説明

テープ印刷装置

【課題】被巻着部材のサイズ毎に、被巻着部材に巻き付く印刷済みテープの加熱前のテープ長さを自動的に設定することができるテープ印刷装置を提供する。
【解決手段】テープ印刷装置は、印刷済みテープを加熱して巻着する被巻着部材の外径を取得する外径取得手段と、前記印刷済みテープの外側テープの第1熱収縮率と内側テープの前記第1熱収縮率よりも大きい第2熱収縮率を取得する熱収縮率取得手段と、前記外径取得手段を介して取得した前記被巻着部材の外径と前記熱収縮率取得手段を介して取得した前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率とに基づいて、加熱前の前記印刷済みテープのテープ長さを算出するテープ長算出手段と、前記印刷済みテープを前記テープ長算出手段によって算出したテープ長さになるように切断手段による切断位置までテープ搬送手段で搬送した後、前記テープ搬送手段を停止するように制御する搬送制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のテープを収納したテープカセットが着脱可能に装着されるテープ印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺状のテープを収納したテープカセットが着脱可能に装着されるテープ印刷装置に関して種々提案されている。
例えば、テープ印刷装置に装着されたテープカセットには、粘着テープが剥離紙を外側にして粘着テープスプールに巻回されて回動可能に配置されている。また、ラミネートフィルムがラミネートフィルムスプールに巻回されて回動可能に配置されている。また、インクリボンがリボンスプールに巻回されて回動可能に配置されている。
【0003】
また、粘着テープは、熱収縮率がラミネートフィルムよりも大きい熱収縮材料と、ラミネートフィルムと熱収縮材料を接着する接着剤と、熱収縮材料と剥離紙を接着する粘着剤とから構成されている。また、ラミネートフィルム及び熱収縮材料は、長手方向に対して直交する幅方向に一軸延伸してフィルム状に成形されている。そして、サーマルヘッドによりインクリボンのインクをラミネートフィルム上に転写した後、ラミネートフィルム及び熱収縮材料を延伸方向が同一になるように貼り合わせて印字テープを作成するように構成されたテープ印刷装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−148984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した特許文献1に記載されたテープ印刷装置では、印字テープ68を円筒形状のケーブル等に貼付して、熱収縮材料72の延伸成形時の温度以上に加熱することにより、断面略円弧状に変形して、被着部材の外周面に沿って変形させることができる。
【0006】
しかしながら、ラミネートフィルム69及び熱収縮材料72を長手方向に一軸延伸して成形し、円筒形状のケーブル等の円周方向に沿って巻回して取り付ける場合には、円筒形状のケーブル等の被巻着部材のサイズ毎にテープ長さを算出して設定する必要がある。このため、テープ長さの算出作業が煩雑であり、作業効率が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、被巻着部材のサイズ毎に、被巻着部材に巻き付く印刷済みテープの加熱前のテープ長さを自動的に設定することができるテープ印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため請求項1に係るテープ印刷装置は、テープカセットが着脱可能に装着されるカセット収納部と、前記テープカセットに収納された長尺状のテープを搬送するためのテープ搬送手段と、前記テープに印刷する印刷手段と、前記テープ搬送手段によって搬送された印刷済みテープを切断する切断手段と、を備えたテープ印刷装置において、前記印刷済みテープは、長手方向に一軸延伸して成形された第1熱収縮率の外側テープと、長手方向に一軸延伸して成形された前記第1熱収縮率よりも大きい第2熱収縮率の内側テープとが、その延伸方向が同一方向になるように積層されており、加熱により内側テープを内側にして巻き付くように変形し、前記印刷済みテープを加熱して巻着する被巻着部材の外径を取得する外径取得手段と、前記印刷済みテープの前記第1熱収縮率と前記第2熱収縮率を取得する熱収縮率取得手段と、前記外径取得手段を介して取得した前記被巻着部材の外径と前記熱収縮率取得手段を介して取得した前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率とに基づいて、該被巻着部材に巻着する加熱前の前記印刷済みテープのテープ長さを算出するテープ長算出手段と、前記印刷済みテープを前記テープ長算出手段によって算出したテープ長さになるように前記切断手段による切断位置まで搬送した後、前記テープ搬送手段を停止するように制御する搬送制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係るテープ印刷装置は、請求項1に記載のテープ印刷装置において、前記カセット収納部に装着されたテープカセットの種類を検出する種類検出手段と、前記テープカセットの種類に対応する前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率を記憶する記憶手段と、を備え、前記熱収縮率取得手段は、前記種類検出手段を介して検出されたテープカセットの種類に対応する前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率を前記記憶手段から取得することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係るテープ印刷装置は、請求項1又は請求項2に記載のテープ印刷装置において、加熱して巻着された前記印刷済みテープの長手方向両端部の重なり度合を取得する重なり度合取得手段を備え、前記テープ長算出手段は、前記外径取得手段を介して取得した前記被巻着部材の外径と前記熱収縮率取得手段を介して取得した前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率と、前記重なり度合取得手段を介して取得した前記重なり度合とに基づいて、前記被巻着部材に巻着する加熱前の前記印刷済みテープのテープ長さを算出することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係るテープ印刷装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテープ印刷装置において、前記テープに印刷する印刷データと、当該印刷データの文字サイズとを取得する印刷情報取得手段と、前記熱収縮率取得手段を介して取得した前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率と前記印刷情報取得手段を介して取得した前記文字サイズとに基づいて、印刷済みテープを加熱した後に該文字サイズになるように補正した前記印刷データの補正文字サイズを算出する補正文字サイズ算出手段と、前記印刷手段を介して前記補正文字サイズでテープに印刷するように制御する印刷制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
更に、請求項5に係るテープ印刷装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のテープ印刷装置において、前記切断手段を介して前記印刷済みテープを自動的に切断するか否かを表す切断情報を取得する切断情報取得手段と、前記切断情報取得手段を介して取得した前記切断情報が前記印刷済みテープを自動的に切断する旨を表す場合には、前記切断位置に搬送された前記印刷済みテープを前記切断手段を介して切断するように制御し、該切断情報取得手段を介して取得した前記切断情報が前記印刷済みテープを自動的に切断しない旨を表す場合には、前記テープ長算出手段によって算出したテープ長さの位置にカットマークを印刷すると共に、前記切断位置に搬送された前記印刷済みテープを前記切断手段を介して切断しないように制御する切断制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係るテープ印刷装置では、印刷済みテープを加熱して巻着する被巻着部材の外径と、印刷済みテープを構成する外側テープの第1熱収縮率と、内側テープの第1熱収縮率よりも大きい第2熱収縮率とを取得することによって、印刷済みテープの加熱前のテープ長さを自動的に設定することができる。従って、ユーザは、被巻着部材の外径と、外側テープの第1熱収縮率と、内側テープの第2熱収縮率とを入力することによって、所望のテープ長さの印刷済みテープを容易に作成することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、請求項2に係るテープ印刷装置では、種類検出手段を介して検出されたテープカセットの種類に対応する第1熱収縮率及び第2熱収縮率を記憶手段から取得することができるため、ユーザは被巻着部材の外径を入力することによって、所望のテープ長さの印刷済みテープを更に容易に作成することができ、作業効率の更なる向上を図ることができる。
【0015】
また、請求項3に係るテープ印刷装置では、印刷済みテープを加熱して巻着する被巻着部材の外径と、印刷済みテープを構成する外側テープの第1熱収縮率と、内側テープの第2熱収縮率と、巻着された印刷済みテープの長手方向両端部の重なり度合とを取得することによって、印刷済みテープの加熱前のテープ長さを自動的に設定することができる。従って、ユーザは、巻着された印刷済みテープの長手方向両端部の重なり度合を入力することによって、所望の重なり度合で被巻着部材に巻回できる印刷済みテープを容易に作成することができ、作業効率の更なる向上を図ることができる。
【0016】
また、請求項4に係るテープ印刷装置では、熱収縮率取得手段を介して取得した第1熱収縮率及び第2熱収縮率と、印刷情報取得手段を介して取得した文字サイズとに基づいて、印刷済みテープを加熱した後に該文字サイズになるように補正した印刷データの補正文字サイズを自動的に設定することができる。そして、この補正文字サイズでテープに印刷データを印刷することができ、被巻着部材に加熱して巻回した印刷済みテープに印刷された文字等の高品質化を図ることができる。
【0017】
更に、請求項5に係るテープ印刷装置では、切断情報取得手段を介して取得した切断情報が、印刷済みテープを自動的に切断する旨を表す場合には、切断位置まで搬送された印刷済みテープを切断する。また、切断情報取得手段を介して取得した切断情報が、印刷済みテープを自動的に切断しない旨を表す場合には、テープ長算出手段によって算出したテープ長さの位置にカットマークを印刷すると共に、切断位置に搬送された印刷済みテープを切断しない。これにより、ユーザはカットマークの位置で印刷済みテープを切断することによって、所望のテープ長さの印刷済みテープを更に容易に作成することができ、作業効率の更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るテープ印刷装置の平面図である。
【図2】テープ印刷装置の右側面図である。
【図3】テープ印刷装置のカセット収納部にテープカセットを装着する状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】カセット収納部にラミネートタイプのテープカセットを装着した状態でテープカセットの上ケースを取り外した場合の要部拡大平面図である。
【図5】内側テープをフィルムテープへ圧着する状態を模式的に示す図である。
【図6】テープ印刷装置の要部の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図7】熱収縮率データテーブルの一例を示す図である。
【図8】テープ印刷装置の熱収縮テープ作成処理を示すメインフローチャートである。
【図9】図8の「印刷処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図10】図9の「ユーザ入力処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図11】カセット収納部にノンラミネートタイプのテープカセットを装着した状態でテープカセットの上ケースを取り外した場合の要部拡大平面図である。
【図12】図11の印刷済みテープを搬送する状態を模式的に示す図である。
【図13】印刷済みテープを被巻着部材に巻回する一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るテープ印刷装置について具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るテープ印刷装置1の概略構成について図1乃至図3に基づいて説明する。
【0020】
図1乃至図3に示すように、本実施形態に係るテープ印刷装置1には、文書データからなるテキストを作成するための文字入力キー2、テキスト等の印刷を指示する印刷キー3、及び、改行指示や各種処理の実行、選択を指示するリターンキー4、文字等のキャラクタを複数行に渡って表示する液晶ディスプレイ(LCD)7上でカーソルを上下、左右に移動させるカーソルキー5等を設けたキーボード6、及び、テープカセット21を収納するカセット収納部8が収納カバー13で覆われて配設されている。
【0021】
また、このキーボード6の下側には、制御回路部70(図6参照)が構成される制御基板12が配設されている。また、カセット収納部8の左側面部には、印刷された印刷済みテープが排出されるラベル排出口17が形成されている。また、該カセット収納部8の右側面部には、電源アダプタが取り付けられるアダプタ挿入口18、及び不図示のパーソナルコンピュータと接続するためのUSBケーブルが取り付けられるUSBコネクタ19が設けられている。
【0022】
また、このカセット収納部8には、サーマルヘッド9と、このサーマルヘッド9に対向するプラテンローラ10と、このプラテンローラ10の下流側のテープサブローラ11と、このテープサブローラ11に対向する金属製のテープ駆動ローラ軸14とが配置されている他に、更に、テープカセット21内に収納されるインクリボンを送るリボン巻取軸15等が配置されている。
【0023】
このサーマルヘッド9は、正面視略縦長四角形の平板状で、前面の左端縁部には、所定個数の各発熱素子R1〜Rn(nは、例えば、128個又は256個である。)が、該左端縁部の辺に沿って一列に配列されて形成されている。また、該サーマルヘッド9は、メッキ鋼板やステンレス鋼板等により形成される正面視略四角形の放熱板9Aの前面の左端縁部に、各発熱素子R1〜Rn の配列方向が、該放熱板9Aの左端縁部の辺に平行になるように接着剤などによって固着されている。そして、該放熱板9Aは、各発熱素子R1〜Rn の配列方向が、テープカセット21の開口部22におけるフィルムテープ51(図4参照)の搬送方向に略直交するように、ビス止め等によってカセット収納部8の下側に取り付けられている。
【0024】
また、リボン巻取軸15は、ステッピングモータ等により構成されるテープ送りモータ83(図6参照)から適宜の駆動機構を介して回転駆動され、後述のようにテープカセット21内に回転可能に設けられたリボン巻き取りスプール61(図4参照)内に嵌入されて回転駆動する。また、テープ駆動ローラ軸14は、テープ送りモータ83から適宜の伝達機構を介して回転駆動され、後述のようにテープカセット21内に回転可能に設けられた導電性樹脂製のテープ送りローラ63(図4参照)内に嵌入されて回転駆動する。
【0025】
また、図3に示すように、テープカセット21のテープ排出口27(図4参照)の近傍には、印刷済みテープを所定の長さに切断する切断装置としてのはさみ式カッタユニット30が配置されている。このカッタユニット30は、固定刃30Aと、切断用モータ85(図6参照)によって固定刃30Aに対して作動して印刷済みテープを切断する可動刃30Bとから構成されている。また、カセット収納部8の底面部には、2つの位置決めピン45、46が、同一高さ寸法に立設されている。そして、テープカセット21をカセット収納部8に装着した際には、テープカセット21は、各位置決めピン45、46によってカセット収納部8内で適正に位置決めがされる。
【0026】
次に、テープカセット21の概略構成について図3乃至図5に基づいて説明する。
図3及び図4に示すように、ラミネートタイプのテープカセット21は、上ケース23と下ケース24とを有する。このテープカセット21には、被印刷テープとしての透明な第1熱収縮率(例えば、熱収縮率が約9.3%である。)の外側テープの一例として機能するフィルムテープ51を巻回した外側テープスプール54を回転可能に支持する支持孔41が形成されている。また、テープカセット21には、サーマルヘッド9によりフィルムテープ51上に文字等を印刷する際にリボンスプール55からインクリボン52を引き出すとともに巻取るリボン巻き取りスプール61を支持する支持孔42が形成されている。
【0027】
また、テープカセット21には、第1熱収縮率よりも大きい第2熱収縮率(例えば、熱収縮率が約15%である。)の内側テープ53を巻回した内側テープスプール56を回転可能に支持する支持孔43が形成されている。尚、図3中には、上ケース23に形成された各支持孔41、42、43のみしか図示されていないが、下ケース24についても同様に上ケース23の各支持孔41、42、43に対向して支持孔41、42、43が形成されている。
【0028】
また、外側テープスプール54、リボンスプール55、内側テープスプール56は、各々、下ケース24の底面に立設されたカセットボス58、リールボス59、カセットボス60に回転可能に嵌挿して収納されている。そして、リボンスプール55に巻回され、このリボンスプール55から引き出された未使用インクリボン52は、フィルムテープ51と重ね合わされ、フィルムテープ51と共に開口部22に入り、サーマルヘッド9及びプラテンローラ10の間を通過する。その後、インクリボン52は、フィルムテープ51から引き離され、リボン巻取軸15により回転駆動されるリボン巻き取りスプール61に至り、このリボン巻き取りスプール61により巻き取られる。
【0029】
また、図5に示すように、内側テープ53は、第2熱収縮率のPET(ポリエチレンテレフタラート)等から成る色付き、又は、透明のベースフィルム53Aと、印刷されたフィルムテープ51に貼り付けるための粘着層53Bとが積層された2層構造に構成されている。また、内側テープ53は、粘着層53Bを内側にして内側テープスプール56に巻回されて収納されている。
【0030】
そして、図4及び図5に示すように、この内側テープスプール56から引き出された内側テープ53は、テープ駆動ローラ軸14によって回転駆動されるテープ送りローラ63とテープサブローラ11との間を通過し、粘着層53Bがフィルムテープ51の印刷面に圧着される。これにより、フィルムテープ51の印刷面に内側テープ53が積層された印刷済みテープ28が作成されて、テープ排出口27から排出される。続いて、印刷済みテープ28は、カッタユニット30を経てテープ印刷装置1のラベル排出口17より外部に送り出される。そして、印刷済みテープ28を所定長さ搬送後、切断用モータ85を駆動して可動刃30Bを作動させることによって、印刷済みテープ28がラベル排出口17より排出される。
【0031】
ここで、フィルムテープ51及びベースフィルム53Aとしては、ポリオレフィン、シリコン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、エチレンプロピレンゴム等の合成樹脂が使用される。なおこれらの材料は、その製法により熱収縮率を調整することが可能であるため、所望の熱収縮率となるように精製して使用される。また、粘着層53Bは、アクリル系樹脂、天然ゴム系樹脂、合成ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、エステル系樹脂等による透明な粘着剤が使用される。
【0032】
また、フィルムテープ51及びベースフィルム53Aは、一軸方向に延伸してフィルム状に成形される。フィルムテープ51及びベースフィルム53Aの材料である既述の合成樹脂は、ある程度の加熱をしながら一定方向に引き揃えると分子が変形方向に整列する。そして、成型後、延伸する際にかけた温度を超える熱量をかけると、延伸方向に収縮する性質を有している。本実施形態では、フィルムテープ51及びベースフィルム53Aをフィルム成形した後、それぞれをテープ搬送方向、つまり、テープの長手方向に一軸延伸して成形し、結果得られる双方のフィルムを、その延伸方向が同一方向となるように積層させている。そして、加熱時において変形する上記性質を利用して、印刷済みテープ28の形状を変形させて、コード等の被巻着部材に巻着する(図11参照)。
【0033】
ところで、図4に示すように、下ケース24のフィルムテープ51が巻回される外側テープスプール54に対向する角部には、テープカセットの種類(例えば、セパレータが貼着された粘着剤付き印刷済みテープ28が作成される通常テープカセットや、第1熱収縮率のフィルムテープ51に第2熱収縮率の内側テープ53が貼着された印刷済みテープ28が作成されるテープカセット21等である。)、テープ幅(例えば、6mm、9mm、12mm、18mm、24mmとする5種類等である)、テープの材質等を判別するための7個の各カセット判別部25A〜25Gが略L字状に設けられている。
【0034】
但し、7個の各カセット判別部25A〜25Gのうちの所定箇所が、テープカセットの種類やテープ幅等に対応して貫通している。例えば、図4中、テープカセット21では、7個の各カセット判別部25A〜25Gのうちの各カセット判別部25A〜25D、25F、25Gが貫通して孔部が形成され、カセット判別部25Eは貫通しておらず面部が形成されている。
【0035】
また、カセット収納部8の各カセット判別部25A〜25Gに対向する底面部には、プッシュ式のマイクロスイッチ等から構成されて、この各カセット判別部25A〜25Gにおける孔部の有・無を判別するための7個の各カセットセンサP1〜P7(図6参照)が略L字状に設けられている。この各カセットセンサP1〜P7は、プランジャーとマイクロスイッチ等から構成される公知の機械式スイッチからなり、該各プランジャーの上端部は、各カセット判別部25A〜25Gの孔部を貫通して突き出るように設けられている。そして、各カセットセンサP1〜P7に対して各カセット判別部25A〜25Gに孔部が有るか否かを検出して、そのオン・オフ信号によりカセット収納部8に装着されたテープカセットの種類、テープ幅、テープの材質等を検出するものである。
【0036】
尚、本実施形態の場合は、各カセットセンサP1〜P7は、そのプランジャーが常には、突き出るように設けられており、マイクロスイッチがオフ状態になっている。そして、各カセット判別部25A〜25Gの孔部が、各カセットセンサP1〜P7に対向する位置に有る場合には、プランジャーが押下されずマイクロスイッチがオフ状態にあるので、オフ信号が出力される。一方、各カセット判別部25A〜25Gの面部が、各カセットセンサP1〜P7に対向する位置にある場合には、プランジャーが押下されてマイクロスイッチがオン状態になるので、オン信号が出力される。
【0037】
これにより、各カセット判別部25A〜25Gには孔部は、7個のうちの最大6個形成されるため、各カセット判別部25A〜25G毎の孔部の有・無を「1」と「0」に対応させることにより、カセット収納部8に装着されたテープカセットの種類、テープ幅、材質等を識別するためのカセットIDを「0000001」〜「1111111」の7ビットの符号によって検出することができる。例えば、図4に示すテープカセット21がカセット収納部8に装着された場合には、テープカセット21の種類等を識別するカセットIDを「0010000」の7ビットの符号によって検出することができる。尚、「0000001」〜「1111111」の7ビットの符号に対応するカセットIDは、後述のフラッシュメモリ74(図6参照)に予め記憶されている。
【0038】
次に、テープ印刷装置1の回路構成について図6に基づき説明する。
図6に示すように、テープ印刷装置1の制御基板12上に形成される制御回路部70は、CPU71、CG(キャラクタジェネレータ)ROM72、ROM73、フラッシュメモリ74、RAM75、入出力インターフェース(I/F)76、及び通信用インターフェース(I/F)77等を備えている。また、CPU71、CGROM72、ROM73、フラッシュメモリ74、RAM75、入出力インターフェース(I/F)76、及び通信用インターフェース(I/F)77は、バス線78により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0039】
ここに、CGROM72には各キャラクタに対応するドットパターンデータが記憶されており、ドットパターンデータがCGROM72から読み出され、そのドットパターンデータに基づいて液晶ディスプレイ(LCD)7上にドットパターンが表示される。また、ROM73には、各種のプログラムを記憶させておくものであり、後述のドライヤー等で加熱して設定された重なり度合でコード等の被巻着部材に巻着する印刷済みテープ28を作成する「熱収縮テープ作成処理」(図8参照)のプログラム等のテープ印刷装置1の制御上必要な各種のプログラムが記憶されている。
【0040】
そして、CPU71はかかるROM73に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算を行なうものである。また、ROM73には、多数の文字等のキャラクタのそれぞれについて、各キャラクタの輪郭線を規定する輪郭線データ(アウトラインデータ)が各書体(ゴシック系書体、明朝体系書体等)毎に分類されてコードデータに対応して記憶されている。このアウトラインデータに基づいてドットパターンデータが印刷バッファ75B上に展開される。
【0041】
また、フラッシュメモリ74は、外部のコンピュータ装置から受信した複数サイズの外字データのドットパターンデータや各種図柄データのドットパターンデータ等に登録番号を付して記憶させておくものであり、テープ印刷装置1の電源をオフにしても記憶内容を保持している。また、フラッシュメモリ74には、テープカセット21の種類等を識別するカセットIDに対応させてフィルムテープ51(外側テープ)及び内側テープ53のそれぞれの熱収縮率とテープ厚さを記憶する後述のテープデータテーブル91(図7参照)が格納されている。
【0042】
また、RAM75は、CPU71により演算された各種の演算結果を一時的に記憶させておくためのものである。また、サーマルヘッド9を介してフィルムテープ51に印刷する際に印刷データが一時記憶される。更に、RAM75には、テキストメモリ75A、印刷バッファ75B等の各種のメモリが設けられている。
【0043】
このテキストメモリ75Aには、キーボード6から入力された文書データや外字データ等の印刷データとしての編集テキストが格納される。また、印刷バッファ75Bには、設定された文字サイズで複数の文字や記号等のドットパターンや各ドットの形成エネルギ量である印加パルス数等が印刷用ドットパターンデータとして格納され、サーマルヘッド9はかかる印刷バッファ75Bに記憶されている印刷用ドットパターンデータに従ってドット印字を行う。
【0044】
また、入出力I/F76には、キーボード6、各カセットセンサP1〜P7と、液晶ディスプレイ(LCD)7に表示データを出力する為のビデオRAMを有するディスプレイコントローラ(LCDC)81と、サーマルヘッド9を駆動する為の駆動回路82と、テープ送りモータ83を駆動する為の駆動回路84と、切断用モータ85を駆動する為の駆動回路86とがそれぞれ接続されている。また、通信用I/F77は、例えば、USB(Universal Serial Bus)コネクタ19等から構成され、外部のコンピュータ装置とUSBケーブルによって接続され、双方向データ通信が可能になっている。
【0045】
よって、キーボード6の文字入力キー2を介して文字等が入力された場合、そのテキスト(文書データ)がテキストメモリ75Aに順次記憶されていくとともに、ドットパターン発生制御プログラム及び表示駆動制御プログラム等に基づいてキーボード6を介して入力された文字等に対応するドットパターンが液晶ディスプレイ(LCD)7上に表示される。また、サーマルヘッド9は駆動回路82を介して駆動され、印刷バッファ75Bに記憶された印刷用ドットパターンデータの印刷を行い、これと同期してテープ送りモータ83が駆動回路84を介して駆動制御され、インクリボン52、フィルムテープ51及び内側テープ53の搬送が行われるものである。また、外部のコンピュータ装置から通信用I/F77を介して入力された印刷データをテキストメモリ75Aが順次記憶し、ドットパターン発生制御プログラムに基づいて印刷バッファ75Bに設定された文字サイズの印刷用ドットパターンデータとして記憶されて、サーマルヘッド9を介してフィルムテープ51に印刷される。
【0046】
ここで、フラッシュメモリ74に格納されるテープデータテーブル91の一例について図7に基づいて説明する。
図7に示すように、テープデータテーブル91は、「カセットID」と、「内側テープの熱収縮率(%)」と、「外側テープの熱収縮率(%)」と、「内側テープの厚さ(μm)」と、「外側テープの厚さ(μm)」とから構成されている。「カセットID」には、カセットセンサP1〜P7によって検出された7ビットの符号に対応するカセットIDが記憶されている。
【0047】
また、「内側テープの熱収縮率(%)」には、カセットIDで特定されるテープカセット21に収納されている内側テープ53のベースフィルム53Aの第2熱収縮率α2、つまり、内側テープ53の第2熱収縮率α2が記憶されている。また、「外側テープの熱収縮率(%)」には、カセットIDで特定されるテープカセット21に収納されているフィルムテープ51(外側テープ)の第1熱収縮率α1が記憶されている。また、「内側テープの厚さ(μm)」には、カセットIDで特定されるテープカセット21に収納されている内側テープ53のテープ厚さT2が記憶されている。また、「外側テープの厚さ(μm)」には、カセットIDで特定されるテープカセット21に収納されているフィルムテープ51(外側テープ)のテープ厚さT1が記憶されている。
【0048】
次に、このように構成されたテープ印刷装置1のCPU71が実行する制御処理であって、ドライヤー等で加熱して設定された重なり度合でコード等の被巻着部材に巻着する印刷済みテープ28を作成する「熱収縮テープ作成処理」について図8乃至図12に基づいて説明する。
【0049】
図8に示すように、ステップ(以下、Sと略記する)11において、CPU71は、キーボード6の文字入力キー2を介して文字等が入力されたか否かを判定する判定処理を実行する。そして、文字入力キー2を介して文字等が入力されたと判定した場合には(S11:YES)、CPU71は、S12の処理に移行する。S12において、CPU71は、文字入力処理のサブ処理を実行する。具体的には、CPU71は、文字入力キー2を介して入力されたテキストデータを印刷データとしてテキストメモリ75Aに記憶すると共に、この入力されたテキストデータを液晶ディスプレイ7上に表示する。その後、CPU71は、再度S11以降の処理を実行する。
【0050】
一方、文字入力キー2を介して文字等が入力されていないと判定した場合には(S11:NO)、CPU71は、S13の処理に移行する。S13において、CPU71は、キーボード6を介して文字サイズが入力されたか否かを判定する判定処理を実行する。そして、キーボード6を介して文字サイズが入力されたと判定した場合には(S13:YES)、CPU71は、入力された文字サイズに対応した印刷する文字高さH1と文字幅W1をROM73から読み出して、印刷データの印刷する文字高さH1と文字幅W1としてRAM75に記憶する。その後、CPU71は、再度S11以降の処理を実行する。尚、テープ印刷装置1の起動時には、10ポイントの文字サイズに対応する文字高さH1と文字幅W1がRAM75に記憶されている。
【0051】
一方、キーボード6を介して文字サイズが入力されていないと判定した場合には(S13:NO)、CPU71は、S15の処理に移行する。S15において、CPU71は、キーボード6の印刷キー3が押下されたか否かを判定する判定処理を実行する。そして、キーボード6の印刷キー3が押下されたと判定した場合には(S15:YES)、CPU71は、S16の処理に移行する。S16において、CPU71は、後述の「印刷処理」のサブ処理を実行した後、再度S11以降の処理を実行する。
【0052】
一方、キーボード6の印刷キー3が押下されていないと判定した場合には(S15:NO)、CPU71は、S17の処理に移行する。S17において、CPU71は、外部のコンピュータ装置から通信用I/F77を介して入力された外字データ等をフラッシュメモリ74に記憶する等の「その他の処理」を実行後、再度S11以降の処理を実行する。
【0053】
次に、上記S16で実行する「印刷処理」のサブ処理について図9に基づいて説明する。
図9に示すように、S111において、CPU71は、カセット収納部8に装着されたテープカセットの種類、テープ幅、材質等を識別するためのカセットIDを各カセットセンサP1〜P7を介して検出する。つまり、CPU71は、各カセットセンサP1〜P7から入力された「0000001」〜「1111111」の7ビットの符号に対応するカセットIDをフラッシュメモリ74から読み出し、RAM75に記憶する。
【0054】
そして、S112において、CPU71は、カセットIDをRAM75から読み出し、当該カセットIDをフラッシュメモリ74に格納されるテープデータテーブル91の「カセットID」として、このカセットIDに対応する「内側テープの熱収縮率(%)」と、「外側テープの熱収縮率(%)」と、「内側テープの厚さ(μm)」と、「外側テープの厚さ(μm)」とを読み出して、各々を内側テープ53の第2熱収縮率α2、外側テープであるフィルムテープ51の第1熱収縮率α1、内側テープ53のテープ厚さT2、フィルムテープ51のテープ厚さT1として順次、RAM75に記憶する。例えば、カセットIDが「A1」の場合には、CPU71は、内側テープ53の第2熱収縮率α2として「15%」、フィルムテープ51の第1熱収縮率α1として「9.3%」、内側テープ53のテープ厚さT2として「100μm」、フィルムテープ51のテープ厚さT1として「100μm」を順次、RAM75に記憶する。
【0055】
続いて、S113において、CPU71は、テープカセット21の「カセットタイプ」が、フィルムテープ51の印刷された印刷面に内側テープ53が積層される「ラミネートタイプ」か否かを判定する判定処理を実行する。具体的には、CPU71は、カセットIDをRAM75から読み出した後、当該カセットIDに対応する「カセットタイプ」をフラッシュメモリ74から読み出して「ラミネートタイプ」か否かを判定する。尚、各カセットIDに対応する「カセットタイプ」は、予めフラッシュメモリ74に記憶されている。
【0056】
そして、テープカセット21の「カセットタイプ」が、「ラミネートタイプ」でない、つまり、「ノンラミネートタイプ」である、と判定した場合には(S113:NO)、CPU71は、印刷モードを通常印刷に設定した後、後述のS115の処理に移行する。一方、テープカセット21の「カセットタイプ」が、「ラミネートタイプ」であると判定した場合には(S113:YES)、CPU71は、S114の処理に移行する。S114において、CPU71は、印刷モードを鏡面印刷に設定した後、S115の処理に移行する。
【0057】
ここで、ノンラミネートタイプのテープカセット21の一例について図11及び図12に基づいて説明する。図11及び図12に示すように、ノンラミネートタイプのテープカセット21の構成は、上記ラミネートタイプのテープカセット21の構成とほぼ同じであるが、内側テープスプール56には、フィルムテープ51の印刷面と反対側の面に内側テープ53が予め積層された印刷テープ95が、このフィルムテープ51を内側にして巻回されている。従って、外側テープスプール54は、テープカセット21内に収納されていない。また、7個の各カセット判別部25A〜25Gのうち、3個の各カセット判別部25A、25B、25Fが貫通して孔部が形成されている。
【0058】
そして、内側テープスプール56から引き出された印刷テープ95は、インクリボン52に重ね合わされて、インクリボン52と共に開口部22に入り、サーマルヘッド9及びプラテンローラ10の間を通過してフィルムテープ51の外側面に文字等が印刷される。その後、インクリボン52は、フィルムテープ51から引き離され、リボン巻取軸15により回転駆動されるリボン巻き取りスプール61に至り、このリボン巻き取りスプール61により巻き取られる。また、予めフィルムテープ51と内側テープ53とが積層されてなる印刷テープ95は、テープ駆動ローラ軸14によって回転駆動されるテープ送りローラ63とテープサブローラ11との間を通過し、印刷済みテープ28となって、テープ排出口27から排出される。
【0059】
続いて、図9に示すように、S115において、CPU71は、フィルムテープ51は長手方向に一軸延伸して成形されているため、テープ幅方向の熱収縮率は、小さいと判断して、RAM75から文字高さH1を読み出し、この文字高さH1を「1」で割り算した値を再度、文字高さH1に代入してRAM75に記憶する。また、CPU71は、RAM75から文字幅W1とフィルムテープ51の第1熱収縮率α1(例えば、12.4%、つまり、0.124である。)を読み出し、この文字幅W1を「1−第1熱収縮率α1」の値(例えば、1−0.124=0.876である。)で割り算した値を再度、文字幅W1に代入してRAM75に記憶する。
【0060】
尚、文字幅W1を「1−第1熱収縮率α1」の値で割り算した値と、文字幅W1を「1−第2熱収縮率α2」の値で割り算した値とを合計して、更に「2」で割り算した平均値を再度、文字幅W1に代入してRAM75に記憶するようにしてもよい。
そして、S116において、CPU71は、「ユーザ入力処理」のサブ処理を実行した後、S117の処理に移行する。
【0061】
ここで、「ユーザ入力処理」のサブ処理について図10に基づいて説明する。
図10に示すように、S211において、CPU71は、コード等の被巻着部材の外径をキーボード6から入力するように要求するメッセージを液晶ディスプレイ7に表示し、外径寸法が入力されるのを待つ(S211:NO)。そして、外径寸法がキーボード6から入力された場合には(S211:YES)、CPU71は、S212の処理に移行する。S212において、CPU71は、この外径寸法を被巻着部材の外径寸法D1としてRAM75に記憶する。
【0062】
続いて、S213において、CPU71は、印字済みテープ28を加熱して被巻着部材に巻着したときにおける、この印刷済みテープ28の長手方向両端部の重なり度合の設定、つまり、重なりの有・無を表す「1」又は「0」をキーボード6から入力するように要求するメッセージを液晶ディスプレイ7に表示し、「1」又は「0」が入力されるのを待つ(S213:NO)。
【0063】
そして、キーボード6から「重なり有り」を表す「1」、又は「重なり無し」を表す「0」が入力された場合には(S213:YES)、CPU71は、S214の処理に移行する。S214において、CPU71は、重なりフラグをRAM75から読み出し、重なり有りを表す「1」が入力された場合には、この重なりフラグをオンに設定して、RAM75に記憶し、重なり無しを表す「0」が入力された場合には、この重なりフラグをオフに設定してRAM75に記憶する。
【0064】
そして、S215において、CPU71は、印刷済みテープ28を自動的に1枚ずつ切断するか否かの設定、つまり、オートカット設定の要否を表す「1」又は「0」をキーボード6から入力するように要求するメッセージを液晶ディスプレイ7に表示し、「1」又は「0」が入力されるのを待つ(S215:NO)。そして、キーボード6から「オートカットに設定する」旨を表す「1」、又は「オートカットに設定しない」旨を表す「0」が入力された場合には(S215:YES)、CPU71は、S216の処理に移行する。
【0065】
S216において、CPU71は、オートカットフラグをRAM75から読み出し、オートカットに設定する旨を表す「1」が入力された場合には、このオートカットフラグをオンに設定して、RAM75に記憶し、オートカットに設定しない旨を表す「0」が入力された場合には、このオートカットフラグをオフに設定してRAM75に記憶する。その後、CPU71は、当該サブ処理を終了して、「印刷処理」のサブ処理に戻り、S117の処理に移行する。
【0066】
続いて、図9に示すように、S117において、CPU71は、重なりフラグをRAM75から読み出す。そして、CPU71は、この重なりフラグが「オフ」に設定されている場合には、「重なり無し」のテープ長さL1、つまり、加熱して被巻着部材に巻着したときに印刷済みテープ28の長手方向の両端間に約1mm程度の隙間を形成するテープ長さL1を算出してRAM75に記憶する。具体的には、CPU71は、RAM75から被巻着部材の外径寸法D1、フィルムテープ51の第1熱収縮率α1及びテープ厚さT1、内側テープ53の第2熱収縮率α2及びテープ厚さT2を読み出し、次式(1)でテープ長さL1(mm)を計算する。
【0067】
L1={π×(D1+T2)/(1-α2)+π×(D1+2×T2+T1)/(1−α1)−2}/2・・・・(1)
【0068】
従って、CPU71は、被巻着部材に巻着された印刷済みテープ28の「外側を構成するフィルムテープ51の熱収縮前のテープ長さ」と「内側を構成する内側テープ53の熱収縮前のテープ長さ」とを平均したテープ長さから隙間「1mm」を減算してテープ長さL1(mm)を算出する。また、CPU71は、この重なりフラグが「オン」に設定されている場合には、所定係数β(例えば、約半周重ね合わせる場合には、β=1.5である。)をROM73から読み出し、上記式(1)で算出した「重なり無し」のテープ長さL1に所定係数βを掛け算した長さを「テープ長さL1」に代入して、再度RAM75に記憶する。尚、所定係数βは、ROM73に予め記憶されている。また、巻着された印刷済みテープ28の長手方向両端部が重なる場合には、内側テープ53のベースフィルム53Aは透明である方が好ましい。
【0069】
そして、S118において、CPU71は、印刷データをテキストメモリ75Aから読み出すと共に、文字高さH1及び文字幅W1をRAM75から読み出し、この印刷データからドットパターン発生制御プログラムに基づいて文字高さH1及び文字幅W1の印刷用ドットパターンデータを生成して印刷バッファ75Bに記憶する。そして、CPU71は、駆動回路82を介してサーマルヘッド9を駆動して、印刷バッファ75Bに記憶された印刷用ドットパターンデータの印刷を行い、これと同期して駆動回路84を介してテープ送りモータ83を駆動して、インクリボン52、フィルムテープ51及び内側テープ53の搬送制御を行う。
【0070】
続いて、S119において、CPU71は、オートカットフラグをRAM75から読み出し、オートカットフラグが「オン」に設定されているか否か、つまり、オートカットに設定されているか否かを判定する判定処理を実行する。そして、オートカットに設定されていると判定した場合には(S119:YES)、CPU71は、S120の処理に移行する。S120において、CPU71は、テープ長さL1をRAM75から読み出し、印刷済みテープ28をテープ長さL1となるカッタユニット30による切断位置まで搬送するのを待つ(S120:NO)。
【0071】
そして、印刷済みテープ28をテープ長さL1となるカッタユニット30による切断位置まで搬送した場合には(S120:YES)、CPU71は、駆動回路84を介してテープ送りモータ83を停止すると共に、駆動回路86を介して切断用モータ85を駆動して可動刃30Bを作動させることによって、印刷済みテープ28をテープ長さL1に切断して、ラベル排出口17より排出する(S121)。その後、CPU71は、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、S11の処理に移行する。
【0072】
一方、上記S119でオートカットフラグが「オフ」に設定されている、つまり、オートカットに設定されていないと判定した場合には(S119:NO)、CPU71は、S122の処理に移行する。S122において、CPU71は、テープ長さL1をRAM75から読み出し、印刷済みテープ28のテープ長さL1となる位置、つまり、切断位置にテープ搬送方向に直交する直線状のカットマークを印刷する。
【0073】
続いて、S123において、CPU71は、テープ長さL1をRAM75から読み出し、印刷済みテープ28をテープ長さL1となるカッタユニット30による切断位置まで搬送するのを待つ(S123:NO)。このときの切断位置までの搬送量は、テープ印刷装置1における、サーマルヘッド9による印刷位置と、それより搬送方向下流側にあるカッタユニット30による切断位置との距離である。そして、印刷済みテープ28をテープ長さL1となるカッタユニット30による切断位置まで搬送した場合には(S123:YES)、CPU71は、駆動回路84を介してテープ送りモータ83を停止する(S124)。その後、CPU71は、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、S11の処理に移行する。
【0074】
ここで、印刷済みテープ28をコード等の被巻着部材97に巻回する一例を図13に基づいて説明する。
図13に示すように、先ず、印刷済みテープ28は、フィルムテープ51(外側テープ)を外側にし、内側テープ53を内側にして、当該印刷済みテープ28の長手方向が、円筒状又は円柱状等の被巻着部材97の軸方向に直交するように載置される。そして、フィルムテープ51及びベースフィルム53Aが一軸延伸される際にかけられた温度を超えるようにドライヤー等で当該印刷済みテープ28を加熱する。
【0075】
これにより、ベースフィルム53Aの第2熱収縮率α2は、フィルムテープ51の第1熱収縮率α1と比較して大きいため、内側テープ53の方が縮む割合が大きくなり、印刷済みテープ28は、長手方向両端間に所定隙間(例えば、隙間1mmである。)を形成して被巻着部材97に巻着される。尚、印刷済みテープ28は、上記S213において、「重なり無し」に設定されて作成されたものである。
【0076】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るテープ印刷装置1では、CPU71は、カセット収納部8に装着されたテープカセット21の種類等を識別するカセットIDを各カセットセンサP1〜P7から入力された信号により検出する。そして、CPU71は、当該カセットIDに対応するフィルムテープ51の第1熱収縮率α1及びテープ厚さT1、内側テープ53の第2熱収縮率α2及びテープ厚さT2をテープデータテーブル91から取得する。そして、キーボード6を介して被巻着部材の「外径寸法D1」と、巻着された印刷済みテープ28の長手方向両端部の「重なりの有・無」とを取得することによって、印刷済みテープの加熱前のテープ長さを自動的に設定することができる。
【0077】
従って、ユーザはキーボード6を介して被巻着部材の「外径寸法D1」と、巻着する印刷済みテープ28の長手方向両端部の「重なりの有・無」とを入力することによって、所望の重なり度合で被巻着部材に巻回できる印刷済みテープ28を容易に作成することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0078】
また、CPU71は、フィルムテープ51の第1熱収縮率α1と内側テープ53の第2熱収縮率α2とに基づいて文字高さH1及び文字幅W1を補正した補正文字サイズで印刷データをフィルムテープ51に印刷することができ、被巻着部材に加熱して巻回した印刷済みテープ28に印刷された文字等の高品質化を図ることができる。
【0079】
また、ユーザはキーボード6を介して「オートカットに設定する」旨の指示を入力することによって、カッタユニット30によって自動的に切断された所望の重なり度合で被巻着部材に巻着できる印刷済みテープ28を容易に作成することができる。また、ユーザがキーボード6を介して「オートカットに設定しない」旨の指示を入力した場合には、所望の重なり度合で被巻着部材に巻着できる印刷済みテープ28の切断位置にカットマークが印刷される。これにより、ユーザは鋏等によってカットマークの位置で印刷済みテープ28を切断することによって、所望の重なり度合で被巻着部材に巻回できる印刷済みテープ28を容易に作成することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0080】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【0081】
(A)例えば、カッタユニット30が設けられていない場合には、CPU71は、上記S118の処理を実行後、S119〜S121の処理を実行することなく、S122以降の処理を実行するようにしてもよい。つまり、印刷済みテープ28の切断位置に常にカットマークを印刷するようにしてもよい。これにより、ユーザは鋏等によってカットマークの位置で印刷済みテープ28を切断することによって、所望の重なり度合で被巻着部材に巻回できる印刷済みテープ28を容易に作成することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0082】
(B)また、例えば、印刷済みテープ28が加熱されて被巻着部材に巻着された場合に、長手方向両端部が重なるときには、内側テープ53のベースフィルム53Aを透明にするようにしてもよい。これにより、重なった部分に印刷された文字等を確実に視認することができる。
【0083】
(C)また、例えば、上記印刷テープ95のフィルムテープ51及び内側テープ53のベースフィルム53Aを透明にすることによって、この印刷テープ95の内側テープ53を内側にして内側テープスプール56に巻回するようにしてもよい。そして、内側テープスプール56から引き出された印刷テープ95は、インクリボン52に重ね合わされて、インクリボン52と共に開口部22に入り、サーマルヘッド9及びプラテンローラ10の間を通過して、ベースフィルム53Aの外側面に印刷データが印刷されるようにしてもよい。これにより、印刷済みテープ28を被巻着部材に巻着した場合に、印刷された文字等を確実に視認することができる。
【0084】
(D)また、例えば、フィルムテープ51の第1熱収縮率α1及びテープ厚さT1、内側テープ53の第2熱収縮率α2及びテープ厚さT2をキーボード6を介して入力するようにしてもよい。これにより、各カセットセンサP1〜P7を設ける必要がないため、テープ印刷装置1の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 テープ印刷装置
6 キーボード
7 液晶ディスプレイ(LCD)
8 カセット収納部
9 サーマルヘッド
21 テープカセット
25A〜25G カセット判別部
28 印刷済みテープ
30 カッタユニット
51 フィルムテープ
52 インクリボン
53 内側テープ
53A ベースフィルム
53B 粘着層
71 CPU
73 ROM
74 フラッシュメモリ
75 RAM
83 テープ送りモータ
85 切断用モータ
91 テープデータテーブル
95 印刷テープ
P1〜P7 カセットセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープカセットが着脱可能に装着されるカセット収納部と、前記テープカセットに収納された長尺状のテープを搬送するためのテープ搬送手段と、前記テープに印刷する印刷手段と、前記テープ搬送手段によって搬送された印刷済みテープを切断する切断手段と、を備えたテープ印刷装置において、
前記印刷済みテープは、長手方向に一軸延伸して成形された第1熱収縮率の外側テープと、長手方向に一軸延伸して成形された前記第1熱収縮率よりも大きい第2熱収縮率の内側テープとが、その延伸方向が同一方向になるように積層されており、加熱により内側テープを内側にして巻き付くように変形し、
前記印刷済みテープを加熱して巻着する被巻着部材の外径を取得する外径取得手段と、
前記印刷済みテープの前記第1熱収縮率と前記第2熱収縮率を取得する熱収縮率取得手段と、
前記外径取得手段を介して取得した前記被巻着部材の外径と前記熱収縮率取得手段を介して取得した前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率とに基づいて、該被巻着部材に巻着する加熱前の前記印刷済みテープのテープ長さを算出するテープ長算出手段と、
前記印刷済みテープを前記テープ長算出手段によって算出したテープ長さになるように前記切断手段による切断位置まで搬送した後、前記テープ搬送手段を停止するように制御する搬送制御手段と、
を備えたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項2】
前記カセット収納部に装着されたテープカセットの種類を検出する種類検出手段と、
前記テープカセットの種類に対応する前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率を記憶する記憶手段と、
を備え、
前記熱収縮率取得手段は、前記種類検出手段を介して検出されたテープカセットの種類に対応する前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率を前記記憶手段から取得することを特徴とする請求項1に記載のテープ印刷装置。
【請求項3】
加熱して巻着された前記印刷済みテープの長手方向両端部の重なり度合を取得する重なり度合取得手段を備え、
前記テープ長算出手段は、前記外径取得手段を介して取得した前記被巻着部材の外径と前記熱収縮率取得手段を介して取得した前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率と、前記重なり度合取得手段を介して取得した前記重なり度合とに基づいて、前記被巻着部材に巻着する加熱前の前記印刷済みテープのテープ長さを算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープ印刷装置。
【請求項4】
前記テープに印刷する印刷データと、当該印刷データの文字サイズとを取得する印刷情報取得手段と、
前記熱収縮率取得手段を介して取得した前記第1熱収縮率及び前記第2熱収縮率と前記印刷情報取得手段を介して取得した前記文字サイズとに基づいて、印刷済みテープを加熱した後に該文字サイズになるように補正した前記印刷データの補正文字サイズを算出する補正文字サイズ算出手段と、
前記印刷手段を介して前記補正文字サイズでテープに印刷するように制御する印刷制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテープ印刷装置。
【請求項5】
前記切断手段を介して前記印刷済みテープを自動的に切断するか否かを表す切断情報を取得する切断情報取得手段と、
前記切断情報取得手段を介して取得した前記切断情報が前記印刷済みテープを自動的に切断する旨を表す場合には、前記切断位置に搬送された前記印刷済みテープを前記切断手段を介して切断するように制御し、
該切断情報取得手段を介して取得した前記切断情報が前記印刷済みテープを自動的に切断しない旨を表す場合には、前記テープ長算出手段によって算出したテープ長さの位置にカットマークを印刷すると共に、前記切断位置に搬送された前記印刷済みテープを前記切断手段を介して切断しないように制御する切断制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のテープ印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−75473(P2013−75473A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217796(P2011−217796)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】