チップデバイスを収納する収納容器
【課題】チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することを防止することができるとともに、蓋体をトレーからスムーズに取り外すことができる収納容器を提供する。
【解決手段】チップデバイス50を収納する収納容器10であって、上面12aに凹状のポケット20が形成されているトレー10と、トレー上に載置され、ポケットを覆う蓋体10を有している。蓋体の下面14aには、ポケット内に進入する部分が形成されていない。トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面20eと重なる範囲内の蓋体の下面には、ポケットの開口面12aと同一面またはポケットの開口面よりも上側に位置する第1領域41と、第1領域よりも上側に位置する第2領域41が形成されている。第2領域は、トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲内に形成されている。
【解決手段】チップデバイス50を収納する収納容器10であって、上面12aに凹状のポケット20が形成されているトレー10と、トレー上に載置され、ポケットを覆う蓋体10を有している。蓋体の下面14aには、ポケット内に進入する部分が形成されていない。トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面20eと重なる範囲内の蓋体の下面には、ポケットの開口面12aと同一面またはポケットの開口面よりも上側に位置する第1領域41と、第1領域よりも上側に位置する第2領域41が形成されている。第2領域は、トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲内に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップデバイスを収納する収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
チップデバイスの上面には、外部と接触することが好ましくない接触不可能領域が形成されている場合がある。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップデバイスは、基板に固定されている固定部と、基板に対して移動可能な可動部を有している。可動部は細い梁等によって固定部に支持されているので、可動部が外部と接触すると、可動部が損傷するおそれがある。また、半導体チップデバイスの上面にも、外部との接触に対して弱い領域がある場合がある。これらの領域は、接触不可能領域に該当する。通常は、チップデバイスの上面中央部近傍に接触不可能領域が形成され、上面外周部に接触可能領域(すなわち、外部と接触しても問題がない領域)が形成される。
【0003】
特許文献1の図5には、接触不可能領域を有するチップデバイスを収納する収納容器が開示されている。この収納容器は、トレーと蓋体を備えている。トレーの上面には、凹状のポケットが形成されている。蓋体の下面には、湾曲した梁部が複数個形成されている。ポケット内にチップデバイスを収納し、トレーに蓋体を被せると、梁部がポケット内に進入してチップデバイスの上面と接触する。このとき、梁部は、チップデバイスの上面外周部(すなわち、接触可能領域)とのみ接触する。これによって、ポケット内でチップデバイスが固定される。この収納容器によれば、チップデバイスの上面中央部と接触することなく、チップデバイスをポケット内に固定することができる。したがって、運搬時等にチップデバイスが損傷することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の収納容器では、蓋体をトレーに被せたときに、蓋体の梁部がポケット内に進入する。梁部は、チップデバイスの外周部と接触する必要があるため、ポケットの側面に近い位置に進入する。このため、運搬時等において、蓋体とトレーとの相対位置がずれた場合や、トレーや蓋体が撓んだ場合等に、梁部がポケットの側面と強く接触する場合がある。梁部がポケットの側面と強く接触すると、梁部がポケットの側面に引っ掛かる。このため、蓋体を取り外すときに、蓋体と共にトレーが持ち上がり、その直後にトレーから蓋体が外れてトレーが落下することがあった。トレーが落下すると、チップデバイスの損傷に繋がる。したがって、本明細書では、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することを防止することができるとともに、蓋体をトレーからスムーズに取り外すことができる収納容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する収納容器は、チップデバイスを収納する。この収納容器は、上面にチップデバイスを収納する凹状のポケットが形成されているトレーと、トレー上に載置され、ポケットを覆う蓋体を有している。蓋体の下面には、ポケット内に進入する部分が形成されていない。トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面と重なる範囲の蓋体の下面には、ポケットの開口面と同一面またはポケットの開口面よりも上側に位置する第1領域と、第1領域よりも上側に位置する第2領域が形成されている。第2領域は、トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている。
なお、ポケットの開口面とは、ポケットを構成している空間の上端面を意味する。
また、第2領域は、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されていればよく、その他の範囲に形成されていてもよい。
また、第1領域は、ポケットの底面の中心と重ならない範囲において、ポケットの底面と重なる範囲に少なくとも部分的に形成されていればよい。第1領域は、第2領域を一巡するように形成されていてもよいし、第2領域の周囲に離散的に設けられていてもよいし、第2領域の隣に1つだけ設けられていてもよい。
【0007】
この収納容器では、蓋体の下面に、ポケット内に進入する部分が形成されていない。したがって、この収納容器では、蓋体をトレーからスムーズに取り外すことができる。
この収納容器では、蓋体の下面に形成されている第1領域と第2領域によって、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することが防止される。第1領域は、ポケットの開口面と同一またはそれよりも上側に位置しており、第2領域は、第1領域よりも上側に位置している。第2領域は、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている。したがって、第1領域は、ポケットの底面の中心と重ならない範囲(すなわち、ポケットの外周に近い側)に形成されている。この収納容器に、チップデバイスを収納すると、以下の何れかの状態となる。
薄いチップデバイスを収納した場合には、チップデバイスの上面は蓋体と接触しない。この場合、チップデバイスがポケット内で固定されない。収納容器に外力等が加わることでポケット内に収納されたチップデバイスが蓋体側に浮き上がると、チップデバイスの上面が蓋体と接触する。第1領域は第2領域より下側に位置するので、浮き上がったチップデバイスは第1領域と接触する。第1領域は、ポケットの底面の外周に近い側に形成されている。したがって、チップデバイスが蓋体側に浮き上がると、チップデバイスの上面外周部が、第1領域と接触する。これにより、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することが防止される。
また、厚いチップデバイスを収納した場合には、チップデバイスの上面が蓋体の下面と常に接触した状態となる。この場合、チップデバイスの上面外周部が第1領域と接触する。これによって、チップデバイスがポケット内で固定される。この場合も、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することが防止される。
このように、この収納容器によれば、チップデバイスが薄い場合でも厚い場合でも、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することを防止することができる。このため、接触不可能領域が形成されたチップデバイスを収容したときに、接触不可能領域が蓋体と接触し難い。
【0008】
上述した収納容器は、ポケットの底面が、トレーを平面視したときに、長方形又は正方形となる形状に形成されていることが好ましい。また、トレー及び蓋体を平面視するとともにポケットの底面を縦に2等分及び横に2等分して観察したときに、分割した各領域と重なる範囲に第1領域が形成されていることが好ましい。
【0009】
このように第1領域を分割された領域に対応させて分散して形成しておくことで、チップデバイスの損傷をより抑制することができる。
【0010】
上述した収納容器は、トレー及び蓋体を平面視したときに、第1領域が、少なくともポケットの底面の平行に伸びる二辺に沿って形成されていることが好ましい。
【0011】
また、トレー及び蓋体を平面視したときに、第1領域が、少なくともポケットの底面の四辺に沿って形成されていてもよい。
【0012】
このように、ポケットの底面の外周の辺に沿って第1領域を形成することで、チップデバイスの損傷をより効果的に抑制することができる。
【0013】
上述した収納容器は、チップデバイスがポケット内に収納されたときに、トレーの底面の1つの辺と平行であり、かつ、第1領域を2箇所で横断する方向に沿って見たときの以下の値、すなわち、接触不可能領域の幅A、チップデバイスの幅B、ポケットの底面の幅C、第2領域の幅D、及び、蓋体とトレーとの相対可動量Eが、A−B+C+E<D<Bの関係を満たすように形成されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、チップデバイスの接触不可能領域が蓋体と接触することを確実に防止することができる。
【0015】
また、本明細書は、チップデバイスを収納する他の収納容器をも提供する。この収納容器の上面には、凹状のポケットが形成されている。収納容器を平面視したときにポケットと重なる重複範囲の下面には、重複範囲に隣接する隣接範囲の下面より下側に突出する部分が形成されていない。収納容器を平面視したときに、ポケットの底面と重なる範囲の下面には、隣接範囲の下面と同一面またはその下面よりも上側に位置する第1領域と、第1領域よりも上側に位置する第2領域が形成されている。第2領域は、収納容器を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている。
【0016】
この収納容器は、2つを重ねて置いたときに、下側の収納容器がトレーとして機能し、上側の収納容器が蓋体として機能する。収納容器を平面視したときにポケットと重なる重複範囲の下面には、重複範囲に隣接する隣接範囲の下面より下側に突出する部分が形成されていない。このため、2つの収納容器を重ねて置いたときに、下側の収納容器のポケット内に進入する部分がない。したがって、上側の収納容器を下側の収納容器からスムーズに取り外すことができる。また、下側の収納容器のポケットにチップデバイスを収納すると、上側の収納容器の第1領域と第2領域によって、チップデバイスの上面中央部が上側の収納容器に接触することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】収納容器10の斜視図。
【図2】図1のII−II線における収納容器10の縦断面図。
【図3】重ねられた収納容器10の縦断面図。
【図4】ポケット20及び凹部30の縦断面図。
【図5】ポケット20の上面図。
【図6】チップデバイス50を収納したポケット20の縦断面図。
【図7】位置ずれが生じたときのポケット20の縦断面図。
【図8】第1変形例の収納容器の上面図。
【図9】第2変形例の収納容器の上面図。
【図10】第3変形例の収納容器の上面図。
【図11】第4変形例の収納容器の縦断面図。
【図12】第5変形例の収納容器の縦断面図。
【図13】第6変形例の収納容器の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例の製造方法の特徴について以下に列記する。
(特徴1)ポケットの底面には、周囲に沿って溝が形成されている。
(特徴2)ポケットの側面は、上側ほど側面間の幅が広がるテーパ状に形成されている。
(特徴3)収納容器の上面に凸部が形成されており、下面に穴部が形成されている。凸部の上面にポケットが形成されており、穴部の底面(下面)に凹部が形成されている。2つの収納容器を重ねると、凸部が穴部に挿入される。凸部の上面が穴部の底面に当接すると、ポケットが塞がれる。
(特徴3)上面に形成されているポケットの中心位置と、下面に形成されている凹部の中心位置は略一致している。
(特徴4)ポケットの底面の幅は、凹部の幅よりも大きい。
(特徴5)第2領域は、チップデバイスをポケットに収納した状態でトレー及び蓋体を平面視したときに、チップデバイスの接触不可能領域が存在し得る範囲と重なる範囲全体に形成されている。なお、接触不可能領域が存在し得る範囲とは、ポケットの外周とチップデバイスの間に間隔が存在することによりチップデバイスがポケット内で移動したときに、接触不可能領域が存在し得る範囲を意味する。
(特徴6)第1領域は、チップデバイスをポケットに収納した状態でトレー及び蓋体を平面視したときに、チップデバイスが移動可能な範囲内の何れの位置にあったとしても、第1領域の少なくとも一部が接触可能領域と重なるように形成されている。なお、チップデバイスが移動可能な範囲とは、ポケットの外周とチップデバイスの間に間隔が存在することにより、チップデバイスがポケット内で移動することができる範囲を意味する。
【実施例】
【0019】
図1は、実施例に係る収納容器10の斜視図を示している。収納容器10は、略正方形の板形状を有している。以下では、図1に示すように、収納容器10の外周の一辺が伸びる方向をX方向、前記一辺に直交する外周の辺が伸びる方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向(すなわち、収納容器10の厚さ方向)をZ方向という。収納容器10の上面には、凸部12が形成されている。凸部12の上面12aは、平面に形成されている。凸部12の上面12aには、上面12aから窪んだポケット20が多数形成されている。ポケット20には、チップデバイスが収納される。図2は、図1のII−II線における収納容器10の縦断面図を示している。図2に示すように、収納容器10の下面には、穴部14が形成されている。穴部14は、収納容器10を平面視したときに凸部12と重なるように形成されている。穴部14の底面14aは、平面に形成されている。穴部14の底面14aには、多数の凹部30が形成されている。凹部30は、対応するポケット20の真下に形成されている。以下では、穴部14の底面14aを、収納容器10の下面14aという場合がある。
【0020】
図2の幅Waは、X方向における凸部12の幅を示している。Y方向における凸部12の幅も、幅Waと等しい。また、図2の記号Wbは、X方向における穴部14の幅を示している。Y方向における穴部14の幅も、幅Wbと等しい。幅Waは、幅Wbよりも少し小さい。したがって、図3に示すように、下側の収納容器10の凸部12を上側の収納容器10の穴部14に挿入して、複数の収納容器10を重ねることができる。図2に示すように、凸部12の高さHaは、穴部14の深さHbよりも大きい。したがって、収納容器10を重ねると、図3に示すように、下側の収納容器10の凸部12の上面12aが、上側の収納容器10の下面14aと接触する。このとき、上側の収納容器10が下側の収納容器10に対してX方向に相対的に移動できる量を移動可能量W5とすると、W5=Wa−Wbとなる。すなわち、上側の収納容器10は、下側の収納容器10に対して、中心位置から±W5/2の範囲内でX方向に相対移動し得る。Y方向の移動可能量も同様となる。
【0021】
図4は、ポケット20と凹部30のX方向に沿った拡大断面図を示している。ポケット20の底面20aは、平坦に形成されている。ポケット20の両側面20bは、上側ほど側面20b間の間隔が広がるテーパ状に形成されている。底面20aと側面20bの境界部には、溝20cが形成されている。ポケット20は、Y方向の断面においても同様に形成されている。すなわち、図5に示すように、底面20aの周囲を一巡するように溝20cが形成されており、溝20cを一巡するように側面20bが形成されている。図6に示すようにポケット20の底面20aにチップデバイス50が載置されると、チップデバイス50は、一方の溝20cの外側の側面20dから他方の溝20cの外側の側面20dの間の領域を移動することができる。すなわち、チップデバイス50は、2つの側面20dの間の領域に存在し得る。すなわち、ポケット20を上から平面視したときに底面20aと溝20cを合わせた領域20eが、チップデバイス50を載置可能な領域である。このように、領域20eは、チップデバイス50を載置可能な実質的な底面として機能し、請求項でいう「ポケットの底面」に相当する。以下では、領域20eを、ポケット20の底面20eという。
【0022】
図4に示すように、凹部30は、X方向において、凹部30の中心軸がポケット20の中心軸と一致するように形成されている。凹部30の底面30aは、XY平面と略平行に形成されている。凹部30の側面30bは、Z方向と平行に形成されている。X方向においては、凹部30の幅W4は、ポケット20の底面20eの幅W3よりも小さい。したがって、図6に示すように2つの収納容器10を重ねると、下側の収納容器10の底面20eよりも狭い範囲内に上側の収納容器10の凹部30が位置する。以下では、下側のポケット20の底面20e上に存在する上側の収納容器10の下面14aのうち、凹部30以外の領域を第1領域41といい、凹部30が形成されている領域を第2領域42という。第1領域41は、下側のポケット20の開口面(すなわち、下側のポケット20が形成されている収納容器10の上面12a)と同一高さにある領域である。第2領域42は、第1領域41よりも上側に存在する領域である。図6に示すように下側のポケット20と上側の凹部30の中心位置が一致している状態では、第1領域41の幅Wcは、(W3−W4)/2である。図5の斜線ハッチングで示す領域は、ポケット20の裏側に形成されている凹部30の範囲を示している。図5に示すように、Y方向においては、凹部30の幅は、ポケット20の開口の幅と略等しい。図5のドットハッチングで示す領域は、ポケット20の裏側に形成されている第1領域41を示している。図5に示すように、第1領域41は、ポケット20の底面20eのY方向に伸びる2つの辺に沿って形成されている。
【0023】
図6に示すように、収納容器10のポケット20内には、チップデバイス50が収納される。本実施例では、チップデバイス50はMEMSデバイスである。チップデバイス50の上面中央部には、可動部52が形成されている。チップデバイス50の上面外周部には、固定部54が形成されている。固定部54は、基板に固定されている領域である。可動部52は、図示しない梁によって固定部54に接続されている領域である。梁は撓むので、可動部52は固定部54に対して相対移動することができる。チップデバイス50をポケット20に収納した状態において、X方向における可動部52の幅は、幅W1であり、X方向におけるチップデバイス50の幅は、幅W2である。したがって、X方向における固定部54の幅Wdは、(W2−W1)/2である。
【0024】
収納容器10上に他の収納容器10が重ねられると、上側の収納容器10の下面14aにより、下側の収納容器10のポケット20が塞がれる。チップデバイス50の厚さは、ポケット20の深さよりも小さい。したがって、収納容器10が重ねられた状態では、チップデバイス50は、上側の収納容器10と接触しない。このため、収納容器10を運搬等する場合には、振動や衝撃によって、ポケット20内でチップデバイス50が動く場合がある。このとき、チップデバイス50の可動部52が上側の収納容器10と接触すると、可動部52が損傷する場合がある。しかしながら、本実施例の収納容器10では、以下に説明するように、可動部52が上側の収納容器10と接触することが防止される。
【0025】
上述したように、チップデバイス50は、ポケット20の底面20eの幅W3の範囲内で移動し得る。また、上側の収納容器10は下側の収納容器10に対して、相対可動量W5の範囲内で移動し得る。図7は、チップデバイス50が下側の収納容器10に対して最も左側に位置し、上側の収納容器10が下側の収納容器10に対して最も右側に位置した状態を示している。すなわち、図7は、上側の収納容器10の凹部30の中心位置とチップデバイス50の中心位置とが最もずれた状態を示している。上側の収納容器10と下側の収納容器10の中心位置の相対位置ずれは、W5/2である。図6で説明したように、上側の収納容器10と下側の収納容器10の中心位置が一致していれば、X方向における第1領域41の幅Wcは(W3−W4)/2である。したがって、図7の状態においては、左側の第1領域41の幅を幅Weとすると、We=Wc+W5/2=(W3−W4+W5)/2となる。幅Weが上述したチップデバイス50の固定部54の幅Wdよりも小さければ、すなわち、Wd>Weの関係式が満たされていれば、図7の状態でチップデバイス50が上側に移動したときに、チップデバイス50の固定部54が第1領域41と接触する。すなわち、図7の状態でも、可動部52が第1領域41に接触することはない。Wd>Weの関係式を変形するとW4>W1−W2+W3+W4の関係式が得られる。本実施例の収納容器10では、W4>W1−W2+W3+W4が満たされており、図7に示すように幅Wdが幅Weより大きいので、図7の状態でも可動部52が第1領域41に接触しない。
また、チップデバイス50の幅W2が、凹部30の幅W4よりも小さければ、チップデバイス50が凹部30にはまり込んで、可動部52が第2領域42と接触するおそれがある。W2>W4の関係が満たされていれば、そのおそれはない。すなわち、チップデバイス50が凹部30にはまり込んで、可動部52が上側の収納容器10と接触することを防止することができる。本実施例の収納容器10では、W2>W4の関係が満たされているので、チップデバイス50が凹部30にはまり込んで可動部52が損傷することがない。
このように、この収納容器10では、W2>W4>W1−W2+W3+W5の関係が満たされている。したがって、チップデバイス50の可動部52が上側の収納容器10と接触することを防止することができる。
【0026】
また、収納容器10を運搬する際には、図3に示すように、積み上げられた収納容器10の間にロボットアーム60が挿入される。そして、ロボットアーム60によって、ロボットアーム60より上に位置する収納容器10が持ち上げられる。
この場合に、ロボットアーム60が支持する収納容器10とその下側の収納容器10とがスムーズに離れないと、下側の収納容器10が上側の収納容器10に張り付いた状態で持ち上げられてしまう。仮にこのような状態になると、下側の収納容器10は、持ち上げられた直後に、自重によって上側の収納容器10から外れて落下する。これにより、下側の収納容器10に収納されていたチップデバイス50が損傷してしまう。
しかしながら、本実施例の収納容器10では、収納容器10の下面に、下側の収納容器10のポケット20内に進入する部分が形成されていない。このため、上側の収納容器10が下側の収納容器10からスムーズに離れる。下側の収納容器10が上側の収納容器10に張り付くことがない。これによって、収納容器10の落下によるチップデバイス50の破損が防止される。
【0027】
また、チップデバイス50がポケット20の側面に衝突したときには、チップデバイス50の外周部(すなわち、固定部54や基板)にチッピングが生じる場合がある。チッピングにより生じたダストが可動部52に付着すると、可動部52の特性が変化して、そのチップデバイス50が不良となる場合がある。この収納容器10では、ポケット20の底面20eの外周に沿って溝20cが形成されている。チッピングが生じた場合には、ダストは溝20c内に転がり落ちる。これによって、ダストが可動部52に付着することが防止される。
【0028】
なお、上述した実施例では、収納容器10を上から平面視したときに、第1領域41が、ポケット20の底面20eの平行に伸びる二辺に沿って形成されていた。
しかしながら、図8に示すように、収納容器10を上から平面視したときに、第1領域41が、ポケット20の底面20eの四辺に沿って形成されていてもよい。すなわち、底面20eの外周に沿って第1領域41が形成されていてもよい。この場合には、X方向及びY方向の夫々において、W2>W4>W1−W2+W3+W5の関係が満たされていることが好ましい。
また、図9、図10に示すように、収納容器10を上から平面視するとともにポケット20を縦に2等分及び横に2等分して4つの領域21〜24に分けて観察したときに、各領域21〜24と重なる範囲内に第1領域41が形成されていてもよい。このような構成によっても、可動部の損傷を防止することができる。
【0029】
また、上述した実施例では、第1領域41が収納容器10の下面14aと同一平面に形成されていた。しかしながら、図11に示すように、第1領域41が下面14aより上側に位置し、第2領域42が第1領域41よりさらに上側に位置していてもよい。このような構成によっても、可動部52が上側の収納容器10と接触することが防止される。
【0030】
また、上述した実施例では、安定して載置されている状態においては、チップデバイス50が第1領域41と接触しないように形成されていた。しかしながら、図12に示すように、チップデバイス50が常に第1領域41と接触するように、収納容器10を構成してもよい。このような構成によれば、固定部54が第1領域41によって押さえられることによって、収納容器10内でチップデバイス50が固定される。このような構成によっても、可動部52が上側の収納容器10と接触することが防止される。
【0031】
また、上述した実施例では、1つの収納容器10が、チップデバイス50を収納するトレーとしての機能と、ポケット20を塞ぐ蓋体としての機能を兼ね備えていた。すなわち、下側の収納容器10がトレーとして機能し、上側の収納容器10が蓋体として機能していた。しかしながら、図13に示すように、トレー100と蓋体110によって収納容器が形成されていてもよい。このような構成では、トレー100はトレーとしてのみ機能し、蓋体110は蓋体としてのみ機能する。
【0032】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0033】
10:収納容器
12:凸部
12a:上面
14:穴部
14a:下面
20:ポケット
20a:底面
20b:側面
20c:溝
20d:側面
20e:底面
30:凹部
30a:底面
30b:側面
41:第1領域
42:第2領域
50:チップデバイス
52:可動部
54:固定部
60:ロボットアーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップデバイスを収納する収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
チップデバイスの上面には、外部と接触することが好ましくない接触不可能領域が形成されている場合がある。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップデバイスは、基板に固定されている固定部と、基板に対して移動可能な可動部を有している。可動部は細い梁等によって固定部に支持されているので、可動部が外部と接触すると、可動部が損傷するおそれがある。また、半導体チップデバイスの上面にも、外部との接触に対して弱い領域がある場合がある。これらの領域は、接触不可能領域に該当する。通常は、チップデバイスの上面中央部近傍に接触不可能領域が形成され、上面外周部に接触可能領域(すなわち、外部と接触しても問題がない領域)が形成される。
【0003】
特許文献1の図5には、接触不可能領域を有するチップデバイスを収納する収納容器が開示されている。この収納容器は、トレーと蓋体を備えている。トレーの上面には、凹状のポケットが形成されている。蓋体の下面には、湾曲した梁部が複数個形成されている。ポケット内にチップデバイスを収納し、トレーに蓋体を被せると、梁部がポケット内に進入してチップデバイスの上面と接触する。このとき、梁部は、チップデバイスの上面外周部(すなわち、接触可能領域)とのみ接触する。これによって、ポケット内でチップデバイスが固定される。この収納容器によれば、チップデバイスの上面中央部と接触することなく、チップデバイスをポケット内に固定することができる。したがって、運搬時等にチップデバイスが損傷することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の収納容器では、蓋体をトレーに被せたときに、蓋体の梁部がポケット内に進入する。梁部は、チップデバイスの外周部と接触する必要があるため、ポケットの側面に近い位置に進入する。このため、運搬時等において、蓋体とトレーとの相対位置がずれた場合や、トレーや蓋体が撓んだ場合等に、梁部がポケットの側面と強く接触する場合がある。梁部がポケットの側面と強く接触すると、梁部がポケットの側面に引っ掛かる。このため、蓋体を取り外すときに、蓋体と共にトレーが持ち上がり、その直後にトレーから蓋体が外れてトレーが落下することがあった。トレーが落下すると、チップデバイスの損傷に繋がる。したがって、本明細書では、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することを防止することができるとともに、蓋体をトレーからスムーズに取り外すことができる収納容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する収納容器は、チップデバイスを収納する。この収納容器は、上面にチップデバイスを収納する凹状のポケットが形成されているトレーと、トレー上に載置され、ポケットを覆う蓋体を有している。蓋体の下面には、ポケット内に進入する部分が形成されていない。トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面と重なる範囲の蓋体の下面には、ポケットの開口面と同一面またはポケットの開口面よりも上側に位置する第1領域と、第1領域よりも上側に位置する第2領域が形成されている。第2領域は、トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている。
なお、ポケットの開口面とは、ポケットを構成している空間の上端面を意味する。
また、第2領域は、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されていればよく、その他の範囲に形成されていてもよい。
また、第1領域は、ポケットの底面の中心と重ならない範囲において、ポケットの底面と重なる範囲に少なくとも部分的に形成されていればよい。第1領域は、第2領域を一巡するように形成されていてもよいし、第2領域の周囲に離散的に設けられていてもよいし、第2領域の隣に1つだけ設けられていてもよい。
【0007】
この収納容器では、蓋体の下面に、ポケット内に進入する部分が形成されていない。したがって、この収納容器では、蓋体をトレーからスムーズに取り外すことができる。
この収納容器では、蓋体の下面に形成されている第1領域と第2領域によって、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することが防止される。第1領域は、ポケットの開口面と同一またはそれよりも上側に位置しており、第2領域は、第1領域よりも上側に位置している。第2領域は、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている。したがって、第1領域は、ポケットの底面の中心と重ならない範囲(すなわち、ポケットの外周に近い側)に形成されている。この収納容器に、チップデバイスを収納すると、以下の何れかの状態となる。
薄いチップデバイスを収納した場合には、チップデバイスの上面は蓋体と接触しない。この場合、チップデバイスがポケット内で固定されない。収納容器に外力等が加わることでポケット内に収納されたチップデバイスが蓋体側に浮き上がると、チップデバイスの上面が蓋体と接触する。第1領域は第2領域より下側に位置するので、浮き上がったチップデバイスは第1領域と接触する。第1領域は、ポケットの底面の外周に近い側に形成されている。したがって、チップデバイスが蓋体側に浮き上がると、チップデバイスの上面外周部が、第1領域と接触する。これにより、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することが防止される。
また、厚いチップデバイスを収納した場合には、チップデバイスの上面が蓋体の下面と常に接触した状態となる。この場合、チップデバイスの上面外周部が第1領域と接触する。これによって、チップデバイスがポケット内で固定される。この場合も、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することが防止される。
このように、この収納容器によれば、チップデバイスが薄い場合でも厚い場合でも、チップデバイスの上面中央部が蓋体と接触することを防止することができる。このため、接触不可能領域が形成されたチップデバイスを収容したときに、接触不可能領域が蓋体と接触し難い。
【0008】
上述した収納容器は、ポケットの底面が、トレーを平面視したときに、長方形又は正方形となる形状に形成されていることが好ましい。また、トレー及び蓋体を平面視するとともにポケットの底面を縦に2等分及び横に2等分して観察したときに、分割した各領域と重なる範囲に第1領域が形成されていることが好ましい。
【0009】
このように第1領域を分割された領域に対応させて分散して形成しておくことで、チップデバイスの損傷をより抑制することができる。
【0010】
上述した収納容器は、トレー及び蓋体を平面視したときに、第1領域が、少なくともポケットの底面の平行に伸びる二辺に沿って形成されていることが好ましい。
【0011】
また、トレー及び蓋体を平面視したときに、第1領域が、少なくともポケットの底面の四辺に沿って形成されていてもよい。
【0012】
このように、ポケットの底面の外周の辺に沿って第1領域を形成することで、チップデバイスの損傷をより効果的に抑制することができる。
【0013】
上述した収納容器は、チップデバイスがポケット内に収納されたときに、トレーの底面の1つの辺と平行であり、かつ、第1領域を2箇所で横断する方向に沿って見たときの以下の値、すなわち、接触不可能領域の幅A、チップデバイスの幅B、ポケットの底面の幅C、第2領域の幅D、及び、蓋体とトレーとの相対可動量Eが、A−B+C+E<D<Bの関係を満たすように形成されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、チップデバイスの接触不可能領域が蓋体と接触することを確実に防止することができる。
【0015】
また、本明細書は、チップデバイスを収納する他の収納容器をも提供する。この収納容器の上面には、凹状のポケットが形成されている。収納容器を平面視したときにポケットと重なる重複範囲の下面には、重複範囲に隣接する隣接範囲の下面より下側に突出する部分が形成されていない。収納容器を平面視したときに、ポケットの底面と重なる範囲の下面には、隣接範囲の下面と同一面またはその下面よりも上側に位置する第1領域と、第1領域よりも上側に位置する第2領域が形成されている。第2領域は、収納容器を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている。
【0016】
この収納容器は、2つを重ねて置いたときに、下側の収納容器がトレーとして機能し、上側の収納容器が蓋体として機能する。収納容器を平面視したときにポケットと重なる重複範囲の下面には、重複範囲に隣接する隣接範囲の下面より下側に突出する部分が形成されていない。このため、2つの収納容器を重ねて置いたときに、下側の収納容器のポケット内に進入する部分がない。したがって、上側の収納容器を下側の収納容器からスムーズに取り外すことができる。また、下側の収納容器のポケットにチップデバイスを収納すると、上側の収納容器の第1領域と第2領域によって、チップデバイスの上面中央部が上側の収納容器に接触することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】収納容器10の斜視図。
【図2】図1のII−II線における収納容器10の縦断面図。
【図3】重ねられた収納容器10の縦断面図。
【図4】ポケット20及び凹部30の縦断面図。
【図5】ポケット20の上面図。
【図6】チップデバイス50を収納したポケット20の縦断面図。
【図7】位置ずれが生じたときのポケット20の縦断面図。
【図8】第1変形例の収納容器の上面図。
【図9】第2変形例の収納容器の上面図。
【図10】第3変形例の収納容器の上面図。
【図11】第4変形例の収納容器の縦断面図。
【図12】第5変形例の収納容器の縦断面図。
【図13】第6変形例の収納容器の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例の製造方法の特徴について以下に列記する。
(特徴1)ポケットの底面には、周囲に沿って溝が形成されている。
(特徴2)ポケットの側面は、上側ほど側面間の幅が広がるテーパ状に形成されている。
(特徴3)収納容器の上面に凸部が形成されており、下面に穴部が形成されている。凸部の上面にポケットが形成されており、穴部の底面(下面)に凹部が形成されている。2つの収納容器を重ねると、凸部が穴部に挿入される。凸部の上面が穴部の底面に当接すると、ポケットが塞がれる。
(特徴3)上面に形成されているポケットの中心位置と、下面に形成されている凹部の中心位置は略一致している。
(特徴4)ポケットの底面の幅は、凹部の幅よりも大きい。
(特徴5)第2領域は、チップデバイスをポケットに収納した状態でトレー及び蓋体を平面視したときに、チップデバイスの接触不可能領域が存在し得る範囲と重なる範囲全体に形成されている。なお、接触不可能領域が存在し得る範囲とは、ポケットの外周とチップデバイスの間に間隔が存在することによりチップデバイスがポケット内で移動したときに、接触不可能領域が存在し得る範囲を意味する。
(特徴6)第1領域は、チップデバイスをポケットに収納した状態でトレー及び蓋体を平面視したときに、チップデバイスが移動可能な範囲内の何れの位置にあったとしても、第1領域の少なくとも一部が接触可能領域と重なるように形成されている。なお、チップデバイスが移動可能な範囲とは、ポケットの外周とチップデバイスの間に間隔が存在することにより、チップデバイスがポケット内で移動することができる範囲を意味する。
【実施例】
【0019】
図1は、実施例に係る収納容器10の斜視図を示している。収納容器10は、略正方形の板形状を有している。以下では、図1に示すように、収納容器10の外周の一辺が伸びる方向をX方向、前記一辺に直交する外周の辺が伸びる方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向(すなわち、収納容器10の厚さ方向)をZ方向という。収納容器10の上面には、凸部12が形成されている。凸部12の上面12aは、平面に形成されている。凸部12の上面12aには、上面12aから窪んだポケット20が多数形成されている。ポケット20には、チップデバイスが収納される。図2は、図1のII−II線における収納容器10の縦断面図を示している。図2に示すように、収納容器10の下面には、穴部14が形成されている。穴部14は、収納容器10を平面視したときに凸部12と重なるように形成されている。穴部14の底面14aは、平面に形成されている。穴部14の底面14aには、多数の凹部30が形成されている。凹部30は、対応するポケット20の真下に形成されている。以下では、穴部14の底面14aを、収納容器10の下面14aという場合がある。
【0020】
図2の幅Waは、X方向における凸部12の幅を示している。Y方向における凸部12の幅も、幅Waと等しい。また、図2の記号Wbは、X方向における穴部14の幅を示している。Y方向における穴部14の幅も、幅Wbと等しい。幅Waは、幅Wbよりも少し小さい。したがって、図3に示すように、下側の収納容器10の凸部12を上側の収納容器10の穴部14に挿入して、複数の収納容器10を重ねることができる。図2に示すように、凸部12の高さHaは、穴部14の深さHbよりも大きい。したがって、収納容器10を重ねると、図3に示すように、下側の収納容器10の凸部12の上面12aが、上側の収納容器10の下面14aと接触する。このとき、上側の収納容器10が下側の収納容器10に対してX方向に相対的に移動できる量を移動可能量W5とすると、W5=Wa−Wbとなる。すなわち、上側の収納容器10は、下側の収納容器10に対して、中心位置から±W5/2の範囲内でX方向に相対移動し得る。Y方向の移動可能量も同様となる。
【0021】
図4は、ポケット20と凹部30のX方向に沿った拡大断面図を示している。ポケット20の底面20aは、平坦に形成されている。ポケット20の両側面20bは、上側ほど側面20b間の間隔が広がるテーパ状に形成されている。底面20aと側面20bの境界部には、溝20cが形成されている。ポケット20は、Y方向の断面においても同様に形成されている。すなわち、図5に示すように、底面20aの周囲を一巡するように溝20cが形成されており、溝20cを一巡するように側面20bが形成されている。図6に示すようにポケット20の底面20aにチップデバイス50が載置されると、チップデバイス50は、一方の溝20cの外側の側面20dから他方の溝20cの外側の側面20dの間の領域を移動することができる。すなわち、チップデバイス50は、2つの側面20dの間の領域に存在し得る。すなわち、ポケット20を上から平面視したときに底面20aと溝20cを合わせた領域20eが、チップデバイス50を載置可能な領域である。このように、領域20eは、チップデバイス50を載置可能な実質的な底面として機能し、請求項でいう「ポケットの底面」に相当する。以下では、領域20eを、ポケット20の底面20eという。
【0022】
図4に示すように、凹部30は、X方向において、凹部30の中心軸がポケット20の中心軸と一致するように形成されている。凹部30の底面30aは、XY平面と略平行に形成されている。凹部30の側面30bは、Z方向と平行に形成されている。X方向においては、凹部30の幅W4は、ポケット20の底面20eの幅W3よりも小さい。したがって、図6に示すように2つの収納容器10を重ねると、下側の収納容器10の底面20eよりも狭い範囲内に上側の収納容器10の凹部30が位置する。以下では、下側のポケット20の底面20e上に存在する上側の収納容器10の下面14aのうち、凹部30以外の領域を第1領域41といい、凹部30が形成されている領域を第2領域42という。第1領域41は、下側のポケット20の開口面(すなわち、下側のポケット20が形成されている収納容器10の上面12a)と同一高さにある領域である。第2領域42は、第1領域41よりも上側に存在する領域である。図6に示すように下側のポケット20と上側の凹部30の中心位置が一致している状態では、第1領域41の幅Wcは、(W3−W4)/2である。図5の斜線ハッチングで示す領域は、ポケット20の裏側に形成されている凹部30の範囲を示している。図5に示すように、Y方向においては、凹部30の幅は、ポケット20の開口の幅と略等しい。図5のドットハッチングで示す領域は、ポケット20の裏側に形成されている第1領域41を示している。図5に示すように、第1領域41は、ポケット20の底面20eのY方向に伸びる2つの辺に沿って形成されている。
【0023】
図6に示すように、収納容器10のポケット20内には、チップデバイス50が収納される。本実施例では、チップデバイス50はMEMSデバイスである。チップデバイス50の上面中央部には、可動部52が形成されている。チップデバイス50の上面外周部には、固定部54が形成されている。固定部54は、基板に固定されている領域である。可動部52は、図示しない梁によって固定部54に接続されている領域である。梁は撓むので、可動部52は固定部54に対して相対移動することができる。チップデバイス50をポケット20に収納した状態において、X方向における可動部52の幅は、幅W1であり、X方向におけるチップデバイス50の幅は、幅W2である。したがって、X方向における固定部54の幅Wdは、(W2−W1)/2である。
【0024】
収納容器10上に他の収納容器10が重ねられると、上側の収納容器10の下面14aにより、下側の収納容器10のポケット20が塞がれる。チップデバイス50の厚さは、ポケット20の深さよりも小さい。したがって、収納容器10が重ねられた状態では、チップデバイス50は、上側の収納容器10と接触しない。このため、収納容器10を運搬等する場合には、振動や衝撃によって、ポケット20内でチップデバイス50が動く場合がある。このとき、チップデバイス50の可動部52が上側の収納容器10と接触すると、可動部52が損傷する場合がある。しかしながら、本実施例の収納容器10では、以下に説明するように、可動部52が上側の収納容器10と接触することが防止される。
【0025】
上述したように、チップデバイス50は、ポケット20の底面20eの幅W3の範囲内で移動し得る。また、上側の収納容器10は下側の収納容器10に対して、相対可動量W5の範囲内で移動し得る。図7は、チップデバイス50が下側の収納容器10に対して最も左側に位置し、上側の収納容器10が下側の収納容器10に対して最も右側に位置した状態を示している。すなわち、図7は、上側の収納容器10の凹部30の中心位置とチップデバイス50の中心位置とが最もずれた状態を示している。上側の収納容器10と下側の収納容器10の中心位置の相対位置ずれは、W5/2である。図6で説明したように、上側の収納容器10と下側の収納容器10の中心位置が一致していれば、X方向における第1領域41の幅Wcは(W3−W4)/2である。したがって、図7の状態においては、左側の第1領域41の幅を幅Weとすると、We=Wc+W5/2=(W3−W4+W5)/2となる。幅Weが上述したチップデバイス50の固定部54の幅Wdよりも小さければ、すなわち、Wd>Weの関係式が満たされていれば、図7の状態でチップデバイス50が上側に移動したときに、チップデバイス50の固定部54が第1領域41と接触する。すなわち、図7の状態でも、可動部52が第1領域41に接触することはない。Wd>Weの関係式を変形するとW4>W1−W2+W3+W4の関係式が得られる。本実施例の収納容器10では、W4>W1−W2+W3+W4が満たされており、図7に示すように幅Wdが幅Weより大きいので、図7の状態でも可動部52が第1領域41に接触しない。
また、チップデバイス50の幅W2が、凹部30の幅W4よりも小さければ、チップデバイス50が凹部30にはまり込んで、可動部52が第2領域42と接触するおそれがある。W2>W4の関係が満たされていれば、そのおそれはない。すなわち、チップデバイス50が凹部30にはまり込んで、可動部52が上側の収納容器10と接触することを防止することができる。本実施例の収納容器10では、W2>W4の関係が満たされているので、チップデバイス50が凹部30にはまり込んで可動部52が損傷することがない。
このように、この収納容器10では、W2>W4>W1−W2+W3+W5の関係が満たされている。したがって、チップデバイス50の可動部52が上側の収納容器10と接触することを防止することができる。
【0026】
また、収納容器10を運搬する際には、図3に示すように、積み上げられた収納容器10の間にロボットアーム60が挿入される。そして、ロボットアーム60によって、ロボットアーム60より上に位置する収納容器10が持ち上げられる。
この場合に、ロボットアーム60が支持する収納容器10とその下側の収納容器10とがスムーズに離れないと、下側の収納容器10が上側の収納容器10に張り付いた状態で持ち上げられてしまう。仮にこのような状態になると、下側の収納容器10は、持ち上げられた直後に、自重によって上側の収納容器10から外れて落下する。これにより、下側の収納容器10に収納されていたチップデバイス50が損傷してしまう。
しかしながら、本実施例の収納容器10では、収納容器10の下面に、下側の収納容器10のポケット20内に進入する部分が形成されていない。このため、上側の収納容器10が下側の収納容器10からスムーズに離れる。下側の収納容器10が上側の収納容器10に張り付くことがない。これによって、収納容器10の落下によるチップデバイス50の破損が防止される。
【0027】
また、チップデバイス50がポケット20の側面に衝突したときには、チップデバイス50の外周部(すなわち、固定部54や基板)にチッピングが生じる場合がある。チッピングにより生じたダストが可動部52に付着すると、可動部52の特性が変化して、そのチップデバイス50が不良となる場合がある。この収納容器10では、ポケット20の底面20eの外周に沿って溝20cが形成されている。チッピングが生じた場合には、ダストは溝20c内に転がり落ちる。これによって、ダストが可動部52に付着することが防止される。
【0028】
なお、上述した実施例では、収納容器10を上から平面視したときに、第1領域41が、ポケット20の底面20eの平行に伸びる二辺に沿って形成されていた。
しかしながら、図8に示すように、収納容器10を上から平面視したときに、第1領域41が、ポケット20の底面20eの四辺に沿って形成されていてもよい。すなわち、底面20eの外周に沿って第1領域41が形成されていてもよい。この場合には、X方向及びY方向の夫々において、W2>W4>W1−W2+W3+W5の関係が満たされていることが好ましい。
また、図9、図10に示すように、収納容器10を上から平面視するとともにポケット20を縦に2等分及び横に2等分して4つの領域21〜24に分けて観察したときに、各領域21〜24と重なる範囲内に第1領域41が形成されていてもよい。このような構成によっても、可動部の損傷を防止することができる。
【0029】
また、上述した実施例では、第1領域41が収納容器10の下面14aと同一平面に形成されていた。しかしながら、図11に示すように、第1領域41が下面14aより上側に位置し、第2領域42が第1領域41よりさらに上側に位置していてもよい。このような構成によっても、可動部52が上側の収納容器10と接触することが防止される。
【0030】
また、上述した実施例では、安定して載置されている状態においては、チップデバイス50が第1領域41と接触しないように形成されていた。しかしながら、図12に示すように、チップデバイス50が常に第1領域41と接触するように、収納容器10を構成してもよい。このような構成によれば、固定部54が第1領域41によって押さえられることによって、収納容器10内でチップデバイス50が固定される。このような構成によっても、可動部52が上側の収納容器10と接触することが防止される。
【0031】
また、上述した実施例では、1つの収納容器10が、チップデバイス50を収納するトレーとしての機能と、ポケット20を塞ぐ蓋体としての機能を兼ね備えていた。すなわち、下側の収納容器10がトレーとして機能し、上側の収納容器10が蓋体として機能していた。しかしながら、図13に示すように、トレー100と蓋体110によって収納容器が形成されていてもよい。このような構成では、トレー100はトレーとしてのみ機能し、蓋体110は蓋体としてのみ機能する。
【0032】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0033】
10:収納容器
12:凸部
12a:上面
14:穴部
14a:下面
20:ポケット
20a:底面
20b:側面
20c:溝
20d:側面
20e:底面
30:凹部
30a:底面
30b:側面
41:第1領域
42:第2領域
50:チップデバイス
52:可動部
54:固定部
60:ロボットアーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップデバイスを収納する収納容器であって、
上面にチップデバイスを収納する凹状のポケットが形成されているトレーと、
トレー上に載置され、ポケットを覆う蓋体を有し、
蓋体の下面には、ポケット内に進入する部分が形成されておらず、
トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面と重なる範囲の蓋体の下面には、ポケットの開口面と同一面またはポケットの開口面よりも上側に位置する第1領域と、第1領域よりも上側に位置する第2領域が形成されており、
第2領域は、トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている、
ことを特徴とする収納容器。
【請求項2】
ポケットの底面が、トレーを平面視したときに、長方形又は正方形となる形状に形成されており、
トレー及び蓋体を平面視するとともにポケットの底面を縦に2等分及び横に2等分して観察したときに、分割した各領域と重なる範囲に第1領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の収納容器。
【請求項3】
トレー及び蓋体を平面視したときに、第1領域が、少なくともポケットの底面の平行に伸びる二辺に沿って形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の収納容器。
【請求項4】
トレー及び蓋体を平面視したときに、第1領域が、少なくともポケットの底面の四辺に沿って形成されていること特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の収納容器。
【請求項5】
チップデバイスは、チップデバイスの上面に形成された接触不可能領域と、チップデバイスの上面のうちの接触不可能領域の周囲に形成された接触可能領域を備えており、
チップデバイスがポケット内に収納されたときに、ポケットの底面の1つの辺と平行であり、かつ、第1領域を2箇所で横断する方向に沿って見たときの以下の値、すなわち、接触不可能領域の幅A、チップデバイスの幅B、ポケットの底面の幅C、第2領域の幅D、及び、蓋体とトレーとの相対可動量Eが、
A−B+C+E<D<B
の関係を満たすことを特徴とする請求項3または4に記載の収納容器。
【請求項6】
チップデバイスを収納する収納容器であって、
上面と下面を有しており、
上面には、チップデバイスを収納する凹状のポケットが形成されており、
収納容器を平面視したときにポケットと重なる重複範囲の下面には、重複範囲に隣接する隣接範囲の下面より下側に突出する部分が形成されておらず、
収納容器を平面視したときに、ポケットの底面と重なる範囲の下面には、隣接範囲の下面と同一面またはその下面よりも上側に位置する第1領域と、第1領域よりも上側に位置する第2領域が形成されており、
第2領域は、収納容器を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている、
ことを特徴とする収納容器。
【請求項1】
チップデバイスを収納する収納容器であって、
上面にチップデバイスを収納する凹状のポケットが形成されているトレーと、
トレー上に載置され、ポケットを覆う蓋体を有し、
蓋体の下面には、ポケット内に進入する部分が形成されておらず、
トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面と重なる範囲の蓋体の下面には、ポケットの開口面と同一面またはポケットの開口面よりも上側に位置する第1領域と、第1領域よりも上側に位置する第2領域が形成されており、
第2領域は、トレー及び蓋体を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている、
ことを特徴とする収納容器。
【請求項2】
ポケットの底面が、トレーを平面視したときに、長方形又は正方形となる形状に形成されており、
トレー及び蓋体を平面視するとともにポケットの底面を縦に2等分及び横に2等分して観察したときに、分割した各領域と重なる範囲に第1領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の収納容器。
【請求項3】
トレー及び蓋体を平面視したときに、第1領域が、少なくともポケットの底面の平行に伸びる二辺に沿って形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の収納容器。
【請求項4】
トレー及び蓋体を平面視したときに、第1領域が、少なくともポケットの底面の四辺に沿って形成されていること特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の収納容器。
【請求項5】
チップデバイスは、チップデバイスの上面に形成された接触不可能領域と、チップデバイスの上面のうちの接触不可能領域の周囲に形成された接触可能領域を備えており、
チップデバイスがポケット内に収納されたときに、ポケットの底面の1つの辺と平行であり、かつ、第1領域を2箇所で横断する方向に沿って見たときの以下の値、すなわち、接触不可能領域の幅A、チップデバイスの幅B、ポケットの底面の幅C、第2領域の幅D、及び、蓋体とトレーとの相対可動量Eが、
A−B+C+E<D<B
の関係を満たすことを特徴とする請求項3または4に記載の収納容器。
【請求項6】
チップデバイスを収納する収納容器であって、
上面と下面を有しており、
上面には、チップデバイスを収納する凹状のポケットが形成されており、
収納容器を平面視したときにポケットと重なる重複範囲の下面には、重複範囲に隣接する隣接範囲の下面より下側に突出する部分が形成されておらず、
収納容器を平面視したときに、ポケットの底面と重なる範囲の下面には、隣接範囲の下面と同一面またはその下面よりも上側に位置する第1領域と、第1領域よりも上側に位置する第2領域が形成されており、
第2領域は、収納容器を平面視したときに、ポケットの底面の中心と重なる範囲に形成されている、
ことを特徴とする収納容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−12042(P2012−12042A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148217(P2010−148217)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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