説明

チップトレイおよびチップパッケージ

【課題】収容部内に収容されたチップが欠けたりすることを抑制することができるチップトレイおよびチップパッケージを提供する。
【解決手段】チップトレイは、チップを収容可能な収容部102が形成されたチップトレイ本体と、収容部102の周面を規定するチップトレイ本体300の内周面から突出する第1位置と、第1位置よりも、該第1位置から内周面に向かう方向に向けて変位した第2位置との間を移動可能に設けられる支持部材135とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップトレイおよびチップパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からLSI(Large-Scale Integration)チップを収容するチップトレイおよびチップパッケージが各種提案されている。従来のチップトレイは、LSIチップを収容する収容部が形成されたチップトレイ本体を含み、このチップトレイ本体を積層することで、チップパッケージが構成されている。
【0003】
しかし、この従来のチップパッケージにおいては、収容部内に収容されたチップと、収容部の内周面との間には、隙間が設けられており、チップが収容部の内周面と衝突することで、チップが欠ける等の弊害が生じるという問題があった。
【0004】
そこで、特開平6−298290号公報に記載されたチップトレイにおいては、凹部をV字状に配置された支持面で構成し、チップのエッジ部を支持している。
【特許文献1】特開平6−298290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
に関する。
しかし、特開平6−298290号公報に記載されたチップトレイにおいては、チップが支持面に沿って傾斜した状態で凹部内に収容され、チップの一部がチップトレイの上面から突出した状態で収容される場合が生じる。
【0006】
このように、チップの一部がチップトレイの上面から突出した状態で、チップトレイが積層されると、積層されたチップトレイによってチップが押圧され、チップが欠けるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、収容部内に収容されたチップが欠けたりすることを抑制することができるチップトレイおよびチップパッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るチップトレイは、チップを収容可能な収容部が形成されたチップトレイ本体と、収容部の周面を規定するチップトレイ本体の内周面から突出する第1位置と、第1位置よりも、該第1位置から内周面に向かう方向に向けて変位した第2位置との間を移動可能に設けられる支持部材とを備える。
【0009】
好ましくは、外部から加えられる力を支持部材に伝達し、支持部を移動させる動力伝達機構をさらに備える。好ましくは、上記チップトレイ本体は、複数積層可能とされ、動力伝達機構は、該動力伝達機構が設けられたチップトレイ本体に対して、チップトレイ本体の積層方向に隣り合う他のチップトレイ本体によって押圧されることで、チップトレイ本体の厚み方向に摺動可能に設けられたピストンと、回転可能に設けられ、ピストンによって押圧されることで支持部材を変位させる、回転部材とを含む。
【0010】
好ましくは、上記収容部は、チップトレイ本体の上面に開口するように形成され、ピストンは収容部の開口部縁部の周囲に設けられると共に、該ピストンが設けられたチップトレイ本体の上面側に配置される他のチップトレイ本体によって押圧されることで、チップトレイ本体の厚み方向に摺動可能に設けられる。
【0011】
好ましくは、上記回転部材は、円弧状に湾曲する湾曲部材と、湾曲部材を回転可能に支持する軸部とを含み、湾曲部材の表面のうち、ピストンによって押圧される端部は、円弧状に湾曲する円弧面とされる。そして、上記ピストンの端面のうち、湾曲部材を押圧する端面は、収容部から離れるにしたがって、チップトレイの厚み方向に延びる仮想直線と成す交差角度のうち小さい方の交差角度が漸次大きくなるように湾曲する湾曲面とされる。
【0012】
好ましくは、上記回転部材は、湾曲部材のうち、軸部に対して支持部材を押圧する端部側に設けられた、重り部を含む。好ましくは、上記支持部材の表面のうち、収容部を規定するチップトレイ本体の内周面から突出する部分は、収容部に向けて膨出するように湾曲する膨出面とされる。好ましくは、上記チップトレイ本体は、収容部の底部に形成され、チップの底面を支持可能な底面支持部を含み、底面支持部は、底面から上方に向かうように膨出する膨出面とされる。好ましくは、上記チップトレイ本体は、複数積層可能とされ、チップトレイ本体の下面に形成され、該チップトレイ本体の下面側に位置する他のチップトレイ本体内の収容部内に収容されたチップの上面のうち、回路が形成された回路形成領域の外周縁部に位置するバンプを支持するバンプ支持部をさらに備える。本発明に係るチップパッケージは、上記チップトレイを複数積層して構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るチップトレイおよびチップパッケージによれば、収容部内に収容されたチップが欠けたりすることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係るチップトレイおよびチップパッケージについて、図1から図14を用いて説明する。
【0015】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係るチップパッケージ100の斜視図である。この図1に示すように、チップパッケージ100は、複数のチップトレイ101を積層して構成されている。図2は、チップトレイ101の斜視図であり、図3は、底面側からのチップトレイ101の斜視図である。
【0017】
この図2に示すように、チップトレイ101は、方形状の台104と、この台104の上面上に形成された搭載台103とを備えている。なお、搭載台103の外周縁部は、台104の外周縁部の内側に位置しており、搭載台103と台104とによって段差部が規定されている。
【0018】
搭載台103の上面には複数の収容部102が複数形成されており、各収容部102に、LIS(Large-Scale Integration)チップを収容可能とされている。なお、収容部102の長辺部は、たとえば、1cm〜2cm程度とされており、短辺部は、0.5mm〜3mm程度とされている。
【0019】
図2および図3に示すように、台104は、搭載台103が設けられた上板部104aと、この上板部104aの外周縁部から垂下して、環状に延びる垂下部104bとを備えており、この垂下部104bによって、当該チップトレイ101の下側に配置される搭載台103を受け入れ可能な搭載台収容部105が形成されている。そして、搭載台103が搭載台収容部105内に受け入れられることで、積層方向に配列する各チップトレイ101同士が係合し、順次チップトレイ101を積層させることができる。
【0020】
図4は、収容部102およびその周囲の構成を示す斜視図であり、図5は、チップトレイ101の底面の一部を拡大視した斜視図である。
【0021】
ここで、図4に示すように、収容部102の開口縁部は、方形形状に形成されており、収容部102の長辺に沿って、間隔を隔てて、後述する支持部材135および動力伝達機構134が2つ配置されており、短辺近傍には、1つの支持部材136および動力伝達機構144が配置されている。なお、本実施の形態においては、上記のように支持部材135,136および動力伝達機構134,144が配置されているが、その各数は適宜変更してもよい。
【0022】
そして、図5に示すように、チップトレイ本体300は、このチップトレイ本体300の下面側に配置されたチップトレイ101に向けて突出する押圧部110を備えている。さらに、チップトレイ本体300は、このチップトレイ本体300の下面に形成され、当該チップトレイ本体300の下面側に配置されたチップトレイ101の収容部102内に収容されたLSIチップ200のバンプ201を押圧可能なバンプ押圧部111を備えている。
【0023】
図6は、収容部102の短辺に沿って断面視したチップトレイ101の断面図であり、図7は、収容部102の長辺に沿って断面視したチップトレイ101の断面図である。これら、図6および図7に示すように、チップトレイ101は、LSIチップ200を収容可能な収容部102が形成されたチップトレイ本体300と、収容部102の周面を規定するチップトレイ本体300の内周面から突出したり、内周面から退避したり進退可能に設けられ、LSIチップ200の側面202,203,206,207を支持または側面202,203,206,207に近接可能な支持部材135,136と、外部から加えられる力を支持部材135,136に伝達し、支持部材135,136を変位させる動力伝達機構134,144とを備えている。
【0024】
支持部材135,136は、収容部102の周面を規定するチップトレイ本体300の内周面から突出する第1位置と、前記第1位置よりも、該第1位置から前記内周面に向かう方向に向けて変位した第2位置との間を移動可能に設けられている。
【0025】
そして、支持部材135,136が、収容部102を規定する内周面から退避した第2位置に位置することで、LSIチップ200を搭載台103内に収容することができる。さらに、収容部102内にLSIチップ200を収容した後、支持部材135,136が収容部102を規定するチップトレイ本体300の内周面から突出する第1位置に向けて変位する。
【0026】
これにより、支持部材135,136と、LSIチップ200の側面との間の隙間が小さくなり、LSIチップ200が収容部102内において、動くことができる可動領域を低減することができる。このようにLSIチップ200の可動領域を低減することで、LSIチップ200が支持部材135,136と衝突したり、収容部102を規定するチップトレイ本体300の内周面と衝突する衝突エネルギを低減することができ、LSIチップ200が欠けたり、損傷することを抑制することができる。
【0027】
また、典型的には、支持部材135,136と、LSIチップ200の周面との間には、10μm程度の隙間が設けられているが、これに限られず、支持部材135,136の端面がLSIチップ200の周面と接触するようにしてもよい。
【0028】
このように、支持部材135,136の先端部とLSIチップ200の周面とを接触させることで、LSIチップ200を収容部102内に固定することができ、LSIチップ200が欠ける等の弊害を抑制することができる。
【0029】
動力伝達機構134,144は、チップトレイ本体300内に配置され、チップトレイ本体300の厚み方向(チップトレイ本体300の積層方向)に摺動可能に設けられたピストン112,113と、ピストン112,113の下方に配置されると共に、回転可能に設けられ、ピストン112,113によって押圧されることで、支持部材135,136を変位させる回転部材132,142とを備えている。
【0030】
そして、ピストン112,113は、当該ピストン112,113が設けられたチップトレイ101の上面上に配置されたチップトレイ101の押圧部110によって、チップパッケージ100の積層方向下方に向けて押圧される。ピストン112,113が、押圧部110に押圧され、この押圧力が動力伝達機構134,144を介して、支持部材135,136に伝達され、支持部材135,136を変位させている。
【0031】
このように、各チップトレイ101の上面側に配置されたチップトレイ101の重さを利用して、支持部材135,136を変位させることで、チップトレイ101を積み上げる工程と、チップトレイ101内に収容されたLSIチップ200をの周囲の隙間を低減させる工程とを同時に行うことができる。
【0032】
さらに、収容部102内に収容されたLSIチップ200のバンプ201は、当該LSIチップ200が収容されたチップトレイ101の上面上に配置された他のチップトレイ101のバンプ押圧部111によって押圧固定されており、収容部102内で変位することが抑制されている。なお、バンプ201は、LSIチップ200の主表面(上面)上に形成された回路形成領域121に対して隣り合う部分に形成されている。
【0033】
そして、最も最上段に配置されたチップトレイ101の上面上には、蓋部材500が配置される。この蓋部材500にも、押圧部110およびバンプ押圧部111が設けらている。これにより、押圧部110が最上段に位置するチップトレイ101のピストン112およびピストン113を押圧すると共に、バンプ押圧部111がバンプ201を押圧している。ピストン113が押圧されることで、最上段に位置するチップトレイ101内のLSIチップ200の可動領域が支持部材135および支持部材136によって低減され、またはLSIチップ200が、支持部材135および支持部材136によって支持されている。なお、蓋部材500として、空のチップトレイ101を用いてもよい。
【0034】
収容部102の底面には、上面が湾曲面状に湾曲した底面支持部310および底面支持部311が間隔を隔てて形成されており、LSIチップ200の底面を支持している。これにより、LSIチップ200がバンプ押圧部111によって押圧されたとしても、LSIチップ200の底面が損傷することが抑制されている。
【0035】
図8は、ピストン113および動力伝達機構134の詳細を示す断面図である。この図8に示すように、チップトレイ本体300内には、チップトレイ本体300の厚み方向(チップトレイ101の積層方向)に延びるピストン収容室301が形成されており、このピストン収容室301内にピストン112が厚み方向に摺動可能に収容されている。そして、このピストン112の下端部は、収容部102から離れるにしたがって、上方に向けて湾曲する湾曲面151とされている。
【0036】
この湾曲面151は、収容部102から離れるにしたがって、チップトレイ本体300の厚み方向に延びる仮想直線Lと、湾曲面151との成す角度のうち、小さい方の交差角度が大きくなるように湾曲している。
【0037】
具体的には、湾曲面151のうち、点Q1における湾曲面151の接線L1と、チップトレイ本体300の厚み方向に延びる仮想直線Lとの交差角度のうち小さい方の交差角度θ1よりも、湾曲面151のうち、点Q1に対して、収容部102と反対側に位置する点Q2,Q3の接線L2,L3と仮想直線Lとの交差角度のうち、小さい方の交差角度θ2,θ3の方が大きくなるように湾曲している。
【0038】
さらに、チップトレイ本体300内のうち、ピストン収容室301の下方には、ピストン収容室301に連通する回転部材収容室302が形成されており、この回転部材収容室302内に回転部材132が収容されている。
【0039】
回転部材132は、チップトレイ本体300に固定された軸部131と、この軸部131に回転可能に設けられた湾曲部材130とを備えている。
【0040】
ここで、湾曲部材130は、軸部131より収容部102側に位置する中心点O1を中心に円弧状に湾曲している。そして、湾曲部材130の端部のうち、軸部131側に位置する端部が、ピストン112の下端部によって押圧されることで、収容部102側に位置す端部153が、支持部材135の底面152を押圧するように変位する。回転部材132の表面のうち、軸部131側の端面は、中心点O2を中心とする円弧面150とされている。
【0041】
ここで、湾曲部材130のうち、湾曲部材130の延在方向中央部よりも端部153側に位置する部分には、重り部137が埋設されている。この重り部137は、湾曲部材130を構成する樹脂よりも単位体積あたりの質量が重い材料で構成されている。
【0042】
チップトレイ本体300内には、回転部材収容室302に連通し、回転部材収容室302に対して収容部102側に位置する支持部材案内室303が規定されている。支持部材案内室303は、回転部材収容室302から収容部102に向かうにしたがって、上方に向けて傾斜するように延び、この支持部材案内室303内には、支持部材135が摺動可能に設けられている。支持部材135のうち、収容部102を規定するチップトレイ本体300の内周面から突出可能な部分は、収容部102の内周面側からLSIチップ200側に向かうにしたがって膨出するように湾曲する膨出部154とされている。
【0043】
そして、膨出部154とLSIチップ200との接触位置または近接位置は、側面202のうち、高さ方向の略中央部に位置しており、支持部材135がLSIチップ200の角部や稜線部と接触することが抑制されている。これにより、LSIチップ200の角部や稜線部等が支持部材135と接触することが抑制され、LSIチップ200が欠けたりすることを抑制することができる。
【0044】
なお、チップトレイ本体300、ピストン112,113、湾曲部材130,140、支持部材135,136は、シリコンよりも硬度が小さい材料、たとえば、PBS(ポリブチレンサクシネート:Poly butylene succinate)やPPS(ポリフェニレンサルファイド:polyphenylene sulfide)等によって構成されている。
【0045】
支持部材案内室303の底部は、収容部102側に向かうにしたがって、上方に向けて傾斜する傾斜面とされており、支持部材135のうち、この傾斜面と当接する部分は、この傾斜面に沿って延びるテーパ部156とされている。
【0046】
さらに、チップトレイ本体300内には、ピストン収容室301と支持部材案内室303とを区画し、チップトレイ本体300の上面から垂下する垂下部304が設けられている。そして、支持部材135には、この垂下部304に係合して、支持部材135の最下点を規定する係止部155が形成されている。
【0047】
なお、支持部材136および動力伝達機構144は、上記支持部材135および動力伝達機構134と同様に構成されている。たとえば、図7において、ピストン113の下端面には、湾曲面151と同様の湾曲面が形成されている。回転部材142は、軸部141と、この軸部141に回転可能に設けられた湾曲部材140とを備えている。
【0048】
そして、軸部141は、湾曲部材140の延在方向中央部に対して、収容部102から離れた位置に設けられている。湾曲部材140のうち、湾曲部材140の延在方向中央部に対して、収容部102側に位置する部分には、重り部137が設けられている。そして、支持部材136のうち、LSIチップ200の側面206,207に近接する先端部は、収容部102に向けて膨出する膨出部とされている。
【0049】
上記のように構成されたチップトレイ101およびチップパッケージ100の動作について、図9から図14および上記図6から図8を用いて説明する。
【0050】
図9は、収容部102内にLSIチップ200が収容されたチップトレイ101の上面上に新たなチップトレイ101が載置されていない状態において、収容部102の短辺に沿って断面視したチップトレイ101の断面図である。さらに、図10は、図9における収容部102の長辺に沿って断面視したチップトレイ101の断面図である。
【0051】
これら、図9および図10に示すように、チップトレイ101の上面上に新たなチップトレイ101が載置されていないときには、湾曲部材130,140は、重り部137,147の質量によって、湾曲部材130,140のうち、重り部137,147側の端部が回転部材収容室302の底部に位置している。
【0052】
これにより、ピストン112,113は、上記のような状態で配置された湾曲部材130,140によって上方に押圧されており、ピストン112,113の上端部がチップトレイ本体300の上面から突出している。
【0053】
ここで、図11は、図9,図10におけるピストン113および回転部材132の状態を詳細に示す断面図である。この図11に示すように、湾曲部材130の端部153は、支持部材135の底面152から離間している。このため、支持部材135は、最下点にまで落ちており、係止部155と垂下部304とが係合して、支持部材135が停止している。
【0054】
そして、湾曲部材130の円弧面150は、湾曲面151のうち、下端部側に位置する部分と当接している。湾曲面151のうち、円弧面150との接触点P1が位置する部分は、円弧面150の表面のうち、接触点P1における接線方向に向けて延びている。
【0055】
接触点P1と中心点O2と、軸部131の中心軸とは、略同一直線上に配列しており、軸部131は、中心点O2に対して、接触点P1と反対側に配置されている。
【0056】
この図11に示す状態においては、支持部材135は、収容部102を規定するチップトレイ本体300の内周面から退避した状態となっている。具体的には、支持部材135の膨出部154は、収容部102を規定するチップトレイ本体300の内表面に対して、チップトレイ本体300の外周面側に位置している。なお、この図11に示す例に限られず、支持部材135の膨出部154が収容部102を規定するチップトレイ本体300の内周面と面一としてもよく、僅かであれば、膨出部154の先端部が収容部102から突出するように位置していてもよい。
【0057】
図12は、上記図9に示されたチップトレイ101の上面側に新たなチップトレイ101を配置して、ピストン112が新たなチップトレイ101に設けられた押圧部110によって押圧され始めたときのチップトレイ101の断面図である。図13は、図12に示されたときの長手方向のチップトレイ101の断面図である。この図12および図13において、ピストン112およびピストン113の上端部が押圧され始めると、ピストン112およびピストン113は下方に変位し始める。
【0058】
図14は、上記図12および図13における回転部材132および支持部材135の周囲の詳細な構成を示す断面図である。この図14および図11に示すように、ピストン113が下方に向けて変位すると、湾曲部材130は、軸部131を中心に回転方向Pに向けて回転する。
【0059】
これにより、湾曲部材130の端部153が支持部材135の底面152と当接し、支持部材135を支持部材案内室303に沿って変位させる。これにより、支持部材135は、収容部102を規定するチップトレイ本体300の内表面から突出するように変位し始める。
【0060】
この際、円弧面150と湾曲面151との接触点P2は、湾曲面151のうち、図11に示す接触点P1に対して収容部102から離れた位置となる。そして、湾曲面151のうち、接触点P2が位置する部分は、円弧面150のうち、接触点P2が位置する部分の接線方向に延びている。
【0061】
円弧面150における接触点P2は、図11に示す円弧面150における接触点P1よりも回転方向P後方側に位置している。
【0062】
ここで、上記のように、接触点P1と中心点O2と軸部131とが略同一直線上に配列しており、円弧面150は、中心点O2を中心とする円弧状に形成されているため、円弧面150のうち、接触点P1から回転方向Pの反対方向に向かうにしたがって、軸部131と円弧面150との間の距離は、小さくなる。これにより、接触点P1と軸部131との間の距離よりも、接触点P2と軸部131との間の距離の方が小さいなっている。
【0063】
このように、円弧面150は、接触点P1から回転方向Pの反対方向に向かうにしたがって、湾曲面151から離れるように湾曲しているため、湾曲部材130が回転方向Pに向けて回転することで、ピストン113が下方に入り込むことができる隙間が規定され、ピストン113が下方に変位する。
【0064】
そして、さらに、ピストン112が下方に向けて押圧されると、上記図8に示すように、ピストン112が押し下げられることで、湾曲部材130がさらに回転方向Pに向けて回転して、支持部材135をさらに押し上げると共に、支持部材案内室303に沿って変位させる。
【0065】
これにより、図8に示すように、この図8に示されたチップトレイ101の上面上に他のチップトレイの配置が完了すると、支持部材135の膨出部154は、上記図11および図14に示された状態よりも、収容部102を規定するチップトレイ本体300の内周面より、収容部102の内方に向けて突出する。これに伴い、支持部材135が収容部102内に収容されたLSIチップ200の側面202に近接する。
【0066】
すなわち、膨出部154は、収容部102を規定するチップトレイ本体300の内周面のうち、支持部材案内室303の開口部の周囲に位置する部分よりも、LSIチップ200に近接する。
【0067】
これにより、収容部102内において、LSIチップ200が収容部102を規定するチップトレイ本体300の内周面と衝突することを抑制することができ、LSIチップ200が損傷することを抑制することができる。
【0068】
なお、円弧面150のうち、図8に示す接触点P3は、図14に示す接触点P2よりも回転方向Pの反対方向に位置しており、円弧面150のうち、接触点P3が位置する部分と軸部131との間の距離は、円弧面150のうち、接触点P2が位置する部分との間の距離よりも小さくなっている。このため、湾曲部材130が回転方向Pに向けて回転することで、ピストン113が下方に変位することを許容することができる。
【0069】
ここで、図8、図11および図14を用いて、支持部材135がLSIチップ200に近接した状態から退避した状態に変位する過程について説明する。
【0070】
図8に示す状態においては、図8に示されたチップトレイ101の上面上に他のチップトレイが配置されている。そして、この他のチップトレイが図8に示すチップトレイ101の上面上から取り除かれると、図14に示すように、湾曲部材130は、重り部137の重みによって、軸部131を中心に回転方向Pに対して反対方向に向けて回転し始める。これにより、端部153は、図8に示す状態よりも下方に変位し、また、支持部材135も下方に変位し始める。これにより支持部材135の膨出部154は、図8に示す位置よりも、収容部102を規定するチップトレイ本体300の内表面に向けて変位し始める。
【0071】
ここで、円弧面150のうち、接触点P3が位置する部分と軸部131との間の距離よりも、円弧面150のうち、接触点P2が位置する部分と軸部131との間の距離の方が大きくなっている。このため、湾曲部材130が回転方向Pの反対方向に向けて回転することで、ピストン113は、湾曲部材130によって押し上げられる。
【0072】
そして、図11に示すように、重り部137によって、湾曲部材130がさらに回転方向Pと反対方向に回転すると、支持部材135の係止部155が垂下部304に係止され、支持部材135は、最下点に位置する。
【0073】
そして、円弧面150のうち、接触点P1が位置する部分と軸部131との間の距離は、図14に示す接触点P2と軸部131との間の距離よりも大きくなっているので、湾曲部材130が回転方向Pと反対方向に回転することで、ピストン113は、湾曲部材130によって上方に押圧され、上方に変位する。
【0074】
このように、チップトレイ101の上面に配置された他のチップトレイを取り除くことで、支持部材135を退避させることができ、その後、収容部102内に収容されたLSIチップ200を容易に取り出すことができる。
【0075】
なお、本実施の形態においては、各収容部102の周縁部に沿って複数の支持部材135,136および動力伝達機構134,144を配置しているが、これに限られない。たとえば、収容部102の周縁部のうち、一辺に支持部材135および動力伝達機構134を配置するようにしてもよい。
【0076】
この場合、好ましくは、収容部102を規定するチップトレイ本体300の内周面のうち、当該支持部材135および支持部材136が設けられた側面と対向する側面は、支持部材135および支持部材136が設けられた側面に向けて膨出するように湾曲させる。
【0077】
これにより、収容部102内に収容されたLSIチップ200の側面を上記膨出部で支持することができ、LSIチップ200が損傷することを抑制することができる。
【0078】
さらに、支持部材135のうち、膨出部154を他の部分とは異なる材料で構成し、膨出部154を他の部分より柔らかい材料で構成してもよい。これにより、LSIチップ200が膨出部154に衝突したときにおいても、LSIチップ200が損傷することを抑制することができる。さらに、湾曲部材130,140をそれぞれ、長手方向に長尺に形成してもよい。
【0079】
また、本実施の形態に係るチップトレイ101およびチップパッケージ100においては、上方に積層されるチップトレイ101によって、下面側に位置するチップトレイ101の動力伝達機構134,144および支持部材135,136を駆動させているが、これに限られない。たとえば、下面側に位置するチップトレイ101の上面に設けられた突起等によって、上面側に位置する動力伝達機構134,144および支持部材135,136を駆動させてもよい。
【0080】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、LSIチップを収容するチップトレイおよびチップパッケージに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態に係るチップパッケージの斜視図である。
【図2】チップトレイの斜視図である。
【図3】底面側からのチップトレイの斜視図である。
【図4】収容部およびその周囲の構成を示す斜視図である。
【図5】チップトレイの底面の一部を拡大視した斜視図である。
【図6】収容部の短辺に沿って断面視したチップトレイの断面図である。
【図7】収容部の長辺に沿って断面視したチップトレイの断面図である。
【図8】ピストンおよび動力伝達機構の詳細を示す断面図である。
【図9】収容部内にLSIチップが収容されたチップトレイの上面上に新たなチップトレイが載置されていない状態において、収容部の短辺に沿って断面視したチップトレイの断面図である。
【図10】図9における収容部の長辺に沿って断面視したチップトレイの断面図である。
【図11】図9,図10におけるピストンおよび回転部材の状態を詳細に示す断面図である。
【図12】図9に示されたチップトレイの上面側に新たなチップトレイを配置して、ピストンが新たなチップトレイに設けられた押圧部によって押圧され始めたときのチップトレイの断面図である。
【図13】図12に示されたときの長手方向のチップトレイの断面図である。
【図14】図12および図13における回転部材および支持部材の周囲の詳細な構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
100 チップパッケージ、101 チップトレイ、102 収容部、103 搭載台、104 台、105 搭載台収容部、110 押圧部、111 バンプ押圧部、112,113 ピストン、121 回路形成領域、130,140 湾曲部材、131 軸部、132,142 回転部材、134,144 動力伝達機構、135,136 支持部材、137,147 重り部、140 湾曲部材、150 円弧面、151 湾曲面、200 チップ、201 バンプ、300 チップトレイ本体、301 ピストン収容室、302 回転部材収容室、303 支持部材案内室、P1,P2,P3 接触点、θ1,θ2,θ3 交差角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップを収容可能な収容部が形成されたチップトレイ本体と、
前記収容部の周面を規定するチップトレイ本体の内周面から突出する第1位置と、前記第1位置よりも、該第1位置から前記内周面に向かう方向に向けて変位した第2位置との間を移動可能に設けられる支持部材とを備えた、チップトレイ。
【請求項2】
外部から加えられる力を前記支持部材に伝達し、前記支持部を移動させる動力伝達機構をさらに備えた、請求項1に記載のチップトレイ。
【請求項3】
前記チップトレイ本体は、複数積層可能とされ、
前記動力伝達機構は、該動力伝達機構が設けられたチップトレイ本体に対して、前記チップトレイ本体の積層方向に隣り合う他のチップトレイ本体によって押圧されることで、前記チップトレイ本体の厚み方向に摺動可能に設けられたピストンと、回転可能に設けられ、前記ピストンによって押圧されることで前記支持部材を変位させる、回転部材とを含む、請求項1に記載のチップトレイ。
【請求項4】
前記収容部は、前記チップトレイ本体の上面に開口するように形成され、
前記ピストンは前記収容部の開口部縁部の周囲に設けられると共に、該ピストンが設けられた前記チップトレイ本体の上面側に配置される他のチップトレイ本体によって押圧されることで、前記チップトレイ本体の厚み方向に摺動可能に設けられた、請求項3に記載のチップトレイ。
【請求項5】
前記回転部材は、円弧状に湾曲する湾曲部材と、前記湾曲部材を回転可能に支持する軸部とを含み、
前記湾曲部材の表面のうち、前記ピストンによって押圧される端部は、円弧状に湾曲する円弧面とされ、
前記ピストンの端面のうち、前記湾曲部材を押圧する端面は、前記収容部から離れるにしたがって、前記チップトレイ本体の厚み方向に延びる仮想直線と成す交差角度のうち小さい方の交差角度が漸次大きくなるように湾曲する湾曲面とされた、請求項4に記載のチップトレイ。
【請求項6】
前記回転部材は、前記湾曲部材のうち、前記軸部に対して前記支持部材を押圧する端部側に設けられた、重り部を含む、請求項5に記載のチップトレイ。
【請求項7】
前記支持部材の表面のうち、前記収容部を規定する前記チップトレイ本体の内周面から突出する部分は、前記収容部に向けて膨出するように湾曲する膨出面とされた、請求項1から請求項6のいずれかに記載のチップトレイ。
【請求項8】
前記チップトレイ本体は、前記収容部の底部に形成され、前記チップの底面を支持可能な底面支持部を含み、
前記底面支持部は、前記底部から上方に向かうように膨出する膨出面とされた、請求項1から請求項7のいずれかに記載のチップトレイ。
【請求項9】
前記チップトレイ本体は、複数積層可能とされ、
前記チップトレイ本体の下面に形成され、該チップトレイ本体の下面側に位置する他のチップトレイ本体の前記収容部内に収容された前記チップの上面のうち、回路が形成された回路形成領域の外周縁部に位置するバンプを支持するバンプ支持部をさらに備える、請求項1から請求項8のいずれかに記載のチップトレイ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載のチップトレイを複数積層して構成されたチップパッケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−126539(P2009−126539A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301751(P2007−301751)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】