説明

チューニング可能な寄生共振器

【課題】小型で、放射効率のよいアンテナを提供する。
【解決手段】移動体端末は、参照電圧導体を有するプリント回路基板15と、プリント回路基板15の第1の側面15aと結合されたアンテナ11と、プリント回路基板15の第2の側面15bと結合された寄生共振器17とを含む。寄生共振器17は、第1の結合及び第2の結合23bによりプリント回路基板15と結合され、これにより寄生共振器17と参照電圧導体との間に第1及び第2のインピーダンスがそれぞれに与えられる。これらのインピーダンスは異なる値を採ることができ、ディスクリート・インピーダンス素子により提供されてもよい。寄生共振器17の共振周波数は、第1の結合及び第2の結合23bのインピーダンスを変更することにより調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体端末に関する。より詳細には、寄生共振器(parasitic resonator、以下同じ)を有する移動体端末に関する。
【0002】
また、本出願は、2003年8月7日に出願された仮出願第60/493,298号の優先権主張を伴う出願であり、当該仮出願の内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
より小型で、しかし効果的な移動体端末用の内部アンテナが依然として求められている。平面逆Fアンテナ(PIFA)は、幾つかの移動体端末製造業者により広く利用されるアンテナタイプとなった。そのように広く利用されるようになった理由には、デザイン、コスト、そして構造的な強度が含まれる。しかし、アンテナ効率は、移動体端末の前面(から移動体端末を耳に当てて保持するユーザーから離れる方向へ)の放射線レベル(radiation level、以下同じ)によるものと比べ、移動体端末の背面から(移動体端末を耳に当てて保持するユーザーに向かって)放射される放射線レベルによって下がるかも知れない。携帯電話通信帯域のうち低い帯域では、この放射線の主たる部分は、移動体端末のハウジング内のプリント回路基板(printed circuit board)上の接地面から生ずるかもしれない。900MHzでは、放射線の約90%は接地面から生ずることが分かっている。
【0004】
動作効率を向上させるために、所定のアンテナ構成を利用することができる。そのような構成の一つは、例えば、非特許文献1に記載されている。この文献は、引用により本明細書に組み込まれる。非特許文献1は、プリント回路基板の裏面にマウントされたデュアルバンドPIFA及び、プリント回路基板の前面にマウントされた寄生共振器を開示する。寄生共振器の長さは、ユーザーの頭部に向かって放射線が減少するように調整することができる。しかしながら、寄生共振器の長さは、即ち、最大効力は、移動体端末の物理的大きさにより限定されてしまうであろう。
【非特許文献1】マッズ・セイガー他「ヘッドファントムのそばに配置される移動体電話機アンテナの実現効率を増加させるための新技術」(IEEE 2003)(Mads Sager et al. in "A Novel Technique To Increase The Realized Efficiency of A Mobile Phone Antenna Placed Beside A Head-Phanthom"(IEEE 2003))
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態によれば、移動体端末は、第1及び第2の側面と、参照電圧導体とを有するプリント回路基板と、前記プリント回路基板の前記第1の側面と結合されたアンテナと、前記プリント回路基板の前記第2の側面との第1及び第2の結合を有する寄生共振器とを備える。前記プリント回路基板は、前記アンテナと該寄生共振器との間に位置していることが好ましい。また、前記プリント回路基板の前記第1の結合は、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間の第1のインピーダンスを与え、前記プリント回路基板の前記第2の結合は、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間の第2のインピーダンスを与えることが好ましい。更に、前記第1及び第2のインピーダンスが異なることが望ましい。
【0006】
例えば、前記第2の結合は、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に、前記第1の結合により前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に与えられるキャパシタンス又はインダクタンスよりも大きなキャパシタンス又はインダクタンスを与え手も良い。更に、前記第1の結合が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間に電気的ショートを与え、前記第2の結合が、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にキャパシタンス及びインダクタンスの少なくともいずれかを与えてもよい。
【0007】
また、前記第1及び第2の結合の少なくとも一方が、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にディスクリート・インピーダンス素子を含んでいてもよい。前記ディスクリート・インピーダンス素子は、例えば、ディスクリート・キャパシタ、ディスクリート・インダクタ及びディスクリート抵抗のうち、少なくともいずれかであってもよい。また、前記第1及び第2の結合のぞれぞれが、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にそのようなディスクリート・インピーダンス素子を備えていてもよい。更に、前記ディスクリート・インピーダンス素子は、前記プリント回路基板にハンダ付けされていてもよい。
【0008】
本発明の追加の実施形態によれば、移動体端末は、第1及び第2の側面と、参照電圧導体とを有するプリント回路基板と、前記プリント回路基板の前記第1の側面と結合されたアンテナと、前記プリント回路基板の前記第2の側面との第1及び第2の結合を有する寄生共振器とを含むことが望ましい。前記プリント回路基板は前記アンテナと該寄生共振器との間に位置することが望ましい。また、前記プリント回路基板に対する前記第1及び第2の結合の少なくとも一方が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間にディスクリート・インピーダンス素子を含むことが望ましい。
【0009】
前記ディスクリート・インピーダンス素子は、例えば、ディスクリート・キャパシタ、ディスクリート・インダクタ及びディスクリート抵抗のうち、少なくともいずれかであってもよい。また、前記第1及び第2の結合のぞれぞれが、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にそのようなディスクリート・インピーダンス素子を備えていてもよい。更に、前記ディスクリート・インピーダンス素子は、前記プリント回路基板にハンダ付けされていてもよい。
【0010】
また、前記プリント回路基板の前記第1の結合が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間の第1のインピーダンスを与え、前記プリント回路基板の前記第2の結合が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間の第2のインピーダンスを与えてもよい。また、前記第1及び第2のインピーダンスが異なっていてもよい。例えば、前記第2の結合は、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に、前記第1の結合により前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に与えられるキャパシタンス又はインダクタンスよりも大きなキャパシタンス又はインダクタンスを与えてもよい。更に、前記第1の結合が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間に電気的ショートを与え、前記第2の結合が、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にキャパシタンス及びインダクタンスの少なくともいずれかを与えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本発明の実施形態に対応する寄生共振器、プリント回路基板及びPIFAを示す長さ方向における側面図である。
【図1B】本発明の実施形態に対応する寄生共振器、プリント回路基板及びPIFAを示す幅方向における上面図である。
【図2】本発明のいくつかの実施形態に対応する寄生共振器及びPIFAを示す平面図である。
【図3】本発明の幾つかの実施形態に対応するプリント回路基板を示す部分的な平面図である。
【図4】本発明の実施形態に対応する、特定の直列接続されたインピーダンス素子及びRIFAの例における特性を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に対応する、特定の直列接続されたインピーダンス素子の例における特性を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明をより詳細に記述する。しかしながら、本発明は、ここで説明する実施形態のみに限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完璧かつ完全となるように、また当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供されている。図面では、様々な素子の大きさは明確化のために強調してある。また、ある素子が別の素子に「接続」または「結合」されていると言うとき、当該別の素子に直接に接続、または結合されていても、介在素子が存在していてもよいことを理解されたい。同様にして、ある素子が別の素子の「上に」あると言うとき、当該別の素子の直接上にあっても、介在素子が存在していてもよいことを理解されたい。全体を通じて、類似の番号は類似の素子を指す。本明細書では、実施形態における素子の幾つかを記述するために、「側面」、「前面(front)」、「背面(back)」、「トップ」及び「ボトム」の少なくともいずれかの相対語も利用する。これらの相対語は、図面を参照する際の利便性及び明瞭性を目的として利用されるものであって、そのように記述される素子が互いに図示するようにのみ配置されるものとして理解されるべきではない。
【0013】
FB比(front-to-back ratio、以下同じ)は、移動体端末のアンテナの前面から(該移動体端末を耳に当てて保持するユーザーから離れる方向に)照射される放射線の、移動体端末のアンテナの背面から(該移動体端末を耳に当てて保持するユーザーに向かって)照射される放射線に対する割合を言う。アンテナ設計の文脈において議論すると、移動体端末の「前面」はアンテナの側面に相当し、「背面」は通話の際にユーザーの耳に当てられるイヤーピースを含む側面に相当する。FB比は、(接地面のような)参照電圧導体に対する単一又は複数のコンタクト点に沿った、移動体端末のハウジングの金属化(metallization)、複数位置に設置されるメタルキャリアの提供、及び、メタルリングの液晶ディスプレイの周りに単一又は複数の位置で該リングとのコンタクトを有するような提供(該メタルリングはホイルとして提供されても良い)、のうち少なくともいずれかにより改善されるかも知れない。
【0014】
移動体端末のハウジングの金属化は、(典型的な製品に対し約0.40ドルから0.70ドルの範囲で)比較的高価となるかも知れない。更に、移動体端末のハウジングに金属化を適用する場合、歩留まり及び再現性の問題が存在するかも知れず、また、プロセスの安定化も考慮されなければならないであろう。メタルキャリアは、ステンレス鋼製であってもよいが、これは導電体としては比較的性能が悪く、比較的高価(約0.30ドル)となるかも知れない。また、結果的に製品の厚みを0.15から0.3ミリ増加させることになるかも知れない。
【0015】
移動体端末の液晶ディスプレイ(LCD)の周りにメタルリングを設ける方法は、効果的である。典型的なダストガスケット(dust gasket)に対するコスト増は、メタルリングの場合、約0.05ドルであろう。更に、FB比の改善率を、実装に大きく依存させることができる。メタルリングが、不正確に実装されれば、メインアンテナ利得は減少するであろう。更に、メタルリングの効力は、LCDの周りのメタルリングの共振に依存し、この共振はLCDのサイズに依存するであろう。寄生共振器としてのメタルリングの使用は、非特許文献1において議論されており、この文献における記載は引用により本書面に組み込まれるものである。
【0016】
移動体端末(例えば無線電話機)は、ユーザーの頭部に対する放射線レベルを低減するために、1以上の接触点を有するように、液晶ディスプレイ(LCD)の周囲で導電性ガスケット及びリングを利用することができる。例えば、4つの接触点がLCD周囲のガスケットのコーナーに提供されても良い。これらの接触点は、メタルガスケットと移動体端末において利用されるプリント回路基板(PCB)の接地面との間のコンタクトを提供するものとなる。代替的なアプローチでは、メタルガスケットとPCBとの間で1つ又は2つの接触点を利用してもよい。より具体的には、LCDの上端左及び上端右に隣接する位置で接触点を設けることで、デュアルコンタクトを利用しても良い。
【0017】
移動体端末は、移動体端末の電子部品がマウントされたプリント回路基板を含むことができる。当業者により理解されるように、プリント回路基板は、複数のパターン導電層(patterned conductive layer)を含んでいても良い。これらのパターン導電層は、絶縁層により分離され、パターン導電層間を絶縁層を通して相互接続するための導電性ビア(conductive via)有する。電子部品は、電子部品及びプリント基板回路の導電層の電気的或いは機械的な相互接続を提供するための電子部品のリード(表面実装リード、デュアル・インライン・パッケージ・リード及びボール・グリッド・アレイ・リード等)により、プリント回路基板の片面又は両面にマウントされていても良い。プリント回路基板上にマウントされた電子部品は、プロセッサ、メモリー、ロジック装置、電力装置、及びアナログ装置のうち少なくともいずれかのような集積回路と、抵抗、キャパシタ及びインダクタのうち少なくともいずれかのようなディスクリート装置と、スピーカー、マイクロフォン、キーパッド及びディスプレイ・インタフェースのうち少なくともいずれかのような変換器とのうち、少なくともいずれかを含むことができる。
【0018】
より詳細に、移動体端末のプリント回路基板は、移動体端末の動作の間、参照電圧を維持する、参照電圧導体を含んでいても良い。参照電圧導体は、動作中、移動体端末の接地電圧に維持されても良く、これは一般に接地面と呼ばれる。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態によれば、移動体端末は、図1A及び図1Bに示すように、プリント回路基板15の第1の側面15aに隣接し、そこに結合されるアンテナ11と、プリント回路基板の第2の側面15bに隣接し、そこに結合される寄生共振器(寄生ラジエーターとも言う)17を含んでいても良い。図1Aの側面図は、プリント回路基板15の長さ方向Lに沿ったもので、アンテナ11と寄生共振器17はその端部付近で結合されている。
【0020】
プリント回路基板15の第2の側面15bは、マイクロフォン、スピーカー、液晶ディスプレイ及びキーパッドの少なくともいずれかに隣接していても良い。従って、寄生共振器17は、ユーザーが移動体端末で通話中の場合、ユーザーの頭部とプリント回路基板15との間に位置することができる。また、プリント回路基板15は、ユーザーの通話中に、アンテナ11とユーザー頭部との間に位置することができる。更に、移動体端末のスピーカーは、寄生共振器17とプリント回路基板15との結合部の比較的近くに配置されても良い。マイクロフォンは、寄生共振器17とプリント回路基板15との結合部から比較的離れて配置されても良い。このようにして、マイクロフォンとスピーカーは、ユーザーが移動体端末で通話をしている場合、プリント基板回路15とユーザーの頭部との間に位置することができる。
【0021】
より詳細に、プリント回路基板15、アンテナ11及び寄生共振器17は、寄生共振器17が、プリント回路基板15とハウジングの第1の面との間に配置され、アンテナ11がプリント回路基板15とハウジングの第2の面との間に配置されるようにして、移動体端末のハウジング内に封入されてもよい。更に、スピーカー及び移動体端末のハウジングの第1の面が、電話使用中のユーザーの耳に向かって保持されるように、スピーカー及び液晶ディスプレイがプリント回路基板と移動体端末の第1の面との間に提供されても良い。更に、寄生共振器17は、液晶ディスプレイの周囲のダスト・ガスケット上の金属箔として提供されても良い。移動体端末のハウジング内で箔として提供される従来の寄生共振器は、例えば非特許文献1に示されている。本発明の実施形態に対応する寄生共振器は、箔として提供され、かつ、非特許文献1に示される従来の寄生共振器の代わりに移動体端末内に収納される。
【0022】
アンテナ11は、プリント回路基板15と電気的に2箇所で結合される平面逆Fアンテナ(PIFA)であっても良い。当業者により理解されるように、平面逆Fアンテナは、完全な平面でなくても良い。例えば、平面逆Fアンテナは平面或いはフラットであっても良いが、その代わりに移動体端末のハンジングの形状に対応していても良い。より詳細に、アンテナ11はプリント回路基板の信号線に対する第1の電気的結合21aと、プリント回路基板15の参照電圧導体への第2の電気的結合21bを有していても良い。
【0023】
寄生共振器17は、2つの電気的結合をプリント回路基板15との間で有するリングであってもよい。より詳細には、寄生共振器17は、プリント回路基板15の参照電圧導体と直接に結合された第1の電気的結合23aと、1以上の抵抗、キャパシタ及びインダクタを通して、プリント回路基板15の参照電圧導体と結合された第2の電気的結合23bとを有していても良い。言い換えれば、第1のインピーダンスが、第1の電気的結合23aと参照電圧導体との間で与えられ、(第1のインピーダンスとは異なる)第2のインピーダンスが、第2の電気的結合23bと参照電圧導体との間で与えられても良い。例えば、第1のインピーダンスは、ショート回路により与えられ、第2のインピーダンスは、1以上のディスクリート抵抗、キャパシタ及びインダクタの少なくともいずれかにより与えられてもよい。或いは、電気的結合23a及び23bは、ハンダ付けによりプリント回路基板上に提供されるディスクリートインピーダンス部品のような、1以上のインピーダンス部品を通して、参照コンダクタと結合されても良い。
【0024】
図2の平面図に示されるように、寄生共振器17は、開口部17bを有するリング17aを含んでいても良い。より詳細には、リング17aは、液晶ディスプレイ(LCDD)のような移動体端末のディスプレイを囲むように構成されても良い。従って、リングが取り得る形状は、LCDの形状及び移動体端末のハウジングの形状の少なくともいずれかにより制約されてもよい。
【0025】
上述のように、FB比は、アンテナの前面から(耳に電話機を当てているユーザーから離れる方向へ)照射される放射線の、アンテナの背面から(電話機を耳に当てているユーザーへ向かう方向へ)照射される放射線に対する比率である。アンテナのデザインの文脈において議論すれば、移動体端末の「前面」はアンテナ側面となる。即ち、2dBのFB比とは、ユーザーの頭部から離れる場合のピーク放射(peak radiation)が、頭部へ向かう場合のそれよりも2dB高くなることを意味する。アンテナの効率を上げるためには、(ユーザーから離れる方向に、より高い放射が行われるように)約1から4dBのFB比を有することが有益である。
【0026】
FB比に影響する2コンタクト寄生共振器17の能力は、構造の放射性質に依存する。寄生共振器17は、放射線が変化すべき周波数(例えば、約900MHz)において共振するように作ることができる。そうすることで、FB比を、約0dBから2−4dB或いはそれ以上改善することができる。しかしながら、主たるラジエータ(即ち、アンテナ11)のピーク利得は減少するかも知れない。寄生共振器17のチューニングは、寄生共振器17の形状に基づいて行うことができる。しかしながら上述のように、寄生共振器17に許容される形状は、周りに寄生共振器17が提供される液晶ディスプレイの形状や、移動体端末のハウジングの形状等により制約を受けてしまう。
【0027】
寄生共振器はまた、寄生共振器を調整(チューニング)するための(容量性及び誘導性素子の少なくともいずれかの)整合素子(matching elements、以下同じ)を利用して調整されても良い。更に、アンテナ11の全体的利得を著しく下げることなく、FB比を改善するために、直列抵抗を利用してもよい。所定形状の寄生共振器のための適切な整合素子を決定するために、システマティックな方法を利用することもできる。
【0028】
上述のように、寄生共振器17は、プリント回路基板に対する電気的及び機械的結合を提供する第1の電気的接続23a及び第2の電気的接続23bとを有する。図3は、プリント回路基板の第2の側面15bの部分的な平面図である。図3に示されるように、プリント回路基板15は、その第2の側面15b上にパターン絶縁層25を含んでいても良い。更に、絶縁層25のパターニングでは、プリント回路基板の他の絶縁層及び導電層の部分を露光してもよい。より詳細には、絶縁層25は、(接地面のような)参照電圧導体29の部分が露光されるように、パターニングされてもよい。参照電圧導体29は、例えば、プリント回路基板の単一の導電層からパターニングされても良いし、参照電圧導体29を提供するために利用される導電層の部分が、参照電圧導体29から分離した1以上のコンタクト・パッド31a及び31bを提供するためにパターニングされてもよい。
【0029】
従って、寄生共振器17からの電気的結合23bは、電気的結合23bを通じて寄生共振器17と参照電圧導体29との間で電気的ショートを提供するために、参照電圧導体29の露光部分に直接に接続されても良い。寄生共振器17からの電気的結合23bは、コンタクト・パッド31aに結合されても良い。インピーダンス素子35a及び35bは、コンタクト・パッド31aから、インピーダンス素子35aを通って、コンタクトパッド31bへ、直列結合され、コンタクト・パッド31bから、インピーダンス素子35bを通って、参照電圧導体29に直列結合されてもよい。インピーダンス素子は、1以上の抵抗性、容量性及び誘導性素子の少なくともいずれかより選択されてもよい。特定の例によれば、第1のインピーダンス素子が抵抗であって、第2のインピーダンス素子がキャパシタ又はインダクタのいずれかであってもよい。
【0030】
図3では、2つの直列結合されたインピーダンス素子が示されているが、本発明の実施形態では、より多くの数の、又は、より少ない数のインピーダンス素子を、整合素子として利用しても良い。更に、直列結合以外の結合を利用しても良い。例えば、電気的結合23aが、πネットワーク及びTネットワークのうち少なくともいずれかを利用して参照電圧導体29と結合されてもよい。インピーダンス素子35a及び35bの少なくともいずれかは、例えば、コンタクト・パッドにハンダ付けされたディスクリートの表面実装素子であっても良い。或いは、一方又は両方のインピーダンス素子35a及び35bの少なくともいずれかが、プリント回路基板15内のパターニングされた導電層の異なる形状を利用して提供されても良い。また、インピーダンス素子が更に、或いは、代替的に、電気的結合23b及び参照電圧導体29との間に提供されても良い。
【0031】
このように、本発明の実施形態によれば、整合素子を寄生共振器17を調整するために利用することができる。容量性及び誘導性素子の少なくともいずれかを直列に追加することにより、寄生共振器17の共振周波数が上がったり、又は下がったりする。FB比を増加させるためには、寄生共振器17は所望の共振周波数に調整されることが好ましい。この調整は、寄生共振器17からの1以上のコンタクトにおける単一の直列インピーダンス素子により、本発明の幾つかの実施形態において実現することができる。コスト要因により、単一の容量性及び誘導性素子の少なくともいずれかを利用することが有利である。更に、抵抗素子を、容量性及び誘導性素子の少なくともいずれかの一方又は両方と直列に提供することができる。
【0032】
図3に示すように2以上のインピーダンス素子を直列に利用することで、アンテナ11からの所望の利得を維持しつつ、FB比を改善することができる。整合のために利用される素子に追加して直列素子を利用することで、寄生共振器の利得の低下を予測することができる。直列抵抗を利用した実験により、寄生共振器17の損失を多くして、FB比及び全体の利得の制御を可能にできることが実証されるかもしれない。インピーダンス素子35a又は35bのいずれかとして比較的大きな値の抵抗(1キロオーム)を利用することで、アンテナ11からのピーク放射は比較的高くなるが、FB比は比較的低く(〜0dB)なるであろう。インピーダンス素子35a又は35bのいずれかとしてより小さな値の抵抗(例えば、27オーム)を利用することで、ピーク放射を下げることができるが、FB比は比較的良好となる(〜2dB)であろう。インピーダンス素子35a又は35bのいずれかとして更に低い抵抗値(例えば、0オーム)を利用すれば、FB比は更に増加(例えば3dB以上)するが、全体のピーク利得は1dB以上落ちるであろう。中間値を選択することにより、異なるレベルのピーク放射及び放射パターンを得ることができるであろう。
【0033】
本発明の実施形態によれば、寄生共振器をシステマティックに調整するための方法が提供される。寄生共振器をより効率的に放射させるため、寄生共振器を、LCDが配置される電話機の上側部分付近のリング内に配置しても良い。本発明の特定の実施形態によれば、寄生共振器は、移動体端末内の他の金属片から、0.2ミリ又はそれ以上(例えば、3ミリが好ましい)隔離されていてもよい。寄生共振器のコンタクトは、PCBに取り付けられる場合には比較的低抵抗であるべきである。
【0034】
本発明の実施形態に従う構造において、比較的、帯域幅の大きなアンテナを配置することにより、寄生共振器17の共振をネットワークアナライザを用いて視覚的に決定してもよい。他の実施形態では、参照電圧導体と寄生共振器からのコンタクトとの間に整合素子を連続して直列に配置して、アンテナ利得を各整合素子について測定しても良い。例えば、5nHのインダクタと、0オームの抵抗と、2pFのキャパシタとを、参照電圧導体と寄生共振器からのコンタクトの一つとの間にそれぞれ独立に連続して配置し、アンテナ利得を各素子について測定しても良い。もし初期構造が、所望の共振周波数に近い場合には、利得測定を行えば使用される整合素子に応じて利得の変化が認識されるであろう。整合素子は、適切な低利得が得られるまで変更されてもよい。所望の最低利得は、寄生共振器の共振周波数に対応し、最大のFB比に対応するであろう。この点において、抵抗素子(例えば素子35a)は、所望の利得及びFB比を提供するために整合素子(例えば素子35b)と直列に導入されてもよい。
【0035】
本発明の実施形態に対応する特定のアプリケーションでは、高いFB比が、高帯域(例えば、約1710から1990MHzの範囲の周波数)における場合よりも、低帯域(例えば、約824から960MHzの範囲の周波数)においてより重要となるであろう。これは、高帯域におけるFB比が、そもそも供給場所(feed location)とアンテナデザインの関数であっても良いからである。低帯域では、アンテナデザインを介してFB比を制御することがより困難となり、PCBのサイズが問題となる波長に対して小さい場合には特に問題となる。従って、本発明の実施形態に対応する寄生共振器は、低帯域において共振するように設計されてもよい。また、高帯域において共振する構造であってもよいが、これらの高い周波数では、インピーダンスマッチングがわずかに改善されることとなろう。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態によれば、寄生共振器は、銅やアルミニウムと言った比較的良質の導電体で形成されても良い。ステンレス鋼といった他の材料を(追加で、或いは代替的に)利用しても良い。当該構造における共振周波数が、問題の周波数とは大きく異なる場合には、TネットワークやPI(π)ネットワークのような、より進歩した整合回路を利用しても良い。Tネットワーク及びπネットワークのうち少なくともいずれかは、例えば、〜40mm×〜40mmより大きいLCDサイズを有する移動体端末において利用することができる。
【0037】
図4及び5は、アンテナを約900MHzで動作させた場合の、本発明の実施形態に対応する直列結合されたインピーダンス素子例についての特性を示す。特に、寄生共振器17の結合23bは、直接に参照電圧導体29と結合され、その間でショート回路を提供する。また、寄生共振器17の結合23aは、1nHインダクタと4つの抵抗(0オーム、22オーム、31オーム及び62オーム)のうちの一つとの直列結合を介して参照電圧導体29と結合される。各抵抗を利用した結果は、図4のグラフ及び図5のチャートに示されるとおりである。図4のグラフにおいて、プラス90度は、耳に向けて移動体端末を保持するユーザーの耳に向かう方向を示している。マイナス90度は耳に向けて移動体端末を保持するユーザーの耳から離れる方向を示す。0度は、移動体端末のトップ(アンテナ11に隣接する移動体端末の端部)から外へ向かう方向を示している。プラス及びマイナス180度は、移動体端末の底部(アンテナ11から離れた端部)から外へ向かう方向を示している。更に、図4のデータは、寄生共振器を利用して取得されたものであり、(図2に示す)長さ方向の大きさLが約30mm、(図2に示す)幅方向の大きさWが36mmの矩形リングと、(プリント回路基板との結合を提供するための曲がりを含めて)約12mmの長さを有する結合23a及び23bのためのアームとを有する寄生共振器を利用して取得されたものである。図5のチャートは、図4のグラフから得られる対応するデータを示す。特に、22オームと62オームとの間には、ピーク利得において比較的小さな偏差(small deviations)が存在するが、平均的なFB比には比較的大きな変化が見られる。
【0038】
本発明の追加の実施形態によれば、寄生共振器17は図4及び5に関して上述したような大きさを有していてもよい。約880MHzから960MHzの範囲の周波数において動作する移動体端末は、1.8nHのインダクタと68オームの抵抗を、寄生共振器と参照電圧導体との一つの結合の間において直列結合することができる。約824MHzから894MHzの範囲の周波数で動作する移動体端末の場合、3.3nHのインダクタと47オームの抵抗を寄生共振器と参照電圧導体との一つの結合の間において直列結合することができる。
【0039】
図1A、図1B、図2及び図3には、特定の実施形態に対応する寄生共振器を示したが、本発明の実施形態に従って図示した共振器が修正可能であることは理解されよう。例えば、そのヌルポイント(null point)においてリング17aに1以上のブレークを与えても良い。更に、矩形形状以外の形状を利用しても良い。また、アンテナ11、寄生共振器17、インピーダンス素子35a及び35b以外の素子は、明確化の為にプリント回路基板15上に示していないが、多数の他の素子をプリント回路基板の片面又は両面に配置可能であることは理解されよう。
【0040】
図面及び明細書においては、典型的で好適な発明の実施形態を記載し、その際に特定の用語を使用しているが、これらは一般的及び記述的な意味に置いてのみ使用したものであって、発明の範囲を限定する目的は全く存在しない。発明の範囲は、特許請求の範囲に記載している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体端末であって、
第1及び第2の側面と、参照電圧導体とを有するプリント回路基板と、
前記プリント回路基板の前記第1の側面と結合されたアンテナと、
寄生共振器であって、前記プリント回路基板が前記アンテナと該寄生共振器との間に位置するように、前記プリント回路基板の前記第2の側面との第1及び第2の結合を有する寄生共振器とを備え、
前記プリント回路基板の前記第1の結合は、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間の第1のインピーダンスを与え、
前記プリント回路基板の前記第2の結合は、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間の第2のインピーダンスを与え、
前記第1及び第2のインピーダンスが異なることを特徴とする移動体端末。
【請求項2】
前記第1の結合が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間に電気的ショートを与え、
前記第2の結合が、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にキャパシタンス及びインダクタンスの少なくともいずれかを与えることを特徴とする請求項1に記載の移動体端末。
【請求項3】
前記第2の結合は、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に、前記第1の結合により前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に与えられるキャパシタンスよりも大きなキャパシタンスを与えることを特徴とする請求項1に記載の移動体端末。
【請求項4】
前記第2の結合は、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に、前記第1の結合により前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に与えられるインダクタンスよりも大きなインダクタンスを与えることを特徴とする請求項1に記載の移動体端末。
【請求項5】
前記第1及び第2の結合の少なくとも一方が、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にディスクリート・インピーダンス素子を備えることを特徴とする請求項1に記載の移動体端末。
【請求項6】
前記ディスクリート・インピーダンス素子は、ディスクリート・キャパシタ、ディスクリート・インダクタ及びディスクリート抵抗のうち、少なくともいずれかを備えることを特徴とする請求項5に記載の移動体端末。
【請求項7】
前記ディスクリート・インピーダンス素子が、前記プリント回路基板にハンダ付けされていることを特徴とする請求項6に記載の移動体端末。
【請求項8】
前記第1及び第2の結合のぞれぞれが、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にディスクリート・インピーダンス素子を備えることを特徴とする請求項5に記載の移動体端末。
【請求項9】
移動体端末であって、
第1及び第2の側面と、参照電圧導体とを有するプリント回路基板と、
前記プリント回路基板の前記第1の側面と結合されたアンテナと、
寄生共振器であって、前記プリント回路基板が前記アンテナと該寄生共振器との間に位置するように、前記プリント回路基板の前記第2の側面との第1及び第2の結合を有する寄生共振器とを備え、
前記プリント回路基板に対する前記第1及び第2の結合の少なくとも一方が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間にディスクリート・インピーダンス素子を備えることを特徴とする移動体端末。
【請求項10】
前記ディスクリート・インピーダンス素子は、ディスクリート・キャパシタ、ディスクリート・インダクタ及びディスクリート抵抗のうち、少なくともいずれかを備えることを特徴とする請求項9に記載の移動体端末。
【請求項11】
前記ディスクリート・インピーダンス素子が、前記プリント回路基板にハンダ付けされていることを特徴とする請求項10に記載の移動体端末。
【請求項12】
前記第1及び第2の結合のぞれぞれが、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にディスクリート・インピーダンス素子を備えることを特徴とする請求項9に記載の移動体端末。
【請求項13】
前記プリント回路基板の前記第1の結合が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間の第1のインピーダンスを与え、
前記プリント回路基板の前記第2の結合が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間の第2のインピーダンスを与え、
前記第1及び第2のインピーダンスが異なることを特徴とする請求項9に記載の移動体端末。
【請求項14】
前記第1の結合が、前記寄生共振器と前記参照電圧導体との間に電気的ショートを与え、
前記第2の結合が、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間にキャパシタンス及びインダクタンスの少なくともいずれかを与えることを特徴とする請求項13に記載の移動体端末。
【請求項15】
前記第2の結合は、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に、前記第1の結合により前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に与えられるキャパシタンスよりも大きなキャパシタンスを与えることを特徴とする請求項13に記載の移動体端末。
【請求項16】
前記第2の結合は、前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に、前記第1の結合により前記参照電圧導体と前記寄生共振器との間に与えられるインダクタンスよりも大きなインダクタンスを与えることを特徴とする請求項13に記載の移動体端末。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−45099(P2011−45099A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−206079(P2010−206079)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【分割の表示】特願2006−522544(P2006−522544)の分割
【原出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】