説明

ディジタル放送受信装置

【目的】 二つの番組表データを少ないメモリ使用量でメモリに格納することがができるディジタル放送受信装置を提供する。
【構成】 ディジタル放送波はチューナ2によって受信・復調され第1のトランスポートストリーム(以下、TSと記述する)となって第1デマルチプレクサ6Aに与えられる。第2のTSはストリーム記録・再生部3によって装置内で再生されるか又はIEEE1394インターフェース5により外部から入力される。TSに付加されている付加情報はデマルチプレクス処理されてCPU17に与えられ、このCPU17及びOSD回路19の処理によって画面に番組ガイドが表示される。第1のTSの付加情報と第2のTSの付加情報のいずれか一方はそのままメモリ18に格納されるが、他方は一方との差分に基づいて圧縮データ化された上でメモリ18に格納される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ディジタル放送を受信するディジタル放送受信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ディジタル信号圧縮技術を用いて映像・音声信号を圧縮するとともに、複数番組の映像・音声ディジタル信号を時分割多重したストリーム(トランスポートストリーム)をトランスポンダ(衛星中継器)を経由して放送するディジタル放送がある。前記トランスポンダは複数存在しており、しかも各トランスポンダには複数チャンネルが多重されるため、チャンネル数は百以上にもおよぶ膨大な数になっている。一方、このようなディジタル多チャンネル放送を受信する放送受信装置は、専用のアンテナを通して受け取ったディジタル放送の複数のトランスポンダのなかから一つをチューナによって選択し、この一つのトランスポンダに含まれる複数のチャンネルのうち一つをデマルチプレクス処理によって選択し、この選択したチャンネルのディジタル信号をデコードすることによって映像・音声信号を出力するようになっている。
【0003】ところで、このようなディジタルテレビ放送では、従来のアナログ放送と同様に映像や音声を送信することに加え、サービス情報(番組名、番組内容、番組開始時刻、番組終了時刻、番組ジャンルコード等)も送信しており、受信機側ではOSD(オンスクリーンディスプレイ)機能を用いたEPG(Electronic Program Guide)画面表示機能によって、多チャンネル放送のなかからユーザが望む番組を効率良く選択することができる。
【0004】図4は一般的なディジタル放送の番組表示までの処理手順を示したフローチャートである。利用者がリモコン送信機で電源スイッチをONにすると、受信機は以下の手順で番組を表示する。まず、前回利用者が選局していたトランスポンダにチューニングを行う(ステップS11)。利用者がチャンネルを選択したら、メモリに格納されているNIT(Network Information Table)の情報から利用者が指定したチャンネルの選局に必要な情報(伝送諸元)を取得し、指定チャンネルが存在するトランスポンダに切り換える(ステップS12)。更に、PAT(Program Association Table)を取得し(ステップS13)、指定チャンネルに対応するPMT(Program Map Table)のPID(パケットID)を取得し、PMTのフィルタリング(デマルチプレクス処理)を開始する(ステップS14)。PMTを取得すると、指定チャンネルのデフォルトES(優先的に再生する映像と音声)のPIDを取得し、このPIDに基づいてデフォルトES(エレメンタリストリーム)を取得する。このESが取得され、PCR(Program Clock Reference)と合致すれば、映像を表示し、音声を出力する(ステップS15)。次に、pfEITa(Present/follwing EIT actual)のデータを取得し(ステップS16)、このpfEITaによって番組名、番組開始時間、番組維続時間などを取得し、画面に表示する(ステップS17)。
【0005】図5は一般的なディジタル放送の番組表データ取得までの処理手順を示したフローチャートである。BSディジタル放送ではデータ再送周期が長いため、番組表用のデータは事前に蓄積されていることが前提となっており、受信機は、EITやSDT(Service Description Table)が更新される午前0時を過ぎた或る時刻に自動的にONし(但し、映像/音声は出力しない)、図5の処理を実行する。まず、前述の番組表示処理と同様に、前回利用者が選局していたトランスポンダにチューニングを行い、pfEITa/o(present/following EIT actual/other)のデータを取得し(ステップS21)、更に、schEITbas(scheduleEIT basic)のデータを取得する(ステップS22)。そして、schEIText(schedule EIT extended)のデータを取得し(ステップS23)、更に、SDTa/o(SDT actual/other)のデータを取得する(ステップS24)。これにより、全チャンネルの番組表データ(8日分程度)が取得される。なお、BSディジタル放送では、番組表のデータを8日分取得すると、約2〜3メガバイトのサイズになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】一方、CSディジタル放送では、番組表の再送周期が短い特別なチャンネルが用意されているため、番組表データ用のメモリをある程度用意しておいて、画面に表示する時間帯のデータをその時々に取得することが前提となっているため、受信機はメモリをあまり必要としない。BSディジタル放送では、上述のごとく、番組表データは事前に例えば8日分を取得しておく必要があり、大きな容量のメモリが必要になる。そして、近年、トランスポートストリームをD−VHSやハードディスク(内蔵或いは外部機器)などに記録することが一般的になりつつあり、現在放送中の番組と過去に記録したトランスポートストリームに基づく番組とを同時に視聴できるように設計することが考えられている。かかる場合は、両方の番組表を利用者に提示可能とするべく、現在放送中のトランスポートストリームから取得した番組表データと、過去に記録したトランスポートストリームに基づく番組表データの二つをメモリに格納するため、一層大きなメモリが必要になってしまう。
【0007】この発明は、上記の事情に鑑み、第1のトランスポートストリームから取得した番組表データと、第2のトランスポートストリームに基づく番組表データの二つを少ないメモリ使用量でメモリに格納することができるディジタル放送受信装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明のディジタル放送受信装置は、上記の課題を解決するために、ディジタル放送波を受信し復調して第1のトランスポートストリームを出力する手段と、第2のトランスポートストリームを装置内で再生するか又は外部から取り入れる手段と、トランスポートストリームに付加されている付加情報に基づいて番組ガイドを表示する手段と、第1のトランスポートストリームの付加情報と第2のトランスポートストリームの付加情報のいずれか一方はそのままメモリに格納し、他方は一方との差分に基づいて圧縮データ化してメモリに格納する手段と、圧縮データを伸長して付加情報を復元する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】上記の構成であれば、第1のトランスポートストリームの付加情報と第2のトランスポートストリームの付加情報を各々そのままメモリに格納する場合に比べてメモリ使用量を削減することができる。
【0010】差分情報をランレングス符号化により圧縮データ化するようにしてもよい。また、圧縮データと元のデータとのデータ量を対比し、圧縮データが元のデータよりもデータ量が小さい場合に当該圧縮データをメモリに格納するのがよい。また、各々の付加情報のなかで番組名が合致する箇所を検索して差分を求めるデータ箇所を取り出すようにしてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態のBSディジタル放送を受信する受信装置を図1乃至図3に基づいて説明する。
【0012】図1に示すアンテナ1は、屋外において所定の方向に向けて配置されており、BS(Broadcasting via Satellite)から送られてくるディジタル放送信号を受信する。このアンテナ1は、一般に周波数変換器を備え、受信/周波数変換した信号をチューナ2に与える。
【0013】チューナ2は、受信した高周波ディジタル変調信号のうちから特定周波数の信号を取り出す。すなわち、ディジタル放送の複数のトランスポンダのなかから一つを選択する処理を行う。また、チューナ2は、復調回路、逆インタリーブ回路、誤り訂正回路などを備えることにより、選択したディジタル変調信号を復調してトランスポートストリームを出力する。
【0014】ストリーム記録・再生部3は、チューナ2から出力されたトランスポートストリームをハードディスク(HDD)4に書き込み(記録)、また、ハードディスク4からトランスポートストリームを読み出す(再生)。更に、ストリーム記録・再生部3は、外部の記録機器(D−VHSやハードディスク等)との間でIEEE1394インターフェース5を通じてトランスポートストリームの入出力をも行うこととしている。これら記録/再生や入出力の指令はCPU17によって行われる。
【0015】デマルチプレクサ(DEMUX)6は、第1デマルチプレクサ6Aと第2デマルチプレクサ6Bとから成る。第1デマルチプレクサ6Aはチューナ2からのトランスポートストリームを受け取ることとし、第2デマルチプレクサ6Bはストリーム記録・再生部3からのトランスポートストリームを受け取ることとしている。第1・第2デマルチプレクサ6A,6Bは、トランスポートストリームをMPEG2(Moving Picture Experts Grope2)のビデオトランスポートパケット、オーデイオトランスポートパケット、及びPSI/SI(Program Specific Information/Service Information)に分解する。デマルチプレクサ6A,6Bは、ビデオトランスポートパケットとオーディオトランスポートパケットをAVデコーダ7に供給し、PSI/SIをCPU17に供給する。なお、従来項で説明したように、トランスポートストリームには複数のチャンネルが多重化されており、このなかから任意のチャンネルを選択するための処理は、前記PSI/SIから任意のチャンネルがトランスポート・ストリーム中でどのパケットIDで多重化されているかといったデータを取り出すことで可能となる。また、トランスポート・ストリームの選定(トランスボンダの選定)もPSI/SIの情報に基づいて行うことができる。更に、サービス情報(SI)には、番組情報(番組内容、番組開始時刻、番組継続時間、ジャンルコード等)が含まれている。
【0016】AVデコーダ7は、ビデオトランスポートパケットに対してデコードを行うビデオデコーダ、及びオーディオトランスポートパケットに対してデコードを行うオーディオデコーダを備える。ビデオデコーダは、入力された可変長符号を復号して量子化係数や動きベクトルを求め、逆DCT変換や動きベクトルに基づく動き補償制御などを行う。オーディオデコーダは、入力された符号化信号を復号して音声データを生成する。
【0017】映像処理回路8は、AVデコーダ7から映像データを受け取ってD/A変換を行い、例えばNTSCフォーマットのコンポジット信号に変換する。音声信号処理回路9は、AVデコーダ7から出力された音声データを受け取ってD/A変換を行い、例えば右(R)音のアナログ信号および左(L)音のアナログ信号を生成する。
【0018】映像出力回路10及び音声出力回路11は出力抵抗や増幅器等を備えて成る。AV出力端子12には出力部(左右音声出力端子等や映像出力端子のセット)が設けられており、この出力部には、映像/音声コード13によって受像部やスピーカを備えるモニタ14が接続される。
【0019】OSD(オンスクリーンディスプレイ)回路19は、CPU17から出力指示された文字情報や色情報に基づくビットマップデータを加算器20に出力する。加算器20は前記ビットマップデータを映像に組み込む処理を行う。上記OSD回路19により、CPU17が受け取ったPSI/SIに基づくEPG(Electronic Program Guide)画面表示などが実現される。
【0020】リモコン送信機15は、当該放送受信装置30に指令を送出するための送信機である。このリモコン送信機15に設けられたキーを操作すると、そのキーに対応した指令を意味する信号光(リモコン信号)が図示しない発光部から送出される。リモコン受光器16は、前記リモコン送信機15のキーが操作されたときに出射される信号光を受光し、これを電気信号に変換してCPU17に与える。
【0021】メモリ(例えば、EEPROMなど)18には、トランスポンダの選定のための情報や番組ガイドに利用されるサービス情報(番組内容、番組開始時刻、番組継続時間、ジャンル情報等)などがCPU17の処理によって格納される。
【0022】CPU17は、第1,第2デマルチプレクサ6A,6B等を制御することにより、利用者の要求に応じて、現在放送中のトランスポートストリームから取得した番組と、ハードディスク4やIEEE1394インターフェイス5を通じて外部入力した過去のトランスポートストリームから取得した番組とを切り換えて提示したり、或いは2画面機能によって両番組を縮小画面にて同時に提示するよう制御を行うようになっている。そして、両方の番組表を利用者に提示可能とすべく、現在放送中のトランスポートストリームから番組表データを取り出し、また過去に紀録したトランスポートストリームから番組表データを取り出すが、これらをそのままメモリ18に紀録するのではなく、以下のごとく差分・圧縮処理を行ってメモリ18に記録するようになっている。
【0023】図2は差分・圧縮処理による番組表データ記録の処理の手順を示したフローチャートである。例えばその日の午前0時ごろにトランスポートストリームから取得した番組表データ(これをデータAとする)がそのままメモリ18に格納されるとすると、ハードディスク4やIEEE1394インターフェース5からの過去のトランスポートストリームによる番組表データ(これをデータBとする)を取得したときには、前記データAとの差分を採る(ステップS1)。ここで、図3(a)に示すごとく、データAにおける一部のビット列が“0010010011”であり、データBにおける一部のビット列が“0110000010”であると、これらの排他的論理和は、“0100010001”(これをデータCとする)となる。なお、データB中のバージョン番号やCRC(CyclicRedundancy Check)32の部分については、排他的論理和をとらないこととし、その間のデータのみ排他的論理和をとるようにしてもよい。
【0024】差分を求めたら、いわゆるランレングスの手法を用いて符号化を行う(ステップS2)。例えば、“0”が30個連続して発生する頻度が第1位である場合には、最も短いデータ列に置き換え、第2位の頻度のものについては、次に短いデータ列に置き換えるというように、データ量を圧縮する。そして、ランレングス符号化後のデータと符号化前のデータとのデータ量の比較を行い、短い方のデータをメモリ18に格納し(ステップS4)、このことを示す情報を保持すべく、管理テーブルを更新する(ステップS5)。
【0025】番組は、一般に週単位でほぼ同じものが繰り返し放送されており、或るチャンネルにおける金曜日の午後9時からの番組名は、例えば、「映画劇場」のごとく同じであり、番組開始時間や番組継続時間も同じであるのが通例である。また、現時点の8日分の番組表と数日前に取得した8日分の番組表との重なり部分については、全く同一であることが殆どである。差分を求める対象をElT情報(番組名、番組開始時間、番組継続時間、番組説明など)とすれば、同じネットワークの放送、同じチャンネル、同じ曜日、同じ時間帯という条件でこれらの情報記述箇所では極めて近い値をとる可能性が高いので、差分において“0”が連続する箇所が多く発生し、符号化により高圧縮率で圧縮されると予想される。なお、差分情報を求める対象データ(情報記述箇所)を見つけるために番組名が一致する箇所を探索する手法が有効である。また、SDTについても、同じネットワークの放送、同じトランスポートストリームという条件でこれらの情報記述箇所では同じ値をとるであろう。
【0026】復号化データ(データB)は、図3(b)に示すように、データCとデータAとの排他的論理和を求めることで得られる。利用者によって過去のトランスポートストリームによる番組表の表示操作がなされたときには、前記の復号化を行い、データBを生成して番組表を生成することになる。
【0027】なお、上記の例では、過去のトランスポートストリームを圧縮対象としたが、逆に現在の放送受信で取得したトランスポートストリームを圧縮対象とするようにしてもよい。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、第1のトランスポートストリームの付加情報と第2のトランスポートストリームの付加情報を各々そのままメモリに格納する場合に比べてメモリ使用量を削減することができ、ディジタル放送受信装置の低コスト化が図れるという効果を奏する。
【0029】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態のディジタル放送受信装置を示すブロック図である。
【図2】データ圧縮処理を示したフローチャートである。
【図3】差分情報取得と情報復元の一例を示した説明図である。
【図4】一般的なディジタル放送の番組表示までの処理手順を示したフローチャートである。
【図5】一般的なディジタル放送の番組表デ−タ取得までの処理手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
1 アンテナ
2 チューナ
3 ストリーム記録・再生部
4 ハードディスク
5 IEEE1394インターフェース
6A 第1デマルチプレクサ(DEMUX)
6B 第2デマルチプレクサ(DEMUX)
7 AVデコーダ
15 リモコン送信機
17 CPU
18 メモリ
19 OSD回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ディジタル放送波を受信し復調して第1のトランスポートストリームを出力する手段と、第2のトランスポートストリームを装置内で再生するか又は外部から取り入れる手段と、トランスポートストリームに付加されている付加情報に基づいて番組ガイドを表示する手段と、第1のトランスポートストリームの付加情報と第2のトランスポートストリームの付加情報のいずれか一方はそのままメモリに格納し、他方は一方との差分に基づいて圧縮データ化してメモリに格納する手段と、圧縮データを伸長して付加情報を復元する手段と、を備えたことを特徴とするディジタル放送受信装置。
【請求項2】 請求項1に記載のディジタル放送受信装置において、差分情報をランレングス符号化により圧縮データ化するようにしたことを特徴とするディジタル放送受信装置。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載のディジタル放送受信装置において、圧縮データと元のデータとのデータ量を対比し、圧縮データが元のデータよりもデータ量が小さい場合に当該圧縮データをメモリに格納するようにしたことを特徴とするディジタル放送受信装置。
【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のディジタル放送受信装置において、各々の付加情報のなかで番組名が合致する箇所を検索して差分を求めるデータ箇所を取り出すようにしたことを特徴とするディジタル放送受信装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−281411(P2002−281411A)
【公開日】平成14年9月27日(2002.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−81188(P2001−81188)
【出願日】平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】