説明

テラヘルツ分光測定装置

【課題】テラヘルツ光の光路長変化を測定誤差の原因とならないように補正することができるテラへルツ分光測定装置を提供すること
【解決手段】レーザー光を受けてテラヘルツ光を発光する発光素子10と、前記テラヘルツ光を受光して検出信号を検出するための受光素子20と、前記発光素子10と前記受光素子20との間に配置される試料Sと、前記発光素子10から前記試料Sを通じて前記受光素子20までの光路において、光路長を変更するための光学ユニット40と、を備えたことを特徴とするテラへルツ分光測定装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ光を用いたテラヘルツ分光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テラヘルツ周波数領域(0.1THz〜10THz)の光を試料に照射して、試料を透過した透過光又は試料から反射した反射光を検出するテラヘルツ時間領域分光法(THz−TDS:THz−TimeDomain Spectroscopy)が注目されている。
このテラヘルツ時間領域分光法は、テラヘルツパルス分光計測装置を用い、テラヘルツ光の電場強度を測定し、その時系列データをフーリエ変換処理することにより、テラヘルツ光の振幅強度や位相等の周波数依存性を得ることができ、試料を挿入した時と何も挿入しない時のテラヘルツ光の電場強度を比較することにより、試料の複素屈折率や吸収スペクトルを知ることが出来るる(特許文献1参照)。
【0003】
テラヘルツパルス分光計測装置は、発光素子から発生するテラヘルツ光が放物面鏡を介して試料へ入射され、試料を透過したテラヘルツ光が放物面鏡を介して受光素子へと入射されることで測定を行う。
このとき、テラヘルツ光発生素子から発生したテラヘルツ光を第一集光光学部により、試料近傍に集光し、試料を透過した後に発散するテラヘルツ光を第二集光光学部により、受光素子上に集光し受光する従来例(特許文献2及び特許文献3参照)がある。
【0004】
【特許文献1】WO00/079248号公報
【特許文献2】特開2004−212110号公報
【特許文献3】特開2006−133178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2で示される従来例では、試料を挿入していない状態で、受光素子上にテラヘルツ光焦点を結ぶ様に調整されている為、試料を挿入した時に光路長変化によって受光部の焦点位置がずれてしまい、測定誤差の原因となってしまうという課題が挙げられる。
この課題に対応する為に、特許文献3で示される従来例では、光路長の補正に集光レンズを移動させている。しかし、レンズに用いられている光学材料の波長分散によって、テラヘルツ光が集光レンズを透過する際に、波長により焦点位置が異なる色収差が生じてしまう。このため、この色収差が測定誤差の原因となってしまい、正確な測定結果が得られないという課題が挙げられる。
【0006】
本発明の目的は、テラヘルツ光の光路長変化を測定誤差の原因とならないように補正することができるテラへルツ分光測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかるテラへルツ分光測定装置は、
テラヘルツ光を発する発光素子と、前記テラヘルツ光を受光して検出信号を検出する受光素子と、前記発光素子と前記受光素子との光路上に配置される試料と、を備えるテラヘルツ分光装置において、前記発光素子から発する前記テラヘルツ光を試料近傍に集光する第一集光光学部と、前記光路で発散するテラヘルツ光を前記受光素子に集光する第二集光光学部と、前記第一集光光学部と前記第二集光光学部との間に、光路の長さを可変する光学ユニットとを備え、前記光学ユニットは前記光路の光軸方向に移動する位置調整機構
を備えたことを特徴とするテラへルツ分光測定装置。
この構成の本適用例では、テラヘルツ光が試料を透過する際、試料を透過することによる試料起因のテラヘルツ光のスペクトル吸収と、試料の収容部(例えば、サンプルセルや被測定物流路等)起因の光路長変化が生じる。このとき、テラヘルツ分光測定装置は光路長を可変するための光学ユニットを備えているので、光路長変化を容易に補正することができる。
このため、測定誤差の原因となる試料収容部起因の光路長変化を容易に排除することができ、試料起因のスペクトル吸収のみを検出することができる。
従って、テラヘルツ分光測定装置に光学ユニットを導入することで、優れた測定精度を実現することができるテラヘルツ分光測定装置が得られる。
【0008】
[適用例2]
本適用例にかかるテラへルツ分光測定装置では、前記光学ユニットには複数面の平面鏡を有することを特徴とする。
この構成の本適用例では、光学ユニットに鏡を用いているので、レンズにより光路長補正を行う場合のような色収差が発生するというおそれがない。
よって、測定誤差の原因となる試料収容部起因の光路長変化のみが補正されるため、より優れた測定精度を実現することができる。また、汎用品である平面鏡を用いるだけなので、簡易、かつ、低コストでテラヘルツ分光測定装置の測定精度を向上させることができる。
【0009】
[適用例3]
本適用例にかかるテラへルツ分光測定装置では、前記複数面の平面鏡は、互いの鏡面同士がなす角度が直角に交差することを特徴とする。
この構成の本適用例では、光学ユニットに入射するテラヘルツ光と、射出するテラヘルツ光とが、互いに略平行になる為、複数枚の鏡の角度を変えずに、一体として移動させるだけで、光路長を変更することができる。
従って、鏡の角度を変える機構が不要であり、光路長変更装置を小型化することができる。
【0010】
[適用例4]
本適用例にかかるテラへルツ分光測定装置では、前記光学ユニットを、前記第一集光光学部と前記試料との間の第一の光路に配置することを特徴とする。
この構成の本適用例では、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0011】
[適用例5]
本適用例にかかるテラへルツ分光測定装置では、前記光学ユニットは、前記試料と前記第二集光光学部との間の第二光路に配置することを特徴とする。
この構成の本適用例では、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0012】
[適用例6]
本適用例にかかるテラへルツ分光測定装置では、前記光学ユニットは、前記平面鏡の間に試料を保持して移動することにより光軸位置調整をおこなうことを特徴としている。
この構成の本適用例では、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態において、同一構成については同一符号を付して説明を省略もしくは簡略する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態であるテラヘルツ分光測定装置を図1から図5に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態におけるテラヘルツ分光測定装置の構成図を示している。
本実施形態のテラヘルツ分光測定装置1は、所定周期でパルスを発生するレーザー発信機としてのパルス光源100と、このパルス光源100から発生するパルス波を励起光とプローブ光とに分離するためのビームスプリッタ31と、この励起光を導くための励起光学系30と、励起光学系30によって導かれた励起光に基づいてテラヘルツ光路32を発生させるための発光素子10と、発光素子10により発生したテラヘルツ光を試料としてのサンプルS近傍に集光する第一集光光学部13と、サンプルSを透過して発散したテラヘルツ光を受光素子20に集光する第二集光光学部23と、サンプルSを透過する際、サンプルセル起因のテラヘルツ光の光路長変化を補正する光学ユニットとしての光路長補正装置40と、プローブ光を導くためのプローブ光学系33と、プローブ光学系33によって導かれたプローブ光とサンプルSを透過したテラヘルツ光とを受光することによりテラヘルツ光検出信号を出力する受光素子20と、受光素子20からの検出信号を処理するための分析手段としての分光処理部60とからなる。
ここで、パルス光源100としては、例えば、フェムト秒パルスレーザなどのパルスレーザ装置を用いることができる。
【0014】
図2(A)は、本発明の第1実施形態における光スイッチ素子(発光)の構成図を示しており、図2(B)は、本発明の第1実施形態における光スイッチ素子(受光)の構成図を示している。
本実施形態では、図2(A)に示す光スイッチ素子11が用いられている。当該光スイッチ素子11は、GaAsなど高速応答する半導体の基板73と、当該半導体の基板73上に形成された低温成長GaAsなどの光伝導薄膜74とから形成されている。
光伝導薄膜74上には、伝送線路72a,72bからなる平行伝送線路72が形成されており、その中央部分に、微小ダイポールアンテナからなる単一の光スイッチ部70が設けられている。
そして、光スイッチ素子11の中央には、例えば数μm程度の微小なギャップ71があり、ギャップ71には、直流バイアス電源75によって、適当なバイアス電圧が印加されている。
【0015】
このような光スイッチ素子11において、半導体のバンドギャップよりも高いエネルギーを有するレーザパルス光がギャップ71間に光パルスとして入射すると、半導体中に自由キャリアが生成されて、パルス状の電流が流れ、このパルス状の電流によってテラヘルツ光がパルス状に発生する。
【0016】
また、本実施形態では、図2(B)に示す光スイッチ素子21が用いられている。光スイッチ素子21は、光スイッチ素子11と同一の構成をしている。
但し、光スイッチ素子21のギャップ71には、直流バイアス電源75の代わりに、分光処理部60が接続されている。
この光スイッチ素子21は、光スイッチ部70に入射レンズ22を介してテラヘルツ電磁波が集束されるのと同時に、プローブ光パルスがギャップ71を励起する。この励起によりキャリアを生成すると、その瞬間に光スイッチ素子21に到達したテラヘルツ電磁波の振幅に比例した電流が流れる。そして、この電流は電流信号として分光処理部60に供給される。
【0017】
光スイッチ素子11により発生したテラヘルツ光は、試料近傍に集光する第一集光光学部13により進行方向が変えられる(図1参照)。
そして、テラヘルツ光路32には、分光測定の被測定物としてガスや液体が収容または流通されるサンプルセルまたは被測定物流路などを有するサンプルSが配置されており、第一集光光学部13からのテラヘルツ光がサンプル近傍に集光され、透過するようになっている。
【0018】
また、サンプルSを透過する際、サンプルSの有するサンプルセルまたは被測定物流路の光学特性の影響を受けてテラヘルツ光の光路長が変化する。本実施形態では、この光路長変化を補正する光路長補正装置40を備えている。
図3は、本発明の第1実施形態における光路長補正装置の構成図を示している。
図3に示すように、光路長補正装置40は、2枚の平板鏡を直角に接合したL字型の鏡としての可動反射鏡41と、これを支持する支持部43と、これらを駆動制御する光路長補正制御装置42とを備えている。
この光路長補正装置40は、光路長補正制御装置42によって可動反射鏡41とこれを支持する支持部43との位置をテラヘルツ光の光軸と平行に駆動制御するためのものである。この可動反射鏡41の位置を駆動制御することによって、テラヘルツ光の光路長を変更・制御し、サンプルSを透過したテラヘルツ光の光路長の変化を補正し排除する。
そして、補正されたテラヘルツ光は、第二集光光学部23により集束され、入射レンズ22によって光スイッチ素子21へ入射されている(図1参照)。
なお、この光路長補正制御装置42による可動反射鏡41の駆動制御は、具体的には、図示しないレールの上に支持部43が載置され、図示しないボールスクリューによりおこなっている。
【0019】
ここで、出射レンズ12や入射レンズ22は、テラヘルツ光を透過する透光性材料から形成されるものであり、例えば、水晶、サファイヤ、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン、ゲルマニューム、フッ素樹脂、ダイアモンド、透光性セラミック等から構成されている。
【0020】
図4は、本発明の第1実施形態における可変光遅延器の構成図を示している。
プローブ光学系33は、遅延手段としての可変光遅延器50を備えている(図1参照)。図4に示すように、可変光遅延器50は、プローブ光の励起光に対するタイミング差を調整・設定するためのものである。可変光遅延器50は、可動反射鏡51、これを支持する支持部53および光遅延制御装置52を備えている。
光遅延制御装置52は、可動反射鏡51の位置を駆動制御するためのものである。可動反射鏡51の位置を駆動制御することによって、プローブ光の光路長の設定・変更を制御し、もって、励起光とプローブ光の照射タイミング差(テラヘルツ光の発生・検出タイミング差)の設定・変更を制御する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態では、分光処理部60は、電流−電圧変換アンプ61、スペクトル分析装置62、及び、解析装置63を備えている。
電流−電圧変換アンプ61は、光スイッチ素子21から供給された電流信号を電圧信号に変換するためのものである。
スペクトル分析装置62は、電流−電圧変換アンプ61で変換された電圧信号の周波数毎の強度分布を求めることで、電圧信号の周波数分析を行うためのものである。
スペクトル分析装置62は、入力電圧信号の周波数成分を直接分析し、横軸を周波数、縦軸をレベルとし、入力電圧信号の各周波数成分の相対的な大きさ、すなわち、入力電圧信号の振幅スペクトルをグラフとして表示する。
【0022】
解析装置63は、スペクトル分析装置62にて得られた振幅スペクトルに基づき、テラヘルツ光学系32に配置されているサンプルSの分光特性を求めるためのものである。解析装置63は、パーソナルコンピュータ等からなり、スペクトル分析装置62で得られた振幅スペクトラムのデータに基づき、サンプルSのテラヘルツ光分光特性を得るために必要な演算処理を行い、サンプルSのテラヘルツ光分光特性を得る。
【0023】
以上の構成を有するテラヘルツ分光測定装置1による分光測定の原理について、以下、具体的に説明する。
可変光遅延器50によってプローブ光の光路長を変化させると、光スイッチ素子21に検出対象として入射するテラヘルツ光の入射タイミングに対するプローブ光の検出タイミングが変化する。
例えば、周波数1THzのテラヘルツ光の周期は1psであるが、これは光路長に換算すると0.3mmに相当する。したがって、例えば可動反射鏡51を固定反射鏡54から1.5mm離れる方向に移動させた場合を考えると、プローブ光の光路長は往復分で3mm増加し、プローブ光の照射タイミングには10psの遅延時間が加えられる。
【0024】
ここで、この遅延時間は、周波数に換算すると、ステップ周波数fstep(THz)=(光速)/往復光路長=3mm)=1/10ps=0.1(THz)と与えられる。
そこで、比較例として、この0〜3mmの移動範囲で可動反射鏡51を往路分のみ1回だけ移動させ、各移動位置(各遅延時間)において順次テラヘルツ光成分の計測を行う時間ドメイン計測を行うことを考える。
この場合には、図5(A)のテラヘルツ光の時間波形図に示すような、測定時間のフルスケール(横軸)が10psのテラヘルツ光の時間波形が得られる。
【0025】
この時間波形に対し0.1ps/stepごとにデータが得られている(すなわち、総計100個のデータ点がある)とし、かかるデータに対し高速フーリエ変換(FFT)計算を行うと、フルスケールがデータ間隔0.1ps/stepに対応する10THzである周波数スペクトルが求められる。
図5(B)は、テラヘルツ光の周波数振幅のスペクトル図を示している。図5(B)は、当該10THzのフルスケールのうちの0〜2THzの範囲の周波数スペクトル(横軸:周波数、縦軸:各周波数成分の振幅)である。ここで、このスペクトルにおける各FFT計算点のステップ間隔(=ステップ周波数fstep)は、上記した図5(A)の時間波形のフルスケール10psに対応する0.1THzである。
【0026】
一方、本実施形態によるテラヘルツ分光測定装置1においては、可変光遅延器50において、プローブ光の光路長を一定の周波数・周期によって往復振動させて計測を行う。すなわち、可変光遅延器50のうち位置が固定されている固定反射鏡54に対し、可動反射鏡51を光遅延制御装置52によって光軸と平行に往復振動するように駆動制御する。このような可動反射鏡51の振動については、上述したように、その位置振動の振幅(最大位置変化)を、測定されるテラヘルツ光の時間波形のフルスケールに対応させればよい。例えば、振動の位置振幅を、テラヘルツ光パルスの時間波形を充分に含む測定時間軸のフルスケールに対応するように設定する。
【0027】
以上の構成の本実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)テラヘルツ光がサンプルSを透過する際、サンプルSの有するサンプルセルまたは容器の光学特性による光路長変化が生じる。これに対し、本実施形態では光路長補正装置40が当該光路長変化を相殺するよう光路長補正を行っている。
このため、テラヘルツ光がサンプルSを透過する際、テラヘルツ光はサンプルセルまたは被測定物流路が収容または流通する被測定物を透過する。このことにより被測定物起因のテラヘルツ光のスペクトル吸収と、サンプルセルや被測定物流路起因の光路長変化が生じるが、光路長補正装置40により当該光路長変化を相殺するよう光路長補正されるので、測定誤差の原因となるサンプルセルまたは被測定物流路起因の光路長変化を容易に排除することができ、被測定物起因のスペクトル吸収のみを検出することができる。
従って、テラヘルツ分光測定装置1に光路長補正装置40を導入することで、優れた測定精度を実現することができるテラヘルツ分光測定装置1を得ることができる。
【0028】
(2)本実施形態では、可動反射鏡41が平板鏡から形成したものであるので、テラヘルツ光は可動反射鏡41で反射する際、光学特性上の影響を受けないため、光路長のみが補正される。具体的には、集光レンズ等により光路長補正を行う場合のような色収差が発生するというおそれがない。
よって、測定誤差の原因となるサンプルセルまたは被測定物流路起因の光路長変化のみが補正され排除されるため、より優れた測定精度を実現することができる。また、汎用品である平板鏡を用いるだけなので、簡易、かつ、低コストでテラヘルツ分光測定装置の測定精度を向上させることができる。
【0029】
(3)本実施形態では、可動反射鏡41は2枚の平板鏡をL字型に組み合わせたものを用いるので、可動反射鏡41に入射する光軸と出射する光軸とを平行、かつ、離間させて反射することができる。このため、テラヘルツ光を180°折り返すことができるので、2枚の鏡の角度を変えずに、一体として移動させるだけで、光路長を変更することができ、鏡の角度を変える機構が不要であり、光路長変更装置を小型化することができる。
【0030】
(4)光路長補正制御装置42による可動反射鏡41の駆動制御は、レールの上に支持部43が載置され、ボールスクリューにより行われているので、汎用的で、かつ、簡易な構成により可動反射鏡41と支持部43とを駆動制御することができる。
【0031】
(5)本実施形態では、可変光遅延器を備え、広範な周波数領域のテラヘルツ光を検出することができる。このため、被測定物起因のテラヘルツ光のスペクトル吸収を広範な周波数領域において測定することができる。
また、光スイッチ素子21において検出した電流信号から分析処理する分光処理部を備えているので、テラヘルツ分光測定を行うに得られる電流信号の分析および解析等を行うことができる。
従って、テラヘルツ分光測定装置1は、広範な周波数領域におけるテラヘルツ分光測定と、それらの分析および解析を一度に行うことができる。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態を図6に基づいて説明する。
第2実施形態は、第1実施形態とは光路長補正装置40の位置が異なるものであり、その他の構成は第1実施形態と同様である。
図6は、本発明の第2実施形態におけるテラヘルツ分光測定装置の構成図を示している。
図6に示すように、第2実施形態では、可動反射鏡41が第一集光光学部13とサンプルSとの間に配置されている。この場合、テラヘルツ光は可動反射鏡41に反射された後に、サンプルSを透過する。つまり、サンプルSの透過によるテラへルツ光の光路長変化分を事前に補正している。これは、サンプルセル等の光学特性によるテラヘルツ光の光路長変化を測定前に把握しておくことで事前の補正が可能である。このため、試料を透過したテラヘルツ光は適正に光路長が補正されたものと同一となる。
従って、第2実施形態では、第1実施形態の効果(1)〜(5)と同様な作用効果を奏することができる。
【0033】
本発明の第3実施形態を図7に基づいて説明する。
第3実施形態は、第1実施形態とは光路長補正装置40の構成が異なるものであり、その他の構成は第1実施形態と同様である。
図7は、本発明の第3実施形態におけるテラヘルツ分光測定装置の構成図を示している。
図7に示すように、第3実施形態では、可動反射鏡41が2枚の反射鏡41a,41bとからなり、これらは垂直な位置関係で向かい合っている。そして、この2枚の反射鏡41a,41bの間にサンプルSが配置されている。この反射鏡41a,41bとサンプルSは光路長補正制御装置42により光軸に沿って平行に動く。そして、サンプルSは、反射鏡41a,41bと連動するようになっている。
【0034】
従って、第3実施形態では、第1実施形態の効果(1)〜(5)と同様な効果を奏することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第1実施形態および第2実施形態では、L字型の可動反射鏡41を用いたが、これに限らず、第3実施形態のような2枚の反射鏡を用いてもよい。そして、互いの鏡面同士がなす角度あるいは前記鏡面の投影面同士が直角であればよい。
更に、本実施例では2枚の反射鏡による実施形態を説明したが、3枚、4枚、あるいはそれ以上の枚数の反射鏡を組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、テラヘルツ分光測定装置のほか、様々な光学測定装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態におけるテラヘルツ分光測定装置の構成図。
【図2】(A)本発明の第1実施形態における光スイッチ素子(発光)の構成図。(B)本発明の第1実施形態における光スイッチ素子(受光)の構成図。
【図3】本発明の第1実施形態における光路長補正装置の構成図。
【図4】本発明の第1実施形態における可変光遅延器の構成図。
【図5】(A)テラヘルツ光の時間波形図。(B)テラヘルツ光の周波数振幅スペクトル図。
【図6】本発明の第2実施形態におけるテラヘルツ分光測定装置の構成図。
【図7】本発明の第3実施形態におけるテラヘルツ分光測定装置の構成図。
【符号の説明】
【0037】
1…テラヘルツ分光測定装置、10…発光素子、20…受光素子、40…光路長補正装置(光学ユニット)、41…可動反射鏡(鏡)、50…可変光遅延器(遅延手段)、60…分光処理部(分析手段)、100…パルス光源(レーザー発信機)、S…サンプル(試料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ光を発する発光素子と、
前記テラヘルツ光を受光して検出信号を検出する受光素子と、
前記発光素子と前記受光素子との光路上に配置される試料と、
を備えるテラヘルツ分光装置において、
前記発光素子から発する前記テラヘルツ光を試料近傍に集光する第一集光光学部と、
前記光路で発散するテラヘルツ光を前記受光素子に集光する第二集光光学部と、
前記第一集光光学部と前記第二集光光学部との間に、光路の長さを可変する光学ユニットとを備え、
前記光学ユニットは前記光路の光軸方向に移動する位置調整機構
を備えたことを特徴とするテラへルツ分光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテラへルツ分光測定装置において、
前記光学ユニットは複数面の平面鏡を有することを特徴とするテラへルツ分光測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたテラへルツ分光測定装置において、
前記平面鏡は、互いの鏡面同士がなす角度が直角であることを特徴とするテラへルツ分光測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載されたテラへルツ分光測定装置において、
前記光学ユニットを、前記第一集光光学部と前記試料との間の第一光路に配置することを特徴とするテラヘルツ分光測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載されたテラへルツ分光測定装置において、
前記光学ユニットを、前記試料と前記第二集光光学部との間の第二光路に配置することを特徴とするテラヘルツ分光測定装置。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載されたテラへルツ分光測定装置において、
前記光学ユニットは、前記平面鏡の間に試料を保持して移動することにより光軸位置調整をおこなうことを特徴とするテラヘルツ分光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−175332(P2010−175332A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16843(P2009−16843)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】