説明

チャック装置

【課題】 装置全体の構造をシンプルにして低コスト化を図るようにする。
【解決手段】 チャック装置1は、先端側でワークWを把持可能なピンセット20と、ピンセット20の基端側に当接するアーム部30と、ピンセット20を弾性変形により開閉可能にするためにアーム部30をピンセット20に対して位置変位させる直動型ステッピングモータ40と、ワーク把持直前にピンセット20の閉速度を減速する、ピンセット20の閉状態の閉距離を調節する、又はワーク開放時のピンセット20の開速度を加速する等の機能を有したコントローラ50とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワーク等を機械的に把持するチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チャック装置は工作機械や部品搬送装置等に広く使用されている。同装置の駆動源とし
て油圧を用いた場合は装置自体が大掛かりになるため、電動モータによりワーク把持部を
駆動しているのが一般的である。その一例として特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−345019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例による場合、モータとカム機構等を用いてワーク把持部材を
開閉させることから、装置全体が複雑となり、組立作業も煩雑となり、低コスト化を図る
ことが困難である。また、高速駆動を行なったり開閉速度をコントロールすることが必要
である場合、カム機構等が複雑である以上、耐久性等を考慮して設計すると、一層割高に
なり易いという問題が指摘されている。
【0005】
本発明は上記した背景の下で創作されたものであって、その目的とするところは、装置
全体の構造をシンプルにすることが可能なチャック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るチャック装置は、先端側でワークを把持可能なピンセット部と、ピンセット部の基端側に当接するアーム部と、ピンセット部を弾性変形により開閉可能にするためにアーム部をピンセット部に対して位置変位させるために基軸方向に移動させる駆動部と、ピンセット部を弾性変形により開閉可能にするために駆動部の駆動を制御する制御部とを備えている。
【0007】
上記発明による場合、駆動部の駆動が制御部により制御され、これに伴ってアーム部がピンセット部に対して位置変位されると、アーム部の当接によりピンセット部が弾性変形して開閉する。装置全体の構造がシンプルであり、部品点数が少ないことから組立作業も楽になる。よって、従来に比べて大幅な低コスト化を図ることが可能になる。
【0008】
ピンセット部の例については、その後端側に設けられた支点部と、支点部に連なった二股部材であり且つ先端側が基軸方向に対して外寄り斜め方向に向けて設けられた一対の基端側部と、一対の基端側部の先端に連なり且つ先端側が基軸方向に対して内寄り斜め方向に向けて各々設けられた一対の先端側部と、一対の先端側部の先端に連なり且つ互いが対向するように各々設けられた一対の爪部とを有した構成のものがある。アーム部の例については、駆動部の出力側に連結された本体部と、本体部の先端側に基軸方向を中心線として平行に各々配設された一対のアームと、一対のアームの先端側に設けられ且つピンセット部の一対の基端側部に各々当接する一対のローラ部とを有した構成のものがある。
【0009】
同装置については、ピンセット部に作用する圧力を検出する感圧センサを更に備えると良い。この場合の制御部については、感圧センサの検出結果に基づいてピンセット部の少なくとも閉距離及び/又は閉速度を制御する機能を有した構成のものを用いるようにする。例えば、ワーク把持時には、感圧センサの検出結果に基づいてピンセット部の閉距離を求め、当該閉距離がワーク把持直前の所定値を示したときはピンセット部の閉速度を減速させるようにする。また、ワーク開放時には、感圧センサの検出結果に基づいてピンセット部の開距離を求め、当該開距離がワーク開放直後の所定値を示したときはピンセット部の開速度を加速させるようにする。
【0010】
上記発明による場合、ピンセット部の開閉速度を適切に制御することにより、ワークを確実に把持することができる他、ワークを把持する際の衝撃が緩和されたり、ワークを開放する際にその一部が飛散したり位置ズレを無くすことが可能となる。さらに、ワーク把持時の感圧センサによりワークの寸法を測定することも可能になる。これらの点で装置の高速駆動化及び高性能化を図ることになる。
【0011】
同装置については、ピンセット部の少なくとも閉距離及び/又は閉速度を設定入力可能な設定部を更に備えると良い。この場合の制御部については、ピンセット部の閉距離及び/又は閉速度を前記設定部の設定入力の通りに制御する機能を有した構成のものを用いる。
【0012】
上記発明による場合、ワーク把持時のピンセット部の閉距離及び/又は閉速度がワークのサイズ、材質又は形状等に応じた適切なものとなり、ワークに把持力等が適切に調節される。また、ワークに触るから掴むに至るまでの速度を適切に調節し、タクトタイムを早くしたり、ワークを把持する際の衝撃を減少させることが可能となる。これらの点で高性能化を図ることが可能になる。
【0013】
制御部については、ワークを搬送する際にピンセット部の把持力が大きくなるように駆動部の駆動を制御する機能を有した構成のものを用いると良い。
【0014】
上記発明による場合、ワーク搬送の際に把持力が大きくなることから、ワークが搬送中にピンセット部から脱落することがなく、この点で高速駆動化及び高性能化を一層図ることが可能になる。
【0015】
感圧センサの例については、ピンセット部の間に挟まれた弾性体部と、ピンセット部の開閉時に作用する力を検出する検出部とを有した構成のものがある。
【0016】
上記発明による場合、感圧センサが非常にシンプルな構成であることから、装置の低コスト化を図る上でメリットがある。
【0017】
駆動部の例については、直動型ステッピングモータがある。
【0018】
上記発明による場合、ステッピングモータの静止保持力が大きいことから同モータの駆
動を停止させるだけでピンセット部によりワークの把持が維持される。しかも特別な運動変換機構が不要であることから、装置全体の構造がシンプルとなり、一層の低コスト化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るチャック装置の分解斜視図である。
【図2】同装置のピンセットを示す斜視図であって、(a)は開状態を示す図、(b)は閉状態を示す図である。
【図3】同装置の感圧センサの分解斜視図である。
【図4】同装置の直動型ステッピングモータ及びアーム部の動作を説明するための模式的側面図であって、(a)は開状態を示す図、(b)は閉状態を示す図である。
【図5】同装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】同装置のワークを把持/開放する場合のピンセットの開閉距離の時間的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るチャック装置を図1乃至図6を参照して説明する。なお、特許請求の範囲に記載された発明特定事項と同装置の構成要素との間で対応関係が不明なものについては後記する符号の説明の欄において併せて示すものとする。
【0021】
ここに例として挙げるチャック装置1については、ワークW(図4参照)を別の場所に搬送する図外のピックアンドプレース装置の可動部に連結されているもので、ワークWを把持/開放する機能を有している。図4(a)はワーク開放状態、図4(b)はワーク把持状態を各々示している。図1中10はハウジング、20はピンセット、30はアーム部、40は直動型ステッピングモータであり、図5中50はコントローラ、51はドライバ、52は設定部、71は原点センサ、72は感圧センサである。これらの各部によりチャック装置1が構成されている。なお、コントローラ50及びドライバ51に接続された電源については図示省略されている。
【0022】
ハウジング10については、図1に示すように金属製の角形筒状体であり、その内部にアーム部30及びピンセット20が設けられている。ハウジング10の上側開放面には、直動型ステッピングモータ40を取り付けるためのモータハウジング11が設けられている。モータハウジング11には原点センサ71が設けられている。ハウジング10の内側面にはピンセット20を取り付けるための筒状部101が設けられている。ハウジング10の正面側開放面にはカバー12が取り付けられている。ハウジング10の下側開放面からピンセット20の先端部分が露出している。
【0023】
なお、原点センサ71は、ワーク開放を検出するセンサであって、本実施形態ではマイクロスイッチを用い、アーム部30の一部(後述するLアングル部34の上面)が接触又は近接したか否かを検出し、この検出信号をコントローラ50に出力している。アーム部30が図4(b)から図4(a)に示す位置にまで移動すると、原点センサ71の検出信号がアクティブとなるようになっている。但し、図4中原点センサ71が図示省略されている。
【0024】
ピンセット20については、先端側でワークWを把持可能な金属製の弾性板状部材であり、ハウジング10内に中空支持の形で固着されている。具体的には、図2に示すとおり後端側に基軸方向Aに対して直角の方向に向けて設けられた筒状のピンセットパイプ21と、ピンセットパイプ21に連なった二股部材であり且つ先端側が基軸方向Aに対して外寄り斜め方向に向けて設けられた基端側部22a、22bと、基端側部22a、22bの先端に連なり且つ先端側が基軸方向Aに対して内寄り斜め方向に向けて各々設けられた先端側部23a、23bと、先端側部23a、23bの先端に連なり且つ互いが対向するように各々設けられた爪部24a、24bとを有している。ピンセットパイプ21には図1に示されたねじ102が挿入される。ねじ102によりピンセット20がハウジング10の筒状部101に固定される。また、ピンセット20には感圧センサ72が取り付けられている。
【0025】
アーム部30については、先端側がピンセット20の基端側に当接可能な金属製の断面逆凹状体であり、ピンセット20の基端側部22a、22bの表面に案内されて図4(a)に示す上位置から図4(b)に示す下位置にかけて基軸方向Aに沿って移動可能になっている。具体的には、図1に示すように直動型ステッピングモータ40のネジシャフト41の先端部に連結された本体部31と、本体部31に基軸方向Aに対して平行に延びて各々設けられたアーム32、33と、アーム32の外面に設けられたLアングル部34と、アーム32、33の先端側に設けられ且つピンセット20の基端側部22a、22bに各々当接するローラ部35a、35bとを有した構成となっている。
【0026】
アーム部30が図4(b)に示す下位置から図4(a)に示す上位置にかけて移動しているときは、図2(a)に示すようにローラ35a、35bがピンセット20の基端側部22a、22bの表面を図示矢印方向に移動する。これに伴ってピンセット20の弾性力によりピンセット20が開状態となる。一方、アーム部30が図4(a)に示す上位置から図4(b)に示す下位置にかけて移動すると、図2(b)に示すようにローラ35a、35bがピンセット20の基端側部22a、22bの表面を図示矢印方向に移動する。これに伴ってアーム部30の押圧力によりピンセット20の弾性力に抗してピンセット20が閉状態となる。
【0027】
感圧センサ72については、ピンセット20の基端側部22a、22bに作用する圧力を検出し、この検出信号をコントローラ50に出力している。このような感圧センサ72の検出結果に基づいてコントローラ50によりピンセット20の爪部24a、24bの間の開閉距離が測定されるだけでなく、ピンセット20に作用する圧力の変化のパターンを通じてワークWが把持/開放されたか否かが測定可能になっている。
【0028】
感圧センサ72は、具体的には、図3に示すように略三角形状に形成されたゴム等であり且つピンセット20の基端側部22a、22bの間に挟んで取り付けられた弾性材721と、弾性材721に形成されたスリット部7211に固着され且つワーク把持又は開放の際にピンセット20に作用する圧力を検出する検出部722とを有している。検出部722については、角筒状に巻いて形成された炭紙7221と、炭紙7221内に挿入された銅板である導電体7222,7223と、導電体7222,7223の間に挟まれた絶縁紙である絶縁体7224と、導電体7222,7223に電気接続された信号出力用の電線7225、7226とを有し、弾性材721を通じて作用する圧力を抵抗値に変換して出力するようになっている。
【0029】
直動型ステッピングモータ40については、図1に示すようにピンセット20を弾性変形により開閉可能するためのリニアステップモータであって、ステッピングモータと同モータのシャフトの回転運動を直線運動に変換する機構とを有し、同機構の出力側であるネジシャフト41を基軸方向Aにステップ単位で移動可能になっている。ピンセット20を開閉駆動する駆動源としてステッピングモータを使用したのは主として静止保持力が大きいからであり、直動型のものを使用したのは主として機構上の簡単化のためである。
【0030】
設定部52については、図5に示すようにコントローラ50に外付けされたデータ入力用のスイッチ類であって、ワーク把持の際におけるピンセット20の閉距離D3、D1、D0及び閉速度V1、V2の各データが、ワーク開放の際におけるピンセット20の開速度D0、D2、D3及び開速度V3、V4の各データが各々設定入力可能になっている。
【0031】
図6中の実線はワーク把持開始からワーク把持終了に至るまでのピンセット20の閉距離の時間的変化を示すグラフであり、併せて同グラフの傾きから閉速度が示されている。ワーク把持開始時t1、ワーク把持直前t2、ワーク把持t3においては、ピンセット20の閉距離がD3、D1、D0にされている。ワーク把持終了t4にて直動型ステッピングモータ40の駆動が停止される。期間I(t1≦t<t2)においてはピンセット20の閉速度がV1(直線状に減少)、期間II(t2≦t<t3)においてはピンセット20の閉速度がV2(曲線状に緩やかに減少)にされている。
【0032】
図6中の一点破線はワーク開放開始からワーク開放終了に至るまでのピンセット20の開距離の時間的変化を示すグラフであり、併せて同グラフの傾きから開速度が示されている。ワーク開放開始時t5、ワーク開放直後t6においては、ピンセット20の開距離がD0、D2にされている。ワーク開放終了t7にて直動型ステッピングモータ40の駆動が停止される。期間III(t5≦t<t6)においてはピンセット20の開速度がV3(曲線状に緩やかに増加)、期間IV(t6≦t<t7)においてはピンセット20の開速度がV4(直線状に増加)である。
【0033】
なお、図6に示す閉速度又は開速度のパターンは折れ線近似式等により表され、同計算式の係数や定数等のデータが設定部52を通じて設定入力されるようになっている。
【0034】
コントローラ50については、ワークWを搬送するために上記ピックアンドプレース装置の可動部を駆動させる図外の搬送用ステッピングモータに加えて、ワークWを把持するために直動型ステッピングモータ40の駆動を制御する制御装置である。即ち、原点センサ71及び感圧センサ72等の検出信号、設定部52の設定データ等が入力され、予め設定されたシーケンスに従って搬送用ステッピングモータ及び直動型ステッピングモータ40を駆動させるためのパルス信号を生成し、これにより所定位置に配置されたワークWを把持して別の場所に搬送させるようになっている。
【0035】
コントローラ50は、直動型ステッピングモータ40の駆動を制御するに当たり、上記したように感圧センサ72の検出結果に応じてピンセット20の開閉距離を求め、ワーク把持命令の際においては、ピンセット20の閉距離及び閉速度を設定部52の設定入力の通り(図6中実線で示す)に制御する一方、ワーク開放命令の際においては、ピンセット20の開距離及び開速度を設定部52の設定入力の通り(図6中一点破線で示す)に制御する機能を有している。
【0036】
コントローラ50には、感圧センサ72により検出されたピンセット20に作用する圧力の大きさとピンセット20の開閉距離の大きさとの関係を示すデータテーブルが予め用意され、同データテーブルを参照する方法で感圧センサ72の検出信号をピンセット20の開閉距離に変換するようになっている。さらに、ワーク把持時にピンセット20に作用する圧力の変化のパターンを示すデータテーブルも予め用意され、感圧センサ72の検出信号の変化と当該データテーブルとを対比することによりワークWを把持したか否かを測定するようになっている。上記シーケンスのステップを逐次処理する過程においてワーク把持命令、ワーク搬送命令、ワーク開放命令が出されたときのコントローラ50の処理は以下の通りである。
【0037】
ワーク把持命令時には、直動型ステッピングモータ40を正転駆動させる。即ち、図4(a)に示すようにアーム部30を下方に移動させ、ピンセット20を閉距離がD3からD1まで一定速度(閉速度V1)で閉じる。そして、ピンセット20の閉距離がワーク把持直前のD1を示したときはピンセット20の閉速度を減速させる(閉速度V2)。その後、ピンセット20を閉距離がD0となり、感圧センサ72に基づいてワークWの把持が検出されると、直動型ステッピングモータ40の正転駆動を停止させる。これはピンセット20を閉距離がD0であるにもかかわらず、ワークWの把持が検出されないときについても同様である。ワーク把持時の感圧センサ72を通じてワークWの寸法が測定されることから、コントローラ50から必要に応じて外部出力可能になっている。なお、減速開始のタイミング及び減速値はワーク把持の際のワークWの表面の部分飛散等の程度に応じて適宜設定すれば良い。
【0038】
ワーク搬送命令時には、直動型ステッピングモータ40を若干正転駆動させる。即ち、アーム部30を図4(b)に示すワーク把持時に比べて若干下方向に移動させ、ピンセット20の把持力が大きくなるようにする。
【0039】
ワーク開放命令時には、直動型ステッピングモータ40を逆転駆動させる。即ち、アーム部30を上方に移動させ、ピンセット20を閉距離がD0からD2に至るまで所定速度(開速度V3)で開く。そして、ピンセット20の閉距離がワーク把持直前のD2を示したときはピンセット20の開速度を加速させる(開速度V4)。その後、感圧センサ72に基づいてワークWの開放が検出されると、直動型ステッピングモータ40の逆転駆動を停止させる。これは、原点センサ71の検出信号がアクティブになったときも同様である。なお、加速値及び加速停止のタイミングは、ワーク開放の際のワークWの位置ズレ等に応じて適宜設定すれば良い。
【0040】
コントローラ50の出力段に接続されたドライバ51は、コントローラ50から出力さ
れたパルス信号を励磁信号に変換して方向信号とともに直動型ステッピングモータ40に出力するようになっている。
【0041】
以下、上記のように構成されたチャック装置1の動作を説明する。
【0042】
まず、ワーク把持命令が出されると、直動型ステッピングモータ40が正転駆動する。すると、図4(a)に示されたアーム部30が図中下方向に位置変位し、これに伴ってピンセット20の先端側が閉まる方向に力が作用し、ピンセット20が弾性変形する。その後、図4(b)に示されたようにピンセット20の爪部24a、24bがワークWに接触し、感圧センサ72によりワークWの把持が検出されると、直動型ステッピングモータ40の駆動が停止する。これでワークWがピンセット20により把持される。直動型ステッピングモータ40の駆動が停止されると、その停止保持力によりピンセット20の把持力が一定に維持される。
【0043】
その後、ワーク搬送命令が出されると、直動型ステッピングモータ40が若干正転駆動し、ピンセット20の把持力が若干増加する。この状態で搬送用ステッピングモータが駆動し、ワークWが所定のパターンで搬送される。そして、ワークWが搬送され、ワーク開放命令が出されると、直動型ステッピングモータ40が逆転駆動する。すると、図4(b)に示された状態からアーム部30が図中上方向に位置変位し、これに伴って図4(a)に示されているようにピンセット20の弾性変形が元の状態に戻る。感圧センサ72に基づいてワークWの開放が検出されると、直動型ステッピングモータ40の駆動が停止する。これでワークWがピンセット20から開放される。
【0044】
なお、図6に示すワーク把持時/開放時のピンセット20の開閉速度や開閉距離等については設定部52を通じて設定可能である。ワークWのサイズや材質等に応じて適宜設定すれば良い。
【0045】
上記したように構成されたチャック装置1による場合、アーム部30をピンセット20に対して位置変位させてピンセット20を弾性変形させ、これに伴ってピンセット20の先端側を開閉させ、ワークWの把持/開放が可能になっているので、装置全体の構造がシンプルであり、部品点数が非常に少ない。組立作業も楽であることから、大幅な低コスト化を図ることが可能になる。また、ピンセット20を開閉させる際の開閉速度が制御されているので、ワークWを把持する際の衝撃が緩和され、ワークWの一部が飛散したりすることがなく、ワークWを開放する際の位置ズレもなくなる。特に、ワークWに触れるから掴むに至るまでの閉速度に緩急を付ける事により、タクトタイムを早くしたり、ワークWを把持する際の衝撃を大きく減少させることが可能となる。さらに、ワークWを把持出来なかった場合でも、直動型ステッピングモータ40の駆動が感圧センサ72又は原点センサ71により停止するようになっているので、ピンセット20や直動型ステッピングモータ40に余計な負担が掛かることがない。加えて、ワークWの搬送時にピンセット20の把持力が若干大きくされることから、ワークWが搬送中にピンセット20から脱落することがなくなる。よって、装置の高速駆動化及び高性能化を図ることも可能になる。
【0046】
なお、本発明に係るチャック装置はピックアンドプレース装置だけの適用に止まらず、
ロボットハンド等にも同様に適用可能である。ピンセット部については、その弾性変形に
より先端側でワークを把持可能である限り、形状が問われず、略V字状であっても良い。
アーム部については、その位置変位によりピンセット部の先端側が開閉可能である限り、
形状等が問われず、ピンセット部の基端側に接離する形態であっても良い。駆動部につい
ては、アーム部をピンセット部に対して位置変位する機能を有する限り、その種類が問わ
れず、一般的なステッピングモータやモータ等と運動変換機構とを組み合わせた機構や直
線駆動が可能なシリンダ等を用いても良く、装置本体とは別に配置される形態であっても
かまわない。
【符号の説明】
【0047】
1 チャック装置
10 ハウジング
20 ピンセット(ピンセット部)
21 ピンセットパイプ(支点部)
22a,22b 基端側部
23a,23b 先端側部
24a,24b 爪部
30 アーム部
31 本体部
32,33 アーム
35a,35b ローラ部
40 直動型ステッピングモータ(駆動部)
50 コントローラ(制御部)
71 原点センサ
72 感圧センサ
721 弾性材(弾性部材)
722 検出部
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側でワークを把持可能なピンセット部と、ピンセット部の基端側に当接するアーム
部と、アーム部をピンセット部に対して位置変位させるために基軸方向に移動させる駆動部と、ピンセット部を弾性変形により開閉可能にするために駆動部の駆動を制御する制御部とを備えていることを特徴とするチャック装置。
【請求項2】
請求項1記載のチャック装置において、前記ピンセット部は、その後端側に設けられた支点部と、支点部に連なった二股部材であり且つ先端側が基軸方向に対して外寄り斜め方向に向けて設けられた一対の基端側部と、一対の基端側部の先端に連なり且つ先端側が基軸方向に対して内寄り斜め方向に向けて各々設けられた一対の先端側部と、一対の先端側部の先端に連なり且つ互いが対向するように各々設けられた一対の爪部とを有した構成となっていることを特徴とするチャック装置。
【請求項3】
請求項2記載のチャック装置において、前記アーム部は、前記駆動部の出力側に連結された本体部と、本体部に基軸方向に対して平行に延びて各々設けられた一対のアームと、一対のアームの先端側に設けられ且つ前記ピンセット部の一対の基端側部に各々当接する一対のローラ部とを有した構成となっていることを特徴とするチャック装置。
【請求項4】
請求項1記載のチャック装置において、ピンセット部に作用する圧力を検出する感圧センサを更に備え、前記制御部は、感圧センサの検出結果に基づいてピンセット部の少なくとも閉距離及び/又は閉速度を制御する機能を有した構成となっていることを特徴とするチャック装置。
【請求項5】
請求項4記載のチャック装置において、前記制御部は、前記感圧センサの検出結果に基づいて前記ピンセット部の閉距離を求め、当該閉距離がワーク把持直前の所定値を示したときはピンセット部の閉速度を減速させる機能を有した構成となっていることを特徴とするチャック装置。
【請求項6】
請求項4記載のチャック装置において、前記制御部は、前記感圧センサの検出結果に基づいて前記ピンセット部の開距離を求め、当該開距離がワーク開放直後の所定値を示したときは前記ピンセット部の開速度を加速させる機能を有した構成となっていることを特徴とするチャック装置。
【請求項7】
請求項4記載のチャック装置において、前記ピンセット部の少なくとも閉距離及び/又は閉速度を設定入力可能な設定部を更に備え、前記制御部は、前記ピンセット部の閉距離及び/又は閉速度を前記設定部の設定入力の通りに制御する機能を有した構成となっていることを特徴とするチャック装置。
【請求項8】
請求項1記載のチャック装置において、前記制御部は、前記ワークを搬送する際に前記ピンセット部の把持力が大きくなるように前記駆動部の駆動を制御する機能を有した構成となっていることを特徴とするチャック装置。
【請求項9】
請求項4記載のチャック装置において、前記感圧センサは、前記ピンセット部の間に挟まれた弾性体部と、ピンセット部の開閉時に作用する力を検出する検出部とを有した構成となっていることを特徴とするチャック装置。
【請求項10】
請求項1記載のチャック装置において、前記駆動部として直動型ステッピングモータが使用されていることを特徴とするチャック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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