説明

チロトロピン受容体の結合対象及びその使用

TSH受容体の結合対象が開示されている。この結合対象はヒトのモノクローナル抗体または組換え抗体、あるいはその断片を含み、あるいはそれらから導かれるものであり、TSH受容体と反応する。さらに、その利用方法、結合対象を利用した診断方法及び治療方法、並びにその抗イディオタイプ抗体が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロトロピン受容体(TSH受容体又はTSHR)の結合対象(モノクローナル抗体又は組み換え抗体等)と、その使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
チロトロピン又は甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、甲状腺の機能を調整する上で重要な役割を果たす下垂体ホルモンである。その放出は、視床下部において形成されるTRHホルモンによって刺激され、TSHは、重要な甲状腺ホルモンであるチロキシン(T4)及びトリヨードチロニン(T3)の形成及び放出を制御する。フィードバックメカニズムに基づいて、血清の甲状腺ホルモン含有量は、TSHの放出を制御する。甲状腺細胞によるT3及びT4の形成は、下垂体が放出したTSHが甲状腺細胞膜のTSH受容体と結合する手順により、TSHによって刺激される。
【0003】
グレーブス病(一般的な自己免疫疾患)では、TSH受容体抗体(TRAb)が形成され、こうした自己抗体は、TSHの作用を模倣するような形でTSH受容体と結合し、甲状腺を刺激して、高いレベルの甲状腺ホルモンを生成させる。こうした自己抗体は、刺激活性を有するとされている。一部の患者において、自己抗体は、TSH受容体と結合するものの、甲状腺ホルモンの生成を刺激せず、遮断活性を有するとされている(J Sanders, Y Oda, S-A Roberts, M Maruyama, J Furmaniak, B Rees Smith:「チロトロピン受容体の機能−構造関係の理解」Balliere's Clinical Endocrinology and Metabolism; Ed TF Davis 1997; 11(3): 451-479; Pub Balliere Tindall, London)。
【0004】
TSH受容体抗体の測定は、グレーブス病その他の甲状腺疾患の診断及び管理にとって重要である。現在、TSH受容体抗体の測定には三種類のアッセイが使用されている:
(a)TSH受容体抗体がTSHとTSH受容体調製物との結合を阻害する能力を測定する競合結合測定法、
(b)TSH受容体抗体が培養物においてTSH受容体を発現する細胞を刺激する能力を測定するバイオアッセイ、及び
(c)TSH受容体抗体によるTSH受容体調製物の免疫沈降。
【0005】
こうしたアッセイを使用したTSH受容体抗体の測定については、次の参考文献において説明されている:
J Sanders, Y Oda, S-A Roberts, M Maruyama, J Furmaniak, B Rees Smith、「チロトロピン受容体の機能−構造関係の理解」、Balliere's Clinical Endocrinology and Metabolism; Ed TF Davis 1997; 11(3): 451-479; Pub Balliere Tindall, London.
J Sanders, Y Oda, S Roberts, A Kiddie, T Richards, J Bolton, V McGrath, S Walters, D Jaskolski, J Furmaniak, B Rees Smith;「TSH受容体自己抗体と125I標識TSH受容体との相互作用」、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1999; 84(10): 3792-3802.
【0006】
患者のリンパ球に由来するTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体が、例えば、競合結合測定法においてTSHの代わりとなるもの等、グレーブス病の病原の理解と、TSH受容体抗体を測定する新しい方法の開発とにとって価値のある試薬であることは長年に渡って認識されてきた。更に、患者の血清のTSH受容体抗体は通常、強力な甲状腺刺激物質(TSHアゴニスト)であるため、ヒトモノクローナルTSH受容体抗体を刺激することは、TSH受容体を含む組織(例えば、甲状腺組織又は甲状腺癌組織)が刺激を必要とする時のin vivoでの応用にとって価値がある。更に、一部の患者の血清のTSH受容体抗体は強力なTSHアンタゴニスト(抗体を遮断する)であるため、TSHアンタゴニストであるヒトモノクローナルTSH受容体抗体は、TSH受容体を含む組織(例えば、甲状腺組織又は甲状腺癌組織)が不活性化を必要とする時、或いは、TSH、TSH受容体抗体、又はその他の刺激物質に反応しないようにするべきである時、in vivoでの応用にとって価値がある。
【0007】
更に、このようなin vitro及び/又はin vivoでのヒトモノクローナルTSH受容体抗体の主要な利点の一つは、抗体を操作できる相対的な容易さであることも認識されている。例えば、TSHアゴニスト又はアンタゴニスト活性の度合いを含む、親和性及び生物学的特徴といった特徴を変更するための、モノクローナル抗体のTSH受容体結合領域の操作である。更に、モノクローナル抗体は、in vivoにおいてTSHよりも遙かに長い半減期を有しており、これは特定のin vivoでの応用において大きな利点となり得る。更に、抗体の半減期は、容易に操作可能であり、例えば、抗体のFab断片は、完全なIgGよりも遙かに短い半減期を有する。こうしたTSH受容体抗体の一般的な特性については、B Rees Smith, SM McLachlan, J Furmaniak、「チロトロピン受容体に対する自己抗体」、Endocrine Reviews 1988; 9: 106-121と、B Rees Smith, KJ Dorrington, DS Munro、「長時間作用性甲状腺刺激物質γG−グロブリンサブユニットの甲状腺刺激特性」、Biochimica et Biophysica Acta 1969; 192: 277-285と、KJ Dorrington, DS Munro、「長時間作用性甲状腺刺激物質」、Clinical Pharmacology and Therapeutics 1966; 7: 788-806とのような刊行物において説明されている。
【0008】
ヒトモノクローナルTSH受容体抗体の更なる利点は、新型のTSH受容体抗体結合部位を特定及び提供する使用法にある。例えば、TSH受容体と結合するヒトモノクローナルTSH受容体抗体の領域に対する抗体の生成によるものである。このように生成された抗イディオタイプ抗体の一部は、TSH受容体抗体と、TSHと、関連化合物とのアッセイのための新しいリガンドとしての可能性を有する。更には、TSH受容体抗体と、TSHと、関連化合物との作用を調整するためのin vivoでの有効な作用物質となり得る。
【0009】
モノクローナル抗体を使用して、新型の抗体結合部位を特定及び提供するその他の方法は、周知である。例えば、JC Scott及びGP Smith、「エピトープライブラリによるペプチドリガンドの探索」、Science 1990; 249(4967): 386-390と、MA Myers, JM Davis, JC Tong, J Whisstock, M Scealy, IR MacKay, MJ Rowley、「ペプチドファージディスプレイ及び分子モデリングによって特定された糖尿病自己抗原GAD65での配座エピトープ」、Journal of Immunology 2000; 165: 3830-3838と、によって説明されるような、ファージディスプレイランダムペプチドライブラリの抗体スクリーニングによるものである。非ペプチド化合物及び非ペプチド化合物のライブラリの抗体スクリーニングも実行可能である。
【0010】
こうした手順を使用して特定及び提供された新型のTSH受容体抗体結合部位は、更に、TSH受容体抗体と、TSHと、関連化合物とのアッセイにおける新しいリガンドとして有用となり得る。更には、TSH受容体抗体と、TSHと、関連化合物との作用を調整するためのin vivoでの有効な作用物質となり得る。
【0011】
ヒトモノクローナルTSH受容体抗体の潜在的価値を考慮して、こうした抗体を生成するために、長年に渡って多大な努力がなされてきた(例えば、B Rees Smith, SM McLachlan, J Furmaniak、「チロトロピン受容体に対する自己抗体」、Endocrine Reviews 1988; 9: 106-121参照)。しかしながら、現在まで、こうした努力は不成功に終わっている(例えば、SM McLachlan, B Rapoport、「TSH受容体に対するモノクローナルヒト自己抗体――聖杯とそれを探す理由」、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1996; 81: 3152-3154、及びJHW van der Heijden, TWA de Bruin, KAFM Gludemans, J de Kruif, JP Banga, T Logtenberg、「グレーブス病のチロトロピン受容体に対するヒトモノクローナル自己抗体を取得するための半合成ライブラリアプローチの限界」、Clinical and Experimental Immunology 1999; 118: 205-212参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、TSH受容体自己抗体のTSH受容体との相互作用に相当する形でTSH受容体との相互作用が可能なTSH受容体の結合対象を提供することであり、特に、本発明の目的は、甲状腺機能亢進グレーブス病患者の血清においてTSH受容体抗体との間で見られるようなものに相当するTSH受容体との相互作用を発現する、TSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体を提供すること、及び、その組み換え調製物を提供することである。ヒトモノクローナルTSH受容体抗体を生成する大きな困難は、本明細書で説明する本発明において克服されている。特に、甲状腺機能亢進グレーブス病患者の血清において見られる自己抗体の特徴を備えたヒトモノクローナルTSH受容体抗体の生成の成功について説明する。我々が生成したヒトTSH受容体モノクローナル抗体(本明細書において、hMAb TSHR1として説明される)は、TSH受容体と結合する標識TSHを少量の抗体が阻害し、少量が強力な甲状腺刺激物質として機能するような形で、高い親和性でTSH受容体と結合する。抗体のFab断片と組み換えFab調製物とは、同様に効果的な甲状腺刺激物質であり、完全なIgGとして結合する標識TSHの阻害物質である。モノクローナルFab及び/又は完全なIgGは、125I又はビオチンにより標識可能であり、TSH受容体と結合することが証明できる。こうした結合は、患者血清のTSH受容体自己抗体によって阻害される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、したがって、TSH受容体の結合対象を提供し、結合対象は、TSH受容体と反応するヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体、或いはその一つ以上の断片を含むか、或いは、これらに由来する。
【0014】
特に、本発明は、TSH受容体の結合対象を提供し、結合対象は、TSH受容体と反応するヒトモノクローナル抗体、又はその一つ以上の断片を含むか、或いは、これらに由来する。
【0015】
特に、本発明は、TSH受容体の結合対象を提供し、結合対象は、TSH受容体と反応するヒト組み換え抗体、又はその一つ以上の断片を含むか、或いは、これらに由来する。
【0016】
特に、本発明は、TSH受容体と反応するヒトモノクローナル抗体、又はその一つ以上の断片を提供する。
【0017】
特に、本発明は、TSH受容体と反応するヒト組み換え抗体、又はその一つ以上の断片を提供する。特に、本発明は、TSH受容体と反応するヒト組み換え抗体の一つ以上の断片を提供する。
【0018】
本発明による結合対象、及び特に、本発明によるTSH受容体と反応するヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、更に、TSH受容体と結合するTSHを阻害する能力、及び/又はTSH受容体を刺激する能力によって特徴付けることが可能であり、その両方は、グレーブス病患者から取得した血清に存在するTSH受容体自己抗体の阻害及び刺激特性のそれぞれに相当すると考えられる。
【0019】
更に具体的には、本発明による結合対象、及び特に、本発明によるヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いは、こうしたモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片によって特徴付けることが可能である。
【0020】
更に具体的には、本発明による結合対象、及び特に、本発明によるヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、更に、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いは、こうしたモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片によって特徴付けることが可能である。
【0021】
本発明の好適な実施形態において、本発明による結合対象、及び特に、本発明によるヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いは、こうしたモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片によって特徴付けることが可能である。
【0022】
TSH受容体と反応するモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片、特に例えば、TSH受容体と反応するモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上のFab断片を、本発明による結合対象が含むか、或いはこれらに由来する場合、こうした結合対象は、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性によって特徴付け可能であることが好ましい。
【0023】
更に、TSH受容体と反応するモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片、特に例えば、TSH受容体と反応するモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上のFab断片を、本発明による結合対象が含むか、或いはこれらに由来する場合、こうした結合対象は、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約50単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約100単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約200単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約400単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性によって特徴付け可能であることが好ましい。
【0024】
更に、TSH受容体と反応するモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片、特に例えば、TSH受容体と反応するモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上のFab断片を、本発明による結合対象が含むか、或いはこれらに由来する場合、こうした結合対象は、
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約50単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約100単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約200単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約400単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、によって特徴付け可能であることが好ましい。
【0025】
好適な場合において、本発明は、TSH受容体の結合対象(通常は、ヒトモノクローナル抗体)を提供し、結合対象は、好ましくはTSH受容体を刺激するように、TSH受容体と結合可能であり、SEQ ID NO.1に示したようなVHドメインと、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメインとによって構成されたグループから選択された抗体VHドメインを含む。
【0026】
本発明の第一の実施形態では、したがって、TSH受容体の結合対象(通常は、ヒトモノクローナル抗体)が提供され、結合対象は、好ましくはTSH受容体を刺激するように、TSH受容体と結合可能であり、SEQ ID NO.1に示したような抗体VHドメインを含む。
【0027】
本発明の第二の実施形態では、TSH受容体の結合対象(通常は、ヒトモノクローナル抗体)が提供され、結合対象は、好ましくはTSH受容体を刺激するように、TSH受容体と結合可能であり、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含む抗体VHドメインを含む。
【0028】
本発明による結合対象は、抗体VLドメインが存在しない状態で、実質的に上記のような抗体VHドメインを含むことが可能であると理解されよう。単一の免疫グロブリンドメイン、特にVHドメインが、特異的な形で標的抗原に結合できることは公知である。代替として、本発明による結合対象は、この技術で周知の手法を利用して、TSH受容体のためのVH及びVLドメインを共に含む抗体結合部位を提供するために、抗体VLドメインと対を成す抗体VHドメインを含むことができる(Biochim. Biophys. Acta, 192 (1969) 277-285; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 89, pp 10026-10030, November 1992)。
【0029】
好適な場合においては、しかしながら、本発明は、TSH受容体の結合対象を提供し、結合対象は、好ましくはTSH受容体を刺激するように、TSH受容体と結合可能であり、
SEQ ID NO.1に示したようなVHドメインと、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメインと、
によって構成されたグループから選択された抗体VHドメイン、及び/又は、
SEQ ID NO.6に示したようなVLドメインと、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、及びSEQ ID NO.9から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVL CDRを含むVLドメインと、
によって構成されたグループから選択された抗体VLドメインを含む。
【0030】
本発明によれば、実質的に上記のような結合対象は、実質的に上記のような抗体VLドメインと対を成す実質的に上記のような抗体VHドメインを含み、TSH受容体のためのVH及びVLドメインを共に含む抗体結合部位を提供することが好適となる場合があり、但し、更に説明するように、抗体VHドメイン又は抗体VLドメインは、TSH受容体を結合するために独立して使用してよい。したがって、実質的に上記のような結合対象は、抗体VLドメインが存在しない状態で、実質的に上記のような抗体VHドメインを含むことができると理解されよう。更に、したがって、実質的に上記のような結合対象は、抗体VHドメインが存在しない状態で、実質的に上記のような抗体VLドメインを含むことができると理解されよう。代替として、実質的に上記のような結合対象は、実質的に上記のような抗体VLドメインと対を成す抗体VHドメインを含み、TSH受容体のためのVH及びVLドメインを共に含む抗体結合部位を提供できる。
【0031】
本発明による好適な実施形態は、したがって、SEQ ID NO.6に示したような抗体VLドメインと対を成すSEQ ID NO.1に示したような抗体VHドメインを含む実質的に上記のような結合対象を含み、TSH受容体のためのこうしたVH及びVLドメインを共に含む抗体結合部位を提供できる。
【0032】
更に、本発明によれば、実質的に上記のようなVHドメインは、本明細書で具体的に説明したもの以外のVLドメインと対を成してもよいと予想される。更に、本発明によれば、実質的に上記のようなVLドメインは、本明細書で具体的に説明したもの以外のVHドメインと対を成してもよいと予想される。
【0033】
本発明の更なる実施形態によれば、TSH受容体のために実質的に上記のような結合対象が提供され、結合対象は、TSH受容体を刺激するように、TSH受容体と結合可能であり、
SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメイン
を含む抗体VHドメイン、及び/又は、
SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、及びSEQ ID NO.9から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVL CDRを含むVLドメイン、
を含む抗体VLドメイン、を含むことができる。
【0034】
上で参照した一つ以上のCDRは、上記のVH及びVLドメインから取りだし、適切なフレームワークに組み込んでよい。例えば、実質的に上記のような一つ以上のCDRのアミノ酸配列は、本明細書で具体的に開示するhMAb TSHR1とは異なる抗体のフレームワーク領域に組み込んでよく、こうした抗体は、これにより、一つ以上のCDRを組み込み、TSH受容体との結合が可能となり、好ましくは、実質的に上記のようなTSH受容体を刺激する。代替として、本発明は、実質的に上記のようなTSH受容体を刺激するようにTSH受容体と結合可能で、本明細書で具体的に説明されるような一つ以上のCDRに代表されるようなアミノ酸の一次構造配座を、随意的に更なるアミノ酸と共に含むポリペプチドを提供してよく、更なるアミノ酸は、本明細書で説明するような一つ以上のCDRのTSH受容体に対する結合親和性を強化してよく、或いは、ポリペプチドのTSH受容体に対する結合特性に作用する役割を実質的に有していなくてもよい。
【0035】
本発明は、更に、本明細書で説明する特定のヒトモノクローナル抗体と、VHドメインと、CDRと、本明細書で説明するポリペプチドとの変異体、類似体、誘導体、及び断片を包含し、変異体、類似体、誘導体、及び断片は、実質的に上記のようなTSH受容体と相互作用する(例えば、TSH受容体を刺激する等の)能力を保持する。
【0036】
「変異体」、「類似体」、「誘導体」、及び「断片」という用語は、本明細書での使用において、SEQ ID NO.1に示したようなVHドメイン及びSEQ ID NO.6に示したようなVLドメインを有するヒトモノクローナル抗体と本質的に同じ生物学的機能又は活性を、特にTSH受容体に対するその結合特性に関して保持する抗体、抗体断片、又はポリペプチドとして特徴付けることができる。適切な場合、変異体、類似体、誘導体、及び断片と、本明細書で説明するような断片の変異体、類似体、及び誘導体とは、SEQ ID NO.1に示したようなVHドメイン及びSEQ ID NO.6に示したようなVLドメインを有するヒトモノクローナル抗体の数個又は少数(5乃至10個、1乃至5個、又は1乃至3個)のアミノ酸残基に、任意の組み合わせで、置換、欠失、又は付加が生じた、アミノ酸の一次構造配座を有する。これらの中で特に好適なものは、SEQ ID NO.1に示したようなVHドメイン及びSEQ ID NO.6に示したようなVLドメインを有するヒトモノクローナル抗体の生物学的活性又は機能を改変しない、或いは実質的に改変しない、サイレント置換、付加、及び欠失である。保守的置換は、以下で更に詳細に説明するように、好適となる可能性がある。
【0037】
更に詳しくは、本発明によるSEQ ID NO.1に示したようなVHドメイン及びSEQ ID NO.6に示したようなVLドメインを有するヒトモノクローナル抗体の変異体、類似体、又は誘導体は、一つ以上のアミノ酸残基が保存又は非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)と置換されたもの、或いは、一つ以上のアミノ酸残基が置換基グループ又はその他を含むものにしてよい。こうした変異体、誘導体、及び類似体は、本明細書の教示から当業者の範囲内に入ると考えられる。
【0038】
最も一般的には、変異体、類似体、又は誘導体は、保守的アミノ酸置換によって、SEQ ID NO.1に示したようなVHドメイン及びSEQ ID NO.6に示したようなVLドメインを有する基準ヒトモノクローナル抗体から変化するものである。こうした置換は、一定のアミノ酸を同様の特性である別のアミノ酸によって置換するものである。保守的置換として一般に見られるものは、脂肪族アミノ酸A、V、L、及びI間と、水酸残基S及びT間と、酸性残基D及びE間と、アミド残基N及びO間と、塩基残基K及びR間と、芳香族残基F及びY間とでの相互の交換である。
【0039】
本明細書での使用において、断片という用語は、特に、具体的に本明細書で説明するような抗体の断片に関連し、本発明の重要な態様を形成すると理解されよう。これにより、本発明によって提供されるようなヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、以下の断片のいずれかとして提供され得る:(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインで構成されるFab断片、(ii)VH及びCH1ドメインで構成されるFd断片、(iii)VL及びVHドメインで構成されるFv断片、(iv)VHドメインで構成されるdAb断片、(v)分離CDR領域、(vi)二つの連結Fab断片を含む二価の断片である、F(ab’)2断片、及び(vii)VHドメイン及びVLドメインが二ドメインを関連付けて抗原結合部位を形成可能なペプチドリンカによって連結される、一本鎖Fv分子(scFv)。
【0040】
代替として、本発明によるヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、完全なIgG抗体を含んでよく、これにより、抗体は可変及び定常領域を含む。
【0041】
本発明は、更に、TSH受容体との結合について、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常は、ヒトモノクローナル抗体)との競合が可能な、TSH受容体と結合できる更なる結合対象を提供し、更なる結合対象は、TSHを含まない。好ましくは、この更なる結合対象は、TSH受容体のエピトープ領域のための結合部位を有し、TSH受容体との結合について、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常は、ヒトモノクローナル抗体)との競合が可能な、更なる抗体を含んでよい。こうした適切な更なる結合対象は、この技術で公知の手法でのTSH受容体によるマウスの免疫付与を利用して、好ましくは実質的に実施例において説明するような手法によって生成可能な、マウスモノクローナル抗体を含むことができる。
【0042】
本発明は、更に、TSH受容体と反応するヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体、或いはその一つ以上の断片を含むことが可能な、TSH受容体と結合できる更なる結合対象を提供してよい。特に、この更なる結合対象は、TSH受容体のエピトープ領域のための結合部位を有する更なる抗体を含んでよく、更なる抗体は、TSH受容体と結合可能であり、TSH受容体との結合について、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常は、ヒトモノクローナル抗体)との競合が可能である。適切な場合、こうした更なる結合対象は、TSH受容体との相互作用について、実質的に本明細書で説明するような結合対象(hMAb TSHR1等)と競合可能なTSH受容体の更なる結合対象が得られるように、スポット突然変異又はその他の適切な突然変異生成手法によって、本明細書で説明するような特定の結合対象、hMAb TSHR1から誘導可能である。
【0043】
好ましくは、TSH受容体の更なる結合対象は、モノクローナル抗体又は組み換え抗体を含むことが可能であり、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いは、抗体の一つ以上の断片によって特徴付けることが可能である。本発明によるこうした更なる結合対象は、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いは、抗体の一つ以上の断片によって特徴付け可能であることも好適となり得る。
【0044】
本発明のこうした更なる結合対象は、
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いは、抗体の一つ以上の断片によって特徴付け可能であることも更により好適となり得る。
【0045】
本発明による更なる結合対象を提供する好適なマウスモノクローナル抗体は、実施例に関連して調製され、図9乃至12及び配列リスト19乃至38に例示されるようなアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を有する。本発明によれば、したがって、TSH受容体の更なる結合対象(通常、マウスモノクローナル抗体)が提供され、更なる結合対象は、SEQ ID NO.19に示したような抗体VHドメインを含む。
【0046】
本発明で提供されるような更なる結合対象は、更に、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、及びSEQ ID NO.22から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含む抗体VHドメインを含むものとして特徴付けできる。
【0047】
本発明による更なる結合対象は、抗体VLドメインが存在しない状態で、実質的に上記のような抗体VHドメインを含むことが可能であると理解されよう。単一の免疫グロブリンドメイン、特にVHドメインが、特異的な形で標的抗原に結合できることは公知である。代替として、本発明による更なる結合対象は、この技術で周知の手法を利用して、TSH受容体のためのVH及びVLドメインを共に含む抗体結合部位を提供するために、抗体VLドメインと対を成す抗体VHドメインを含むことができる(Biochim. Biophys. Acta, 192 (1969) 277-285; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 89, pp 10026-10030, November 1992)。
【0048】
好適な場合においては、しかしながら、本発明は、TSH受容体の更なる結合対象を提供し、結合対象は、
SEQ ID NO.19に示したようなVHドメインと、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、及びSEQ ID NO.22から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメインと、
によって構成されたグループから選択された抗体VHドメイン、及び/又は、
SEQ ID NO.24に示したようなVLドメインと、SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.26、及びSEQ ID NO.27から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVL CDRを含むVLドメインと、
によって構成されたグループから選択された抗体VLドメインを含む。
【0049】
本発明によれば、実質的に上記のような更なる結合対象は、実質的に上記のような抗体VLドメインと対を成す実質的に上記のような抗体VHドメインを含み、TSH受容体のためのVH及びVLドメインを共に含む抗体結合部位を提供することが好適となる場合があり、但し、更に説明するように、抗体VHドメイン又は抗体VLドメインは、TSH受容体を結合するために独立して使用してよい。したがって、実質的に上記のような更なる結合対象は、抗体VLドメインが存在しない状態で、実質的に上記のような抗体VHドメインを含むことができると理解されよう。更に、したがって、実質的に上記のような更なる結合対象は、抗体VHドメインが存在しない状態で、実質的に上記のような抗体VLドメインを含むことができると理解されよう。代替として、実質的に上記のような更なる結合対象は、実質的に上記のような抗体VLドメインと対を成す抗体VHドメインを含み、TSH受容体のためのVH及びVLドメインを共に含む抗体結合部位を提供できる。
【0050】
本発明による好適な実施形態は、したがって、SEQ ID NO.24に示したような抗体VLドメインと対を成すSEQ ID NO.19に示したような抗体VHドメインを含む実質的に上記のような更なる結合対象を含み、TSH受容体のためのこうしたVH及びVLドメインを共に含む、抗体結合部位を提供できる。
【0051】
更に、本発明によれば、実質的に上記のようなVHドメインは、本明細書で具体的に説明したもの以外のVLドメインと対を成してもよいと予想される。更に、本発明によれば、実質的に上記のようなVLドメインは、本明細書で具体的に説明したもの以外のVHドメインと対を成してもよいと予想される。
【0052】
本発明の更なる実施形態によれば、TSH受容体のために実質的に上記のような更なる結合対象が提供され、更なる結合対象は、TSH受容体の刺激を阻害するように、TSH受容体と結合可能であり、
SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、及びSEQ ID NO.22から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメイン
を含む抗体VHドメイン、及び/又は、
SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.26、及びSEQ ID NO.27から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVL CDRを含むVLドメイン、
を含む抗体VLドメイン、を含むことができる。
【0053】
上で参照した一つ以上のCDRは、上記のVH及びVLドメインから取りだし、適切なフレームワークに組み込んでよい。例えば、実質的に上記のような一つ以上のCDRのアミノ酸配列は、本明細書で具体的に開示する9D33とは異なる抗体のフレームワーク領域に組み込んでよく、こうした抗体は、これにより、一つ以上のCDRを組み込み、TSH受容体との結合が可能となる。代替として、本発明は、TSH受容体と結合可能で、本明細書で具体的に説明されるような一つ以上のCDRに代表されるようなアミノ酸の一次構造配座を、随意的に更なるアミノ酸と共に含むポリペプチドを提供してよく、更なるアミノ酸は、本明細書で説明するような一つ以上のCDRのTSH受容体に対する結合親和性を強化してよく、或いは、ポリペプチドのTSH受容体に対する結合特性に作用する役割を実質的に有していなくてもよい。
【0054】
本明細書での使用において、断片という用語は、特に、具体的に本明細書で説明するような抗体の断片に関連し、本発明の重要な態様を形成すると理解されよう。これにより、本発明による更なる結合対象は、以下の断片のいずれかとして提供され得る:(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインで構成されるFab断片、(ii)VH及びCH1ドメインで構成されるFd断片、(iii)VL及びVHドメインで構成されるFv断片、(iv)VHドメインで構成されるdAb断片、(v)分離CDR領域、(vi)二つの連結Fab断片を含む二価の断片である、F(ab’)2断片、及び(vii)VHドメイン及びVLドメインが二ドメインを関連付けて抗原結合部位を形成可能なペプチドリンカによって連結される、一本鎖Fv分子(scFv)。
【0055】
代替として、9D33等の本発明によるマウスモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、完全なIgG抗体を含んでよく、これにより、抗体は可変及び定常領域を含む。
【0056】
本発明では更に、以下を含むポリヌクレオチドが提供される:
(i)SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、又はSEQ ID NO.9に示したような、抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化する、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.16、SEQ ID NO.17、又はSEQ ID NO.18に示したようなヌクレオチド配列、
(ii)実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗原)を符号化するか、或いは、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗原)の抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化する、ヌクレオチド配列、
(iii)遺伝コードの縮重により、コドン配列において(i)の任意の配列と異なるヌクレオチド配列、
(iv)(i)の任意の配列の対立変形物を含むヌクレオチド配列、
(v)(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)の配列のいずれかの断片を含むヌクレオチド配列、及び特に、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、又は(v)の配列のいずれかの断片を含み、実質的に上記のようなヒトモノクローナル抗体のFab断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、分離CDR領域、F(ab’)2断片、又はscFv断片を符号化するヌクレオチド配列、
(vi)ヌクレオチド塩基の突然変異、欠失、又は置換により、(i)の任意の配列と異なり、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常は、ヒトモノクローナル抗体)を符号化するか、或いは、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常は、ヒトモノクローナル抗体)の抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化するヌクレオチド配列。
【0057】
本発明では更に、以下を含むポリヌクレオチドが提供される:
(i)SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、SEQ ID NO.22、SEQ ID NO.24、SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.26、又はSEQ ID NO.27に示したような、抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化する、SEQ ID NO.29、SEQ ID NO.30、SEQ ID NO.31、SEQ ID NO.32、SEQ ID NO.34、SEQ ID NO.35、SEQ ID NO.36、又はSEQ ID NO.37に示したようなヌクレオチド配列、
(ii)実質的に上記のようなTSH受容体の更なる結合対象(通常、マウスモノクローナル抗原)を符号化するか、或いは、実質的に上記のようなTSH受容体の更なる結合対象(通常、マウスモノクローナル抗原)の抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化する、ヌクレオチド配列、
(iii)遺伝コードの縮重により、コドン配列において(i)の任意の配列と異なるヌクレオチド配列、
(iv)(i)の任意の配列の対立変形物を含むヌクレオチド配列、
(v)(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)の配列のいずれかの断片を含むヌクレオチド配列、及び特に、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、又は(v)の配列のいずれかの断片を含み、実質的に上記のようなマウスモノクローナル抗体のFab断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、分離CDR領域、F(ab’)2断片、又はscFv断片を符号化するヌクレオチド配列、
(vi)ヌクレオチド塩基の突然変異、欠失、又は置換により、(i)の任意の配列と異なり、実質的に上記のようなTSH受容体の更なる結合対象(通常は、マウスモノクローナル抗体)を符号化するか、或いは、実質的に上記のようなTSH受容体の更なる結合対象(通常は、マウスモノクローナル抗体)の抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化するヌクレオチド配列。
【0058】
本発明による変形ポリヌクレオチドは、適切な場合、その全長に渡って(i)の任意のポリヌクレオチド配列と少なくとも70%一致しており、極めて好適なものは、その全長に渡って(i)の任意のポリヌクレオチド配列と少なくとも80%一致する領域を含むポリヌクレオチドであり、その全長に渡って(i)の任意のポリヌクレオチド配列と少なくとも90%一致するポリヌクレオチドが特に好適であり、こうした特に好適なポリヌクレオチドのうち、少なくとも95%一致するものは、とりわけ好適である。
【0059】
本発明は、更に、実質的に上記のようなポリヌクレオチドを運び、宿主生物のゲノムにポリヌクレオチドを導入可能な生物学的機能ベクタ系を提供する。
【0060】
本発明は、更に、本発明のポリヌクレオチドにより形質転換された宿主細胞と、組み換え手法による本発明のTSH受容体の結合対象の生成とに関する。宿主細胞は、ポリヌクレオチドを組み込み、本発明のTSH受容体の結合対象を発現するように遺伝子操作可能である。
【0061】
本発明によるヒトモノクローナル抗体、hMAb TSHR1のアミノ酸配列、及びそれを符号化するヌクレオチド配列と、本発明による更なる結合対象を表すマウスモノクローナル抗体、9D33のアミノ酸配列、及びそれを符号化するヌクレオチド配列とは、下で説明する配列リストに記載されており、次のように指定できる。
【0062】
hMAb TSHR1について:
アミノ酸配列
SEQ ID NO.1 VH
SEQ ID NO.2 VHCDRI
SEQ ID NO.3 VHCDRII
SEQ ID NO.4 VHCDRIII
SEQ ID NO.5 重鎖可変及び隣接定常領域
SEQ ID NO.6 VL
SEQ ID NO.7 VLCDRI
SEQ ID NO.8 VLCDRII
SEQ ID NO.9 VLCDRIII
ヌクレオチド配列
SEQ ID NO.10 VH
SEQ ID NO.11 VHCDRI
SEQ ID NO.12 VHCDRII
SEQ ID NO.13 VHCDRIII
SEQ ID NO.14 重鎖可変及び隣接定常領域
SEQ ID NO.15 VL
SEQ ID NO.16 VLCDRI
SEQ ID NO.17 VLCDRII
SEQ ID NO.18 VLCDRIII
9D33について:
アミノ酸配列
SEQ ID NO.19 VH
SEQ ID NO.20 VHCDRI
SEQ ID NO.21 VHCDRII
SEQ ID NO.22 VHCDRIII
SEQ ID NO.23 重鎖可変及び隣接定常領域
SEQ ID NO.24 VL
SEQ ID NO.25 VLCDRI
SEQ ID NO.26 VLCDRII
SEQ ID NO.27 VLCDRIII
SEQ ID NO.28 軽鎖可変及び隣接定常領域
ヌクレオチド配列
SEQ ID NO.29 VH
SEQ ID NO.30 VHCDRI
SEQ ID NO.31 VHCDRII
SEQ ID NO.32 VHCDRIII
SEQ ID NO.33 重鎖可変及び隣接定常領域
SEQ ID NO.34 VL
SEQ ID NO.35 VLCDRI
SEQ ID NO.36 VLCDRII
SEQ ID NO.37 VLCDRIII
SEQ ID NO.38 軽鎖可変及び隣接定常領域
hMab TSHR1についての上記配列は、更に、次の図4、5、6、及び7を参照して確認できる。
【0063】
図4は、以下と共に、hMab TSHR1重鎖ヌクレオチド配列を、隣接定
常領域と併せて示す図
図4aは、ヌクレオチド配列自体を記載する図
【0064】
図4bは、PCRプライマ、CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常
領域を注記したヌクレオチド配列を記載する図
図5は、以下と共に、hMab TSHR1重鎖アミノ酸配列を、隣接定常領
域と併せて示す図
図5aは、アミノ酸配列自体を記載する図
【0065】
図5bは、CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常領域を注記したア
ミノ酸配列を記載する図
図6は、以下と共に、hMab TSHR1軽鎖ヌクレオチド配列を示す図
図6aは、ヌクレオチド配列自体を記載する図
【0066】
図6bは、PCRプライマ、CDRI、CDRII、及びCDRIII領域を
注記したヌクレオチド配列を記載する図
図7は、以下と共に、hMab TSHR1軽鎖アミノ酸配列を示す図
図7aは、アミノ酸配列自体を記載する図
【0067】
図7bは、CDRI、CDRII、及びCDRIII領域を注記したアミノ酸
配列を記載する図
【0068】
上記から、hMab TSHR1のVH鎖について、図4bに図示したようなCDRI、CDRII、及びCDRIII領域のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO.11、12、及び13に図示したVHCDRI、VHCDRII、及びVHCDRIII配列に対応し、図5bに図示したようなCDRI、CDRII、及びCDRIII領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.2、3、及び4に図示したVHCDRI、VHCDRII、及びVHCDRIII配列に対応すると理解されよう。更に、上記から、hMab TSHR1のVL鎖について、図6bに図示したようなCDRI、CDRII、及びCDRIII領域のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO.16、17、及び18に図示したVLCDRI、VLCDRII、及びVLCDRIII配列に対応し、図7bに図示したようなCDRI、CDRII、及びCDRIII領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.7、8、及び9に図示したVLCDRI、VLCDRII、及びVLCDRIII配列に対応すると理解されよう。
【0069】
(この技術で公知の手法により決定された)hMAb TSHR1 Fabの結晶構造の分析により、縮重したPCRプライマを使用して決定されたHC及びLCヌクレオチド配列の精緻化が可能となった。特に、ヌクレオチド115乃至120に関するHC配列決定のアーチファクトが特定された。配列決定では、cacgtg(アミノ酸His Valへ転写)を示したが、結晶構造では、アミノ酸Gln Leu(cagctgとなる塩基に対応)を、添付図面及び配列リストに示す精緻化された配列と共に示した。結晶構造分析は、特に縮重PCRプライマ領域において、HC及びLC由来アミノ酸配列の精緻化も可能にした。LCの場合、aa2は、RT−PCRではProとされたが、結晶構造からはThrとなった。HCの場合、aa2は、RT−PCRではMetとされたが、結晶構造からはValとなった。同じく、こうした精緻化配列は、添付図面及び配列リストに示している。
【0070】
9D33についての上記配列は、更に、次の図9、10、11、及び12を参照して確認できる。
図9は、以下と共に、9D33重鎖ヌクレオチド配列を、隣接定常領域と併せ
て示す図
図9aは、ヌクレオチド配列自体を記載する図
【0071】
図9bは、PCRプライマ、CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常
領域を注記したヌクレオチド配列を記載する図
図10は、以下と共に、9D33重鎖アミノ酸配列を、隣接定常領域と併せて
示す図
図10aは、アミノ酸配列自体を記載する図
【0072】
図10bは、CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常領域を注記した
アミノ酸配列を記載する図
図11は、以下と共に、9D33軽鎖ヌクレオチド配列を示す図
図11aは、ヌクレオチド配列自体を記載する図
【0073】
図11bは、PCRプライマ、CDRI、CDRII、CDRIII、及び定
常領域を注記したヌクレオチド配列を記載する図
図12は、以下と共に、9D33軽鎖アミノ酸配列を示す図
図12aは、アミノ酸配列自体を記載する図
【0074】
図12bは、CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常領域を注記した
アミノ酸配列を記載する図
【0075】
上記から、9D33のVH鎖について、図9bに図示したようなCDRI、CDRII、及びCDRIII領域のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO.30、31、及び32に図示したVHCDRI、VHCDRII、及びVHCDRIII配列に対応し、図10bに図示したようなCDRI、CDRII、及びCDRIII領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.20、21、及び22に図示したVHCDRI、VHCDRII、及びVHCDRIII配列に対応すると理解されよう。更に、上記から、9D33のVL鎖について、図11bに図示したようなCDRI、CDRII、及びCDRIII領域のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO.35、36、及び37に図示したVLCDRI、VLCDRII、及びVLCDRIII配列に対応し、図12bに図示したようなCDRI、CDRII、及びCDRIII領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.25、26、及び27に図示したVLCDRI、VLCDRII、及びVLCDRIII配列に対応すると理解されよう。
【0076】
本発明は、更に、実質的に上記のようなTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体を提供するプロセスを提供し、プロセスは、
(i)対象者からのリンパ球ソースを提供するステップを備え、対象者は、TSH受容体と結合するTSHの阻害に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.04単位より大きなTSH受容体抗体活性を有し、更に、
(ii)(i)の当該リンパ球ソースからリンパ球を分離するステップと、
(iii)分離リンパ球を不死化するステップと、
(iv)実質的に上記のようなTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体を分泌する不死化コロニを生成するために、不死化リンパ球をクローニングするステップと、を備える。
【0077】
代替として、実質的に上記のようなTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体を提供するプロセスは、
(i)対象者からのリンパ球ソースを提供するステップを備え、対象者は、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激活性に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.1単位より大きなTSH受容体抗体活性を有し、更に
(ii)(i)の当該リンパ球ソースからリンパ球を分離するステップと、
(iii)分離リンパ球を不死化するステップと、
(iv)実質的に上記のようなTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体を分泌する不死化コロニを生成するために、不死化リンパ球をクローニングするステップと、を備えるプロセスとして定義できる。
【0078】
好ましくは、本発明によるプロセスは、末梢血、甲状腺組織、脾臓組織、リンパ節、又は骨髄からリンパ球を分離するステップを備え、最も一般的には末梢血から分離する。通常、本発明による方法において使用するリンパ球のソースは、TSH受容体と結合するTSHの阻害に関して1mL当たりNIBSC90/672約0.1単位より大きな、或いは、更に一般的には、TSH受容体と結合するTSHの阻害に関して1mL当たりNIBSC90/672約0.2単位より大きな、或いは、更に一般的には、TSH受容体と結合するTSHの阻害に関して1mL当たりNIBSC90/672約0.3単位より大きな、及び、好ましくは、TSH受容体と結合するTSHの阻害に関して1mL当たりNIBSC90/672約0.3乃至0.5単位の範囲以上の、血清TSH受容体抗体レベルを有する対象者から取得されたものとして、更に特徴付け可能である。代替として、又は追加として、本発明による方法において使用するリンパ球のソースは、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激活性に関して1mL当たりNIBSC90/672約0.2単位より大きな、或いは、更に一般的には、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激活性に関して1mL当たりNIBSC90/672約0.5単位より大きな、及び、好ましくは、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激活性に関して1mL当たりNIBSC90/672約0.5乃至1.0単位の範囲以上の、血清TSH受容体抗体レベルを有する対象者から取得されたものとして、更に特徴付け可能である。上記から、リンパ球を分離する対象者のTSH受容体に対する免疫反応は、好ましくは、高活性期にあるべきであると理解されよう。
【0079】
好ましくは、本発明によるプロセスは、分離リンパ球をエプスタインバーウイルスに感染させるステップを備え、適切な場合、このように不死化したリンパ球をマウス/ヒト細胞株に融合させる。適切な場合、本発明によるプロセスは、更に、NIBSC90/672少なくとも約1単位/Lの感度を有するアッセイシステムにおいて、例えば、TSH受容体と結合する125I TSHの阻害によって、結果として生じたTSH受容体抗体のクローンをスクリーニングするステップを備える。
【0080】
本発明は、更に、TSH受容体に対するヒト組み換え抗体、又はその一つ以上の断片を調製するプロセスを提供し、プロセスは、実質的に上記のようなプロセスによって本発明で提供されるようなTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体、或いはそこから誘導された一つ以上の断片のクローニング及び発現を備える。
【0081】
本発明は、更に、実質的に上記のようなプロセスによって取得されたTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体を提供する。好ましくは、本発明による、このように取得されたTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いは、こうしたヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片によって特徴付けることが可能である。
【0082】
更に具体的には、本発明によるヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いは、こうしたヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片によって更に特徴付け可能であることが好適となり得る。
【0083】
本発明の好適な実施形態において、本発明によるヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いは、こうしたヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片によって特徴付けることが可能である。
【0084】
更に、本発明による、このように取得されたヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体の一つ以上の断片、特に例えば、その一つ以上のFab断片は、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性によって特徴付け可能であることが好適となり得る。更に、こうした一つ以上の断片は、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約50単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約100単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約200単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約400単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性によって特徴付け可能であることが好適となり得る。
【0085】
更に好ましくは、こうした一つ以上Fab断片は、
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性と、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約50単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約100単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約200単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約400単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性と、によって特徴付け可能である。
【0086】
実質的に上記のようなプロセスは、更に、更なるプロセス段階を備えてよく、これにより、取得されたヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体は、適切な更なる処理手法(スポット突然変異その他のような突然変異生成手法等)を施され、TSH受容体との総合作用について、実質的に上記のような結合対象(hMAb TSHR1等)との競合が可能なTSH受容体の更なる結合対象が取得される。こうした更なる処理手法は、当業者に周知である。本発明は、更に、こうした更なる処理手法によって取得されたTSH受容体に対する更なる結合対象を提供する。
【0087】
好ましくは、こうしたTSH受容体の更なる結合対象は、モノクローナル抗体又は組み換え抗体を含むことが可能であり、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いは、その一つ以上の断片によって特徴付けることが可能である。本発明によるこうした更なる結合対象は、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いは、その一つ以上の断片によって特徴付け可能であることも好適となり得る。
【0088】
本発明のこうした更なる結合対象は、
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、又は更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約60単位、更に好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位、又は更により好ましくは、1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いは、その一つ以上の断片によって特徴付け可能であることも、更により好適となり得る。
【0089】
本発明によるTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)は、診断及び治療用途を有してよい。
【0090】
したがって、本発明によるTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)は、患者の血清内のTSH受容体に対する自己抗体を検出するスクリーニング方法と、更には診断方法とにおいて利用できる。これにより、本発明によるTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)は、TSH受容体に対する自己抗体を検出するスクリーニング方法と、更には診断方法とにおいて使用される、これまでに説明した競合対象の代わりに、或いはこれに加えて、利用できる。同様に、本発明によるTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)は、TSH受容体に対する自己抗体を検出する際に使用するキットにおいて使用される、これまでに説明した競合対象の代わりに、或いはこれに加えて、利用できる。
【0091】
したがって、本発明は、更に、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法を提供し、当該方法は、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)TSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える。
【0092】
上記のような自己抗体の検出のための本発明による方法は、その使用によって達成可能な感度のレベルに関して、特に有利である。これについては、実施例及び図面を参照して更に例示可能であり、図3aは、hMAb TSHR1−ビオチンに基づくTSHR自己抗体アッセイと以前のアッセイとの比較のグラフ表示である。hMAb TSHR1−ビオチンに基づくアッセイの感度は、検出可能な国際標準NIBSC90/672の濃度によれば明らかに優れている。これは、図3bに図示したグレーブス病患者72人からの血清の調査において確認された。
【0093】
したがって、本発明では、更に、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法が提供され、当該方法は、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)本発明によるTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える。
【0094】
上記感度は、TSH受容体に対するヒト又は非ヒトポリクローナル抗体、TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片、或いは、明確な感度の方法又はキットを提供できるようなTSH受容体に対する十分な親和性を一般に示す、1010モル-1以上のTSH受容体に対する親和性を有するTSH受容体の結合対象を用いて、本発明によるアッセイ方法又はキットにおいても達成できる。こうしたポリクローナル抗体、TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片の調製は、この技術において周知である。例えば、TSHの過剰活性類似体は、Nature, Biotechnology, Volume 14, October 1995, pages 1257-1263において説明されているが、この論文では、本発明によって提供される方法又はキットにおける、こうしたTSHの使用を開示していない。
【0095】
したがって、本発明では、更に、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法が提供され、当該方法は、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、TSH受容体に対するヒト又は非ヒトポリクローナル抗体を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該ポリクローナル抗体が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)当該ポリクローナル抗体と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える。
【0096】
本発明では、更に、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法が提供され、当該方法は、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)当該TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える。
【0097】
本発明では、更に又、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法が提供され、当該方法は、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、1010モル-1以上のTSH受容体に対する親和性を有するTSH受容体の結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)TSHの当該結合対象と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える。
【0098】
本発明では、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)の使用法も提供され、当該結合対象又は更なる結合対象とTSH受容体との相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる。
【0099】
本発明では、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、TSH受容体に対するヒト又は非ヒトポリクローナル抗体の使用法も提供され、当該ポリクローナル抗体とTSH受容体との相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる。
【0100】
本発明では、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)の使用法も提供され、当該結合対象又は更なる結合対象とTSH受容体との相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる。
【0101】
本発明では、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片の使用法も提供され、当該TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片とTSH受容体との相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる。
【0102】
本発明では、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)の使用法も提供され、当該結合対象又は更なる結合対象とTSH受容体との相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる。
【0103】
本発明では、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、1010モル-1以上のTSH受容体に対する親和性を有するTSH受容体の結合対象の使用法も提供され、当該結合対象とTSH受容体との相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる。
【0104】
一つ以上の結合ペアの結合分子は、抗原−抗体(例えば、[TSH受容体又はエピトープ]−[モノクローナル又は組み換えTSH受容体抗体])、抗イディオタイプ抗体−モノクローナル又は組み換えTSH受容体抗体、或いは新規のTSH受容体抗体結合要素−モノクローナル又は組み換えTSH受容体抗体にすることができると理解されよう。好ましくは、結合ペアの結合分子は、抗原−抗体、即ち、[TSH受容体又はその一つ以上のエピトープ]−[モノクローナル又は組み換えTSH受容体抗体]であり、エピトープは、「自立」したものでよく、或いは、より大きな足場ポリペプチド又はその他に存在してもよい。
【0105】
好ましくは、本発明は、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法を提供し、当該方法は、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)TSH受容体とTSH受容体に反応して生成された自己抗体との相互作用を可能にする条件下で、当該試料を、(i)全長TSH受容体又は一つ以上のそのエピトープ、或いはTSH受容体の一つ以上のエピトープを含むポリペプチド、及び(ii)本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)に接触させ、当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドが、当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いはTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と相互作用できるようにするステップと、
(c)当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドと当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える。
【0106】
特定の実施形態において、本発明による方法は、本発明によって提供される方法の特定の実施形態における実質的に上記のようなポリクローナル抗体、TSH、又はその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、若しくは断片、或いはTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象と、結合ペアの第二の分子、或いはTSH受容体、又はその一つ以上のエピトープ、若しくはポリペプチドとの相互作用において競合する、一つ以上の競合対象を利用してもよい。こうした競合対象は、TSH、或いは、TSH受容体に反応するマウスモノクローナル抗体等、TSH受容体に反応する一つ以上のモノクローナル抗体を含んでよい。
【0107】
好ましくは、上述した本発明による方法は、更に、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と、適切な場合には、上記のような一つ以上の競合対象とのための標識手段を提供するステップを備え、適切な標識手段は、酵素標識、同位体標識、化学発光標識、蛍光標識、及びその他を含む。
【0108】
本発明は、更に、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットを提供し、当該キットは、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)TSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備える。
【0109】
本発明は、更に、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットを提供し、当該キットは、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)本発明によるTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備える。
【0110】
本発明は、更に、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットを提供し、当該キットは、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、TSH受容体に対するヒト又は非ヒトポリクローナル抗体を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該ポリクローナル抗体が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)当該ポリクローナル抗体と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備える。
【0111】
本発明は、更に、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットを提供し、当該キットは、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)当該TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備える。
【0112】
本発明は、更に、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットを提供し、当該キットは、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、1010モル-1以上のTSH受容体に対する親和性を有するTSH受容体の結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)TSH受容体の当該結合対象と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備える。
【0113】
一つ以上の結合ペアの結合分子は、抗原−抗体(例えば、[TSH受容体又はエピトープ]−[モノクローナル又は組み換えTSH受容体抗体])、抗イディオタイプ抗体−モノクローナル又は組み換えTSH受容体抗体、或いは新規のTSH受容体抗体結合要素−モノクローナル又は組み換えTSH受容体抗体にすることができると理解されよう。好ましくは、結合ペアの結合分子は、抗原−抗体、即ち、[TSH受容体又はその一つ以上のエピトープ]−[モノクローナル又は組み換えTSH受容体抗体]であり、エピトープは、「自立」したものでよく、或いは、より大きな足場ポリペプチド又はその他に存在してもよい。
【0114】
本発明は、好ましくは、TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットを提供し、当該キットは、
(a)全長TSH受容体、又は一つ以上のそのエピトープ、或いはTSH受容体の一つ以上のエピトープを含むポリペプチドと、
(b)本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と
(c)TSH受容体とTSH受容体に反応して生成された自己抗体との相互作用を可能にする条件下で、当該対象者からの当該体液試料、当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドと、TSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)とを接触させ、当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドが、当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いはTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と相互作用できるようにする手段と、
(d)当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドと当該試料中に存在する当該自己抗体との相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備える。
【0115】
特定の実施形態において、本発明によるキットは、更に、それぞれ上で定義されるようなポリクローナル抗体、TSH、又はその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、若しくは断片、或いはTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象と、結合ペアの第二の分子、或いはTSH受容体、又はその一つ以上のエピトープ、或いはポリペプチドとの反応において競合する、一つ以上の競合対象を備えてもよい。こうした競合対象は、TSH、或いは、TSH受容体に反応するマウスモノクローナル抗体等、TSH受容体に反応する一つ以上のモノクローナル抗体を含んでよい。
【0116】
適切な場合、上述したキットは、更に、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と、適切な場合には、上記のような一つ以上の競合対象とのための標識手段を備え、適切な標識手段は、実質的に上記のようなものである。
【0117】
TSH受容体に対する自己抗体が存在する状態では、上記のような方法又はキットにおいて、TSH受容体とTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)との結合は、減少する。
【0118】
本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)は、更に、TSH及び関連リガンドのために、実質的に上記のようなアッセイ方法及びキットにおいて利用できる。
【0119】
したがって、本発明は、更に、TSH及び関連リガンドのアッセイを行う方法を提供し、当該方法は、
(a)TSH又は関連リガンドを含有する疑いがある試料又は含有する試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH又は関連リガンド、或いは(ii)TSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在するTSH又は関連リガンドとの相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH又は関連リガンドの存在の示度を提供するステップと、を備える。
【0120】
本発明は、更に、TSH又は関連リガンドのアッセイを行うキットを提供し、当該キットは、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH又は関連リガンド、或いは(ii)TSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)と相互作用できるように、TSH又は関連リガンドを含有する疑いがある試料又は含有する試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在するTSH又は関連リガンドとの相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH又は関連リガンドの存在の示度を提供するステップと、を備える。
【0121】
本発明は、更に、TSH受容体の更なる結合対象を特定する方法も提供し、更なる結合対象は、TSH受容体との結合が可能で、TSH受容体との結合について、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象と競合し、更なる結合対象はTSHを含まず、方法は、
(a)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップを備え、当該結合ペアの第一の分子は、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(b)アッセイの対象となる更なる結合対象を、TSH受容体との結合について(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と競合するTSH受容体の潜在的な更なる結合対象として提供するステップと、
(c)(a)の当該結合ペアの当該第二の分子が(i)(b)の当該更なる結合分子、或いは(ii)(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と相互作用できるように、(b)の当該更なる結合分子を(a)の結合分子の当該一つ以上のペアに接触させるステップと、
(d)(a)の当該結合ペアの当該第二の分子と(b)の当該更なる結合分子との相互作用をモニタリングし、これにより、(b)の当該更なる結合分子がTSH受容体との結合について(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と競合するかのアッセイを行うステップと、を備える。
【0122】
本発明は、更に、TSH受容体の更なる結合対象を特定するキットを提供し、更なる結合対象は、TSH受容体との結合が可能で、TSH受容体との結合について、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象と競合し、更なる結合対象はTSHを含まず、キットは、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(b)TSH受容体との結合について(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と競合するTSH受容体の潜在的な更なる結合対象としてアッセイの対象となる更なる結合対象に、(a)の結合分子の当該一つ以上のペアを接触させ、(a)の当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該更なる結合分子、或いは(ii)(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と相互作用できるようにする手段と、
(c)(a)の当該結合ペアの当該第二の分子と当該更なる結合分子との相互作用をモニタリングし、これにより、当該更なる結合分子がTSH受容体との結合について(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と競合するかのアッセイを行う手段と、を備える。
【0123】
本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)の更なる応用は、新型のTSH受容体抗体結合部位を特定及び提供するための使用である。本発明では、したがって、TSH受容体の一つ以上のエピトープ領域を特定するプロセスが提供され、プロセスは、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)を、全長TSH受容体又は一つ以上のその断片に接触させ、TSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象と、当該全長TSH受容体又は当該一つ以上のその断片との相互作用を可能にするステップと、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する当該全長TSH受容体又は当該一つ以上のその断片のアミノ酸を特定するステップとを備える。適切な場合、結合対象が相互作用したTSH受容体のアミノ酸を特定するために、結合対象又は更なる結合対象とTSH受容体の選択された断片及び全長TSH受容体との相互作用が分析される。
【0124】
更に、本発明は、TSH受容体と結合する本発明によるモノクローナルTSH受容体抗体の領域に対する抗体の生成を可能にする。このように生成された抗イディオタイプ抗体は、TSH受容体自己抗体、TSH、及び関連化合物のアッセイのための新しいリガンドとしての可能性を有する。更に、TSH受容体自己抗体、TSH、及び関連化合物の作用を調節するin vivoでの有効な作用物質となり得る。したがって、本発明は、更に、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)の結合領域に対して生成された一つ以上の抗イディオタイプ抗体を提供し、その調製については、実施例において更に説明される。
【0125】
モノクローナル抗体を使用して、新型の抗体結合部位を特定及び提供するその他の方法は周知である。例えば、JC Scott及びGP Smith、「エピトープライブラリによるペプチドリガンドの探索」、Science 1990; 249(4967): 386-390と、MA Myers, JM Davis, JC Tong, J Whisstock, M Scealy, IR MacKay, MJ Rowley、「ペプチドファージディスプレイ及び分子モデリングによって特定された糖尿病自己抗原GAD65での配座エピトープ」、Journal of Immunology 2000; 165: 3830-3838と、によって説明されるような、ファージディスプレイランダムペプチドライブラリの抗体スクリーニングによるものである。非ペプチド化合物及び非ペプチド化合物のライブラリの抗体スクリーニングも実行可能である。
【0126】
こうした手順を使用して特定及び提供された新型のTSH受容体抗体結合部位は、TSH受容体自己抗体、TSH、及び関連化合物のアッセイにおける新しいリガンドとしても有用となり得る。更に、TSH受容体自己抗体、TSH、及び関連化合物の作用を調節するin vivoでの有効な作用物質となり得る。
【0127】
実質的に上記のような本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)は、治療においても有効に利用できる。したがって、本発明によって、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)の投与を備える治療の方法と、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)を(一つ以上の薬学的に許容できるその担体、希釈剤、又は賦形剤と共に)含む薬剤組成物と、薬剤又は組成物の製造における、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)の使用とが提供される。
【0128】
TSH受容体の結合対象、特に、本発明による患者のリンパ球に由来するTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体は、上記のように、例えば、競合結合測定法においてTSHの代わりとなるもの等、グレーブス病の病原の理解と、TSH受容体自己抗体を測定する新しい方法の開発とにとって価値のある試薬となる。更に、本発明による刺激性結合対象は、TSH受容体を含む組織(例えば、甲状腺組織又は甲状腺癌組織)が刺激を必要とする時のin vivoでの用途を有する。したがって、本発明は、甲状腺組織及び/又はTSH受容体を含む組織において使用する薬剤又は組成物を提供する、特に、本発明によるTSH受容体の刺激性結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)は、腫瘍学、特に、甲状腺癌の診断、管理、及び利用において利用できる。
【0129】
代替として、本発明のよるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象は、強力なTSH又は自己抗体アンタゴニスト(遮断抗体)となることが可能であり、本発明によるこうした遮断性TSH受容体抗体は、TSH受容体を含む組織(例えば、甲状腺組織又は甲状腺癌組織)の活性を、TSH、TSH受容体自己抗体、又はその他の刺激物質に対して、不活性化、或いは反応しないようにする必要がある時、in vivoでの用途にとって価値がある。
【0130】
更に、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象は、TSH受容体を含む組織を、TSH、TSH受容体自己抗原、又はその他の刺激物質に対して不活性化可能な、又は反応しないようにできる、一つ以上の更なる作用物質と共に、組み合わせて提供される。通常、一つ以上の更なる作用物質は、TSH受容体から独立して機能する。
【0131】
TSH受容体自己抗体の結合が不活性化又は阻害を必要とする場合の特定の治療用途は、TSH受容体に対する自己免疫に関連する眼の後眼窩組織の疾患の治療におけるものであり、したがって、TSH受容体自己抗体の結合を阻害するための、9D33等、TSH受容体と相互作用する遮断抗体の使用は、こうした疾患の治療において、重要な治療上の有用性を有する。TSH受容体に対する自己免疫に関連する眼の後眼窩組織の上記疾患等、TSH受容体自己抗体の結合の阻害を必要とする自己免疫疾患の治療は、代替として、本発明によって提供されるような結合対象又は更なる結合対象に対する抗イディオタイプ抗体を利用してよく、本明細書で説明する本発明の更なる態様からのこうした抗イディオタイプ抗体と、その更なる調製の詳細とについては、実施例で提示する。
【0132】
更に詳しくは、したがって本発明は、TSH受容体に対する自己免疫に関連する眼の後眼窩組織の疾患の治療における、TSH受容体に対する更なる結合対象の使用を提供し、更なる結合対象は、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)のTSH受容体との結合を実質的に阻害する。本発明は、更に、TSH受容体の活性化及び/又は刺激に関連する眼の後眼窩組織の疾患の治療用薬剤の製造における、TSH受容体に対する更なる結合対象の使用を提供し、更なる結合対象は、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)のTSH受容体との結合を実質的に阻害する。更に、TSH受容体に対する自己免疫に関連する眼の後眼窩組織の疾患を治療する方法が提供され、方法は、こうした疾患に罹患した患者又はこうした疾患の疑いがある患者に対する、TSH受容体に対する更なる結合対象の治療有効量の投与を備え、更なる結合対象は、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)のTSH受容体との結合を実質的に阻害する。本発明のこうした実施形態において使用する更なる結合対象は、好ましくは、TSH受容体との、本発明で提供されるような結合対象の結合、及びこのようなTSH受容体自己抗体の結合を実質的に阻害する遮断抗体を含み、こうした好適な抗体は、本明細書で説明したような9D33を含むことができる。
【0133】
本発明は更に、TSH受容体に対する自己免疫に関連する眼の後眼窩組織の疾患の治療における、本発明による結合対象又は更なる結合対象の結合領域に対して生成された抗イディオタイプ抗体の使用を提供する。本発明は、更に、TSH受容体の活性化及び/又は刺激に関連する眼の後眼窩組織の疾患の治療用薬剤の製造における、本発明による結合対象又は更なる結合対象の結合領域に対して生成された抗イディオタイプ抗体の使用を提供する。更に、TSH受容体に対する自己免疫に関連する眼の後眼窩組織の疾患を治療する方法が提供され、方法は、こうした疾患に罹患した患者又はこうした疾患の疑いがある患者に対する、本発明による結合対象又は更なる結合対象の結合領域に対して生成された抗イディオタイプ抗体の治療有効量の投与を備える。
【0134】
こうしたin vitro及び/又はin vivoでの応用において、TSHと比較した本発明で提供されるようなモノクローナル抗体の主要な利点の一つは、こうした抗体を操作できる相対的な容易さである。例えば、TSHアゴニスト又はアンタゴニスト活性の度合いを含む、親和性及び生物学的特徴といった特徴を変更するための、本発明によるモノクローナル抗体のTSH受容体結合領域の操作である。更に、本発明によるモノクローナル抗体は、in vivoにおいてTSHよりも遙かに長い半減期を有しており、これは特定のin vivoでの応用において大きな利点となり得る。更に、抗体の半減期は、操作可能であり、例えば、抗体のFab断片は、完全なIgGよりも遙かに短い半減期を有する。
【0135】
本発明による薬学的組成物は、経口、非経口、及び局所投与に適したものを含み、但し、最適な経路は、一般に、患者の状態と治療する特定の疾患とによって決まる。患者に投与される実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の正確な量は、担当医師の責任となるが、但し、利用される容量は、患者の年齢及び性別、治療する特定の疾患、及び実質的に上記のような投与の経路を含む多数の要素によって決まる。
【0136】
本発明では、更に、甲状腺組織及び/又はTSH受容体を含む組織を刺激する方法が提供され、方法は、こうした刺激を必要とする患者に対して、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の診断又は治療有効量を投与するステップを備える。
【0137】
本発明は、更に、甲状腺組織及び/又はTSH受容体を含む組織を刺激する上で同時に、別個に、又は連続して使用する、甲状腺組織及び/又はTSH受容体を含む組織を刺激可能な一つ以上の更なる作用物質と共に、実質的に上記のようなTSH受容体の結合対象を組み合わせて提供する。好ましくは、一つ以上の更なる作用物質は、組み換えヒトTSH及び/又はその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、及び断片、或いは、こうした断片の変異体、類似体、又は誘導体を含む。代替として、一つ以上の更なる作用物質は、TSH受容体との結合から独立して機能できる。
【0138】
本発明によるTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)は、市販のキットで使用するTSH受容体抗体又は抗体群を含む必要がある患者血清の代替ソースとしても利用できる。更に、TSH受容体の結合対象又は更なる結合対象(通常、ヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体)は、所定の濃度のTSH受容体抗体又は抗体群を含む必要がある調製物において、本発明に従って提供可能であり、これにより、TSH受容体に対して、刺激活性等、所定の活性を備えた調製物が提供できる。随意的に、こうした調製物は、更に、GAD、TPO、又はその他に対するモノクローナル抗体等、一つ以上の更なるヒトモノクローナル抗体を含んでもよい。
【0139】
以下の例示的な説明は、本明細書で使用した特定の用語の理解を容易にするために提供される。こうした説明は、便宜的に提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【0140】
「TSH受容体の結合対象」とは、TSH受容体に対する結合特異性を有する分子を表す。本明細書で説明する結合対象は、天然に由来してよく、或いは、全体又は一部が合成的に生成されてもよい。こうした結合対象は、TSH受容体の一つ以上のエピトープと特異的に結合し、したがって、これに対して相補的である、ドメイン又は領域を有する。特に、本明細書で説明する結合対象は、TSH受容体に対するモノクローナル抗体又は組み換え抗体にすることが可能であり、更に詳しくは、TSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体又は組み換え抗体にすることが可能である。
【0141】
「Cドメイン」とは、抗体分子において相対的に定常であるアミノ酸配列の領域を意味する。
【0142】
「CDR」とは、抗体分子の重鎖及び軽鎖に存在し、最も配列変動性の大きな領域を表す相補性決定領域を意味する。CDRは、可変ドメインの約15乃至20%に相当し、抗体の抗原結合部位を表す。
【0143】
「FR」とは、フレームワーク領域を意味し、CDRに存在しない可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインの残りの部分を表す。
【0144】
「HC」とは、重鎖可変ドメインとIgG定常領域の第一のドメインとを含む抗体分子の重鎖の一部を意味する。
【0145】
「宿主細胞」は、形質転換又はトランスフェクションされた細胞であり、或いは、外因性ポリヌクレオチド配列による形質転換又はトランスフェクションが可能な細胞である。
【0146】
「同一性」は、この技術で知られるものとして、配列を比較することで決定されるような、二つ以上のポリペプチド配列間又は二つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。
【0147】
「LC」とは、抗体分子の軽鎖を意味する。
【0148】
「NIBSC90/672」は、甲状腺刺激活性の国際標準である。甲状腺刺激活性の国際標準は、TSH受容体自己抗体を有する単一のヒト患者からの凍結乾燥血漿蛋白質を含む一群のアンプルで構成される。この調製物は、国際共同研究において評価されたもので、甲状腺刺激及び甲状腺受容体結合活性の両方を有することが証明されている。WHOの生物学標準化専門委員会は、1995年の第46回会合において、コード90/672の調製物を甲状腺刺激抗体の国際標準に定めた。各アンプルは、0.02Mリン酸緩衝液と、透析ヒト血漿蛋白質と、定義によるアンプル当たり0.1国際単位(100ミリ国際単位)とを含む溶液1.0mlの凍結乾燥残留物を含む。
【0149】
本明細書で説明するヒトモノクローナル抗体による「TSH受容体の刺激」は、TSH受容体に結合するその能力と、これにより、TSH受容体とのこうした結合の結果として、例えば、環状AMPの生成をもたらす能力とを意味する。こうした刺激は、TSH又はTSH受容体自己抗体とTSH受容体との結合において見られる反応と類似しており、これにより、本明細書で説明するヒトモノクローナル抗体は、本質的に、TSH受容体と結合するTSH又はTSH受容体自己抗体により見られるものと同じ又は類似する結合反応を提供する。
【0150】
「Vドメイン」とは、抗体分子内の可変性の高いアミノ酸配列の領域を意味する。
【0151】
「VHドメイン」とは、抗体分子の重鎖の可変領域又はドメインを意味する。
【0152】
「VLドメイン」とは、抗体分子の軽鎖の可変領域又はドメインを意味する。
【0153】
次に、本発明について、以下の図面及び実施例により例示し、図面及び実施例は、本発明の範囲を決して限定しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0154】
実施例
材料及び方法
リンパ球の分離及びヒトモノクローナルTSH受容体自己抗体のクローニング
血液は、高レベルのTSH受容体に対する血清自己抗体(TRAb)を有するグレーブス病及び一型糖尿病の患者から取得した。この研究について、倫理委員会の承認を取得した。末梢血リンパ球を、血液試料20mLからFicoll−Paque(Amersham Biosciences、英国チャルフォントセントジャイルズ、HP8 4SP)で分離し、その後、エプスタインバーウイルス(EBV)(European Collection of Cell Culture−ECACC、英国ポートンダウン、SP4 0JG)に感染させ、以前に説明したようにマウスマクロファージ支持細胞層で培養した(N Hayakawa, LDKE Premawardhana, M powell, M Masuda, C Arnold, J Sanders, M Evans, S Chen, JC Jaume, S Baekkeskov, B Rees Smith, J Furmaniak、「グルタミン酸デカルボキシラーゼに対するヒトモノクローナル自己抗体の分離及び特徴付け」、Autoimmunity 2002; 35: 343-355)。次に、EBV不死化Bリンパ球を、マウス/ヒトハイブリッド細胞株K6H6/B5と融合し(WL Carroll, K Thilemans, J Dilley, R Levy、「ヒトB細胞腫瘍との融合対象としてのマウス×ヒトヘテロハイブリドーマ」、Journal of Immunological Methods 1986; 89: 61-72)、5細胞/ウェル及び最終時1/2細胞/ウェルで希釈を限定することにより二度クローニングし、単一のコロニを得た(RI Freshney, MG Freshney編、Culture of immortalized cells、Wiley-Liss, New York 1996; 283-297内のBJ Bolton, NK Spurr、「Bリンパ球」)。オリジナルのウェルと後続のクローンとは、可溶化TSH受容体と結合する125I−TSHの阻害により、TSH受容体に関してスクリーニングした(下記参照)。TSH受容体自己抗体を生成する単一のクローンを組織培養フラスコで成長させた。
【0155】
TSH受容体抗体調製物の生成、純化、及び標識
マウスTSH受容体MAbは、以前に説明したように生成し(Y Oda, J Sanders, M Evans, A Kiddie, A Munkley, C James, T Richards, J Wills, J Furmaniak, B Rees Smith、「モノクローナル抗体を使用したヒトチロトロピン(TSH)受容体のエピトープ分析」、Thyroid 2000; 10: 1051-1059)、更に、pcDNA3.1においてクローニングした全長TSHR cDNAにより免疫性を与えたマウスから作成した(UA Hasan, AM Abai, DR Harper, BW Wren, WJW Morrow、「核酸免疫付与:第三世代ワクチンに関する概念及び手法」 Jpirnal of Immunological Methods 1999; 228:1-22)。
【0156】
IgGは、Prosep A(Millipore UK Ltd.、英国ウォトフォード、WD18 8YH)での親和性クロマトグラフィを使用して、製造者の取扱説明書と、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって評価した純度とにより、組織培養の上清から純化した。
【0157】
ヒト重鎖アイソタイプは、放射状拡散アッセイを使用して決定した(The Binding Site、英国バーミンガム、B29 6AT)。ヒト軽鎖アイソタイプは、抗ヒトカッパ鎖及び抗ヒトラムダ鎖特異性マウスモノクローナル抗体によるウェスタンブロットを使用して決定した(Sigma−Aldrich Company Ltd.、英国ギリンガム、SP8 4XT)。
【0158】
純化IgG調製物は、(特定のモノクローナル抗体に応じて)1:10乃至1:100の酵素/蛋白質比でmercuripapain(Sigma−Aldrich)により処理し、Prosep Aカラムを通過させ、Fab調製物から完全なIgG又はFc断片を全て除去した(Y Oda, J Sanders, S Roberts, M Maruyama, R Kato, M Perez, VB Petersen, N Wedlock, J Furmaniak, B Rees Smith、「TSH受容体に対する抗体の結合特性」、Journal of Molecular Endocrinology 1998; 20: 233-244)。完全なIgGは、Fab調製物において、SDS−PAGEでは検出されなかった。モノクローナル抗体のIgG及びFab調製物は、以前に説明したように125Iにより標識した(Y Oda, J Sanders, S Roberts, M Maruyama, R Kato, M Perez, VB Petersen, N Wedlock, J Furmaniak, B Rees Smith、「TSH受容体に対する抗体の結合特性」、Journal of Molecular Endocrinology 1998; 20: 233-244)。IgG調製物は、ビオチンヒドラジド(Pierce、米国ロックフォード、IL61105)により、製造者の取扱説明書に従って標識した。ヒトモノクローナルTSH受容体自己抗体のFab断片の結晶を取得し、標準的な手法を使用して、その結晶構造を決定した。
【0159】
患者
様々な罹患期間のグレーブス病患者からの血清を調査した。調査した患者の血清は、TSH受容体と結合する125I標識TSHの阻害を示した(下記参照)。加えて、アジソン病(A1及びA2)及び2l−OHに対する高レベルの自己抗体(1mL当たり113及び1970単位、RSRキット)を有する患者二人からの血清と、一型糖尿病(D1及びD2)及び高レベルのGAD65(1mL当たり3700及び37.5単位、RSRキット)を有する患者二人からの血清とを調査した。患者からは、調査についてのインフォームドコンセントを取得した。健康な供血者からの血清(Golden West Biologicals、米国ビスタ、CA92083から購入)も調査した。TRAbの第一の国際標準調製物(90/672)は、国立生物基準管理研究所(NIBSC、英国ポッターズバー、EN6 3QH)から取得した。
【0160】
TSH受容体と結合する125I−TSH及び125I−マウスTSHR MAbの阻害
結合阻害アッセイは、以前に説明したようなTSH受容体被覆チューブを使用して実行した(J Sanders, Y Oda, S Roberts, A Kiddie, T Richards, J Bolton, V McGrath, S Walters, D Jaskolski, J Furmaniak, B Rees Smith、「TSH受容体自己抗体と125I標識TSH受容体との相互作用」、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1999; 84: 3797-3802)(RSR Ltdの試薬)。簡単に言うと、試料(組織培養上清、純化IgG又はFab断片、患者の血清又はNIBSC90/672基準)100μLを、TSH受容体被覆チューブにおいて、室温で二時間、穏やかに振動させて培養した。吸引後、チューブをアッセイ緩衝液(50mmol/L NaCl、10mmol/L トリスHCl pH7.8、0.1%Triton X−100)1mLにより二度洗浄した後、125I−TSH又は125I−MAb(5×104cpm)100μLを追加し、室温で一時間、振動させて培養した。その後、チューブをアッセイ緩衝液1mLで二度洗浄し、吸引して、ガンマカウンタにおいて計数した。
【0161】
結合の阻害は、次のように計算した。
【0162】
100×1−試験材料が存在する場合の結合cpm
対照材料が存在する場合の結合cpm
使用した対照材料は、培地、健康な供血者の血清プール、或いはその他の記載のものとした。
【0163】
甲状腺刺激活性の分析
モノクローナル自己抗体調製物と患者の血清とがhTSH受容体(細胞当たり約50,000受容体)を発現するCHO細胞において環状AMP(又はcAMP)の生成を刺激する能力(Y Oda, J Sanders, S Roberts, M Maruyama, R Kato, M Perez, VB Petersen, N Wedlock, J Furmaniak, B Rees Smith、「TSH受容体に対する抗体の結合特性」、Journal of Molecular Endocrinology 1998; 20: 233-244)は、R Latif, P Graves, TF Davies、「ヒトチロトロピン受容体のオリゴマ化」Journal of Biological Chemistry 2001; 276: 45217-45224の方法に従って実行した。簡単に言うと、CHO細胞を86ウェルプレートに接種し(ウェル当たり30,000細胞)、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM(Invitrogen Ltd、英国ペイズリ、PA4 9RF)において24時間培養した。その後、ウシ胎仔血清なしで、DMEMにおいて、培養を更に24時間継続した。次に、DMEMを除去し、試験TSH、IgG、Fab、及び血清(1g/Lグルコースと、20mmol/L Hepesと、222mmol/Lスクロースと、15g/Lウシ血清アルブミン(BSA)と、0.5mmol/L 3イソブチル−1−メチルキサンチン pH7.4と、を含有するNaClなしのハンクの緩衝食塩溶液において100μlを希釈)を追加し、37℃で一時間培養した。試験溶液の除去後、細胞を溶解させ、Amersham Biosciences、英国チャルフォントセントジャイルズ、HP8 4SPのBiotrak酵素イムノアッセイシステムを使用して、環状AMPのアッセイを行った。一部の実験では、患者の血清とTSHRに対するマウスモノクローナル抗体とがTSH又はhMAb TSHR1の刺激活性を阻害する能力を評価した。これは、(a)TSH又はsMAb TSHR1単独の刺激作用と(b)患者の血清又はマウスモノクローナル抗体が存在する場合のTSH又はsMAb TSHR1の刺激作用とを比較することで実行した。
【0164】
可変領域遺伝子分析
トータルRNAは、酸フェノールグアニジン法(P Chomezynski, N Sacchi、「酸グアニジニウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出によるRNA分離の単一ステップ法」、Analytical Biochemistry 1987; 162: 156-159)を使用してTSH自己抗体を生成するクローンの1×107細胞から調製し、mRNAは、オリゴdT磁気ビーズ(Dynal Biotech Ltd、英国ウィラル、CH62 3QL)を使用して調製した。RT−PCR反応は、Invitrogen Ltd、英国ペイズリ、PA4 9RFからの試薬を使用して実行した。
【0165】
センス鎖オリゴヌクレオチドプライマは、英国医学研究審議会のV−baseデータベース(www.mrc−cpe.cam.ac.uk)により推奨された配列を使用して設計した。ヒトIgG1重鎖及びラムダ軽鎖に特異的なアンチセンスプライマは、DNA配列を符号化する定常領域に基づくものとした。センス及びアンチセンスプライマは、両方とも、PCR産物のクローニングを促進するために付加的な5’限定エンドヌクレアーゼ部位配列を含んだ。IgG1重鎖及びラムダ軽鎖RT−PCR反応は、適切なプライマの完全なパネルを使用して実行した。全てのプライマは、invitrogen Ltdで合成されたものである。RT反応は、50℃で10分間発生させ、直後に、PCR40サイクル(15秒94℃、30秒55℃、30秒72℃)を行った。RT−PCR産物は、pUC18においてクローニングし、Promega UK Ltd、英国サウスハンプトン、SO16 7NSのWizardキットを使用してDNAを調製し、サンガ−クールソン法によって配列を決定した(F Sanger, S Nicklen, AR Coulson、「連鎖停止阻害物質によるDNA配列決定」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 1977; 74: 5463-5467)。V領域配列は、Ig blast(www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/igblast.cgi)を使用して、ヒトIg遺伝子の利用可能な配列と比較した。
【0166】
免疫沈降アッセイ(IPA)
全長TSH受容体を符号化するcDNAを、pYES2(invitrogen)においてT7プロモータの下流に配置し、in vitro TnTシステム(Promega UK Ltd)において使用して、以前に説明したように35S−メチオニンにより標識されたTSH受容体を生成した(L Prentice, J Sanders, M Perez, R Kato, J Sawicka, Y Oda, D Jaskoiski, J Furmaniak, B Rees Smith、「チロトロピン(TSH)受容体自己抗体は、in vitro転写/翻訳システムにおいて生成されたTSH受容体と結合するように思えない」、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1997; 82: 1288-1292)。簡単に言うと、HSB(10mmol/LトリスHCl pH8.3、200mmol/L NaCl、及び1%Tween20を含有する10mg/mLウシ血清アルブミン)において希釈した35S標識TSH受容体(25000乃至30000cpm)50μLを、希釈した試験試料の重複50μLアリコートに追加し、室温で二時間培養した。その後、プロテインAセファロース(Sigma−Aldrich)の追加により免疫複合物を沈殿させ、シンチレーションカウンタにおいて計数した。
【0167】
TSH受容体の調製及びウェスタンブロット
全長ヒトTSH受容体をCHO−K1細胞において発現させ、1%Triton X−100により抽出し、以前に説明したように、TSH受容体モノクローナル抗体親和性クロマトグラフィにより純化した(Y Oda, J Sanders, M Evans, A Kiddie, A Munkley, C James, T Richards, J Wills, J Furmaniak, B Rees Smith、「モノクローナル抗体を使用したヒトチロトロピン(TSH)受容体のエピトープ分析」、Thyroid 2000; 10: 1051-1059)。
【0168】
純化CHO細胞で生成したTSH受容体を、9%SDS−PAGEゲル上に広げ、ニトロセルロース上にブロットし、以前に説明したように、試験抗体と反応させた(Y Oda, J Sanders, M Evans, A Kiddie, A Munkley, C James, T Richards, J Wills, J Furmaniak, B Rees Smith、「モノクローナル抗体を使用したヒトチロトロピン(TSH)受容体のエピトープ分析」、Thyroid 2000; 10: 1051-1059)。
【0169】
TSH受容体ペプチドを使用したエピトープ分析
ヒトTSH受容体の細胞外ドメイン全体をカバーする、それぞれの長さが25aaである26のペプチドは、J Morris博士から快く提供された(JC Morris, ER Bergert, DJ McCormick、「ヒトチロトロピン受容体の構造−機能研究。合成ヒトTSH受容体ペプチドによる標識チロトロピン(TSH)の結合の阻害」Journal of Biological Chemistry 1993; 268: 10900-10905)。M21−OH5 MAbと結合するヒト21−OHペプチド(C1、SSSRVPYKDRARLPL)(S Chen, J Sawicka, L Prentice, JF Sanders, H Tanaka, V Petersen, C Betterle, M Volpato, S Roberts, M Powell, B Rees Smith, J Furmaniak、「モノクローナル抗体のパネルを使用したステロイド21−ヒドロキシラーゼ上の自己抗体エピトープの分析」Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1998; 83: 2977-2986)を陽性対照として使用し、GAD65に対するヒトモノクローナル抗体(N Hayakawa, LDKE Premawardhana, M Powell, M Masuda, C Arnold, J Sanders, M Evans, S Chen, JC Jaurne, S Baekkeskov, B Rees Smith, J Furimaniak、「グルタミン酸デカルボキシラーゼに対するヒトモノクローナル自己抗体の分離及び特徴付け」、Autoimmunity 2002; 35: 343-355)を陰性対照として使用した。ペプチドELISAは、以前に説明したように実施した(Y Oda, J Sanders, M Evans, A Kiddie, A Munkley, C James, T Richards, J Wills, J Furmaniak, B Rees Smith、「モノクローナル抗体を使用したヒトチロトロピン(TSH)受容体のエピトープ分析」、Thyroid 2000; 10: 1051-1059)。
【0170】
モノクローナルTSHR自己抗体調製物とプラスチックチューブ又はELISAプレートウェルに被覆したTSH受容体との相互作用
(a)125I標識自己抗体
患者の血清を含む試験試料(100μL)を、TSH受容体被覆チューブ(RSR Ltd.)において、室温で二時間、穏やかに振動させて培養した。吸引後、チューブをアッセイ緩衝液1mLにより二度洗浄した後、標識自己抗体調製物(30,000cpm)を追加し、室温で一時間、振動させて培養した。その後、チューブをアッセイ緩衝液1mLで二度洗浄し、吸引して、ガンマカウンタにおいて計数した。125I標識自己抗体結合の阻害は、TSH結合の阻害に関する式を使用して計算した(上記参照)。
【0171】
(b)ビオチン標識モノクローナル自己抗体及びビオチン標識TSH
以前に説明した手順(J Bolton, J sanders, Y Oda, C Chapman, R Konno, J Furmaniak and B Rees Smith、「ELISAによる甲状腺刺激ホルモン受容体自己抗体の測定」、Clinical Chemistry, 1999; 45: 2285-2287)を使用した。簡単に言うと、患者の血清を含む試験試料(75μL)を、TSH受容体被覆ELISAプレートウェル(RSR Ltd)において、ELISAプレート振動装置上で振動(毎分200回)させて二時間培養した。次に、試験試料を除去し、ウェルをアッセイ緩衝液で一度洗浄し、その後、ビオチン標識モノクローナルTSH受容体自己抗体(100μL中1ng)又はビオチン標識ブタTSH(RSR Ltd、100μL中5ng)を追加し、室温で25分間、振動させて培養を継続した。ウェルを一度洗浄し、ストレプトアビジンペロキシダーゼ(RSR Ltd、100μL中10ng)を追加し、室温で20分間、振動させて培養を継続した。その後、ウェルを三度洗浄し、ペロキシダーゼ基質のテトラメチルベンジジン(RSR Ltd、100μL)を追加した。室温で30分間、振動なしで培養後、0.5M H2SO4 50μLを追加し、基質反応を停止し、各ウェルの吸光度をELISAプレートリーダにおいて450nmで読み取った。ビオチニル化MAb又はTSH結合の阻害は、次のように計算された指数として表現した。
【0172】
100×1−450nmでの試験試料の吸光度
450nmでの陰性血清対照の吸光度
TSH受容体被覆チューブに対するモノクローナル自己抗体結合のスキャッチャード分析
アッセイ緩衝液50μL中の未標識IgG又はFabと、125I標識hMAb IgG又はFab(アッセイ緩衝液中30,000cpm)50μLとを、室温で二時間、穏やかに振動させて培養し、アッセイ緩衝液1mLで二度洗浄し、ガンマカウンタにおいて計数した。結合したIgG又はFabの濃度を結合/遊離と対比してプロットし(G Scatchard、「小分子及びイオンに対する蛋白質の誘引」、Annals of the New York Academy of Sciences 1949; 51: 660-672)、結合定数を導いた。
【0173】
モノクローナルTSH受容体自己抗体により被覆したチューブとのTSH受容体の結合
患者の血清を含む試験試料(100μL)と界面活性剤可溶化TSH受容体(20μL)とを、室温で一時間培養した。次に、培養混合物の重複50μLアリコートを、TSH受容体自己抗体Fabにより被覆(10μg/mLを200μL、4℃で一晩経過後、洗浄及びポストコーティング)されたプラスチックチューブ(Nunc Maxisorp)に加えた。室温で一時間、穏やかに振動させて培養した後、チューブを洗浄し、125I標識TSH受容体C末端モノクローナル抗体4E31(J Sanders, Y Oda, A Kiddie, T Richards, J Bolton, V McGrath, S Walters, D Jaskolski, J Furmaniak, B Rees Smith;「TSH受容体自己抗体と125I標識TSH受容体との相互作用」、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1999; 84: 3797-3802)100μL(40,000cpm)を追加し、更に一時間、穏やかに振動させて培養を継続した。その後、チューブを洗浄し、125Iを計数した。
【0174】
E coliにおける組み換えhMAb TSHR1 Fabのクローニング及び発現
hMAb TSHR1重鎖RT−PCR産物(可変領域遺伝子分析の項参照)を、Xhol及びSpel限定エンドヌクレアーゼにより切断し、hMAb TSHR1軽鎖RT−PCR産物をSacl及びXbal限定エンドヌクレアーゼにより切断し、重鎖及び軽鎖cDNAの両方を、lacZプロモータの制御下で、Immunozap H/Lベクタ(Stratagene Europe、オランダ、アムステルダム)においてクローニングした(I Matthews, G Sims, S Ledwidge, D Stott, D Beeson, N Willcox, A Vincent、「筋無力症の経産婦におけるアセチルコリン受容体に対する抗体:胎児性抗原による免疫付与の証拠」、Laboratory Investigation 2002, 82: 1-11)。プラスミドDNAを、Qiagenミディプラスミド純化キット(Qiagen Ltd、英国クローリ、RH10 9AX)を使用して調製し、サンガ−クールソン法(F Sanger, S Nicklen, AR Coulson、「連鎖停止阻害物質によるDNA配列決定」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 1977; 74: 5463-5467)を使用して配列決定することでhMAb TSHR1重鎖及び軽鎖cDNAの存在を確認した。プラスミドDNAを二種類のE coli株、(a)XLl−Blue MRF’(Stratagene)及び(b)HB2151(Amersham Bioscience)において形質転換し、LBアンピシリン(10g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、10g/L NaCl、終濃度100μg/mLアンピシリン)寒天プレート(15g/L寒天)上において、37℃で一晩成長させた。前培養物(LBアンピシリン3mL+1%グルコース中の一コロニ)を、37℃で一晩、振動させて成長させた。組み換えFabの生成は、グルコースが存在する場合に阻害される。一晩培養後の前培養物は、1/100に希釈し(LBアンピシリン50mL中0.5mL)、OD600が0.4乃至0.6となるまで37℃で成長させた。こうした培養物を、30℃で20分間振動させた。その後、イソプロピル−β−Dチオガラクトシド(IPTG)を追加して終濃度を1mmol/Lとし、培養物を30℃で一晩(16時間)、振動させて引き続き培養した。次に、培養物を4℃で30分間、3000rpmで遠心分離し、培養上清及びペレットを回収した。ペレットは、氷温TES緩衝液(0.2mol/LトリスHCl pH8.0、0.5mol/L EDTA、0.5mol/Lスクロース)中で渦動により再懸濁させた。H2O中で5倍に希釈した氷温TES緩衝液を更に1.5mL追加し、混合物を再度渦動させ、氷上で30分間培養し、その後、遠心分離して、第二の上清又はペリプラズム画分(PF)を得た。培養上清及びPFを、0.45μmフィルタにより濾過し、10mmol/LトリスpH7.5、50mmol/L NaClにおいて一晩透析した。非形質転換XLl−Blue MRF’及びHB2151細胞と、IPTGなしでグルコースにより成長させた、即ち、非誘導性の、hMAb TSHR1プラスミドにより形質転換したXLl−Blue MRF’(XLl−Blue MRF’/hMAb TSHR1)並びにhMAb TSHR1プラスミドにより形質転換したHB2151(HB2151/hMAb TSHR1)とからの培養上清又はPFも調製した。培養上清及びPFでは、(a)TSHRと結合するTSHを阻害する能力と、(b)TSHRを発現するCHO細胞における環状AMP生成を刺激する能力と、(c)ラジオイムノアッセイによる組み換えFabの総濃度とについてアッセイを行った。このアッセイでは、アッセイ緩衝液(50mmol/L NaCl、10mmol/LトリスHCl pH7.8、0.1%Triton X−100)において希釈した培養上清及びPFを含むキャリブレータ及び試験材料(100μLを重複して作成)を、Fab特異性ヤギ抗ヒトIgG(Sigma Aldrich、英国プール、BH12 4QH)によって被覆したプラスチックチューブにおいて、室温で一時間培養した。その後、チューブをアッセイ緩衝液(2×1mL)により洗浄し、125I標識hMAb TSHR1 Fab(30,000cpm)100μLを追加した後、室温で培養した。一時間後、チューブを再度洗浄し(2×1mL)、125Iを計数した。結合したものの計数は、キャリブレータ(5乃至500ng/mL)におけるFab(ハイブリドーマ生成hMAb TSHR1 Fab)の濃度と、このキャリブレーション曲線から外れて読み取られた様々な試験材料における組み換えFabの濃度とに対してプロットした。このアッセイの検出限界は、5乃至10ng/mLのFabとした。
【0175】
組み換え4B4(グルタミン酸デカルボキシラーゼ又はGADに対するヒトMAb)及び組み換えハイブリッドFab(hMAb TSHR1及び4B4の混合HC及びLC)のクローニング及び発現
組み換え4B4 Fab(4B4については、N Hayakawa, LDKE Premawardhana, M powell, M Masuda, C Arnold, J Sanders, M Evans, S Chen, JC Jaume, S Baekkeskov, B Rees Smith, J Furmaniak、「グルタミン酸デカルボキシラーゼに対するヒトモノクローナル自己抗体の分離及び特徴付け」、Autoimmunity 2002; 35: 343-355において詳細に説明される)及び組み換えハイブリッドFabは、組み換えhMAb TSHR1 Fabについて説明したように、HC及びLCのそれぞれをImmunozap H/Lベクタにおいてクローニングすることで生成し、HB2151細胞において発現させた。培養上清及びペリプラズム画分では、(a)TSHRと結合するTSHを阻害する能力と、(b)上記のような組み換えFabの総濃度とについてアッセイを行った。加えて、GAD Ab活性を、下記のように評価した。
【0176】
培養上清及びペリプラズム画分における組み換えGAD Ab活性の測定
GADに対するヒトモノクローナル抗体(4B4)との125I標識GAD(RSR Ltd、英国カーディフ、CF23 8HE)の結合を阻害するGAD Ab Fab調製物の能力に基づくアッセイを使用した。このアッセイでは、GAD Abアッセイ緩衝液(150mmol/L NaCl、50mmol/LトリスHCl pH8.0、0.1%v/v Tween 20、1g/Lウシ血清アルブミン、0.5g/L NaN3)において希釈した試験試料(50μLを重複して作成)を、125I標識GAD(GAD Abアッセイ緩衝液50μL中30,000cpm)と共に、室温で一時間培養した。その後、4B4 IgG 50μL(GAD Abアッセイ緩衝液中0.1μg/mL)を追加し、室温で24時間、培養を継続した。その後、固相プロテインA(GAD Abアッセイ緩衝液中50μL、RSR Ltdより)を追加し、4B4 IgG−125I標識GADの複合物を沈殿させた(プロテインAは、Fab及び125I標識GADの複合物とは反応しない)。プロテインAとの反応を室温で一時間継続させた後、遠心分離(1500gで30分間、4℃)により沈殿物をペレットにし、GAD Abアッセイ緩衝液1mLにより洗浄し、125Iを計数した。4B4 IgGが存在しない場合の125I標識GAD結合は、追加した総cpmの4乃至5%となった。
【0177】
hMAb TSHR1に対する抗イディオタイプ抗体の生成
完全フロイントアジュバント内のhMAb TSHR1 Fab 50μgと、その25日後の不完全フロイントアジュバント内のhMAb TSHR1 Fab 50μgの第二の注射と、脾臓除去四日前のhMAb TSHR1 Fab 50μgの更なる注射とにより、生後六乃至八週間のBALB/cマウスに腹腔内で免疫付与した。抗体陽性マウス(下記参照)からの脾臓細胞を、マウス骨髄腫細胞株、及びTSHR MAbのために上機能に分離されたモノクローナル抗体に融合させた。マウス血清及び細胞培養ウェル内の抗イディオタイプ抗体のレベルは、TSHR被覆チューブと結合する125I−hMAb TSHR1 Fabの阻害によって測定した。特に、試験試料の重複60μLアリコート(アッセイ緩衝液:50mmol/L NaCl、10mmol/LトリスHCl pH7.8、0.1%Triton X−100により希釈)を、125I−hMAb TSHR1 Fab(アッセイ緩衝液において希釈された30000cpm)と共に、室温で一時間培養した。混合物100μLを、開始緩衝液20μL(上記参照)と共に、重複TSHR被覆チューブ(RSR Ltd)へ移動させ、室温で更に二時間、振動させて培養を継続した。その後、チューブをアッセイ緩衝液2×1mLで洗浄し、125Iを計数した。hMAb TSHR1に反応する抗イディオタイプ抗体の存在は、標識hMAb TSHR1 FabのTSHR被覆チューブとの結合を阻害する試験試料の能力から明らかとなった。
【0178】
結果
患者の血液20mLから取得したリンパ球(30×106)を、マウスマクロファージの支持細胞層上のEBVの上清200μLと共に、48ウェルプレート上で、1ウェル当たり1×106で平板培養した。EBV感染後11日目に、125I−TSH結合の阻害について上清をモニタした。一つのウェルでは、結合の阻害について陽性であることが確認され、阻害のレベルは、16日目には90%の阻害を上回るまでに増加し、このレベルは24日目まで維持され、その後、低下した。培養物を拡張し、EBV感染後21、23、26、及び27日目にK6H6/B5細胞と融合させ、合計7回の融合実験を実施した。各融合物を3×96ウェルプレート(即ち、合計21枚のプレート)で平板培養し、125I−TSH結合阻害活性を有する抗体を安定して生成する一つのウェルを取得した。この後、三ラウンドの再クローニングを行い、TSH受容体と結合する標識TSHを阻害したヒトモノクローナル抗体を生成する単一のクローンを発生させた。このヒトモノクローナルTSH受容体自己抗体は、指定されたhMAb TSHR1となり、ラムダ軽鎖を有するサブクラスIgG1に含まれた。
【0179】
様々な濃度のhMAb TSHR1 IgG及びFabがTSH受容体と結合する標識TSHを阻害する能力は、図1に図示されている。図1において確認できるように、こうした調製物は、僅か1ng/mLでTSH結合を阻害し、1000ng/mLでは90%を越える阻害が得られた。TSMAb TSHR1 IgG及びFabも、図2に図示したように、TSH受容体によりトランスフェクションされたCHO細胞における環状AMPの生成を刺激した。hMAb TSHR1 IgG及びFabは、僅か1ng/mLで、環状AMPの強力な刺激を発生させた。同様のレベルの刺激は、0.1ng/mLのブタTSH及び10ng/mLのヒトTSHにより観察された。最初のリンパ球提供者からの血清(リンパ球分離用の血液試料と同時に取得)がTSH受容体と結合する標識TSHを阻害する能力及びTSH受容体トランスフェクションCHOにおける環状AMP生成を刺激する能力の比較は、図3に図示されている。TSH結合の阻害は、500倍に希釈した血清で検出でき、一方、環状AMPの刺激は、5000倍に希釈した血清で検出できた。
【0180】
125I標識hMAb TSHR1 IgGは、TSH受容体被覆チューブに結合し、スキャッチャード分析は、結合定数1010モル-1を示した。この結合は、(標識TSH結合の阻害によって検出可能な)TSH受容体自己抗体を有するグレーブス病患者からの血清によって阻害された(表1)。125I標識hMAb TSHR1 Fabも、TSH受容体被覆チューブに結合し(スキャッチャード分析による結合定数=4.5×1010モル-1)、この結合は、TSH受容体自己抗体陽性のグレーブス血清によって阻害された(表2)。加えて、界面活性剤可溶化調製物は、hMAb TSHR1により被覆したプラスチックチューブに結合可能であり、この結合は、TSH受容体自己抗体を含有する血清により阻害可能となった(表3)。
【0181】
図4に図示したように、hMAb TSHR1−ビオチンは、TSH受容体被覆ELISAプレートに結合し、この結合は国際基準調製物NIBSC90/672及びグレーブス病患者からの血清によって阻害された。結合の阻害は、健康な供血者からの血清では観察されなかった。図3aは、hMAb TSHR1−ビオチンに基づいたTSHR自己抗体のアッセイと以前のアッセイとの比較のグラフ表示である。hMAb TSHR1−ビオチンに基づくアッセイの感度は、検出可能な国際標準NIBSC90/672の濃度によれば明らかに優れている。これは、図3bに図示したグレーブス病患者72人からの血清の調査において確認された。健康な供血者の血清(n=100)及び非甲状腺疾患の対象者からの血清(n=43)では、この調査において、それぞれhMAb TSHR1結合の10%までの阻害及びTSH結合の11%までの阻害が発生した。
【0182】
hMAb TSHR1 IgGは、ウェスタンブロット分析において、全長TSH受容体調製物とは反応せず、免疫沈降アッセイ及びTSH受容体ペプチドELISAにおいても、35S標識全長TSH受容体と十分に反応しなかった。こうした反応性の欠如は、hMAb TSHR1がTSH受容体の直線エピトープではなく立体配座エピトープと反応することを示している。
【0183】
hMAb TSHR1を符号化する遺伝子の配列分析は、重鎖V領域の遺伝子がVH5ファミリであり、D遺伝子がD6−13ファミリであり、J遺伝子がJH5ファミリであることを示し、軽鎖について、V遺伝子領域がVL1−11生殖細胞系に由来し、J遺伝子領域がJL3b生殖細胞系に由来することを示した。重鎖ヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれ図4及び5に図示されており、軽鎖ヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれ図6及び7に図示されている。こうした配列は、縮重したPCRプライマを使用して決定したHC及びLCヌクレオチド配列の精緻化である。特に、ヌクレオチド115乃至120に関するHC配列決定のアーチファクトが特定された。配列決定では、cacgtg(アミノ酸His Valへ転写)を示したが、結晶構造では、より高い信頼性で、アミノ酸Gln Leu(cagctgとなる塩基に対応)を示した。結晶構造分析は、特に縮重PCRプライマ領域において、HC及びLC由来アミノ酸配列の精緻化も可能にした。LCの場合、アミノ酸2は、RT−PCRではProとされたが、結晶構造からはThrとなった。HCの場合、アミノ酸2は、RT−PCRではMetとされたが、結晶構造からはValとなった。
【0184】
標識TSH結合の阻害に関する、hMAb TSHR1 IgG調製物とTSH受容体自己抗体の国際標準との活性の比較は、表5に示している。これにより、hMAb TSHR1 IgGの比活性は、アッセイを血清において実施した時には蛋白質1mg当たりNIBSC90/672 138単位、アッセイをアッセイ緩衝液において実施した時には1mg当たり163単位になると推定可能である(二値の平均=150単位/mg)。hMAb TSHR1 Fab調製物は、血清及びアッセイ緩衝液中において、それぞれ1mg当たり288及び309単位となった(二値の平均=300単位/mg)。表6は、リンパ球提供者の血清及び提供者の血清IgGの同様の分析を示している。確認できるように、提供者の血清は、平均0.38単位/mLのNIBSC90/672を含み(血清及びアッセイ緩衝液において、それぞれ0.36及び0.4)、提供者の血清IgGは蛋白質1mg当たり0.059単位の平均比活性を有する。こうした結果は、表7にまとめられており、hMAb TSHR1 IgGの比活性(150単位/mg)との比較は、TSH結合の阻害に関して、モノクローナル自己抗体IgGがリンパ球提供者の血清IgGの2500倍の活性を有することを示す。
【0185】
TSH受容体によりトランスフェクションされたCHO細胞における環状AMPの刺激に関する、様々なIgG及び血清調製物の活性の初期評価も、表7に示している。環状AMPの刺激のアッセイは、アッセイ内とアッセイ間とにおける大きな可変性を特徴とする。これは、96ウェルプレートに最初に接種した細胞の数及び質のばらつきと、その後の48時間の接種細胞の成長速度のばらつきとを含む、いくつかの要素に関連する。そのため、hMAb TSHR1 IgG及びFab、リンパ球提供者の血清及び血清IgG、及びNIBSC90/672のアッセイは、反復して実施し、その結果は表8にまとめている。hMAb TSHR1 IgGの比活性は、刺激アッセイにおいて、リンパ球提供者の血清IgGの0.1単位と比較して、1mg当たり318単位となり、即ち、モノクローナル自己抗体IgGは、環状AMP生成の刺激に関して、提供者の血清IgGの約3000倍の活性を有した。この値は、TSH結合阻害の測定で観察された2500倍の値との妥当な一致を示している(上記と表5及び6とを参照)。表9は、hMAb TSHR1 IgG及びFabとリンパ球提供者の血清IgGTSH受容体刺激作用の更なる分析を示している。
【0186】
TSH受容体を発現するCHO細胞における環状AMPの生成の刺激に対するブタTSH及びhMAb TSHR1 IgGの影響は、表10に示す結果から確認できるように、加法的なものとなった。
【0187】
基準調製物NIBSC90/672による環状AMP刺激アッセイにおいて観察された代表的な結果は、表11に示している。
【0188】
表12及び13は、それぞれ標識TSH結合の阻害及び環状AMP生成の刺激に関する様々なE.coli培養上清の作用を示している。両E.coli株の(hMAb TSHR1プラスミドによる)形質転換及びIPTG誘導培養物は、TSH結合の有効な阻害物質(表12)及び環状AMP生成の強力な刺激物資(表13)として機能する十分な量の組み換えhMAb TSHR Fabを生成した。(非形質転換細胞及び形質転換済み非誘導細胞からの)対照培養上清は、検出可能なレベルの結合阻害(表12)又は刺激(表13)活性を生成しなかった。
【0189】
更なる対照実験では、GADに対するヒトモノクローナル抗体(4B4)のHC及びLCのクローニング及び発現によって生成した組み換えヒト抗体Fabについて分析した。培養上清及びペリプラズム画分の分析は、組み換え4B4 Fabが検出可能なTSH結合の阻害活性(表14及び15)又はTSHR刺激活性(表16及び17)を有していないことを示した。更に、(a)hMAb TSHR1 HC及び4B4 LCと、(b)hMAb TSHR1 LC及び4B4 HCとで構成されるハイブリッドFabは、いずれのアッセイでもTSHRとの相互作用を示さなかった(表14乃至17)。こうした様々な組み換えFab調製物におけるGAD Ab活性のアッセイでは、4B4 HC及び4B4 LCにより形質転換した細胞におけるGAD Abの発現のみが検出可能となった(表18及び19)。組み換えhMAb TSHR1 Fabは、検出可能なGAD Ab活性を示さず、4B4とhMAb TSHR1 HC及びLCとの混合物で構成される組み換えFabハイブリッドも同様となった(表18及び19)。
【0190】
TSHRによりトランスフェクションされたCHO細胞における環状AMP生成を刺激するhMAb TSHR1の能力は、TSHアンタゴニストとして機能するTSHR自己抗体を含む患者の血清によって阻害された(図8)。加えて、TSHRに対するマウスモノクローナル抗体(9D33)は、hMAb TSHR1の刺激活性を遮断可能(表20)となった一方で、別のTSHRマウスMAb(2B4)は効果がなかった。しかしながら、2B4は、9D33のようにTSHの刺激活性を遮断できた(表21)。表22は、TSHRプラスチックチューブとの125I標識TSH及び125I標識hMAb TSHR1の結合を阻害する2B4及び9D33の能力を示している。9D33は、標識TSHの結合と標識hMAb TSHR1の結合とを極めて効果的に阻害できた(10μg/mLで50%を越える阻害)。2B4は、TSHRと結合する標識TSHの有効な阻害物質(1μg/mLで80%を越える阻害)となったが、hMAb TSHR1の結合(1μg/mLで11%の阻害)又は9D33の結合(1μg/mLで22%の阻害)に対しては小さな効果のみを有した。TSHR被覆チューブに対する標識9D33の結合は、TSHR自己抗体を含有するグレーブス病患者の血清によって阻害され(TSHRに結合する標識TSHの阻害によって測定)、一方、健康な供血者の血清と、他の自己免疫疾患患者からの血清とは、殆ど又は全く効果がなかった(表23)。TSHRに結合する標識9D33は、TSHアゴニスト又はアンタゴニスト特性を有するTSHR自己抗体(表24)と、国際標準NIBSC90/672(表25)とによって阻害された。スキャッチャード分析は、プラスチックチューブ上に被覆したTSH受容体に対して、9D33及び2B4がそれぞれ2×1010モル-1及び1×1010モル-1の親和性を有することを示した。
【0191】
hMAb TSHR1 Fabによるマウスの免疫付与では、TSHRと結合するFabの能力を阻害するような形でhMAb TSHR1 Fabと結合可能なマウス血清中の抗体(ポリクローナル抗体)の生成が生じた(表26)。更に、hMAb TSHR1 Fabにより免疫付与されたマウスの脾臓細胞から生成されたモノクローナル抗体は、TSHRと結合するFabを阻害することが可能となった(表27)。
【0192】
我々の分析全体は、ヒトモノクローナル自己抗体hMAb TSHR1がリンパ球提供者血清中のTSH受容体自己抗体のTSH受容体結合及び甲状腺刺激特性を有することを示している。上で詳述したように、モノクローナル抗体は、組み換えFab調製物としても生成された。
【0193】
結論
(a)我々は、提供患者血清中のTSH受容体自己抗体と同様の特性を有するTSH受容体に対するヒトモノクローナル自己抗体を生成した。モノクローナル抗体は、組み換えFab調製物としても生成された。
【0194】
(b)モノクローナル抗体IgG及びFabと組み換えFab調製物とは、強力な甲状腺刺激物質であり、TSH受容体と結合する標識TSHの有効な阻害物質である。
【0195】
(c)標識MAb IgG及びFab調製物とTSH受容体との結合は、グレーブス病患者からのTSH受容体自己抗体陽性血清によって阻害されるが、健康な供血者の血清又は他の自己免疫疾患患者からの血清では阻害されない。TSH受容体と結合する標識hMAb TSHR1の阻害に基づくTSHR自己抗体のアッセイシステムは、今までに説明された他のアッセイよりも感度が高い。
【0196】
(d)TSHアンタゴニストとして機能するTSH受容体自己抗体と、TSHアゴニストとして機能するTSH受容体自己抗体とは、TSH受容体と結合する標識hMAb TSHR1を阻害する。
【0197】
(e)プラスチックチューブ上に被覆されたhMAb TSHR1調製物は、TSH受容体と結合し、この結合は、様々な患者の血清中のTSH受容体自己抗体によって阻害される。
【0198】
(f)TSHRと結合するhMAb TSHR1を阻害するマウスモノクローナル抗体(9D33)は、hMAb TSHR1及びTSHの刺激活性を遮断することも確認された。
【0199】
(g)TSH受容体と結合するのを阻害するような形でhMAb TSHR1と結合するhMAb TSHR1に対するマウスポリクローナル及びモノクローナル抗体を生成した。したがって、こうした抗イディオタイプ抗体は、hMAb TSHR1についてTSHRと競合し、これにより、TSHR自己抗体の結合対象が必要な用途において、TSHRの有用な代替となり得る。
【0200】
(h)こうした結果は、hMAb TSHR1及び/又はその誘導体及び/又はその競合対象を、以下においてTSHの代用として使用できることを示す。
【0201】
(i)TSH受容体自己抗体、TSH、及び関連リガンドのアッセイ
(ii)TSHアゴニスト又はTSHアンタゴニスト活性の提供が関与する様々なin vivo用途
(iii)新型のTSH受容体自己抗体結合部位の特定及び提供

表1 TSH受容体と結合する125I標識hMAb TSHR1 IgGに対する患者
血清の影響、及びTSH受容体と結合する125I標識TSHに対する影響との比較
【0202】
【表1】


G1乃至G11は、グレーブス病の病歴を有する患者からの血清である。
【0203】
G9の血清は、高レベルのTSH遮断を有する(即ち、TSHアンタゴニスト活性)。
【0204】
G10及びG11は、高レベルの甲状腺刺激活性を有する。
【0205】
G10は、リンパ球提供者の血清である。
【0206】
/10、/20等は、健康な供血者の血清プールでの希釈係数を示す。
【0207】
N1乃至N10は、健康な供血者からの血清である。
【0208】
D1は、一型糖尿病患者からのものである(グルタミン酸デカルボキシラーゼに対する自己抗体について陽性)。
【0209】
A1及びA2は、アジソン病患者からのものである(ステロイド21−ヒドロキシラーゼ自己抗体について陽性)。
【0210】
健康な供血者の血清プールが存在する場合、125I標識MAb IgGの約25%がTSHR被覆チューブと結合した。

表2 TSH受容体と結合する125I標識hMAb TSHR1 Fabに対する患者
血清の影響、及びTSH受容体と結合する125I標識TSHに対する影響との比較
【0211】
【表2】

【0212】
表3 hMAb TSHR1 Fabにより被覆したプラスチックチューブとのTSH
Rの結合、及びTSHR自己抗体を含有する血清によるTSHR結合の阻害
【0213】
【表3】

1 TSHR結合は、TSHR C末端に対する125I標識マウスモノクローナル抗体を使用して検出し、総cpm=1チューブ当たり39,000とした。
【0214】
表4 TSHRにより被覆したELISAプレートウェルとのビオチン標識hMAb
TSHR1及びビオチン標識TSHの結合に対する患者血清試料の影響
【0215】
【表4】

HBD=健康な供血者の血清
U/mLは、NIBSC90/672の単位である。
【0216】
血清P1乃至P7は、グレーブス病患者からのものである。
【0217】
表5 WHO基準調製物NIBSC90/672とhMAb TSHR1 IgG及び
Fab調製物とによるTSH結合の阻害
【0218】
【表5】

1 健康な供血者の血清プールで、この血清プールのみが存在する場合、総cpmの14.9%がTSHRと結合した。緩衝液のみが存在する場合、総cpmの14.7%がTSHRと結合した。
【0219】
2 2G4は、甲状腺ペロキシダーゼに対するヒトモノクローナル自己抗体である。
【0220】
表6 リンパ球提供者の血清及び提供者の血清IgGによるTSH結合の阻害
【0221】
【表6】

1 健康な供血者の血清プールで、この血清プールのみが存在する場合、総cpmの14.7%がTSHRと結合した。緩衝液のみが存在する場合、総cpmの16.3%がTSHRと結合した。
2 記載の単位は、NIBSC90/672国際TSHR自己抗体基準調製物である。
【0222】
表7 hMAb TSHR1とリンパ球提供者の血清及びIgG調製物との比活性
【0223】
【表7】


1 記載の単位はNIBSC90/672である。
2 値は、血清及びアッセイ緩衝液において得られた結果の平均である(表5及び6参照)。
【0224】
表8 いくつかの環状AMP刺激アッセイにおいて決定されたhMAb TSHR1と
リンパ球提供者の血清及び血清IgGとの比活性の概要
【0225】
【表8】

【0226】
表9 環状AMP刺激アッセイにおけるhMAb TSHR1 IgG及びFabとリ
ンパ球提供者の血清IgGとの影響の更なる分析
【0227】
【表9】

1 2G4は、甲状腺ペロキシダーゼに対するヒトモノクローナル自己抗体である。
【0228】
表10 環状AMP刺激アッセイにおけるTSH及びhMAb TSHR1 IgGの
相加効果
【0229】
【表10】

1 記載の値は、厳密に一致する重複した決定での平均である。
【0230】
表11 環状AMP刺激アッセイにおけるNIBSC90/672の影響
【0231】
【表11】

【0232】
表12 二種類のE coli株(XL1−Blue MRF’及びHB2151細胞)において発現される組み換えhMAb TSHR1 Fabによる、TSHR被覆チューブと結合する125I−TSHの阻害
【0233】
【表12】


1 アッセイ緩衝液=50mmol/L NaCl、10mmol/L トリスHCl pH7.8
2 全ての希釈は、アッセイ緩衝液におけるものである。
3 結合の阻害は、次の式を使用して計算した。
【0234】
【数1】

A=試験試料が存在する場合の結合
B=アッセイ緩衝液が存在する場合の結合
【0235】
表13 二種類のE coli株(XL1−Blue MRF’及びHB2151細胞)において発現される組み換えhMAb TSHR1 Fabによる、TSHRによって
トランスフェクションしたCHO細胞におけるcAMP生成の刺激
【0236】
【表13】

1 アッセイ緩衝液=1g/Lグルコースと、20mmol/L Hepesと、222mmol/Lスクロースと、15g/Lウシ血清アルブミン(BSA)と、0.5mmol/L 2イソブチル−1−メチルキサンチン pH7.4と、を含有するハンクの緩衝食塩溶液(NaClなし)
2 アッセイ緩衝液における希釈
3 基礎値=アッセイ緩衝液のみが存在する場合に生成されるcAMP
【0237】
表14 組み換えhMAb TSHR1 Fab、組み換え4B4 Fab(GADに対するヒトMAb)、及び組み換えハイブリッドFab(二つのFabのHC及びLCの混合)による、TSHR被覆チューブと結合する125I−TSHの阻害。E coli HB2151細胞における発現
ペリプラズム画分のアッセイ
【0238】
【表14】

1 結合の阻害は、次の式を使用して計算した。
【0239】
【数2】

A=試験試料が存在する場合の125I−TSH結合%
B=アッセイ緩衝液が存在する場合の125I−TSH結合%
a 非誘導細胞におけるTSHR Ab活性の検出は、IPTGが存在しない場合にFabの低レベルの発現を提供するプロモータの構成的活性によるものとした。
【0240】
ud=検出不可
【0241】
表15 組み換えhMAb TSHR1 Fab、組み換え4B4 Fab(GADに対するヒトMAb)、及び組み換えハイブリッドFab(二つのFabのHC及びLCの混合)による、TSHR被覆チューブと結合する125I−TSHの阻害。E coli HB2151細胞における発現
培養上清のアッセイ
【0242】
【表15】

1 表14の脚注参照
ud=検出不可
【0243】
表16 組み換えhMAb TSHR1 Fab、組み換え4B4 Fab(GADに対するヒトMAb)、及び組み換えハイブリッドFab(二つのFabのHC及びLCの混合)による、TSHRによってトランスフェクションしたCHO細胞における環状AMP生成の刺激。E coli HB2151細胞における発現
培養上清のアッセイ
【0244】
【表16】

1 アッセイ緩衝液:1g/Lグルコースと、20mmol/L Hepesと、222mmol/Lスクロースと、15g/Lウシ血清アルブミン(BSA)と、0.5mmol/L 2イソブチル−1−メチルキサンチン pH7.4と、を含有するハンクの緩衝食塩溶液(NaClなし)
2 アッセイ緩衝液における希釈
3 基礎値=アッセイ緩衝液のみが存在する場合に生成される環状AMP
a 非誘導細胞における環状AMP刺激活性の検出は、IPTGが存在しない場合にFabの低レベルの発現を提供するプロモータの構成的活性によるものとした。総組み換えFabレベルは検出不可だったが(検出限界=5乃至10ng/mL)、環状AMP刺激アッセイは、僅か0.3ng/mLのhMAb TSHR1 Fabを検出可能である。
【0245】
ud=検出不可
【0246】
表17 組み換えhMAb TSHR1 Fab、組み換え4B4 Fab(GADに対するヒトMAb)、及び組み換えハイブリッドFab(二つのFabのHC及びLCの混合)による、TSHRによってトランスフェクションしたCHO細胞における環状AMP生成の刺激。E coli HB2151細胞における発現
ペリプラズム画分のアッセイ
【0247】
【表17】

ud=検出不可; 1、2、3 表16の脚注参照
a 非誘導細胞におけるTSHR Ab活性の検出は、IPTGが存在しない場合に低レベルの発現を提供するプロモータの構成的活性によるものとした。
【0248】
表18 組み換えhMAb TSHR1 Fab、組み換え4B4 Fab、及び組み換えハイブリッドFab(二つのFabのHC及びLCの混合)による、125I−GADと結合する4B4 IgG(GADに対するハイブリドーマ生成ヒトMAb)の阻害。E coli HB2151細胞における発現
ペリプラズム画分のアッセイ
【0249】
【表18】

1 結合の阻害は、次の式を使用して計算した。
【0250】
【数3】

A=試験試料が存在する場合の125I−GAD結合
B=アッセイ緩衝液が存在する場合の125I−GAD結合
ud=検出不可
【0251】
表19 組み換えhMAb TSHR1 Fab、組み換え4B4 Fab、及び組み換えハイブリッドFab(二つのFabのHC及びLCの混合)による、125I−GADと結合する4B4 IgG(GADに対するハイブリドーマ生成ヒトMAb)の阻害。E coli HB2151における発現
培養上清のアッセイ
【0252】
【表19】

1 表18の脚注参照
ud=検出不可
【0253】
表20 TSHRを発現するCHO細胞における環状AMP生成のhMAb TSHR
1誘導刺激における、TSHRに対するマウスモノクローナル抗体の影響
【0254】
【表20】

1 全ての希釈は、アッセイ緩衝液(1g/Lグルコースと、20mmol/L He
pesと、222mmol/Lスクロースと、15g/Lウシ血清アルブミン(BSA)と、0.5mmol/L 2イソブチル−1−メチルキサンチン pH7.4と、を含有するハンクの緩衝食塩溶液(NaClなし))において行った。
2 基礎値=アッセイ緩衝液のみが存在する場合の環状AMP生成
3 2G2は、サイログロブリンに対するマウスモノクローナル抗体である(100μg/mLのIgG調製物)。
4 2B4及び9D33は、TSHRに対するマウスモノクローナル抗体である(100μg/mLのIgG調製物)。
【0255】
表21 TSHRを発現するCHO細胞における環状AMP生成のpTSH誘導刺激に
おける、TSHRに対するマウスモノクローナル抗体の影響
【0256】
【表21】

1、2、4 表20の脚注参照。個々の実験では、サイログロブリンに対する対照マウスMAb(2G2 IgG 100μg/mL)は、環状AMP生成のpTSH(0.5ng/mL)刺激に対する影響を有していないことが明らかとなった(pTSH及びアッセイ緩衝液=12.7×基礎値、pTSH及び2G2=11.7×基礎値)。
【0257】
表22 様々なMAbによる、TSHR被覆チューブと結合する125I−TSH、125I−hMAb TSHR1、又は125I−9D33の阻害
【0258】
【表22】

1 全ての希釈は、健康な供血者の血清プール(HBDプール)におけるものである。
2 結合の阻害は、次の式を使用して計算した。
【0259】
【数4】

A=試験試料が存在する場合の結合%
B=アッセイ緩衝液が存在する場合の結合%
サイログロブリンに対する対照マウスMAb(2G2 0.001乃至100μg/mL)は、標識TSH、hMAb TSHR1、又は9D33の結合に影響しなかった。
【0260】
表23 TSHR被覆チューブと結合する125I−9D33及び125I−TSHに対す
る患者血清の影響
【0261】
【表23】

1 HBDプール=健康な供血者の血清プール
G1乃至G20は、グレーブス病患者からの血清である。
D1及びD2は、一型糖尿病患者からのものである(グルタミン酸デカルボキシラーゼに対する自己抗体について陽性)。
A1及びA2は、アジソン病患者からのものである(ステロイド21−ヒドロキシラーゼ自己抗体について陽性)。
N1乃至N9は、健康な供血者からの血清である。
2 結合の阻害は、次の式を使用して計算した。
【0262】
【数5】

A=試験血清が存在する場合の結合%
B=健康な供血者の血清プールが存在する場合の結合%
【0263】
表24 TSHR被覆チューブと結合する125I−9D33に対する、TSHアゴニス
ト及びTSHアンタゴニスト活性を有する患者血清の影響
【0264】
【表24】

1 HBDプール=健康な供血者の血清プールであり、試験血清は、このプールにおいて希釈した。
血清A及びBは、TSHアンタゴニスト活性を有する。
血清C及びDは、TSHアゴニスト活性を有する。
2 結合の阻害は、表23で使用した式により計算した。
【0265】
表25 TSHR被覆チューブと結合する125I−9D33及び125I−TSHに対す
るNIBSC90/672の影響
【0266】
【表25】

1 90/672は、健康な供血者の血清プールにおいて希釈した。
2 結合の阻害は、表23で使用した式により計算した。
【0267】
表26 hMAb TSHR1 Fabにより免疫付与したマウスからの血清中のポリクローナルhMAb TSHR1抗イディオタイプ抗体による、TSHR被覆チューブと結合
する125I−hMAb TSHR1 Fabの阻害
【0268】
【表26】

1 試験試料は、アッセイ緩衝液において希釈した。アッセイ緩衝液が存在する場合の結合は、43%となった。
2 結合の阻害は、次の式を使用して計算した。
【0269】
【数5】

A=試験試料が存在する場合の125I−hMAb TSHR1 Fab結合%
B=アッセイ緩衝液が存在する場合の125I−hMAb TSHR1 Fab結合%
【0270】
表27 マウスモノクローナル抗イディオタイプ抗体7E51 IgGによる、TSHR被覆チューブと結合する125I−hMAb TSHR1 Fabの阻害
【0271】
【表27】

1 表26の脚注参照
【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1】hMAb TSHR1 IgG及びFabによる、TSHR被覆チューブと結合する標識TSHの阻害を示す図。
【図2】hMAb TSHR1 IgG及びFabと、ブタTSH(70単位/mg、pTSH)と、組み換えヒトTSH(6.7単位/mg、hTSH)と、対照モノクローナル抗体(MAb:甲状腺ペロキシダーゼに対するヒトモノクローナル自己抗体(2G4))との甲状腺刺激活性を示す図。
【図3】TSHRと結合するTSHの阻害と、TSHRトランスフェクションCHO細胞における環状AMPの刺激とに対する、リンパ球提供者の血清の影響を示す図。
【図3a】本発明によるTSHR自己抗体のためのELISAと、以前のアッセイとの比較した図。
【図3b】本発明によるTSHR自己抗体のためのELISAと、J Bolton, J sanders, Y Oda, C Chapman, R Konno, J Furmaniak and B Rees Smith、「ELISAによる甲状腺刺激ホルモン受容体自己抗体の測定」、Clinical Chemistry, 1999 volume 45 pp 2285-2287に基づくELISAとの比較した図。
【図4】以下と共に、hMab TSHR1重鎖ヌクレオチド配列を、隣接定常領域と併せて示す図
【図4a】ヌクレオチド配列自体を記載する図
【図4b】PCRプライマ、CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常領域を注記したヌクレオチド配列を記載する図
【図5】以下と共に、hMab TSHR1重鎖アミノ酸配列を、隣接定常領域と併せて示す図
【図5a】アミノ酸配列自体を記載する図
【図5b】CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常領域を注記したアミノ酸配列を記載する図
【図6】以下と共に、hMab TSHR1軽鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図6a】ヌクレオチド配列自体を記載する図
【図6b】PCRプライマ、CDRI、CDRII、及びCDRIII領域を注記したヌクレオチド配列を記載する図
【図7】以下と共に、hMab TSHR1軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図7a】アミノ酸配列自体を記載する図
【図7b】CDRI、CDRII、及びCDRIII領域を注記したアミノ酸配列を記載する図
【図8】pTSHとhMAb TSHR1 IgGとFabによるcyclicAMP産生刺激に対する2患者血清の効果を示す図。
【図9】以下と共に、9D33重鎖ヌクレオチド配列を、隣接定常領域と併せて示す図
【図9a】ヌクレオチド配列自体を記載する図
【図9b】PCRプライマ、CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常領域を注記したヌクレオチド配列を記載する図
【図10】以下と共に、9D33重鎖アミノ酸配列を、隣接定常領域と併せて示す図
【図10a】アミノ酸配列自体を記載する図
【図10b】CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常領域を注記したアミノ酸配列を記載する図
【図11】以下と共に、9D33軽鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図11a】ヌクレオチド配列自体を記載する図
【図11b】PCRプライマ、CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常領域を注記したヌクレオチド配列を記載する図
【図12】以下と共に、9D33軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図12a】アミノ酸配列自体を記載する図
【図12b】CDRI、CDRII、CDRIII、及び定常領域を注記したアミノ酸配列を記載する図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TSH受容体の結合対象であって、TSH受容体と反応するヒトモノクローナル又は組み換え抗体、或いはその一つ以上の断片を含むか、或いは、これらに由来する結合対象。
【請求項2】
TSH受容体の結合対象であって、TSH受容体と反応するヒトモノクローナル抗体、又はその一つ以上の断片を含むか、或いは、これらに由来する結合対象。
【請求項3】
TSH受容体の結合対象であって、TSH受容体と反応するヒト組み換え抗体、又はその一つ以上の断片を含むか、或いは、これらに由来する結合対象。
【請求項4】
TSH受容体と反応するヒトモノクローナル抗体、又はその一つ以上の断片。
【請求項5】
TSH受容体と反応するヒト組み換え抗体、又はその一つ以上の断片。
【請求項6】
TSH受容体の結合対象であって、TSH受容体と反応するヒト組み換え抗体の一つ以上の断片を含むか、或いは、これらに由来する結合対象。
【請求項7】
TSH受容体と結合するTSHの阻害について、患者血清TSH受容体自己抗体の特徴を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象。
【請求項8】
TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激について、患者血清TSH受容体自己抗体の特徴を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象。
【請求項9】
TSH受容体と結合するTSHの阻害と、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激とについて、患者血清TSH受容体自己抗体の特徴を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象。
【請求項10】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の結合対象。
【請求項11】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項10記載の結合対象。
【請求項12】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の結合対象。
【請求項13】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項12記載の結合対象。
【請求項14】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項1乃至13のいずれかに記載の結合対象。
【請求項15】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項14記載の結合対象。
【請求項16】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性を特徴とする、TSH受容体と反応するモノクローナル又は組み換え抗体の一つ以上の断片を含むか、或いはこれらに由来する、請求項1乃至15のいずれかに記載の結合対象。
【請求項17】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性を特徴とする、請求項16記載の結合対象。
【請求項18】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約50単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性を特徴とする、TSH受容体と反応するモノクローナル又は組み換え抗体の一つ以上の断片を含むか、或いはこれらに由来する、請求項1乃至17のいずれかに記載の結合対象。
【請求項19】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約400単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性を特徴とする、請求項18記載の結合対象。
【請求項20】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約50単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性
を特徴とする、TSH受容体と反応するモノクローナル又は組み換え抗体の一つ以上の断片を含むか、或いはこれらに由来する、請求項1乃至19のいずれかに記載の結合対象。
【請求項21】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約400単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性
を特徴とする、請求項20記載の結合対象。
【請求項22】
SEQ ID NO.1に示したようなVHドメインと、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメインとによって構成されたグループから選択された抗体VHドメインを含む、TSH受容体の結合対象。
【請求項23】
SEQ ID NO.1に示したような抗体VHドメインを含む、TSH受容体の結合対象。
【請求項24】
SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含む抗体VHドメインを含む、TSH受容体の結合対象。
【請求項25】
SEQ ID NO.1に示したようなVHドメインと、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメインと、
によって構成されたグループから選択された抗体VHドメイン、及び/又は、
SEQ ID NO.6に示したようなVLドメインと、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、及びSEQ ID NO.9から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVL CDRを含むVLドメインと、
によって構成されたグループから選択された抗体VLドメイン、
を含む、TSH受容体の結合対象。
【請求項26】
SEQ ID NO.6に示したような抗体VLドメインと対を成すSEQ ID NO.1に示したような抗体VHドメインを含み、TSH受容体のための当該VH及びVLドメインを共に含む抗体結合部位を提供する、請求項25記載の結合対象。
【請求項27】
SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメイン
を含む抗体VHドメイン、及び/又は、
SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、及びSEQ ID NO.9から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVL CDRを含むVLドメイン、
を含む抗体VLドメイン、
を含む、請求項25記載の結合対象。
【請求項28】
TSHを含まない更なる結合対象であり、TSH受容体との結合が可能で、TSH受容体との結合について、請求項1乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象と競合する、更なる結合対象。
【請求項29】
TSH受容体のエピトープ領域のための結合部位を有する更なる抗体を含み、TSH受容体との結合について、請求項1乃至27のいずれかに記載の結合対象と競合する、請求項28記載の更なる結合対象。
【請求項30】
TSH受容体と反応するヒトモノクローナル又は組み換え抗体、或いはその一つ以上の断片を含むか、或いは、これらに由来する、請求項29記載の更なる結合対象。
【請求項31】
TSH受容体と反応するマウスモノクローナル又は組み換え抗体、或いはその一つ以上の断片を含むか、或いは、これらに由来する、請求項29記載の更なる結合対象。
【請求項32】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項28乃至31のいずれかに記載の更なる結合対象。
【請求項33】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項32記載の更なる結合対象。
【請求項34】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項28乃至33のいずれかに記載の更なる結合対象。
【請求項35】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項34記載の更なる結合対象。
【請求項36】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項28乃至35のいずれかに記載の更なる結合対象。
【請求項37】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項36記載の更なる結合対象。
【請求項38】
SEQ ID NO.19に示したような抗体VHドメインを含む更なる結合対象であり、TSH受容体との結合が可能で、TSH受容体との結合について、請求項1乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象と競合する、更なる結合対象。
【請求項39】
SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、及びSEQ ID NO.22から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含む抗体VHドメインを含む更なる結合対象であり、TSH受容体との結合が可能で、TSH受容体との結合について、請求項1乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象と競合する、更なる結合対象。
【請求項40】
SEQ ID NO.19に示したようなVHドメインと、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、及びSEQ ID NO.22から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメインと、
によって構成されたグループから選択された抗体VHドメイン、及び/又は、
SEQ ID NO.24に示したようなVLドメインと、SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.26、及びSEQ ID NO.27から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVL CDRを含むVLドメインと、
によって構成されたグループから選択された抗体VLドメイン、
を含む更なる結合対象であり、TSH受容体との結合が可能で、TSH受容体との結合について、請求項1乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象と競合する、更なる結合対象。
【請求項41】
SEQ ID NO.24に示したような抗体VLドメインと対を成すSEQ ID NO.19に示したような抗体VHドメインを含み、TSH受容体のための当該VH及びVLドメインを共に含む抗体結合部位を提供する、請求項40記載の更なる結合対象。
【請求項42】
SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、及びSEQ ID NO.22から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVH CDRを含むVHドメイン
を含む抗体VHドメイン、及び/又は、
SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.26、及びSEQ ID NO.27から選択されたアミノ酸配列を備えた一つ以上のVL CDRを含むVLドメイン、
を含む抗体VLドメイン、
を含む、請求項40記載の更なる結合対象。
【請求項43】
(i)SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、又はSEQ ID NO.9に示したような、抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化する、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.16、SEQ ID NO.17、又はSEQ ID NO.18に示したようなヌクレオチド配列、
(ii)請求項22乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象を符号化するか、或いは、請求項22乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象の抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化する、ヌクレオチド配列、
(iii)遺伝コードの縮重により、コドン配列において(i)の任意の配列と異なるヌクレオチド配列、
(iv)(i)の任意の配列の対立変形物を含むヌクレオチド配列、
(v)(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)の配列のいずれかの断片を含むヌクレオチド配列、及び特に、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、又は(v)の配列のいずれかの断片を含み、請求項22乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象のFab断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、分離CDR領域、F(ab’)2断片、又はscFv断片を符号化するヌクレオチド配列、
(vi)ヌクレオチド塩基の突然変異、欠失、又は置換により、(i)の任意の配列と異なり、請求項22乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象を符号化するか、或いは、請求項22乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象の抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化するヌクレオチド配列
を含むポリヌクレオチド。
【請求項44】
(i)SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、SEQ ID NO.22、SEQ ID NO.24、SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.26、又はSEQ ID NO.27に示したような、抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化する、SEQ ID NO.29、SEQ ID NO.30、SEQ ID NO.31、SEQ ID NO.32、SEQ ID NO.34、SEQ ID NO.35、SEQ ID NO.36、又はSEQ ID NO.37に示したようなヌクレオチド配列、
(ii)請求項38乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の更なる結合対象を符号化するか、或いは、請求項38乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の更なる結合対象の抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化する、ヌクレオチド配列、
(iii)遺伝コードの縮重により、コドン配列において(i)の任意の配列と異なるヌクレオチド配列、
(iv)(i)の任意の配列の対立変形物を含むヌクレオチド配列、
(v)(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)の配列のいずれかの断片を含むヌクレオチド配列、及び特に、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、又は(v)の配列のいずれかの断片を含み、請求項38乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の更なる結合対象のFab断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、分離CDR領域、F(ab’)2断片、又はscFv断片を符号化するヌクレオチド配列、
(vi)ヌクレオチド塩基の突然変異、欠失、又は置換により、(i)の任意の配列と異なり、請求項38乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の更なる結合対象を符号化するか、或いは、請求項38乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の更なる結合対象の抗体VHドメイン、VLドメイン、又はCDRのアミノ酸配列を符号化するヌクレオチド配列
を含むポリヌクレオチド。
【請求項45】
請求項43又は44に記載のポリヌクレオチドを運び、宿主生物のゲノムに前記ポリヌクレオチドを導入可能な生物学的機能ベクタ系。
【請求項46】
請求項43又は44に記載のポリヌクレオチドにより形質転換された宿主細胞。
【請求項47】
TSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体を提供するプロセスであって、
(i)対象者からのリンパ球ソースを提供するステップを備え、対象者は、TSH受容体と結合するTSHの阻害に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.04単位より大きなTSH受容体抗体活性を有し、更に、
(ii)(i)の当該リンパ球ソースからリンパ球を分離するステップと、
(iii)前記分離リンパ球を不死化するステップと、
(iv)請求項1、2、4、及び7乃至27のいずれかに記載のTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体を分泌する不死化コロニを生成するために、前記不死化リンパ球をクローニングするステップと、を備えるプロセス。
【請求項48】
(i)対象者からのリンパ球ソースを提供するステップを備え、対象者は、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激活性に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.1単位より大きなTSH受容体抗体活性を有し、更に
(ii)(i)の当該リンパ球ソースからリンパ球を分離するステップと、
(iii)前記分離リンパ球を不死化するステップと、
(iv)請求項1、2、4、及び7乃至27のいずれかに記載のTSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体を分泌する不死化コロニを生成するために、前記不死化リンパ球をクローニングするステップと、を備える
【請求項49】
末梢血、甲状腺組織、脾臓組織、リンパ節、又は骨髄からリンパ球を分離するステップを備える、請求項47又は48記載のプロセス。
【請求項50】
リンパ球の前記ソースは、TSH受容体と結合するTSHの阻害に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.1単位より大きなTSH受容体抗体レベルを有する対象者から取得されたものとして特徴付けされる、請求項47記載のプロセス。
【請求項51】
リンパ球の前記ソースは、TSH受容体と結合するTSHの阻害に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.2単位より大きなTSH受容体抗体レベルを有する対象者から取得されたものとして特徴付けされる、請求項50記載のプロセス。
【請求項52】
リンパ球の前記ソースは、TSH受容体と結合するTSHの阻害に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.3乃至0.5単位の範囲のTSH受容体抗体レベルを有する対象者から取得されたものとして特徴付けされる、請求項51記載のプロセス。
【請求項53】
リンパ球の前記ソースは、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激活性に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.3単位より大きなTSH受容体抗体レベルを有する対象者から取得されたものとして特徴付けされる、請求項48記載のプロセス。
【請求項54】
リンパ球の前記ソースは、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激活性に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.5単位より大きなTSH受容体抗体レベルを有する対象者から取得されたものとして特徴付けされる、請求項53記載のプロセス。
【請求項55】
リンパ球の前記ソースは、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成の刺激活性に関して、血清1mL当たりNIBSC90/672約0.5乃至1.0単位の範囲のTSH受容体抗体レベルを有する対象者から取得されたものとして特徴付けされる、請求項54記載のプロセス。
【請求項56】
前記分離リンパ球をエプスタインバーウイルスに感染させるステップを備え、前記このように不死化したリンパ球をマウス又はヒト細胞株に融合させる、請求項47乃至55のいずれかに記載のプロセス。
【請求項57】
TSH受容体に対するヒト組み換え抗体、又はその一つ以上の断片を調製するプロセスであって、TSH受容体に対するヒトモノクローナル抗体、或いはそこから誘導された一つ以上の断片のクローニング及び発現を備えるプロセス。
【請求項58】
TSH受容体に対する当該ヒトモノクローナル抗体は、請求項47乃至56のいずれかに記載のプロセスによって調製される、請求項57記載のプロセス。
【請求項59】
請求項47乃至58のいずれかに記載のプロセスによって、それぞれ取得されるような、TSH受容体に対するヒトモノクローナル又は組み換え抗体。
【請求項60】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項59記載のヒトモノクローナル又は組み換え抗体。
【請求項61】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項60記載のヒトモノクローナル又は組み換え抗体。
【請求項62】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項59乃至61のいずれかに記載のヒトモノクローナル又は組み換え抗体。
【請求項63】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項62記載のヒトモノクローナル又は組み換え抗体。
【請求項64】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約15単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項59乃至63のいずれかに記載のヒトモノクローナル又は組み換え抗体。
【請求項65】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約120単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
或いはその一つ以上の断片を特徴とする、請求項64記載の結合対象。
【請求項66】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性を特徴とする、請求項59乃至65のいずれかに記載のヒトモノクローナル又は組み換え抗体の一つ以上の断片。
【請求項67】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性を特徴とする、請求項66記載の一つ以上の断片。
【請求項68】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約50単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性を特徴とする、請求項59乃至67のいずれかに記載のヒトモノクローナル又は組み換え抗体の一つ以上の断片。
【請求項69】
1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約400単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性を特徴とする、請求項68記載の一つ以上の断片。
【請求項70】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約30単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約50単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
を特徴とする、請求項66乃至69のいずれかに記載の一つ以上の断片。
【請求項71】
(i)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約240単位の、TSH受容体と結合するTSHに対する阻害活性、及び、
(ii)1mg当たり国際標準NIBSC90/672少なくとも約400単位の、TSH受容体を発現する細胞によるcAMP生成に対する刺激活性、
を特徴とする、請求項70記載の一つ以上の断片。
【請求項72】
更に、更なるプロセス段階を備え、これにより、前記取得されたヒトモノクローナル又は組み換え抗体は、更なる処理手法を施され、請求項28乃至37のいずれかに記載の更なる結合対象が取得される、請求項47乃至58のいずれかに記載のプロセス。
【請求項73】
請求項72記載のプロセスによって取得された、請求項28乃至37のいずれかに記載の更なる結合対象。
【請求項74】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法であって、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える方法。
【請求項75】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法であって、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える方法。
【請求項76】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法であって、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、TSH受容体に対するヒト又は非ヒトポリクローナル抗体を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該ポリクローナル抗体が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)当該ポリクローナル抗体と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える方法。
【請求項77】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法であって、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)当該TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える方法。
【請求項78】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法であって、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、1010モル-1以上のTSH受容体に対する親和性を有するTSH受容体の結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)TSHの当該結合対象と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える方法。
【請求項79】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の使用法であって、当該結合対象又は更なる結合対象とTSH受容体との前記相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる使用法。
【請求項80】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、TSH受容体に対するヒト又は非ヒトポリクローナル抗体の使用法であって、当該ポリクローナル抗体とTSH受容体との前記相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる使用法
【請求項81】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片の使用法であって、当該TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片とTSH受容体との前記相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる使用法
【請求項82】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体を検出するための、1010モル-1以上のTSH受容体に対する親和性を有するTSH受容体の結合対象の使用法であって、当該結合対象とTSH受容体との前記相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものとなる使用法。
【請求項83】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングする方法であって、
(a)当該対象者からの当該体液試料を提供するステップと、
(b)TSH受容体とTSH受容体に反応して生成された自己抗体との相互作用を可能にする条件下で、当該試料を、(i)全長TSH受容体又は一つ以上のそのエピトープ、或いはTSH受容体の一つ以上のエピトープを含むポリペプチド、及び(ii)請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又はTSH受容体の更なる結合対象に接触させ、当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドが、当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象と相互作用できるようにするステップと、
(c)当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドと当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供するステップと、を備える方法。
【請求項84】
更に、当該請求項でそれぞれ定義されるような当該ポリクローナル抗体、TSH、又はその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、若しくは断片、或いはTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象と、請求項74乃至78のいずれかに記載の前記結合ペアの前記第二の分子、或いは請求項83の当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、若しくは当該ポリペプチドとの前記相互作用において競合する、一つ以上の競合対象を利用する、請求項74乃至78及び83のいずれかに記載の方法。
【請求項85】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットであって、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又はTSH受容体の更なる結合対象と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備えるキット。
【請求項86】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットであって、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の当該相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又はTSH受容体の更なる結合対象と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備えるキット。
【請求項87】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットであって、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、TSH受容体に対するヒト又は非ヒトポリクローナル抗体を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該ポリクローナル抗体が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の前記相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)当該ポリクローナル抗体と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備えるキット。
【請求項88】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットであって、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の前記相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)TSH、或いはその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、又は断片と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備えるキット。
【請求項89】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットであって、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、1010モル-1以上のTSH受容体に対する親和性を有するTSH受容体の結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、当該結合分子の前記相互作用は、0.4U/Lの国際標準NIBSC90/672に本質的に対応する当該試料における自己抗体力価が検出できるようなものであり、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは(ii)TSH受容体の当該結合対象と相互作用できるように、当該対象者からの当該体液試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備えるキット。
【請求項90】
TSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患に罹患している疑いがある対象者、こうした疾患を起こしやすい対象者、こうした疾患を有する対象者、又はこうした疾患から回復中の対象者から取得した体液試料中のTSH受容体に対する自己抗体をスクリーニングするキットであって、
(a)全長TSH受容体、又は一つ以上のそのエピトープ、或いはTSH受容体の一つ以上のエピトープを含むポリペプチドと、
(b)請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又はTSH受容体の更なる結合対象と、
(c)TSH受容体とTSH受容体に反応して生成された自己抗体との相互作用を可能にする条件下で、当該対象者からの当該体液試料、当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドと、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又はTSH受容体の更なる結合対象とを接触させ、当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドが、当該試料中に存在するTSH受容体に対する自己抗体、或いは請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又はTSH受容体の更なる結合対象と相互作用できるようにする手段と、
(d)当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドと当該試料中に存在する当該自己抗体との前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH受容体に対する当該自己抗体の存在の示度を提供する手段と、を備えるキット。
【請求項91】
更に、当該請求項によってそれぞれ定義されるような当該ポリクローナル抗体、TSH、又はその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、若しくは断片、或いはTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象と、請求項85乃至89のいずれかで定義されるような前記結合ペアの前記第二の分子、或いは請求項90記載の当該TSH受容体、又は当該一つ以上のそのエピトープ、或いは当該ポリペプチドとの反応において競合する、一つ以上の競合対象を備える、請求項85乃至90のいずれかに記載のキット。
【請求項92】
TSH及び関連リガンドのアッセイを行う方法であって、
(a)TSH又は関連リガンドを含有する疑いがある試料又は含有する試料を提供するステップと、
(b)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップと、を備え、当該結合ペアの第一の分子は、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH又は関連リガンド、或いは(ii)請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象と相互作用できるように、結合分子の当該一つ以上のペアに当該試料を接触させるステップと、
(d)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在するTSH又は関連リガンドとの前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH又は関連リガンドの存在の示度を提供するステップと、を備える方法。
【請求項93】
TSH又は関連リガンドのアッセイを行うキットであって、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(b)当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該試料中に存在するTSH又は関連リガンド、或いは(ii)請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象と相互作用できるように、TSH又は関連リガンドを含有する疑いがある試料又は含有する試料を結合分子の当該一つ以上のペアに接触させる手段と、
(c)当該結合ペアの当該第二の分子と当該試料中に存在するTSH又は関連リガンドとの前記相互作用をモニタリングし、これにより、当該試料中のTSH又は関連リガンドの存在の示度を提供するステップと、を備えるキット。
【請求項94】
TSH受容体の更なる結合対象を特定する方法であって、更なる結合対象は、TSH受容体との結合が可能で、TSH受容体との結合について、請求項1乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象と競合し、更なる結合対象はTSHを含まず、
(a)結合分子の一つ以上のペアを提供するステップを備え、当該結合ペアの第一の分子は、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(b)アッセイの対象となる更なる結合対象を、TSH受容体との結合について(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と競合するTSH受容体の潜在的な更なる結合対象として提供するステップと、
(c)(a)の当該結合ペアの当該第二の分子が(i)(b)の当該更なる結合分子、或いは(ii)(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と相互作用できるように、(b)の当該更なる結合分子を(a)の結合分子の当該一つ以上のペアに接触させるステップと、
(d)(a)の当該結合ペアの当該第二の分子と(b)の当該更なる結合分子との相互作用をモニタリングし、これにより、(b)の当該更なる結合分子がTSH受容体との結合について(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と競合するかのアッセイを行うステップと、を備える方法。
【請求項95】
更に、TSH受容体の更なる結合対象を特定するキットであって、更なる結合対象は、TSH受容体との結合が可能で、TSH受容体との結合について、請求項1乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象と競合し、更なる結合対象はTSHを含まず、
(a)結合分子の一つ以上のペアを備え、当該結合ペアの第一の分子は、請求項1乃至27のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象を含み、当該結合ペアの第二の分子は、当該結合対象が相互作用する結合領域を含み、更に、
(b)TSH受容体との結合について(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と競合するTSH受容体の潜在的な更なる結合対象としてアッセイの対象となる更なる結合対象に、(a)の結合分子の当該一つ以上のペアを接触させ、(a)の当該結合ペアの当該第二の分子が(i)当該更なる結合分子、或いは(ii)(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と相互作用できるようにする手段と、
(c)(a)の当該結合ペアの当該第二の分子と当該更なる結合分子との相互作用をモニタリングし、これにより、当該更なる結合分子がTSH受容体との結合について(a)の当該結合ペアの当該第一の分子と競合するかのアッセイを行う手段と、を備えるキット。
【請求項96】
TSH受容体の一つ以上のエピトープ領域を特定するプロセスであって、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象を、全長TSH受容体又は一つ以上のその断片に接触させ、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象と、当該全長TSH受容体又は当該一つ以上のその断片との相互作用を可能にするステップと、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の当該結合対象又は更なる結合対象が相互作用する当該全長TSH受容体又は当該一つ以上のその断片のアミノ酸を特定するステップと、を備えるプロセス。
【請求項97】
請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の結合領域に対して生成された一つ以上の抗イディオタイプ抗体。
【請求項98】
実施例に従って調製された7E51 IgGである抗イディオタイプ抗体。
【請求項99】
抗体結合部位を特定する方法であって、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象を有するファージディスプレイランダムペプチドライブラリのスクリーニングを備える方法。
【請求項100】
治療において使用する請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象。
【請求項101】
対象者におけるTSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患を治療する方法であって、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の治療有効量を当該対象者に投与するステップを備える方法。
【請求項102】
請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象を、一つ以上の薬学的に許容できるその担体、希釈剤、又は賦形剤と共に含む薬剤組成物。
【請求項103】
対象者におけるTSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患を治療する方法であって、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の治療有効量を当該対象者に投与するステップを備え、TSH受容体の結合対象又は更なる結合対象はTSH受容体を刺激する、自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項104】
甲状腺組織、又はTSH受容体を含む組織を刺激するのに使用する薬剤の製造における、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の使用法。
【請求項105】
甲状腺癌の治療に使用する薬剤の製造における、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の使用法。
【請求項106】
甲状腺組織及び/又はTSH受容体を含む組織を刺激する方法であって、こうした刺激を必要とする患者に対して、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の診断又は治療有効量を投与するステップを備える方法。
【請求項107】
甲状腺組織及び/又はTSH受容体を含む組織を刺激する上で同時に、別個に、又は連続して使用する、甲状腺組織及び/又はTSH受容体を含む組織を刺激可能な一つ以上の更なる作用物質と組み合わせた、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象。
【請求項108】
当該一つ以上の更なる作用物質は、組み換えヒトTSH及び/又はその一つ以上の変異体、類似体、誘導体、及び断片、或いは、こうした断片の変異体、類似体、又は誘導体を含む、請求項107記載の組み合わせ。
【請求項109】
当該一つ以上の更なる作用物質は、TSH受容体との結合から独立して機能する、請求項108記載の組み合わせ。
【請求項110】
対象者におけるTSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患を治療する方法であって、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象の治療有効量を当該対象者に投与するステップを備え、TSH受容体の結合対象又は更なる結合対象は、TSH、TSH受容体自己抗体、又はその他の刺激物質に対して、TSH受容体を不活性化、或いは反応しないようにする、自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項111】
TSH受容体を含む組織を、TSH、TSH受容体自己抗原、又はその他の刺激物質に対して不活性化可能な、又は反応しないようにできる、一つ以上の更なる作用物質と組み合わせた、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象。
【請求項112】
当該一つ以上の更なる作用物質は、TSH受容体から独立して機能する、請求項111記載の組み合わせ。
【請求項113】
対象者におけるTSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患を治療する方法であって、請求項28乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の更なる結合対象の治療有効量を当該対象者に投与するステップを備え、これにより、当該更なる結合対象の投与は、TSH受容体と前記患者の血行中に存在する自己抗体との相互作用を実質的に阻害し、当該自己抗体と当該TSH受容体との当該相互作用は、当該自己免疫疾患の原因であるか、或いはこれに関連する、自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項114】
対象者におけるTSH受容体に対する免疫反応に関連する自己免疫疾患を治療する方法であって、請求項97又は98記載の抗イディオタイプ抗体の治療有効量を当該対象者に投与するステップを備え、これにより、当該抗イディオタイプ抗体の投与は、TSH受容体と前記患者の血行中に存在する自己抗体との相互作用を実質的に阻害し、当該自己抗体と当該TSH受容体との当該相互作用は、当該自己免疫疾患の原因であるか、或いはこれに関連する、自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項115】
TSH受容体に対する自己免疫に関連する眼の後眼窩組織の疾患を治療する方法であって、こうした疾患に罹患した患者又はこうした疾患の疑いがある患者に対する、請求項28乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の更なる結合対象の治療有効量の投与を備える方法。
【請求項116】
TSH受容体に対する自己免疫に関連する眼の後眼窩組織の疾患を治療する方法であって、こうした疾患に罹患した患者又はこうした疾患の疑いがある患者に対する、請求項97又は98記載の抗イディオタイプ抗体の治療有効量の投与を備える方法。
【請求項117】
TSH受容体の活性化及び/又は刺激に関連する眼の後眼窩組織の疾患の前記治療のための薬剤の製造における、請求項28乃至42のいずれかに記載のTSH受容体に対する更なる結合対象の使用法。
【請求項118】
TSH受容体の活性化及び/又は刺激に関連する眼の後眼窩組織の疾患の前記治療のための薬剤の製造における、請求項97又は98記載の抗イディオタイプ抗体の使用法。
【請求項119】
TSH受容体抗体又は抗体群を含む必要がある患者血清の代替ソースとして使用する、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象。
【請求項120】
所定の濃度のTSH受容体抗体又は抗体群を含む必要がある調製物において使用する、請求項1乃至42のいずれかに記載のTSH受容体の結合対象又は更なる結合対象。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図12a】
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【図12b】
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【公表番号】特表2006−524486(P2006−524486A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570698(P2004−570698)
【出願日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005171
【国際公開番号】WO2004/050708
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(399031230)アールエスアール リミテッド (3)
【Fターム(参考)】