説明

チャック装置

【課題】軸肥大加工機における金属軸材または金属管材であるワークを保持するチャック装置において、ワークを簡単にスリーブから取外せるとともに、肥大部を有するワークであっても簡単かつ確実に保持可能なチャック装置を提供すること。
【解決手段】チャック本体の空孔部に、ワークを挟持するための保持溝を設けた複数のスリーブ片からなるスリーブを前記保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で嵌め合わせ、チャック本体に回転可能に設けたカム軸を回動させてカム軸のカム片をスリーブ片に設けた溝部にかけることで、スリーブをチャック本体の空孔部軸心方向にスライドさせるとともに、スリーブがチャック本体に対し抜け止めされるようにする。また、チャック本体の空孔部とスリーブのスリーブ片にテーパー部を設け、前記カム軸の操作にてチャック本体のテーパー部に沿ってスリーブをスライドさせ、前記保持溝にてワークを確実に挟持するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸肥大加工機において、金属軸材または金属管材であるワークを保持するチャック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明にかかるチャック装置は、ワークに圧縮力と回転力及び曲げ力を加えて、ワークの一部に径方向の肥大部を成形する軸肥大加工機(以下、加工機)において、ワークを保持するために用いられるものである。このチャック装置は、加工機に具備された対向する一対の回転部のそれぞれに設けられた軸回りに回転可能なスピンドルの少なくとも一方に取付けられて使用される。
この加工機では、ワークを加工する際、まず、所定間隔離間させた回転部間にワークを保持させ、そして、ワークに軸心方向の圧縮力を作用させる。然る後、軸心を中心にワークを回転させる回転力を加えるとともに、回転部間にワークの曲げ中心が位置するようワークに曲げ力を加える。このとき、圧縮力はワークの曲げの外側に引張り力が発生しないように加えられる。このようにすると、回転部間に肥大部が成形される。この際、肥大部の首下部すなわちチャック装置のワークを保持するスリーブ内においてもワークは肥大する。そのため、従来のチャック装置に用いられていた筒状のスリーブでは、ワークがスリーブに固く嵌り込み、ワークをチャック装置から取外す作業が面倒なものとなっていた。
【0003】
そこで、チャック装置からのワークの取外し作業を至便なものとするために、従来では次のようにしたチャック装置がある。
一つには、回転部の上記スピンドルに当たる保持筒内部の空孔部の一端部にテーパー部を設ける。そして、前記テーパー部に嵌め合わせ可能なテーパー部が設けられた筒体を複数に分割してなる一組のスリーブを保持筒の空孔部に嵌め合わせて、チャック装置を構成したものがある。このチャック装置は、スリーブを保持筒の空孔部内に嵌め合せた後に、加工機のワークに圧縮力を付加する機能またはハンマー等を用いてスリーブを保持筒の空孔部内に圧入させ、保持筒とスリーブに設けたテーパー部の作用にてスリーブの軸心上に設けた空孔部を狭くして、ワークを確実に挟持するようにしたものである(特許文献1参照。)。
また、回転部の上記スピンドルに当たる保持筒内部の空孔部の一端部にテーパー部を設けるとともに、保持筒の前記テーパー部が設けられた側の外周に雄螺子部を設ける。そして、前記テーパー部に嵌め合わせ可能なテーパー部が設けられた筒体を複数に分割してなる一組のスリーブを保持筒の空孔部に嵌め合わせ、その状態で保持ナットを前記保持筒の雄螺子部に螺合して、チャック装置を構成したものである。このチャック装置は、保持ナットを締め付けて、スリーブを保持筒の空孔部に押し込み、保持筒とスリーブに設けたテーパー部の作用にてスリーブの軸心上に設けた空孔部を狭くして、ワークを確実に挟持するようにしたものである(特許文献2参照。)。
【0004】
第一及び第二の形態のチャック装置は両者ともに、保持筒からスリーブをいくらか引き出すことでスリーブの軸心上に設けられた空孔部を広げることができ、ワークを簡単に取外せるようになっている。
しかしながら、第一の形態では、ワークをチャック装置に確実に保持させるために、加工機等にてスリーブを保持筒の空孔部内部へ圧入させなければならず、チャック装置にワークを保持させる作業が煩雑なものとなっている。
また、第二の形態では、肥大部を有するワークの肥大部の横に新たに肥大部を成形する際にワークを保持させる場合は、ナット部材とスリーブを保持筒から取外し、ワークにナット部材を挿通する。そして、ワークの肥大部がスリーブの保持筒へ先に嵌め込む側に位置するようワークをスリーブの空孔部にて挟持し、その状態でスリーブを保持筒に嵌め合わせる。然る後、ナット部材を保持筒へ締め付けて、チャック装置にワークを保持させなければならない。このように、この形態では、スリーブを保持筒から取外すために、ナット部材をも取外す必要があり、肥大部を有するワークの肥大部の横に新たに肥大部を成形できるようチャック装置にワークを保持させる作業が煩雑なものとなっている。
【特許文献1】特開2000−343172号公報
【特許文献2】特開2000−271678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記事情を鑑み、ワークを確実に保持することができるとともに、ワークを簡単にスリーブから取外すことでき、さらに、肥大部を有するワークであっても簡単かつ確実に保持させることができるチャック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、軸肥大加工機における金属軸材または金属管材であるワークを保持するチャック装置において、略々筒状のチャック本体の空孔部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた複数のスリーブ片からなるスリーブをスリーブ片の保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で嵌め合わせ、前記チャック本体に回転可能に設けたカム軸を回動させてカム軸のカム片をスリーブ片に設けた溝部にかけることで、チャック本体の空孔部の軸心方向にスリーブがスライドするようにするとともに、チャック本体に対してスリーブが抜け止めされた状態となるように構成し、さらに、チャック本体の空孔部及びスリーブのスリーブ片にテーパー部を設け、前記カム軸の操作により、チャック本体のテーパー部に沿ってスリーブがスライドし、ワークを前記保持溝にて確実に挟持するように構成したことを特徴とする。
請求項2の発明は、軸肥大加工機における金属軸材または金属管材であるワークを保持するチャック装置において、略々筒状のチャック本体の空孔部と連続して設けられた穴部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた固定スリーブと少なくとも一つの可動スリーブからなるスリーブを配設するとともに、前記穴部内にて回動可能な前記可動スリーブを前記固定スリーブと可動スリーブの保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で締付可能な少なくとも一つの締付手段を設け、該締付手段にて前記スリーブ内のワークを前記保持溝に確実に挟持させるようにしたことを特徴とする。
請求項3の発明は、軸肥大加工機における金属軸材または金属管材であるワークを保持するチャック装置において、略々筒状のチャック本体の空孔部と連続して設けられた穴部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた複数の可動スリーブからなるスリーブを配設するとともに、前記穴部内にて回動可能な前記可動スリーブを前記保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で締付可能な複数の締付手段を設け、該締付手段にて前記スリーブ内のワークを前記保持溝に確実に挟持させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、略々筒状のチャック本体の空孔部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた複数のスリーブ片からなるスリーブをスリーブ片の保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で嵌め合わせるようにした。また、前記チャック本体に回転可能に設けたカム軸を回動させてカム軸のカム片をスリーブ片に設けた溝部にかけることで、チャック本体の空孔部の軸心方向にスリーブがスライドするようにするとともに、チャック本体に対してスリーブが抜け止めされた状態となるように構成した。さらに、チャック本体の空孔部及びスリーブのスリーブ片にテーパー部を設け、前記カム軸の操作により、チャック本体のテーパー部に沿ってスリーブがスライドし、ワークを前記保持溝にて確実に挟持するように構成した。
これによると、チャック本体の空孔部とスリーブのスリーブ片にテーパー部を設けたことと、カム軸の操作にてスリーブをチャック本体の空孔部の軸心方向にスライドさせるとともに、スリーブのチャック本体に対する抜け止めまたは抜け止め解除を行うようにしたことで、スリーブの取付け及び取外しを簡単に行える。また、肥大部を有するワークであっても簡単にスリーブにて確実に挟持させることができる。さらに、直径の異なるワークを続けて加工する際に、スリーブの取替えを簡単に行うことができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、略々筒状のチャック本体の空孔部と連続して設けられた穴部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた固定スリーブと少なくとも一つの可動スリーブからなるスリーブを配設した。また、前記穴部内にて回動可能な前記可動スリーブを前記固定スリーブと可動スリーブの保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で締付可能な少なくとも一つの締付手段を設け、該締付手段にて前記スリーブ内のワークを前記保持溝に確実に挟持させるようにした。
これによると、スリーブを可動スリーブと固定スリーブから構成したことと、締付手段にてスリーブの可動スリーブの締付状態と回動可能状態の切替えを行えることで、可動スリーブを回動可能状態としたときに、可動スリーブを回動させることで可動スリーブと固定スリーブとの間に空間部を形成することができる。これによって、ワークをスリーブから簡単に取外すことができる。さらに、肥大部を有するワークであってもその肥大部をチャック装置内部または加工機のスピンドル内部に位置させて当該ワークをスリーブの保持溝に配設することができるとともに、締付手段にて可動スリーブを締め付けると、ワークをスリーブにて確実に挟持させることができる。
すなわち、このチャック装置は、チャック装置の構成部材をチャック本体から取外すことなく、ワークをチャック装置へ保持させる作業及びワークをチャック装置から取外す作業を簡単に行うことができる。
また、スリーブを可動スリーブと固定スリーブから構成したことで、ワークをスリーブに挟持させる際に、ワークの肥大させたい部分を固定スリーブの前端部に位置合わせしやすく、スリーブにてワークの所望の挟持位置を簡単に挟持させることができる。
【0009】
請求項3の発明によれば、略々筒状のチャック本体の空孔部と連続して設けられた穴部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた複数の可動スリーブからなるスリーブを配設した。また、前記穴部内にて回動可能な前記可動スリーブを前記保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で締付可能な複数の締付手段を設け、該締付手段にて前記スリーブ内のワークを前記保持溝に確実に挟持させるようにした。
これによると、スリーブを複数の可動スリーブから構成したことと、締付手段にてスリーブの可動スリーブの締付状態と回動可能状態の切替えを行えることで、可動スリーブを回動可能状態としたときに、可動スリーブを回動させることで各可動スリーブ間に空間部を形成することができる。これによって、ワークをスリーブから簡単に取外すことができる。さらに、肥大部を有するワークであってもその肥大部をチャック装置内部または加工機のスピンドル内部に位置させて当該ワークをスリーブの保持溝に配設することができるとともに、締付手段にて可動スリーブを締め付けると、ワークをスリーブにて確実に挟持させることができる。
すなわち、このチャック装置は、チャック装置の構成部材をチャック本体から取外すことなく、ワークをチャック装置へ保持させる作業及びワークをチャック装置から取外す作業を簡単に行うことができる。
また、スリーブを複数の可動スリーブにて構成したことから、請求項2に記載のチャック装置のスリーブに比べ、可動スリーブ間に形成できる空間部を大きくすることができ、請求項2に記載のチャック装置に比べて、大きな肥大部を有するワークをスリーブにて挟持させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
軸肥大加工機における金属軸材または金属管材であるワークを保持するチャック装置において、略々筒状のチャック本体の空孔部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた複数のスリーブ片からなるスリーブをスリーブ片の保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で嵌め合わせるようにする。また、前記チャック本体に回転可能に設けたカム軸を回動させてカム軸のカム片をスリーブ片に設けた溝部にかけることで、チャック本体の空孔部の軸心方向にスリーブがスライドするようにするとともに、チャック本体に対してスリーブが抜け止めされた状態となるように構成する。さらに、チャック本体の空孔部及びスリーブのスリーブ片にテーパー部を設け、前記カム軸の操作により、チャック本体のテーパー部に沿ってスリーブがスライドし、ワークを前記保持溝にて確実に挟持するように構成する。
【0011】
これによると、このチャック装置は、チャック本体の空孔部とスリーブのスリーブ片にテーパー部を設けたことと、カム軸の操作にてスリーブをチャック本体の空孔部の軸心方向にスライドさせて、スリーブのチャック本体に対する抜け止めまたは抜け止め解除を行うようにしたことで、スリーブの取付け及び取外しを簡単に行える。さらに、直径の異なるワークを続けて加工する際に、スリーブの取替えを簡単に行うことができ、加工機によるワークの加工効率を高めることができる。
また、このチャック装置は、チャック本体の空孔部とスリーブのスリーブ片にテーパー部を設けたことで、スリーブをチャック本体に対して抜け止めさせるようにすると、スリーブがチャック本体のテーパー部に沿ってスライドし、保持溝にてワークを簡単かつ確実に挟持させることができる。また、このチャック装置は、スリーブを複数のスリーブ片にて構成したことで、スリーブのチャック装置に対する抜け止めを解除すると、スリーブ片を離間させることが可能となり、ワークをスリーブから簡単に取外すことができる。すなわち、このチャック装置は、カム軸の操作にてスリーブをチャック本体に対して抜け止めすると、同時にスリーブにてワークを確実に挟持できるとともに、スリーブのチャック本体に対する抜け止めを解除すると、同時にスリーブからワークを簡単に取外せるようにされている。
また、このチャック装置は、スリーブを複数のスリーブ片にて構成したことと、スリーブのチャック本体への取付け取外しを簡単に行えるようにしたことで、肥大部を有するワークであっても簡単かつ確実に保持させることができる。これによると、このチャック装置にて加工機を一つのワークに複数の肥大部を成形させることができる加工機とすることができる。また、加工機に具備された一対の回転部にそれぞれ設けたスピンドルの両方に当該チャック装置を具備させた場合には、例えば、二箇所に肥大部を有するワークの肥大部間に新たに肥大部を成形できるようチャック装置にワークを保持させることもできる。
【実施例1】
【0012】
本発明にかかるチャック装置の一実施例を図面に基づいて説明する。第1図はチャック装置を軸肥大加工機に取付けた様子を示す斜視図である。第2図はチャック装置の構成を示す説明図である。第3図はチャック装置を示す側断面図である。第4図はワークを保持させる手順を示す説明図である。第5図は肥大部を有するワークを保持させる手順を示す説明図である。
【0013】
このチャック装置1は、軸肥大加工機M(以下、加工機M)に具備された回転部Rに設けられた軸回りに回転可能なスピンドルSに固定されるチャック本体2と、該チャック本体2に嵌め合わされるスリーブ3と、該スリーブ3をチャック本体2に対して抜け止めするためのカム軸4,4から構成されている。
【0014】
まず、チャック本体2は、第2図及び第3図に示すように、前後方向の軸心上に空孔部2aが設けられた略々筒状の形状をしており、その空孔部2aの前部には後述するスリーブ3のテーパー部6b,6bが嵌め合わされるテーパー部2bが設けられ、中間部には後述するスリーブ3の後部が嵌め合わされる矩形部2cが設けられている。さらに、空孔部2aの後部には加工機MのスピンドルSに嵌め合わされる段付部2dが設けられ、チャック本体2の前部側面には後述するカム軸4,4を装填するための空孔部2e,2eが設けられている。
【0015】
カム軸4,4は、第2図及び第3図に示すように、カム片4a,4aの両端部に軸部4b,4b,・・・が設けられたものであり、その軸部4b,4b,・・・の少なくとも一方には溝部4c,4cが設けられている。
このカム軸4,4は、前記チャック本体2の空孔部2e,2eに装填されるとともに、チャック本体2の前側から嵌め込まれる抜け止めピン5,5が前記溝部4c,4cに当接され、前記空孔部2e,2e内で回転可能かつチャック本体2から脱落することがないようにチャック本体2に配設される。
【0016】
次に、スリーブ3は、第2図及び第3図に示すように、二つのスリーブ片6,6からなり、これらスリーブ片6,6は同一形状である。以下、一つのスリーブ片6について説明する。このスリーブ片6は、略々筒部材を前後方向に半分に切断した形状であり、ワークWを挟持するための保持溝6aが前後方向に設けられている。また、スリーブ片6の前記保持溝6aが設けられている面を除く前部外周には前記チャック本体2のテーパー部2bに嵌め合わされるテーパー部6bが設けられ、その中間部から後部外周は前記チャック本体2の矩形部2cに嵌め合わせ可能に略々矩形状に構成されるとともに、その中間部の上下面には溝部6c,6cが設けられている。
このように構成されたスリーブ片6,6は、第2図の(a)図に示すように、保持溝6a,6aが設けられている面を二つの保持溝6a,6aで一つの保持孔H1を形成するように合わせ、前記チャック本体2に前側から嵌め込まれる。このとき、カム軸4,4のカム片4a,4aは、第3図の(a)図に示すように、スリーブ3と接触しない状態に回動されている。また、チャック本体2の空孔部2a内に設けた矩形部2cとスリーブ3の後部が嵌め合わされ、スリーブ3がチャック本体2に対して回り止めされた状態で、スリーブ3はチャック本体2に嵌め合わされる。然る後、第2図の(b)図と(c)図及び第3図に示すように、カム軸4,4を回動させると、始はカム片4a,4aの溝部6c,6c,・・・前面に接触し難くした側の曲面部4d,4d側から該カム片4a,4aが溝部6c,6c,・・・へ進入し、さらに、カム軸4,4の回動が進むとカム片4a,4aの曲面部4d,4dと溝部6c,6c,・・・後面が接触するようになって、カム片4a,4aが溝部6c,6c,・・・にかけられる。このように、カム軸4,4のカム片4a,4aがスリーブ片6,6の溝部6c,6c,・・・にかけられることで、スリーブ片6,6が均等にチャック本体2内に引き込まれるとともに、スリーブ片6,6とチャック本体2のテーパー部6b,6b,2bがしっかりと嵌め合わされて、スリーブ3はチャック本体2に対してしっかりと抜け止めされる。この際、スリーブ片6,6のテーパー部6b,6bがチャック本体2のテーパー部2bにしっかりと嵌め合わされることで、二つのスリーブ片6,6がチャック本体2のテーパー部2bに沿って引き込まれるようになり、スリーブ片6,6が互いに密着される方向にも移動されるようになるとともに、二つの保持溝6a,6aにて形成される保持孔H1の前後方向の軸心とチャック本体2の前後方向の軸心が一致された状態で、スリーブ3はチャック本体2に対して抜け止めされる。
すなわち、煩雑にスリーブ3をチャック本体2に嵌め込んだとしても、スリーブ片6,6とチャック本体2のテーパー部6b,6b,2bの作用にてスリーブ3はチャック本体2の所定の位置にしっかりと抜け止めできるようにされている。
なお、スリーブ片6,6の保持溝6a,6aは、保持孔H1を形成した際、該保持孔H1の直径がワークWの直径と略々一致するように設けられている。
【0017】
そして、このように構成されたチャック装置1は、第2図の(d)図に示すように、ネジ部材7,7,7にて加工機MのスピンドルSに固定されて使用される。
【0018】
続いて、第4図に基づいて、ワークWを保持させる手順に沿ってチャック装置1の使用方法を説明する。
まず、(a)図に示すように、カム軸4,4を回動してカム片4a,4aのスリーブ片6,6の溝部6c,6c,・・・へのかかりを解除し、スリーブ3をチャック本体2から引き抜く。
次に、(b)図に示すように、ワークWの肥大させたい部分がスリーブ3の前端部に位置するように、スリーブ片6,6の保持溝6a,6aにてワークWを挟持し、その状態でチャック本体2にスリーブ3を嵌め込む。
そして、(c)図に示すように、カム軸4,4を回動してカム片4a,4aをスリーブ片6,6の溝部6c,6c,・・・へかけると、スリーブ3はチャック本体2の空孔部2a内に引き込まれるとともに、スリーブ3のスリーブ片6,6とチャック本体2の空孔部2aに設けられたテーパー部6b,6b,2bがしっかりと嵌め合されるようになる。すると、スリーブ3がチャック本体2の所定の位置にしっかりと抜け止めされると同時に、チャック本体2のテーパー部2bに沿って二つのスリーブ片6,6の保持溝6a,6aの間隔も狭められてワークWが保持溝6a,6aにて強固に挟持され、ワークWはチャック装置1に確実に保持される。このとき、正面視においてワークWはスリーブ3の保持溝6a,6aにて形成される保持孔H1に収まった状態となる。
また、加工機MによるワークWの加工終了後等、ワークWをチャック装置1から取外す際は、上記手順を逆に行うことでチャック装置1からワークWを取外すことができる。
なお、スリーブ3がチャック本体2に対して抜け止めされた第3図の(c)図に示す状態から(b)図に示す状態になるようにカム軸4,4を回動させると、カム軸4,4にてスリーブ3をチャック本体2から押し出すことができ、さらに、カム軸4,4を回動させて(a)図の状態とすることで、至便にチャック本体2からスリーブ3を取外すことができる。
【0019】
このように、このチャック装置1は、チャック本体2の空孔部2aとスリーブ3のスリーブ片6,6にテーパー部2b,6b,6bを設けたことと、カム軸4,4の操作にてスリーブ3をチャック本体2内に引き込めるようにしたことで、スリーブ3をチャック本体2の所定の位置にしっかりと抜け止めした状態で簡単に配設できる。また、このチャック装置1は、カム軸4,4を操作することでスリーブ3のチャック本体2に対する抜け止めを解除するとともに、スリーブ3をチャック本体2から押し出せるようにしたことで、スリーブ3をチャック本体2から簡単に取外せる。すなわち、このチャック装置1は、スリーブ3のチャック本体2に対する取付け取外しを簡単に行うことができる。よって、直径の異なるワークWを続けて加工する際に、スリーブ3の取替えを簡単に行うことができ、加工機MによるワークWの加工効率を高めることができる。
また、このチャック装置1は、チャック本体2の空孔部2aとスリーブ3のスリーブ片6,6にテーパー部2b,6b,6bを設けたことで、スリーブ3がチャック本体2に抜け止めされた状態とすると、スリーブ片6,6の保持溝6a,6aの間隔も狭められ、保持溝6a,6aにてワークWを強固かつ確実に挟持させることができる。また、このチャック装置1は、スリーブ3を二つのスリーブ片6,6にて構成したことで、スリーブ3のチャック本体2に対する抜け止めを解除すると、スリーブ片6,6を離間させることができるようになり、加工機MによるワークWの加工後でも簡単にワークWをスリーブ3から取外すことができる。すなわち、このチャック装置1は、カム軸4,4の操作にてスリーブ3をチャック本体2に対して抜け止めすると、同時にスリーブ3にてワークWを確実に挟持できるとともに、スリーブ3のチャック本体2に対する抜け止めを解除すると、同時にスリーブ3からワークWを簡単に取外せるようになるよう構成されている。
また、このチャック装置1は、スリーブ3を二つのスリーブ片6,6にて構成したことと、スリーブ3のチャック本体2への取付け取外しを簡単に行えるようにしたことで、第5図に示すように、肥大部を有するワークWであっても上記手順にて簡単かつ確実にチャック装置1に保持させることができる。すなわち、このチャック装置1にて加工機Mを、一つのワークWに複数の肥大部を成形させることが可能な加工機Mとすることができる。また、加工機Mに具備された一対の回転部Rにそれぞれ設けたスピンドルSの両方に当該チャック装置1を備えた場合には、例えば、二箇所に肥大部を有するワークWの肥大部間に新たに肥大部を成形できるようチャック装置1にワークWを保持させることもできる。
【0020】
なお、本実施例においては、スリーブ3を二つのスリーブ片6,6からなるように構成しているが、図示はしていないが、三つ以上のスリーブ片からなるようにスリーブを構成しても良い。しかしながら、スリーブのスリーブ片を三つ以上と数を増やしていくにしたがって、スリーブをチャック本体2から取外し、ワークWの肥大させたい部位をスリーブ片の保持溝にて挟持させる作業が煩雑なものになる。したがって、本実施例のスリーブ3を二つのスリーブ片6,6から構成する形態が最良と考えられる。
また、本実施例においては、スリーブ3のスリーブ片6,6の前後方向中間部から後方を略々矩形状とし、その中間部に溝部6c,6c,・・・を設けることで、カム軸4,4のカム片4a,4aと溝部6c,6c,・・・の接触面積を大きくし、スリーブ3をチャック本体2にしっかりと引き込んで抜け止めできるようにしている。さらに、スリーブ片6,6の中間部から後方を矩形状とするとともに、チャック本体2の空孔部2a内に矩形部2cを設けることで、スリーブ3のチャック本体2に対する回り止めができるようにしている。しかしながら、スリーブ片の溝部とカム軸のカム片との接触面積を十分に得ることができるくらいスリーブ片が大きな場合等においては、スリーブ片の中間部から後方の外周形状を多角形状としても何ら問題はなく、この場合は、チャック本体の空孔部内に多角形状の部位を設ければよい。すなわち、チャック本体の空孔部内は、スリーブをしっかりと嵌め合わせできる形状かつスリーブのチャック本体に対する回り止めをしっかりと行える形状とすれば良い。
さらに、本実施例においては、チャック本体2の空孔部2aの後部に段付部2dを設けて、加工機MのスピンドルSに嵌め合わせを行いやすくしている。すなわち、チャック本体2の段付部2dの形状はスピンドルSの形状に応じて変更すべきものであり、スピンドルSからの回転力がチャック装置にしっかりと伝達される形状であることが望ましい。
【実施例2】
【0021】
続いて、実施例2として、本発明にかかる別の形態のチャック装置について説明する。第6図はチャック装置を軸肥大加工機に取付けた様子を示す斜視図である。第7図はチャック装置の構成を示す説明図である。第8図はスリーブと締付手段の動きを示す説明図である。
【0022】
このチャック装置8は、加工機Mの回転部Rに設けられたスピンドルSに固定されるチャック本体9と、該チャック本体9に配設される固定スリーブ10と可動スリーブ11からなるスリーブ12と、該スリーブ12にスリーブ12内のワークWを挟持させるための締付手段13から構成されている。
【0023】
まず、チャック本体9は、第7図に示すように、前後方向前面から中間部まで達する後述するスリーブ12及び締付手段13が配設される穴部9aが設けられるとともに、該穴部9a後端面から後面まで貫通する空孔部9bが前後方向の軸心上に設けられた略々筒状の形状をしており、前部側面には前記穴部9aまで達する側穴部9cが設けられている。さらに、前記空孔部9b後部には加工機MのスピンドルSに嵌め合わされる段付部9dが設けられている。また、チャック本体9にはチャック装置8を組み立てた際、チャック本体9の前後方向の軸心を中心にチャック装置8の重量バランスをとるための穴部9e,9eが設けられている。
【0024】
スリーブ12は、第7図に示すように、固定スリーブ10と可動スリーブ11から構成される。固定スリーブ10は、略々筒部材を前後方向に半分に切断した形状であり、ワークWを挟持するための保持溝10aが前後方向に設けられている。また、可動スリーブ11は、略々筒部材を前後方向に半分に切断した形状の前記固定スリーブ10の保持溝10aと同径の保持溝14aが前後方向に設けられたスリーブ片14とアーム15からなり、前記スリーブ片14の保持溝14aが設けられていない側面に前記アーム15の一端が固着され、アーム15の他端には前後方向の軸心を有する軸部材16が固着されている。また、スリーブ片14のアーム15取付け面には溝部14bが設けられるとともに、該溝部14b下方のアーム15側面には略々鉤形状の鉤プレート17が設けられている。
このように構成された固定スリーブ10はネジ部材18,18にて前記チャック本体9の穴部9a後端面に止着されるとともに、可動スリーブ11は軸部材16が穴部9a後端面に設けられた空孔部9fにて軸承され、スリーブ12はチャック本体9に配設される。この際、可動スリーブ11はチャック本体9の穴部9a内で軸部材16を中心に回動可能に配設される。また、可動スリーブ11を固定スリーブ10と接触する方向へ回動させると、可動スリーブ11と固定スリーブ10の保持溝14a,10aにて一つの保持孔H2を形成できるように可動スリーブ11と固定スリーブ10は配設される。さらに、可動スリーブ11と固定スリーブ10の保持溝14a,10aで形成された保持孔H2の前後方向の軸心は前記チャック本体9の前後方向の軸心と一致するように可動スリーブ11と固定スリーブ10は配設される。
なお、可動スリーブ11と固定スリーブ10の保持溝14a,10aは、保持孔H2を形成した際、該保持孔H2の直径がワークWの直径と略々一致するよう設けられている。
【0025】
次に、締付手段13は、第7図に示すように、螺子軸19と雌螺子軸20からなる。螺子軸19は螺子部19aの一端部に軸部19bが設けられている。雌螺子軸20は軸部材20aの側面中間部に当該軸部材20aを貫通する雌螺子部20bが設けられている。
このように構成された雌螺子軸20はチャック本体9の穴部9aに設けられた空孔部9gに軸承されるとともに、螺子軸19はチャック本体9の側穴部9cから雌螺子軸20の雌螺子部20bに螺子部19aが螺合されて、締付手段13はチャック本体9に配設される。この締付手段13は、第8図の(a)図に示すように、螺子軸19を雌螺子軸20に締め付け、螺子軸19の軸部19bを前記可動スリーブ11の溝部14bに当接させて可動スリーブ11のスリーブ片14と固定スリーブ10が密着する方向に可動スリーブ11を回動させ、可動スリーブ11と固定スリーブ10の保持溝14a,10aにて一つの保持孔H2が形成された状態で可動スリーブ11の回動を不可として可動スリーブ11を固定させるものである。
【0026】
そして、このように構成されたチャック装置8は、第7図の(c)図に示すように、ネジ部材21,21,21にて加工機MのスピンドルSに固定されて使用される。
【0027】
続いて、第8図に基づいて、ワークWを保持させる手順に沿ってチャック装置8の使用方法を説明する。
まず、締付手段13の螺子軸19と雌螺子軸20との螺合を弛め、螺子軸19の軸部19bとスリーブ12の可動スリーブ11の溝部14bとの当接を解除させ、可動スリーブ11を回動可能な状態とする。
次に、締付手段13の雌螺子軸20を中心に螺子軸19を回動させると、螺子軸19の軸部19bと可動スリーブ11の鉤プレート17が当接し、可動スリーブ11が軸部材16を中心に回動され、可動スリーブ11のスリーブ片14と固定スリーブ10との間に空間部Qが形成される。
そして、その空間部Qを利用してワークWの肥大させたい部分が固定スリーブ10の前端部に位置するように保持溝10aに沿ってワークWを配設し、軸部材16を中心に可動スリーブ11を回動させて可動スリーブ11と固定スリーブ10の保持溝14a,10aでワークWを挟持させる。
然る後、締付手段13の螺子軸19を雌螺子軸20に締め付け、螺子軸19の軸部19bを可動スリーブ11の溝部14bに当接させて、可動スリーブ11をさらに固定スリーブ10と密着する方向へ回動させるようにし、可動スリーブ11と固定スリーブ10の保持溝14a,10aの間隔を狭め、保持溝14a,10aにてワークWを強固に挟持させる。これとともに、可動スリーブ11を回動不可として固定し、ワークWをチャック装置8に確実に保持させる。すなわち、このチャック装置8は、締付手段13の螺子軸19を締め付けることで、スリーブ12の可動スリーブ11の固定と、ワークWのスリーブ12による強固かつ確実な挟持が同時に行えるようにされている。また、このとき、正面視においてワークWはスリーブ12の保持溝10a,14aにて形成される保持孔H2に収まった状態となる。
また、加工機MによるワークWの加工終了後等、ワークWをチャック装置8から取外す際には上記手順を逆に行うことで、ワークWをチャック装置8から取外すことができる。
【0028】
このように、このチャック装置8は、締付手段13の螺子軸19の雌螺子軸20への螺合量を変化させ、スリーブ12の可動スリーブ11を回動可能状態とし、軸部材16を中心に可動スリーブ11を回動させることで、可動スリーブ11のスリーブ片14と固定スリーブ10の間に空間部Qを形成することができる。これによると、加工機MによるワークWの加工後でも簡単にワークWをスリーブ12から取外すことができる。さらに、肥大部を有するワークWであってもその肥大部をチャック装置8内部またはスピンドルS内部に位置させて当該ワークWをスリーブ12に配設することができ、上記手順にて簡単かつ確実に保持させることができる。また、このチャック装置8にて加工機Mを一つのワークWに複数の肥大部を成形させることが可能な加工機Mとすることができる。
また、加工機Mに具備された一対の回転部Rにそれぞれ設けたスピンドルSの両方に当該チャック装置8を具備させた場合には、例えば、二箇所に肥大部を有するワークWの肥大部間に新たに肥大部を成形できるようチャック装置8にワークWを保持させることもできる。
さらに、このチャック装置8は、スリーブ12を可動スリーブ11と固定スリーブ10から構成したことで、ワークWをスリーブ12に挟持させる際に、ワークWの肥大させたい部分を固定スリーブ10の前端部に位置合わせしやすく、スリーブ12にてワークWの所望の挟持位置を簡単に挟持させることができる。
すなわち、このチャック装置8は、チャック装置8の構成部材をチャック本体9から取外すことなく、ワークWをチャック装置8へ保持させる作業及びワークWをチャック装置8から取外す作業を簡単に行うことができる。
【0029】
なお、本実施例においては、スリーブ12を一つの固定スリーブ10と一つの可動スリーブ11からなるように構成しているが、図示はしていないが、スリーブを固定スリーブと複数の可動スリーブからなるように構成しても良い。例えば、スリーブの可動スリーブを二つとした場合は、本実施例のスリーブ12の固定スリーブ10と可動スリーブ11との間に形成される空間部Qに比べて、大きな空間部を形成できるようになり、より大きな肥大部を有するワークWを保持できるようになる。また、スリーブの可動スリーブを三つ以上とした場合には、形成できる空間部をより大きくすることができるが、ワークWをスリーブに保持させる際の作業が煩雑になる。したがって、本実施例のスリーブ12または上記可動スリーブを二つとしたスリーブの形態が最良と考えられる。
【実施例3】
【0030】
続いて、実施例3として、本発明にかかる別の形態のチャック装置について説明する。第9図はチャック装置を軸肥大加工機に取付けた様子を示す斜視図である。第10図はチャック装置の構成を示す説明図である。第11図はスリーブと締付手段の動きを示す説明図である。
【0031】
このチャック装置22は、加工機MのスピンドルSに固定されるチャック本体23と、該チャック本体23に配設される複数の可動スリーブ24,24,24からなるスリーブ25と、該スリーブ25にスリーブ25内のワークWを挟持させるための複数の締付手段26,26,26から構成されている。
【0032】
まず、チャック本体23は、第10図に示すように、前後方向前面から中間部まで達する後述するスリーブ25及び締付手段26,26,26が配設される穴部23aが設けられるとともに、該穴部23a後端面から後面まで貫通する空孔部23bが前後方向の軸心上に設けられた略々筒状の形状をしており、前部側面には前記穴部23aまで達する側穴部23c,23c,23cが設けられている。また、前記空孔部23b後部には加工機MのスピンドルSに嵌め合わされる段付部23dが設けられている。
【0033】
スリーブ25は、第10図に示すように、三組の可動スリーブ24,24,24と該可動スリーブ24,24,24を回動可能に前記チャック本体23に配設するための軸部材27,27,27からなり、三組の可動フレーム24,24,24と軸部材27,27,27はそれぞれ同一形状である。以下、一組の可動スリーブ24と軸部材27について説明する。この可動スリーブ24は、略々筒部材を前後方向に三分割した形状のワークWを挟持するための保持溝28aが前後方向に設けられたスリーブ片28とアーム29からなり、前記スリーブ片28の保持溝28aが設けられていない側面にアーム29の一端が固着されるとともに、アーム29の他端側には前後方向の空孔部29aが設けられている。さらに、前記アーム29の側面には穴部29bが設けられている。また、軸部材27は棒状の部材であり、その一端部には細径部27aが設けられている。
このように構成された軸部材27,27,27を可動スリーブ24,24,24の空孔部29a,29a,29aに挿通させるとともに、チャック本体23の穴部23a後端面に設けられている空孔部23e,23e,23eに軸承させることで、スリーブ25はチャック本体23に配設される。この際、三つの可動スリーブ24,24,24のスリーブ片28,28,28を互いに接触する方向へ軸部材27,27,27を中心に回動させると、三つの可動スリーブ24,24,24の保持溝28a,28a,28aは一つの保持孔H3を形成するとともに、その保持孔H3の前後方向の軸心がチャック本体23の前後方向の軸心と一致するように、三組の可動スリーブ24,24,24と軸部材27,27,27はチャック本体23に配設される。なお、可動スリーブ24,24,24の保持溝28a,28a,28aは、保持孔H3を形成した際、該保持孔H3の直径がワークWの直径と略々一致するように設けられている。
【0034】
次に、締付手段26,26,26は、第10図に示すように、螺子軸30,30,30と雌螺子軸31,31,31からなり、チャック本体23には三組の締付手段26,26,26が配設される。以下、一組の締付手段26について説明する。螺子軸30は螺子部30aの一端部に軸部30bが設けられている。また、雌螺子軸31は軸部材31aの両端部に細径部31b,31bが設けられ、側面中間部に当該軸部材31aを貫通する雌螺子部31cが設けられている。
このように構成された雌螺子軸31,31,31はチャック本体23の穴部23a後端面に設けられた空孔部23f,23f,23fに一端部に設けた細径部31b,31b,31bが軸承されるとともに、螺子軸30,30,30はチャック本体23の側穴部23c,23c,23cから雌螺子軸31,31,31の雌螺子部31c,31c,31cに螺子部30a,30a,30aが螺合され、締付手段26,26,26は配設される。この締付手段26,26,26は、第11図の(a)図に示すように、螺子軸30,30,30を雌螺子軸31,31,31に締め付け、螺子軸30,30,30の軸部30b,30b,30bを前記可動スリーブ24,24,24の穴部29b,29b,29bに当接させて三つの可動スリーブ24,24,24のスリーブ片28,28,28が互いに密着する方向へ可動スリーブ24,24,24を回動させ、可動スリーブ24,24,24の保持溝28a,28a,28aにて一つの保持孔H3が形成された状態で可動スリーブ24,24,24の回動を不可として可動スリーブ24,24,24を固定させるものである。
【0035】
そして、第10図の(b)図に示すように、スリーブ25の軸部材27,27,27の細径部27a,27a,27a及び締付手段26,26,26の雌螺子軸31,31,31の細径部31b,31b,31bが軸承される空孔部32a,32a,32a,32b,32b,32bが設けられるとともに、スリーブ25の可動スリーブ24,24,24が回動する際に可動スリーブ24,24,24の回動の妨げとならないようにするための空孔部32c,32c,32cが設けられた蓋板32がネジ部材33,33,・・・にてチャック本体に取付けられてチャック装置22は構成されている。
なお、このチャック装置22は、第10図の(c)図に示すように、一度蓋板32を取外してチャック本体23をネジ部材34,34,34にて加工機MのスピンドルSに固定して後に、再び蓋板32をチャック本体23に取付けて使用される。
【0036】
続いて、第11図に基づいて、ワークWを保持させる手順に沿ってチャック装置22の使用方法を説明する。
まず、締付手段26,26,26の螺子軸30,30,30と雌螺子軸31,31,31との螺合を弛め、螺子軸30,30,30の軸部30b,30b,30bとスリーブ25の可動スリーブ24,24,24の穴部29b,29b,29bとの当接を解除させ、可動スリーブ24,24,24を回動可能な状態とする。
次に、締付手段26,26,26の雌螺子軸31,31,31を中心に螺子軸30,30,30を回動させると、螺子軸30,30,30の軸部30b,30b,30bと可動スリーブ24,24,24の穴部29b,29b,29bが当接し、可動スリーブ24,24,24が軸部材27,27,27を中心に回動され、可動スリーブ24,24,24のスリーブ片28,28,28間に空間部Qが形成される。
そして、ワークWの肥大させたい部分が可動スリーブ24,24,24のスリーブ片28,28,28前端部に位置するようにチャック本体23の前後方向の軸心上にワークWを位置させ、軸部材27,27,27を中心に可動スリーブ24,24,24を回動させて可動スリーブ24,24,24の保持溝28a,28a,28aにてワークWを挟持させる。
然る後、締付手段26,26,26の螺子軸30,30,30を雌螺子軸31,31,31に締め付けて、螺子軸30,30,30の軸部30b,30b,30bを可動スリーブ24,24,24の穴部29b,29b,29bに当接させ、可動スリーブ24,24,24をさらに互いのスリーブ片28,28,28が密着する方向へ回動させるようにして、可動スリーブ24,24,24の保持溝28a,28a,28aの間隔を狭め、保持溝28a,28a,28aにてワークWを強固に挟持させる。これとともに、可動スリーブ24,24,24を回動不可として固定し、ワークWをチャック装置22に確実に保持させる。すなわち、このチャック装置22は、締付手段26,26,26の螺子軸30,30,30を締め付けることで、スリーブ25の可動スリーブ24,24,24の固定とワークWのスリーブ25による強固かつ確実な挟持が同時に行えるようにされている。また、このとき、正面視においてワークWはスリーブ25の保持溝28a,28a,28aにて形成される保持孔H3に収まった状態となる。
また、加工機MによるワークWの加工終了後等、ワークWをチャック装置22から取外す際には上記手順を逆に行うことで、ワークWをチャック装置22から取外すことができる。
【0037】
このように、このチャック装置22は、締付手段26,26,26の螺子軸30,30,30の雌螺子軸31,31,31への螺合量を変化させ、スリーブ25の可動スリーブ24,24,24を回動可能状態とし、軸部材27,27,27を中心に可動スリーブ24,24,24を回動させることで、可動スリーブ24,24,24のスリーブ片28,28,28間に空間部Qを形成することができる。これによると、加工機MによるワークWの加工後でも簡単にワークWをスリーブ25から取外すことができる。さらに、実施例2のチャック装置8と同様に、肥大部を有するワークWであってもその肥大部をチャック装置22内部またはスピンドルS内部に位置させて当該ワークWをスリーブ25に配設することができ、上記手順にて簡単かつ確実に保持させることができる。また、このチャック装置22にて加工機Mを、一つのワークWに複数の肥大部を成形させることが可能な加工機Mとすることができる。
また、加工機Mに具備された一対の回転部Rにそれぞれ設けたスピンドルSの両方に当該チャック装置22を備えた場合には、例えば、二箇所に肥大部を有するワークWの肥大部間に新たに肥大部を成形できるようチャック装置22にワークWを保持させることもできる。
すなわち、このチャック装置22は、チャック装置22の構成部材をチャック本体23から取外すことなく、ワークWをチャック装置22へ保持させる作業及びワークWをチャック装置22から取外す作業を簡単に行うことができる。
また、このチャック装置22は、スリーブ25を三組の可動フレーム24,24,24と軸部材27,27,27にて構成したことで、可動スリーブ24,24,24のスリーブ片28,28,28間に形成できる空間部Qの大きさを実施例2のスリーブ12にて形成できる空間部Qより大きくすることが可能となり、実施例2のチャック装置8に比べ大きな肥大部を持つワークWを保持させることができる。
【0038】
なお、本実施例においては、スリーブ25を三つの可動スリーブ24,24,24からなるように構成しているが、図示はしていないが、スリーブを二つの可動スリーブまたは四つ以上の可動スリーブからなるように構成しても良い。例えば、スリーブを二つの可動スリーブから構成した場合は、本実施例のスリーブ25の可動スリーブ24,24,24間に形成できる空間部Qと比べて、形成できる空間部が小さなものとなるが、ワークWを保持させる際の作業をより簡単に行えるようになる。また、スリーブを四つ以上の可動スリーブから構成した場合には、本実施例のスリーブ25の可動スリーブ24,24,24間に形成できる空間部Qと比べて、形成できる空間部を大きくすることができるが、ワークWを保持させる作業が煩雑なものになる。したがって、本実施例のスリーブ25または可動スリーブを二つとした形態のスリーブが最良と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】チャック装置を軸肥大加工機に取付けた様子を示す斜視図。(実施例1)
【図2】チャック装置の構成を示す説明図。(実施例1) (a)チャック装置の構成を示す斜視図。 (b)スリーブの非固定状態を示す部分断面斜視図。 (c)スリーブの固定状態を示す部分断面斜視図。 (d)チャック装置の軸肥大加工機への取付け方を示す斜視図。
【図3】チャック装置を示す側断面図。(実施例1) (a)スリーブのチャック本体への取付け取外しが行える状態を示す側断面図。 (b)カム軸をスリーブにかける途中の状態を示す側断面図。 (c)スリーブをチャック本体に固定した状態を示す側断面図。
【図4】ワークを保持させる手順を示す説明図。(実施例1) (a)チャック本体からスリーブを取外す手順を示す部分断面斜視図。 (b)ワークをスリーブに挟持してチャック本体に嵌め込む手順を示す部分断面 斜視図。 (c)ワークを保持させた様子を示す部分断面斜視図。
【図5】肥大部を有するワークを保持させる手順を示す説明図。(実施例1) (a)ワークをスリーブに挟持してチャック本体に嵌め込む手順を示す部分断面 斜視図。 (b)ワークを保持させた様子を示す部分断面斜視図。
【図6】チャック装置を軸肥大加工機に取付けた様子を示す斜視図。(実施例2)
【図7】チャック装置の構成を示す説明図。(実施例2) (a)チャック装置の構成を示す説明図。 (b)チャック装置の構成を示す部分断面斜視図。 (c)チャック装置の軸肥大加工機への取付け方を示す斜視図。
【図8】スリーブと締付手段の動きを示す説明図。(実施例2) (a)ワークを保持する位置状態を示す部分断面正面図。 (b)ワークを保持させる位置状態を示す部分断面正面図。
【図9】チャック装置を軸肥大加工機に取付けた様子を示す斜視図。(実施例3)
【図10】チャック装置の構成を示す説明図。(実施例3) (a)チャック装置の構成を示す斜視図。 (b)チャック装置の構成を示す部分断面斜視図。 (c)チャック装置の軸肥大加工機への取付け方を示す斜視図。
【図11】スリーブと締付手段の動きを示す説明図。(実施例3) (a)ワークを保持する位置状態を示す断面正面図。 (b)ワークを保持させる位置状態を示す断面正面図。
【符号の説明】
【0040】
1 チャック装置
2 チャック本体
2a 空孔部
2b テーパー部
3 スリーブ
4 カム軸
4a カム片
6 スリーブ片
6a 保持溝
6b テーパー部
6c 溝部
8 チャック装置
9 チャック本体
9a 穴部
9b 空孔部
10 固定スリーブ
11 可動スリーブ
12 スリーブ
13 締付手段
14a 保持溝
22 チャック装置
23 チャック本体
23a 穴部
23b 空孔部
24 可動スリーブ
25 スリーブ
26 締付手段
28a 保持溝
H1 保持孔
H2 保持孔
H3 保持孔
M 軸肥大加工機
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸肥大加工機における金属軸材または金属管材であるワークを保持するチャック装置において、略々筒状のチャック本体の空孔部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた複数のスリーブ片からなるスリーブをスリーブ片の保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で嵌め合わせ、前記チャック本体に回転可能に設けたカム軸を回動させてカム軸のカム片をスリーブ片に設けた溝部にかけることで、チャック本体の空孔部の軸心方向にスリーブがスライドするようにするとともに、チャック本体に対してスリーブが抜け止めされた状態となるように構成し、さらに、チャック本体の空孔部及びスリーブのスリーブ片にテーパー部を設け、前記カム軸の操作により、チャック本体のテーパー部に沿ってスリーブがスライドし、ワークを前記保持溝にて確実に挟持するように構成したことを特徴とするチャック装置。
【請求項2】
軸肥大加工機における金属軸材または金属管材であるワークを保持するチャック装置において、略々筒状のチャック本体の空孔部と連続して設けられた穴部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた固定スリーブと少なくとも一つの可動スリーブからなるスリーブを配設するとともに、前記穴部内にて回動可能な前記可動スリーブを前記固定スリーブと可動スリーブの保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で締付可能な少なくとも一つの締付手段を設け、該締付手段にて前記スリーブ内のワークを前記保持溝に確実に挟持させるようにしたことを特徴とするチャック装置。
【請求項3】
軸肥大加工機における金属軸材または金属管材であるワークを保持するチャック装置において、略々筒状のチャック本体の空孔部と連続して設けられた穴部に、ワークを挟持するための保持溝が設けられた複数の可動スリーブからなるスリーブを配設するとともに、前記穴部内にて回動可能な前記可動スリーブを前記保持溝にて一つの保持穴を形成した状態で締付可能な複数の締付手段を設け、該締付手段にて前記スリーブ内のワークを前記保持溝に確実に挟持させるようにしたことを特徴とするチャック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−75877(P2006−75877A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263373(P2004−263373)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(302020540)有限会社井浦忠研究所 (1)
【Fターム(参考)】