説明

ディスクブレーキ装置

【課題】サーボ荷重の過度の増大を抑えてブレーキロック動作を回避することが可能なディスクブレーキ装置を提供する。
【解決手段】主制動ユニットB1と副制動ユニットB2がロータ周方向に所定の間隔にて配置されている。主制動ユニットB1は、主キャリパ22、主キャリパのシリンダ部22aに組付けられ操作力に応じディスクロータ11に向けて押動される主制動ピストン23、同ピストン23の動作に応じディスクロータ11に向けて押動される主パッド24,25を備えると共に、主パッド24とディスクロータ11のロータ周方向での摩擦力を主サーボ荷重に変換する主サーボ機構30を備える。副制動ユニットB2は、副キャリパ42、副キャリパのシリンダ部42aに組付けられ主サーボ荷重に応じディスクロータ11に向けて押動される副制動ピストン43、同ピストン43の動作に応じディスクロータ11に向けて押動される副パッド44,45を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置に係り、特に、キャリパのシリンダ部に軸方向へ移動可能に組付けた制動ピストンが操作力に応じてディスクロータに向けて押動されて、パッドがディスクロータに向けて押動されるように構成され、制動時における前記パッドと前記ディスクロータのロータ周方向での摩擦力がサーボ機構にてアンカー荷重として取り出されて、このアンカー荷重が前記サーボ機構にて前記ディスクロータに向けたサーボ荷重に変換されるように構成されたディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のディスクブレーキ装置は、例えば、下記特許文献1に示されていて、このディスクブレーキ装置においては、制動時においてパッドにディスクロータに向けたサーボ荷重を付加することが可能であり、制動時には小さな操作力にて大きなブレーキ力を得ることが可能である。
【特許文献1】特開平7−167172号公報
【0003】
上記した特許文献1に記載されているディスクブレーキ装置においては、サーボ機構として油圧式のサーボ機構が採用されていて、当該サーボ機構にて得られるサーボ荷重(制動ピストンに作用するサーボ油圧)が過度に大きくなってパッドの押圧力が過度に大きくなることを防止するために、サーボ油圧の昇圧を抑制する増圧制御弁(サーボ抑制手段)が採用されている。このため、サーボ荷重の過度の増大を抑えてブレーキロック動作を回避することが可能である。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、上記した増圧制御弁(サーボ抑制手段)を採用することなく、サーボ荷重の過度の増大を抑えてブレーキロック動作を回避することが可能なディスクブレーキ装置を提供することを課題としている。本発明によるディスクブレーキ装置では、ディスクロータのロータ周方向に主制動ユニットと副制動ユニットが所定の間隔にて配置されていて、前記主制動ユニットが、マウンティングに組付けられる主キャリパと、この主キャリパのシリンダ部に軸方向へ移動可能に組付けられて操作力に応じて前記ディスクロータに向けて押動される主制動ピストンと、この主制動ピストンと前記ディスクロータ間に配置されて前記主制動ピストンによって前記ディスクロータに向けて押動される主パッドを備えるとともに、制動時における前記主パッドと前記ディスクロータのロータ周方向での摩擦力をアンカー荷重として取り出して同アンカー荷重を前記ディスクロータに向けた主サーボ荷重に変換する主サーボ機構を備えており、前記副制動ユニットが、マウンティングに組付けられる副キャリパと、この副キャリパのシリンダ部に軸方向へ移動可能に組付けられて前記主サーボ荷重に応じて前記ディスクロータに向けて押動される副制動ピストンと、この副制動ピストンと前記ディスクロータ間に配置されて前記副制動ピストンによって前記ディスクロータに向けて押動される副パッドを備えている。この場合において、前記副制動ユニットは前記ディスクロータのロータ周方向に複数個設けられていることも可能である。
【0005】
本発明によるディスクブレーキ装置においては、主制動ユニットにて、主制動ピストンが操作力に応じてディスクロータに向けて押動されて主パッドがディスクロータを制動する制動時、主パッドとディスクロータのロータ周方向での摩擦力が主サーボ機構にてアンカー荷重として取り出されて、このアンカー荷重が主サーボ機構にてディスクロータに向けた主サーボ荷重に変換される。また、副制動ユニットにて、副制動ピストンが主サーボ荷重に応じてディスクロータに向けて押動されて、副パッドがディスクロータを制動する。このため、制動時には、主制動ユニットと副制動ユニットにてディスクロータが制動されて、小さな操作力にて大きなブレーキ力を得ることが可能である。
【0006】
ところで、本発明によるディスクブレーキ装置においては、制動時において主サーボ機構にて得られる主サーボ荷重が、副制動ユニットの副制動ピストンにディスクロータに向けて作用して、主制動ユニットの主制動ピストンに作用することはない。このため、主サーボ荷重の増大が無限に繰り返すことがなくて、主サーボ機構にて得られる主サーボ荷重が過度に大きくならない。したがって、主サーボ機構にサーボ抑制手段を採用することなく、主サーボ荷重の過度の増大を抑えてブレーキロック動作を回避することが可能である。
【0007】
また、本発明によるディスクブレーキ装置においては、ディスクロータのロータ周方向に所定の間隔にて配置した主制動ユニットと副制動ユニットによってディスクロータが制動されるため、ディスクロータを単一の制動ユニットにて制動する場合に比して、制動時におけるディスクロータの共振点を変えることができて、制動時における特定周波数のブレーキ鳴きや振動を効果的に抑制することが可能である。
【0008】
また、本発明の実施に際して、前記副制動ユニットに対して第2の副制動ユニットがディスクロータのロータ周方向に所定の間隔にて配置されていて、前記副制動ユニットには、制動時における前記副パッドと前記ディスクロータのロータ周方向での摩擦力をアンカー荷重として取り出して同アンカー荷重を前記ディスクロータに向けた副サーボ荷重に変換する副サーボ機構が設けられており、前記第2の副制動ユニットが、マウンティングに組付けられる第2の副キャリパと、この第2の副キャリパのシリンダ部に軸方向へ移動可能に組付けられて前記副サーボ荷重に応じて前記ディスクロータに向けて押動される第2の副制動ピストンと、この第2の副制動ピストンと前記ディスクロータ間に配置されて前記第2の副制動ピストンによって前記ディスクロータに向けて押動される第2の副パッドを備えていることも可能である。
【0009】
この場合には、制動時において、主サーボ機構にて得られる主サーボ荷重が、副制動ユニットの副制動ピストンにディスクロータに向けて作用し、副サーボ機構にて得られる副サーボ荷重が、第2の副制動ユニットにおける第2の副制動ピストンにディスクロータに向けて作用する。このため、主サーボ荷重と副サーボ荷重の増大が無限に繰り返すことがなくて、主サーボ機構にて得られる主サーボ荷重と副サーボ機構にて得られる副サーボ荷重が過度に大きくならない。したがって、主サーボ機構と副サーボ機構にサーボ抑制手段を採用することなく、主サーボ荷重と副サーボ荷重の過度の増大を抑えてブレーキロック動作を回避することが可能である。
【0010】
また、この場合には、ディスクロータのロータ周方向に所定の間隔にて配置した主制動ユニットと副制動ユニットと第2の副制動ユニットによってディスクロータが制動されるため、ディスクロータを単一の制動ユニットにて制動する場合に比して、制動時におけるディスクロータの共振点を変えることができて、制動時における特定周波数のブレーキ鳴きや振動を効果的に抑制することが可能である。
【0011】
また、本発明の実施に際して、前記第2の副制動ユニットは、制動時における前記第2の副パッドと前記ディスクロータのロータ周方向での摩擦力をアンカー荷重として取り出して同アンカー荷重を前記ディスクロータから離反する第2の副サーボ荷重に変換する第2の副サーボ機構を備えており、この第2の副サーボ機構にて変換される第2の副サーボ荷重は前記主制動ピストンを前記ディスクロータから離間させる方向に押圧するように設定されていることも可能である。
【0012】
この場合には、制動時において、主サーボ機構にて得られる主サーボ荷重が、副制動ユニットの副制動ピストンにディスクロータに向けて作用し、副サーボ機構にて得られる副サーボ荷重が、第2の副制動ユニットにおける第2の副制動ピストンにディスクロータに向けて作用し、第2の副サーボ機構にて得られる第2の副サーボ荷重が、主制動ユニットにおける主制動ピストンにディスクロータから離間する方向に向けて作用する。このため、主サーボ荷重と副サーボ荷重と第2の副サーボ荷重の増大が無限に繰り返すことがなくて、主サーボ機構にて得られる主サーボ荷重と副サーボ機構にて得られる副サーボ荷重と第2の副サーボ機構にて得られる第2の副サーボ荷重が過度に大きくならない。したがって、主サーボ機構と副サーボ機構と第2の副サーボ機構にサーボ抑制手段を採用することなく、主サーボ荷重と副サーボ荷重と第2の副サーボ機構の過度の増大を抑えてブレーキロック動作を回避することが可能である。
【0013】
また、この場合には、制動時において、主サーボ機構にて得られる主サーボ荷重が、副制動ユニットの副制動ピストンにディスクロータに向けて作用し、副サーボ機構にて得られる副サーボ荷重が、第2の副制動ユニットにおける第2の副制動ピストンにディスクロータに向けて作用し、第2の副サーボ機構にて得られる第2の副サーボ荷重が、主制動ユニットにおける主制動ピストンにディスクロータから離間する方向に向けて作用するため、通常使用される高摩擦係数領域(パッドとディスクロータ間の摩擦係数が、例えば、0.5〜0.7程度の高い領域)での摩擦係数の変化に伴う制動力の変化を抑えることが可能であり、安定した制動特性を得ることが可能である。
【0014】
また、この場合にも、ディスクロータのロータ周方向に所定の間隔にて配置した主制動ユニットと副制動ユニットと第2の副制動ユニットによってディスクロータが制動されるため、ディスクロータを単一の制動ユニットにて制動する場合に比して、制動時におけるディスクロータの共振点を変えることができて、制動時における特定周波数のブレーキ鳴きや振動を効果的に抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は本発明を車両用のディスクブレーキ装置に実施した第1実施形態を概略的に示していて、この第1実施形態のディスクブレーキ装置は、車輪Wと一体的に回転するディスクロータ11を制動可能な主制動ユニットB1と副制動ユニットB2を備えている。主制動ユニットB1と副制動ユニットB2は、図1に示したように、ディスクロータ11のロータ周方向に所定の間隔にて配置されている。
【0016】
主制動ユニットB1は、車体(図示省略)にブラケット12を介して組付けられるマウンティング21にロータ軸方向にて移動可能に組付けられた可動型の主キャリパ22と、この主キャリパ22のシリンダ部22aに軸方向へ移動可能に組付けられてマスタシリンダ油圧に応じてディスクロータ11に向けて押動される主制動ピストン23(図2参照)と、この主制動ピストン23とディスクロータ11間に配置されて主制動ピストン23によってディスクロータ11に向けて押動される主インナパッド24と、主キャリパ22の反力アーム部22b(図2参照)とディスクロータ11間に配置されて反力アーム部22bによってディスクロータ11に向けて押動される主アウタパッド25を備えている。
【0017】
主キャリパ22は、上記したシリンダ部22aと反力アーム部22bを有するとともに、これらを連結するブリッジ部22cと、一対の連結アーム部22d(図1参照)を有していて、各連結アーム部22dにてマウンティング21に周知のようにしてロータ軸方向へ移動可能に組付けられている。この主キャリパ22は、ブレーキマスタシリンダMCからの油圧が油室R1に供給されて主制動ピストン23が主インナパッド24に向けて押動・押圧されるとき、その反力にてマウンティング21に対してロータ軸方向へ移動して、その反力アーム部22bにて主アウタパッド25をディスクロータ11に向けて押動・押圧するように構成されている。
【0018】
主制動ピストン23は、主キャリパ22のシリンダ部22aにリトラクト機能を有するシールリング26を介してシリンダ軸方向へ摺動可能に嵌合されていて、シリンダ部22aに油室R1を形成しており、油室R1に供給されるマスタシリンダ油圧に応じて主インナパッド24に向けて軸方向に押動・押圧されるように構成されている。油室R1は、ブレーキペダルBPの踏み込みに応じて作動するブレーキマスタシリンダMCの油室に油圧回路Poを介して連通していて、操作力に応じた油圧がブレーキマスタシリンダMCの油室から供給可能に構成されている。
【0019】
主インナパッド24は、制動時に、その裏金24aにて主制動ピストン23によってディスクロータ11に向けて押動・押圧されてライニング24bにてディスクロータ11を制動するものであり、マウンティング21にロータ軸方向とロータ周方向へ所要量移動可能に組付けられている。一方、主アウタパッド25は、制動時に、その裏金25aにて主キャリパ22の反力アーム部22bによってディスクロータ11に向けて押動・押圧されてライニング25bにてディスクロータ11を制動するものであり、マウンティング21にロータ軸方向へ所要量移動可能にロータ周方向へ僅かに移動可能に組付けられている。
【0020】
また、主制動ユニットB1は、制動時における主インナパッド24とディスクロータ11のロータ周方向での摩擦力をアンカー荷重(アンカー油圧)として取り出して同アンカー荷重をディスクロータ11に向けた主サーボ荷重(主サーボ油圧)に変換して副制動ユニットB2の油室R2に付加する主サーボ機構30を備えている。主サーボ機構30は、前進制動時にアンカー荷重をアンカー油圧として取り出す油圧シリンダS1aと、後進制動時にアンカー荷重をアンカー油圧として取り出す油圧シリンダS1bを備えるとともに、各アンカー油圧を副制動ユニットB2の油室R2に付与する油圧回路P1を備えている。
【0021】
油圧シリンダS1aは、前進制動時に機能するものであり、主インナパッド24における裏金24aのロータ周方向一側に設けられていて、アンカーピストン31とアンカーシリンダ32を備えている。アンカーピストン31は、アンカーシリンダ32に組付けられていて、油室33を形成しており、前進制動時に主インナパッド24の裏金24aによってロータ周方向一側に押動されるように構成されている。なお、アンカーピストン31とアンカーシリンダ32間は、アンカーピストン31に組付けたシール部材34により大気圧側とは隔離されている。
【0022】
アンカーシリンダ32は、マウンティング21に一体的に設けられていて、アンカーピストン31が主インナパッド24の裏金24aによってロータ周方向一側に押動されることにより油室33にアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生するように構成されている。なお、アンカーシリンダ32は、主キャリパ22に一体的に設けられるようにして実施することも可能である。
【0023】
油圧シリンダS1bは、後進制動時に機能するものであり、主インナパッド24における裏金24aのロータ周方向他側に設けられていて、アンカーピストン35とアンカーシリンダ36を備えている。アンカーピストン35は、アンカーシリンダ36に組付けられていて、油室37を形成しており、後進制動時に主インナパッド24の裏金24aによってロータ周方向他側に押動されるように構成されている。なお、アンカーピストン35とアンカーシリンダ36間は、アンカーピストン35に組付けたシール部材38により大気圧側とは隔離されている。
【0024】
アンカーシリンダ36は、マウンティング21に一体的に設けられていて、アンカーピストン35が主インナパッド24の裏金24aによってロータ周方向他側に押動されることにより油室37にアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生するように構成されている。なお、アンカーシリンダ36は、主キャリパ22に一体的に設けられるようにして実施することも可能である。
【0025】
副制動ユニットB2は、車体(図示省略)にブラケット12を介して組付けられるマウンティング41にロータ軸方向にて移動可能に組付けられた可動型の副キャリパ42と、この副キャリパ42のシリンダ部42aに軸方向へ移動可能に組付けられて前記主サーボ荷重(主サーボ油圧)に応じてディスクロータ11に向けて押動される副制動ピストン43(図2参照)と、この副制動ピストン43とディスクロータ11間に配置されて副制動ピストン43によってディスクロータ11に向けて押動される副インナパッド44と、副キャリパ42の反力アーム部42bとディスクロータ11間に配置されて反力アーム部42bによってディスクロータ11に向けて押動される副アウタパッド45を備えている。
【0026】
副キャリパ42は、上記したシリンダ部42aと反力アーム部42bを有するとともに、これらを連結するブリッジ部42cと、一対の連結アーム部42d(図1参照)を有していて、各連結アーム部42dにてマウンティング41に周知のようにしてロータ軸方向へ移動可能に組付けられている。この副キャリパ42は、主サーボ機構30の各油室33,37からの油圧が油室R2に供給されて副制動ピストン43が副インナパッド44に向けて押動・押圧されるとき、その反力にてマウンティング41に対してロータ軸方向へ移動して、その反力アーム部42bにて副アウタパッド45をディスクロータ11に向けて押動・押圧するように構成されている。
【0027】
副制動ピストン43は、副キャリパ42のシリンダ部42aにリトラクト機能を有するシールリング46を介してシリンダ軸方向へ摺動可能に嵌合されていて、シリンダ部42aに油室R2を形成しており、油室R2に供給されるアンカー油圧に応じて副インナパッド44に向けて軸方向に押動・押圧されるように構成されている。
【0028】
副インナパッド44は、制動時に、その裏金44aにて副制動ピストン43によってディスクロータ11に向けて押動・押圧されてライニング44bにてディスクロータ11を制動するものであり、マウンティング41にロータ軸方向へ所要量移動可能にロータ周方向へ僅かに移動可能に組付けられている。一方、副アウタパッド45は、制動時に、その裏金45aにて副キャリパ42の反力アーム部42bによってディスクロータ11に向けて押動・押圧されてライニング45bにてディスクロータ11を制動するものであり、マウンティング41にロータ軸方向へ所要量移動可能にロータ周方向へ僅かに移動可能に組付けられている。
【0029】
上記のように構成した第1実施形態のディスクブレーキ装置においては、ブレーキペダルBPが踏み込まれると、その操作力に応じた油圧がブレーキマスタシリンダMCの油室から油圧回路Poを通して主キャリパ22の油室R1に供給される。このため、主制動ユニットB1にて、主制動ピストン23が操作力に応じた油圧により主インナパッド24に向けて軸方向に押動・押圧されて、主インナパッド24をディスクロータ11に向けて押動・押圧するとともに、その反力により主キャリパ22の反力アーム部22aが主アウタパッド25に向けて軸方向に押動・押圧されて、主アウタパッド25をディスクロータ11に向けて押動・押圧し、主インナパッド24と主アウタパッド25がディスクロータ11を挟持する。これにより、各パッド24,25とディスクロータ11間に制動力(各パッド24,25におけるライニング24b,25bとディスクロータ11のロータ周方向での摩擦力)が発生して、ディスクロータ11が制動される。
【0030】
また、主制動ユニットB1では、前進制動時に、主インナパッド24とディスクロータ11のロータ周方向での摩擦力が、主サーボ機構30の油圧シリンダS1aにて、アンカー荷重(アンカー油圧)として取り出されて、このアンカー油圧が、主サーボ機構30の油圧回路P1にて、ディスクロータ11に向けた主サーボ荷重(油圧)に変換されて、副制動ユニットB2の油室R2に付与される。このとき、油圧シリンダS1bのアンカーピストン35は、アンカーシリンダ36の底部に当接していて移動不能である。また、後進制動時に、主インナパッド24とディスクロータ11のロータ周方向での摩擦力が、主サーボ機構30の油圧シリンダS1bにて、アンカー油圧として取り出されて、このアンカー油圧が、主サーボ機構30の油圧回路P1にて、ディスクロータ11に向けた主サーボ荷重(油圧)に変換されて、副制動ユニットB2の油室R2に付与される。このとき、油圧シリンダS1aのアンカーピストン31は、アンカーシリンダ32の底部に当接していて移動不能である。なお、各制動時における主アウタパッド25側のアンカー荷重はマウンティング21にて受け止められる。
【0031】
このため、各制動時には、副制動ユニットB2にて、副制動ピストン43が主サーボ荷重(油圧)により副インナパッド44に向けて軸方向に押動・押圧されて、副インナパッド44をディスクロータ11に向けて押動・押圧するとともに、その反力により副キャリパ42の反力アーム部42aが副アウタパッド45に向けて軸方向に押動・押圧されて、副アウタパッド45をディスクロータ11に向けて押動・押圧し、副インナパッド44と副アウタパッド45がディスクロータ11を挟持する。なお、各制動時における各パッド44,45のアンカー荷重はマウンティング41にて受け止められる。
【0032】
これにより、各パッド44,45とディスクロータ11間に制動力(各パッド44,45におけるライニング44b,45bとディスクロータ11のロータ周方向での摩擦力)が発生して、ディスクロータ11が制動される。したがって、各制動時には、主制動ユニットB1と副制動ユニットB2にてディスクロータ11が制動されて、小さな操作力にて大きなブレーキ力を得ることが可能である。
【0033】
ところで、この第1実施形態のディスクブレーキ装置においては、各制動時において主サーボ機構30にて得られる主サーボ荷重(油圧)が、副制動ユニットB2の副制動ピストン43に作用して、主制動ユニットB1の主制動ピストン23に作用することはない。このため、主サーボ荷重(油圧)の増大が無限に繰り返すことがなくて、主サーボ機構30にて得られる主サーボ荷重(油圧)が過度に大きくならない。したがって、主サーボ機構30にサーボ抑制手段を採用することなく、主サーボ荷重(油圧)の過度の増大を抑えてブレーキロック動作を回避することが可能である。
【0034】
また、この第1実施形態のディスクブレーキ装置においては、ディスクロータ11のロータ周方向に所定の間隔にて配置した主制動ユニットB1と副制動ユニットB2によってディスクロータ11が制動されるため、ディスクロータ11を単一の制動ユニットにて制動する場合に比して、制動時におけるディスクロータ11の共振点を変えることができて、制動時における特定周波数のブレーキ鳴きや振動を効果的に抑制することが可能である。
【0035】
上記した第1実施形態においては、ディスクブレーキ装置が主制動ユニットB1と1個の副制動ユニットB2を備える構成として実施したが、図3と図4に示した第2実施形態のように、ディスクブレーキ装置が主制動ユニットB1と2個の副制動ユニットB2a,B2bを備える構成として実施することも可能である。図3と図4に示した第2実施形態の主制動ユニットB1の構成は、図からも明らかなように、上記した第1実施形態の主制動ユニットB1の構成と同じであるため、説明は省略する。また、第2実施形態の各副制動ユニットB2a,B2bの構成は、図からも明らかなように、上記した第1実施形態の副制動ユニットB2の構成と同じであるため、説明は省略する。
【0036】
この第2実施形態のディスクブレーキ装置においては、前進制動時と後進制動時に、主制動ユニットB1と2個の副制動ユニットB2a,B2bにてディスクロータ11が制動される。したがって、この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。なお、上記した副制動ユニット(B2a,B2b)の個数は3個以上として実施することも可能である。
【0037】
また、上記した第1実施形態においては、ディスクブレーキ装置が、主サーボ機構30を備える主制動ユニットB1と、サーボ機構を備えていない1個の副制動ユニットB2を備える構成として実施したが、図5と図6に示した第3実施形態のように、ディスクブレーキ装置が、主サーボ機構30を備える主制動ユニットB1と、副サーボ機構を備える2個の副制動ユニットB3a,B3bを備える構成として実施することも可能である。図5と図6に示した第3実施形態の主制動ユニットB1の構成は、図からも明らかなように、主サーボ機構30の油圧回路P1が油圧回路P1aとP1bに分離されていることを除いて、上記した第1実施形態の主制動ユニットB1の構成と同じであるため、説明は省略する。
【0038】
副制動ユニットB3aは、図からも明らかなように、副サーボ機構50を備えることを除いて、上記した第1実施形態の副制動ユニットB2の構成と同じであるため、副サーボ機構50以外の構成の説明は省略する。一方、副制動ユニットB3bは、図からも明らかなように、副サーボ機構60を備えることを除いて、上記した第1実施形態の副制動ユニットB2の構成と同じであるため、副サーボ機構60以外の構成の説明は省略する。
【0039】
副サーボ機構50は、前進制動時にアンカー荷重をアンカー油圧として取り出す油圧シリンダS2aを備えるとともに、アンカー油圧を副制動ユニットB3bの油室R2に付与する油圧回路P2aを備えている。油圧シリンダS2aは、副制動ユニットB3aの副インナパッド44における裏金44aのロータ周方向一側に設けられていて、アンカーピストン51とアンカーシリンダ52を備えている。アンカーピストン51は、アンカーシリンダ52に組付けられていて、油室53を形成しており、前進制動時に副制動ユニットB3aの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向一側に押動されるように構成されている。なお、アンカーピストン51とアンカーシリンダ52間は、アンカーピストン51に組付けたシール部材54により大気圧側とは隔離されている。
【0040】
アンカーシリンダ52は、副制動ユニットB3aのマウンティング41に一体的に設けられていて、アンカーピストン51が副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向一側に押動されることにより油室53にアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生するように構成されている。なお、アンカーシリンダ52は、副制動ユニットB3aの副キャリパ42に一体的に設けられるようにして実施することも可能である。
【0041】
副サーボ機構60は、後進制動時にアンカー荷重をアンカー油圧として取り出す油圧シリンダS3bを備えるとともに、アンカー油圧を副制動ユニットB3aの油室R2に付与する油圧回路P3bを備えている。油圧シリンダS3bは、副制動ユニットB3bの副インナパッド44における裏金44aのロータ周方向他側に設けられていて、アンカーピストン65とアンカーシリンダ66を備えている。アンカーピストン65は、アンカーシリンダ66に組付けられていて、油室67を形成しており、後進制動時に副制動ユニットB3bの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向他側に押動されるように構成されている。なお、アンカーピストン65とアンカーシリンダ66間は、アンカーピストン65に組付けたシール部材68により大気圧側とは隔離されている。
【0042】
アンカーシリンダ65は、副制動ユニットB3bのマウンティング41に一体的に設けられていて、アンカーピストン65が副制動ユニットB3bの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向他側に押動されることにより油室67にアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生するように構成されている。なお、アンカーシリンダ66は、副制動ユニットB3bの副キャリパ42に一体的に設けられるようにして実施することも可能である。
【0043】
上記した第3実施形態においては、前進制動時に、主サーボ機構30の油圧シリンダS1aにて得られて油圧回路P1aを通して供給される油圧により副制動ユニットB3aが作動し、副サーボ機構50の油圧シリンダS2aにて得られて油圧回路P2aを通して供給される油圧により副制動ユニットB3bが作動する。また、後進制動時に、主サーボ機構30の油圧シリンダS1bにて得られて油圧回路P1bを通して供給される油圧により副制動ユニットB3bが作動し、副サーボ機構60の油圧シリンダS3bにて得られて油圧回路P3bを通して供給される油圧により副制動ユニットB3aが作動する。その他の作動は、上記した第2実施形態の作動と実質的に同じであるため、上記した第2実施形態の作用効果と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0044】
上記した第3実施形態においては、ディスクブレーキ装置が、主制動ユニットB1と副制動ユニットB3a,B3bを備える構成として実施したが、図7と図8に示した第4実施形態のように、ディスクブレーキ装置が、主制動ユニットB1と副制動ユニットB3a,B3b,B3cを備える構成として実施することも可能である。図7と図8に示した第4実施形態の主制動ユニットB1の構成は、図からも明らかなように、主サーボ機構30の油圧回路P1が油圧回路P1aとP1bに分離されていることを除いて、上記した第1実施形態の主制動ユニットB1の構成と同じであるため、説明は省略する。また、図7と図8に示した第4実施形態の副制動ユニットB3a,B3bの構成は、図からも明らかなように、各副サーボ機構50,60の油圧回路P2a,P3bが副制動ユニットB3cの油室R2に油圧を供給可能に接続されていることを除いて、上記した第3実施形態の副制動ユニットB3a,B3bの構成と同じであるため、説明は省略する。
【0045】
図7と図8に示した第4実施形態の副制動ユニットB3cは、図からも明らかなように、副サーボ機構70を備えることを除いて、上記した第1実施形態の副制動ユニットB2の構成と同じであるため、副サーボ機構70以外の構成の説明は省略する。副サーボ機構70は、前進制動時にアンカー荷重をアンカー油圧として取り出す油圧シリンダS4aと、後進制動時にアンカー荷重をアンカー油圧として取り出す油圧シリンダS4bを備えるとともに、各アンカー油圧を各副制動ユニットB3a,B3bの油室R2に付与する油圧回路P4b,P4aを備えている。
【0046】
油圧シリンダS4aは、前進制動時に機能するものであり、副制動ユニットB3cの副インナパッド44における裏金44aのロータ周方向一側に設けられていて、アンカーピストン71とアンカーシリンダ72を備えている。アンカーピストン71は、アンカーシリンダ72に組付けられていて、油室73を形成しており、前進制動時に副制動ユニットB3cの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向一側に押動されるように構成されている。なお、アンカーピストン71とアンカーシリンダ72間は、アンカーピストン71に組付けたシール部材74により大気圧側とは隔離されている。
【0047】
アンカーシリンダ72は、副制動ユニットB3cのマウンティング41に一体的に設けられていて、アンカーピストン71が副制動ユニットB3cの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向一側に押動されることにより油室73にアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生するように構成されている。なお、アンカーシリンダ72は、副制動ユニットB3cの副キャリパ42に一体的に設けられるようにして実施することも可能である。
【0048】
油圧シリンダS4bは、後進制動時に機能するものであり、副制動ユニットB3cの副インナパッド44における裏金44aのロータ周方向他側に設けられていて、アンカーピストン75とアンカーシリンダ76を備えている。アンカーピストン75は、アンカーシリンダ76に組付けられていて、油室77を形成しており、後進制動時に副制動ユニットB3cの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向他側に押動されるように構成されている。なお、アンカーピストン75とアンカーシリンダ76間は、アンカーピストン75に組付けたシール部材78により大気圧側とは隔離されている。
【0049】
アンカーシリンダ76は、副制動ユニットB3cのマウンティング41に一体的に設けられていて、アンカーピストン75が副制動ユニットB3cの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向他側に押動されることにより油室77にアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生するように構成されている。なお、アンカーシリンダ76は、副制動ユニットB3cの副キャリパ42に一体的に設けられるようにして実施することも可能である。
【0050】
上記した第4実施形態においては、前進制動時に、主サーボ機構30の油圧シリンダS1aにて得られて油圧回路P1aを通して供給される油圧により副制動ユニットB3aが作動し、副サーボ機構50の油圧シリンダS2aにて得られて油圧回路P2aを通して供給される油圧により副制動ユニットB3cが作動し、副サーボ機構70の油圧シリンダS4aにて得られて油圧回路P4aを通して供給される油圧により副制動ユニットB3bが作動する。また、後進制動時に、主サーボ機構30の油圧シリンダS1bにて得られて油圧回路P1bを通して供給される油圧により副制動ユニットB3bが作動し、副サーボ機構60の油圧シリンダS3bにて得られて油圧回路P3bを通して供給される油圧により副制動ユニットB3cが作動し、副サーボ機構70の油圧シリンダS4bにて得られて油圧回路P4bを通して供給される油圧により副制動ユニットB3aが作動する。その他の作動は、上記した第2実施形態または第3実施形態の作動と実質的に同じであるため、上記した第2実施形態または第3実施形態の作用効果と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0051】
上記した第3実施形態においては、ディスクブレーキ装置が、主制動ユニットB1と副制動ユニットB3a,B3bを備える構成として実施したが、図9と図10に示した第5実施形態のように、ディスクブレーキ装置が、主制動ユニットB1aと副制動ユニットB4a,B4bを備える構成として実施することも可能である。図9と図10に示した第5実施形態の主制動ユニットB1aは、図からも明らかなように、主制動ピストン23が段付形状に形成されていて、シリンダ部22aに油室R1を形成するとともに環状油室R3を形成していることを除いて、上記した第3実施形態の主制動ユニットB1の構成と実質的に同じ構成であるため、その構成の説明は省略する。なお、油室R1と環状油室R3間は、主制動ピストン23に組付けたシール部材27により隔離されている。
【0052】
また、図9と図10に示した第5実施形態の副制動ユニットB4aの構成は、図からも明らかなように、副サーボ機構50が油圧シリンダS2bと油圧回路P2bを備えることを除いて、上記した第3実施形態の副制動ユニットB3aの構成と同じであるため、説明は省略する。油圧回路P2bは、油圧シリンダS2bの油室57と主制動ユニットB1aの環状油室R3を連通させている。
【0053】
油圧シリンダS2bは、後進制動時に機能するものであり、副制動ユニットB4aの副インナパッド44における裏金44aのロータ周方向他側に設けられていて、アンカーピストン55とアンカーシリンダ56を備えている。アンカーピストン55は、アンカーシリンダ56に組付けられていて、油室57を形成しており、後進制動時に副制動ユニットB4aの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向他側に押動されるように構成されている。なお、アンカーピストン55とアンカーシリンダ56間は、アンカーピストン55に組付けたシール部材58により大気圧側とは隔離されている。
【0054】
アンカーシリンダ56は、副制動ユニットB4aのマウンティング41に一体的に設けられていて、アンカーピストン55が副制動ユニットB4aの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向他側に押動されることにより油室57にアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生するように構成されている。なお、アンカーシリンダ56は、副制動ユニットB4aの副キャリパ42に一体的に設けられるようにして実施することも可能である。
【0055】
また、図9と図10に示した第5実施形態の副制動ユニットB4bの構成は、図からも明らかなように、副サーボ機構60が油圧シリンダS3aと油圧回路P3aを備えることを除いて、上記した第3実施形態の副制動ユニットB3bの構成と同じであるため、説明は省略する。油圧回路P3aは、油圧シリンダS3aの油室63と主制動ユニットB1aの環状油室R3を連通させている。
【0056】
油圧シリンダS3aは、前進制動時に機能するものであり、副制動ユニットB4bの副インナパッド44における裏金44aのロータ周方向一側に設けられていて、アンカーピストン61とアンカーシリンダ62を備えている。アンカーピストン61は、アンカーシリンダ62に組付けられていて、油室63を形成しており、前進制動時に副制動ユニットB4bの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向一側に押動されるように構成されている。なお、アンカーピストン61とアンカーシリンダ62間は、アンカーピストン61に組付けたシール部材64により大気圧側とは隔離されている。
【0057】
アンカーシリンダ62は、副制動ユニットB4bのマウンティング41に一体的に設けられていて、アンカーピストン61が副制動ユニットB4bの副インナパッド44の裏金44aによってロータ周方向一側に押動されることにより油室63にアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生するように構成されている。なお、アンカーシリンダ62は、副制動ユニットB4bの副キャリパ42に一体的に設けられるようにして実施することも可能である。
【0058】
上記した第5実施形態においては、前進制動時に、主サーボ機構30の油圧シリンダS1aにて得られて油圧回路P1aを通して供給される油圧により副制動ユニットB4aの副制動ピストン43がディスクロータ11に向けて押動されて、副制動ユニットB4aが作動し、副サーボ機構50の油圧シリンダS2aにて得られて油圧回路P2aを通して供給される油圧により副制動ユニットB4bの副制動ピストン43がディスクロータ11に向けて押動されて、副制動ユニットB4bが作動し、副サーボ機構60の油圧シリンダS3aにて得られて油圧回路P3aを通して供給される油圧により主制動ユニットB1aの主制動ピストン23がディスクロータ11から離間する方向に押圧されて、主制動ユニットB1aでのマスタシリンダ油圧による制動動作が抑制される。
【0059】
また、後進制動時に、主サーボ機構30の油圧シリンダS1bにて得られて油圧回路P1bを通して供給される油圧により副制動ユニットB4bの副制動ピストン43がディスクロータ11に向けて押動されて、副制動ユニットB4bが作動し、副サーボ機構60の油圧シリンダS3bにて得られて油圧回路P3bを通して供給される油圧により副制動ユニットB4aの副制動ピストン43がディスクロータ11に向けて押動されて、副制動ユニットB4aが作動し、副サーボ機構50の油圧シリンダS2bにて得られて油圧回路P2bを通して供給される油圧により主制動ユニットB1aの主制動ピストン23がディスクロータ11から離間する方向に押圧されて、主制動ユニットB1aでのマスタシリンダ油圧による制動動作が抑制される。
【0060】
このため、この第5実施形態においては、各制動時において、通常使用される高摩擦係数領域(各パッドとディスクロータ間の摩擦係数が、例えば、0.5〜0.7程度の高い領域)での摩擦係数の変化に伴う制動力の変化を抑えることが可能であり、安定した制動特性を得ることが可能である。その他の作動は、上記した第3実施形態の作動と実質的に同じであるため、上記した第3実施形態の作用効果と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0061】
上記した第5実施形態においては、ディスクブレーキ装置が、主制動ユニットB1aと副制動ユニットB4a,B4bを備える構成として実施したが、図11と図12に示した第6実施形態のように、ディスクブレーキ装置が、主制動ユニットB1aと副制動ユニットB4a,B4b,B4cを備える構成として実施することも可能である。図11と図12に示した第6実施形態の主制動ユニットB1aの構成は、図からも明らかなように、上記した第5実施形態の主制動ユニットB1aの構成と同じであるため、説明は省略する。また、第6実施形態の副制動ユニットB4a,B4bの構成は、図からも明らかなように、各副サーボ機構50,60の油圧回路P2a,P3bが副制動ユニットB4cの油室R2に油圧を供給可能に接続されていることを除いて、上記した第5実施形態の副制動ユニットB4a,B4bの構成と同じであるため、説明は省略する。また、第6実施形態の副制動ユニットB4cは、図からも明らかなように、上記した第4実施形態の副制動ユニットB3cの構成と同じであるため、説明は省略する。
【0062】
上記した第6実施形態においては、前進制動時に、主サーボ機構30の油圧シリンダS1aにて得られて油圧回路P1aを通して供給される油圧により副制動ユニットB4aが作動し、副サーボ機構50の油圧シリンダS2aにて得られて油圧回路P2aを通して供給される油圧により副制動ユニットB4cが作動し、副サーボ機構70の油圧シリンダS4aにて得られて油圧回路P4aを通して供給される油圧により副制動ユニットB4bが作動し、副サーボ機構60の油圧シリンダS3aにて得られて油圧回路P3aを通して供給される油圧により主制動ユニットB1aの主制動ピストン23がディスクロータ11から離間する方向に押圧されて、主制動ユニットB1aでのマスタシリンダ油圧による制動動作が抑制される。
【0063】
また、後進制動時に、主サーボ機構30の油圧シリンダS1bにて得られて油圧回路P1bを通して供給される油圧により副制動ユニットB4bが作動し、副サーボ機構60の油圧シリンダS3bにて得られて油圧回路P3bを通して供給される油圧により副制動ユニットB4cが作動し、副サーボ機構70の油圧シリンダS4bにて得られて油圧回路P4bを通して供給される油圧により副制動ユニットB4aが作動し、副サーボ機構50の油圧シリンダS2bにて得られて油圧回路P2bを通して供給される油圧により主制動ユニットB1aの主制動ピストン23がディスクロータ11から離間する方向に押圧されて、主制動ユニットB1aでのマスタシリンダ油圧による制動動作が抑制される。
【0064】
このため、この第6実施形態においては、各制動時において、通常使用される高摩擦係数領域(各パッドとディスクロータ間の摩擦係数が、例えば、0.5〜0.7程度の高い領域)での摩擦係数の変化に伴う制動力の変化を抑えることが可能であり、安定した制動特性を得ることが可能である。その他の作動は、上記した第4実施形態の作動と実質的に同じであるため、上記した第4実施形態の作用効果と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0065】
上記した第1実施形態〜第6実施形態においては、主制動ユニットB1,B1aの主制動ピストン23がマスタシリンダ油圧に応じて作動するように構成して実施したが、図13に示した第7実施形態のように、主制動ユニットB1a(B1)の主制動ピストン23が電気モータMの駆動力(ねじ送り機構Dにて回転運動が直線運動に変換される)に応じて作動するように構成して実施することも可能である。
【0066】
また、上記した第4実施形態と第6実施形態においては、主制動ユニットB1(B1a)と3個の副制動ユニットB3a,B3b,B3c(B4a,B4b,B4c)がディスクロータ11のロータ周方向にて等間隔に配置されるように構成して実施したが、図14に示した第8実施形態のように、主制動ユニットB1(B1a)と3個の副制動ユニットB3a,B3b,B3c(B4a,B4b,B4c)がディスクロータ11のロータ周方向にて不等間隔に配置されるように構成して実施することも可能である。この場合には、制動時におけるディスクロータ11の共振を上記した第4実施形態と第6実施形態に比して効果的に抑制することが可能であり、制動時におけるブレーキ鳴きや振動を更に効果的に抑制することが可能である。
【0067】
また、上記した各実施形態においては、インナパッドの裏金を使用してアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生させているが、前進時にアウタパッドの裏金でアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生させて実施することも可能である。また、同様に、後進時にアウタパッドの裏金でアンカー荷重に応じたアンカー油圧を発生させて実施することも可能である。
【0068】
また、上記した各実施形態においては、油圧式のサーボ機構(30,50,60,70)を採用して実施したが、機械式のサーボ機構を採用して実施することも可能である。また、上記した各実施形態においては、可動キャリパ式のディスクブレーキ装置に実施したが、固定キャリパ式のディスクブレーキ装置に実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明によるディスクブレーキ装置の第1実施形態を概略的に示す側面図である。
【図2】図1に示したディスクブレーキ装置の構成を示す展開断面図である。
【図3】本発明によるディスクブレーキ装置の第2実施形態を概略的に示す側面図である。
【図4】図3に示したディスクブレーキ装置の構成を示す展開断面図である。
【図5】本発明によるディスクブレーキ装置の第3実施形態を概略的に示す側面図である。
【図6】図5に示したディスクブレーキ装置の構成を示す展開断面図である。
【図7】本発明によるディスクブレーキ装置の第4実施形態を概略的に示す側面図である。
【図8】図7に示したディスクブレーキ装置の構成を示す展開断面図である。
【図9】本発明によるディスクブレーキ装置の第5実施形態を概略的に示す側面図である。
【図10】図9に示したディスクブレーキ装置の構成を示す展開断面図である。
【図11】本発明によるディスクブレーキ装置の第6実施形態を概略的に示す側面図である。
【図12】図11に示したディスクブレーキ装置の構成を示す展開断面図である。
【図13】本発明によるディスクブレーキ装置の第7実施形態(電気モータで駆動するディスクブレーキ装置)を概略的に示す要部断面図である。
【図14】本発明によるディスクブレーキ装置の第8実施形態を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0070】
11…ディスクロータ、12…ブラケット、21…マウンティング、22…主キャリパ、23…主制動ピストン、24…主インナパッド、25…主アウタパッド、30…主サーボ機構、41…マウンティング、42…副キャリパ、43…副制動ピストン、44…副インナパッド、45…副アウタパッド、50,60,70…副サーボ機構、B1・B1a…主制動ユニット、B2・B2a,B2b・B3a,B3b・B3a,B3b,B3c・B4a,B4b・B4a,B4b,B4c…副制動ユニット、BP…ブレーキペダル、MC…ブレーキマスタシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータのロータ周方向に主制動ユニットと副制動ユニットが所定の間隔にて配置されていて、
前記主制動ユニットが、マウンティングに組付けられる主キャリパと、この主キャリパのシリンダ部に軸方向へ移動可能に組付けられて操作力に応じて前記ディスクロータに向けて押動される主制動ピストンと、この主制動ピストンと前記ディスクロータ間に配置されて前記主制動ピストンによって前記ディスクロータに向けて押動される主パッドを備えるとともに、制動時における前記主パッドと前記ディスクロータのロータ周方向での摩擦力をアンカー荷重として取り出して同アンカー荷重を前記ディスクロータに向けた主サーボ荷重に変換する主サーボ機構を備えており、
前記副制動ユニットが、マウンティングに組付けられる副キャリパと、この副キャリパのシリンダ部に軸方向へ移動可能に組付けられて前記主サーボ荷重に応じて前記ディスクロータに向けて押動される副制動ピストンと、この副制動ピストンと前記ディスクロータ間に配置されて前記副制動ピストンによって前記ディスクロータに向けて押動される副パッドを備えているディスクブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスクブレーキ装置において、前記副制動ユニットは前記ディスクロータのロータ周方向に複数個設けられていることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のディスクブレーキ装置において、前記副制動ユニットに対して第2の副制動ユニットがディスクロータのロータ周方向に所定の間隔にて配置されていて、前記副制動ユニットには、制動時における前記副パッドと前記ディスクロータのロータ周方向での摩擦力をアンカー荷重として取り出して同アンカー荷重を前記ディスクロータに向けた副サーボ荷重に変換する副サーボ機構が設けられており、前記第2の副制動ユニットが、マウンティングに組付けられる第2の副キャリパと、この第2の副キャリパのシリンダ部に軸方向へ移動可能に組付けられて前記副サーボ荷重に応じて前記ディスクロータに向けて押動される第2の副制動ピストンと、この第2の副制動ピストンと前記ディスクロータ間に配置されて前記第2の副制動ピストンによって前記ディスクロータに向けて押動される第2の副パッドを備えていることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のディスクブレーキ装置において、前記第2の副制動ユニットは、制動時における前記第2の副パッドと前記ディスクロータのロータ周方向での摩擦力をアンカー荷重として取り出して同アンカー荷重を前記ディスクロータから離反する第2の副サーボ荷重に変換する第2の副サーボ機構を備えており、この第2の副サーボ機構にて変換される第2の副サーボ荷重は前記主制動ピストンを前記ディスクロータから離間させる方向に押圧するように設定されていることを特徴とするディスクブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−113762(P2007−113762A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308531(P2005−308531)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】