説明

チャック装置

【課題】シリコンインゴットの非研磨部位が非平滑形状であっても、シリコンインゴットを精度良く支持し、シリコンインゴットの研磨精度を向上させる。
【解決手段】ワーク支持機構のモータ軸52aに固定され、モータ軸52aの回転駆動により回転し、ワーク研磨機構に研磨部位を対向させる第1椀状部61と、第1椀状部61のモータ軸52a側とは反対側に一体回転可能に設けられ、第1端部WK1と対向して当該第1端部WK1の傾斜形状に倣って可動する第2椀状部62とを備える。第1端部WK1が傾斜形状であっても、その傾斜形状に倣って第2椀状部62が可動し、第1端部WK1を位置ズレすること無く安定して押さえることができる。よって、角柱状シリコンインゴットWKを精度良く支持でき、ひいては研磨精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に用いるシリコンインゴットの研磨部位を研磨する研磨装置に設けられ、シリコンインゴットの対向する非研磨部位を押さえてシリコンインゴットを支持するチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電に用いられる太陽電池モジュールは、略正方形に形成された複数枚の太陽電池用シリコンウェハ(以下、単にウェハと言う)を備えている。太陽電池モジュールは、複数枚のウェハを互いに接近させて複数段/複数列で並べることにより形成されている。そして、太陽電池モジュールの発電効率をより高めるためには、ウェハの高品質化が必須の条件であり、例えばウェハの成形精度を向上させることでより多くのウェハをより接近させて並べることが可能となる。これにより、太陽電池モジュールの単位面積当たりの発電効率を向上させることができる。
【0003】
ウェハの成形精度を向上させる技術としては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1には、円柱状の単結晶シリコンインゴットを角柱状に切削したものや、鋳造成形により形成した多結晶シリコンインゴットを角柱状に切り出したものを加工対象とし、各シリコンインゴットの対向する側面および角部を研磨して、微小な凹凸を平滑化する技術が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されたシリコンブロックの研削研磨機は、ワークとしてのシリコンブロック(シリコンインゴット)の長手方向の前後(非研磨部位)を機械的にチャッキングする一対のチャッキング部(チャック装置)を備えている。そして、各チャッキング部によりシリコンブロックの長手方向の前後を支持して、シリコンブロックを宙に浮かせたような状態とし、シリコンブロックの長手方向の前後を除く部分、つまりシリコンブロックの対向する側面および角部(研磨部位)を、研削研磨機に備えられた研削/研磨装置によって研削/研磨するようにしている。ここで、シリコンブロックの研磨部位の切り替えは、ワーク保持装置(ワーク支持機構)の旋回用モータを回転駆動し、チャッキング部を45°単位で回転させることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−233794号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された技術によれば、シリコンインゴットの対向する非研磨部位、つまりチャック装置により押さえ付けられる部位が、シリコンインゴットの製造上の都合により凹凸形状や傾斜形状(非平滑状態)となった場合には、チャック装置がシリコンインゴットを精度良く支持できないという問題を生じ得る。具体的には、シリコンインゴットの非研磨部位に複数の凹凸がある場合(凹凸形状の場合)には、チャック装置によるシリコンインゴットの支持状態が不安定となり、研磨加工中にシリコンインゴットの位置ズレ等が起こり得る。また、シリコンインゴットの非研磨部位が傾斜している場合(傾斜形状の場合)には、シリコンインゴットを水平に保持するのが困難となる。これにより、シリコンインゴットの研磨精度が低下して、ひいてはウェハの成形精度が低下することになる。
【0007】
本発明の目的は、シリコンインゴットの非研磨部位が非平滑形状であっても、シリコンインゴットを精度良く支持でき、シリコンインゴットの研磨精度を向上させることができるチャック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のチャック装置は、太陽電池に用いるシリコンインゴットの研磨部位を研磨する研磨装置に設けられ、前記シリコンインゴットの対向する非研磨部位を押さえて前記シリコンインゴットを支持するチャック装置であって、前記研磨装置に設けられるワーク支持機構の回転軸に固定され、前記回転軸の回転駆動により回転し、前記研磨装置に設けられるワーク研磨機構に前記研磨部位を対向させる本体部と、前記本体部の前記回転軸側とは反対側に一体回転可能に設けられ、前記非研磨部位と対向して当該非研磨部位の非平滑形状に倣って可動する可動部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のチャック装置は、前記本体部および前記可動部をそれぞれ椀状に形成して第1椀状部および第2椀状部とし、前記各椀状部の開口側を対向させて組み付け、前記各椀状部間に、前記各椀状部を揺動自在とする軸受部材と、前記各椀状部間で回転力を伝達する回転力伝達部材とを設けることを特徴とする。
【0010】
本発明のチャック装置は、前記本体部に前記回転軸の軸方向に沿って延在する複数のシリンダ室を設け、前記可動部を前記各シリンダ室にそれぞれ出入りする複数のピストン部材とし、前記シリンダ室と前記ピストン部材との間に、前記ピストン部材を前記シリンダ室から突出する方向に押圧する弾性部材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチャック装置によれば、研磨装置に設けられるワーク支持機構の回転軸に固定され、回転軸の回転駆動により回転し、研磨装置に設けられるワーク研磨機構に研磨部位を対向させる本体部と、本体部の回転軸側とは反対側に一体回転可能に設けられ、非研磨部位と対向して当該非研磨部位の非平滑形状に倣って可動する可動部とを備える。したがって、シリコンインゴットの非研磨部位が非平滑形状であっても、その非平滑状態に倣って可動部が可動し、シリコンインゴットの非研磨部位を位置ズレすること無く安定して押さえることができる。よって、シリコンインゴットを精度良く支持して、シリコンインゴットの研磨精度を向上させることができる。
【0012】
本発明のチャック装置によれば、本体部および可動部をそれぞれ椀状に形成して第1椀状部および第2椀状部とし、各椀状部の開口側を対向させて組み付け、各椀状部間に、各椀状部を揺動自在とする軸受部材と、各椀状部間で回転力を伝達する回転力伝達部材とを設ける。これにより、シリコンインゴットの非研磨部位の傾斜形状に倣って第2椀状部が揺動し、第1椀状部の回転力が第2椀状部に伝達される。したがって、シリコンインゴットを精度良く支持することができる。
【0013】
本発明のチャック装置によれば、本体部に回転軸の軸方向に沿って延在する複数のシリンダ室を設け、可動部を各シリンダ室にそれぞれ出入りする複数のピストン部材とし、シリンダ室とピストン部材との間に、ピストン部材をシリンダ室から突出する方向に押圧する弾性部材を設ける。これにより、シリコンインゴットの非研磨部位の凹凸形状に倣って各ピストン部材が各シリンダ室から出入りし、各ピストン部材は弾性部材の弾性力によりシリコンインゴットの非研磨部位に押さえ付けられる。したがって、シリコンインゴットを精度良く支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は単結晶シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図、(b)は多結晶シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図である。
【図2】本発明に係るチャック装置を備えた研磨装置を上方から見た概略図である。
【図3】図2のA−A線に沿う部分断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う部分断面図である。
【図5】固定側チャック(第1実施の形態)の外観を示す斜視図である。
【図6】図5の固定側チャックを第2椀状部側から見た正面図である。
【図7】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図8】移動側チャック(第2実施の形態)の外観を示す斜視図である。
【図9】図8の移動側チャックをピストン部材側から見た正面図である。
【図10】図9のD−D線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るチャック装置の説明に先立ち、加工対象となる太陽電池用シリコンインゴット(ワーク)の加工手順について、図面を用いて詳細に説明する。図1(a)は単結晶シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図、(b)は多結晶シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図を表している。
【0016】
図1(a)に示すように、単結晶シリコンインゴットは、シリコン原料を坩堝の中で溶かし、回転させながら徐々に引き上げることで、1つの大きな結晶からなる略円柱形状に形成されている。一方、図1(b)に示すように、多結晶シリコンインゴットは、例えばシリコン原料を鋳造成形することにより、多数の小さな結晶からなる略直方体形状に形成されている。
【0017】
単結晶シリコンインゴットは、研磨装置等で加工できるように、予め所定の長さに切断されている。切断された単結晶シリコンインゴットの長手方向両端側(図中網掛部分)は、切断状況(加工精度)によっては傾斜形状になることがある。一方、多結晶シリコンインゴットは、直方体形状の鋳型を用いてブロック状に形成され、研磨装置等で加工できるように、図中破線に沿って角柱加工(切断)されている。切断された多結晶シリコンインゴットの長手方向一端側(図中網掛部分)は、鋳型の壁面に接触しない部分となるため、複数の凹凸を有する凹凸形状となっている。
【0018】
単結晶シリコンインゴットおよび多結晶シリコンインゴットは、それぞれ角柱加工(切断)を経て断面が略正方形の角柱状に形成され、さらに対向する側面および角部を研磨加工することで形状が整えられる。その後、研磨加工を経た角柱状シリコンインゴットは、ワイヤソーを用いてスライス加工され、厚さ1mm程度の複数枚のウェハとなる。
【0019】
本発明に係るチャック装置は、角柱状シリコンインゴットの対向する側面および角部を研磨して形状を整えるための研磨装置に設けられ、以下、研磨装置およびチャック装置の構造について図面を用いて説明する。
【0020】
図2は本発明に係るチャック装置を備えた研磨装置を上方から見た概略図を、図3は図2のA−A線に沿う部分断面図を、図4は図2のB−B線に沿う部分断面図をそれぞれ表している。
【0021】
研磨装置10は、工場等の敷地内における床面FLに設置される基台11を備え、基台11は、上方から見ると床面FLの水平方向に延在するよう略長方形形状に形成されている。基台11には、複数の調節脚12が設けられ、床面FLに凹凸がある場合に各調節脚12の長さをそれぞれ調節することで、基台11を床面FLにがたつくことなく設置できるようになっている。
【0022】
基台11には複数の支柱13の一端側が固定され、各支柱13の他端側は基台11の上方に延びている。各支柱13の他端側には、床面FLの水平方向に延在する一対のワーク懸垂梁14が設けられ、各ワーク懸垂梁14は、基台11の長手方向に沿って平行に延びている。
【0023】
基台11の長手方向一側(図2中左側)には、ワーク供給テーブル20が設けられている。ワーク供給テーブル20は、ワークとしての角柱状シリコンインゴットWK(単結晶または多結晶)を、基台11に供給するようになっている。ワーク供給テーブル20は、図2および図3に示すように、基台11の短手方向に移動可能なテーブル21と、角柱状シリコンインゴットWKを掴むワーククランプ22とを備えている。
【0024】
テーブル21は、基台11の短手方向に延び、かつ基台11に固定されたスライドレール23に摺動自在に設けられている。これにより、図示しない駆動機構、例えばボールネジ機構等によりテーブル21を移動させることで、テーブル21にセットした角柱状シリコンインゴットWKを、ワーク支持機構40に供給することができる。
【0025】
ワーククランプ22は、テーブル21上に設けられ、図示しないアクチュエータを駆動することにより、角柱状シリコンインゴットWKをその短手方向から挟持するようになっている。ワーククランプ22には、図3に示すように、角柱状シリコンインゴットWKを挟持する機能に加え、角柱状シリコンインゴットWKの中心軸Cおよび幅寸法Wを割り出す第1割り出し機構22aを備え、角柱状シリコンインゴットWKの中心軸Cおよび幅寸法Wを割り出すことにより、後に行われるワーク支持機構40による角柱状シリコンインゴットWKの回転制御(研磨部位の切り替え制御)を精度良く行えるようにしている。
【0026】
ここで、図3に示す符号24は、基台11の短手方向に沿うワーク供給テーブル20とワーク支持機構40との間に設けられ、角柱状シリコンインゴットWKの長さ寸法L(図2参照)を割り出す第2割り出し機構を示している。第2割り出し機構24は、角柱状シリコンインゴットWKの長さ寸法Lを割り出して、ワーク支持機構40の制御量、つまり角柱状シリコンインゴットWKの移動量等を決定するために用いられる。これにより、長さ寸法の異なる角柱状シリコンインゴットWKに対応して、効率良く研磨加工できるようになっている。
【0027】
基台11のワーク供給テーブル20よりも長手方向他側(図2中右側)には、基台11の短手方向外側に対向して突出するよう一対の研磨機構基台11aが一体に設けられ、各研磨機構基台11a上にはワーク研磨機構30が設置されている。
【0028】
ワーク研磨機構30は、角柱状シリコンインゴットWKの対向する側面および角部(研磨部位)を研磨加工するようになっている。ワーク研磨機構30は、基台11の長手方向一側に設置される一対の粗研磨ユニット31と、基台11の長手方向他側に設置される一対の仕上げ研磨ユニット32とを備えており、各研磨ユニット31,32は、基台11を短手方向から挟むようにして対向配置されている。
【0029】
粗研磨ユニット31は、基台11側で回転する円盤状の粗砥石31aと、粗砥石31aを所定の回転数で回転駆動する駆動モータ31bとを備えている。粗研磨ユニット31は、図4に示すように、研磨機構基台11aに対して移動テーブル33を介して設けられ、粗研磨ユニット31は、移動テーブル33の動作により角柱状シリコンインゴットWKに対して近接または離間するようになっている。これにより、回転する粗砥石31aの角柱状シリコンインゴットWKに対する位置を微調整できるようになっている。
【0030】
仕上げ研磨ユニット32は、基台11側で回転する円盤状の仕上げ砥石32aと、仕上げ砥石32aを所定の回転数で回転駆動する駆動モータ32bとを備えている。仕上げ研磨ユニット32は、粗研磨ユニット31と同様に、移動テーブル33を介して研磨機構基台11aに設けられ、回転する仕上げ砥石32aの角柱状シリコンインゴットWKに対する位置を微調整できるようになっている。なお、図4においては、ワーク支持機構40とワーク研磨機構30との位置関係を明確にするために、図3と同様にワーク支持機構40を示している。
【0031】
対向する各粗砥石31aおよび各仕上げ砥石32aの間には、角柱状シリコンインゴットWKが通過するワーク通過間隙SPが形成され、各研磨ユニット31,32は、ワーク通過間隙SPを通過する角柱状シリコンインゴットWKに対して研磨加工を行うようになっている。
【0032】
図3に示すように、各ワーク懸垂梁14には、基台11の長手方向に延在するレール41がそれぞれ取り付けられており、各レール41には、ワーク支持機構40が移動自在に設けられている。ワーク支持機構40は、角柱状シリコンインゴットWKを懸垂支持し、ワーク供給テーブル20とワーク研磨機構30との間で角柱状シリコンインゴットWKを移動させるようになっている。
【0033】
ワーク支持機構40は、各レール41に懸垂状態で支持される本体部42と、角柱状シリコンインゴットWKを支持するチャック部43とを備えている。本体部42には、基台11の短手方向両側に突出する一対のフランジ部42aが一体に設けられ、各フランジ部42aには、各レール41に摺動自在に設けられるガイド44が固定されている。ガイド44は、本体部42を各レール41に沿ってがたつくこと無くスムーズに移動させるものである。
【0034】
本体部42の基台11側とは反対側(図中上側)には、ワーク支持機構40を各レール41に沿わせて移動させるための移動用モータ45が設けられている。移動用モータ45は、モータケース45aを備え、モータケース45a内には、所定の回転数/回転方向で回転するモータ軸45bと、モータ軸45bにより回転駆動されるナット45cとが回転自在に設けられている。モータ軸45bとナット45cとの間には、金属チェーン等よりなる動力伝達部材45dが掛け渡されており、動力伝達部材45dを介してモータ軸45bの回転力がナット45cに伝達される。
【0035】
ここで、各ワーク懸垂梁14のうちの一方のワーク懸垂梁14には、基台11の長手方向に沿って延在し、一方のレール41に近接するネジ軸45eが固定され、ナット45cはこのネジ軸45eにネジ結合されている。これにより、移動用モータ45に駆動電流を供給することで、モータ軸45bおよび動力伝達部材45dを介してナット45cが回転駆動され、ワーク支持機構40は各レール41に沿って基台11の長手方向に移動する。
【0036】
本体部42の基台11側には、角柱状シリコンインゴットWKを長手方向両側から支持するチャック部43が設けられている。チャック部43は、図2に示すように、固定側チャック機構50と移動側チャック機構70とを備えている。
【0037】
固定側チャック機構50は、本体部42の基台11側に一体に設けられた固定側チャック本体51と、固定側チャック本体51内に設けられた固定側チャック用モータ52と、固定側チャック用モータ52のモータ軸(回転軸)52aに固定され、角柱状シリコンインゴットWKの長手方向一側を支持する固定側チャック(チャック装置)60とを有している。
【0038】
移動側チャック機構70は、本体部42の基台11側で本体部42の長手方向に沿って移動自在に設けられた移動側チャック本体71と、移動側チャック本体71内に設けられ、固定側チャック用モータ52と同期回転する移動側チャック用モータ72と、移動側チャック用モータ72のモータ軸(回転軸)72aに固定され、角柱状シリコンインゴットWKの長手方向他側を支持する移動側チャック80と、移動側チャック本体71を固定側チャック本体51に向けて移動させるチャック本体移動用モータ73とを有している。
【0039】
次に、固定側チャック60の構造について、図5〜図7を用いて詳細に説明する。図5は固定側チャック(第1実施の形態)の外観を示す斜視図を、図6は図5の固定側チャックを第2椀状部側から見た正面図を、図7は図6のC−C線に沿う断面図をそれぞれ表している。
【0040】
固定側チャック60は、本体部としての第1椀状部61と、可動部としての第2椀状部62とを備えている。第1椀状部61および第2椀状部62は、何れも椀状に形成されており、それぞれ円盤状の底部61a,62aおよび円筒状の側壁部61b,62bを有している。
【0041】
第1椀状部61の底部61aにおける中心部分には、嵌合突起61cが一体に設けられ、当該嵌合突起61cは、モータ軸52aの軸心部分に設けられた嵌合凹部52bに嵌合している。このように嵌合突起61cを嵌合凹部52bに嵌合させることで、第1椀状部61およびモータ軸52aは、互いに軸心が一致した状態となっている。
【0042】
底部61aに設けた嵌合突起61cの外周側には、底部61aの周方向に沿って等間隔(120°間隔)で並ぶよう3つの貫通孔61d(図示では1つのみ示す)が設けられている。貫通孔61dには、第1椀状部61をモータ軸52aに固定するための固定ネジS1が貫通している。また、モータ軸52aには、貫通孔61dに対応して3つのネジ孔52c(図示では1つのみ示す)が設けられ、ネジ孔52cには固定ネジS1がネジ結合されている。
【0043】
底部61aに設けた貫通孔61dの外周側には、一対の第1ネジ孔61eと一対のプラグ孔61f(図示ではそれぞれ1つのみ示す)とが設けられている。第1ネジ孔61eには、回転力伝達部材63の一側(図中下側)を第1椀状部61に固定するための固定ネジS2がネジ結合され、プラグ孔61fには、固定側チャック60の内部に埃等が進入するのを防止するプラグP1がネジ結合されている。プラグ孔61fは、回転力伝達部材63の他側(図中上側)を第2椀状部62に固定するための固定ネジS3を、底部62aに設けた第2ネジ孔62eにネジ結合する際にネジ回し等の治具(図示せず)を挿通させるための治具挿通孔となっている。
【0044】
底部61aの嵌合突起61c側とは反対側(図中右側)には、嵌合突起61c側に向けて窪んだ軸受装着凹部61gが形成されており、軸受装着凹部61gには、球軸受(軸受部材)64を形成する第1球受け64aが装着されている。
【0045】
側壁部61bの内周部には、当該側壁部61bの周方向に沿って延在する環状溝61hが形成されており、当該環状溝61hには、ゴム等の弾性材料よりなるOリング61iが装着されている。Oリング61iの内周部は、第2椀状部62における側壁部62bの外周部に摺接しており、これによりOリング61iは、第1椀状部61の側壁部61bと第2椀状部62の側壁部62bとの間を密封して、固定側チャック60の内部に埃等が進入するのを防止している。
【0046】
第2椀状部62は、第1椀状部61のモータ軸52a側とは反対側に、回転力伝達部材63を介して一体回転可能に設けられている。第2椀状部62は、角柱状シリコンインゴットWKの第1端部(非研磨部位)WK1と対向しており、第1端部WK1の傾斜形状(非平滑形状)に倣って、第1椀状部61に対して可動するようになっている。
【0047】
第2椀状部62の底部62aにおける中心部分には、角柱状シリコンインゴットWK側に向けて窪んだ軸受装着凹部62cが形成されており、軸受装着凹部62cには、球軸受64を形成する第2球受け64bが装着されている。
【0048】
底部62aに設けた軸受装着凹部62cの外周側には、底部62aの周方向に沿って等間隔(120°間隔)で並ぶよう3つのプラグ孔62d(図示では1つのみ示す)が設けられている。プラグ孔62dは、第1椀状部61をモータ軸52aに固定するための固定ネジS1に対応して設けられ、プラグ孔62dには、固定側チャック60の内部に埃等が進入するのを防止するプラグP2がネジ結合されている。ここで、プラグ孔62dは、固定ネジS1をネジ孔52cにネジ結合する際に、ネジ回し等の治具(図示せず)を挿通させるための治具挿通孔となっている。
【0049】
底部62aに設けたプラグ孔62dの外周側には、一対の第2ネジ孔62eと一対の凹部62f(図示ではそれぞれ1つのみ示す)とが設けられている。第2ネジ孔62eには、回転力伝達部材63の他側を第2椀状部62に固定するための固定ネジS3がネジ結合され、凹部62fには、第2椀状部62が第1椀状部61に対して揺動した際(図中矢印SW参照)に、固定ネジS2の頭部が入り込むようになっている。
【0050】
ここで、第1椀状部61に設けたプラグP1と固定ネジS3の頭部との間には所定の間隙が設けられ、これにより第2椀状部62が第1椀状部61に対して矢印SW方向とは逆方向に揺動するのを許容している。そして、固定ネジS2の頭部は凹部62fに、固定ネジS3の頭部はプラグ孔61fに、それぞれ互いに接触すること無く出入り自在となっており、これにより、回転力伝達部材63を介して第1椀状部61の回転力が第2椀状部62に伝達された場合であっても、各椀状部61,62は互いにスムーズに揺動することができる。
【0051】
底部62aの軸受装着凹部62c側とは反対側(図中右側)には、底部62aの周方向に沿って等間隔(120°間隔)で3つの支持ボルト62gが設けられ、各支持ボルト62gは、その頭部によって角柱状シリコンインゴットWKの傾斜形状となった第1端部WK1を押さえるようになっている。ただし、各支持ボルト62gの頭部には、硬質ゴム等よりなるキャップ部材を装着しても良く、この場合には、固定側チャック60と角柱状シリコンインゴットWKとの滑り(位置ズレ)を確実に防止することができる。
【0052】
側壁部62bの外周側は、球軸受64を形成する鋼球64cの中心Oを中心とする円弧形状に形成され、これにより第2椀状部62が第1椀状部61に対して揺動運動した際に、Oリング61iの内周部が側壁部62bの外周部に常時摺接するようになっている。つまり、第2椀状部62の第1椀状部61に対する揺動運動時に、固定側チャック60の内部に埃等が進入することは無い。
【0053】
第1椀状部61と第2椀状部62とは、その開口側を対向させて組み付けられており、内部には回転力伝達部材63と球軸受64とが収容されている。
【0054】
回転力伝達部材63は、板厚方向に弾性変形可能な、例えば薄板鋼板等により形成され、各椀状部61,62間で回転力を伝達するとともに、各椀状部61,62を互いに外れること無く揺動自在に支持するようになっている。回転力伝達部材63の一側は固定ネジS2により第1椀状部61の底部61aに固定され、回転力伝達部材63の他側は固定ネジS3により第2椀状部62の底部62aに固定されている。回転力伝達部材63は、第2椀状部62の第1椀状部61に対する揺動時にその板厚方向に弾性変形するようになっている。つまり、第2椀状部62に外力負荷が無い場合には、回転力伝達部材63の弾性力により、第2椀状部62の第1椀状部61に対する揺動状態が基準状態に復帰する(回転力伝達部材63の弾性変形が自然状態に戻る)ようになっている。
【0055】
回転力伝達部材63の中心部分には貫通穴63aが形成されており、この貫通穴63aには球軸受64の鋼球64cが配置されている。貫通穴63aの直径寸法は、鋼球64cの直径寸法よりも大きく設定されており、これにより、回転力伝達部材63は鋼球64cに非接触の状態で弾性変形可能なっている。
【0056】
球軸受64は、軸受装着凹部61gに装着された第1球受け64aと、軸受装着凹部62cに装着された第2球受け64bと、各球受け64a,64b間に設けられ、各球受け64a,64bに対して摺動自在な鋼球64cにより形成されている。球軸受64は、固定側チャック60の中心部分に設けられ、これにより、第2椀状部62は第1椀状部61に対して、鋼球64cの中心Oを中心として所定角度範囲(図中下側および図中上側にそれぞれ4°〜5°)で揺動自在(首振り自在)となっている。ここで、第1椀状部61に対する第2椀状部62の揺動角度は、角柱状シリコンインゴットWKの加工誤差を吸収し得る程度に設定され、これにより固定側チャック60が大型化するのを抑えている。
【0057】
次に、移動側チャック80の構造について、図8〜図10を用いて詳細に説明する。図8は移動側チャック(第2実施の形態)の外観を示す斜視図を、図9は図8の移動側チャックをピストン部材側から見た正面図を、図10は図9のD−D線に沿う断面図をそれぞれ表している。
【0058】
移動側チャック80は、断面が略U字形状に形成された有底筒状の本体部81と、可動部としての6つのピストン部材82とを備えている。
【0059】
本体部81は、円盤状の底部81aと円筒状の側壁部81bとを備え、底部81aの中心部分には、嵌合突起81cが一体に設けられている。嵌合突起81cは、モータ軸72aの軸心部分に設けられた嵌合凹部72bに嵌合しており、これにより、本体部81およびモータ軸72aは、互いに軸心が一致した状態となっている。
【0060】
底部81aに設けた嵌合突起81cの外周側には、底部81aの周方向に沿って等間隔(120°間隔)で並ぶよう3つの貫通孔81d(図示では1つのみ示す)が設けられている。貫通孔81dには、本体部81をモータ軸72aに固定するための固定ネジS4が貫通している。また、モータ軸72aには、貫通孔81dに対応して3つのネジ孔72c(図示では1つのみ示す)が設けられ、ネジ孔72cには、固定ネジS4がネジ結合されている。
【0061】
側壁部81bは、移動側チャック80の径方向に沿う厚み寸法が肉厚に設定され、側壁部81bには、モータ軸72aの軸方向に沿って延在する6つのシリンダ室81e(図示では2つのみ示す)が設けられている。各シリンダ室81eは、側壁部81bの周方向に沿って等間隔(60°間隔)で設けられ、側壁部81bの軸方向に沿う底部81a側とは反対側(図10中左側)が開口している。
【0062】
シリンダ室81eは、段付き形状に形成され、小径の底部側室81fと大径の開口側室81gとを備え、底部側室81fには断面が板状のコイルバネよりなるバネ部材(弾性部材)83が収容され、開口側室81gには円筒形状の軸受部材83aが収容されている。バネ部材83は、シリンダ室81eとピストン部材82との間に設けられ、ピストン部材82をシリンダ室81eから突出する方向に押圧するようになっている。また、軸受部材83aは、シリンダ室81eとピストン部材82との間に設けられ、ピストン部材82のシリンダ室81eに対する摺動をスムーズにしている。
【0063】
ここで、バネ部材83を断面が板状のコイルバネにより形成することで、バネ部材83の最大伸張時と最小縮小時との寸法差を大きくし、ピストン部材82の充分なストローク量(約10mm)を確保している。ただし、バネ部材83は断面が板状のコイルバネに限らず、断面が円形のコイルバネ等であっても良い。
【0064】
ピストン部材82は、本体部81のモータ軸72a側とは反対側に一体回転可能に設けられている。各ピストン部材82は、角柱状シリコンインゴットWKの第2端部(非研磨部位)WK2と対向しており、第2端部WK2の凹凸形状(非平滑形状)に倣って、本体部81に対して可動するようになっている。
【0065】
ピストン部材82は、シリンダ室81eの内部に出入り自在となるよう棒状に形成され、ピストン部材82の軸方向中央部分には他の部分よりも大径となったストッパ部82aが一体に形成されている。ストッパ部82aは、バネ部材83の端部を支持するとともに、ピストン部材82がシリンダ室81eから突出した際に、ピストンガイド84と当接してピストン部材82がシリンダ室81eから抜け落ちるのを防止するものである。
【0066】
ピストン部材82の軸方向一側(図10中左側)には支持ボルト82bが設けられ、支持ボルト82bは、その頭部によって角柱状シリコンインゴットWKの凹凸形状(非平滑形状)となった第2端部(非研磨部位)WK2を押さえるようになっている。ただし、支持ボルト82bの頭部には、硬質ゴム等よりなるキャップ部材を装着しても良く、この場合には、移動側チャック80と角柱状シリコンインゴットWKとの滑り(位置ズレ)を確実に防止することができる。
【0067】
シリンダ室81eの開口側は、ピストンガイド84によって閉塞され、当該ピストンガイド84は、固定ネジS5(図8,9参照)によって側壁部81bに固定されている。ピストンガイド84にはピストン挿通孔84aが形成されており、ピストン挿通孔84aには、ピストン部材82の軸方向一側が挿通されている。
【0068】
ピストンガイド84と側壁部81b(シリンダ室81e)との間には、ゴム等の弾性材料よりなるOリング84bが設けられている。また、ピストンガイド84とピストン部材82との間には、ゴム等の弾性材料よりなるリップシール84cが設けられている。このように、ピストンガイド84と側壁部81bとの間およびピストンガイド84とピストン部材82との間に、それぞれOリング84bおよびリップシール84cを設けることにより、シリンダ室81e内への埃等の進入を防止している。
【0069】
ここで、6つのピストン部材82,バネ部材83およびシリンダ室81eはそれぞれ同様に形成され、各ピストン部材82は、角柱状シリコンインゴットWKの第2端部WK2の凹凸形状に倣ってそれぞれシリンダ室81e内に進入するようになっている。つまり、各ピストン部材82は第2端部WK2の凹凸形状(加工誤差)を吸収するようになっている。また、ピストン部材82にはバネ部材83の弾性力が作用しているので、角柱状シリコンインゴットWKを強固に支持できるようになっている。
【0070】
次に、以上のように形成した研磨装置10,固定側チャック60および移動側チャック80の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0071】
[ワークセット工程]
まず、図2に示すようにワーク供給テーブル20が初期状態にある状態のもとで、作業者またはワーク供給装置(図示せず)により、角柱状シリコンインゴットWKをテーブル21上にセットする。次いで、研磨装置10のコントロールパネル(図示せず)を操作して研磨装置10を作動させる。すると、ワーク供給テーブル20のワーククランプ22が角柱状シリコンインゴットWKを挟持するとともに、第1割り出し機構22a(図3参照)により角柱状シリコンインゴットWKの中心軸Cおよび幅寸法Wが割り出される。
【0072】
その後、矢印M1方向にテーブル21が移動し、第2割り出し機構24(図3参照)により角柱状シリコンインゴットWKの長さ寸法Lが割り出される。その後さらに、矢印M1方向にテーブル21が移動して、角柱状シリコンインゴットWKが基台11上に搬送され、ワーク支持機構40に角柱状シリコンインゴットWKが供給される。
【0073】
角柱状シリコンインゴットWKがワーク支持機構40に供給されると、ワーク支持機構40のチャック本体移動用モータ73が回転駆動される。すると、移動側チャック本体71(移動側チャック80)が、角柱状シリコンインゴットWKに向けて移動(図2中矢印M2参照)し、固定側チャック60および移動側チャック80により角柱状シリコンインゴットWKが長手方向両側から挟持される。
【0074】
このとき、固定側チャック60は、角柱状シリコンインゴットWKの第1端部WK1の傾斜形状に倣って、図7中矢印SWに示すように作動する。つまり、第2椀状部62の支持ボルト62gが第1端部WK1に押し付けられることで、第2椀状部62は鋼球64cの中心Oを中心として、第1椀状部61に対して回転力伝達部材63のバネ力に抗して揺動する。これにより、支持ボルト62gの全てが第1端部WK1に接触して、角柱状シリコンインゴットWKを安定的に支持する。
【0075】
一方、移動側チャック80においては、角柱状シリコンインゴットWKの第2端部WK2の凹凸形状に倣って、各ピストン部材82が図10中矢印M3に示すように作動する。つまり、各ピストン部材82の支持ボルト82bが第2端部WK2に押し付けられることで、各ピストン部材82はバネ部材83のバネ力に抗してシリンダ室81eにそれぞれ入り込む。これにより、支持ボルト82bの全てが第2端部WK2に接触して、角柱状シリコンインゴットWKを安定的に支持する。
【0076】
ここで、各チャック60,80による挟持力(押圧力)は、回転力伝達部材63およびバネ部材83のバネ力と、チャック本体移動用モータ73の回転力により設定される。これにより、角柱状シリコンインゴットWKは、各チャック60,80に対して位置ズレすること無く支持され、かつ基台11に対して平行に支持されて、ワーク支持機構40へのセットが完了する。
【0077】
その後、各チャック機構50,70の各チャック用モータ52,72が矢印R1方向に同期回転し、各モータ軸52a,72aおよび第1椀状部61,本体部81を介して、第2椀状部62および各ピストン部材82が回転される。これによりワーク研磨機構30の各砥石31a,32aに対して、角柱状シリコンインゴットWKの対向する側面または角部を対向可能とする。次いで、ワーク支持機構40の移動用モータ45が回転駆動されて、ワーク支持機構40(角柱状シリコンインゴットWK)が、矢印M4に示すようにワーク研磨機構30に向けて移動する。
【0078】
[研磨加工工程]
角柱状シリコンインゴットWKがセットされたワーク支持機構40は、各レール41上を滑るように移動する。その後、角柱状シリコンインゴットWKがワーク通過間隙SP内に入り、角柱状シリコンインゴットWKの移動方向先端側が各粗研磨ユニット31に対向したところでワーク支持機構40は一旦停止する。ここで、ワーク支持機構40の移動制御(位置制御)は、移動用モータ45に設けられた磁気式回転センサ等(図示せず)の検出信号に基づいて行われる。
【0079】
次いで、各粗研磨ユニット31の各駆動モータ31bが、所定の回転数で回転駆動され、これに伴い各粗砥石31aが矢印R2方向に回転駆動される。その後、矢印M5方向に移動テーブル33(図4参照)が移動して、各粗研磨ユニット31の角柱状シリコンインゴットWKに対する位置が微調整されて、角柱状シリコンインゴットWKの各側面に各粗砥石31aが接触する。これにより、角柱状シリコンインゴットWKの各側面が研磨加工される。ここで、各粗研磨ユニット31による研磨加工とともにワーク支持機構40がゆっくりと移動し、これにより角柱状シリコンインゴットWKの長手方向に沿う各側面の全域が研磨加工されていく。また、ワーク支持機構40は、複数回往復移動(例えば2回往復移動)して研磨加工するようになっている。
【0080】
その後、角柱状シリコンインゴットWKの長手方向に沿う各側面の全域の研磨加工を終えると、再び移動テーブル33が移動し、各粗研磨ユニット31の角柱状シリコンインゴットWKに対する位置が微調整されて、角柱状シリコンインゴットWKの各側面から各粗砥石31aが離間する。次いで、各チャック用モータ52,72が矢印R1方向に同期回転(45°回転)し、これにより各砥石31a,32aに対して、角柱状シリコンインゴットWKの対向する角部を対向可能とする。その後、再び移動テーブル33が移動して、角柱状シリコンインゴットWKの各角部が各側部の研磨加工と同様に研磨加工され、角柱状シリコンインゴットWKの粗研磨(研磨加工)が完了する。
【0081】
角柱状シリコンインゴットWKの対向する側面および角部の粗研磨が終わった後は、各仕上げ研磨ユニット32の各駆動モータ32bが所定の回転数で回転駆動され、各仕上げ砥石32aが矢印R3方向に回転し、矢印M6方向に移動テーブル33が移動して各仕上げ研磨ユニット32の角柱状シリコンインゴットWKに対する位置が微調整され、角柱状シリコンインゴットWKの各側面に各仕上げ砥石32aが接触される。このように各仕上げ研磨ユニット32は各粗研磨ユニット31と同じ動作を行い、角柱状シリコンインゴットWKの仕上げ研磨(研磨加工)が完了する。
【0082】
なお、研磨加工(粗研磨/仕上げ研磨)を終えた角柱状シリコンインゴットWKは、上述とは逆の手順を辿って研磨装置10外に搬出される。つまり、仕上げられた角柱状シリコンインゴットWKは、ワーク支持機構40の移動によりワーク供給テーブル20側に移動し、その後、ワーク供給テーブル20を介して研磨装置10外に搬出される。
【0083】
以上詳述したように、本実施の形態に係る固定側チャック60(移動側チャック80)によれば、研磨装置10に設けられるワーク支持機構40のモータ軸52a(モータ軸72a)に固定され、モータ軸52a(モータ軸72a)の回転駆動により回転し、研磨装置10に設けられるワーク研磨機構30に研磨部位を対向させる第1椀状部61(本体部81)と、第1椀状部61(本体部81)のモータ軸52a(モータ軸72a)側とは反対側に一体回転可能に設けられ、第1端部WK1(第2端部WK2)と対向して当該第1端部WK1(第2端部WK2)の傾斜形状(凹凸形状)に倣って可動する第2椀状部62(ピストン部材82)とを備えている。
【0084】
したがって、角柱状シリコンインゴットWKの第1端部WK1(第2端部WK2)が傾斜形状(凹凸形状)であっても、その傾斜形状(凹凸形状)に倣って第2椀状部62(ピストン部材82)が可動し、角柱状シリコンインゴットWKの第1端部WK1(第2端部WK2)を位置ズレすること無く安定して押さえることができる。よって、角柱状シリコンインゴットWKを精度良く支持して、角柱状シリコンインゴットWKの研磨精度を向上させることができる。
【0085】
また、本実施の形態に係る固定側チャック60(第1実施の形態)によれば、第1椀状部61および第2椀状部62の開口側を対向させて組み付け、各椀状部61,62間に、第1椀状部61および第2椀状部62を揺動自在とする球軸受64と、第1椀状部61および第2椀状部62間で回転力を伝達する回転力伝達部材63とを設けた。これにより、角柱状シリコンインゴットWKの第1端部WK1の傾斜形状に倣って第2椀状部62が揺動し、第1椀状部61の回転力が第2椀状部62に伝達される。したがって、角柱状シリコンインゴットWKを精度良く支持することができる。
【0086】
さらに、本実施の形態に係る移動側チャック80(第2実施の形態)によれば、本体部81にモータ軸72aの軸方向に沿って延在する複数のシリンダ室81eを設け、各シリンダ室81eにそれぞれ出入りする複数のピストン部材82を設け、シリンダ室81eとピストン部材82との間に、ピストン部材82をシリンダ室81eから突出する方向に押圧するバネ部材83を設けた。これにより、角柱状シリコンインゴットWKの第2端部WK2の凹凸形状に倣って各ピストン部材82が各シリンダ室81eから出入りし、各ピストン部材82はバネ部材83の弾性力により角柱状シリコンインゴットWKの第2端部WK2に押さえ付けられる。したがって、角柱状シリコンインゴットWKを精度良く支持することができる。
【0087】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、固定側のチャック装置を第1椀状部61および第2椀状部62を有するものとし、移動側のチャック装置をシリンダ室81eおよびピストン部材82を有するものとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、角柱状シリコンインゴットWKの非研磨部位の形状に合わせて、双方のチャック装置を第1椀状部61および第2椀状部62を有するもの(第1実施の形態)としたり、双方のチャック装置をシリンダ室81eおよびピストン部材82を有するもの(第2実施の形態)としたりできる。また、上記実施の形態とは逆に、固定側のチャック装置をシリンダ室81eおよびピストン部材82を有するものとし、移動側のチャック装置を第1椀状部61および第2椀状部62を有するものにしても良い。ここで、双方のチャック装置を、図7に示すように第1椀状部61および第2椀状部62を有するものとした場合には、チャック装置の厚み寸法を図10に示すチャック装置に比して抑えることができる。したがって、研磨装置10はより長尺の角柱状シリコンインゴットWKに対応できるようになり、ウェハの製造効率を向上させることが可能となる。
【0088】
また、上記実施の形態においては、固定側チャック本体51(固定側チャック60)を本体部42に固定し、移動側チャック本体71(移動側チャック80)を本体部42に対して移動させるようにしたが、本発明はこれに限らず、逆の関係、つまり固定側チャック本体51を本体部42に対して移動させるようにし、移動側チャック本体71を本体部42に固定するようにしても良い。また、各チャック本体51,71の双方を本体部42に対して移動させるようにしても良い。
【0089】
さらに、上記実施の形態においては、移動側チャック80の本体部81に6つのピストン部材82を設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、本体部81に5つ以下または7つ以上のピストン部材を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0090】
10 研磨装置
11 基台
11a 研磨機構基台
12 調節脚
13 支柱
14 ワーク懸垂梁
20 ワーク供給テーブル
21 テーブル
22 ワーククランプ
22a 第1割り出し機構
23 スライドレール
24 第2割り出し機構
30 ワーク研磨機構
31 粗研磨ユニット
31a 粗砥石
31b 駆動モータ
32 仕上げ研磨ユニット
32a 仕上げ砥石
32b 駆動モータ
33 移動テーブル
40 ワーク支持機構
41 レール
42 本体部
42a フランジ部
43 チャック部
44 ガイド
45 移動用モータ
45a モータケース
45b モータ軸
45c ナット
45d 動力伝達部材
45e ネジ軸
50 固定側チャック機構
51 固定側チャック本体
52 固定側チャック用モータ
52a モータ軸(回転軸)
52b 嵌合凹部
52c ネジ孔
60 固定側チャック(チャック装置)
61 第1椀状部(本体部)
61a 底部
61b 側壁部
61c 嵌合突起
61d 貫通孔
61e 第1ネジ孔
61f プラグ孔
61g 軸受装着凹部
61h 環状溝
61i Oリング
62 第2椀状部(可動部)
62a 底部
62b 側壁部
62c 軸受装着凹部
62d プラグ孔
62e 第2ネジ孔
62f 凹部
62g 支持ボルト
63 回転力伝達部材
63a 貫通穴
64 球軸受(軸受部材)
64a 第1球受け
64b 第2球受け
64c 鋼球
70 移動側チャック機構
71 移動側チャック本体
72 移動側チャック用モータ
72a モータ軸(回転軸)
72b 嵌合凹部
72c ネジ孔
73 チャック本体移動用モータ
80 移動側チャック
81 本体部
81a 底部
81b 側壁部
81c 嵌合突起
81d 貫通孔
81e シリンダ室
81f 底部側室
81g 開口側室
82 ピストン部材(可動部)
82a ストッパ部
82b 支持ボルト
83 バネ部材(弾性部材)
83a 軸受部材
84 ピストンガイド
84a ピストン挿通孔
84b Oリング
84c リップシール
P1,P2 プラグ
S1〜S5 固定ネジ
FL 床面
SP ワーク通過間隙
WK 角柱状シリコンインゴット(シリコンインゴット)
WK1 第1端部(非研磨部位)
WK2 第2端部(非研磨部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池に用いるシリコンインゴットの研磨部位を研磨する研磨装置に設けられ、前記シリコンインゴットの対向する非研磨部位を押さえて前記シリコンインゴットを支持するチャック装置であって、
前記研磨装置に設けられるワーク支持機構の回転軸に固定され、前記回転軸の回転駆動により回転し、前記研磨装置に設けられるワーク研磨機構に前記研磨部位を対向させる本体部と、
前記本体部の前記回転軸側とは反対側に一体回転可能に設けられ、前記非研磨部位と対向して当該非研磨部位の非平滑形状に倣って可動する可動部とを備えることを特徴とするチャック装置。
【請求項2】
請求項1記載のチャック装置において、前記本体部および前記可動部をそれぞれ椀状に形成して第1椀状部および第2椀状部とし、前記各椀状部の開口側を対向させて組み付け、前記各椀状部間に、前記各椀状部を揺動自在とする軸受部材と、前記各椀状部間で回転力を伝達する回転力伝達部材とを設けることを特徴とするチャック装置。
【請求項3】
請求項1記載のチャック装置において、前記本体部に前記回転軸の軸方向に沿って延在する複数のシリンダ室を設け、前記可動部を前記各シリンダ室にそれぞれ出入りする複数のピストン部材とし、前記シリンダ室と前記ピストン部材との間に、前記ピストン部材を前記シリンダ室から突出する方向に押圧する弾性部材を設けることを特徴とするチャック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−96318(P2012−96318A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246032(P2010−246032)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(594002288)株式会社BBS金明 (8)
【Fターム(参考)】