説明

テープ巻き取り装置

【課題】巻き層内にたるみや厚さの不同のないコイルを巻けるテープ巻き取り装置を提供する。
【解決手段】タレット13に複数の巻き取り軸20を回転自在に支持させ、巻き取り軸20が順次所定の作業ステーションA、B、Cに移動するよう、タレット13をタレット回転モータ14で回転させる。タレット13の外に設けたモータ70、71、72を巻き取り軸20と1対1で対応させ、対応する巻き取り軸20を他の巻き取り軸20とは独立して回転させる。制御装置130は、コイル120に対するテープ80、81、82、83の進入角が一定になるよう、コイル120の直径変化に対応してタレット13の角度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンデンサや二次電池の製造にあたり、テープをコイルの形に巻き取るのに用いられるテープ巻き取り装置に関する。ここでテープとは、材質の如何を問わず、材料を薄く帯状に形成したものをいい、例えばコンデンサにおける金属箔や電解紙、二次電池における極板やセパレータ等がこれにあたる。
【背景技術】
【0002】
上記のようなテープのコイル巻き作業を能率的に行うため、これまでにも様々な装置が提案されている。例えば特許文献1には、間欠的に回転する巻取り軸ホルダに複数の巻取り軸を配設し、巻取り軸を巻取り位置、テーピング位置及び取出し位置へ順次間欠回転させて移動させながら、テーピング及び取出しの作業を行うコンデンサ素子巻取り装置であって、各々の巻取り軸に隔離材料、陽極箔及び陰極箔を巻取るための巻取りモータ、巻取られた隔離材料、陽極箔及び陰極箔をテープ止めするテーピングモータ、コンデンサ素子の取出しのために巻取り軸を軸方向に移動させる巻取り軸移動モータの夫々独立した駆動装置を配設し、更に巻取り軸ホルダを所定の角度ずつ間欠回転させる間欠回転モータを設けたもの(「従来技術1」)が開示されている。
【0003】
上記構成によると機構が極めて複雑で巻取り軸の駆動装置が大型となるため、同じ特許文献1には装置の大幅な簡素化、コンパクト化を計ったもの(「従来技術2」)が開示されている。すなわち、第1駆動装置により回転させられる太陽歯車の回転中心を中心として間欠回転する巻取り軸ホルダを配設し、該巻取り軸ホルダに回動自在に配設した複数の巻取り軸に太陽歯車と噛合する遊星歯車を夫々固着して遊星歯車機構を構成することにより、太陽歯車を回転させることによって複数の巻取り軸を同一方向に同期させて回転させることができるようにすることであり、またこれによって従来各々の巻取り軸に必要とした駆動装置を不要化し、1個の駆動装置だけで複数の巻取り軸を同時に回転させることができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−315629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、巻き層内にたるみや厚さの不同のないコイルを巻けるテープ巻き取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るテープ巻き取り装置は、タレットと、テープをコイルの形に巻き取るべく、前記タレットに回転自在に支持された巻き取り軸と、前記コイルに対する前記テープの進入角度が一定になるよう、コイルの直径変化に対応して前記タレットの角度を制御する制御装置と、を備えることを特徴としている。
【0007】
この構成によると、コイルに対するテープの進入角度が一定となり、テープ進入角度が変化することにより、巻き層内でたるみや厚さの不同が生じるのを防ぐことができる。特に、種類の異なるテープを重ねて巻いて行く場合に効果が大きい。
【0008】
また本発明は、上記構成のテープ巻き取り装置において、前記巻き取り軸は複数存在し、前記タレットは、前記複数の巻き取り軸が順次所定の作業ステーションに移動するよう、タレット回転モータで回転せしめられるとともに、前記タレットの外に、前記巻き取り軸と1対1対応で設けられ、対応する巻き取り軸を他の巻き取り軸とは独立に回転させる巻き取り軸回転モータを備えることを特徴としている。
【0009】
この構成によると、巻き取り軸と1対1で対応する巻き取り軸回転モータにより、各巻き取り軸を他の巻き取り軸とは独立に回転させるので、巻き取り、テーピング、取り出しといった、回転速度も回転回数も、またスタートとストップのタイミングも異なる複数の作業を同時進行的に遂行することができる。巻き取り軸回転モータはタレットの外に配置するので、タレットをコンパクトにでき、またタレット構造を複雑化しなくて済む。
【0010】
また本発明は、上記構成のテープ巻き取り装置において、前記巻き取り軸の各々にピニオンを設けるとともに、これらのピニオンに1対1対応で連結する複数の内歯車を前記タレットに支持させ、これらの内歯車に、前記巻き取り軸回転モータを1対1対応で連結したことを特徴としている。
【0011】
この構成によると、巻き取り軸の数が増えたとしても、ピニオンと内歯車の組み合わせの数を増やせば他の巻き取り軸から独立して駆動することが可能となる。ピニオンと内歯車の組み合わせの増設は、軸方向に位置をずらして配置して行くことにより実現でき、容易である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、コイルに対するテープ進入角度が変化して巻き層内でたるみや厚さの不同が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明テープ巻き取り装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】タレット部の拡大断面図である。
【図3】タレット部に動力を供給するモータの配置図にして、タレット部を背面から見た状態に相当するものである。
【図4】しごき部材の配置を説明する部分正面図である。
【図5】マンドレル受けの配置を説明する部分正面図である。
【図6】タレット部正面に配置された構成要素の動作について説明する、第1の動作説明図である。
【図7】同じく第2の動作説明図である。
【図8】同じく第3の動作説明図である。
【図9】同じく第4の動作説明図である。
【図10】同じく第5の動作説明図である。
【図11】同じく第6の動作説明図である。
【図12】同じく第7の動作説明図である。
【図13】同じく第8の動作説明図である。
【図14】同じく第9の動作説明図である。
【図15】同じく第10の動作説明図である。
【図16】同じく第11の動作説明図である。
【図17】コイルの巻き取り開始状況を説明する、第1の部分拡大正面図である。
【図18】同じく第2の部分拡大正面図である。
【図19】同じく第3の部分拡大正面図である。
【図20】制御システム図である。
【図21】コイルの直径変化に対応するタレットの角度変化に関する制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図に基づき説明する。図1はテープ巻き取り装置1の要部を垂直断面図の形で表したものである。10はフレーム、11はフレーム10に固定された軸受ハウジングである。フレーム10は垂直壁の一部のみ示す。軸受ハウジング11は1対の軸受12により、タレット13を水平軸まわりに回転自在に支持する。タレット13は計3本の巻き取り軸20を各々回転自在に支持する。各巻き取り軸20はタレット13の回転中心と中心を同じくする円周上に120゜間隔で配置され、その軸線の方向はタレット13の軸線の方向と平行である。
【0015】
14はタレット13の外に配置したタレット回転モータで、減速装置15に連結している。減速装置15の出力軸には歯車16が固定され、この歯車16がタレット13に一体形設した歯車17にかみ合う。タレット回転モータ14はこの減速装置15と歯車16を介し、タレット13に所要の回転を与える。タレット回転モータ14と減速装置15は、図示しない取付構造を介してフレーム10に固定されている。なお今後、歯車16の存在する側をタレット13の「背面」、その反対側をタレット13の「正面」として説明を続ける。
【0016】
巻き取り軸20の構造を図2により説明する。巻き取り軸20は複数の部品により構成されるが、その主体となるものはタレット13に対し回転自在且つ軸方向移動不能に取り付けられた中空軸21と、中空軸21の内部に配置された心軸22である。心軸22は中空軸21にキー23を介して結合しており、中空軸21と一体的に回転しつつも、一定範囲で軸方向の相対移動が可能である。
【0017】
タレット13の正面側において、中空軸21はタレット13の内部に留まるが、心軸22の方はタレット13から突出し、ここにコレットチャック24が取り付けられている。コレットチャック24はテープを巻き付けるマンドレル25をつかんで固定するためのものである。マンドレル25の先端には、図18に示すように、テープを受け入れるスリット26が形設されている。スリット26はマンドレル25の端面から所定の深さ切り込まれている。その深さは、扱うテープの幅によって決まる。
【0018】
タレット13の背面側において、心軸22は中空軸21とともにタレット13から突出しており、その端近くには、軸方向に間隔を置いて2本の環状の溝27、28が形設される。これに対応して、中空軸21の端にはリテーナボックス29が取り付けられる。リテーナボックス29の中には鋼球30と圧縮コイルばね31が封入されている。鋼球30は圧縮コイルばね31によって心軸22に押しつけられており、心軸22が軸方向に移動したとき、いずれかのストロークエンドで溝27ないし28に落ち込む。溝27ないし28に落ち込んだ鋼球30は心軸22をその位置に保持する。鋼球30および圧縮コイルばね31の対は、心軸22を挟んで向き合うよう、1対以上配置される。
【0019】
心軸22の端はリテーナボックス29の外側に延び出しており、ここにディスク32が固定される。タレット13の外には、ディスク32に対応してレバー33、34が配置されている(図1参照)。レバー33がディスク32を押せば、心軸22は鋼球30が溝27に落ち込むところまで、図1、2において右方向にスライドする。この時、マンドレル25は突き出した状態になる。レバー34がディスク32を押せば、心軸22は鋼球30が溝28に落ち込むところまで、図1、2において左の方向にスライドし、マンドレル25は引っ込んだ状態になる。レバー33、34は、巻き取り軸20の停止位置(作業ステーション)のうち、それを必要とする箇所に配置される。どの作業ステーションにどちらのレバーが配置されるかは、後で説明する。
【0020】
40はタレット13に挿入されたステーシャフトである。ステーシャフト40は巻き取り軸20が配置されているのと同一の円周上に、巻き取り軸20と巻き取り軸20の中間に位置する如く、120゜間隔で計3本配置されている。ステーシャフト40の軸線もタレット13の軸線と平行である。ステーシャフト40は中間に大径部41を有し、この大径部41がタレット13の背面に当たるところまで、タレット13に背面側から挿入される。ステーシャフト40の先端はタレット13の正面に重ねて配置された円盤42を貫通して突出し、この先端にナット43を螺合して締め付けることにより、円盤42がタレット13に固定されるとともに、ステーシャフト40自身もタレット13に固定される。
【0021】
円盤42の中心からは支軸44が突出する。支軸44の中心線はタレット13の中心線に一致する。支軸44の中間部にはしごき部材45が取り付けられる。図4に見られるように、しごき部材45は計3個が支軸44に対し120゜間隔で放射状に固定されており、各1本ずつのマンドレル25を軸方向にスライド自在に貫通させている。
【0022】
支軸44の先端にはマンドレル受け46が取り付けられる。マンドレル受け46はマンドレル25の先端と向かい合うように配置された軸状の部材で、端面にはマンドレル25の先端を受け入れる凹部(図示せず)が形成されている。マンドレル受け46は支軸44に固定されたマンドレル受けベース47に回転自在且つ軸方向移動不能に支持される。マンドレル受けベース47は、図5に見られるように120゜間隔で計3本の腕を有し、各腕に1本ずつのマンドレル受け46を支持している。
【0023】
タレット13の背面側において、ステーシャフト40は大径部41よりも更に外側に突き出しており、ここに3個の円盤50、51、52を支持する。円盤50、51、52は大径部41の側からこの順で、ステーシャフト40の軸線方向に沿って1列に並ぶ。円盤50と51の間、および円盤51と52の間にはそれぞれスペーサ53が配置される。スペーサ53は大径部41とほぼ同じ直径の円筒形部材であって、各ステーシャフト40の外側に嵌める形で取り付けられている。タレット13と円盤50の間においては、ステーシャフト40の大径部41がスペーサの役割を果たす。
【0024】
ステーシャフト40の端は円盤52の外側に突出しており、ここにナット54を螺合し締め付けることにより、円盤50、51、52およびスペーサ53はステーシャフト40に、ひいてはタレット13に固定される。円盤50、51、52は各々中空軸21を貫通させる透孔を有している。円盤52は中空軸21を支持する軸受55を備え、この軸受55と、タレット13の側に設けられた軸受56とにより、中空軸21は回転自在に支持されるものである。
【0025】
3本の中空軸21は各々外側にピニオン60を一体形設している。ピニオン60の位置は中空軸21によって異なり、1本についてはタレット13と円盤50の間の位置に設けられ、他の1本については円盤50、51の間の位置に設けられ、残る1本については円盤51、52の間の位置に設けられている。これらのピニオン60の1個ずつに、軸方向に1列に並ぶようタレット13に支持された内歯車61、62、63が1対1対応で連結する。
【0026】
内歯車61、62、63を回転自在に支持するため、計6個の軸受64が用意される。タレット13は軸受64を1個保持し、円盤50と51は軸受64を2個保持し、円盤52は軸受64を1個保持する。内歯車61はタレット13の軸受64と、円盤50の保持する2個の軸受64のうちタレット13に近い方のものとにより支持される。内歯車62は円盤50の保持する残り1個の軸受64と、円盤51の保持する2個の軸受64のうちタレット13に近い方のものとにより支持される。内歯車63は円盤51の保持する残り1個の軸受64と、円盤52の保持する軸受64とにより支持される。このように、内歯車61、62、63は互いに独立して支持される。
【0027】
内歯車61、62、63は各々、ピニオン60にかみ合う歯車部65を内面に有している。歯車部65は大径部41とスペーサ53がタレット13、円盤50、円盤51、円盤52の間に作り出した隙間を通ってピニオン60に達する。内歯車61、62、63はタイミングベルトのプーリも兼ねるものであり、タイミングベルト用の歯形66が外面に形設されている。
【0028】
70、71、72はタレット13の外に配置した巻き取り軸回転モータである。各モータの軸端にはタイミングプーリ73が取り付けてあり、このタイミングプーリ73と内歯車とにタイミングベルト74を巻き掛けることにより、巻き取り軸回転モータ70は内歯車61と1対1対応で連結し、巻き取り軸回転モータ71は内歯車62と1対1対応で連結し、巻き取り軸回転モータ72は内歯車63と1対1対応で連結する。巻き取り軸回転モータ70、71、72は、図示しない取付構造を介してフレーム10に固定される。なお巻き取り軸回転モータ70、71、72も、タレット回転モータ14も、共にサーボモータである。
【0029】
このテープ巻き取り装置1はコンデンサの芯を巻くべく設計されており、タレット13の正面側に、図6に示すような様々な構成要素を配置している。80、81、82、83はコンデンサの芯を構成するテープであって、80、81は電解紙テープ、82はマイナス箔テープ、83はプラス箔テープである。これらは各々、図示しないテープロールから引き出され、多数のローラを主な構成要素として構成される図示しない誘導路を経由して図6の位置へと導かれている。
【0030】
84、85はテープ80、81、82、83を積層したものを挟みつけるピンチローラで、いずれも図示しない上下動部材に取り付けられ、互いに独立して上下動が可能である。ピンチローラ85の軸には図示しない一方向クラッチが連結されており、ピンチローラ85は図6において反時計回転の方向、すなわちテープをマンドレル25の方向に送る向きには回転できるが、その逆には回転しないようになっている。
【0031】
86はマイナス箔テープ82のガイドローラ、87はプラス箔テープ83のガイドローラである。ガイドローラ86は位置不動であるが、ガイドローラ87はピンチローラ85を支持する上下動部材に取り付けられ、ピンチローラ85と共に上下する。
【0032】
88はピンチローラ85と共通の上下動部材に、図示しない角度変更機構を介して取り付けられたテープガイドである。テープガイド88の上面には凹状に湾曲したガイド面89が形設されており、このガイド面89でプラス箔テープ83をすくい上げる。テープガイド88は垂直面内における傾きを変えられるようになっており、後で説明するように、コイル巻き工程の所定タイミングでその傾きを変える。
【0033】
90、91は、マンドレル25を中にしてピンチローラ84、85と向かい合うように配置されたチャック部材である。チャック部材84、85は電解紙テープ80、81だけを積層したもの、または電解紙テープ80、81に加えてマイナス箔テープ82とプラス箔テープ83を積層したもの(以後これらを総称してテープ積層体105という)を挟むためのものであって、上下方向において互いに接近したり離れたりする。
【0034】
上方のチャック部材90はテープ積層体105のカッタ部材を兼ねる。92はチャック部材90と協同してテープ積層体105を切断するカッタ部材で、チャック部材91の、ピンチローラ84、85と向かい合っていない方の側面に重ねて配置され、チャック部材91とは別個に上下動する。なおチャック部材90もカッタ部材92も、テープ積層体105を挟みつけて切断する箇所には超硬合金等からなるカッタチップが取り付けられている。
【0035】
93、94はマイナス箔テープ82用のクランプ部材、95、96はプラス箔
テープ83用のクランプ部材である。クランプ部材93、94は時に応じてマイナス箔テープ82を挟みつけ、挟んだ状態のまま前進する。クランプ部材95、96も時に応じてプラス箔テープ83を挟みつけ、挟んだ状態のまま前進する。なお、クランプ部材の対にあって下側に位置するクランプ部材94、96は先端にテープのガイドローラ97を有する。
【0036】
100、101はマイナス箔テープ82用のカッタ部材、102、103はプラス箔テープ83用のカッタ部材である。カッタ部材100、101はマイナス箔テープ82がクランプ部材93、94から延び出したところでこれを切断する。カッタ部材102、103はプラス箔テープ83がクランプ部材95、96から延び出したところでこれを切断する。いずれのカッタ部材も、切断に関わる箇所には超硬合金等からなるカッタチップが取り付けられている。
【0037】
110はプラス箔テープ83の誘導路中に配置された基準エンコーダである。基準エンコーダ110は図示しないローラをプラス箔テープ83にスリップすることのないよう接触させ、プラス箔テープ83の走行長さを計測する。
【0038】
図6において、マンドレル25はA、B、Cと符号を付した3箇所の作業ステーションに順次移動する。120はテープ積層体105を巻き上げたコイルを表す。また図16において、121は作業ステーションBでコイル120に対し粘着テープによるゆるみ止めを施すテーピング装置、122は作業ステーションCでマンドレル25からコイル120を取り外す取り出しアームである。
【0039】
図20にテープ巻き取り装置1の制御システムの一部を示す。130は演算機能、記憶機能等、テープ巻き取り装置1の制御に必要な機能を備えた制御装置である。タレット回転モータ14と巻き取り軸回転モータ70、71、72の各ドライバ131、132、133、134と基準エンコーダ110が制御装置130の制御ライン135に接続されている。制御装置130の制御対象はこれに留まるものではなく、レバー33、34の動力源、また図6に示す各要素の動力源も制御装置130により制御される。
【0040】
次にテープ巻き取り装置1の動作を、主に図6〜16を参照しつつ説明する。
【0041】
図6においては、電解紙テープ80、81からなるテープ積層体105の端がチャック部材90、91に挟みつけられ、そこから少し離れた箇所でもピンチローラ84、85に挟みつけられている。テープガイド88は、案内面89が左下がりとなる、非ガイド姿勢をとっている。作業ステーションAに位置するマンドレル25は突出状態にあり、スリット26の中にテープ80、81を通している。この時のマンドレル25の状態は図18に対応する。作業ステーションBに位置するマンドレル25は前のサイクルで巻いたコイル120を保持している。
【0042】
この時、クランプ部材93、94はマイナス箔テープ82をクランプし、クランプ部材95、96はプラス箔テープ83をクランプし、いずれも後退位置にある。図示しないが、マイナス箔テープ82、プラス箔テープ83とも、コンデンサ端子となる金属製タブを所定間隔で取り付けられているものである。
【0043】
続いて図7の状態に移行する。ここではピンチローラ84が真上に、ピンチローラ85が斜め下方に、それぞれ移動する。ガイドローラ87とテープガイド88もピンチローラ85と共に斜め下方に移動する。これで、ピンチローラ84、85の間にマイナス箔テープ82とプラス箔テープ83を挿入できる態勢となる。これに対応してクランプ部材93、94、95、96が前進を開始し、マイナス箔テープ82の先端がガイドローラ86の上に載り、プラス箔テープ83の先端がガイドローラ87の上に載る。
【0044】
図8は図7から更に進んだ状態である。ここではクランプ部材93、94、95、96がストロークリミットまで前進しており、マイナス箔テープ82の先端は電解紙テープ80、81の間にあって、プラス箔テープ83の先端は電解紙テープ81の下にあって、いずれもピンチローラ84、85の間に入り込んでいる。マイナス箔テープ82とプラス箔テープ83を挟みつけるべく、ピンチローラ84は真下へ、ピンチローラ85は斜め上方へと移動を開始している。また作業ステーションAのマンドレル25は、電解紙テープ80、81からなるテープ積層体105を巻き付けるべく、反時計方向に回転を始めている。この時のマンドレル25の状態は図19に対応する。
【0045】
次に図9の状態に入る。ここではクランプ部材93、94が互いに離れてマイナス箔テープ82のクランプを解除し、クランプ部材95、96が互いに離れてプラス箔テープ83のクランプを解除する。作業ステーションAのマンドレル25は、チャック部材90、91に挟まれていた部分も含め、電解紙テープ80、81からなるテープ積層体105を一巻き以上巻き付け終わっており、チャック部材90、91はテープ積層体105をマンドレル25に委ね、チャック部材90は上へ、チャック部材91はカッタ部材92と共に下へと、それぞれ移動を開始する。
【0046】
図9の状態において、ピンチローラ84、85は電解紙テープ80、81とマイナス箔テープ82、プラス箔テープ83からなるテープ積層体105を挟みつけている。テープガイド88はガイド姿勢へと起き上がり、プラス箔テープ83が電解紙テープ81の下面から離れようとするのを防ぐ。
【0047】
図10は図9から少し進んだ状態である。作業ステーションAのマンドレル25が引き続き回転し、テープ80、81、82、83からなるテープ積層体105はピンチローラ84、85の間から引き出され、コイルの形に巻かれて行く。
【0048】
次に図11の状態に移る。ここではまず、クランプ部材93、94、95、96が後退する。この時、マイナス箔テープ82がクランプ部材93ないし94に、またプラス箔テープ83がクランプ部材95ないし96に、それぞれ接触することによる摩擦で、マイナス箔テープ82とプラス箔テープ83にはこれを引き戻そうとする張力が作用するが、前述の如くピンチローラ85には一方向クラッチが連結され、逆転しないようになっている上、既にマンドレル25に巻き付いているので、テープ積層体105が引き戻されることはない。またこの時、チャック部材90は上昇限、チャック部材91とカッタ部材92は下降限に達しており、直径の膨れ上がったコイル120を通せるだけの間隙が生じている。
【0049】
図10から図11にかけて、タレット13は次のような動作を行う。すなわち、コイル120の直径が大きくなるにつれ、タレット13は時計方向に回転し、コイル120に対するテープ積層体105の進入角を一定に、実施形態で言えばほぼ水平に、保つようにする。この動作はタレット回転モータ14の制御を通じて行われる。この制御につき、図21に基づき説明する。
【0050】
特定の型式のコンデンサにつき巻き取り作業を開始する際、まずステップS201において、テープ積層体105の巻き取り長さと、コイル120の巻き取り径との関係を制御装置130で計算する。コンデンサの種類によってテープ積層体105の厚さが異なるので、計算結果もコンデンサの種類によって異なるものとなる。
【0051】
続いてステップS202では、コイル120の巻き取り径と、タレット13の角度との関係を計算する。
【0052】
ステップS202の計算が済んだら、ステップS203で基準エンコーダ110の読み取り値をクリアしてゼロとする。
【0053】
続いてステップS204で、作業ステーションAに位置するマンドレル25の回転を開始する。これは、そのマンドレル25を取り付けている巻き取り軸20に、巻き取り軸回転モータ70、71、72のいずれかが内歯車61、62、63のいずれかを介して回転を発生させることにより、達成される。
【0054】
ステップS205では基準エンコーダ110の計測値を読み取る。プラス箔テープ83の走行量はテープ積層体105の走行量に等しく、従って基準エンコーダ110で計測した値がテープ積層体105の走行量ということになる。
【0055】
ステップS206ではテープ積層体105の走行量すなわちコイル120への巻き取り量からコイル120の巻き取り径を計算する。
【0056】
ステップS207では、コイル120へのテープ積層体105の進入角を一定にするタレット13の角度を計算する。
【0057】
ステップS208ではタレット回転モータ14のドライバ131に制御装置130から命令を出し、ステップS207で計算した角度にタレット13を移動させる。
【0058】
ステップS209ではコイル120の巻き取りが終了したかどうかをチェックし、未了であればステップS205に戻る。
【0059】
ステップS205からS209までの作業を一定の分配周期毎に繰り返す。分配周期は、ミリセカンド単位の短い時間とする。
【0060】
上記のように、基準エンコーダ110の読み取り値を介してコイル120の巻き取り径をチェックし、それに対応してタレット13の角度を変えつつ、コイル120の巻き取りを進めて行く。
【0061】
図12はコイル120が所定の巻き取り径まで巻き取られた状態を示し、この時点でマンドレル25は回転を停止する。この時点に至る前に、ピンチローラ85、ガイドローラ87、テープガイド88は下降し、テープガイド88は同時に、非ガイド姿勢へと傾きを変えている。
【0062】
続いて図13の状態に移る。ここではクランプ部材93、94が接近してマイナス箔テープ82をクランプし、クランプ部材95、96が接近してプラス箔テープ83をクランプするとともに、カッタ部材100、101が接近してマイナス箔テープ82を挟み切り、カッタ部材102、103が接近してプラス箔テープ83を挟み切る。
【0063】
次に図14の状態に移る。クランプ部材93、94はマイナス箔テープ82の、クランプ部材95、96はプラス箔テープ83の、それぞれクランプを続けているが、カッタ部材100と101、カッタ部材102と103は既に離れて通常状態に戻っている。ここでタレット13が回転を開始し、作業ステーションAのコイル120を作業ステーションBへ、作業ステーションBのコイル120を作業ステーションCへ、作業ステーションCのマンドレル25を作業ステーションAへとへと向かわせる。
【0064】
作業ステーションCのマンドレル25を作業ステーションAに移動させるにあたり、このマンドレル25は作業ステーションCにおいて、図1のレバー34で引っ込められているので、移動途中でチャック部材90に当たることはない。後に、マンドレル25は作業ステーションAに到着するのであるが、その際テープ積層体105に干渉することもない。
【0065】
作業ステーションAにあったコイル120が作業ステーションBに向かう途中で、図15のようにチャック部材90が下降し、チャック部材91が上昇する。これによりテープ積層体105を挟みつけるとともに、カッタ部材92が上昇し、チャック部材90との間でテープ積層体105を挟み切る。
【0066】
上記切断により、テープ積層体105はコイル120に巻かれてしまう部分とチャック部材90、91に挟まれて後に残る部分とに分かれる。マイナス箔テープ82とプラス箔テープ83にあっては、図13において切断された時の切断端が完全にコイル120に巻き込まれ、しかもその切断端を電解紙テープ80、81が僅かに包むことになるよう、図13における切断位置の調整が行われる。
【0067】
次に図16の状態に移る。ここではピンチローラ84、85がテープ積層体105を挟みつける。
【0068】
作業ステーションAにあったコイル120は作業ステーションBに到着する。これを支えるマンドレル25は図15の位置から作業ステーションBに移動する過程で、あるいは作業ステーションBに到着してからも、回転を行い、テープ積層体105を完全にコイル120に巻き付ける。このコイル120にテーピング装置121が接近し、粘着テープによりテープ積層体105の端をとめる。
【0069】
作業ステーションBにあったコイル120は作業ステーションCに到着する。このコイル120に取り出しアーム122が接近し、ハンド部でコイルをチャッキングする。同時に、作業ステーションCに配置されたレバー34(図1参照)が巻き取り軸20をスライドさせ、マンドレル25を、その先端がしごき部材45の中に隠れるところまで引っ込める。しごき部材45があるため、コイル120はマンドレル25に追随して移動することができず、これによりコイル120はマンドレル25から分離し、取り出しアーム122のハンド部の中に残る。取り出しアーム122はコイル120をタレット13のところから運び出し、図示しないパレットに整列して置く。
【0070】
作業ステーションCにあったマンドレル25は作業ステーションAに到着する。この状態は図17に対応するものである。図17においては、マンドレル25が引っ込み位置にあることを強調するため、マンドレル25を図示していない。マンドレル25の到着後、作業ステーションAに配置されたレバー33(図1参照)が巻き取り軸20をスライドさせ、マンドレル25を突出位置に押し出す。するとマンドレル25は、図18のように、スリット26の中にテープ積層体105をくわえる形になる。この時、スリット26の角度がテープ積層体105の張られた方向と一致していないといけないので、巻き取り軸回転モータ70、71、72にはエンコーダを組み合わせ、巻き取り軸20の角度を知り、またそれを制御できるようになっている。
【0071】
この時、マンドレル25の先端はマンドレル受け46の端面凹部に嵌合する。これにより、マンドレル25の先端のぶれがなくなり、スムーズにコイル120を巻く態勢が整う。
【0072】
以上をもって図6の状態に復帰し、これまで説明してきたサイクルが繰り返されることになる。
【0073】
作業ステーションA、B、Cに位置するマンドレル25の動きに着目すると、作業ステーションAのマンドレル25はテープ積層体105の端を巻き付けた後、高速回転してコイル120を巻いて行く。作業ステーションBのマンドレル25はテープ積層体105の端を巻き付けた後、テーピング装置121に合わせた回転を行う。作業ステーションCのマンドレル25は回転しない。このように、場所と作業段階によって巻き取り軸20に求められる回転速度と回転回数は全く異なる訳であるが、本発明の構成では巻き取り軸20を互いに独立して回転させることができるので、異なる作業を同時進行的に遂行することが可能となる。
【0074】
便宜上、テーピング装置121と取り出しアーム122を図16にのみ図示したが、これらは図6から図10までの状態、すなわちタレット13が動いていない局面であればいつでも出現させることができる。またその作業も、一つの図で切り取った時間枠の中で完了させなければならないということはなく、複数の図にまたがる時間枠の中で遂行させることができる。
【0075】
また、図示の実施形態では巻き取り軸20の数を3本としたが、これを2本とする構成、あるいは4本以上とする構成も可能である。
【0076】
また、巻き取り軸回転モータ70、71、72から内歯車61、62、63への回転伝達にタイミングベルト74を用いたが、これを他の種類の回転伝達手段であってタイミングベルト同様にスリップのない動力伝達が可能なもの、例えば歯車やチェーン等に置き換えることも可能である。
【0077】
この他、発明の主旨を逸脱しない範囲で実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、テープ巻き取り装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 テープ巻き取り装置
10 フレーム
13 タレット
14 タレット回転モータ
20 巻き取り軸
25 マンドレル
60 ピニオン
61、62、63 内歯車
70、71、72 巻き取り軸回転モータ
80、81、82、83 テープ
105 テープ積層体
120 コイル
130 制御装置
A、B、C 作業ステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タレットと、
テープをコイルの形に巻き取るべく、前記タレットに回転自在に支持された巻き取り軸と、
前記コイルに対する前記テープの進入角度が一定になるよう、コイルの直径変化に対応して前記タレットの角度を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とするテープ巻き取り装置。
【請求項2】
前記巻き取り軸は複数存在し、前記タレットは、前記複数の巻き取り軸が順次所定の作業ステーションに移動するよう、タレット回転モータで回転せしめられるとともに、前記タレットの外に、前記巻き取り軸と1対1対応で設けられ、対応する巻き取り軸を他の巻き取り軸とは独立に回転させる巻き取り軸回転モータを備えることを特徴とする請求項1に記載のテープ巻き取り装置。
【請求項3】
前記巻き取り軸の各々にピニオンを設けるとともに、これらのピニオンに1対1対応で連結する複数の内歯車を前記タレットに支持させ、これらの内歯車に、前記巻き取り軸回転モータを1対1対応で連結したことを特徴とする請求項2に記載のテープ巻き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−120404(P2009−120404A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59292(P2009−59292)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【分割の表示】特願2000−305621(P2000−305621)の分割
【原出願日】平成12年10月5日(2000.10.5)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【出願人】(000141886)株式会社京都製作所 (83)
【Fターム(参考)】