説明

ディスクチャック機構およびディスクハンドリングロボット

【課題】
磁気ディスクあるいはそのサブストレートをカセット等から取出あるいはカセット等へ収納する時にディスクへのダメージを低減するとともに高速なディスクのチャックあるいはその開放が可能なディスクチャック機構およびディスクハンドリンクロボットを提供することにある。
【解決手段】
この発明は、第1,第2、第3のリンク部材により構成されるリンク機構がスライダクランク機構を形成し、エアーシリンダ等の進退アクチュエータの駆動で第3のリンク部材が回動してこれに設けられたチャック爪を第1のリンク部材あるいは第2のリンク部材の長手方向からこれに対して直角の方向に突出させる。直角の方向に突出したチャック爪は、ディスクに係合することでその回動が停止し、さらなる第2のリンク部材の前進あるいは後退移動によりばね部材が撓み、第1のチャック爪がディスクとの係合を維持する方向に第1のチャック爪をばね部材が付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスクチャック機構およびディスクハンドリングロボットに関し、詳しくは、磁気ディスクあるいはそのサブストレートをカセットから取出あるいはカセットへ収納する時にディスクへのダメージを低減するとともに高速なディスクのチャックあるいはその開放が可能でガラス基板のディスクをチャックする場合に適したディスクチャック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報記録媒体として用いられる磁気ディスクは、近年益々高記憶密度化が要求され、最近ではガラスディスクを基板として小型化されてきている。
ハードディスク装置(HDD)は、現在では自動車製品や家電製品、音響製品の分野にまで浸透し、2.5インチから1.8インチに、さらには1.0インチ以下のハードディスク駆動装置が各種製品に内蔵され、使用されている。
ハードディスク駆動装置は、さらに小型化される傾向にあって、しかも、ハードディスク駆動装置自体の製品単価は低下し、多量のハードディスク駆動装置をコストダウンして製造することが製造メーカに要求されてきている。そのため、ディスク洗浄装置、ディスク検査装置などにあっても多量のディスクを効率よく洗浄し、乾燥し、検査し、さらに各装置を小型化する要請がある。
【0003】
洗浄装置や乾燥装置、検査装置などの各ステージへの磁気ディスクあるいはその基板(以下これらを単にディスクという)の搬入、搬出は、通常、ディスクハンドリングロボット等のハンドリング機構を介して行われている。そのディスクハンドリングロボットの先端側のハンド部分にはディスクチャック機構が設けられている。ディスクチャック機構により保持されたディスクは、搬送されてカセット等に収納されあるいは逆にカセット等から取出される。
この種のディスクのチャック機構としてはディスクの内周と外周とにおいてディスクをチャックする出願人の出願となる、検査システムにおけるディスクハンドリング機構がに開示され、公知である(特許文献1)。
これに記載されたチャック機構は、V溝付きローラを3個有していて、ディスクの外周2点と内周1点でディスクをチャックする。このとき、内周チャック側のV溝付きローラのアームが90゜回動してディスクの内周側に突出す首振り機構を採用している。
【特許文献1】特開平9−274779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディスクの製造効率、検査効率を上げるためには、ディスクハンドリング処理の効率化が大きな役割を果たす。しかし、ディスクの搬送速度を上げてもディスクチャックを確実にしないと搬送途中でディスクの落下やディスク間での接触などが起こり易い問題がある。一方、ディスクチャックを確実にするためにチャック機構のチャック力を強化すると、チャック痕やディスクのチャンファ部に欠けなどがディスクに発生し易く、ディスクへのダメージが問題となる。特に、ガラスディスク基板のディスクに対して高速チャックをした場合にチャンファ部分に欠けなどが発生し易い。
通常、ディスクハンドリングの際に要求されるチャック力は、数十g〜数百g程度である。特開平9−274779号に開示される内周と外周とによるディスクチャック機構では、ディスクへのダメージを軽減するためにチャックの開閉をエアーシリンダのスロー駆動により行っている。前記した程度の力で確実かつ安定したディスクチャックをするためにはエアーを緩やかにシリンダに送り込み、チャック動作をさせる必要がある。そのためにチャックの開閉に時間がかかる欠点がある。
【0005】
このような問題を回避しかつチャックによるディスクへのダメージを軽減し、さらにチャック時間を短縮するためにディスクを真空吸着する吸着チャックを用いることができる。しかし、これは、吸着するディスクの外形に対応するような形状の吸着ヘッドを用意しておかないと、吸着が不安定になる欠点がある。しかも、真空吸着は、ディスクのばらつきによる寸法誤差、ディスクハンドリングロボットの位置決め誤差などにより、吸着不良を起こし易く、ハンドリング中あるいは搬送途中にチャック機構からディスクが脱落する問題がある。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、磁気ディスクあるいはそのサブストレートへのダメージを低減するとともに高速なディスクのチャックあるいはその開放が可能なディスクチャック機構を提供することにある。
この発明の他の目的は、チャックの開閉に時間がかからないディスクチャック機構を有するディスクハンドリングロボットを提供することにある。
この発明のさらに他の目的は、ガラス基板のディスクのチャックに適したディスクチャック機構を有するディスクハンドリングロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するためのこの発明のディスクチャック機構あるいはディスクハンドリングロボットの特徴は、進退アクチュエータと、第1のリンク部材と、この第1のリンク部材の長手方向に沿って配置され進退アクチュエータの駆動により第1のリンク部材の長手方向に沿って相対的に前進移動あるいは後退移動をする第2のリンク部材と、これら第1および第2のリンク部材の端部にそれぞれリンク結合する第3のリンク部材と、この第3のリンク部材に設けられこの第3のリンク部材の回動に応じて回動する第1のチャック爪と、第2のリンク部材に設けられ前記前進移動あるいは後退移動に応じて撓むばね部材とを備えていて、
第2のリンク部材を前進移動あるいは後退移動させることで第3のリンク部材を回動させて第1あるいは第2のリンク部材のいずれかの長手方向に対してこれと直角な方向に第1のチャック爪を突出させてディスクの内周あるいは外周に係合させかつばね部材を撓ませて第3のリンク部材を同じ方向にさらに回動させる付勢力を前記ばね部材に発生させるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明にあっては、第1,第2、第3のリンク部材により構成されるリンク機構がスライダクランク機構を形成するので、エアーシリンダ等の進退アクチュエータの駆動で第3のリンク部材が回動し、これに設けられたチャック爪が第1のリンク部材あるいは第2のリンク部材の長手方向からこれに対して直角の方向に突出する。直角の方向に突出したチャック爪は、ディスクに係合することでその回動が停止し、第3のリンク部材もこのとき回動が停止する。そこで、さらなる第2のリンク部材の前進あるいは後退移動によりばね部材を撓ませることができる。この撓みによりディスクとの係合を維持する方向に回動するように第1のチャック爪をばね部材により所定のチャック力をもって付勢することができる。
これにより、進退アクチュエータの進退駆動だけで所定の力でディスクをチャックすることが可能になる。
この場合に、ディスクがチャックされる力は、このときのばねの弾性力(弾性定数)と撓み量とで決定され、実質的に一定の力にできる。
その結果、この発明のディスクチャック機構は、ディスクに対するチャック力を数十g〜数百g程度に容易に選択することができる。しかも、チャックの開閉動作は、進退アクチュエータの進退駆動だけで済む。これにより、この発明のディスクチャック機構は、ばね部材の付勢力に応じて最適なチャック力を選択することで、ディスクチャック時のディスクへのダメージを低減しかつディスクチャックの開閉タイムを短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明のディスクチャック機構を適用した一実施例の説明図、図2は、そのディスクカセット内でのディスクチャック状態の説明図、図3(a)は、ディスクチャック機構の背面図、図3(b)は、ディスクチャック機構の構成部材をリンク結合金具で結合するリンク結合についての説明図、図4は、この発明を適用した他の実施例の説明図、そして図5は、この発明を適用したさらに他の実施例の説明図である。
各図において同一の構成要素は同一の符号で示し、その説明を割愛する。
図1において、1は、ディスクであり、9は、ハンドリングロボットであって、そのアーム4がXYZ方向に移動する。
ハンドリングロボット9は、中心に開口を有するディスク1の内周1点と外周の2点でハンド2によりディスク1をチャックする。ハンド2は、アーム4によりハンドリングロボット9から吊り下げられて設けられ、ディスクチャック機構3を構成している。ハンドリングロボット9の昇降機構5は、Z軸方向にアーム4を昇降し、レール6に固定されている。レール6は、その内部に昇降機構5に対するY軸移動機構が内蔵され、X軸移動機構7によりX方向に移動される。8は、ハンド2の下側に位置し、複数枚のディスク1を配列収納するディスクカセットである。
【0009】
ハンド2のディスクチャック機構3は、垂直方向に設けられたリニアガイド付きのエアーシリンダ31とフィンガ部32とブラケットリンク(板部材であって、この発明の第3のリンク部材に相当)34とを有し、これらはスライダクランク機構を構成していている。
フィンガ部32は、第1のフィンガ(棒部材)32aと、第2のフィンガ(棒部材であり、この発明の第2のリンク部材に相当)32b、第3のフィンガ32c(棒部材であり、この発明の第1のリンク部材に相当)、U字型に湾曲した板ばね32dとからなる。第2のフィンガ32bは、第3のフィンガ32cの長手方向に沿って延び、これに沿って配置されている。
エアーシリンダ31は、リニアガイドのためのレール31aと、移動台31bとを有し、固定ベース31cを介してアーム4に固定されている。レール31aは、アーム4に沿って取付けられ、昇降機構5の駆動でアーム4とともに上下移動する。
移動台31bは、エアーシリンダ31のレール31a上を移動し、この移動台31bには第1のフィンガ32aが固定され、この第1のフィンガ32aがエアーシリンダ31の駆動に応じて上下(Z方向)に移動する。
【0010】
ハンド2を背面(図1の図面右側)からみた図3(a)に示されるように、第1のフィンガ32aは、先端が二股に分かれ、ディスク1の外周を2点でチャックするV溝付きローラ33a,33b(図3(a)参照)を有し、これらが二股に分かれたそれぞれの先端側に設けられている。V溝付きローラ33a,33b(以下ローラ33a,33b)は、図1に示すように、水平方向に突出して先端側にそれぞれ固定されている。そしてその背面には、二股に分かれた部分に板ばね32dの端部が固定されている。第2のフィンガ32bは、このU字型の板ばね32d(図1参照)を介して吊り下げられた状態でねじにて板ばね32dの他方の端部に固定されている。第1のフィンガ32aの二股に分かれた先端部は、図示するように第2のフィンガ32bを跨いてその両側に配置されている。
なお、図3(a)は、図1の状態からエアーシリンダ31が前進駆動された状態を示し、移動台31bが前進した状態にある。そこで、第2のフィンガ32bは、この前進に応じて降下して、図3(a)では第3のフィンガ32cと重なり、これの陰となって見えていない。この点、図1では、エアーシリンダ31が前進駆動される前の初期状態を示していて、第3のフィンガ32cの先端部が第2のフィンガ32bの先端部より下側に位置し、ブラケットリンク34に取付けられたV溝付きローラ33c(この発明のチャック爪に相当)が下向きになっている。
【0011】
図1、図3(a)において、板ばね32dが固定された後端部とは反対側となる第2のフィンガ32aの先端部には矩形の切欠き溝320が設けられている。この切欠き溝320にブラケットリンク34の端部が挿入されて回動可能にピン34aを介して第2のフィンガ32aの先端部に軸支され、これによりこれとブラケットリンク34とがリンク結合されている。
図1、図2に示すように、第3のフィンガ32cは、垂直方向からクランク状に曲折して水平方向に延び、その後端部がエアーシリンダ31の固定ベース31cにボルトにて固定されている。そして第3のフィンガ32cの垂直方向にクランク状に曲折した部分は、第2のフィンガ32bに沿って平行に延び、その先端部がピン34bを介してブラケットリンク34に軸支され、ブラケットリンク34は、首振り可能に第3のフィンガ32cにリンク結合されている。
なお、第3のフィンガ32cの先端部には矩形の切欠き溝320と同様な溝が設けられている。第3のフィンガ32cの先端部とブラケットリンク34との結合の仕方は、第2のフィンガ32aの先端部と同じであるのでその説明は割愛する。
図3(a)において、36a、36bは、エアーシリンダ31へのエアー導入管であり、移動台31bを進退させるエアーをエアーシリンダ31に供給する。
【0012】
図3(b)は、第2のフィンガ32bおよび第3のフィンガ32cとブラケットリンク34とをリンク結合金具で結合するより簡単な結合構造を示す説明図である。
ブラケットリンク34と第2のフィンガ32bと第3のフィンガ32cとは、それぞれ第1のフィンガ32aと第2のフィンガ32bに取付けられたリンク結合金具35a,35bがピン34a,34bにより軸支されてこれらを介してブラケットリンク34と第2のフィンガ32bと第3のフィンガ32cとがそれぞれにリンク結合されている。そして、ブラケットリンク34の先端側に設けられたV溝付きローラ33c(以下ローラ33c)は、ブラケットリンク34が時計方向に90°回動したときに第2のフィンガ32bと第3のフィンガ32cの長手方向に対してこれと直角な方向(水平方向)に突出するように下向きにブラケットリンク34に取付けられている。なお、図3(b)は、移動台21が前進してブラケットリンク34が90°回動した図2に対応する状態を示している。
リンク結合金具35a,35bは、図では1個であり、片支持構造のものである。しかし、反対側(図面裏面側)にもう1つのリンク結合金具をそれぞれに設けて図3(a)と同様にピン34a,34bの両端をリンク結合金具で支持する構造にしてもよい。
ところで、ディスク1の内周に係合するローラ33cは、ディスク1の内周と外周の径の大きさの差に応じてディスク1の外周に係合するローラ33a,33bよりもその径が一回り小さいローラである。
【0013】
図1に戻り、ディスクのチャック動作について説明する。
ハンドリングロボット9によりアーム4がディスクカセット8に対してXYZ軸の所定の位置に位置決めされた後に、アーム4がZ方向に所定量降下すると、ディスクカセット8の後部にある空き空間8aにフィンガ2が挿入される。次に、エアーシリンダ31が前進駆動されて移動台31bが前進すると、図2に示されるように、第1のフィンガ32aと第2のフィンガ32bとがともに降下して第1のフィンガ32aのローラ33a,33bが外周に係合する。一方、移動台31bの前進に応じてブラケットリンク34が回動し、これに固定されたローラ33cが回動して水平方向に前へと突出して図2に示すようにディスク1の内周に係合してディスク1が3点でチャックされる。チャックされたディスク1は、アーム4が上昇することでカセット8から取出される。カセット8へディスクを収納するときには逆にチャックされたディスク1がカセット8へ収納されてチャックが解除されることで行われる。
このときのローラ33cの突出は、固定側の第3のフィンガ32cに対して第2のフィンガ32bが相対的に降下することによる。第3のフィンガ32cが固定されているので、第2のフィンガ32bが降下すると、ブラケットリンク34が時計方向90°に回動して、ローラ33cが水平方向に起立する。
【0014】
ローラ33cが突出してディスク1の内周にローラ33cが係合すると、ローラ33cは、それ以上は回動しなくなる。このときに、ディスク1の重量と回動方向との関係でバランスした位置でローラ33cは停止する。このときにはローラ33a,33bはまだ外周に係合していない。このときブラケットリンク34もローラ33cとともに回動を停止する。そのため、第1のフィンガ32aのさらなる降下により板ばね32dが撓む。これについて以下詳細に説明する。
例えば、ディスク1の重量を10g〜十数gとすると、ローラ33cが時計方向に回動してディスク1の内周と係合し、ローラ33cが時計方向に回動するのでディスク1の重さに応じて板ばね32dが撓み始める。第1のフィンガ32aがさらに降下すると、板ばね32dがさらに撓むとともにてディスク1が持ち上げられて、ローラ33cは、ローラ33a,33bが図2の点線の位置にあるときに図2に示すように水平の位置付近で停止する。ローラ33cが水平の位置からさらに時計方向に回動しようとすると、垂直方向へ押上げる分力は低下するので、ローラ33cは、ディスク1の重力とバランスして水平の位置か少しディスク1を上へと持ち上げた位置で停止し、ブラケットリンク34もローラ33cの停止とともに回動が停止する。また、そのように板ばね32dの反発力を選択することができる。第1のフィンガ32aがさらに降下すると、図2の点線の位置からのローラ33a,33bが降下し、これに応じて板ばね32dをさらに撓ませることができる。そして、板ばね32dの撓みは、ローラ33a,33bがディスク1の外周に係合した時点で停止する。このとき、水平の位置から上へと持ち上げられたディスク1の位置は、その位置を図2の状態に戻すことができる。
すなわち、第1のフィンガ32aのローラ33a,33bが外周に係合するまでは第2のフィンガ32bを降下させることができる。図2の点線の位置からのローラ33a,33bの降下により、ローラ33a,33bが図2の実線で示す位置に近づくとともにU字型の板ばね32dが圧縮される方向に撓んでいく。撓んだ板ばね32dは、ブラケットリンク34を同じ時計方向にさらに回転さる付勢力を発生する。
【0015】
板ばね32dの付勢力は、ローラ33a,33bの降下とともに大きくなり、ローラ33cが停止してもブラケットリンク34をさらに時計方向に回動させる力がディスク1の内周に加えられる。このとき発生する板ばね32dの付勢力は、ローラ33a,33bが点線の位置から実線の位置まで移動することによる。
そこで、あらかじめ予定されている所定の力が内周に加えられるタイミングに合わせて第1のフィンガ32aのローラ33a,33bを外周に係合させる。この時点で、それ以上は第2のフィンガ32bが降下しなくなる。これにより、進退アクチュエータ31の前進駆動だけでU字型の板ばね32dにより発生する所定の力でディスク1をチャックすることが可能になる。
【0016】
その結果、エアーシリンダ31の駆動を高速にすることができる。なお、ディスク1の重量が数百g程度と重いときには、その分、板ばね32dの反発力を大きくして付勢力を大きくすることになる。
このときのチャック力は、ローラ33cの突出でディスク1の内周にローラ33cが係合した後に第3のフィンガ32cと第1のフィンガ32aの降下の差Δd(図1参照)、すなわち、ローラ33a,33bの前記点線から実線までの距離に実質的に対応している。それは、U字型の板ばね32dの反発力(弾性力)とその撓み量とで決定され、一定の力とすることができる。
第1のフィンガ32aの降下は、第1のフィンガ32aのローラ33a,33bが外周に係合して停止するので、その降下量(Δd)が一定量に抑えられる。したがって、板ばね32dの反発力(弾性力)とその撓み量を選択することで、ディスクに対するチャック力を数十g〜数百g程度に容易に設定することができる。
なお、ディスク1の開放は、エアーシリンダ31を後退駆動して、前記と逆に移動台31bを上昇させればよい。
【0017】
この実施例では、内周チャック側のV溝付きローラを首振り機構にしているが、この発明は、外周チャッ側のV溝付きローラを首振り機構にしてもよい。この場合には、首振り方向が反時計方向となる。そこで、進退アクチュエータの後退駆動でチャックすることになる。その後退駆動だけで所定の力でディスクをチャックすることが可能になる。
これは、ローラ33cとローラ33a,33bとの位置を入れ換えて配置することで可能である。
図2における第1のフィンガ32aは、下側まで延ばしてディスク1の内周の近傍に位置付ける。ローラ33a,33bをディスク1の内周に突出させて内周側のチャックとする。第2のフィンガ32bは、逆に短くして、ローラ33cとブラケットリンク34とをディスク1の外周の上部に位置付けて外周側のチャックとする。
これによりローラ33cはディスク1の外周側に位置し、ローラ33a,33bはディスク1の内周側に位置して図2のそれぞれの位置が上下逆転する。
移動台31bは、後退させて外周の位置となったブラケットリンク34を反時計方向に回動する。
これによりローラ33cは、ディスク1の外周に係合し、ローラ33a,33bは、上昇して板ばね32dを撓ませてディスク1の内周に係合する。
なお、ローラ33a,33bは、アーム4をカセット8に沿って移動させることでディスク1の内周に突出させることができる。
【0018】
図4は、この発明の他の実施例の説明図であって、図1の実施例における第2のフィンガ32bをばね部材としてとU字型の板ばね32dとを一体化して第2のフィンガ32eとしたものである。
これにより第2のフィンガ32e全体を1枚の板ばねで構成し、これの端部は、移動台31bに固定される。第2のフィンガ32eの反対側の端部をブラケットリンク34にリンク結合金具35bを介して結合する。これにより第2のフィンガ32eは、図1にものより単純な構造となる。なお、第3のフィンガ32cの先端は、図3(b)と同様に、ブラケットリンク34にリンク結合金具35aを介して結合されている。
図示するように、第2のフィンガ32eのU字型の湾曲方向は、板ばね32dとは反対に内側に湾曲している。ローラ33a,33bを有する第1のフィンガ32aは、台座32fを介して移動台31bに固定されている。第3のフィンガ32cの長さは、図1のものよりも短い。
その他の構成は、図1の場合と実質的に同様なものであるので、その説明は割愛する。 このような構造のディスクチャック機構は、より小型化できるので、例えば、1.8インチ以下の、ディスク1の外形が小さいディスクに対して有効である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上説明してきたが、実施例におけるローラ33cは、ディスクをチャックするチャック爪である。このチャック爪の突出方向は、図1の実施例では第3のフィンガ32cの長手方向に対して直角な図面左側方向となっている。
第2のフィンガ32b側の長手方向に対して直角な図面右側方向に突出させてもよい。この場合には、図1のカセット8のディスク1を反対側から取出すことができる。この場合、ローラ33cは、図4においてブラケットリンク34の位置を図面左側から右側に移動させて、図面右側に突出するようにブラケットリンク34に取付け、ローラ33a,33bも左側から右側に移動して図4の図面右側に突出するように、第1のフィンガ32aに換えて第3のフィンガ32cの先端にそれぞれ取付ければよい。第2のフィンガ32eと第3のフィンガ32cの位置は入換える。
さらに、図2あるいは図4において、第2のフィンガ32b(第2のフィンガ32e)と第3のフィンガ32cの位置は、ばね部材32dを介して固定ベース31cに固定して固定側として第3のフィンガ32cを移動台31bに取付けて入換えられてもよい。そして、第3のフィンガ32cを進退させればよい。それによりばね部材32dを有する固定側の第2のフィンガ32b(第2のフィンガ32e)は、第3のフィンガ32cに対して相対的に移動することになる。
【0020】
図1の実施例では、2個のV溝付きローラを設けて2点で外周チャックを行っているが、この発明は、外周チャックのV溝付きローラを1個として内周外周を2点で対向チャックするようにしてもよい。また、この発明は、V溝付きローラに換えて他の形状のチャック爪を用いてもよい。
また、この発明は、図1に示した内周チャックのV溝付きローラを外周チャックに換えてディスクの外周3点でチャックするようなチャック機構にも適用可能である。
さらに、実施例では第2のフィンガ32bには板ばねを設けているが、この発明は、板ばねに換えてコイルばね等の他のばね部材を設けてもよい。
さらに、実施例では、カセット8からディスク1を取出す場合のディスクチャックを中心として説明しているが、カセット8へディスク1を収納する場合もカセット8に対する動作が逆になるだけであるので、同様にこの発明のディスクチャック機構が適用できることはもちろんである。さらに、カセット以外の場所へのディスクの収納あるいはそこからのディスクの取出についてもこの発明のディスクチャック機構は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、この発明のディスクチャック機構を適用した一実施例の説明図である。
【図2】図2は、そのディスクカセット内でのディスクチャック状態の説明図である。
【図3】図3(a)は、ディスクチャック機構の背面図、図3(b)は、ディスクチャック機構の構成部材をリンク結合金具で結合するリンク結合についての説明図である。
【図4】図4は、この発明を適用した他の実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1…ディスク、2…ハンド、3…ディスクチャック機構、
4…アーム、5…昇降機構、
6…レール、7…X軸移動機構、8…ディスクカセット、
9…ハンドリンクロボット、31…エアーシリンダ、
31a…作動子、31b…固定ベース、32…フィンガ、
32a…第1のフィンガ、32b…第2のフィンガ、
32c…第3のフィンガ、32d…板ばね、
33a,33b,33c…V溝付きローラ、
34…ブラケットリンク、34a,34b…ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心開口を有するディスクの内周あるいは外周に係合して前記ディスクをチャックするディスクチャック機構において、
進退アクチュエータと、
第1のリンク部材と、
この第1のリンク部材の長手方向に沿って配置され前記進退アクチュエータの駆動により前記第1のリンク部材の長手方向に沿って相対的に前進移動あるいは後退移動をする第2のリンク部材と、
これら第1および第2のリンク部材の端部にそれぞれリンク結合する第3のリンク部材と、
この第3のリンク部材に設けられこの第3のリンク部材の回動に応じて回動する第1のチャック爪と、
前記第2のリンク部材に設けられ前記前進移動あるいは後退移動に応じて撓むばね部材とを備え、
前記第2のリンク部材を前記前進移動あるいは前記後退移動させることで前記第3のリンク部材を回動させて前記第1あるいは第2のリンク部材のいずれかの長手方向に対してこれと直角な方向に前記第1のチャック爪を突出させて前記ディスクの内周あるいは外周に係合させかつ前記ばね部材を撓ませて前記第3のリンク部材を同じ方向にさらに回動させる付勢力を前記ばね部材に発生させるディスクチャック機構。
【請求項2】
前記第1のリンク部材は、フレームあるいはアームに固定され、前記第2のリンク部材は、前記ばね部材を介して前記進退アクチュエータにより移動され、前記第3のリンク部材は、前記第1のチャック爪と前記ディスクとの係合により回動が停止され、この停止の後の前記前進移動あるいは後退移動に応じて前記付勢力を発生するために前記ばね部材が撓む請求項1記載のディスクチャック機構。
【請求項3】
前記ばね部材は、リンク結合された前記第2のリンク部材の端部とは反対側の端部と前記進退アクチュエータとの間に設けられ、前記第1のチャック爪は前記第3のリンク部材に下向きに固定されている請求項2記載のディスクチャック機構。
【請求項4】
前記進退アクチュエータは、前記第1のリンク部材に沿って進退する棒部材を有し、前記棒部材には第2のチャック爪が設けられていて、前記第1のチャック爪は前記ディスクの内周および外周のいずれか一方に係合し、前記第2のチャック爪は前記ディスクの内周および外周のいずれか他方に係合し、前記第2のチャック爪が前記ディスクの内周および外周のいずれか他方に係合することにより前記ばね部材の撓みが停止する請求項3記載のディスクチャック機構。
【請求項5】
前記進退アクチュエータはエアーシリンダであり、前記第1および第2のチャック爪はV溝付きローラであり、前記ディスクはカセットに収納され、前記進退アクチュエータの駆動により前記カセットの方向に向かって前記第2のリンク部材が前進駆動され、前記第1および第2のチャック爪により前記ディスクが所定のチャック力でチャックされる請求項4記載のディスクチャック機構。
【請求項6】
第2のチャック爪は、前記棒部材の長手方向に対してこれに垂直となる方向に突出する状態で前記棒部材に固定され、前記ばね部材は湾曲した板ばねであって、前記第2のリンク部材の前記反対側の端部と前記棒部材との間に設けられ、前記第2のチャック爪は、前記前進移動により前記棒部材が前記ディスクの方向に移動して前記ディスクの外周と係合する請求項4記載のディスクチャック機構。
【請求項7】
前記第2のチャック爪は2個設けられ、前記第1のチャック爪とともに前記ディスクの内周あるいは外周を3点でチャックする請求項6記載のディスクチャック機構。
【請求項8】
前記ばね部材は、前記進退アクチュエータの移動台に固定され、前記第2のリンク部材は、ばね部材として構成され、前記第3のリンク部材にリンク結合された端部を除いて前記ばね部材に一体化されている請求項2記載のディスクチャック機構。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか1項記載のディスクチャック機構を有するディスクハンドリングロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−310947(P2008−310947A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125615(P2008−125615)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】