説明

チャック装置

【課題】仮載置した部品の傾斜が大きくなっても、部品の傾斜に倣って傾き、部品を確実にチャックすることができるチャック装置を提供する。
【解決手段】チャック本体3に対して、直動駆動手段2の直動中心軸に、案内手段5を介して揺動変位可能に設けてなるチャック部材搭載部6と、このチャック部材搭載部6に搭載したチャック部8,8とにより、前記チャックすべき部品Pをチャックする際に、ワーク接触部9を前記部品Pに予め接触させて、前記部品Pの載置状態を前記チャック部材搭載部6に伝達し、前記チャック部8,8によるチャック位置を補正するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮置きされた部品をチャックして、搬送や組付けを行うチャック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のチャック装置では、ベースとなるチャック本体と、部品をチャック保持するチャック部と、チャック部の移動を案内する案内手段と、該案内手段を移動させる駆動部とを備えている。
例えば、
【0003】
【特許文献1】特開平6−262475号公報
【0004】
この文献においては、端部を有するワークを二点で挟持し、ワークの両端に生じた高さ方向のばらつき、および横または径方向のばらつきを矯正し、挟持位置から他の位置へ搬送する方法および装置に関するもので、ここでのチャックは、3つの爪を備え、鳥足のごとくワークを三点支持により挟持可能に開閉する機構を有しており、一対のチャックでワークを水平に挟持するとしている。
また前記装置では、高さ調節機構がチャックベースの天板の下側に下向きに取り付けられており、この高さ調節機構は上下移動可能なシリンダの下端にチャックの基部が固定され、ワークの挟持位置を垂直方向に任意の位置に調節制御可能としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記装置では、この場合、部品の微小な傾斜にはチャックが対応して傾斜できるが、傾斜が大きくなると、案内手段は傾斜に対応した案内ができず、チャックの傾斜が不安定になりチャックできないという課題があった。
本発明はこのような課題を改善するために提案されたものであって、部品の傾斜が大きくなっても、部品の傾斜に倣って傾き、部品を確実にチャックすることができるチャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明における請求項1では、搬送手段を構成する直動駆動手段2に設けたチャック本体3に対して、前記直動駆動手段2の中心軸Oに、案内手段5を介して揺動変位可能に設けてなるチャック部材搭載部6と、このチャック部材搭載部6に搭載したチャック部8,8とにより、前記チャックすべき部品Pをチャックする際に、ワーク接触部9を前記部品Pに予め接触させて、前記部品Pの載置状態を前記チャック部材搭載部6に伝達し、前記チャック部8,8によるチャック位置を補正するようにしたので、仮載置した部品Pの傾斜が大きくなっても、部品Pの傾斜に倣ってチャック部材搭載部6を傾斜させ、前記チャック部8,8によるチャック位置を補正して前記部品Pを確実にチャックすることができる。
【0007】
また本発明における請求項2では、前記案内手段5における所定曲率の球面状の案内面5fの中心を直動駆動手段2、および基軸4の中心軸Oが貫くように位置決めしたことにより、チャックすべき部品Pの中心に、チャック部8,8を支えるチャック部材搭載部6を合わせることが容易となり、前記部品Pの姿勢に対応させることができる。
【0008】
また本発明における請求項3では、前記チャック部材搭載部6を、案内手段5における案内面5fに摺動部6aを介して摺動させて、前記チャック部材搭載部6を容易に傾斜させることができる。
【0009】
また本発明における請求項4では、回動防止部材10により、チャック部材搭載部6の、前記直動駆動手段(2)における中心軸(O)周りの回動ぶれ動作を阻止するようにしたので、前記チャック部材搭載部6が、案内手段5における案内面5fに沿って回動して、チャック部8,8による部品Pのチャックに支障を来たすことはない。
【0010】
さらに本発明における請求項5では、チャック部材搭載部6を、姿勢矯正手段11,11により、当初の姿勢に自動的に復元させることができるので、チャック部8,8により部品Pのチャックした後、そのまま次の工程へ搬送することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、これまでは、チャック装置自体を、チャックすべき部品の配置状態に応じて傾斜調整することが困難であったのを、チャック装置における、チャック部を搭載するチャック部材搭載部を、案内手段の案内面に沿って傾斜できるようにしたことにより、部品を確実にチャックできるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかるチャック装置につき、一つの実施の態様を示し、添付の図面に基づいて説明する。
図1にチャックすべき部品Pに上方から近づけてチャックするチャック装置1を示す。
このチャック装置1は、搬送手段を構成する直動駆動手段2に取り付けて、この直動駆動手段2を動作させることで、前記チャック装置1を、前記部品Pに近づけてチャックし、別工程、例えば所定の組立ラインに前記部品Pを搬送し、被組立部材の所定箇所に前記部品Pを載置して組み付ける組立工程に供するようにしている。
【0013】
すなわち、前記チャック装置1は、搬送手段を構成する直動駆動手段2に設けたチャック本体3を有する。
このチャック本体3は、前記直動駆動手段2の中心軸O方向、図中、鉛直下方に延在する基軸4末端部に取着した案内手段5を有し、これら基軸4および案内手段5を中心として取り囲むように配置したチャック部材搭載部6に、一対の駆動部7、7を介して、部品Pをチャック保持するチャック部8,8を搭載している。
さらに、前記チャック本体3には、前記案内手段5の真下、所定間隔下方の位置に、部品Pの姿勢を前記チャック本体3に伝達するワーク接触部9を設けている。
【0014】
前記案内手段5は、前記搬送手段を構成する直動駆動手段2の中心軸O方向、鉛直下方に延在する基軸4末端部に軸止めしており、図中、上面側が、所定曲率の球面状の案内面5fとしている。この場合、前記案内面5fの中心を、前記直動駆動手段2、基軸4の中心軸Oが貫くように位置決めしている。
そしてこの案内面5fには、前記チャック部8,8および駆動部7、7を搭載したチャック部材搭載部6が倣い傾斜可能に当接している。
【0015】
前記チャック部材搭載部6は、前記案内手段5における案内面5fに、倣い摺動すると共に、前記チャック部材搭載部6を支持する摺動部6aを突設している。この場合、摺動部6aは、案内手段5を取り付けた基軸4を中心として、取り囲むように位置すると共に、球面状の案内面5f上に乗った状態で当接している。
【0016】
また、前記チャック部8を開閉駆動する駆動部7は、ここでは説明しないが、例えば、エアシリンダを用いることができる。
【0017】
そして、前記チャック部8,8は、先端部側を互いに対向する形状としている。
すなわち前記チャック部8,8は、前記駆動部7を駆動することで、互いに開閉駆動し、部品Pをチャックしたり、チャック解放する構成である。
【0018】
さらに、前記ワーク接触部9は、前記チャック部8,8における駆動部7,7に連結している。すなわち、前記チャック部8,8により前記部品Pをチャックする際、先ず、ワーク接触部9を部品Pに接触させて、部品Pの状態に応じて前記ワーク接触部9を変位させ、この変位を、チャック部材搭載部6に伝達するようにしている。その際、前記チャック部材搭載部6は摺動部6aを介して、前記チャック本体3中心の基軸4末端部の案内手段5における案内面5fに沿って、倣い傾斜する構成である。
【0019】
また、前記チャック本体3には、回動防止部材10を連結して、前記チャック部材搭載部6の、前記直動駆動手段2における中心軸O周りの回動ぶれ動作を阻止するようにしている。
【0020】
そして、以上のような構成のチャック装置1は、前記チャック部材搭載部6が、常時、当初の姿勢に復元するように付勢する、姿勢矯正手段11,11を備えている。
この場合、前記姿勢矯正手段11は、ばね部材Sを介装して構成している。
【0021】
本発明にかかるチャック装置1は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用を説明する。
先ず、仮置き部の所定の位置に載置されたチャックすべき部品Pに対し、チャック装置1を取り付けた搬送手段を作動させて直動駆動手段2を下降させると、この直動駆動手段2の動作によって前記チャック装置1を前記部品Pに近づけることができる。この場合、前記チャック装置1は、直動駆動手段2、およびチャック本体3中心の基軸4末端部の案内手段5を貫く中心軸Oを、前記部品Pの中心に合わせるようにして、前記搬送手段を動作させるようにする。
【0022】
前記チャック装置1により前記部品Pをチャックする際、先ず、ワーク接触部9を部品Pに接触させていく。すると、前記ワーク接触部9は、前記部品Pに当たり、ワーク接触部9が部品Pに当たることによって、前記部品Pの載置状態を前記ワーク接触部9により、拾うことができる。
【0023】
もし、前記部品Pが、所定の姿勢で載置されている場合は、ワーク接触部9は、何ら変位することなく、そのまま前記部品Pに接触した状態となる。次いで、チャック部8,8の駆動部7,7を駆動することで、互いに開閉駆動し、部品Pを所定の位置で問題なくチャックして、別工程への供給を行うことができる。
【0024】
一方、前記部品Pが、傾いた状態で載置されていると、前記ワーク接触部9は、前記部品Pに倣って変位する。そして、この変位が、チャック本体3におけるチャック部材搭載部6に伝達される(図3、図4参照)。
その際、前記チャック部材搭載部6は、前記チャック本体3中心の基軸4末端部の案内手段5における、表面球面状の案内面5fに、摺動部6aを介して、倣い傾斜可能に当接しているので、前記チャック部材搭載部6は案内面5fに沿って、倣い傾斜する。
また、前記チャック部材搭載部6は、倣い傾斜する際、前記摺動部6aを介して案内手段5における案内面5fに乗った状態にあることから、前記案内手段5の案内面5fを貫く軸回りに回転することがある。
しかしながら、前記チャック本体3には、回動防止部材10を連結して、前記チャック部材搭載部6の、前記直動駆動手段2における中心軸O周りの回動ぶれ動作を阻止するようにしているので、前記チャック部材搭載部6が倣い傾動しても、回動ぶれ動作して、チャック部8,8が部品Pをチャックする際の妨げとなるようなことはない。
【0025】
前記チャック部材搭載部6が傾動すると、前記チャック部材搭載部6に搭載したチャック部8,8が、それに応じて傾動して、チャックすべき部品Pにずれることなく近づけることができる。
そして、チャック部8,8の駆動部7,7を駆動することで、チャック部8,8を開閉駆動して、前記部品Pを確実にチャックすることができる。
【0026】
前記部品Pをチャックしたら、搬送手段における直動駆動手段2を作動して、チャック装置1を持ち上げ移動し、次の工程に前記部品Pを搬送することができ、一連のチャック工程は完了する。
なお、前記直動駆動手段2を作動して、チャック装置1を持ち上げ移動する際、前記チャック部8,8を搭載するチャック部材搭載部6は、姿勢矯正手段11,11により、当初の姿勢に復帰させることができ、何ら、復帰作動させることもなく、そのまま、次の工程へと搬送することができる。
【0027】
以上のように、本発明では、案内手段5の案内面5fが球面形状であり、しかも、前記球面の中心をチャックする部品Pを中心としたことにより、部品Pの傾斜が大きくなっても、部品Pの傾斜に倣って傾き、部品Pを確実にチャックできるチャック装置1を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかるチャック装置の一つの実施の形態を示す、構成説明図である。
【図2】図1に示すチャック装置の、A方向から見た、一部省略した、側面説明図である。
【図3】本発明にかかるチャック装置の作用を説明するための図1に基づく、要部側面図である。
【図4】本発明にかかるチャック装置の作用を説明するための図2に基づく、要部側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 チャック装置
2 直動駆動手段
3 チャック本体
4 基軸
5 案内手段
5f 案内面
6 チャック部材搭載部
6a 摺動部
7 駆動部
8 チャック部
9 ワーク接触部
10 回動防止部材
11 姿勢矯正手段
P 部品
O 中心軸
S ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段に取り付けて、仮載置された部品(P)をチャックするチャック装置(1)において、前記搬送手段を構成する直動駆動手段(2)に設けたチャック本体(3)と、
このチャック本体(3)に対して、前記直動駆動手段(2)の中心軸(O)に、案内手段(5)を介して揺動変位可能に設けてなるチャック部材搭載部(6)と、
このチャック部材搭載部(6)に搭載したチャック部(8,8)と、
前記チャックすべき部品(P)に、予め接触させて前記部品(P)の載置状態を前記チャック部材搭載部(6)に伝達して、前記チャック部(8,8)によるチャック位置を補正するワーク接触部(9)と、
を備えたことを特徴とするチャック装置。
【請求項2】
前記案内手段(5)は、前記搬送手段を構成する直動駆動手段(2)の中心軸(O)方向に延在する基軸(4)末端部に装着して、所定曲率の球面状の案内面(5f)とし、
この案内面(5f)の中心を、前記直動駆動手段(2)、基軸(4)の中心軸(O)が貫くように位置決めしてなることを特徴とする請求項1記載のチャック装置。
【請求項3】
前記チャック部材搭載部(6)は、前記案内手段(5)における案内面(5f)に、倣い摺動すると共に、前記チャック部材搭載部(6)を支持する摺動部(6a)を突設したことを特徴とする請求項2記載のチャック装置。
【請求項4】
前記チャック本体(3)に回動防止部材(10)を連結して、前記チャック部材搭載部(6)の、前記直動駆動手段(2)における中心軸(O)周りの回動ぶれ動作を阻止する構成としたことを特徴とする請求項1記載のチャック装置。
【請求項5】
前記チャック本体(3)とチャック部材搭載部(6)との間に、このチャック部材搭載部(6)を、常時、当初の姿勢に復元する、姿勢矯正手段(11,11)を備えたことを特徴とする請求項1記載のチャック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−36721(P2008−36721A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210100(P2006−210100)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】