説明

テーパスナップリング

【課題】
部品を軸またはハウジングの穴に固定する為のテーパスナップリングにおいて、部品点数を増やさずにテーパスナップリングが抜け難くし、コストや組立工数が増加することを抑制したテーパスナップリングを提供する。
【解決手段】
本発明に係る部品を軸またはハウジングの穴に固定する為のテーパスナップリングは、前記テーパスナップリングのフック部及びリング部の一部の厚みを、リング部の他の部分よりも薄くしたことを特徴とする。前記テーパスナップリングのフック部及びリング部の一部の厚みを薄くする方法や、形状は、特に限定しないが、プレス加工や切削加工や研磨加工にて薄くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テーパスナップリングに関し、転がり軸受等を軸またはハウジングの穴に固定するため等に用いる。
【背景技術】
【0002】
スナップリングは、ハウジングに挿入された軸類、例えばシャフトやピンあるいは筒状体の上記ハウジングに対する位置決めや抜け止め用として多く用いられている。しかしながら、上記穴用スナップリングに穴の軸線方向の荷重が繰り返し加わった場合、上記軸類支持穴形成部材の穴の内周面に形成されたスナップリング嵌挿溝の形状が変形し、穴用スナップリングの外径を小さくする方向に力が作用し、上記穴用スナップリングが緩み出し、抜けることがあった。
【0003】
この部分の改善の先行技術としては、針状転がり軸受4の位置決めや抜け止め用として、軸受穴用スナップリング9のフック部91、92の巾と略等しい巾と上記穴用スナップリング9の厚さと略等しい厚さとを有し、かつ溝6aへの嵌入側にスリットにより分岐された脚部12、13を有し、該脚部12、13が溝に嵌装状態の上記穴用スナップリング9の上記フック部91、92に挿入時、外力により上記溝内にて拡開し、上記穴用スナップリング9のフック部91、92に圧着し得るようにしたことを特徴とする穴用スナップリング9のロック部材10がある。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−14523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術は、穴用スナップリング9の他に、ロック部材10が必要な為、コストや組立工数が増加する恐れがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、部品点数を増やさずにテーパスナップリングが抜け難くし、コストや組立工数が増加することを抑制したテーパスナップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、部品を軸またはハウジングの穴に固定する為のテーパスナップリングにおいて、前記テーパスナップリングのフック部及びリング部の一部の厚みを、リング部の他の部分よりも薄くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、部品点数を増やさずにテーパスナップリングが抜け難くし、コストや組立工数が増加することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るテーパスナップリングの正面図と側面図
【図2】テーパスナップリングを取り付けた状態の部分断面図
【図3】(a)従来のテーパスナップリングの正面図(b)本発明に係るテーパスナップリングの正面図
【図4】従来のテーパスナップリングとロック部材の部分正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るテーパスナップリング1について図面を参照して説明する。図1は、本発明のテーパスナップリング1であり、図1、2に示すように、外周面と側面の一部がテーパ1dとなっている。図2に示すように、前記テーパスナップリング1は、外径を小さくしてハウジングに取り付けられた場合、バネ力が働き、軸受5が軸方向に抜けないように、テーパスナップリング1のテーパ1dとハウジング2のテーパ2dでハウジング2に固定されている。図1、2に示すように、本実施形態の部品をハウジング2の穴に固定する為のテーパスナップリング1において、前記テーパスナップリング1のフック部1a及びリング部の一部1bの厚みを、リング部の他の部分1cよりも薄くした。前記テーパスナップリング1のフック部1a及びリング部の一部1bの厚みを薄くする方法や、形状は、特に限定しないが、プレス加工や切削加工や研磨加工にて薄くできる。また、前記加工の中で、コストや加工時間の面では、プレス加工が好ましい。また、図1では、ハウジング2に接触するテーパ側1eと軸受外輪5aに接触する平面側1fの両方をプレス加工にて薄くしているが、少なくとも一方をプレス加工にて薄くしても良い。これにより、部品点数を増やさずにテーパスナップリング1が抜け難くなり、コストや組立工数が増加することを抑制する効果がある。テーパスナップリング1形状の違いについて、アキシアル荷重負荷時の抜けやすさの比較を行った。図2に、軸受外輪5aをテーパスナップリングにより固定した際の断面図を示す。軸受外輪5aからアキシアル荷重Aが負荷されると、テーパスナップリング1はハウジング2との接触により反力Bが生じる。このとき、スナップリングにテーパ1dが施されているため、径方向内側にも反力Cが生じる。この反力Cによってフック部1aに近い部分ほど大きなモーメント荷重を受け、テーパスナップリング1が径方向に縮まる。この影響により、大荷重が負荷された場合には、図3(a)に示すように従来のテーパスナップリング3は抜けることがある。しかし、図3(b)に示す本発明のフック部周辺の厚さが薄いテーパスナップリング1は、フック部1aとリング部の一部1bにおいて軸受5やハウジング2と接触しないため、厚いリング部の他の部分1cのみで荷重を受け、フック部1aとリング部の一部1bでは荷重を受けない。荷重を受ける点が、フック部1aに近いほどモーメントにおける腕の長さが長くなるため、リングは変形しやすい。よって、本発明のテーパスナップリング1は、リングが縮まろうとするモーメント荷重を小さく抑えることが可能なため、抜けを防止する効果がある。
【0011】
また、上述の実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を外れない限り、他の実施形態にも適用出来る。
【符号の説明】
【0012】
1、3 テーパスナップリング
1a、91、92 フック部
1b リング部の一部
1c リング部の他の部分
1d テーパ
1e テーパ側
1f 平面側
2 ハウジング
2d テーパ
4 針状転がり軸受
5 軸受
5a 軸受外輪
6a 溝
9 穴用スナップリング
10 ロック部材
12、13 脚部
A アキシアル荷重
B 反力
C 径方向内側反力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を軸またはハウジングの穴に固定する為のテーパスナップリングにおいて、前記テーパスナップリングのフック部及びリング部の一部の厚みを、リング部の他の部分よりも薄くしたことを特徴とするテーパスナップリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92208(P2013−92208A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234988(P2011−234988)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】