説明

テンション監視装置

【課題】 ルーズターンが発生する可能性のある異常現象を検出するテンション監視装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 回動支点の回りで回動可能なテンションバー10と、このテンションバー10に取り付けられた線材ガイド11と、テンションバー10の回動支点と線材ガイド11との間の所定位置においてテンションバー10にその回動角度に応じた弾性力を及ぼすスプリング14と、テンションバー10の回動角度を検出するポテンショメータ13と、このポテンショメータ13により検出された回動角度が所定の角度となるように線材の繰り出し速度を制御する繰り出し制御モータ6と、テンションバー10の回動角度と予め設定された基準回動角度とを比較し異常を判定するテンション異常判定手段18とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線機において線材に付与されるテンションを監視するテンション監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線機に備えられ、線材に所定のテンションを付与するテンション制御装置としては、従来から、例えば特許文献1や特許文献2等に電磁ブレーキを用いて線材にテンションを付与するものが提案されている。
【0003】
図7に、特許文献2で提案されたテンション制御装置を示す。このテンション制御装置においては、図示されない線材源からのワイヤ100は、ワイヤガイド101を介して導かれ、テンション付加用のプーリ102に巻回された後、ガイドプーリ104を介して、テンションバー110先端のガイドプーリ111に案内され、図示されない巻芯側に繰り出される。
【0004】
テンションバー110は、支点112を中心に回動可能となっており、支点112に取り付けられたDCモータ113へのトルク指令によりテンション値が設定される。また、ワイヤ100のテンションの一時的変動(ワイヤの繰り出し量と巻き取り量のアンバランス)はこのテンションバー110の回動により吸収される。この場合、テンションバー110の回動角度はポテンショメータ114によりフィードバックされ、電磁ブレーキ103によるブレーキ力は、テンションバー110の角度が初期位置に戻るように調整されるようになっている。
【0005】
しかしながら、このような従来の電磁ブレーキ式のテンション制御装置では、巻始めや巻終り時のプーリ102の加減速時には、ワイヤ100にはプーリ102の慣性力によって過大な慣性負荷が作用し、断線してしまうという問題がある。特に、径の小さいワイヤを巻回する場合には、断線し易く大きな問題となる。
【0006】
そこで、本出願人は、径の小さい線材を巻回する場合にも、断線を防止することができる繰り出し式のテンション制御装置を提案している(特許文献3参照)。この繰り出し式のテンション制御装置は、線材を巻き取るボビン側に対応して線材を繰り出すプーリを用いるものである。
【0007】
ここで、ボビンに線材を多層に巻回する場合には、線材が片寄った状態で巻回され、片寄って巻回された線材が滑り落ちて緩み、その緩んだ線材の上に線材が巻重ねられることによってルーズターンが発生する場合がある。また、ボビンを直列に連結するセクション型の昇圧トランスでは、ボビンのツバに線材が引っ掛かり、後にこの引っ掛かりが取れ線材が緩み、その緩んだ線材の上に線材が巻重ねられることによってルーズターンが発生する場合もある。
【0008】
このように、線材が滑り落ちて緩む時や、線材がボビンのツバに引っ掛かる時等のルーズターンが発生する場合には、線材の張力が急激に変動する。このような場合には、繰り出しプーリを備える繰り出し式のテンション制御装置においても、その急激な張力変動には追従することができない。
【0009】
線材内部にルーズターンが存在し、線材に高圧がかかった場合には、線材が緩んだ部分とその上に巻重ねられた部分との間の電位差が大きくなり、レアショート(層間短絡)の発生原因となる。また、ルーズターンは、外観検査及び各種検査で全てを発見することは難しく、発見されるのが数年後という場合もある。
【特許文献1】特開平2−310265号公報
【特許文献2】特開平6−255884号公報
【特許文献3】特開2000−128433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ルーズターン等の不具合が発生する可能性のある異常現象を検出するテンション監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るテンション監視装置は、巻芯に線材を巻回する巻線機に備えられるテンション監視装置において、回動支点の回りで回動可能なテンションバーと、このテンションバーに取り付けられた線材ガイドと、前記テンションバーの回動方向に付勢力を与える付勢手段と、前記テンションバーの回動角度を検出する回動角度検出手段と、この回動角度検出手段により検出された回動角度が所定の角度となるように線材の繰り出し速度を制御する繰り出し速度制御手段と、前記テンションバーの回動角度と予め設定された基準回動角度とを比較し異常を判定するテンション異常判定手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るテンション監視装置は、巻芯に線材を巻回する巻線機に備えられるテンション監視装置において、回動支点の回りで回動可能なテンションバーと、このテンションバーに取り付けられた線材ガイドと、前記テンションバーの回動方向に付勢力を与える付勢手段と、前記テンションバーの回動角度を検出する回動角度検出手段と、この回動角度検出手段により検出された回動角度が所定の角度となるように線材の繰り出し速度を制御する繰り出し速度制御手段と、前記テンションバーの回動角度の信号から加速度を算出する加速度算出手段と、その算出加速度と予め設定された基準加速度とを比較し異常を判定するテンション異常判定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、線材の巻回中におけるルーズターン等の不具合が発生する可能性のある現象、例えば変位及び加速度の急激な変化等を検出した場合には、その現象を即時に知ることができるため、テンション監視装置の運転を中止し、異常要因を取り除くことができる。しがって、本発明は、不良品の割合を少なくすることができ、生産性の向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1、図2に、本発明の第1の実施の形態のテンション監視装置100を示す。図1はテンション監視装置100の正面図であり、図2は、テンション監視装置100の断面及びテンションバー監視装置101を示す概念図である。なお、図2における点線部分は信号、情報の流れを示すものである。
【0015】
テンション監視装置100は巻線機に備えられ、図示されない線材源から導かれた線材1に所定のテンションを付与し、この線材1を図示されないコイルボビン等の巻芯に導くものである。
【0016】
図示されるように、テンション監視装置のケーシング2正面には、ガイドプーリ3、繰り出し制御プーリ4、テンションバー10が備えられる。線材1は、ガイドプーリ3を介して繰り出しプーリ4に導かれ、この繰り出しプーリ4に巻き付けられた後、テンションバー10先端の線材ガイド11から繰り出され、巻芯外周に巻き付けられる。
【0017】
繰り出しプーリ4の回転軸5は、ケーシング2内に収容された繰り出し制御モータ6に直結される。この繰り出し制御モータ6は、繰り出し速度制御手段25により回転速度が制御される。これにより、線材1の繰り出し速度(繰り出し量)は、繰り出し制御モータ6の回転速度を介して、繰り出し速度制御手段25により直接的に制御される。
【0018】
テンションバー10は、基端の回動軸12を支点として上下に回動可能となっている。この回動軸12の回動角度は、ケーシング2内に収容され回動軸12に取り付けられた回動角度検出手段としてのポテンショメータ13により検出される。
【0019】
また、テンションバー10の回動軸12と線材ガイド11との間の所定位置には、テンションバー10の回動方向に付勢力を与える付勢手段としての弾性部材の一端が取り付けブラケット10Aを介して取り付けられている。このように、テンションバー10は、弾性部材であるスプリング4によって傾転状態で吊られ、このスプリング4によってテンションバー10には回動角度に応じた弾性力が及ぼされる。
【0020】
このスプリング14の他端は、移動部材(取り付け部材)15の取り付け部15Aに固定される。この移動部材15はテンション調節モータ16のボールネジ16Aに螺合しており、このボールネジ16Aの回転にしたがって、ガイド軸17に沿って移動する。このように、スプリング14の他端の固定位置は変位でき、テンションバー10によって付与される線材の張力が調節可能になっている。なお、テンション調節モータ16の作動は繰り出し速度制御手段25により制御される。
【0021】
上記構成の他に、テンション監視装置100はテンションバー10の回動角度の変位を監視するテンションバー監視装置101を備える。このテンションバー監視装置101は、ポテンショメータ13が検出したテンションバー10の回動角度と予め設定された基準回動角度とを比較して線材にかかる張力の異常を判定するテンション異常判定手段18と、ポテンショメータ13が検出したテンションバー10の回動角度の信号、及びテンション異常判定手段18が出力した異常信号が入力される表示手段19とを備える。
【0022】
基準回動角度とは、線材にかかる張力変動の異常を判断するための基準となるテンションバー10の回動角度であり、線材の径、及び巻芯の径、形状等に応じて予め設定(入力)されるものである。例えば、何らかの要因で線材が緊張した場合には、テンションバー10は、図1において下方向に回動する。また、逆に何らかの要因で線材が緩んだ場合には、テンションバー10は上方向に回動する。このように、テンションバー10の変位は、テンションバー10の正常な位置を基準として線材の張力の変動によって上下二方向が考え得る。したがって、基準回動角度としては、上限値と下限値を設定し、テンションバー10の回動角度が、上限値又は下限値を越えた場合にテンション異常判定手段18によって異常と判定される。なお、上限値及び下限値は、双方とも設定してもよいし、いずれか一方のみを設定してもよい。
【0023】
以下に、テンション監視装置100の動作について説明する。
【0024】
線材源からの線材1は、テンション監視装置を経て巻芯に導かれ、巻芯外周に巻き付けられて行く。この場合、テンション監視装置の繰り出しプーリ4からの線材繰り出し速度(繰り出し量)は、巻芯への線材巻き取り速度(巻き取り量)とバランスするように繰り出し制御モータ6の回転速度制御により制御され、テンションバー10は所定の回動角度に保持される。これにより、線材1にはテンションバー10の回動角度にしたがってスプリング14のバネ力が作用し、このバネ力に基づく所定のテンションが付与されるようになっている。
【0025】
このような巻線作業において、巻芯への線材巻き取り速度(巻き取り量)が変化すると、線材1にかかるテンションが変動する。そして、テンション変動があると、これにしたがってテンションバー10の回動角度が変化する。これにより、テンションの変動分は、テンションバー10の回動角度の変化によって吸収され、線材1に過大なテンションがかかることが防止される。
【0026】
さらにこの場合、テンションバー10の回動角度の変化はポテンショメータ13により検出され、繰り出し速度制御手段25にフィードバックされる。このようなフィードバックを受けた繰り出し速度制御手段25は、テンションバー10の回動角度が所定角度に戻るように、繰り出し制御モータ6の回転速度を制御し、繰り出しプーリ4からの線材繰り出し速度を、巻芯への巻き取り速度とバランスさせる。これにより、テンションバー10の回動角度は所定角度に復帰し、線材1にかかるテンションは所定の値に戻される。
【0027】
また、テンションバー10からの線材1に作用するテンションを変化させたい場合には、テンション調節モータ16の駆動により移動部材15を移動させ、スプリング14端部の固定位置を調節する。これにより、テンションバー10を所定の回動角度としたときのスプリング14の長さを変化させることができ、スプリング14からテンションバー10に及ぼされるバネ力を調整できるので、線材1に作用するテンションを所望のものとできる。
【0028】
このように、巻線作業中に線材1のテンション変動(巻き取り速度の変動)があった場合には、このテンション変動はテンションバー10により過渡的に吸収されるとともに、このテンションバー10の回動角度の変化がフィードバックされることにより線材1の繰り出しプーリ4からの繰り出し速度が直接的に制御され、これにより線材1のテンションは所定の値に正確に復帰させられる。したがって、回転速度自体が直接的に制御される繰り出しプーリ4からは、線材1に慣性負荷が作用する余地はなく、線材1には慣性負荷により一時的にでも過大なテンションがかかってしまうことはなく、断線等が生じることを防止できる。なお、線材1のテンション変動を過渡的に吸収するテンションバー10は重量が小さいので、線材1にテンションバー1から作用する慣性負荷は問題とならない。
【0029】
また、テンションバー10の基端に回動支点(回動軸12)を設け、テンション付加用のスプリング14はテンションバー10の回動支点(基端)と繰り出し端(先端)との間の所定位置に取り付けられている。したがって、例えば図3のように、テンションバー20の中間地点に回動支点(回動軸21)を備え、先端20Aのガイド22から線材1を繰り出し、かつ基端の取り付けブラケット20Bにスプリング23を取り付けた場合と比較して、同じ長さのテンションバーであれば繰り出し端の変動を大きくとることができる。すなわち、テンションバー10とテンションバー20を同じ長さとした場合、スプリング14とスプリング23が同じもので、かつ回動軸12から取り付けブラケット10Aまでの長さと回動軸21から取り付けブラケット20Bまでの長さが同じだとしたならば、スプリング14とスプリング23のバネ力が同じだけの伸縮に対して、線材ガイド11の変動量はガイド22の変動量よりも大きくなる。したがって、本発明によれば、テンションバー10から作用するテンションをあまり大きく変動させないで、線材ガイド11の位置を大きく変動させることができ、テンションの過渡的な吸収を、よりスムーズに行うことができる。
【0030】
また、スプリング14端部の固定位置を決定する移動部材15は、繰り出し速度制御手段25により制御されたテンション調節モータ16により移動可能であるので、線材1に作用するテンションの大きさは連続的に変化させることができ、テンション制御の精度および自由度が高められる。
【0031】
次に、テンションバー監視装置101の動作について説明する。
(1)まず、予め線材の径、及び巻芯の径、形状等から基準回動角度であるテンションバー10の回動角度の上限値及び下限値をテンション異常判定手段18に入力する。
(2)テンションバー10の回動角度の変位を、回動角度検出手段としてのポテンショメータ13が検知し、その変位信号をテンション異常判定手段18及び表示手段19に出力する。
(3)テンションバー10の回動角度の変位信号が入力されたテンション異常判定手段18では、テンションバー10の回動角度と予め設定された基準回動角度とが比較される。
(4)テンション異常判定手段18によって、テンションバー10の回動角度が基準回動角度を越えたと判断された場合には、つまり、テンションバー10の回動角度が上限値または下限値を越えた場合には、テンション異常判定手段18は、異常信号を表示手段19に出力する。
(5)テンションバー10の回動角度の変位信号が入力される表示手段19は、監視用ディスプレイ(図示せず)にテンションバー10の回動角度の時間変化を表示するとともに、テンション異常判定手段18から異常信号が入力された場合には、その異常信号を監視用ディスプレイに表示する。
【0032】
表示手段19によって表示される監視用ディスプレイの画面表示の一例を図4に示す。図4に示すように、ポテンショメータ13によって検知されたテンションバー10の回動角度の変位51は、横軸を時間軸、縦軸を回動角度の変位(テンションバー10の正常位置が変位0)として表示される。また、予め設定されたテンションバー10の基準回動角度である上限値52aと下限値52bも時間軸と平行な線として表示される。
【0033】
このように、テンションバー10の回動角度の変位51が上限値52a及び下限値52b内であれば、巻回動作は正常である。また、テンションバー10の回動角度の変位51が上限値52a又は下限値52bを越えた場合(53)には、急激な線速の変化による線材の緊張又は緩み等の張力の変動があったものとして、警報等が発せられるとともに、監視用ディスプレイには「ANN」等の警報54が表示される。
【0034】
なお、テンションバー監視装置101の構成として、表示手段19を備えない構成とすることも当然可能である。この場合には、テンション異常判定手段18にて直接警報を発するようにすればよい。
【0035】
ここで、巻回動作の巻始め及び巻終り時には、線材が加減速されるため、巻芯の回転速度に対して、これに同期して加減速する繰り出し制御モータ6には多少の時間遅れが生じる。このため、巻始め時には、テンションバー10は多少下方向に回動し(54)、巻終り時には、テンションバー10は、多少上方向に回動する(55)。
【0036】
これらの巻始め、巻終り時の回動は異常状態ではないため、巻始め、巻終り時には警報が発生しないようにする必要がある。そこで、巻始め、巻終り時の一定時間は、基準回動角度の上下限値に余裕値58を加算する。具体的には、巻始めの加速時には、巻始めから一定時間だけ、基準回動角度である上下限値に負の余裕値を加算し、基準回動角度を所定変位だけ小さく設定する(56)。また、巻終りの減速時には、巻終りから一定時間だけ、基準回動角度である上下限値に正の余裕値を加算し、基準回動角度を所定変位だけ大きく設定する(57)。
【0037】
このように、テンションバー監視装置101によれば、巻回動作に異常が発生した場合には、その異常を即時に知ることができるため、テンション監視装置100の運転を中止し、異常要因を取り除くことができる。また、監視用ディスプレイを見れば、巻線中のどこの位置(時間軸)で異常が発生したのかが目視でわかり、異常要因の除去対策に有効である。
【0038】
次に、図5に、本発明の第2の実施の形態のテンション監視装置200を示す。図5は、テンション監視装置200の断面及びテンションバー監視装置201を示す概念図である。なお、図5における点線部分は信号、情報の流れを示すものである。
【0039】
テンション監視装置200におけるテンション監視装置100との相違点は、テンションバー監視装置101に代わり、テンションバー10の加速度を監視するテンションバー監視装置201を有する点である。その他の構成については、テンション監視装置100と同様であるため、以下に、テンションバー監視装置201についてのみ説明する。
【0040】
テンションバー監視装置101とテンションバー監視装置201との相違点は、テンション異常判定手段18に代わり、ポテンショメータ13から入力されたテンションバー10の回動角度の信号から加速度を算出する加速度算出手段61と、その加速度算出手段61によって算出された加速度と予め設定された基準加速度とを比較し異常を判定するテンション異常判定手段62とを有する点である。
【0041】
基準加速度とは、線材にかかる張力変動の異常を判断するための基準となるテンションバー10の加速度であり、線材の径、及び巻芯の径、形状等に応じて予め設定(入力)されるものである。例えば、何らかの要因で線材が緊張した場合には、テンションバー10は、図1において下方向に回動し正の加速度が生じる。また、逆に何らかの要因で線材が緩んだ場合には、テンションバー10は上方向に回動し負の加速度が生じる。このように、テンションバー10の加速度は、テンションバー10の加速度0を基準として線材の張力の変動によって正負の加速度が考え得る。したがって、基準加速度としては、上限値と下限値を設定し、テンションバー10の加速度が、上限値又は下限値を越えた場合にテンション異常判定手段62によって異常と判定される。なお、上限値及び下限値は、双方とも設定してもよいし、いずれか一方のみを設定してもよい。
【0042】
次に、テンションバー監視装置201の動作について説明する。
(1)まず、予め線材の径、及び巻芯の径、形状等から基準加速度であるテンションバー10の加速度の上限値及び下限値をテンション異常判定手段62に入力する。
(2)テンションバー10の回動角度の変位を、回動角度検出手段としてのポテンショメータ13が検知し、その変位信号を加速度算出手段61に出力する。
(3)テンションバー10の回動角度の変位信号が入力された加速度算出手段61では、回動角度の変位信号から線材の加速度が算出され、その算出加速度の信号が表示手段19に出力される。
(4)さらに、加速度算出手段61によって算出された加速度と予め設定された基準加速度とがテンション異常判定手段62によって比較される。
(5)テンション異常判定手段62によって、テンションバー10の加速度が基準加速度を越えたと判断された場合には、つまり、テンションバー10の加速度が上限値または下限値を越えた場合には、テンション異常判定手段62は、異常信号を表示手段19に出力する。
(6)テンションバー10の加速度信号が入力される表示手段19は、監視用ディスプレイ(図示せず)にテンションバー10の加速度の時間変化を表示するとともに、テンション異常判定手段62から異常信号が入力された場合には、その異常信号を監視用ディスプレイに表示する。
【0043】
表示手段19によって表示される監視用ディスプレイの画面表示の一例を図6に示す。図6に示すように、ポテンショメータ13によって検知されたテンションバー10の回動角度から算出された加速度63は、横軸を時間軸、縦軸を加速度として表示される。また、予め設定されたテンションバー10の基準加速度である上限値64aと下限値64bも時間軸と平行な線として表示される。
【0044】
このように、テンションバー10の加速度63が上限値64a及び下限値64b内であれば、巻回動作は正常である。また、テンションバー10の加速度63が上限値64a又は下限値64bを越えた場合(65)には、急激な線速の変化による線材の緊張又は緩み等の張力の変動があったものとして、警報等が発せられるとともに、監視用ディスプレイには「ANN」等の警報66が表示される。
【0045】
なお、テンションバー監視装置201の構成として、表示手段19を備えない構成とすることも当然可能である。この場合には、テンション異常判定手段62にて直接警報を発するようにすればよい。
【0046】
また、テンションバー監視装置201においても、テンションバー監視装置101と同様に、巻回動作の巻始め及び巻終り時には、線材が加減速されるため(67)、巻始め、巻終り時の一定時間は、警報が発生しないように基準加速度である上下限値(64a,64b)に余裕値68を加算する。
【0047】
短時間で起こる急激な線材の変化の場合には、テンションバー10の振れ幅としてはあまり大きくない。したがって、このような場合には、第1の実施の形態におけるテンションバー監視装置101では、ルーズターン等の異常を検知することができない場合がある。しかし、テンションバー監視装置201によれば、テンションバー10の変位ではなく加速度を監視するものであるため、短時間で起こる急激な線材の変化も異常として検出することができる。
【0048】
さらに、テンションバー監視装置201によれば、テンションバー監視装置101と同様に、巻回動作に異常が発生した場合には、その異常を即時に知ることができるため、テンション監視装置200の運転を中止し、異常要因を取り除くことができる。また、監視用ディスプレイを見れば、巻線中のどこの位置(時間軸)で異常が発生したのかが目視でわかり、異常要因の除去対策に有効である。
【0049】
以上の第1の実施の形態、第2の実施の形態では、それぞれテンションバー監視装置101、テンションバー監視装置201を適用する態様を示したが、テンションバー監視装置101及びテンションバー監視装置201を同時に適用し、テンションバー10の回動角度の変位及び加速度の双方を監視するテンションバー監視装置とすることも当然可能である。
【0050】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、巻線機において線材にテンションを付与するテンション監視装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるテンション監視装置100を示す正面図である。
【図2】同じくテンション監視装置100の断面及びテンションバー監視装置101を示す概念図である。
【図3】テンションバーの中間付近に回動支点を設けた場合のテンション監視装置を示す正面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における監視用ディスプレイの画面表示を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるテンション監視装置200の断面及びテンションバー監視装置201を示す概念図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における監視用ディスプレイの画面表示を表す図である。
【図7】従来のテンション監視装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0053】
100,200,300,400 テンション監視装置
101,201 テンションバー監視装置
1 線材
4 繰り出しプーリ
6 繰り出し制御モータ
10 テンションバー
10A 取り付けブラケット
11 線材ガイド
12 回動軸
13 ポテンショメータ
14 スプリング
15 移動部材(取り付け部材)
16 テンション調整モータ
18,62 テンション異常判定手段
19 ディスプレイ表示手段
25 繰り出し速度制御手段
51 回動角度の変位
52 基準回動角度
52a 上限値
52b 下限値
58,68 余裕値
61 加速度算出手段
63 算出加速度
64 基準加速度
64a 上限値
64b 下限値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯に線材を巻回する巻線機に備えられるテンション監視装置において、回動支点の回りで回動可能なテンションバーと、このテンションバーに取り付けられた線材ガイドと、前記テンションバーの回動方向に付勢力を与える付勢手段と、前記テンションバーの回動角度を検出する回動角度検出手段と、この回動角度検出手段により検出された回動角度が所定の角度となるように線材の繰り出し速度を制御する繰り出し速度制御手段と、前記テンションバーの回動角度と予め設定された基準回動角度とを比較し異常を判定するテンション異常判定手段とを備えることを特徴とするテンション監視装置。
【請求項2】
前記テンションバーの回動角度の時間変化を表示するとともに、前記テンション異常判定手段から異常信号が入力された場合には、その異常信号を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のテンション監視装置。
【請求項3】
前記基準回動角度は、上限値及び下限値のうちの少なくとも一方が設定され、前記テンションバーの回動角度が前記上限値または前記下限値を越えた場合に、前記テンション異常判定手段が異常と判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のテンション監視装置。
【請求項4】
巻芯に線材を巻回する巻線機に備えられるテンション監視装置において、回動支点の回りで回動可能なテンションバーと、このテンションバーに取り付けられた線材ガイドと、前記テンションバーの回動方向に付勢力を与える付勢手段と、前記テンションバーの回動角度を検出する回動角度検出手段と、この回動角度検出手段により検出された回動角度が所定の角度となるように線材の繰り出し速度を制御する繰り出し速度制御手段と、前記テンションバーの回動角度の信号から加速度を算出する加速度算出手段と、その算出加速度と予め設定された基準加速度とを比較し異常を判定するテンション異常判定手段とを備えることを特徴とするテンション監視装置。
【請求項5】
前記テンションバーの算出加速度の時間変化を表示するとともに、前記テンション異常判定手段から異常信号が入力された場合には、その異常信号を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項4に記載のテンション監視装置。
【請求項6】
前記基準加速度は、上限値及び下限値のうちの少なくとも一方が設定され、前記テンションバーの算出加速度が前記上限値または前記下限値を越えた場合に、前記テンション異常判定手段が異常と判定することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のテンション監視装置。
【請求項7】
巻始め、巻終り時の一定時間は、前記上限値及び前記下限値に余裕値を加算することを特徴とする請求項3または請求項6に記載のテンション監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−225051(P2006−225051A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37465(P2005−37465)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】