説明

テカリ抑制剤

【課題】 本発明の目的は、安全性が高く、日常的に摂取或いは投与が可能であり、皮膚のテカリの抑制に有効なテカリ抑制剤を提供することである
【解決手段】 ニガウリ加熱処理物又はその抽出物には、血中の中性脂肪を低減させる作用があり、これをテカリ抑制剤の有効成分と使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚のテカリを効果的に抑制するテカリ抑制剤に関する。更に、本発明は、当該テカリ抑制剤を含有する食品又は医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の皮脂腺から分泌される皮脂は、皮膚に滑らかさを付与すると共に、体外からの異物の混入や皮膚からの水分の放出を抑制する役割を果たしている。しかしながら、皮脂の過剰分泌されると、皮脂により皮膚にテカリが生じ、これによってべたつきや化粧崩れ等の美容上の問題が引き起こされる。更に、皮脂の過剰分泌により生じる皮膚のテカリは、微生物や病原菌の増殖を促進し、種々の皮膚異常を引き起こす原因となることが分かっている。
【0003】
このような皮膚のテカリを抑制する手段として、従来、皮膚のテカリの抑制に適した化粧料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、従来のテカリ抑制手段は、いずれも経皮適用されることにより使用されるものであり、食品等の形態で日常的に使用することにより皮膚のテカリを抑制できる成分については知られていない。
【0004】
ところで、ニガウリの粉砕物やその抽出物には、脂質代謝を改善する作用があることが報告されている(特許文献2参照)。しかしながら、単に、ニガウリの粉砕して乾燥したニガウリ乾燥粉末物では、肝臓の中性脂肪量を低減できても、皮膚のテカリの原因となっている血中中性脂肪量を低減させる効果はないことが分かっている(特許文献2の段落0036や0046参照)。また、ニガウリの加熱処理物が皮膚のテカリに如何なる影響を及ぼすかについては、知られていない。
【特許文献1】特開2002−187811号公報
【特許文献2】特開2002−278804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、安全性が高く、日常的に摂取或いは投与が可能であり、皮膚のテカリの抑制に有効なテカリ抑制剤を提供することである。更に、本発明は、当該テカリ抑制剤を含有する食品及び医薬品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、ニガウリの加熱処理物、特にニガウリを乾燥した後に加熱処理することにより得られるニガウリ加熱処理物には、皮膚のテカリを抑制する作用があることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて、更に検討を重ねて開発されたものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる発明を提供するものである:
項1. ニガウリ加熱処理物又はその抽出物を有効成分とする、テカリ抑制剤。
項2. ニガウリ加熱処理物がニガウリを乾燥後加熱して得られるものである、項1に記載のテカリ抑制剤。
項3. 項1又は2に記載のテカリ抑制剤を含有する、テカリ抑制用食品。
項4. 散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、ゼリー又は飲料の形態である、項3に記載のテカリ抑制用食品。
項5. テカリを抑制するために使用される旨が表示されている、項3又は4に記載のテカリ抑制用食品。
項6. ニガウリ加熱処理物又はその抽出物を含有し、テカリを抑制するために使用される旨が表示されていることを特徴とする、食品。
項7. 散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、ゼリー又は飲料の形態である、項6に記載の食品。
項8. 項1又は2に記載のテカリ抑制剤を含有する、テカリ抑制用の医薬品又は医薬部外品。
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のテカリ抑制剤は、有効成分として、ニガウリ加熱処理物が使用される。
【0010】
ニガウリは、ウリ科の植物で学名Momordica charantia L.として知られ、熱帯アジア原産で、日本では沖縄や九州地方で多く栽培されている。ニガウリは、ゴーヤやツルレイシとも呼ばれている。本発明で使用するニガウリは、野生種であっても、また品種改良されたものであってもよい。
【0011】
本発明の有効成分であるニガウリ加熱処理物の原料には、ニガウリの果実部が使用される。果実部には、果皮、果肉、果汁、わた、種子等が含まれるが、ニガウリ加熱処理物の原料にはこれらのいずれの部位を使用してもよい。好ましくは、果実部から種子やわたを除いた可食部であり、更に好ましくは果肉である。
【0012】
ニガウリ加熱処理物は、ニガウリを、必要に応じて細切又は破砕し、例えば、40〜120℃で1〜60分間程度加熱することにより得ることができる。加熱方法としては特に制限されないが、好ましくは焙煎する方法が挙げられる。
【0013】
当該ニガウリ加熱処理物は好ましくは、ニガウリを乾燥した後に加熱することにより得られるものである。以下に、ニガウリを乾燥後加熱することによりニガウリ加熱処理物を調製する方法について説明する。かかるニガウリ加熱処理物の調製では、ニガウリの加熱処理に先立って、ニガウリを乾燥する工程に供するが、該乾燥工程前に、ニガウリを適切な大きさに細切又は破砕しておくことが望ましい。乾燥及び加熱を効率的に実施する観点から、ニガウリを1〜20mm、好ましくは5〜8mm程度の大きさに細切しておくことが望ましい。ニガウリの乾燥は、ニガウリの乾燥後の重量が、乾燥前の重量の1〜20%、好ましくは5〜12%程度に減量するまで実施すればよい。乾燥方法や条件については、特に制限されず、当業界で公知又は慣用されている乾燥方法を採用すればよい。当該乾燥方法として、具体的には、40〜120℃程度の熱風を当てて乾燥させる方法や、天日で1〜5日、好ましくは3日程度干す方法が例示される。乾燥させたニガウリは、次いで加熱処理(例えば、焙煎処理)に供される。加熱条件については、加熱温度や加熱時間に応じて適宜調整される。加熱温度については、通常40〜120℃、好ましくは60〜120℃に設定すればよい。また、加熱時間については、加熱温度によって異なり、一律に規定することはできないが、通常1〜60分間、好ましくは3〜15分間程度が例示される。加熱方法については、特に制限されないが、好適な加熱方法の一例として、上記温度条件下で炒る方法が挙げられる。当該加熱処理は、例えば、焙煎機等を使用して実施することができる。このような加熱処理を行うことによって、ニガウリ加熱処理物が調製される。当該ニガウリ加熱処理物は、通常、乾燥前のニガウリの重量の1〜10%、好ましくは5〜7%程度の重量にまで減量されている。
【0014】
本発明では、テカリ抑制剤の有効成分として、上記方法で得られるニガウリ加熱処理物をそのまま使用することができるが、更に該ニガウリ加熱処理物の抽出物を使用してもよい。
【0015】
ニガウリ加熱処理物の抽出物は、ニガウリ加熱処理物を抽出溶媒で常温又は加熱下で抽出することにより得ることができる。抽出溶媒としては、例えば、水;有機溶剤;又は水と有機溶剤の混合液が挙げられる。また、抽出に使用される有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の単独或いは2種以上の組み合わせを挙げることができる。抽出溶媒として、好ましくは水;
メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;又は水と低級アルコールの混合液を、更に好ましくは、水、エタノール、又は水とエタノールの混合液(5〜50重量%エタノール水溶液)を;特に好ましくは水を挙げることができる。なお、上記の水には、温水や熱水が含まれる。
【0016】
テカリ抑制剤に使用されるニガウリ加熱処理物の抽出物は、上記の抽出処理により得られた抽出液そのままであってもよく、また、該抽出液から固形物を除去したのもであってもよい。また、必要に応じて、更に、減圧蒸留等により濃縮したものや、減圧乾燥や凍結乾燥等の乾燥処理により乾燥したものであってもよい。
【0017】
本発明のテカリ抑制剤の摂取量又は投与量は、対象者の年齢や性別、期待される効果等によって異なり、一律に規定することはできないが、成人1日当たりの摂取又は投与量の一例として、テカリ抑制剤(ニガウリ加熱処理物の乾燥重量に換算)が0.1〜4g、好ましくは0.3〜2g、更に好ましくは0.7〜2gとなる量が例示される。
【0018】
本発明のテカリ抑制剤は、食品に配合して皮膚のテカリ抑制用の食品として提供することもでき、また内用医薬品又は医薬部外品の形態に調製して皮膚のテカリ抑制用の医薬品又は医薬部外品として提供することもできる。
【0019】
上記皮膚のテカリ抑制用の食品として、好ましくは、保健機能食品(栄養機能食品及び特定保健用食品)、いわゆる健康食品、栄養補助食品又は特別用途食品(病者用食品等)等を挙げることができる。形態としては、例えば、散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、ゼリー等の形態のものが挙げられる。なお、水を抽出溶媒として用いて得られるニガウリ加熱処理物の抽出液はそのまま飲用することができるので、該抽出液自体、又はその濃縮液や希釈液を飲料形態の食品としてもよい。
【0020】
上記皮膚のテカリ抑制用の食品において、配合されるテカリ抑制剤の割合は、上記1日当たりの該剤の摂取量、食品の形態、期待される効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0021】
また、上記皮膚のテカリ抑制用の医薬品又は医薬部外品については、本発明の効果を妨げないことを限度として、その形状については特に制限されない。該医薬品又は医薬部外品の形態の一例として、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、液剤、エキス剤等を挙げることができる。当該医薬品又は医薬部外品は、薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化されるが、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤化剤、緩衝剤、保存剤、香料等の薬学的に許容される添加剤を任意に含有してもよい。
【0022】
上記皮膚のテカリ抑制用の医薬品又は医薬部外品に含まれるテカリ抑制剤の割合は、上記1日当たりの該剤の投与量、対象者の年齢や性別、医薬品又は医薬部外品の形態、期待される効果等に応じて適宜設定することができる。
【0023】
本発明のテカリ抑制剤は、経口摂取又は適用されることにより、皮脂の過剰分泌により生じる皮膚のテカリを抑制することができる。特に、本発明のテカリ抑制剤は、皮脂の過剰分泌が現れやすい顔部のテカリを効果的に抑制できるので、美容手段として好適に使用できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のテカリ抑制剤によれば、皮脂の過剰分泌により生じる皮膚のテカリを効果的に抑制できるので、べたつきや化粧崩れが生じ難い、健全な皮膚を維持することが可能になる。
【0025】
また、本発明のテカリ抑制剤は、従来食品原料として使用され得ているニガウリを原料として調製されるため安全性が高く、食品や内用医薬品として日常的に摂取又は投与することが可能である。
【0026】
更に、ニガウリを乾燥後加熱して得られるニガウリ加熱処理物は、ニガウリに特有の苦みがなく呈味に悪影響を与えないので、これを有効成分とするテカリ抑制剤は食品の種類や医薬品又は医薬組成物の形状に制限されることなく使用でき、皮膚のテカリを抑制する手段を多岐にわたり提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
下記試験を行い、ニガウリ加熱処理物のテカリ抑制効果について評価した。
<ニガウリ加熱処理物の調製>
ニガウリの果実部から種とわたを除去した後、これを5〜8mm程度にみじん切りにした。みじん切りにしたニガウリ1000gを、熱風乾燥器で40〜120℃の熱風で重量が120gになるまで乾燥させた。次いで、直火型焙煎機を使用して、15分間、鉄板温度を70℃から110℃まで徐々に上昇させて炒ることにより、ニガウリ加熱処理物60gを得た。
【0028】
斯くして得られたニガウリ加熱処理物を沸騰直後の熱湯に添加して、1分間静置し、抽出液100gに対してニガウリ加熱処理物が0.2gとなるよう抽出した後、濾過により固形残渣を除去した抽出液を試験サンプルとした。
<額に分泌された皮脂量の測定>
下表1に示す条件で試験サンプルを摂取する被験者によって、額に分泌された皮脂量について測定した。具体的には、まず、あぶらとり紙(商品名「化粧惑星 あぶらとり紙」
、株式会社オービット製、天然麻100%)を用いて、被験者の額の皮脂を十分に吸い取った。その直後に、約300gの焼き肉を摂取した。焼き肉摂取開示時から2時間後に、あぶらとり紙を用いて、被験者の額左半分の皮脂を十分に吸い取った。更に、焼き肉摂取開示時から4時間後に、再度、あぶらとり紙を用いて、被験者の額右半分の皮脂を十分に吸い取った。下記式に従って、焼き肉摂取2及び4時間後の皮脂量を算出した。
顔のテカリの程度の評価基準
(テカリの程度の評価基準)
評点0:テカリなし
評点1:顔の一部にテカリが僅かに認められる
評点2:顔の一部にテカリが明らかに認められる
評点3:顔の全体にテカリが明らかに認められる
(テカリの程度の判定)
◎:被験者の評点の平均が1未満
○:被験者の評点の平均が1以上2未満
×:被験者の評点の平均が2以上
【0029】
【数1】

【0030】
【表1】

【0031】
<結果>
得られた結果を表2に示す。なお、表2中、皮脂分泌減少率とは、コントロールの皮脂量に対して減少した皮脂量の割合(%)を意味する。この結果、ニガウリ加熱処理物の抽出物を摂取することにより、顔のテカリが抑制されており、額に分泌される皮脂の量も低減していることが確認された。特に、試験例2の結果から、ニガウリ加熱処理物の抽出物を日常的に摂取することにより、皮脂の分泌量を効果的に抑制して、テカリを抑制できていることが確認された。
【0032】
以上の結果から、ニガウリ加熱処理物又はその抽出物には、血中の中性脂肪量の増加を抑制する作用があり、これを継続的に摂取することにより皮膚のテカリが少ない体質に改善できることが明らかとなった。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例2(カプセル)
40〜60℃に加温したゼラチン5gを攪拌しながら徐々に添加し混合溶解した。その混合溶液を減圧脱泡した後、酸化チタン、色素を適量加えて更に混合した。その後、カプセル型ビンに充填し、成形した後水分が15〜18重量%になるまで乾燥させ、カプセルのボディ部に、実施例1に記載の方法で調製したニガウリ加熱処理物200mgを充填し、キャップ部を結合させて、ニガウリ加熱処理物を含有するカプセル剤を調製した。
【0035】
実施例3(マイクロカプセル)
40℃に加温した精製水100gに対し、ゼラチン5gを攪拌しながら徐々に添加し、混合溶解した。その後、実施例1に記載の方法で調製したニガウリ加熱処理物200mg、酸化チタン、グリセリン、色素を適量加え、混合してカプセルを得た。次いで、カプセルを冷却し、水分含量が15〜18重量%になるまで脱水し、更に水分含量が8.2〜16重量%になるまで乾燥した。その後、ろ過して、ニガウリ加熱処理物を含有するマイクロカプセルを調製した。
【0036】
実施例4(クッキー)
まず無塩バター70gを攪拌しながら、これに砂糖(グラニュー糖)80gを徐々に添加した。この中に割ほぐした卵1個を添加した後、実施例1に記載方法で調製したニガウリ加熱処理物2gを添加し、更に攪拌した。十分混ざった段階で、均一にふるった薄力粉200gを加えて低速で攪拌した後、一塊りにした。これを、約30分間低温室に寝かした後、約1cmの厚みで均一にのばし、直径5cmの円形型で抜いた。次いで、切り抜いたクッキー生地を天版に並べ、170℃で予熱したオーブンで12〜15分間加熱して、ニガウリ加熱処理物を含有するクッキーを得た。
【0037】
実施例5(清涼飲料水)
下記の組成の清涼飲料水を調製した。
(重量%)
ニガウリ加熱処理物の抽出液(実施例1に記載方法で調製) 0.5
果糖ブドウ糖液糖 6.0
クエン酸ナトリウム 0.6
L−アスコルビン酸 3.0
水 適量
合計 100重量%
実施例6(ゼリー)
常法に従って、下記組成のゼリーを調製した。
【0038】
(重量%)
ニガウリ加熱処理物の抽出液(実施例1に記載方法で調製) 0.5
ゼラチン 1.1
砂糖 22.0
L−酒石酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.1
クエン酸 0.1
水 適量
合計 100重量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニガウリ加熱処理物又はその抽出物を有効成分とする、テカリ抑制剤。
【請求項2】
ニガウリ加熱処理物がニガウリを乾燥後加熱して得られるものである、請求項1に記載のテカリ抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のテカリ抑制剤を含有する、テカリ抑制用食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のテカリ抑制剤を含有する、テカリ抑制用の医薬品又は医薬部外品。

【公開番号】特開2006−117657(P2006−117657A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280688(P2005−280688)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】