説明

チロシンキナーゼ阻害薬

本発明は、低分子量かつ経口投与可能な3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン誘導体であって、細胞増殖性疾患の治療、MET活性に関連する障害の治療、及び、チロシンキナーゼMETの阻害に有用である誘導体に関する。本発明は、前記化合物を含む組成物と、それらを用いて哺乳類の癌を治療する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシンキナーゼ、特に、受容体チロシンキナーゼMETの阻害薬であると共に、細胞増殖性疾患、例えば、癌、過形成、再狭窄、心臓肥大、免疫障害、及び炎症の治療に有用である3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
シグナル伝達経路の研究によって、癌治療における治療的阻害の様々な有望な分子標的が明らかにされた。受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、このような治療標的の重要な部類である。最近、受容体チロシンキナーゼのサブファミリーであるMETプロトオンコジーンファミリーのメンバーは、浸潤と転移との関連性について特に注目されている。
【0003】
MET(c−Metともいう)及びRON受容体を含むMETファミリーは、大半のチロシンキナーゼのようにオンコジーンとして機能することができる。METは、様々な悪性腫瘍内で過剰発現及び/又は突然変異していることが分かっている。MET活性化突然変異の多くはチロシンキナーゼドメインに位置するが、このような突然変異は、様々な固形腫瘍で多数検出されており、腫瘍細胞の浸潤と転移に関わっている。
【0004】
c−Metプロトオンコジーンは、MET受容体チロシンキナーゼをコードする。MET受容体は、145kDaのβ鎖にジスルフィド結合した50kDaのα鎖から構成される190kDaのグルコシル化二量体複合体である。α鎖は細胞外に存在し、β鎖は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含む。METは前駆体として合成され、タンパク分解によって切断されると、成熟したα及びβサブユニットが生じる。METは、細胞間相互作用に関与するリガンド−受容体ファミリーであるセマフォリン及びプレキシンと構造的類似性を有する。
【0005】
METの天然リガンドは肝細胞増殖因子(HGF)であり、このHGFは、主に間葉細胞によって産生されると共に、内分泌及び/又は傍内分泌の形で、MET発現上皮及び内皮細胞に主に作用する分散因子ファミリーのジスルフィド結合ヘテロダイマーメンバーである。HGFはプラスミノーゲンと多少の相同性を有する。肝細胞増殖因子(分散因子、HGF/SFとしても知られている)によるMETの刺激によって、細胞内で非常に多くの生物学的及び生化学的作用がもたらされることが知られている。c−Metのシグナル伝達の活性化によって、増殖、生存、血管新生、創傷治癒、組織再生、分散、運動性、侵襲、及び分岐形態形成を含む広範な細胞応答を引き起こすことができる。HGF/METのシグナル伝達は、軟骨、骨、血管、及びニューロンを含む大半の組織で見られる侵襲性増殖でも重要な役割を果たす。
【0006】
様々なc−Met突然変異について、複数の固形腫瘍と一部の血液悪性腫瘍で詳細に説明されている。原型的なc−Met突然変異の例は、遺伝性及び散発性ヒト乳頭状腎癌に見られる(Schmidt,L.et al.,Nat.Tenet.1997,16,68−73、Jeffers,M.et al.,Proc.Nat.Acad.Sci 1997,94,11445−11500)。報告されているc−Met突然変異の他の例としては、卵巣癌、小児肝 細胞癌、転移性頭頸部扁平上皮癌、及び胃癌が挙げられる。HGF/METは、頭頸部扁平上皮癌細胞で、足場喪失によるプログラム細胞死(アポトーシス)であるアノイキスを阻害することが示されている。
【0007】
METのシグナル伝達は、様々な癌、特に腎癌に関与している。METと結直腸癌との関連性も立証されている。結直腸癌の進行中におけるc−Metの発現の分析によって、分析した癌標本の50%が、隣接する正常結腸粘膜よりも5〜50倍高いレベルのMET mRNAの転写産物及びタンパクを発現したことが示された。更に、原発腫瘍と比較したところ、結直腸癌の肝転移の70%が、METの過剰発現を示した。
【0008】
METはグリア芽腫にも関与している。高悪性度神経膠腫は、最も一般的な中枢神経系癌である。外科的切除、放射線療法、及び化学療法による治療にもかかわらず、平均全生存期間は1.5年未満であり、生存期間が3年超の患者はほとんどいない。ヒト悪性神経膠腫はHGFとMETの両方を発現することが多く、これによって、生物学的に重要なオートクラインループを確立することができる。神経膠腫でのMETの発現は、神経膠腫の悪性度分類と相関しており、ヒト腫瘍標本の分析によって、悪性神経膠腫では、HGF含量が低悪性度神経膠腫の7倍であることが示された。多くの研究によって、ヒト神経膠腫がHGFとMETを共発現する場合が多いことと、高レベルの発現が悪性腫瘍の進行と関連していることが立証されている。更に、HGF−METがAktを活性化し、神経膠腫細胞株をアポトーシスから保護できることも、インビトロ及びインビボの双方で示されている。
【0009】
RONは、METと類似の構造、生化学的特徴、及び生物学的特性を有する。RONは、かなりの割合の乳癌と結直腸腺癌で過剰発現するが、正常乳腺上皮細胞又は良性病変組織では過剰発現しないことが、研究によって示されている。架橋実験によって、RONとMETは、細胞表面に、非共有結合による複合体を形成し、細胞内シグナル伝達において共働することが明らかになった。RON及びMET遺伝子は、卵巣癌細胞の運動及び浸潤において有意に共発現する。これは、これらの2つの関連受容体の共発現によって、腫瘍の発症中又は進行中のいずれかに、卵巣癌細胞に選択的優位性が付与されることを示唆している。
【0010】
METとそのオンコジーンとしての機能については最近、Nature Reviews/Cancer 6:637−645(2006)、Cancer and Metastasis Review 22:309−325(2003)、Nature Reviews/Molecular Cell Biology 4:915−925(2003)、Nature Reviews/Cancer 2:289−300(2002)など、多くの論評が発表されている。
【0011】
HGF/METのシグナル伝達の調節異常は、多くの腫瘍における腫瘍発生と疾患進行の要因とみなされているので、この重要なRTK分子の治療的阻害のための様々な方策を研究する必要がある。Met活性が侵襲/転移表現型に寄与する癌の治療において、HGF/METのシグナル伝達及びRON/METのシグナル伝達に対する特定の小分子阻害薬は、大きな治療的価値を持っている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、細胞増殖性疾患の治療、MET活性に関連する障害の治療、及び受容体チロシンキナーゼMETの阻害に有用である3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン誘導体に関する。本発明の化合物は、下記の式I及び式IIによって表すことができる。

【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の化合物は、受容体チロシンキナーゼMETの阻害に有用であり、下記の式I若しくは式II、又は、部分重水素化した下記の式I若しくは式IIの化合物、


あるいは、その製薬学的に許容可能な塩によって示され、上記の式中、
は独立して、−O(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、この炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルは、Br、Cl、F、−(CHCH(OR11)CH、−(CHOR11、−(CHC(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−(CR1112C(O)OR11、−C(O)NR1112、−(CR1112C(O)NR1112、−(CHNR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−(CHNR11C(O)NR1112、−(CHNR11C(O)OR12、−NR11C(O)R12、−NR11C(O)OR12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−(CH)(炭素数6〜10のアリール)、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、
1’は独立して、水素、I、Br、Cl、F、−O(CHCH、−(CHOR11、−(CR1314NR1112、−NR11C(O)OR13、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−N(CH(炭素数3〜8のシクロアルキル)、−CN、−NO、炭素数1〜6のアルキル、又は上で定義されているRから選択され、
はH、ハロゲン、又は炭素数1〜6のアルキルであり、
とRは独立して、H、F、CF、炭素数1〜6のアルキルから選択されるか、
又は、RとRは結合して、炭素数3〜5のシクロアルキル環を形成することができ、
は下記の式の部分であり、


式中、R、R、R、R、及びR10は独立して、水素、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11SO12、−CN、−NO、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、この炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルは、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、あるいは、
とR、又はRとR10は一体となって、炭素数4〜8の飽和シクロアルキル、炭素数5〜8の不飽和シクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、及び炭素数6〜10のアリールから選択した環を形成し、該環は、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、
mが1よりも大きい場合、各Rは独立して、水素、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11SO12、−CN、−NO、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、この炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルは、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、
11とR12は独立して、H、−(CHOR13、−(CHC(CHOR13、−CHR13(CHOR14、−C(O)OR13、−(CHCHR13OR14、−C(CH(CHOR13、−CHCFH、−(CHC(CHNR1314、−(CHNR1314、−(CHCHOR13(CHOR14、−(CH(NR1314)C(O)NR1314、−(CHS(O)13、−(CHC(O)NR1314、−NR13(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−NR13(CH(3〜8員のヘテロ環)、−(CH(8〜10員のヘテロ二環)、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、該5〜7員のヘテロアリール、3〜8員のヘテロ環、及び8〜10員のヘテロ二環は、−(CHOR13、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、3〜8員のヘテロ脂環、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、あるいは、R11とR12が同じ原子に結合している場合、R11とR12は一体となって、3〜8員のヘテロ脂環式環を形成してもよく、
13とR14は独立して、H、炭素数1〜6のアルキル、−C(O)CH、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、5〜7員のヘテロアリール、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、該5〜7員のヘテロアリールは、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、あるいは、R13とR14が同じ原子に結合している場合、R13とR14は一体となって、3〜8員のヘテロ脂環式環を形成してもよく、
各nは独立して、0、1、2、3、又は4であり、
mは0、1、2、3、4、又は5である。
【0014】
本発明は、下記の各実施形態を別々に実施するか、又は、本発明を説明するのに矛盾が生じない限りは、本明細書に記載されている他のいずれかの実施形態と組み合わせることを意図している。当業者であれば、本開示に基づき、前記矛盾の内容が分かるであろう。
【0015】
別の実施形態では、R1’は独立して、水素、I、Cl、−O(CHCH、−(CHOR11、−(CR1314NR1112、−NR11C(O)OR13、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−N(CH(炭素数3〜8のシクロアルキル)、−CN、−NO、炭素数1〜6のアルキル、又は上で定義されているRから選択される。
【0016】
別の実施形態では、R1’はRであり、このRは、上で定義されているとおりである。
【0017】
別の実施形態では、Rは独立して、−C(O)NR1112、3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルから選択され、この3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルは、Br、Cl、F、−(CHCH(OR11)CH、−(CHOR11、−(CHC(CHOR11、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−C(O)R11、−C(O)OR11、−(CR1112C(O)OR11、−C(O)NR1112、−(CR1112C(O)NR1112、−(CHNR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−(CHNR11C(O)NR1112、−(CHNR11C(O)OR12、−NR11C(O)R12、−NR11C(O)OR12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−(CH(炭素数6〜10のアリール)、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよい。
【0018】
別の実施形態では、Rは独立して、3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルから選択され、この3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルは、Br、Cl、F、−(CHCH(OR11)CH、−(CHOR11、−(CHC(CHOR11、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−C(O)R11、−C(O)OR11、−(CR1112C(O)OR11、−C(O)NR1112、−(CR1112C(O)NR1112、−(CHNR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−(CHNR11C(O)NR1112、−(CHNR11C(O)OR12、−NR11C(O)R12、−NR11C(O)OR12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−(CH(炭素数6〜10のアリール)、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよい。
【0019】
別の実施形態では、Rは、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルから選択され、この8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルは、Br、Cl、F、−(CHCH(OR11)CH、−(CHOR11、−(CHC(CHOR11、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−C(O)R11、−C(O)OR11、−(CR1112C(O)OR11、−C(O)NR1112、−(CR1112C(O)NR1112、−(CHNR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−(CHNR11C(O)NR1112、−(CHNR11C(O)OR12、−NR11C(O)R12、−NR11C(O)OR12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−(CH(炭素数6〜10のアリール)、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよい。
【0020】
別の実施形態では、Rは、Br、Cl、F、−(CHCH(OR11)CH、−(CHOR11、−(CHC(CHOR11、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−C(O)R11、−C(O)OR11、−(CR1112C(O)OR11、−C(O)NR1112、−(CR1112C(O)NR1112、−(CHNR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−(CHNR11C(O)NR1112、−(CHNR11C(O)OR12、−NR11C(O)R12、−NR11C(O)OR12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−(CH(炭素数6〜10のアリール)、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよい5〜7員のヘテロアリールである。
【0021】
別の実施形態では、RとRは一体となって、炭素数4〜8の飽和シクロアルキル、炭素数5〜8の不飽和シクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、及び炭素数6〜10のアリールから選択した環を形成し、該環は、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CH、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよい。
【0022】
更なる実施形態では、R10はHである。別の実施形態では、RはHである。別の実施形態では、RとRは独立して、H、F、CF、CHから選択される。別の実施形態では、RとRはHである。別の実施形態では、RとRはFである。別の実施形態では、RはHであり、RはCHである。別の実施形態では、RはCHであり、RはHである。更なる実施形態では、RとRは一体となって、炭素数3〜5のシクロアルキル環を形成することができる。別の実施形態では、RとRはHである。
【0023】
別の実施形態では、R


から選択される。
【0024】
別の実施形態では、R

である。
【0025】
別の実施形態では、R

である。
【0026】
別の実施形態では、R

である。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、6−((5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン、3−(キノリン−6−イルメチル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−アミン、6−((5−ヨード−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン、6−((5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン、2−(4−(3−(キノリン−6−イルメチル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノールから選択した化合物、又はその製薬学的に許容可能な塩に関する。
【0028】
更なる態様では、本発明は、式I若しくは式IIの化合物、又はその製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0029】
更なる態様では、本発明は、哺乳類のc−Met関連障害を治療するための医薬を製造する目的で、式I若しくは式IIの化合物、又はその製薬学的に許容可能な塩を使用することに関する。
【0030】
更なる態様では、本発明は、哺乳類の癌を治療するための医薬を製造する目的で、式I若しくは式IIの化合物、又はその製薬学的に許容可能な塩を使用することに関する。
【0031】
更なる態様では、本発明は、式I若しくは式IIの化合物を使用することに関し、癌は、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵癌、神経膠腫、肝癌、胃癌、頭部癌、頸部癌、黒色腫、腎癌、白血病、骨髄腫、及び肉腫から選択される。
【0032】
更なる態様では、本発明は、c−Met関連障害を有する哺乳類を治療する方法であって、式I若しくは式IIの化合物、又はその製薬学的に許容可能な塩を治療有効量、該哺乳類に投与することを含む方法に関する。
【0033】
更なる態様では、本発明は、癌を有する哺乳類を治療する方法であって、式I若しくは式IIの化合物、又はその製薬学的に許容可能な塩を治療有効量、該哺乳類に投与することを含む方法に関する。
【0034】
更なる態様では、本発明は、癌を治療する方法であって、該癌が、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵癌、神経膠腫、肝癌、胃癌、頭部癌、頸部癌、黒色腫、腎癌、白血病、骨髄腫、及び肉腫から選択される方法に関する。更なる実施形態では、前記哺乳類はヒトである。更なる実施形態では、前記哺乳類はイヌ科の動物である。
【0035】
定義
「製薬学的に許容可能な塩」とは、その親化合物の生物学的効果と特性を保持する塩を指す。このような塩としては、親化合物の遊離塩基を、塩酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸、及び過塩素酸などの無機酸、又は、酢酸、シュウ酸、(D)若しくは(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸)、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、イセチオン酸、乳酸、マンデル酸、粘液酸、パモン酸、パントテン酸、コハク酸、若しくはマロン酸などの有機酸、好ましくは塩酸若しくは(L)リンゴ酸と反応させることによって得られる酸付加塩、あるいは、親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンによって置換されるか、又は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合する場合に形成される塩が挙げられる。
【0036】
「製薬学的に許容可能な賦形剤」又は「賦形剤」とは、化合物を更に投与しやすくする目的で医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類及び様々な種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。
【0037】
「医薬組成物」とは、本明細書に記載されている化合物、又はその生理学的に許容可能な塩の1種以上と、生理学的に許容可能な担体及び賦形剤のような他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物の目的は、器官への化合物の投与を容易にすることである。
【0038】
本明細書で使用する場合、「生理学的に許容可能な担体」とは、器官を有意に刺激しないと共に、投与した化合物の生物学的な活性と特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。
【0039】
「方法」という用語は、与えられた課題を達成するための方式、手段、技法、及び手順を指し、化学分野、製薬学分野、生物分野、生化学分野、及び医学分野の専門家に知られている手段、技法、及び手順、又は、これらの専門家によって、既知の手段、技法、及び手順から容易に開発される方式、手段、技法、及び手順が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用する場合、「調節」又は「調節する」という用語は、c−Metの触媒活性の変更を指す。特に、「調節する」とは、c−Metの触媒活性を活性化すること、好ましくは、c−Metが暴露される化合物若しくは塩の濃度に応じて、c−Metの触媒活性を活性化若しくは阻害すること、又はより好ましくは、c−Metの触媒活性を阻害することを指す。
【0041】
「接触させる」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明の化合物が直接的に、すなわちc−Met自体と相互作用することによって、又は間接的に、すなわちc−Metの触媒活性が依存する別の分子と相互作用することによって、c−Metの触媒活性に作用を及ぼすことができるような形で、本発明の化合物とc−Metとを結びつけることを指す。このような「接触」は、インビトロ、すなわち試験管、ペトリ皿などの中で実現させることができる。試験管では、接触は、化合物とc−Metのみを対象にしても、全細胞を対象にしてもよい。細胞を細胞培養皿内で維持又は増殖させ、その環境内で化合物と接触させてもよい。このような場合には、より複雑な生体でインビボにて特定の化合物を使用しようと試みる前に、その化合物がc−Met関連障害に作用する能力、すなわち、化合物のIC50(後で定義する)を割り出すことができる。生体外の細胞の場合には、c−Metを化合物と接触させる多くの方法が存在し、これらの方法は当業者に周知であり、直接細胞に注入するマイクロインジェクション法、及び多くの膜貫通担体技法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
「重水素化」という用語は、水素を重水素で置換することを指す。
【0043】
「インビトロ」とは、例えば試験管中又は培地中(これらに限定されない)などの人工環境中で行う手順を指す。当業者であれば、例えば、単離c−Metをインビトロ環境で調節因子と接触させることができることは分かるであろう。あるいは、単離細胞をインビトロ環境で調節因子と接触させることもできる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「インビボ」とは、マウス、ラット、ウサギ、有蹄動物、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、霊長類、又はヒト(これらに限定されない)のような生体内で行う手順を指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、「c−Met関連障害」とは、c−Metの触媒活性の不適切な活性、すなわち過少活性、又はより一般的には過剰活性を特徴とする状態を指す。また、「c−Met関連障害」とは、c−Metを産生する遺伝子中に突然変異が存在し、その結果、c−Met触媒活性が向上又は低下したc−Metを産生する状態も指す。
【0046】
不適切な触媒活性は、(1)通常はc−Metを発現しない細胞中でc−Metが発現すること、(2)c−Metの発現の増加によって、望ましくないことに、細胞の増殖、分化、及び/若しくは成長が起こること、又は、(3)c−Metの発現の減少によって、望ましくないことに、細胞の増殖、分化、及び/若しくは成長が減少することのいずれかが原因で生じる場合がある。c−Metの過剰活性とは、c−Metをコードする遺伝子の増幅、又は、細胞の増殖、分化、及び/若しくは成長の障害と相関する(すなわち、c−Metのレベルが向上するのに応じて、細胞障害の1つ以上の症状の重症度が向上する)恐れのあるレベルのc−Met活性の産生のいずれかを指す。過少活性とは、当然のことながら過剰活性とは逆であり、c−Met活性のレベルが低下するのに応じて、細胞障害の1つ以上の症状の重症度が向上する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、c−Metが仲介する細胞障害及び/又はそれに付随する症状を緩和又は排除する方法を指す。特に癌に関する場合には、これらの用語は単に、癌に羅患した個体の期待寿命を延長するか、又は、癌の症状の1つ以上を軽減することを意味する。
【0048】
「生物」という用語は、少なくとも1個の細胞からなるいずれかの生命体を指す。生体は、例えば単一の真核細胞のように単純であることも、哺乳類のように複雑であることもできる。好ましい態様では、生物は哺乳類である。特に好ましい態様では、哺乳類はヒトである。
【0049】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、治療している障害の1つ以上の症状をある程度和らげる、化合物の投与量を指す。癌の治療に関する場合には、治療有効量は、(1)腫瘍の大きさを縮小し、(2)腫瘍の転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは止め)、(3)腫瘍の成長をある程度阻害し(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは止め)、及び/又は、(4)癌に関連する1つ以上の症状をある程度緩和する(若しくは、好ましくは排除する)効果を有する量を指す。
【0050】
「モニタリング」とは、c−Metを発現している細胞を化合物と接触させる効果を観察又は検出することを意味する。この観察又は検出される効果は、細胞表現型の変化、c−Metの触媒活性の変化、又はc−Metと天然の結合パートナーとの相互作用の変化であることができる。このような効果を観察又は検出する技法は、当該技術分野において周知である。例えば、c−Metの触媒活性は、標的分子のリン酸化の速度又は量を割り出すことによって観察してよい。
【0051】
「細胞表現型」とは、細胞若しくは組織の外観、又は、細胞若しくは組織の生物学的機能を指す。細胞表現型の非限定的な例は、細胞の大きさ、細胞の成長、細胞の増殖、細胞の分化、細胞の生存、アポトーシス、及び栄養の摂取と利用である。このような表現型の特徴は、当該技術分野において周知の技法によって測定可能である。
【0052】
「天然の結合パートナー」とは、細胞内でc−Metに結合するポリペプチドを指す。天然の結合パートナーは、c−Metが仲介するシグナル伝達プロセスにおいて、シグナルを伝える役割を果たすことができる。天然の結合パートナーとc−Metとの相互作用の変化は、c−Metと天然の結合パートナーとの複合体の濃度の向上又は低下として現れ、その結果、c−Metがシグナル伝達を仲介する能力の観察可能な変化として現れる場合がある。
【0053】
本明細書で使用する場合、「投与する」又は「投与」とは、c−Met関連障害を予防又は治療する目的で、本発明の化合物若しくは塩、又は、本発明の化合物若しくは塩を含有する医薬組成物を生物に送達することを指す。「異常な細胞増殖」と「過剰増殖性障害」という用語は、本願では同義的に用いる。
【0054】
「異常な細胞増殖」とは、本明細書で使用する場合、正常細胞の異常増殖と異常細胞の増殖を含め、正常な調節メカニズムから独立した細胞増殖(例えば接触阻止の喪失)を指す。このような増殖としては、(1)活性化Rasオンコジーンを発現している良性及び悪性双方の腫瘍細胞(腫瘍)の異常増殖、(2)別の遺伝子の発癌突然変異の結果、Rasタンパクが活性化される良性及び悪性双方の腫瘍細胞の異常増殖、(3)異常なRas活性化が起こる他の増殖性疾患の良性及び悪性細胞の異常増殖が挙げられるが、これらに限定されない。上記の良性の増殖性疾患の例は、乾癬、良性前立腺肥大、ヒトパピローマウイルス(HPV)、及び再狭窄である。また、「異常な細胞増殖」は、ファルネシルプロテイントランスフェラーゼという酵素の活性に起因する良性及び悪性双方の異常な細胞増殖も指すと共に、これらを含む。
【0055】
「アルキル」とは、直鎖又は分枝鎖を含む飽和脂肪族炭化水素を指す。アルキル基は1〜20個の炭素原子を有するのが好ましい(本明細書において数値範囲、例えば「1〜20個」が示されている場合には必ず、その基、今回のケースではアルキル基に、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから、最大で20個の炭素原子が含まれていてよいことを意味する)。アルキルは、1〜10個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキルであるのがより好ましい。アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルであるのが最も好ましい。アルキル基は、置換されていてもされていなくてもよい。置換されている場合には、各置換基は、ハロゲン、−ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、−OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CF、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、及びアリールから個別に選択した1つ以上の基であるのが好ましい。RとR’は独立して、H、アルキル、又はアリールであることができ、このアルキル又はアリールは、ハロゲン、(CHN(R”)、(CHCOR”、(CHOR”、(CHOC(O)R”、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノカルボニル、ヘテロ脂環式環、アリール、アルコキシ、−OCF、アリールオキシ、C(O)NH、又はヘテロアリールで更に置換されていてもよい。R”はH、アルキル、又はアリールであることができる。nは0〜3である。
【0056】
「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖、又は環状基を含め、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素を指す。アルケニル基は2〜20個の炭素原子を有するのが好ましい(本明細書において数値範囲、例えば「2〜20個」が示されている場合には必ず、その基、今回のケースではアルケニル基に、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから、最大で20個の炭素原子が含まれていてよいことを意味する)。アルケニルは、2〜10個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルケニルであるのがより好ましい。アルケニルは、2〜6個の炭素原子を有する低級アルケニルであるのが最も好ましい。アルケニル基の非限定的な例としては、1−プロペニル、1及び2−ブテニルなどが挙げられる。アルケニル基は、置換されていてもされていなくてもよい。置換されている場合には、各置換基は、ハロゲン、−ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、−OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CF、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、及びアリールから個別に選択した1つ以上の基であるのが好ましい。上記のRとR’は、本明細書で定義されているものである。
【0057】
「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖、分枝鎖、又は環状基を含め、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する脂肪族炭化水素を指す。アルキニル基は2〜20個の炭素原子を有するのが好ましい(本明細書において数値範囲、例えば「2〜20個」が示されている場合には必ず、その基、今回のケースではアルキニル基に、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから、最大で20個の炭素原子が含まれてよいことを意味する)。アルキニルは、2〜10個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキニルであるのがより好ましい。アルキニルは、2〜6個の炭素原子を有する低級アルキニルであるのが最も好ましい。アルキニル基の非限定的な例としては、1−プロピニル、1及び2−ブチニルなどが挙げられる。アルキニル基は、置換されていてもされていなくてもよい。置換されている場合には、各置換基は、ハロゲン、−ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、−OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CF、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、及びアリールから個別に選択した1つ以上の基であるのが好ましい。上記のRとR’は、本明細書で定義されているものである。
【0058】
「シクロアルキル」又は「脂環」基とは、全てが炭素である単環又は縮合環(すなわち隣接する炭素原子対を共有する環)の基のうち、その環の1つ以上が、完全に共役なπ電子系を有さない基を指す。シクロアルキル基は、環内に3〜8個の炭素原子を有するのが好ましい。シクロアルキル基の非限定的な例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロへキサン、アダマンタン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、及びシクロヘプタトリエンである。シクロアルキル基は、置換されていてもされていなくてもよい。置換されている場合には、各置換基は、ハロゲン、−ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、−OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CF、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、及びアリールから個別に選択した1つ以上の基であるのが好ましい。上記のRとR’は、本明細書で定義されているものである。
【0059】
「アリール」基とは、全てが炭素である単環又は縮合多環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基のうち、完全に共役なπ電子系を有する基を指す。アリール基は、環内に6〜12個の炭素原子を有するのが好ましい。アリール基の非限定的な例は、フェニル、ナフタレニル、及びアントラセニルである。アリール基は、置換されていてもされていなくてもよい。置換されている場合には、各置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、−COR’、−COOR’、−OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CF、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、及びアリールから選択した1つ以上の基であるのが好ましい。上記のRとR’は、本明細書で定義されているものである。
【0060】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」基とは、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択した1つ以上の原子を環内に有する単環基を指す。ただし、O−O、O−O−Oなどのような極めて不安定なヘテロ原子配列を含むヘテロアリール基は、本発明では意図していない。本発明で意図していない不安定な基は、当業者であれば分かるであろう。更に、ヘテロアリール基は、完全に共役なπ電子系を有する。ヘテロアリール基は、5〜7個の環原子を有するのが好ましい。典型的な単環式ヘテロアリール基の例としては下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。

【0061】
置換されている場合には、各置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、−OCOR”、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CF、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、及びアリールから選択した1つ以上の基であるのが好ましい。上記のRとR’は、本明細書で定義されているものである。
【0062】
「ヘテロ脂環式環」若しくは「ヘテロ脂環」、又は、「ヘテロ環式」若しくは「ヘテロ環」の基とは、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択した1つ以上の原子を環内に有する単環基を指す。これらの環は置換されていてもよく、また、1つ以上の二重結合を有していてもよい(すなわち、部分的に不飽和であってもよい)。しかし、これらの環は、完全に共役なπ電子系を有することはできない。ヘテロ脂環式環は、3〜8個の環原子を含むのが好ましい。好適な飽和ヘテロ脂環基の例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。

【0063】
部分不飽和ヘテロ脂環基の例としては下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。

【0064】
上に列挙されている化合物に由来するような上記の基は、可能な場合、C結合型、又はN結合型であってよい。例えば、ピロールに由来する基は、ピロール−1−イル(N結合型)、又はピロール−3−イル(C結合型)であってもよい。ヘテロ脂環式環は、置換されていてもされていなくてもよい。ヘテロ脂環式環は、1つ以上のオキソ基を含んでよい。置換されている場合には、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、−OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CF、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、及びアリールから選択した1つ以上の基であるのが好ましい。上記のRとR’は、本明細書で定義されているものである。
【0065】
「3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)」の基は、それぞれの環原子1個を介して相互に共有結合し合った2つの3〜8員のヘテロ脂環基を有する基を指す。これらの3〜8員のヘテロ脂環式環は、上で定義したいずれのヘテロ脂環式環であってもよい。更に、これらのヘテロ脂環式環は、上で定義されているように、置換されていてもされていなくてもよい。
【0066】
「ヘテロ二環式」又は「ヘテロ二環」とは、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択した1つ以上の原子を環内に有するのに加えて、完全に共役なπ電子系(すなわち、芳香族ヘテロ環)、又は、完全に共役なπ電子系を作らない1つ以上の二重結合を有する縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)の基を指す。ただし、O−O、O−O−Oなどのような極めて不安定なヘテロ原子配列を含むヘテロ二環基は、本発明では意図していない。本発明で意図していない不安定な基は、当業者であれば分かるであろう。ヘテロ二環基は、8〜10個の環原子を含むのが好ましい。ヘテロ二環式環は、置換されていてもされていなくてもよい。ヘテロ二環式環は、1つ以上のオキソ基を含んでもよい。好適な縮合環の芳香族ヘテロ二環基の例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。



【0067】
好適な縮合環のヘテロ二環基の例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。

【0068】
置換されている場合には、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CF、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、及びアリールから選択した1つ以上の基であるのが好ましい。上記のRとR’は、本明細書で定義されているものである。
【0069】
本明細書で使用する場合、−(CH(NR1314)C(O)NR1314、又は−NR11C(O)NR1112のように、異なる原子上に2つ以上のR基を有する置換基上のR基は、同じでも同じでなくてもよい。具体的には、代表的な置換基の−NR11C(O)NR1112では、2つのR11基は、互いに同じであっても同じでなくてもよく、同様に、2つのR11基は、R12基と同じであっても同じでなくてもよい。例えば、−(CH(NR1314)C(O)NR1314では、2つのR13基は、互いに同じであっても同じでなくてもよく、2つのR14基は、互いに同じであっても同じでなくてもよい。同様に、2つのR13基は、2つのR14基と同じであっても同じでなくてもよい。加えて、単一の原子が1つ超の原子で置換されている場合には、その原子上の基は、同じであっても同じでなくてもよい。つまり、−NR11C(O)NR1112では、同じ窒素上のR11とR12は、互いに同じであっても同じでなくてもよい。
【0070】
「オキソ」基とはカルボニル部分を指し、したがって、オキソで置換されたアルキルとは、ケトン基を指す。
【0071】
「ヒドロキシ」基とは−OH基を指す。
【0072】
「アルコキシ」基とは、本明細書で定義されているような−O−アルキルと−O−シクロアルキル基の両方を指す。
【0073】
「アルコキシカルボニル」とは、−C(O)ORを指す。
【0074】
「アミノカルボニル」とは、−C(O)NRR’を指す。
【0075】
「アリールオキシカルボニル」とは、−C(O)O−アリールを指す。
【0076】
「アリールオキシ」基とは、本明細書で定義されているような−O−アリールと−O−ヘテロアリール基の両方を指す。
【0077】
「アリールアルキル」基とは、−アルキルアリールを指し、このアルキルとアリールは、本明細書で定義されているものである。
【0078】
「アリールスルホニル」基とは、−SOアリールを指す。
【0079】
「アルキルスルホニル」基とは、−SOアルキルを指す。
【0080】
「ヘテロアリールオキシ」基とは、ヘテロアリール−O基を指し、このヘテロアリールは、本明細書で定義されているものである。
【0081】
「ヘテロ脂環オキシ」基とは、ヘテロ脂環−O基を指し、このヘテロ脂環は、本明細書で定義されているものである。
【0082】
「カルボニル」基とは、−C(=O)Rを指す。
【0083】
「アルデヒド」基とは、Rが水素であるカルボニル基を指す。
【0084】
「チオカルボニル」基とは、−C(=S)−R基を指す。
【0085】
「トリハロメタンカルボニル」基とは、XCC(O)基を指し、このXはハロゲンである。
【0086】
「C−カルボキシル」基とは、−C(O)OR基を指す。
【0087】
「O−カルボキシル」基とは、RC(O)O基を指す。
【0088】
「カルボン酸」基とは、Rが水素であるC−カルボキシル基を指す。
【0089】
「ハロ」又は「ハロゲン」基とは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を指す。
【0090】
「トリハロメチル」基とは、−CX基を指す。
【0091】
「トリハロメタンスルホニル」基とは、XCS(O)基を指す。
【0092】
「トリハロメタンスルホンアミド」基とは、XCS(O)NR−基を指す。
【0093】
「スルフィニル」基とは、−S(O)R基を指す。
【0094】
「スルホニル」基とは、−S(O)R基を指す。
【0095】
「S−スルホンアミド」基とは、−S(O)NR−基を指す。
【0096】
「N−スルホンアミド」基とは、−NR−S(O)R基を指す。
【0097】
「O−カルバミル」基とは、−OC(O)NRR’基を指す。
【0098】
「N−カルバミル」基とは、ROC(O)NR−基を指す。
【0099】
「O−チオカルバミル」基とは、−OC(S)NRR’基を指す。
【0100】
「N−チオカルバミル」基とは、ROC(S)NR’基を指す。
【0101】
「アミノ」基とは、−NH又は−NRR’基を指す。
【0102】
「C−アミド」基とは、−C(O)NRR’基を指す。
【0103】
「N−アミド」基とは、R’C(O)NR基を指す。
【0104】
「ニトロ」基とは、−NO基を指す。
【0105】
「シアノ」基とは、−CN基を指す。
【0106】
「シリル」基とは、−Si(R)基を指す。
【0107】
「ホスホニル」基とは、−P(=O)(OR)基を指す。
【0108】
「アミノアルキル」基とは、−アルキルNRR’基を指す。
【0109】
「アルキルアミノアルキル」基とは、−アルキル−NR−アルキル基を指す。
【0110】
「ジアルキルアミノアルキル」基とは、−アルキルN−(アルキル)基を指す。
【0111】
「ペルフルオロアルキル」基とは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を指す。
【0112】
同じ分子式を有するが、性質若しくは原子の結合の順序、又は、空間における原子の配置が異なる化合物を「異性体」という。空間における原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」という。互いの鏡像でない立体異性体は「ジアステレオマー」といい、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「鏡像異性体」という。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、4個の異なる基と結合している場合には、一対の鏡像異性体が可能である。鏡像異性体は、不斉中心の絶対配置を特徴とすることができ、Cahn及びPrelogによるR体及びS体の順位則によって示されるか、又は、分子が偏光面を回転させる方式によって示され、右旋性(すなわち(+)異性体)若しくは左旋性(すなわち(−)異性体)として表される。キラル化合物は、個々の鏡像異性体、又はそれらの混合物のいずれかとして存在することができる。それぞれの鏡像異性体を同じ比率で含む混合物を「ラセミ混合物」という。本明細書で示される化学式は、互変異性と構造異性の現象を表すことができる。本発明は、c−Met活性を調節する能力を有するいずれの互変異性体又は構造異性体、及びそれらの混合物を包含すると共に、いずれか1種類の互変異性型又は構造異性型に限定されない。
【0113】
本発明の化合物は1つ以上の不斉中心を有してよく、したがって、本発明の化合物は、個々の(R)−及び(S)−立体異性体として、又はそれらの混合物として製造することができる。別段の定めがない限り、本明細書及び特許請求の範囲における特定の化合物の説明又は命名では、個々の鏡像異性体と、それらの混合物(ラセミ混合物又はその他の混合物)との両方を含むことを意図している。立体化学の分析と立体異性体の分離の方法は、当該技術分野において周知である(“Advanced Organic Chemistry”,4th edition J.March,John Wiley and Sons,New York,1992の4章における考察を参照されたい)。したがって、本発明は、c−Met活性を調節する能力を有するいずれの立体異性体、それらの対応する鏡像異性体(d−及びl−、又は、(+)及び(−)異性体)、及び、それらのジアステレオマー、並びに、それらの混合物も包含すると共に、いずれか1種類の立体異性体に限定されない。
【0114】
式I又は式IIの化合物は、互変異性と構造異性の現象を表すことができる。例えば、本明細書に記載されている化合物は、二重結合を軸としてE体又はZ体の形をとっても、E体とZ体との混合物であってもよい。本発明は、c−Met活性を調節する能力を有するいずれの互変異性体又は構造異性体、及びそれらの混合物を包含すると共に、いずれか1種類の互変異性型又は構造異性型に限定されない。
【0115】
式I又は式IIの化合物は、ヒトなどの生物の体内の酵素によって代謝されて、c−Metの活性を調節できる代謝産物を生成することになると考えられる。このような代謝産物は本発明の範囲内である。
【0116】
本質的に酸性である式I又は式IIの化合物は、薬理学的に許容可能な様々なカチオンと共に塩基性塩を形成することができる。このような塩の例としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特に、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0117】
本発明の化合物は不斉中心を有するので、様々な鏡像異性体及びジアステレオマーの形で存在する。本発明は、本発明の化合物のあらゆる光学異性体及び立体異性体、並びに、それらの混合物の使用と、それらを利用又は含有し得るあらゆる医薬組成物と治療法に関する。式I又は式IIの化合物は、互変異性体として存在してもよい。本発明は、このようなあらゆる互変異性体とその混合物の使用に関する。
【0118】
本発明は、式I又は式IIの化合物のプロドラッグを含む医薬組成物と、式1の化合物のプロドラッグを投与することによって、増殖性障害又は異常な細胞増殖を治療する方法とも包含する。遊離のアミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、又はカルボキシル基を有する式I又は式IIの化合物は、プロドラッグに変換することができる。プロドラッグとしては、アミノ酸残基、又は2個以上(例えば、2個、3個、若しくは4個)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖が、アミド又はエステル結合を介して、式I又は式IIの化合物の遊離のアミノ基、ヒドロキシ基、又はカルボン酸基に共有結合で結合している化合物が挙げられる。アミノ酸残基としては、一般的に3文字の略号によって表される20個の天然由来のアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。また、4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デスモシン、イソデスモシン、3−メチルヒスチジン、ノルバリン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、シトルリンホモシステイン、ホモセリン、オルニチン、及びメチオニンスルホンも挙げられる。更なるタイプのプロドラッグも包含される。例えば、遊離カルボキシル基は、アミド又はアルキルエステルとして誘導体化することができる。遊離ヒドロキシ基は、Advanced Drug Delivery Reviews,1996,19,115に概説されているように、ヘミスクシネート、リン酸エステル、ジメチルアミノアセテート、及びホスホリルオキシメチルオキシカルボニルなど(これらに限定されない)の基を用いて誘導体化してよい。ヒドロキシ基及びアミノ基のカルバメートプロドラッグも挙げられ、同様に、ヒドロキシ基のカーボネートプロドラッグ、スルホン酸エステル、及び硫酸エステルも挙げられる。アシル基が、エーテル官能基、アミン官能基、及びカルボン酸官能基など(これらに限定されない)の基で置換されていてもよいアルキルエステルであってよいか、又は、アシル基が、上記のようなアミノ酸エステルである(アシルオキシ)メチル及び(アシルオキシ)エチルエーテルとしてのヒドロキシ基の誘導体化も包含される。このタイプのプロドラッグは、J.Med.Chem.1996,39,10に記載されている。また、遊離アミンは、アミド、スルホンアミド、又はホスホンアミドとして誘導体化することもできる。これらのプロドラッグ部分にはいずれも、エーテル官能基、アミン官能基、及びカルボン酸官能基など(これらに限定されない)の基を組み込んでよい。
【0119】
用途
本発明の化合物は、様々な用途で利用される。当業者には明らかなように、METのキナーゼ活性は、様々な方法で調節することができる。すなわち、タンパクの初期リン酸化を調節するか、又は、タンパクの他の活性部位の自己リン酸化を調節するかのいずれかによって、METのリン酸化/活性化に作用を及ぼすことができる。あるいは、METのキナーゼ活性は、METのリン酸化の基質の結合に作用を及ぼすことによって調節してもよい。
【0120】
本発明の化合物は、受容体チロシンキナーゼに結合するか、及び/又は、受容体チロシンキナーゼの活性を調節するのに有用である。1つの実施形態では、この受容体チロシンキナーゼは、METサブファミリーのメンバーである。更なる実施形態では、METはヒトMETであるが、他の生物に由来する受容体チロシンキナーゼの活性も、本発明の化合物によって調節することができる。この文脈では、調節とは、METのキナーゼ活性を向上又は低下させることを意味する。1つの実施形態では、本発明の化合物はMETのキナーゼ活性を阻害する。
【0121】
本発明の化合物は、細胞増殖性疾患を治療又は予防する目的で使用する。本発明で提供される方法及び組成物によって治療することができる疾患状態としては、癌(後で更に論じる)、自己免疫疾患、関節炎、移植片拒絶反応、炎症性腸疾患、医療処置(手術、血管形成術などが挙げられるが、これらに限定されない)後に誘発される増殖が挙げられるが、これらに限定されない。当然のことながら、場合によっては、細胞が過剰増殖状態又は低増殖状態(異常状態)でなくとも、治療を必要とする場合がある。したがって、1つの実施形態では、本発明は、上記の障害又は状態のいずれか1つを患っているか、又は最終的に患う恐れのある細胞又は個体への適用を含む。
【0122】
本発明で提供される化合物、組成物、及び方法は特に、皮膚癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、精巣癌などのような固形腫瘍を含む癌の治療及び予防に有用であるとみなされている。1つの実施形態では、本発明の化合物は、癌を治療するのに有用である。特には、本発明の化合物、組成物、及び方法によって治療することができる癌としては、心臓の癌、すなわち、肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、及び奇形腫、肺の癌、すなわち、気管支癌(扁平上皮癌、未分化小細胞癌、未分化大細胞癌、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫、胃腸の癌、すなわち、食道癌(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃癌(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵癌(腺管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸癌(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポージ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸癌(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫)、尿生殖路の癌、すなわち、腎癌(腺癌、ウィルムス腫[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道癌(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺癌(腺癌、肉腫)、精巣癌(セミノーマ、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫)、肝臓の癌、すなわち、ヘパトーム(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫、骨の癌、すなわち、骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫、脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、及び巨細胞腫、神経系の癌、すなわち、頭蓋癌(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜癌(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳癌(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形グリア芽腫、希突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫)、婦人科の癌、すなわち、子宮癌(子宮内膜癌)、頸癌(子宮頸癌、前腫瘍性子宮頸部形成異常)、卵巣癌(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌]、顆粒膜−莢膜細胞腫、セルトーリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰癌(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒肉腫)、膣癌(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、ファローピウス管の癌(癌腫)、血液系の癌、すなわち、血液癌(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫]、皮膚の癌、すなわち、悪性黒肉腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポージ肉腫、異形成性母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬、並びに、副腎の癌、すなわち神経芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本明細書に記載されている「癌細胞」という用語には、上で定めた状態のいずれか1つに冒された細胞が含まれる。別の実施形態では、本発明の化合物は、組織球性リンパ腫、肺腺癌、小細胞肺癌、膵癌、肝癌、胃癌、結腸癌、多発骨髄腫、多形グリア芽腫、及び乳癌から選択した癌を治療又は予防するのに有用である。更に別の実施形態では、本発明の化合物は、組織球性リンパ腫、肺腺癌、小細胞肺癌、膵癌、肝癌、胃癌、結腸癌、多発骨髄腫、多形グリア芽腫、及び乳癌から選択した癌を治療するのに有用である。別の実施形態では、本発明の化合物は、癌細胞及び癌の転移の予防又は調節に有用である。特には、本発明の化合物は、卵巣癌、小児肝細胞癌、転移性頭頸部扁平上皮癌、胃癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、肺癌、鼻咽腔癌、膵癌、多形グリア芽腫、及び肉腫の転移を予防又は調節するのに有用である。
【0123】
本発明の化合物は、標準的な製薬学的慣例に従って、哺乳類、好ましくはヒトに、単独で、又は製薬学的に許容可能な担体、賦形剤、若しくは希釈剤と併せて、医薬組成物で投与してよい。本発明の化合物は、経口投与又は非経口投与(静脈内投与、筋内投与、腹腔内投与、皮下投与、直腸投与、及び局所投与を含む)することができる。
【0124】
当該有効成分を含む医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁剤、分散性散剤若しくは顆粒剤、エマルジョン、硬若しくは軟カプセル剤、又は、シロップ剤若しくはエリキシル剤のように、経口用に適した形態であってよい。経口用である組成物は、医薬組成物の製造に関する技術分野において既知のいずれかの方法に従って調製してよく、このような組成物は、製薬学的に洗練かつ口当たりのよい製剤をもたらす目的で、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、及び保存剤からなる群から選択した1種以上の物質を含有してよい。錠剤は、錠剤の製造に適した製薬学的に許容可能な非毒性賦形剤との混合体として有効成分を含有する。これらの賦形剤は例えば、不活性希釈剤(炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウムなど)、造粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、又はアルギン酸)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニル−ピロリドン、又はアカシア)、及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルク)であってよい。錠剤はコーティングしなくてもよく、又は、薬剤の不快な味を隠すか、若しくは胃腸管での崩壊と吸収を遅らせることによって、長期間にわたる持続作用をもたらす目的で、既知の技法によってコーティングしてもよい。例えば、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルセルロースのような水溶性矯味剤、又は、エチルセルロース、酢酸酪酸セルロースのような遅延剤を用いてよい。
【0125】
経口用製剤は、有効成分が、不活性な固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤として、あるいは、有効成分が、ポリエチレングリコールのような水溶性担体、又は、油性媒質、例えば、落花生油、液体パラフィン、若しくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセル剤としても提供してよい。
【0126】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤との混合体で活性物質を含有する。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントゴム、及びアカシアゴム、天然由来のホスファチドであってよい分散剤又は湿潤剤、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、又はエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートである。また、水性懸濁剤は、1種以上の保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、又はp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、1種以上の着色剤、1種以上の矯味矯臭剤、及び1種以上の甘味剤、例えば、スクロース、サッカリン、又はアスパルテームも含有してよい。
【0127】
油性懸濁剤は、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはココナッツ油、又は、液体パラフィンのような鉱油に有効成分を懸濁することによって調合してよい。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば、蜜ろう、固形パラフィン、又はセチルアルコールを含有してよい。口当たりのよい経口製剤をもたらす目的で、上記のような甘味剤、及び矯味矯臭剤を添加してもよい。これらの組成物は、ブチル化ヒドロキシアニソール又はα−トコフェロールのような抗酸化剤を添加することによって保存してよい。
【0128】
水を加えることによって水性懸濁剤を調製するのに適した分散性散剤及び顆粒剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1種以上の保存剤との混合体で有効成分をもたらす。好適な分散剤又は湿潤剤、及び懸濁剤としては、上記のものが挙げられる。追加的な賦形剤、例えば、甘味剤、矯味矯臭剤、及び着色剤も存在してよい。これらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤を添加することによって保存してよい。
【0129】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。その油相は、植物油、例えばオリーブ油若しくは落花生油、又は、鉱油、例えば液体パラフィン、あるいは、これらの混合物であってよい。好適な乳化剤は、天然由来のホスファチド、例えば大豆レシチン、並びに、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステル又は部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、及び、前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである場合がある。上記のエマルジョンは、甘味剤、矯味矯臭剤、保存剤、及び抗酸化剤も含有してよい。
【0130】
シロップ剤とエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、又はスクロースと共に調合してよい。このような調合物は、粘滑剤、保存剤、矯味矯臭剤、着色剤、及び抗酸化剤も含有してよい。
【0131】
本発明の医薬組成物は、滅菌注射用水溶液の形態であってもよい。用いてよい許容可能なビヒクル及び溶媒としては、水、リンガー液、及び生理食塩水が挙げられる。
【0132】
滅菌注射用製剤は、有効成分が油相に溶解している滅菌注射用水中油型マイクロエマルジョンであってもよい。例えば、まず、有効成分をダイズ油とレシチンとの混合物に溶解させてよい。続いて、この油溶液を水とグリセロールとの混合物中に導入して処理し、マイクロエマルジョンを形成する。
【0133】
注射用の液剤又はマイクロエマルジョンは、局所ボーラス注射によって、患者の血流に導入してよい。あるいは、本発明の化合物の循環濃度を一定に保つような形で、液剤又はマイクロエマルジョンを投与するのが有益な場合がある。このように一定の濃度に保つために、持続静脈内送達装置を用いてもよい。このような装置の一例は、Deltec CADD−PLUS(商標)モデル5400という静脈内ポンプである。
【0134】
本発明の医薬組成物は、筋肉内及び皮下投与用の滅菌注射用水性又は油性懸濁剤の形態であってもよい。この懸濁剤は、上記のような好適な分散剤又は湿潤剤、及び懸濁化剤を用いて、既知の技術に従って調合してよい。この滅菌注射用製剤は、非経口用として許容可能な非毒性の希釈剤又は溶媒中の注射用滅菌液剤又は懸濁剤、例えば1,3−ブタンジオール溶液であってもよい。更には、滅菌固定油を溶媒又は懸濁化媒質として従来どおりに使用する。この目的のためには、合成モノ又はジグリセリドを含め、いずれの無刺激性固定油も用いてよい。更には、注射剤の調製では、オレイン酸のような脂肪酸も用いる。
【0135】
式I又は式IIの化合物は、薬剤を直腸投与するための座剤の形態でも投与してよい。これらの組成物は、常温では固体であるが、直腸温度では液体となり、直腸内で融解して薬剤を放出する好適な非刺激性賦形剤と薬剤とを混合することによって調製することができる。このような材料としては、カカオ脂、グリセリンゼラチン、水素化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物、及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0136】
局所用には、式I又は式IIの化合物を含有するクリーム、軟膏剤、ゼリー、液剤、又は懸濁剤などを利用する(本願の目的では、局所用途には、洗口剤及び含そう薬が含まれるものとする)。
【0137】
本発明の化合物は、好適な鼻腔内ビヒクル及び送達装置の局所使用による鼻腔内形態で投与するか、又は、当業者に周知の経皮皮膚パッチの形態を用いて、経皮経路を介して投与することができる。経皮送達システムの形態で投与するには、当然のことながら、投与は、投与レジメンの全期間を通じて、間欠的ではなく、持続的に行うことになる。本発明の化合物は、カカオ脂、グリセリンゼラチン、水素化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物、及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルのような基剤を用いる座剤としても送達してもよい。本発明による化合物をヒトの患者に投与する場合には、1日の投与量は通常、処方する医師が決定し、この投与量は一般に、個々の患者の年齢、体重、性別、及び応答、並びに、その患者の症状の重症度によって異なる。
【0138】
1つの代表的な適用例では、癌の治療を受けている哺乳類に、好適な量の化合物を投与する。投与は、1日当たり体重1kg当たり約0.1mg〜1日当たり体重1kg当たり約60mg、好ましくは、1日当たり体重1kg当たり0.5mg〜1日当たり体重1kg当たり約40mgの量で行う。
【0139】
本発明の化合物は、既知の治療剤及び抗癌剤と併用するのにも有用である。例えば、本発明の化合物は、既知の抗癌剤と併せるのに有用である。本明細書に開示されている化合物を他の抗癌剤又は化学療法剤と併用することは、本発明の範囲内である。このような薬剤の例は、Cancer Principles and Practice of Oncology by V.T.Devita and S.Hellman(editors),6th edition(February 15,2001),Lippincott Williams&Wilkins Publishersで見出すことができる。当業者であれば、薬剤の特定の特性と該当する癌に基づいて、どの薬剤の組み合わせが有用であるかを識別できるであろう。このような抗癌剤としては、エストロゲン受容体調節因子、アンドロゲン受容体調節因子、レチノイド受容体調節因子、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬及び他の血管新生阻害薬、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害薬、アポトーシス誘導剤、並びに、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、放射線療法と併せて投与する場合に特に有用である。
【0140】
1つの実施形態では、本発明の化合物は、エストロゲン受容体調節因子、アンドロゲン受容体調節因子、レチノイド受容体調節因子、細胞毒性剤、抗増殖剤、プレニルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、HTVプロテアーゼ阻害薬、逆転写酵素阻害薬、及び他の血管新生阻害薬といった既知の抗癌剤と併用するのにも有用である。
【0141】
「エストロゲン受容体調節因子」とは、メカニズムにかかわらず、エストロゲンが受容体に結合するのを妨害又は阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体調節因子の例としては、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、及びSH646が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
「アンドロゲン受容体調節因子」とは、メカニズムにかかわらず、アンドロゲンが受容体に結合するのを妨害又は阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体調節因子の例としては、フィナステリド及び他の5α−レダクターゼ阻害薬、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、並びに、酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0143】
「レチノイド受容体調節因子」とは、メカニズムにかかわらず、レチノイドが受容体に結合するのを妨害又は阻害する化合物を指す。このようなレチノイド受容体調節因子の例としては、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミド、及びN−4−カルボキシフェニルレチナミドが挙げられる。
【0144】
「細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤」とは、主に細胞の機能を直接妨害することによって細胞死を引き起こすか、若しくは細胞増殖を阻害するか、又は、細胞有糸分裂を阻害若しくは妨害する化合物を指し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、低酸素活性化化合物、微小管阻害薬/微小管安定剤、有糸分裂キネシン阻害薬、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害薬、代謝拮抗薬、生物学的反応修飾物質、ホルモン/抗ホルモン治療薬、造血成長因子、モノクローナル抗体標的治療薬、トポイソメラーゼ阻害薬、プロテアソーム阻害薬、及びユビキチンリガーゼ阻害薬が挙げられる。
【0145】
細胞毒性剤の例としては、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルホスファミド、GPX100、四塩化(トランス,トランス,トランス)−ビス−μ−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−μ−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]、ジアリジジニルスペルミン、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、及び4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(国際公開第00/50032号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
低酸素活性化化合物の例はチラパザミンである。
【0147】
プロテアソーム阻害薬の例としては、ラクタシスチンとボルテゾミブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
微小管阻害薬/微小管安定剤の例としては、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン(例えば、米国特許第6,284,781号、及び同第6,288,237号参照)、及びBMS188797が挙げられる。
【0149】
トポイソメラーゼ阻害薬の例は、トポテカン、ヒカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−チャートリューシン(chartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロオキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロ ピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジメチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、及びジメスナである。
【0150】
有糸分裂キネシン、特にヒト有糸分裂キネシンKSPの阻害薬の例は、国際公開第01/30768号、国際公開第01/98278号、国際公開第03/050,064号、国際公開第03/050,122号、国際公開第03/049,527号、国際公開第03/049,679号、国際公開第03/049,678号、及び国際公開第03/39460号、並びに、係属中の国際出願PCT/US03/06403号(2003年3月4日出願)、同第US03/15861号(2003年5月19日出願)、同第US03/15810号(2003年5月19日出願)、同第US03/18482号(2003年6月12日出願)、及び同第US03/18694号(2003年6月12日出願)に記載されている。1つの実施形態では、有糸分裂キネシン阻害薬としては、KSP阻害薬、MKLP1阻害薬、CENP−E阻害薬、MCAK阻害薬、Kif14阻害薬、Mphosphl阻害薬、及びRab6−KIFL阻害薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
「ヒストンデアセチラーゼ阻害薬」の例としては、SAHA、TSA、オキサムフラチン、PXD101、MG98、バルプロ酸、及びスクリプタイドが挙げられるが、これらに限定されない。他のヒストンデアセチラーゼ阻害薬に関する内容は、Miller,T.A.et al.J.Med.Chem.46(24):5097−5116(2003)で見出すことができる。
【0152】
「有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害薬」としては、オーロラキナーゼ阻害薬、Polo様キナーゼ(PLK)阻害薬(特にPLK−1阻害薬)、bub−1阻害薬、及びbub−R1阻害薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
「抗増殖剤」としては、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、及びINX3001のようなアンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチド、並びに、エノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスファート、ホステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクチナサイジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、及び3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾンのような代謝拮抗剤が挙げられる。
【0154】
モノクローナル抗体標的治療剤の例としては、癌細胞特異的モノクローナル抗体又は標的細胞特異的モノクローナル抗体に結合させた細胞毒性剤又は放射性同位体を有する治療剤が挙げられる。例としてはBexxarが挙げられる。
【0155】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害薬」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼ阻害薬を指す。用いてよいHMG−CoAレダクターゼ阻害薬の例としては、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、米国特許第4,231,938号、同第4,294,926号、及び同第4,319,039号参照)、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、米国特許第4,444,784号、同第4,820,850号、及び同第4,916,239号参照)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、米国特許第4,346,227号、同第4,537,859号、同第4,410,629号、同第5,030,447号、及び同第5,180,589号参照)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、米国特許第5,354,772号、同第4,911,165号、同第4,929,437号、同第5,189,164号、同第5,118,853号、同第5,290,946号、及び同第5,356,896号参照)、並びに、アトルバスタチン (LIPITOR(登録商標)、米国特許第5,273,995号、同第4,681,893号、同第5,489,691号、及び同第5,342,952号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法で用いてよい上記及び追加的なHMG−CoAレダクターゼ阻害薬の構造式は、M.Yalpani,“Cholesterol Lowering Drugs”,Chemistry&Industry,pp.85−89(5 February 1996)の87ページ、並びに、米国特許第4,782,084号及び同第4,885,314号に記載されている。本明細書で使用する場合、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬という用語には、HMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の製薬学的に許容可能なあらゆるラクトン形態及び開環酸形態(すなわち、ラクトン環が開いて遊離酸を形成する場合)、並びに、塩及びエステル形態が含まれ、したがって、このような塩、エステル、開環酸及びラクトン形態を使用することは、本発明の範囲に含まれる。
【0156】
「プレニルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬」とは、ファルネシルプロテイントランスフェラーゼ(FPTase)、ゲラニルゲラニルプロテイントランスフェラーゼI型(GGPTase−I)、及びゲラニルゲラニルプロテイントランスフェラーゼII型(GGPTase−II、Rab GGPTaseともいう)などのプレニルプロテイントランスフェラーゼ酵素のいずれか1種又はいずれかの組み合わせを阻害する化合物を指す。
【0157】
プレニルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬の例は、国際公開第96/30343号、国際公開第97/18813号、国際公開第97/21701号、国際公開第97/23478号、国際公開第97/38665号、国際公開第98/28980号、国際公開第98/29119号、国際公開第95/32987号、米国特許第 5,420,245号、米国特許第5,523,430号、米国特許第5,532,359号、米国特許第5,510,510号、米国特許第5,589,485号、米国特許第5,602,098号、欧州特許第0 618 221号、欧州特許第0 675 112号、欧州特許第0 604 181号、欧州特許第0 696 593号、国際公開第94/19357号、国際公開第95/08542号、国際公開第95/11917号、国際公開第95/12612号、国際公開第95/12572号、国際公開第95/10514号、米国特許第5,661,152号、国際公開第95/10515号、国際公開第95/10516号、国際公開第95/24612号、国際公開第95/34535号、国際公開第95/25086号、国際公開第96/05529号、国際公開第96/06138号、国際公開第96/06193号、国際公開第96/16443号、国際公開第96/21701号、国際公開第96/21456号、国際公開第96/22278号、国際公開第96/24611号、国際公開第96/24612号、国際公開第96/05168号、国際公開第96/05169号、国際公開第96/00736号、米国特許第5,571,792号、国際公開第96/17861号、国際公開第96/33159号、国際公開第96/34850号、国際公開第96/34851号、国際公開第96/30017号、国際公開第96/30018号、国際公開第96/30362号、国際公開第96/30363号、国際公開第96/31111号、国際公開第96/31477号、国際公開第96/31478号、国際公開第96/31501号、国際公開第97/00252号、国際公開第97/03047号、国際公開第97/03050号、国際公開第97/04785号、国際公開第97/02920号、国際公開第97/17070号、国際公開第97/23478号、国際公開第97/26246号、国際公開第97/30053号、国際公開第97/44350号、国際公開第98/02436号、及び米国特許第5,532,359号の公報及び特許に記載されている。プレニルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬の血管新生での役割の例については、European J.of Cancer,Vol.35,No.9,pp.1394−1401(1999)を参照されたい。
【0158】
「血管新生阻害薬」とは、メカニズムにかかわらず、新たな血管の形成を阻害する化合物を指す。血管新生阻害薬の例としては、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)及びFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害薬のようなチロシンキナーゼ阻害薬、上皮由来、線維芽細胞由来、又は血小板由来増殖因子の阻害薬、MMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)阻害薬、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリサルフェート、アスピリン及びイブプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、並びに、セレコキシブやロフェコキシブのような選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬を含むシクロオキシゲナーゼ阻害薬(PNAS,Vol.89,p.7384(1992)、JNCI,Vol.69,p.475(1982)、Arch.Opthalmol,Vol.108,p.573(1990)、Anat.Rec,Vol.238,p.68(1994)、FEBS Letters,Vol.372,p.83(1995)、Clin,Orthop.Vol.313,p.76(1995)、J.Mol.Endocrinol,Vol.16,p.107(1996)、Jpn.J.Pharmacol,Vol.75,p.105(1997)、Cancer Res.,Vol.57,p.1625(1997)、Cell,Vol.93,p.705(1998)、Intl.J.Mol.Med.,Vol.2,p.715(1998)、J.Biol.Chem.,Vol.274,p.9116(1999))、ステロイド性抗炎症薬(コルチコステロイド、ミネラルコルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、βメタゾンなど)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、(6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンギオテンシンIIアンタゴニスト(Fernandez et al.,J.Lab.Clin.Med.105:141−145(1985)参照)、かつ抗VEGF抗体(Nature Biotechnology,Vol.17,pp.963−968(October 1999)、Kim et al.,Nature,362,841−844(1993)、国際公開第00/44777、及び国際公開第00/61186号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
血管新生を調節又は阻害する他の治療剤であって、本発明の化合物と併用してよい治療剤としては、凝固及び線維素溶解系を調節又は阻害する薬剤が挙げられる(Clin.Chem.La.Med.38:679−692(2000)のレビューを参照)。凝固及び線維素溶解経路を調節又は阻害するこのような薬剤の例としては、ヘパリン(Thromb.Haemost.80:10−23(1998)参照)、低分子量ヘパリン、及びカルボキシペプチダーゼU阻害薬(活性型トロンビン活性化線溶阻害薬[TAFIa]としても知られている)(Thrombosis Res.101:329−354(2001)参照)が挙げられるが、これらに限定されない。TAFIa阻害薬は、国際公開第03/013,526号、及び米国特許仮出願第60/349,925号(2002年1月18日出願)にも記載されている。
【0160】
「細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナルを伝達するタンパクキナーゼを阻害することによって、癌細胞をDNA損傷剤に感作させる化合物を指す。このような薬剤としては、ATR、ATM、Chk1、及びChk2キナーゼの阻害薬、並びに、cdk及びcdcキナーゼ阻害薬が挙げられ、具体例としては、7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(Cyclacel)、及びBMS−387032が挙げられる。
【0161】
「細胞増殖及び生存シグナル伝達経路の阻害薬」とは、細胞表面受容体と、細胞表面受容体の下流のシグナル伝達カスケードを阻害する医薬剤を指す。このような薬剤としては、EGFR阻害薬(例えばゲフィチニブ及びエルロチニブ)、ERB−2阻害薬(例えばトラスツズマブ)、IGFR阻害薬、サイトカイン受容体阻害薬、MET阻害薬、PBK阻害薬(例えばLY294002)、セリン/スレオニンキナーゼ阻害薬(国際公開第02/083064号、国際公開第02/083139号、国際公開第02/083140号、及び国際公開第02/083138号に記載されているようなAkt阻害薬が挙げられるが、これらに限定されない)、Rafキナーゼ阻害薬(例えばBAY−43−9006)、MEK阻害薬(例えばCI−1040及びPD−098059)、並びに、mTOR阻害剤(例えばWyeth CCI−779)が挙げられる。このような薬剤としては、小分子阻害薬化合物及び抗体アンタゴニストが挙げられる。
【0162】
「アポトーシス誘導剤」としては、TNF受容体ファミリーメンバー(TRAIL受容体を含む)の活性化剤が挙げられる。
【0163】
本発明は、選択的COX−2阻害薬であるNSAIDとの併用も包含する。本明細書の目的では、選択的COX−2阻害薬であるNSAIDは、細胞又はミクロソームアッセイによって評価したCOX−1のIC50に対するCOX−2のIC50の比率として測定した場合に、COX−2を阻害する特異性がCOX−1の少なくとも100倍であるものとして定義する。このような化合物としては、米国特許第5,474,995号、米国特許第5,861,419号、米国特許第6,001,843号、米国特許第6,020,343号、米国特許第5,409,944号、米国特許第5,436,265号、米国特許第5,536,752号、米国特許第5,550,142号、米国特許第5,604,260号、米国特許第5,698,584号、米国特許第5,710,140号、国際公開第94/15932、米国特許第5,344,991号、米国特許第5,134,142号、米国特許第5,380,738号、米国特許第5,393,790号、米国特許第5,466,823号、米国特許第5,633,272号、及び米国特許第5,932,598号(これらの特許はいずれも、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0164】
本発明の治療法で特に有用であるCOX−2阻害薬は、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン、及び5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)−フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン、又はこれらの製薬学的に許容可能な塩である。
【0165】
COX−2特異的阻害薬として記載されており、したがって、本発明で有用である化合物としては、パレコキシブ、CELEBREX(登録商標)、及びBEXTRA(登録商標)、又はこれらの製薬学的に許容可能な塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
血管新生阻害薬の他の例としては、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクト−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)−フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースリン酸、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)、及び3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
上で用いられている「インテグリン遮断薬」とは、生理的リガンドがαβインテグリンに結合するのを選択的に拮抗、阻害、又は中和する化合物、生理的リガンドがαβインテグリンに結合するのを選択的に拮抗、阻害、又は中和する化合物、生理的リガンドがαβインテグリン及びαβインテグリンの両方に結合するのを拮抗、阻害、又は中和する化合物、並びに、毛細血管内皮細胞上に発現する特定のインテグリンの活性を拮抗、阻害、又は中和する化合物を指す。また、この用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、及びαβインテグリンのアンタゴニストも指す。更に、この用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、及びαβインテグリンのアンタゴニストのいずれかの組み合わせも指す。
【0168】
チロシンキナーゼ阻害薬のいくつかの具体例としては、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、イマチニブ(STI571)、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミン、及びEMD121974が挙げられる。
【0169】
抗癌化合物以外の化合物との併用も、本発明の方法に含まれる。例えば、本明細書で特許請求されている化合物と、PPAR−γ(すなわちPPAR−ガンマ)アゴニスト及びPPAR−δ(すなわちPPAR−デルタ)アゴニストとの併用は、特定の悪性腫瘍の治療に有用である。PPAR−γ及びPPAR−δは、核内ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ及びδである。内皮細胞上でのPPAR−γの発現と、その血管新生への関与は、文献に報告されている(J.Cardiovasc.Pharmacol.1998;31:909−913、J.Biol.Chem.1999;274:9116−9121、Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000;41:2309−2317参照)。更に最近では、PPAR−γアゴニストがインビトロにおいて、VEGFに対する血管新生応答を阻害することが示されており、トログリタゾン及びマレイン酸ロシグリタゾンの双方が、マウスの網膜血管新生の進行を阻害することが示されている(Arch.Ophthamol.2001;119:709−717)。PPAR−γアゴニスト及びPPAR−γ/αアゴニストの例としては、チアゾリジンジオン(DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン、及びピオグリタゾンなど)、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンゾイソキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(米国特許出願第09/782,856号に開示されている)、及び2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(米国特許出願第60/235,708号、及び同第60/244,697に開示されている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
本発明の別の実施形態は、癌の治療のために、本明細書に開示されている化合物を遺伝子治療と併せて用いることである。癌を治療するための遺伝的戦略の概要については、Hall et al(Am J Hum Genet 61:785−789,1997)、及びKufe et al(Cancer Medicine,5th Ed,pp876−889,BC Decker,Hamilton 2000)を参照されたい。遺伝子治療を用いて、いずれかの腫瘍抑制遺伝子を送達することができる。このような遺伝子の例としては、組換えウイルスの媒介による遺伝子導入によって送達できるp53(例えば米国特許第6,069,134号参照)、uPA/uPARアンタゴニスト(“Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice,”Gene Therapy,August 1998;5(8):1105−13)、及びインターフェロンγ(J.Immunol.2000;164:217−222)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
本発明の化合物は、先天的多剤耐性(MDR)、特に輸送タンパクの高レベルの発現と関連するMDRの阻害薬と併せて投与してもよい。このようなMDR阻害薬としては、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853、及びPSC833(バルスポダール)のようなp−糖タンパク(P−gp)阻害薬が挙げられる。
【0172】
本発明の化合物は、本発明の化合物を単独で、又は放射線療法と併せて用いることに起因する場合のある悪心又は嘔吐(急性、遅延型、遅発型、及び先行型の嘔吐を含む)を治療するための制吐剤と併用してもよい。嘔吐を予防又は治療する目的で、本発明の化合物を他の制吐剤、特に、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト(オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、及びザチセトロンなど)、GABAB受容体アゴニスト(バクロフェンなど)、コルチコステロイド(Decadron(デキサメタゾン)、Kenalog、Aristocort、Nasalide、Preferid、Benecorten、又は米国特許第2,789,118号、同第2,990,401号、同第3,048,581号、同第3,126,375号、同第3,929,768号、同第3,996,359号、同第3,928,326号、及び同第3,749,712号に開示されているような他のコルチコステロイドなど)、抗ドーパミン作用薬(フェノチアジン(例えばプロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジン、及びメソリダジン)、メトクロプラミド、又はドロナビノールなど)と併用してもよい。1つの実施形態では、本発明の化合物を投与することに起因する場合のある嘔吐を治療又は予防するためのアジュバントとして、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト、及びコルチコステロイドから選択した制吐剤を投与する。本発明の化合物と併用するニューロキニン−1受容体アンタゴニストは例えば、米国特許第5,162,339号、同第5,232,929号、同第5,242,930号、同第5,373,003号、同第5,387,595号、同第5,459,270号、同第5,494,926号、同第5,496,833号、同第5,637,699号、同第5,719,147号、欧州特許第0360390号、同第0394989号、同第0428434号、同第0429366号、同第0430771号、同第0436334号、同第0443132号、同第0482539号、同第0498069号、同第0499313号、同第0512901号、同第0512902号、同第0514273号、同第0514274号、同第0514275号、同第0514276号、同第0515681号、同第0517589号、同第0520555号、同第0522808号、同第0528495号、同第0532456号、同第0533280号、同第0536817号、同第0545478号、同第0558156号、同第0577394号、同第0585913号、同第0590152号、同第0599538号、同第0610793号、同第0634402号、同第0686629号、同第0693489号、同第0694535号、同第0699655号、同第0699674号、同第0707006号、同第0708101号、同第0709375号、同第0709376号、同第0714891号、同第0723959号、同第0733632号、及び同第0776893号、国際公開第90/05525号、同第90/05729号、同第91/09844号、同第91/18899号、同第92/01688号、同第92/06079号、同第92/12151号、同第92/15585号、同第92/17449号、同第92/20661号、同第92/20676号、同第92/21677号、同第92/22569号、同第93/00330号、同第93/00331号、同第93/01159号、同第93/01165号、同第93/01169号、同第93/01170号、同第93/06099号、同第93/09116号、同第93/10073号、同第93/14084号、同第93/14113号、同第93/18023号、同第93/19064号、同第93/21155号、同第93/21181号、同第93/23380号、同第93/24465号、同第94/00440号、同第94/01402号、同第94/02461号、同第94/02595号、同第94/03429号、同第94/03445号、同第94/04494号、同第94/04496号、同第94/05625号、同第94/07843号、同第94/08997号、同第94/10165号、同第94/10167号、同第94/10168号、同第94/10170号、同第94/11368号、同第94/13639号、同第94/13663号、同第94/14767号、同第94/15903号、同第94/19320号、同第94/19323号、同第94/20500号、同第94/26735号、同第94/26740号、同第94/29309号、同第95/02595号、同第95/04040号、同第95/04042号、同第95/06645号、同第95/07886号、同第95/07908号、同第95/08549号、同第95/11880号、同第95/14017号、同第95/15311号、同第95/16679号、同第95/17382号、同第95/18124号、同第95/18129号、同第95/19344号、同第95/20575号、同第95/21819号、同第95/22525号、同第95/23798号、同第95/26338号、同第95/28418号、同第95/30674号、同第95/30687号、同第95/33744号、同第96/05181号、同第96/05193号、同第96/05203号、同第96/06094号、同第96/07649号、同第96/10562号、同第96/16939号、同第96/18643号、同第96/20197号、同第96/21661号、同第96/29304号、同第96/29317号、同第96/29326号、同第96/29328号、同第96/31214号、同第96/32385号、同第96/37489号、同第97/01553号、同第97/01554号、同第97/03066号、同第97/08144号、同第97/14671号、同第97/17362号、同第97/18206号、同第97/19084号、同第97/19942号、及び同第97/21702号、並びに、英国特許第2266529号、同第2268931号、同第2269170号、同第2269590号、同第2271774号、同第2292144号、同第2293168号、同第2293169号、及び同第2302689号に詳細に記載されている。このような化合物の調製については、上記の特許及び公報(参照によって本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている。
【0173】
1つの実施形態では、本発明の化合物と併用するニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、米国特許第5,719,147号に記載されている2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン、又はその製薬学的に許容可能な塩から選択する。
【0174】
本発明の化合物は、ビスホスホネート(ビスホスホネート、ジホスホネート、ビスホスホン酸、及びジホスホン酸を含むものと理解する)と併せて、骨癌を含む癌を治療又は予防するのにも有用である場合がある。ビスホスホネートの例としては、エチドロネート(Didronel)、パミドロネート(Aredia)、アレンドロネート(Fosamax)、リセドロネート(Actonel)、ゾレドロネート(Zometa)、イバンドロネート(Boniva)、インカドロネート又はシマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ミノドロネート、ネリドロネート、ピリドロネート及びチルドロネート(これらのあらゆる製薬学的に許容可能な塩、誘導体、水和物、及び混合物を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
本発明の化合物は、貧血の治療に有用である薬剤と共に投与してもよい。このような貧血治療剤は例えば、持続型エリスロポエシス受容体アクチベーター(エポエチンαなど)である。
【0176】
本発明の化合物は、好中球減少症の治療に有用である薬剤と共に投与してもよい。このような好中球減少症治療剤は例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)のような、好中球の産生と機能を調節する造血成長因子である。G−CSFの例としてはフィルグラスチムが挙げられる。
【0177】
本発明の化合物は、レバミゾール、イソプリノシン、及びZadaxinのような免疫増強薬と共に投与してもよい。
【0178】
本発明の化合物は、アロマターゼ阻害剤と併せて、乳癌を治療又は予防するのにも有用である場合がある。アロマターゼ阻害剤の例としては、アナストロゾール、レトロゾール、及びエクセメスタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
本発明の化合物は、siRNA治療薬と併せて、癌を治療又は予防するのにも有用である場合もある。
【0180】
したがって、本発明の範囲には、エストロゲン受容体調節因子、アンドロゲン受容体調節因子、レチノイド受容体調節因子、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、HTVプロテアーゼ阻害薬、逆転写酵素阻害薬、血管新生阻害薬、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、先天的多剤耐性阻害薬、制吐剤、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫増強薬、細胞増殖及び生存シグル伝達の阻害薬、アポトーシス誘導剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害薬、siRNA治療薬、並びに、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤から選択した第2の化合物と併せて、本明細書で特許請求されている化合物を使用することが含まれる。
【0181】
1つの実施形態では、第2の化合物として使用する血管新生阻害薬は、チロシンキナーゼ阻害薬、上皮由来増殖因子阻害薬、線維芽細胞由来増殖因子阻害薬、血小板由来増殖因子阻害薬、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害薬、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリサルフェート、シクロオキシゲナーゼ阻害薬、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、(6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、又は抗VEGF抗体から選択する。1つの実施形態では、エストロゲン受容体調節因子は、タモキシフェン又はラロキシフェンである。
【0182】
また、請求の範囲には、放射線療法と共に、かつ/又は、エストロゲン受容体調節因子、アンドロゲン受容体調節因子、レチノイド受容体調節因子、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、HTVプロテアーゼ阻害薬、逆転写酵素阻害薬、血管新生阻害薬、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、先天的多剤耐性阻害薬、制吐剤、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫増強薬、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害薬、アポトーシス誘導剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害薬、siRNA治療薬、並びに、細胞周期チェックポイントを妨害する物質から選択した化合物と共に、式I又は式IIの化合物を治療有効量投与することを含む癌治療法も含まれる。
【0183】
本発明の更に別の実施形態は、パクリタキセル又はトラスツズマブと共に、式I又は式IIの化合物を治療有効量投与することを含む癌治療法である。本発明は更に、癌を治療又は予防する方法であって、COX−2阻害薬と共に、式I又は式IIの化合物を治療有効量投与することを含む方法も包含する。
【0184】
本発明は、癌を治療又は予防するのに有用な医薬組成物であって、式I又は式IIの化合物を治療有効量と、エストロゲン受容体調節因子、アンドロゲン受容体調節因子、レチノイド受容体調節因子、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、HTVプロテアーゼ阻害薬、逆転写酵素阻害薬、血管新生阻害薬、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害薬、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害薬、siRNA治療薬、並びに、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤から選択した化合物とを含有する医薬組成物も含む。
【0185】
本発明の上記及び他の態様は、本明細書に記載されている教示内容から明らかである。
【0186】
一般的な反応スキーム
本発明の化合物は、文献で公知であるか、又は実験手順に例示されている他の標準的な操作に加えて、下記のスキームに示されている反応を用いることによって調製してよい。したがって、以下に例示されているスキームは、列挙されている化合物、又は例示目的で用いられる全ての特定の置換基によって限定されるものではない。スキームに示されている置換基の番号は、特許請求の範囲で使用されているものと必ずしも呼応しているわけではなく、明確にするために、上記の式I又は式IIの定義の下で、複数の置換基が許容される場合にも、化合物に結合した単一の置換基が示されている。
【0187】
この一般的なスキームを修正して、本発明の化合物を調製してもよいことは、当業者であれば分かるであろう。スキーム1に示されているように、酸性条件下(Chem.Pharm.Bull.1987,35(12),4972−4976)、及び塩基性条件下の両方で、適切に置換させた2,4−ジクロロピリミジン−5−アミンIIIを適切なアミンIVと反応させると、2−クロロピリミジン−4,5−ジアミンVが得られる。5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジンVIは、NaNOのような亜硝酸塩、好適な酸、例えば塩酸及び/若しくは酢酸などの存在下で、又は、好適な溶媒中の亜硝酸イソアミルの存在下で、中間体の2−クロロピリミジン−4,5−ジアミンVを加熱下で環化することによって、調製することができる。5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジンVIを好適な溶媒(エタノールなど)中のNHで処理すると、3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−アミンVIIが得られる。3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジンVIIの5位のアミノ基は、ジヨードメタン又はトリブロモメタン中の亜硝酸イソアミルで処理することによって、ヨウ化物又は臭素に転換して(Chem.Pharm.Bull.1991,39(11),3037−3040)、5−ヨード又はブロモ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジンVIIIを得ることもできる。Suzukiの条件下(Miyaura,N.,Suzuki,A.,Chem.Rev.1995,95,2457)、Negishiの条件下(J.Org.Chem.1977,42,1821)、又はStilleの条件下(Agnew.Chem.,Int.Ed.Engl.1986,25,508、及びその参考文献)で、遷移金属を触媒として、5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジンVI、又は5−ヨード若しくはブロモ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジンVIIIと、適切に置換させたボロン酸、ボロネートエステル、ジンケート、又はスタンナンRYとクロスカップリング反応させると、カップリング生成物の5−置換−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジンI及びIIが得られる。
スキーム1

【0188】
スキーム2は、中間体の2−クロロピリミジン−4,5−ジアミンVを調製するための代替的なルートを示している。N−ジイソプロピルエタンアミンの存在下で、2,4−ジクロロ−5−ニトロピリミジンIXを好適なアミンIVと反応させると、中間体Xが得られる。H、木炭上の白金又はパラジウムのような好適な触媒、チオフェン溶液のような好適な触媒毒、及びメタノールのような好適な溶媒の存在下で、中間体Xを還元させると、中間体の2−クロロピリミジン−4,5−ジアミンVが得られる。あるいは、同じ中間体Vを得るには、この還元反応をFeと塩化アンモニウム溶液の存在下で、又は、SnClとアルコール溶液の存在下で行うこともできる。
スキーム2

【0189】
スキーム3には更に、O−、N−、及びS−求核試薬を用いて、5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジンVIを様々に修飾すると(Chem.Pharm.Bull.1989,37(7),1731−1734)、各種の5−置換−3H[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジンXI、XII、及びXIIIを得ることができることが示されている。
スキーム3

【実施例】
【0190】
実施例で用いられている特定の略語を以下で定義する。
APCI:大気圧化学イオン化法
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
HPLC:高性能液体クロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフィーとしても知られている)
AcOH:酢酸
Pd(dppf).CHCl:[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とCHClとの複合体
DME:ジメチルエーテル
EtOAc:酢酸エチル
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
DMSO:ジメチルスルホキシド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
AUC(0−t):投与時から最終観察時までの曲線下の面積
AUC(0−∞):投与時から無限大までの曲線下の面積
max:最高血中濃度
SD:標準偏差
max:最高血中濃度到達時間
1/2:半減期
【0191】
記載されている実施例は、本発明を更に理解するのを助けることを目的としている。使用する特定の材料、種、及び条件は、本発明を例証することを目的としており、本発明の正当な範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0192】


工程1:2−クロロ−5−ニトロ−N−(キノリン−6−イルメチル)ピリミジン−4−アミン
2,4−ジクロロ−5−ニトロ−ピリミジン(2.80g、14.4mモル)をジオキサン(20mL)に溶解させた溶液に、キノリン−6−イルメタンアミン(2.28g、14.1mモル)をジオキサン(4mL)に溶解させた溶液とDIPEA(2.56mL、14.7mモル)を1滴ずつ加えた。この反応混合物を室温で2時間攪拌した。続いて、反応混合物にジクロロメタン(20mL)を加えた。溶媒を真空で除去し、50%EtOAc−ヘキサンを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって、この粗生成物を精製し、黄白色の個体として、所望の生成物(3.18g、70%)を得た。LCMS(APCI)m/z 316.0(M+H
【0193】


工程2:2−クロロ−N−(キノリン−6−イルメチル)ピリミジン−4,5−ジアミン
2−クロロ−5−ニトロ−N−(キノリン−6−イルメチル)ピリミジン−4−アミン(2.25g、7.14mモル)、SnCl(7.18g、32mモル)をエタノール(50mL)及びCHCl(10mL)に懸濁した懸濁液を5時間還流させた。この混合物を室温まで冷却し、溶媒を蒸発させた。飽和水性NaHCOによって、残渣を塩基化してpH10にした。得られた懸濁液をエタノール(500mL)中で2時間攪拌し、シリガゲルパッドで濾過した。濾液を蒸発させた。100%EtOAc〜10%MeOH−EtOAcと共に0.5%NHOを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに残渣をかけて、白色固体として所望の生成物(1.02g、50%)を得た。H NMR(300MHz、CDOD)δ4.88(s、2H)、7.46−7.53(m、2H)、7.77−8.02(m、3H)、8.32(d、1H、J=8.0Hz)、8.8(m、1H)、LCMS(APCI)m/z 286.2(M+H
2−クロロ−N−(キノリン−6−イルメチル)ピリミジン−4,5−ジアミンの代替的な合成:n−ブタノール(2mL)中のキノリン−6−イルメタンアミン(193mg、1.22mモル)、2,4−ジクロロピリミジン−5−アミン(200mg、1.22mモル)、及びDIPEA(0.64mL、3.66mモル)の混合物を電子レンジで200℃にて1時間加熱した。室温まで冷却後、この混合物にジクロロメタン(2mL)を加えた。100%EtOAc〜10%MeOH−EtOAcと共に0.5%NHOを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに、得られた混合物をかけて、白色固体として所望の生成物(142mg、40%)を得た。LCMS(APCI)m/z 286.2(M+H
【0194】


工程3:6−((5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン
2−クロロ−N−(キノリン−6−イルメチル)ピリミジン−4,5−ジアミン(1.02g、3.58mモル)をDMF(12mL)に溶解させた溶液に、亜硝酸イソアミル(0.58mL、4.30mモル)を1滴ずつ室温で加えた。続いて、この反応混合物を50℃で2時間加熱し、冷却してから、NaSOの飽和溶液(10mL)でクエンチした。水(20mL)を加えて沈殿物を溶解させてから、EtOAc(60mL)を加えた。有機層を分離し、水層をEtOAc(4×60mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、NaHCOの飽和溶液とブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させ、得られた残渣を高真空下で乾燥させて、所望の生成物(0.72g、68%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ6.04(s、2H)、7.40−8.17(m、5H)、8.94(m、1H)、9.42(s、1H)、LCMS(APCI)m/z 297.0(M+H
【実施例2】
【0195】


3−(キノリン−6−イルメチル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−アミン
6−((5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン(134mg、0.453mモル)をNH飽和EtOH(3mL)に懸濁させた懸濁液を密封圧力管中で、120℃にて2.5時間加熱した。室温まで冷却後、この反応混合物にEtOH(20mL)を加えた。沈殿物をろ過して回収し、乾燥して、所望の生成物(112mg、90%)を得た。H NMR(300MHz、DMSO−d)δ5.87(s、2H)、7.39(br s、2H)、7.51−8.04(m、4H)、8.34(m、1H)、8.89(m、1H)、9.21(s、1H)、LCMS(APCI)m/z 278.2(M+H
【実施例3】
【0196】


6−((5−ヨード−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン
3−(キノリン−6−イルメチル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−アミン(102mg、0.370mモル)をCH(2.4mL)に懸濁させた懸濁液に、亜硝酸イソアミル(0.78mL)を窒素雰囲気下で加えた。この混合物を85℃で1時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにかけて、所望の生成物(57mg、40%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ6.03(s、2H)、7.44(m、1H)、7.79−8.18(m、4H)、8.94(m、1H)、9.27(s、1H)、LCMS(APCI)m/z 389.0(M+H
【実施例4】
【0197】


6−((5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン
6−((5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン(393mg、1.33mモル)をDME(8mL)に溶解させた溶液に、1−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(415mg、1.99mモル)及び、HO(1.3mL)中のCsCO(1.30g、3.98mモル)を加えた。この反応混合物を2回脱気した。パラジウム触媒Pd(dppf).CHCl(63mg、0.077mモル)を加え、その反応混合物を更に2回脱気し、80℃まで15時間、窒素下で加熱した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で除去した。EtOAc中の50%ヘキサン〜100%EtOAc〜EcOAc中の10%MeOHを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに残渣をかけ、白色固体として所望の生成物(130mg、29%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ4.00(s、3H)、6.04(s、2H)、7.39−8.29(m、7H)、8.92(m、1H)、9.44(s、1H)、LCMS(APCI)m/z 343.0(M+H
【実施例5】
【0198】


工程1:6−((5−(1−(2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン
6−((5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン)(393mg、1.33mモル)をDME(8mL)に溶解させた溶液に、1−(2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エチル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(642mg、1.99mモル)、及びHO(1.3mL)中のCsCO(1.30g、3.98mモル)を加えた。この反応混合物を2回脱気した。パラジウム触媒Pd(dppf).CHCl(63mg、0.077mモル)を加え、その反応混合物を更に2回脱気し、80℃まで15時間、窒素下で加熱した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で除去した。EtOAc中の50%ヘキサン〜100%EtOAc〜EtOAc中の10%MeOHを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに残渣をかけて、所望の生成物(237mg、39%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ1.23−1.82(m、6H)、3.42−4.59(m、7H)、6.04(s、2H)、7.41(m、1H)7.82−7.85(m、1H)、7.90(m、1H)、8.08−8.15(m、2H)、8.31(s、1H)、8.34(s、1H)、8.90−8.92(m、1H)、9.46(s、1H)、LCMS(APCI)m/z 457.2(M+H
【0199】


工程2:2−(4−(3−キノリン−6−イルメチル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノール
6−((5−(1−(2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン(237mg、0.520mモル)とMeOH(15mL)中のTsOH.HO(119mg、0.624mモル)との混合物を3時間、室温で攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。この粗生成物を逆相HPLC(CHCN、HOの溶離液と0.1%AcOH)によって精製して、凍結乾燥後、白色粉末(116mg、60%)として上記の化合物を得た。H NMR(300MHz、DMSO−d)δ3.72(dd、2H、J=10.8、5.4Hz)、4.18(t、2H、J=5.4Hz)、4.90(t、1H、J=5.3Hz)、6.06(s、2H)、7.47(m、1H)、7.76(m、1H)、7.93−7.97(m、2H)、8.12(m、1H)、8.31(m、1H)、8.45(s、1H)、8.90(m、1H)、9.64(s、1H)、LCMS(APCI)m/z 373.2(M+H
【0200】
生物学的アッセイ
インビトロキナーゼアッセイを用いて、本発明の様々な化合物の活性と、本発明の様々な化合物が1種以上のプロテインキナーゼ(PKs)に及ぼす効果とのレベルを割り出してよい。いずれのPKに対しても同じ方針に沿って、当該技術分野において周知の技法を用いて類似のアッセイを設計することができる(例えば、FEBS Lett.1991,292,69−72参照)。
【0201】
一般的手順は、以下のとおりである。化合物とキナーゼアッセイ試薬を試験ウェルに入れる。キナーゼ酵素を加えることによってアッセイを開始する。酵素阻害薬は、測定する酵素活性を低下させる。
【0202】
c−Metの阻害に関するIC50の測定
リアクションバイオロジー社(米国19355、ペンシルベニア州モールバーン(Malvern)、スイート8、ワングレートバレーパークウェイ)が提供する標準的なc−Metキナーゼスクリーニングサービス(J.Biomol.Screen.2006,11,48−56)を利用して、実施例に記載されている本発明の化合物がc−Metキナーゼ活性を阻害する能力に関するスクリーニングを行った。化合物の試験は、10回投与によるIC50の形で、3μMから始めて3倍に段階希釈することによって行った。反応は、10μMのATPで実施した。IC50値(μM)の形によるアッセイ結果は、表1にまとめられている。
【0203】
【表1】

【0204】
インビボでの薬物動態調査
本発明の化合物を、30:70(PEG400:酸性化HO)のビヒクルに溶解した溶液として調合した。雄のスプラーグドーリーラット(体重220〜250g)の2つの異なるグループ(n=3)に、この溶液を10mg/kgで経口投与(p.o.)すると共に、2.5mg/kgで静脈内投与(i.v.)した。経口投与群で用いた動物は、薬剤の投与前に12時間、絶食させた。投与から0時間(投与前)、0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、及び24時間の時点に、血液サンプルを眼窩後穿刺によって採取した。血漿を単離し、HPLCを行って、血漿中の試験化合物の濃度を割り出した。FDA公認の薬物動態プログラムWinNonlin Professional v5.2(米国、ファーサイト)を用いて、曲線下面積(AUC)、半減期、及びバイオアベイラビリティなどを含む標準的な一連の薬物動態パラメーターを算出した。
【0205】
バイオアベイラビリティは、F(%)=(Doseiv×AUCoral(0−∞))/(Doseoral×AUCiv(0−∞))100%として算出した。静脈内及び経口投与後の雄ラットにおける実施例5の血漿濃度−時間曲線を表1に示した。静脈内及び経口投与後の雄ラットにおける実施例5の所定の薬物動態パラメーターを表2に列挙した。
【0206】
【表2】

【0207】
U87MGグリア芽細胞腫瘍異種移植片モデル
序論
U87MGグリア芽細胞腫細胞株(上海生命科学研究院、生物化学・細胞生物学研究所から入手)は、c−Met受容体を発現し、ヒト増殖因子(HGF)に応答する。この試験では、c−Met阻害薬による治療が、U87MGグリア芽細胞腫瘍異種移植片モデルに有効であるか否かを調査した。この試験では、8匹のヌードマウスの群で経口(p.o.)化合物単独治療を試験するための腫瘍成長阻害(TGI)アッセイを用いた。コントロール群は、30:70(PEG400:酸性化HO)ビヒクルで処理した。処理はいずれも、定着した皮下(s.c.)U87MG腫瘍を有するマウスで、1日目(D1)に開始した。
【0208】
方法及び材料
マウス:雌の無胸腺症ヌードマウス(BALB/cA、中国、上海の上海実験動物センター)は、試験開始時における年齢が7−8週、体重範囲が19〜21gのマウスであった。試験全体を通じて、水と飼料は自由に摂取させた。マウスは、メディシロン/MPIの動物実験施設のSPF(特定病原体除去)区域で飼育した。動物飼育室の環境管理は、18〜25℃の温度、30〜70%の湿度、及び12時間の明期/12時間の暗期のサイクルを保つように設定した。動物は、初回投与前に、研究手順に予め順化した。試験で用いた動物は、全身の健康状態とケージ飼いへの順化に基づき選択した。この試験は、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(Natural Academy Press,Washington,D.C.,1996)、及びMedicilon/MPI Preclinical Research(Shanghai)LLC Standard Operating Proceduresに従って行った。
【0209】
腫瘍の移植:U−87MGヒトグリア芽細胞腫細胞を上海生命科学研究院、生物化学・細胞生物学研究所から購入した。この細胞をインビトロで、10%熱不活化ウシ胎仔血清を添加したイーグル最小必須培地中に維持した。細胞は、37℃、空気中の5%COの雰囲気で培養し、トリプシン−EDTA処理によって、1週間に2回、定期的に継代した。指数増殖期の細胞を回収し、腫瘍播種について計数した。腫瘍モデルの作製のために、各試験マウスの右脇腹に、0.1mlの培地中のU87−MG腫瘍細胞1×10を皮下接種した。実験中、移植した腫瘍を外径カリパスによって、1日おきに盲検的に測定した。9日後、試験の1日目に、腫瘍が十分に定着した(約150mm)マウスをランダムに4つの群(n=8匹/群)に割り当てた。下記の式を用いて腫瘍の体積を算出した。
腫瘍の体積=w×l/2
式中、wは腫瘍の幅(単位:mm)であり、lは腫瘍の長さ(単位:mm)である。1mgは、腫瘍の体積1mmに相当すると想定して、腫瘍の重量を推定してもよい。
【0210】
薬物処理:30:70(PEG400:酸性化HO)溶液からなるビヒクル中に、本発明の実施例5の化合物の投与溶液を毎週新たに調製した。全ての群において、マウス20g当たり0.2mLという投与体積を、各動物の体重に合わせて乗除した。
【0211】
腫瘍成長阻害(TGI)解析:TGIは、ビヒクル処理したマウスの腫瘍体積中央値と、薬物処理したマウスの腫瘍体積中央値との差異から算出し、下記の関係式によって、ビヒクル処理したコントロール群の中央値に対する比率(%)として表した。
%TGI=100×(コントロールの腫瘍成長体積中央値−ドラッグ処理群の腫瘍成長体積中央値)/コントロールの腫瘍成長体積中央値
【0212】
MTV(n)は、試験の当該日に残っているn匹のマウスの腫瘍成長体積中央値(MTV)として定義する。腫瘍成長体積中央値は、腫瘍体積中央値から、試験開始時の腫瘍体積中央値を減じたものである。
【0213】
毒性:薬物処理後、最初の5日間は動物の体重を毎日測定し、6日目からは、試験が終わるまで1日おきに測定した。薬物関連のいずれかの有害な副作用の明白な兆候についてマウスを頻繁に検査し、毒性の臨床的兆候が観察されたときに、それを記録した。この試験全体を通じて、マウスの体重に対する有害な影響と、毒性の臨床的兆候は認められなかった。
【0214】
結果及びグラフ解析:この試験の各群において、腫瘍の成長を時間に対する腫瘍体積中央値としてプロットした。独立両側スチューデントt検定を用いて、治療群とビヒクル群との腫瘍の大きさの差異の有意性を解析した。P<0.05を統計的に有意とみなす。U87MG腫瘍成長試験の結果は図2に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】静脈内及び経口投与した後の雄ラットにおける実施例5の血漿濃度−時間曲線(平均±標準偏差)。
【図2】実施例5による、ヌードマウスのU87MGの成長阻害(値=平均±標準誤差、n=8)。実施例5の化合物を10mg/kg、40mg/kgの用量で1日に1回(q.d.)、及び、30mg/kgで1日に2回(b.i.d.)経口投与した。いずれの用量においても、無胸腺症ヌードマウスで皮下成長したU87MG腫瘍の腫瘍成長阻害は、薬物処理してから6日目以降、統計学的に有意であった(p<0.05)と共に、40mg/kg(q.d.)、30mg/kg(b.i.d.)の用量においては、腫瘍成長阻害は、薬物処理してから4日目以降、統計学的に有意であった(p<0.05)。処理最終日(12日目)に、ビヒクル処理したコントロールと比べて、用量10mg/kg(q.d.)では58%、用量40mg/kg(q.d.)では66%、用量30mg/kg(b.i.d.)では70%、腫瘍成長が阻害された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式I、若しくは部分重水素化した下記の式Iの化合物、


又は、その製薬学的に許容可能な塩
(式中、Rは独立して、−O(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、この炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルは、Br、Cl、F、−(CHCH(OR11)CH、−(CHOR11、−(CHC(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−(CR1112C(O)OR11、−C(O)NR1112、−(CR1112C(O)NR1112、−(CHNR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−(CHNR11C(O)NR1112、−(CHNR11C(O)OR12、−NR11C(O)R12、−NR11C(O)OR12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−(CH(炭素数6〜10のアリール)、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、
はHであり、
とRは独立して、H、F、CF、炭素数1〜6のアルキルから選択されるか、
又は、RとRは結合して、炭素数3〜5のシクロアルキル環を形成することができ、
は下記の式の部分であり、


式中、R、R、R、R、及びR10は独立して、水素、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CHH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11SO12、−CN、−NO、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、この炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルは、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、あるいは、
とR、又はRとR10は一体となって、炭素数4〜8の飽和シクロアルキル、炭素数5〜8の不飽和シクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、及び炭素数6〜10のアリールから選択した環を形成し、該環は、Br、Cl、F、−(CHOR、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、
11とR12は独立して、H、−(CHOR13、−(CHC(CHOR13、−CHR13(CHOR14、−C(O)OR13、−(CHCHR13OR14、−C(CH(CHOR13、−CHCFH、−(CHC(CHNR1314、−(CHNR1314、−(CHCHOR13(CHOR14、−(CH(NR1314)C(O)NR1314、−(CHS(O)13、−(CHC(O)NR1314、−NR13(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−NR13(CH(3〜8員のヘテロ環)、−(CH(8〜10員のヘテロ二環)、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、該5〜7員のヘテロアリール、3〜8員のヘテロ環、及び8〜10員のヘテロ二環は、−(CHOR13、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、3〜8員のヘテロ脂環、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、あるいは、R11とR12が同じ原子に結合している場合、R11とR12は一体となって、3〜8員のヘテロ脂環式環を形成してもよく、
13とR14は独立して、H、炭素数1〜6のアルキル、−C(O)CH、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、5〜7員のヘテロアリール、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、該5〜7員のヘテロアリールは、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、あるいは、R13とR14が同じ原子に結合している場合、R13とR14は一体となって、3〜8員のヘテロ脂環式環を形成してもよく、
各nは独立して、0、1、2、3、又は4である)。
【請求項2】
下記の式II、若しくは部分重水素化した下記の式IIの化合物、


又は、その製薬学的に許容可能な塩
(式中、R1’は独立して、水素、I、Br、Cl、F、−O(CHCH、−(CHOR11、−(CR1314NR1112、−NR11C(O)R13、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−N(CH(炭素数3〜8のシクロアルキル)、−CN、−NO、炭素数1〜6のアルキル、又は上で定義されているRから選択され、
はHであり、
とRは独立して、H、F、CF、炭素数1〜6のアルキルから選択されるか、
又は、RとRは結合して、炭素数3〜5のシクロアルキル環を形成することができ、
は独立して、水素、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11SO12、−CN、−NO、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、この炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルは、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、
mが1よりも大きい場合、各Rは独立して、水素、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11SO12、−CN、−NO、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、この炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルは、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、
11とR12は独立して、H、−(CHOR13、−(CHC(CHOR13、−CHR13(CHOR14、−C(O)OR13、−(CHCHR13OR14、−C(CH(CHOR13、−CHCFH、−(CHC(CHNR1314、−(CHNR1314、−(CHCHOR13(CHOR14、−(CH(NR1314)C(O)NR1314、−(CHS(O)13、−(CHC(O)NR1314、−NR13(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−NR13(CH(3〜8員のヘテロ環)、−(CH(8〜10員のヘテロ二環)、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、該5〜7員のヘテロアリール、3〜8員のヘテロ環、及び8〜10員のヘテロ二環は、−(CHOR13、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、3〜8員のヘテロ脂環、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、あるいは、R11とR12が同じ原子に結合している場合、R11とR12は一体となって、3〜8員のヘテロ脂環式環を形成してもよく、
13とR14は独立して、H、炭素数1〜6のアルキル、−C(O)CH、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、5〜7員のヘテロアリール、及び炭素数2〜6のアルキニルから選択され、該5〜7員のヘテロアリールは、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよく、あるいは、R13とR14が同じ原子に結合している場合、R13とR14は一体となって、3〜8員のヘテロ脂環式環を形成してもよく、
mは0、1、2、3、4、又は5である)。
【請求項3】
1’がRであり、Rが、上記の定義どおりである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が独立して、−C(O)NR1112、3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルから選択され、この3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルが、Br、Cl、F、−(CHCH(OR11)CH、−(CHOR11、−(CHC(CHOR11、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−C(O)R11、−C(O)OR11、−(CR1112C(O)OR11、−C(O)NR1112、−(CR1112C(O)NR1112、−(CHNR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−(CHNR11C(O)NR1112、−(CHNR11C(O)OR12、−NR11C(O)R12、−NR11C(O)OR12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−(CH(炭素数6〜10のアリール)、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
とRが一体となって、炭素数4〜8の飽和シクロアルキル、炭素数5〜8の不飽和シクロアルキル、3〜8員のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、及び炭素数6〜10のアリールから選択した環を形成し、該環が、Br、Cl、F、−(CHOR11、−C(O)R11、−C(O)OR11、−C(O)NR1112、−NR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−NR11C(O)NR1112、−NR11C(O)R12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のヘテロ脂環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよい、請求項1〜4に記載の化合物。
【請求項6】
が独立して、3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルから選択され、この3〜8員のヘテロ脂環、3〜8員のヘテロ脂環−(3〜8員のヘテロ脂環)、8〜10員のヘテロ二環、5〜7員のヘテロアリール、炭素数6〜10のアリール、及び炭素数2〜6のアルケニルが、Br、Cl、F、−(CHCH(OR11)CH、−(CHOR11、−(CHC(CHOR11、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−C(O)R11、−C(O)OR11、−(CR1112C(O)OR11、−C(O)NR1112、−(CR1112C(O)NR1112、−(CHNR1112、−S(O)11、−S(O)R11、−S(O)NR1112、−CF、−CFH、−(CHNR11C(O)NR1112、−(CHNR11C(O)OR12、−NR11C(O)R12、−NR11C(O)OR12、−NR11S(O)12、−CN、−NO、オキソ、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、−(CH(3〜8員のヘテロ脂環)、−(CH(5〜7員のヘテロアリール)、−(CH(炭素数6〜10のアリール)、炭素数2〜6のアルケニル、及び炭素数2〜6のアルキニルからなる群から選択した1つ以上の部分によって置換されていてもよい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
がHであり、Rがメチルであるか、又は、RがHであり、Rがメチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
とRがHである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
が下記の式から選択される、請求項1、4、及び5のいずれか一項に記載の化合物。

【請求項10】
前記化合物が、6−((5−クロロ−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン、3−(キノリン−6−イルメチル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−アミン、6−((5−ヨード−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン、6−((5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)メチル)キノリン、2−(4−(3−(キノリン−6−イルメチル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノール、又はこれらの製薬学的に許容可能な塩から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項で定義されている式I若しくは式IIによる化合物、又はその製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項12】
哺乳類のc−Met関連障害を治療するための医薬を製造する目的で、請求項1〜10のいずれか一項で定義されている式I若しくは式IIの化合物、又はその製薬学的に許容可能な塩を使用すること。
【請求項13】
哺乳類の癌を治療するための医薬を製造する目的で、請求項1〜10のいずれか一項で定義されている式I若しくは式IIの化合物、又はその製薬学的に許容可能な塩を使用すること。
【請求項14】
前記癌が、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵癌、神経膠腫、肝癌、胃癌、頭部癌、頸部癌、黒色腫、腎癌、白血病、骨髄腫、及び肉腫から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1又は2の化合物を調製するプロセスであって、下記の式VIIIの化合物とR−Yの化合物とを反応させることを含むプロセス


(式中、XはCl又はI又はBrであり、該Yは、ジンケート、ボロン酸、ボロネートエステル、又はスタンナンである)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−515343(P2011−515343A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549770(P2010−549770)
【出願日】平成21年2月28日(2009.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/035608
【国際公開番号】WO2009/111354
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(510233699)タイガー ファーマテック (1)
【氏名又は名称原語表記】TIGER PHARMATECH
【Fターム(参考)】