説明

チューブ挿入装置および挿入方法

【課題】チューブの曲がりを確実に防止して、効率よく内装体にチューブを挿入することができるチューブ挿入装置及び方法を提供すること。
【解決手段】チューブ挿入装置10において、チューブ12が装着される部分を突出させてコイル13を把持するチャック50と、チューブ12を外装して保持する保持ピン31と、保持ピン31の外周に移動可能に設けられ、チューブ12を押し出してコイル13に挿入するプッシャー32と、チューブ12を保持ピン31に送り出すチューブ送り部20と、チューブ12を切断する切断刃23と、チューブ12の切断面がコイル13に対向するように保持ピン31の向きを反転させる反転機構33と、チューブ12の切断面が当接するテーパ面が形成されたチューブガイド孔36およびコイル13をガイドするテーパ状のコイルガイド孔37を備え、両ガイド孔36,37が同芯上に対向配置された分離・退避可能なガイド部35とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブを内装体に挿入するためのチューブ挿入装置および挿入方法に関する。より詳細には、人手に依らず自動的にチューブを内装体に挿入することができるチューブ挿入装置および挿入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、色々な用途に応じて、棒状や筒状などの内装体にチューブを挿入(装着)することが多くある。例えば、回転電機の磁性体コアに巻装されたコイルのコイル端末部(内装体)の絶縁処理のために、コイル端末部に絶縁スリーブ(チューブ)を挿入することが広く行われている。そして、このようなチューブの挿入作業は、これまで手作業によって行われていた。
【0003】
しかしながら、チューブの挿入を手作業にて行うと、チューブの挿入状態にばらつきが生ずる。また、挿入作業に多大な時間が必要とされる。これらのことから、手作業にてチューブの挿入を行うと、生産性が非常に悪いという問題があった。
【0004】
そのため、チューブの挿入を自動的に行うための技術が種々提案されている。そのうちの1つとして、例えば特許文献1に開示されたものがある。ここに開示されたチューブ挿入装置では、内装体およびチューブをそれぞれ送りローラによって筒状のガイド体に送り込み、ガイド体で内装体およびチューブを自動調心する。その後、送りローラによってチューブをさらに送り、内装体にチューブを挿入する。これにより、内装体に対するチューブの挿入を自動的に行うことができるようになっている。
【特許文献1】特許第2951388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しなしながら、上記した従来の技術では、チューブを押し出す、あるいはチューブを内装体に挿入する(押し込む)際に、チューブが曲がりやすいという問題があった。特に、薄肉で剛性が低いチューブの場合にはそれが顕著となる。このようにチューブが曲がりやすいのは、送りローラによって、チューブがガイド体に送り出され、チューブが内装体に押し込まれるためである。そして、チューブが曲がってしまうと、内装体にチューブをうまく挿入することができず、最終的には人手による手直しが必要となり、生産性の向上を図ることができない。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、チューブの曲がりを確実に防止して、効率よく内装体にチューブを挿入することができるチューブ挿入装置および挿入方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係るチューブ挿入装置は、チューブを内装体に挿入するチューブ挿入装置において、少なくともチューブが装着される部分を突出させて内装体を把持する把持部と、チューブを外装して一時的に保持する棒状のチューブ保持部と、前記チューブ保持部の外周に移動可能に設けられ、前記チューブ保持部に保持されたチューブの端面に当接してチューブを押し出し内装体に挿入する押出部と、チューブが前記押出部の端面に当接するまでチューブを前記チューブ保持部に外装させながら送り出す送り部と、前記送り部から送り出されて前記チューブ保持部に保持されたチューブを切断する切断部と、前記切断部により切断されたチューブの切断面が前記把持部に把持された内装体に対向するように前記チューブ保持部の向きを反転させる反転機構と、前記切断面が当接するテーパ面が形成されたチューブガイド孔と、内装体をガイドするテーパ状の内装体ガイド孔とを備え、前記両ガイド孔が同芯上に対向配置された分離・退避可能なガイド部と、を有することを特徴とする。
【0008】
このチューブ挿入装置では、送り部により、チューブが押出部の端面に当接するまでチューブ保持部に外装させられながら押し出される(送り出し工程)。このとき、送り出されたチューブは、その内周面がチューブ保持部に支持されているため曲がることがない。そして、送り部から送り出されてチューブ保持部に保持されたチューブは、切断部により切断される(切断工程)。このとき、チューブは押出部の端面に当接するまで送り出されているため、常に一定長さに切断される。
【0009】
次に、反転機構により、切断部によって切断されたチューブの切断面が把持部に把持された内装体に対向するように、チューブ保持部の向きが反転させられる。そして、押出部がガイド部へ向かって移動させられる。このとき、チューブ保持部に保持されたチューブは、切断面と反対側の端面が押出部の端面に当接している。このため、押出部をガイド部へ向けて移動させると、チューブ保持部に保持されたチューブがガイド部に向かって押し出される。このようにして、押出部を移動させることにより、チューブの切断面がガイド部のチューブガイド孔のテーパ面に押し当てられる(押し当て工程)。このとき、チューブは断面全体が押出部の端面によって押されているため、剛性の低い薄肉のチューブであっても曲がることがない。このように、チューブの曲がりを防止することができる。また、チューブの内周面がチューブ保持部により支持されていることも、チューブの曲がり防止に寄与している。
【0010】
ここで、前記押出部、反転機構、およびガイド部は、前記ガイド部のガイド孔の中心が前記チューブ保持部の軸線上に位置するように、第1の共通の基台に設置されていることが望ましい。
【0011】
これにより、押し当て工程における位置合わせ精度を向上させることができる。このため、チューブをチューブガイド孔のテーパ面に傾くことなく押し当てることができるので、チューブの断面を真円に近づけることができるとともに、チューブの曲がりを確実に防止することができる。
【0012】
また、前記チューブ保持部材は、前記反転機構により向きを反転させたときに、その先端が前記ガイド部の直近に位置するように配置されているとより好ましい。
【0013】
このようにチューブ保持部材を配置することにより、押し当て工程において、チューブをチューブガイド孔のテーパ面に押し当てる際、チューブの大部分をチューブ保持部により支持することができる。そのため、チューブの曲がりをより確実に防止することができる。
【0014】
そして、把持部に把持された内装体が、チューブが押し当てられたチューブガイド孔とは反対側に形成された内装体ガイド孔からガイド部内に導き入れられ、内装体の先端がチューブ内に導入される(導入工程)。ここで、内装体ガイド孔とチューブガイド孔とが、同芯上に対向配置されている。このため、チューブと内装体の芯を一致させることができる。つまり、チューブと内装体の芯出し精度を向上させることができる。
【0015】
なお、内装体ガイド孔の最小径は、内装体の径よりも大きく、かつチューブの内径よりも小さく設定されていることが好ましい。こうすることにより、内装体の先端を、内装体ガイド孔の最小径部を通過させることにより、チューブ内に確実に導入することができるからである。
【0016】
最後に、ガイド部を分離させて退避させた後、押出部が内装体に向かってさらに移動させられ、チューブ保持部に保持されたチューブが内装体に挿入される(挿入工程)。このとき、チューブは内周面をチューブ保持部に支持されながら、その断面全体を押出部の端面によって押されている。そのため、剛性の低い薄肉のチューブであっても、曲がることなく確実かつスムーズに内装体に挿入することができる。
このように、本発明のチューブ挿入装置によれば、チューブ挿入作業を自動化することができ、しかも作業中におけるチューブの曲がりが確実に防止される。このため、効率よく内装体にチューブを挿入することができるので、生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るチューブ挿入装置および挿入方法によれば、上記した通り、チューブの曲がりを確実に防止して、効率よく内装体にチューブを挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のチューブ挿入装置および挿入方法を具体化した最も好適な実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施の形態は、ステータから引き出されたコイル端末にチューブ(絶縁スリーブ)を挿入するチューブ挿入装置に本発明を適用したものである。
【0019】
そこで、実施の形態に係るチューブ挿入装置について、図1を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係るチューブ挿入装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態に係るチューブ挿入装置10には、チューブ送り部20と、チューブ挿入ユニット30と、チャック50とが備わっている。そして、チューブ送り部20、チューブ挿入ユニット30、およびチャック50が、共通の基台11上に設置されている。本実施の形態における基台11が、本発明の「第1の共通の基台」に相当する。そして、チューブ挿入装置10では、チューブ送り部20から送り出されたチューブ12を、チューブ挿入ユニット30で一時的に保持した後、チャック50に把持されたコイル13に挿入するようになっている。なお、コイル13は複数の素線(本実施の形態では9本)を束ねたものである。
【0020】
チューブ送り部20は、チューブ12をチューブ挿入ユニット30に送り込むとともに切断するものである。このチューブ送り部20には、チューブ12が巻き付けられたリール21と、リール21に巻き付けられたチューブ12をチューブ挿入ユニット30に向けて搬送する一対の搬送ローラ22と、搬送ローラ22によって搬送されたチューブ12を切断する切断刃23とを備えている。リール21は、チューブ送り部20内に回転可能に支持されている。一対の搬送ローラ22は、一方のローラが不図示の駆動源に接続されて回転駆動され、他方のローラは前記一方のローラ(駆動ローラ)に従動して回転するようになっている。また、切断刃23は、不図示のアクチュエータに接続されおり、上下動するようになっている。
【0021】
そして、リール21に巻き付けられたチューブ12が、一対の搬送ローラ22に狭持されるように引き出され、その先端がチューブ送り部20の送出口20aに突出するようにセットされている。これにより、チューブ送り部20では、搬送ローラ22を駆動させることにより、送出口20aからチューブ挿入ユニット30に向けてチューブ12を送り出すことができるようになっている。さらに、切断刃23を上昇させることにより、チューブ挿入ユニット30に送り出されたチューブ12の後端を切断することができるようになっている。
【0022】
チューブ挿入ユニット30は、チャック50に把持されたコイル13の先端部にチューブ12を自動挿入するものである。チューブ挿入ユニット30には、チューブ送り部20から送り出されたチューブ12を一時的に保持する保持ピン31と、保持ピン31の外周に設けられたプッシャー32と、保持ピン31の向きを反転させる反転機構33と、プッシャー32を反転機構33に往復動可能に固定するスライドアーム34と、チューブ挿入時にチューブ12とコイル13とをガイドするガイド部35とが備わっている。
【0023】
保持ピン31は、円形断面を有するピン形状(棒状で先端が先細りのテーパ形状を有する)をなすものである。保持ピン31の長さは、プッシャー32よりも、コイル13に挿入するチューブ12の長さ分だけ長くなっている。保持ピン31の径は、チューブ12の径よりも若干大きく設定されている。これにより、保持ピン31にチューブ12を外装させることができ、保持ピン31は、その外周面でチューブ12の内面を支持することができるようになっている。このため、リール21において押し潰されていたチューブ12の断面が円形に戻される。
【0024】
そして、保持ピン31は、反転機構33の側面に水平に固定されている。つまり、保持ピン31は、基台11に対し平行に固定されている。また、保持ピン31は、送出口20aと同じ高さ位置に配置されている。つまり、チューブ送り部20から送り出されるチューブ12と保持ピン31とが同軸(軸線X)上に配置されているので、チューブ送り部20から送り出されるチューブ12を保持ピン31に確実に外装することができるようになっている。
【0025】
プッシャー32は、保持ピン31に保持されたチューブ12を押し出すものである。プッシャー32は、円筒形状をなし保持ピン31の外周にスライド可能に設けられている。プッシャー32の外径は、チューブ12の径よりも大きい。これにより、プッシャー32は、保持ピン31に保持されたチューブ12の断面(端面)全体に当接して押すことができるようになっている。なお、プッシャー32の断面形状は円形であるが、プッシャーの断面形状は、プッシャーの断面がチューブの断面全体に当接するような形状であれば非円形であってもよい。
【0026】
そして、プッシャー32は、スライドアーム34に固定されている。スライドアーム34は、反転機構33の上面に往復動(スライド)可能に取り付けられている。これにより、スライドアーム34を駆動することによって、プッシャー32を保持ピン31に沿ってスライドさせることができるようになっている。
【0027】
反転機構33は、保持ピン31の向きを反転させる(図1において右向きから左向き、あるいは左向きから右向き)ものである。反転機構33は、基台11に直交する軸線回りに180°ずつ回転するように構成されている。これにより、反転機構33は、チューブ送り部20に対向する保持ピン31をコイル13に対向するように反転させる、あるいはコイル13に対向する保持ピン31をチューブ送り部20に対向するように反転させることができるようになっている。
【0028】
ガイド部35は、チューブ挿入時にチューブ12とコイル13とをガイドして両者の芯出し(位置合わせ)を行うものである。ガイド部35には、チューブガイド孔36とコイルガイド孔37とが対向して同芯上に形成されている。これらのガイド孔36,37は、ガイド部35の両側から中央に向かって縮径するテーパ孔であり、最小径部38において連通している。そして、最小径部38の径は、コイル13の径よりも若干大きく、かつチューブ12の径よりも小さく設定されている。これにより、ガイド部35において、コイル12の先端を、最小径部38を通過させることにより、チューブ12内に確実に導入することができるようになっている。また、ガイド部35は、チューブ挿入(装着)時にチューブ12等に干渉しないように、分離して退避することができるようになっている。
【0029】
これらの保持ピン31、プッシャー32、反転機構33、およびガイド部35は、保持ピン31の軸線X上にガイド部35のガイド孔36,37の中心が位置するように、共通の基台39に設置されている。これにより、チューブ12をチューブガイド孔36のテーパ面に傾くことなく押し当てることができるようになっている。そして、保持ピン31をガイド部35に向けたときに保持ピン31の先端がチューブガイド孔36の直近に位置するように、反転機構33とガイド部35とが基台39上に配置されている。これにより、チューブ12をチューブガイド孔36のテーパ面に押し当てた際、チューブ12の大部分を保持ピン31により支持することができるようになっている。
【0030】
そして、基台39は、基台39上に設置された保持ピン31の軸線X上に、チューブ送り部20の送出口20aの中心(送出位置)、およびチャック50の把持位置50a(コイル13の中心)が位置するように、基台11上に往復動(スライド)可能に取り付けられている。また、基台39は、チューブ送り部20とチャック50との間に配設されている。これにより、基台39上に設置された保持ピン31をチューブ送り部20に近接させたり、あるいはガイド部35をコイル13に近接させることができるようになっている。
【0031】
チャック50は、内装体であるコイル13を把持して水平に(基台11に対して平行に)固定するものである。このチャック50は、その把持位置50aがガイド部35の両ガイド孔36,37の中心軸上に位置するように、基台11上に設定されている。つまり、チャック50の把持位置50aも、軸線X上に位置している。
【0032】
次に、上記のように構成されたチューブ挿入装置10の動作(チューブ挿入方法)について、図2〜図7を参照しながら説明する。図2は、チューブ挿入装置におけるチューブ送り出し工程およびチューブ切断工程を説明するための図である。図3は、チューブ挿入装置において保持ピンの向きを反転させる前にチューブ挿入ユニットをスライドさせた状態を示す図である。図4は、チューブ挿入装置において保持ピンの向きを反転させた状態を示す図である。図5は、チューブ挿入装置におけるチューブ押し当て工程を説明するための図である。図6は、チューブ挿入装置におけるコイル導入工程を説明するための図である。図7は、チューブ挿入装置におけるチューブ挿入工程を説明するための図である。
【0033】
まず、図2に示すように、コイル13が引き出されているステータ(不図示)が所定位置にセットされ、コイル13の先端部がチャック50からチューブ送り部20側に突出させられた状態で、コイル13がチャック50に把持される。このとき、チャック50は、コイル13の先端部が基台11に対して平行になるようにコイル12を把持して固定する。また、保持ピン31をチューブ送り部20に対向させた状態で、チューブ挿入ユニット30がチューブ送り部20側(図2では右側)にスライドさせられる。これにより、保持ピン31の先端が、チューブ送り部20の送出口20aに近付けられる。
【0034】
この状態で、送り出し工程が実施される。すなわち、搬送ローラ22が駆動されて、リール21に巻かれたチューブ12がチューブ送り部20から送り出されて、保持ピン31に外装されていく。このとき、チューブ送り部20の送出口20aが保持ピン31の軸線X上に位置しているとともに、保持ピン31の先端が先細り形状をなしているため、チューブ送り部20から送り出されたチューブ12を保持ピン31に対して、確実かつスムーズに外装することができる。この送り出し工程は、チューブ12の先端がプッシャー32の端面に当接するまで実施される。
【0035】
そして、チューブ12の先端がプッシャー32の端面に当接すると、切断工程が実施される。すなわち、チューブ12の先端がプッシャー32の端面に当接すると、搬送ローラ22が停止する。この搬送ローラ22の停止とともに切断刃23が上昇して、チューブ12が切断される。
【0036】
チューブ12が切断されると、押し当て工程が実施される。すなわち、図3に示すように、チューブ挿入ユニット30がチャック50に向かって(図3において左側へ)スライドする。チューブ挿入ユニット30は、所定位置(基台11のほぼ中央)に到達すると停止する。そして、図4に示すように、反転機構33が駆動されて、保持ピン31、プッシャー32およびスライドアーム34の向きが180°反転させられる。すなわち、チューブ送り部20に対向していたチューブ保持ピン31などが、チャック50(あるいはガイド部35)に対向する。これにより、チューブ12の切断面側がガイド部35に対向する。
【0037】
チューブ保持ピン31の向きが反転させられると、図5に示すように、スライドアーム34が駆動して、プッシャー32が前進(図5において左側へスライド)させられ、チューブ保持ピン31に保持されているチューブ12が押し出される。これにより、チューブ12の先端(切断面側)が、ガイド部35のチューブガイド孔36の内周面つまりテーパ面に押し当てられる。なお、プッシャー32の前進は、チューブ12の先端がチューブガイド孔36のテーパ面に当接したときに一時的に停止する。このチューブガイド孔36のテーパ面へのチューブ12の押し当てにより、チューブ12の径がばらついていても、チューブ12の断面を真円に近付けることができる。
【0038】
ここで、ガイド部35は、ガイド孔36,37の中心がチューブ保持部31の軸線X上に位置するように基台39上に設置されている。これにより、押し当て工程における位置合わせ精度を向上させることができる。このため、チューブ12をチューブガイド孔36のテーパ面に傾くことなく押し当てることができるので、チューブ12の断面を真円に近づけることができるとともに、チューブ12の曲がりを防止することができる。
さらに、チューブ保持ピン31は、その先端がガイド部35の直近に位置するように配置されているため、チューブ12は、チューブガイド孔36のテーパ面へ押し当てられる際、その大部分をチューブ支持部材31により支持されている。これにより、チューブ12の曲がりをより確実に防止することができる。
【0039】
続いて、導入工程が実施される。すなわち、チューブ12がチューブガイド孔36のテーパ面へ押し当てられた状態のまま、図6に示すように、チューブ挿入ユニット30が再度、チャック50に向かって(図6において左側へ)スライドする。これにより、ガイド部35のコイルガイド孔37にコイル13の先端が導入される。そして、コイル13の先端がガイド部35の最小径部38を通過してチューブ12内に導入されると、チューブ挿入ユニット30が停止する。
【0040】
ここで、コイルガイド孔37がテーパ状をなしているため、複数の素線を束ねたコイル13であっても、ばらばらにならずまとめてチューブ12内に導入することができる。また、コイルガイド孔37とチューブガイド孔36とが、同芯上に対向配置されているので、コイル13とチューブ12の芯を確実に一致させることができる。つまり、チューブ12とコイル13の芯出し精度を向上させることができる。さらに、コイルガイド孔37の最小径、つまり最小径部38の径は、コイル13の径よりも若干大きく、かつチューブ12の内径よりも小さくされている。これにより、コイル13の先端を、ガイド部35の最小径部38を通過させることにより、チューブ12内に確実に導入することができる。
【0041】
その後、挿入工程が実施される。すなわち、コイル13の先端がチューブ12内に導入された状態で、図7に示すように、ガイド部35が開かれて退避させられる。そして、スライドアーム34が再度駆動されてプッシャー32がさらに前進(図7において左側へスライド)させられる。これにより、チューブ12がコイル13に挿入(装着)される。このとき、チューブ12は、内周面を保持ピン31に支持されつつ、断面全体をプッシャー32の端面により押されて挿入されていく。このため、チューブ12が剛性の低い薄肉のものであっても、曲がることなく確実かつスムーズにコイル13に挿入することができる。これにより、効率よくコイル13にチューブ12を挿入することができるので、生産性を向上させることができる。
【0042】
チューブ12の挿入が終了すると、スライドアーム34およびプッシャー32が後退(反転機構33側へスライド)し、反転機構33により、保持ピン31、プッシャー32およびスライドアーム34の向きが180°反転させられる。このとき、図4に示した回転方向と同方向に回転させてもよいし、反対方向に回転させてもよい。そして、チューブ挿入ユニット30がチューブ送り部20に向かってスライドさせられ、図2に示す状態に戻される。その後、上記した動作が繰り返されて、チューブ12がコイル13に自動的に順次挿入されていく。
【0043】
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係るチューブ挿入装置10によれば、チューブ12の内周面を保持ピン31により支持しながら、その断面(端面)全体をプッシャー32の端面によって押し出して、チューブ12をコイル13に挿入する。このため、チューブ12が剛性の低い薄肉のものであっても、曲がることなく確実かつスムーズにコイル13に挿入することができるので、生産性を向上させることができる。
【0044】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、内装体としてコイル12を例示したが、内装体はコイル以外(棒材やパイプ、あるいはチューブなど)であっても本発明を適用することができる。
【0045】
また、上記した実施の形態では、反転機構として保持ピン31の向きを水平面内で(基台11に直交する軸線回りに)反転させるものを例示したが、反転機構はこれに限らず、例えば保持ピン31の向きを鉛直面内で反転させるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態に係るチューブ挿入装置の概略構成を示す図である。
【図2】チューブ挿入装置におけるチューブ送り出し工程およびチューブ切断工程を説明するための図である。
【図3】チューブ挿入装置において保持ピンの向きを反転させる前にチューブ挿入ユニットをスライドさせた状態を示す図である。
【図4】チューブ挿入装置において保持ピンの向きを反転させた状態を示す図である。
【図5】チューブ挿入装置におけるチューブ押し当て工程を説明するための図である。
【図6】チューブ挿入装置におけるコイル導入工程を説明するための図である。
【図7】チューブ挿入装置におけるチューブ挿入工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0047】
10 チューブ挿入装置
11 基台(第1の共通の基台)
12 チューブ
13 コイル(内装体)
20 チューブ送り部
20a 送出口
21 リール
22 搬送ローラ
23 切断刃
30 チューブ挿入ユニット
31 保持ピン
32 プッシャー
33 反転機構
34 スライドアーム
35 ガイド部
36 チューブガイド孔
37 コイルガイド孔
38 最小径部
39 基台(第2の共通の基台)
50 チャック
50a 把持位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブを内装体に挿入するチューブ挿入装置において、
少なくともチューブが装着される部分を突出させて内装体を把持する把持部と、
チューブを外装して一時的に保持する棒状のチューブ保持部と、
前記チューブ保持部の外周に移動可能に設けられ、前記チューブ保持部に保持されたチューブの端面に当接してチューブを押し出し内装体に挿入する押出部と、
チューブが前記押出部の端面に当接するまでチューブを前記チューブ保持部に外装させながら送り出す送り部と、
前記送り部から送り出されて前記チューブ保持部に保持されたチューブを切断する切断部と、
前記切断部により切断されたチューブの切断面が前記把持部に把持された内装体に対向するように前記チューブ保持部の向きを反転させる反転機構と、
前記切断面が当接するテーパ面が形成されたチューブガイド孔と、内装体をガイドするテーパ状の内装体ガイド孔とを備え、前記両ガイド孔が同芯上に対向配置された分離・退避可能なガイド部と、
を有することを特徴とするチューブ挿入装置。
【請求項2】
請求項1に記載するチューブ挿入装置において、
前記押出部、反転機構、およびガイド部は、前記ガイド部のガイド孔の中心が前記チューブ保持部の軸線上に位置するように、第1の共通の基台に設置されていることを特徴とするチューブ挿入装置。
【請求項3】
請求項1に記載するチューブ挿入装置において、
前記チューブ保持部材は、前記反転機構により向きを反転させたときに、その先端が前記ガイド部の直近に位置するように配置されていることを特徴とするチューブ挿入装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載するチューブ挿入装置において、
前記送り部、把持部、および第1の共通の基台は、前記送り部の送出位置および前記保持部の把持位置が前記チューブ保持部の軸線上に位置するように、第2の共通の基台に設置されるとともに、
前記第1の共通の基台は、前記第2の共通の基台上に往復動可能に取り付けられていることを特徴とするチューブ挿入装置。
【請求項5】
チューブを内装体に挿入するチューブ挿入方法において、
チューブを押出部の端面に当接するまでチューブ保持部に外装させながら送り出す送り出し工程と、
前記送り出し工程により送り出されて前記チューブ保持部に保持されたチューブを切断する切断工程と、
前記切断工程により切断されたチューブの切断面が把持部に把持された内装体に対向するように前記チューブ保持部の向きを反転させた後、前記押出部をガイド部へ向かって移動させて、前記切断面を前記ガイド部のチューブガイド孔のテーパ面に押し当てる押し当て工程と、
前記押し当て工程でチューブが押し当てられたガイド孔とは反対側から前記ガイド部内に内装体を導き、その先端をチューブ内に導入する導入工程と、
前記導入工程により内装体先端がチューブ内に導入された状態で前記ガイド部を退避させた後、前記押出部を内装体に向かって移動させて、前記チューブ保持部に保持されたチューブを内装体に挿入する挿入工程と、
を含むことを特徴とするチューブ挿入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−45699(P2009−45699A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214439(P2007−214439)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】