により汲み上げられたクーラントの濾過液が分岐管14aから給液ケース72内に供給され、ノズルプレート74の噴射孔74aから濾過膜46に向かって噴射される。このため濾過膜46に付着しているチップが分離されてチップ案内筒75内を通って受取部22のチップ受取位置αに還元される。
【0031】
一方、上述した動作が継続されると、前記排出口33及び開口部34aから前記濾過室P1に進入したクーラントの廃液はチップを含む状態で、隙間55を経て濾過室P1側のシール室54内に進入する。このシール室54内に進入したチップの量が徐々に多くなると、濾過室P1の廃液の液位高さ(図1において開口部34aの上下方向の中間位置)までのシール室54内にチップが堆積される。このチップは、濾過用ディスクプレート42の外周縁の回転運動による摩擦やクーラントの廃液による付着力によって、チップが上方向に移動され、前記膨出部82の膨出室82a内に移動されることになる。この膨出室82a内に取り込まれたチップは、図6に示すノズルプレート74の噴射孔74bから噴射されるクーラントの濾過液によって膨出室82aの外部に移動され、ケーシング35の開口部35c及びホルダ34の開口部34dからチップ案内筒75を通して受取部22のチップ受取位置αに還元される。
【0032】
次に、前記のように構成した濾過装置18の効果を構成と共に列記する。
(1)前記実施形態では、ケーシング35に対しシール室54の一部に膨出室82aを形成する膨出部82を形成し、この膨出部82にノズルプレート74の噴射孔74bから濾過液を膨出室82aに噴射するようにした。このため、膨出室82aに取り込まれたチップを開口部35c,34dからチップコンベア17側に排出することができる。従って、シール室54に進入したチップがシール室54の全域に充満する以前に廃液貯溜槽22a側へ戻すことができ、濾過性能を向上することができると共に、シール機構51のシールリング53のシール性及び耐久性を向上することができる。
【0033】
(2)前記実施形態では、給液ケース72、給液筒73及び分岐管14aを共用するようにしたので、進入チップ還元手段81の構成を簡素化して、部品点数を低減し、製造を容易に行い、コストを低減することができる。
【0034】
(3)前記実施形態では、シール部材として、シールリップ53aを有するシールリング53を用いたので、図6に示すように膨出室82a内に濾過液が供給されたとき、シールリップ53aが外側リング部43bの側面に押圧されるので、シール性を向上することができる。
【0035】
次に、この発明の別の実施形態を説明する。
○ 図10に示すように、膨出部82を省略すると共に、前記濾過用ディスクプレート42の外周縁と前記ケーシング35の内周面との隙間55を大きくして、専用に設けた濾過液の噴射ノズル84から濾過液をシール室54に噴射するようにしてもよい。この場合には、膨出部82を形成する必要がないので、製造を容易に行い、コストを低減することができる。この別例において、濾過液に代えて、図示しないが、空気供給機構の空気配管から噴射ノズル84に空気を供給するようにしてもよい。
【0036】
○ 図11に示すように、前記取付板37に対し濾過室P1側のシール機構51のシール室54に濾過液を供給する開口37eを形成し、噴射ノズル85から前記シール室54内に濾過液を供給するようにしてもよい。この別例において、前記隙間55を小さくして、シール室54から濾過液が濾過室P1へ徐々に漏出するようにしてもよい。この別例ではシール室54から隙間55を通して濾過室P1へ濾過液が移動又は徐々に漏出するので、前記濾過室P1から廃液がシール室54内に進入するのを抑制することができ、さらに、濾過性能を向上することができると共に、シール機構51のシール性及び耐久性を一層向上することができる。
【0037】
○ 図示しないが、付着チップ分離・還元手段として、空気供給機構の空気配管から空気を濾過膜46に吹き付けるようにしても良い。
○ コンベア本体を構成する搬送体27として、スクリューコンベア、ベルトコンベア、バケットコンベア或いはその他の搬送手段を用いてもよい。
【0038】
○ 図示しないが、濾過用ディスクプレート42の配置個所は、排出口33以外に該排出口33に接続された排出通路であってもよい。
○ 前記濾過膜46は例えば16〜200メッシュの範囲に設定してもよい。
【0039】
前記実施形態から把握される請求項以外の技術的思想について以下に説明する。
(1)請求項1〜4のいずれか一項において、濾過室側のシール機構のシール室に濾過液を供給する開口を形成し、噴射ノズルから前記シール室内に濾過液を供給するように構成したチップコンベアにおける濾過装置。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明を具体化したチップコンベア及び濾過装置の縦断面図。
【図2】濾過装置の正面図。
【図3】濾過装置の背面図。
【図4】濾過装置の部分拡大縦断面図。
【図5】濾過装置の分離・還元機構の拡大縦断面図。
【図6】濾過装置の分離・還元機構及び進入チップ還元手段の拡大平断面図。
【図7】濾過装置の関連部品の分解斜視図。
【図8】チップコンベア及び濾過装置の正断面図。
【図9】チップコンベア及び濾過装置の略体平面図。
【図10】この発明の別の実施形態を示す濾過装置の部分平断面図。
【図11】この発明の別の実施形態を示す濾過装置の部分縦断面図。
【符号の説明】
【0041】
P1…濾過室、P2…付着チップ分離室、P3…進入チップ還元室、11…工作機械、12…濾過液貯溜槽、17…チップコンベア、22a…廃液貯溜槽、51…シール機構、53…シールリング、53a…シールリップ、54…シール室、61…回転駆動機構、81…進入チップ還元手段、82a…膨出室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械からクーラントの廃液と共に排出されるチップを受取位置から排出位置に搬送するコンベア本体と、
前記コンベア本体の廃液貯溜槽から外部に排出される廃液を濾過するフラット状の回転濾過体と、
前記回転濾過体を濾過室と付着チップ分離室との間で連続的に又は間欠的に回転して切り換えるための回転駆動機構と、
前記付着チップ分離室に切り換えられた前記回転濾過体に付着しているチップを分離して前記廃液貯溜槽に還元するための付着チップ分離・還元手段と
を備えたチップコンベアにおいて、
前記回転濾過体の外周縁に対して、前記廃液貯溜槽から廃液が前記回転濾過体の外周縁を迂回してクーラントの濾過液を貯溜する濾過液貯溜槽に排出されるのを阻止するシール機構を設け、該シール機構のシール室に進入したチップを濾過室から上方に離隔した進入チップ還元室において前記コンベア本体側に還元する進入チップ還元手段を設けたことを特徴とするチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項2】
請求項1において、前記シール機構のシール部材は、前記回転濾過体の周縁の両側面のうち前記濾過液貯溜槽側の側面に接触するシールリップを備えたシールリングであるチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記進入チップ還元手段は、前記進入チップ還元室において前記シール室の一部に外側に膨出するように形成された膨出室と、該膨出室にクーラントの濾過液を供給する濾過液供給機構又は空気を供給する空気供給機構とによって構成されているチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項4】
請求項3において、前記濾過液供給機構又は空気供給機構は、前記付着チップ分離・還元手段と並列に配設され、同じ動力源によって作動されるように構成されているチップコンベアにおける濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−7790(P2007−7790A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193133(P2005−193133)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(592213132)榎本ビーエー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】