説明

ディスク判別装置、方法及びプログラム

【課題】装填された光ディスクがCDプレーヤ10において再生可能であるか否かの判別に要する処理時間を短縮する。
【解決手段】コマンドを発行して、トラッキングサーボ及びフォーカスサーボをそれぞれオフ、オンにしてTrゲインを調整するTr粗ゲイン調整を実施する(S61,S62)。Tr粗ゲイン調整期間終了後、Tr粗ゲイン調整中のFE及びTEの振幅比を算出するか、又はTr粗ゲイン調整中のOFTデューティ比を読出す。該振幅比≧閾値Taであるか否か、又はOFTデューティ比≦Daであるか否かを判定する(S64)。判定が正であれば、装填ディスクは、CDプレーヤ10が再生非対応とするディスク(例:DVD)であるか、裏入れとなっていて、再生不能のディスクであると判断する(R66)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載用CDプレーヤ等に装備されるディスク判別装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc:コンパクトディスク)プレーヤ等のディスク再生装置では、ディスクの装填に伴い、装填ディスクが本機において再生可能であるか否かを判別し、再生可能なディスクである場合のみ、再生処理を実施することにし、再生不能ディスクと判断した場合には、再生処理を保留することにしている。
【0003】
特許文献1は、装填ディスクがCD−DAやCD−Rであるか、又はCD−RWであるかをディスクの反射率に基づき判別することを開示する(特許文献1段落0052)。その具体的な判別方法では、フォーカスエラー振幅に基づきフォーカスゲイン設定及びトラッキングゲイン仮設定を行ってから(特許文献1図4)、フォーカスゲインの設定値に基づき反射率を検出したり(特許文献1段落0051及び図3)、トラッキングエラー振幅に基づきトラッキングゲイン設定を行ってから(特許文献1図5)、トラッキングゲイン比の設定値に基づき反射率を検出したりしている(特許文献1段落0064及び図7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−228401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の判別方法では、ディスクを判別するために、フォーカスゲイン設定及びトラッキングゲイン仮設定処理又はトラッキングゲイン設定処理を複数回実施する必要があるので(特許文献1図3又は図7)、判別に要する時間が長引く。
【0006】
本発明の目的は、ディスク判別に要する時間を短縮化できるディスク判別装置、方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、装填された光ディスク(83)に対するトラッキングエラー及びフォーカスエラー間の比率関係又はオフトラック信号のデューティ比に基づき該装填ディスク(83)が再生可能であるか否かを判別する。
【0008】
本発明のディスク判別装置(80)は次の要素を備える。
光ディスク(83)に対するトラッキングエラーとフォーカスエラーとの比率又はオフトラック信号のデューティ比を検出する検出部(81)、及び
検出した前記比率又は前記デューティ比に基づき前記光ディスク(83)が再生可能であるか否かを判別する判別部(82)。
【0009】
本発明のディスク再生方法(90)は次のステップを備える。
光ディスク(83)に対するトラッキングエラーとフォーカスエラーとの比率又はオフトラック信号のデューティ比を検出する検出ステップ(S91)、及び
検出した前記比率又は前記デューティ比に基づき前記光ディスク(83)が再生可能であるか否かを判別する判別ステップ(S92)。
【0010】
本発明のプログラムは、コンピュータを、
光ディスク(83)に対するトラッキングエラーとフォーカスエラーとの比率又はオフトラック信号のデューティ比を検出する検出部(81)、及び
検出した前記比率又は前記デューティ比に基づき前記光ディスク(83)が再生可能であるか否かを判別する判別部(82)、
として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装填された光ディスクに対するトラッキングエラー及びフォーカスエラー間の比率関係又はオフトラック信号のデューティ比に基づき該光ディスクが再生可能であるか否かを判別することにより、判別に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】CDプレーヤの主要部概略構成図である。
【図2】再生準備用自動調整方法のフローチャートである。
【図3】図2におけるトラック粗ゲイン調整における処理の詳細なフローチャートである。
【図4】トラック粗ゲイン調整中のTE信号の波形を示す図である。
【図5】図3の低品質ディスク読取り改善処理ルーチンの詳細を示すフローチャートである。
【図6】各種ディスクにおけるFE/TEの比率とOFTデューティ比との関係を示したものである。
【図7】ディスク再生装置のブロック図である。
【図8】ディスク再生方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1はCDプレーヤ10の主要部概略構成図である。CDプレーヤ10は例えば自動車内に搭載される。なお、CDプレーヤ10はあくまで本発明の実施例であり、図7及び図8を用いて後述するように、本発明はCDプレーヤ10以外のディスク再生装置にも適用することができる。
【0014】
ディスク11は、光ディスクであり、例えばCD(Compact Disc:コンパクトディスク)であり、具体的には、CD−AD、CD−R及びCD−RWが含まれる。CD−Rには、標準品質のもの以外に、標準品質に達しない低品質ディスク(例:トラックピッチの狭い狭ピッチディスクや、トラッキングエラー振幅値の小さかったりクロストークの大きかったりする等の光学特性の劣るディスク)も含まれる。ディスク11は、CDプレーヤ10においてチャッキング中は、ターンテーブル(図示せず)に載置されるとともに、上側からクランパ(図示せず)によりターンテーブルに押圧される。スピンドルモータ13はターンテーブルを回転駆動する。
【0015】
光ピックアップ15は、トラバース装置としてのスレッドモータ21によりディスク11に対してその径方向へ移動自在とされる。光ピックアップ15は、また、対物レンズ16及び電磁コイル17を有している。電磁コイル17は、サーボ回路38からのサーボ信号に基づき対物レンズ16を軸方向及びディスク11のトラック幅方向へ移動し、対物レンズ16からのレーザ光18はディスク11のデータ面側の所定部位に照射され、光ピックアップ15は、ディスク11からの反射光に基づきRF信号を生成する。
【0016】
光ピックアップ15から出力されるRF信号は、RFアンプ26において増幅されてから、デジタル信号処理回路27へ入力され、デジタル信号処理回路27において、復調、伸長及び復号等の処理を受ける。デジタル信号処理回路27は、RFアンプ26からの入力信号に基づき抽出したデジタルオーディオ信号等をDAC(デジタル−アナログ変換器)へ送り、DACは、デジタル信号処理回路27からのデジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号へ変換する。このアナログオーディオ信号は、スピーカ(図示せず)へ送られて、音声として出力される。
【0017】
システムコントローラ30は、ユーザにより操作される操作部31からユーザ指示を受付けるとともに、デジタル信号処理回路27から所定の情報を入力され、これらユーザ指示や入力情報に基づきデジタル信号処理回路27、表示部32及びサーボ回路38へ制御信号や所定のデータ信号を出力する。メモリ33には、システムコントローラ30の処理に使用されるデータをシステムコントローラ30が読出し自在に書込むようになっている。サーボ回路38は、RFアンプ26からのRF信号及びシステムコントローラ30からの制御信号に基づき各種サーボ信号を生成し、それらをスピンドルモータ13、光ピックアップ15及びスレッドモータ21へ送出する。
【0018】
図2は再生処理に先立ち再生準備のために実施する再生準備用自動調整方法40のフローチャートである。再生準備用自動調整方法40は、ユーザによりディスクがCDプレーヤ10へ挿入されるのに伴い、実行される。S41では、ユーザがディスクをCDプレーヤ10へ挿入する。ユーザは、CDプレーヤ10がCD専用のプレーヤとなっていることを知っているものの、間違って、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)を入れたりディスク11を裏入れ(データ面を光ピックアップ15とは反対側に向けて入れること。)したりすることがある。CD専用機としてのCDプレーヤ10は、当然に、DVDや裏入れのCDを再生することはできない。
【0019】
S42では、ディスクがCDプレーヤ10に挿入されたことを検知する。S43では、スピンドルモータ13の電源をオンにし、スピンドルモータ13の駆動を開始する。S44では、FE(フォーカスエラー)ゲインを調整して、FEの振幅を適正化する。
【0020】
S45では、TE(トラッキングエラー)のアナログ信号(デジタル信号へ変換前のTE信号)の仮ゲインを設定し、このアナログ信号の振幅を適正化する。S45の実行時では、Tr(トラッキングサーボ)はまだオンになっていない。S46では、フォーカスオフセットを調整する。フォーカスオフセットは、CDプレーヤ10の素子等のばらつきに因るFE信号のばらつきを解消するために、設定されるものであり、Fo(フォーカスサーボ)中、センサからのFE信号は、フォーカスオフセットを加算されてから、Foのフィードバック信号として使用される。S46は、Foをオフにした状態で実行される。
【0021】
S47では、S16で調整したフォーカスオフセットの値でFoをオンにし、Trはオフのままにする。S48では、Tr粗ゲイン調整を行う。該Tr粗ゲイン調整では、OFT(オフトラック)調整及びTEゲイン振幅調整も併せて実施する。S47のTr粗ゲイン調整では、光ピックアップ15をディスク11の半径方向へ移送する移送装置としてのスレッドモータ21は作動を停止されている。光ピックアップ15のTr粗ゲイン調整については、図3を用いて再度説明する。
【0022】
S49では、トラッキングバランスを調整する。トラッキングバランス調整により、素子のばらつきに関係なく、TE信号の基準値がトラック幅の中心線位置に対応付けられる。S50では、Fo(フォーカスサーボ)及びTr(トラッキングサーボ)を共にオンにする。この後、光ピックアップ15をディスクの半径方向へ移送するスレッドモータ21のトラバースサーボも作動させてから、ディスクの再生動作へ移行する。
【0023】
図3は図2におけるトラック粗ゲイン調整S48における処理の詳細なフローチャートである。S61では、Tr粗ゲイン調整コマンドを発行する。図1のシステムコントローラ30は、CDプレーヤ10全体を制御する全体制御用マイコンと、CDドライブのドライブ用マイコンとを含んでいる。Tr粗ゲイン調整コマンド等のコマンドは、全体制御用マイコンがドライブ用マイコンに対して発行し、ドライブ用マイコンがコマンドに対応した処理を実行する。Tr粗ゲイン調整コマンドの発行によりTr粗ゲイン調整が開始する。
【0024】
S62では、Tr粗ゲイン調整が終了したか否かを判定する。Tr粗ゲイン調整が終了したか否かは、全体制御用マイコンがドライブ用マイコンから所定の変数の値を読出すことにより、判明する。例えば、この変数の値は、Tr粗ゲイン調整が未終了であれば、"H"であり、Tr粗ゲイン調整が終了していれば、"L"となっている。Tr粗ゲイン調整が長引く理由としては、TE振幅が小さ過ぎるために、Tr粗ゲインがなかなか決まらないことが挙げられる。S62の判定が正であれば、すなわちTr粗ゲイン調整が終了していれば、S63へ進み、否であれば、すなわち、Tr粗ゲイン調整が未終了であれば、R(ルーチン)70へ進む。R70については図5を用いて後述する。
【0025】
S63では、OFT(オフトラック信号)デューティ比、TEの振幅値及びFEの振幅値を確認する。図2のS48において、Tr粗ゲイン調整中は、OFT調整及びTEゲイン振幅調整も併せて実施しており、ドライブ用マイコンは、Tr粗ゲイン調整中におけるOFTデューティ比と、Tr粗ゲイン調整中における所定回数のゼロクロスに対するTEのp−p(ピークツーピーク)値を記憶しており、S63における確認は、そのOFTデューティ比及び所定数のp−p値(後述の図4参照)を全体制御用マイコンがドライブ用マイコンから読出すことにより行われる。
【0026】
S64では、FEとTEとの振幅比率(=FEの振幅/TEの振幅)が閾値Ta以下であるか否かを判定するか、又はOFTデューティ比が閾値Da以上であるか否かを判定する。ここで、S64で用いるTEの振幅について、図4を参照して説明する。
【0027】
図4はトラック粗ゲイン調整中のTE信号の波形を示している。TE信号はトラック粗ゲイン調整中、変化するが、前述したように、ドライブ用マイコンは、Tr粗ゲイン調整中における所定回数(例えば10回)のゼロクロスに対するTEのp−p値を測定し、記憶する。全体制御用マイコンは、各ゼロクロスに対するp−p値の内、最大値TEpp(Max)と最小値TEpp(Min)を選別し、TEpp(Max)+TEpp(Min)をS64の振幅比率(=FEの振幅/TEの振幅)におけるTEの振幅とする。TEpp(Max)+TEpp(Min)は、トラック粗ゲイン調整中のTE信号の平均振幅に対応している。
【0028】
同様に、S64のFEとTEとの振幅比率(=FEの振幅/TEの振幅)におけるFEの振幅は、通常はトラック粗ゲイン調整期間より前の所定の期間(例:S42ディスク検知)においてドライブ用マイコンが検出、記憶した所定回数のゼロクロスに対するFEppに基づくものとなっている。全体制御用マイコンは、それらの所定回数のゼロクロスに対するFEppの内からFEpp(Max),FEpp(Min)を読出して、FEpp(Max)+FEpp(Min)をFEの振幅としたものである。
【0029】
S64の判定が正であれば、S65へ進み、否であれば、R66のエラー処理へ進む。R66については、図6を参照して、後述する。S65では、低品質ディスク対策としてR70が実行された場合に対処して、R70が実施された場合には、ゲイン切替によるTE振幅調整を行う。該ゲイン切替によりFE/TE比は1.6以上にされ、OFTデューティ比は50%以下とされる。この数値の根拠については図6を用いて後述する。なお、OFT信号は、例えばトラックを横断中は"H"になり、トラック間を横断中は"L"になるものである。
【0030】
このように、装填されたディスク11に対し、そのFE/TE比及び/又はOFTデューティ比を所定の閾値Ta及び/又はDaと対比して、それが再生可能か否かを判断することにより、判断を従来の判断に比して迅速化することができる。例えば、DVDの判別時間については、従来は約20秒、かかっているものが約7秒となる。また、反射のあるディスク11(=上面が白色でないディスク11)の裏入れに対する判断時間は、従来の約20秒かかっているものが、約1〜10秒になる。
【0031】
図5は図3の低品質ディスク読取り改善処理ルーチンR70の詳細を示すフローチャートである。S71では、直近のTr粗ゲイン調整コマンド発行時から設定時間T1(例:T1=2秒)が経過したか否かを判定し、判定が正であれば、S72へ進み、否であれば、図3のS62へ戻る。ここで、「直近のTr粗ゲイン調整コマンド発行」で「直近」を限定したのは、Tr粗ゲイン調整コマンド発行は、図3のS61だけでなく、図5のS76においても適宜、行われるからである。
【0032】
S72では、自動調整終了コマンドを発行する。自動調整終了コマンドは、図2の(再生準備用)自動調整処理を直ちに終了させるコマンドであり、S72の実施直前では、自動調整処理の中のTr粗ゲイン調整が実施されているので、S72における自動調整終了コマンドの発行によりここではTr粗ゲイン調整が終了される。
【0033】
S73では、自動調整処理が終了したか否かを判定し、判定が正になりしだいS74へ進む。S74では、TEバランスについてこれから行おうとする初期値変更は1回目になるか否かを判定し、判定が正であるならば、S75へ進んで1回目の変更を実施し、2回目以上であれば、S76へ進む。
【0034】
S75では、TEバランスについての1回目の変更として、TEバランスの初期値をB1(例:B1=EAh)へ変更する。TEバランスの元々の初期値はB0(例:B0=00h)であり、B1はB0に対して一方の側にシフトしたものになる。B0からB1への初期値の変更により、TE信号の値=0の位置は、初期値=B0の時の位置に対してディスク11の半径方向の一方の側へシフトする。S75の後、S78へ進む。
【0035】
S76では、TEバランスについてこれから行おうとする初期値変更は2回目になるか否かを判定し、判定が正であるならば、S77へ進んで2回目の変更を実施し、3回目以上であれば、R66のエラー処理へ進む。R66については、図6を用いて後述する。
【0036】
S77では、TEバランスについての2回目の変更として、TEバランスの初期値をB2(例:B2=16h)へ変更する。B2はB0に対して他方の側にシフトしたものになる。B2への初期値の変更により、TE信号の値=0の位置は初期値=B0の時の位置に対してディスク11の半径方向の他方の側へシフトする。S77の後、S78へ進む。
【0037】
S78では、S61と同様に、Tr粗ゲイン調整コマンドを発行する。S78の後、図2のS62へ戻る。
【0038】
図6は各種ディスクにおけるFE/TEの比率とOFTデューティ比との関係を示したものである。横軸がFE/TEの比率であり、縦軸がOFTデューティ比である。ディスクの種類が同一であっても、ディスクごとのばらつき等のために、FE/TEの比率とOFTデューティ比との関係は、点ではなく、図6上に、広がった範囲として現れる。
【0039】
CD−RW、CD−DA及び正規のCD−Rについては、TEが比較的大きいので、FE/TEが小さい。また、トラック幅及びピッチが共に精度が高いので、CD−RW、CD−DA及びCD−Rの範囲は比較的狭い。
【0040】
これに対し、低品質ディスクでは、トラックピッチが狭く、さらには、トラッキングエラー振幅値の小さかったり、クロストークの大きかったりするので、TEが比較的小さくなって、FE/TEは増大するとともに、OFTデューティ比の低いものが増大する。低品質ディスクでは、また、トラックの幅及びピッチが共に精度が低いので、その範囲は、CD−RW、CD−DA、正規のCD−Rの範囲に比べて広がる。
【0041】
DVDでは、TEが小さく、FE/TE≧2.8になる。図3のS64のTaは、図6に則して設定すれば、2.8とされる。これにより、CDプレーヤ10への装填ディスクがDVDである場合には、装填ディスクは再生不能ディスクであるとして、R66のエラー処理が実行される。R66のエラー処理とは、具体的には、例えばディスクの回転を停止して、図2の自動調整を直ちに終了することである。また、これに加えて、ディスクを排出したり、再生不能ディスクである旨を表示器に表示したりすることもできる。
【0042】
ディスクを裏入れしたときは、OFTデューティ比が現れず、OFTデューティ比は理論的には0になる。しかし、現実には、ノイズの影響があるので、裏入れの場合も、OFTデューティ比は0より少し高い値になる。図3のS64のDaは、図6に則して設定すれば、0より少し高い該値に設定される。ディスクが裏入れと判別できた場合にも、R66のエラー処理が実行される。
【0043】
図6から分かるように、低品質ディスクは、FE/TE≧1.6、かつOFTデューティ比≦50%の領域に属している。したがって、図3のS65のゲイン切替で説明したように、装填ディスクが低品質ディスクであると判別した場合には、S65で、FE/TE≧1.6、かつOFTデューティ比≦50%となるように、FEゲイン及び/又はTEゲインを設定してから、図2のS49のトラッキングバランス調整へ進む。
【0044】
図7はディスク判別装置80のブロック図である。ディスク判別装置80の具体例は前述のCDプレーヤ10である。ディスク判別装置80は、再生対応ディスクがCDのみであるCD専用再生装置だけでなく、CD以外の種類の光ディスク(例:DVDやBD(Blu-ray Disc:ブルーレイディスク))を再生する再生装置や、複数の種類の光ディスクの再生に対応している再生装置に装備されるものであってもよい。ディスク判別装置80は、典型的には車載型であるが、家庭等に据え置かれる据え置き型や、ユーザに携帯される携帯型であってもよい。ディスク判別装置80は、必須の構成要素として、検出部81及び判別部82を備える。
【0045】
検出部81は、光ディスク83に対するトラッキングエラー及びフォーカスエラー間の比率関係又はオフトラック信号のデューティ比を検出する。判別部82は、検出部81が検出した比率関係又はデューティ比に基づき光ディスク83が再生可能であるか否かを判別する。
【0046】
判別部82が再生可能なディスクであると判断するディスクは、具体的には、例えば本機で再生に対応できる種類のディスクであってかつ表入れで装填されたディスクである。
【0047】
例えば、比率関係は、例えば、トラッキングエラーに対するフォーカスエラーの比率(例:FE/TE)、又はその逆のフォーカスエラーに対するトラッキングエラーの比率(例:TE/FE)を含む。好ましくは、トラッキングエラーに対するフォーカスエラーの比率が閾値(例:図3のS64のTa)以下である場合には、又はフォーカスエラーに対するトラッキングエラーの比率が別の閾値(例:1/Ta)以上である場合には、装填ディスクは再生可能なディスクであると判断する。
【0048】
ディスク判別装置80の具体例のCDプレーヤ10に適用される図6からは、CD−RW、CD−DA及びCD−Rの再生に対応するディスク判別装置において、閾値を1.6としたときには、再生可能ディスクとしてのCD−RW,CD−DA及びCD−Rと、再生不能ディスクとを区別して判別することができることが分かる。また、再生可能ディスクを、CD−RW、CD−DA及びCD−R並びに所定の低品質CD−Rとする場合には、閾値を2.8としたときには、それら再生可能ディスクと、DVD等の再生不能ディスクとを区別して判別することができることが図6から理解できる。
【0049】
本機で再生に対応していない再生不能ディスクが装填された場合は、もちろんのこと、再生可能なディスクが装填されたとしても、それが裏入れで装填された場合には、OFTデューティ比はほぼ0になる。ノイズを考慮して、0より少し大きい閾値を設定し、検出したOFTデューティ比を該閾値と対比して。表入れか裏入れかの判別に基づき装填ディスクが再生可能であるか再生不能であるかを判別することができる。
【0050】
判別部82は、検出部81が検出した比率関係及びデューティ比の一方に基づき光ディスク83の種別や裏入れを検出するだけでなく、両方に基づき検出しても可とする。また、両方に基づき検出した方が種別や裏入れをより精確に判別することができる。
【0051】
好ましくは、検出部81が検出する比率におけるトラッキングエラー又はデューティ比は、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボをそれぞれオン及びオフにしてトラッキングゲインを調整するトラッキングゲイン調整期間のものである。その場合、判別部82は、トラッキングゲイン調整期間の終了後に、判別を実施する。なお、この比率におけるフォーカスエラーは、典型的にはトラッキングゲイン調整期間より前の例えばディスク検知期間等に検出したものを使用するが、トラッキングゲイン調整期間に再検出したものや、トラッキングゲイン調整期間に新規検出したものを使用してもよい。
【0052】
トラッキングゲイン調整期間の具体例は図2のS48から図3のS62である。判別部82が判別を実施する時期の具体例は、図3においてS62の終了後のS64である。
【0053】
好ましくは、ディスク判別装置80はさらにトラッキングエラーバランス調整部84を備える。トラッキングエラーバランス調整部84は、トラッキングゲイン調整期間におけるトラッキングゲインの調整が一定期間内に終了しないときには、調整期間を途中終了させ、次に、トラッキングエラーバランスを別の値へ調整してから、トラッキングゲイン調整期間を新たに開始する。
【0054】
トラッキングエラーバランス調整部84による処理の具体例は図3のR70である。典型的には、トラッキングエラーバランス調整部84が調整する別の値には、基準値を挟んで相互に反対側の第1及び第2の値が用意される。そして、トラッキングエラーバランス調整部84は、トラッキングエラーバランスを基準値に対して一方の側の第1の値にして実施したトラッキングゲイン調整期間におけるトラッキングゲインの調整が一定期間内に終了しないときに、トラッキングエラーバランスを基準値に対して他方の側の第2の値に変更する。第1及び第2の値の具体例はそれぞれ図5のS75のB1及びS77のB2である。
【0055】
図8はディスク再生方法90のフローチャートである。ディスク再生方法90の具体例は図3のフローチャートで示された方法である。ディスク再生方法90はディスク判別装置80に適用される。
【0056】
S91では、光ディスク83に対するトラッキングエラー及びフォーカスエラー間の比率関係又はオフトラック信号のデューティ比を検出する。S92では、検出した比率関係又はデューティ比に基づき光ディスク83が再生可能であるか否かを判別する。
【0057】
S91,S92の処理は、ディスク判別装置80(図7)の検出部81及び判別部82の機能にそれぞれ対応している。したがって、検出部81及び判別部82の機能について述べた具体的態様はS91,S92の処理についての具体的態様としても適用可能である。ディスク再生方法90では、また、ディスク判別装置80のトラッキングエラーバランス調整部84の機能に対応する処理を実行するステップを適宜、追加可能である。トラッキングエラーバランス調整部84に対応するステップは、ディスク再生方法90では、S91の前に追加する。
【0058】
ディスク判別装置80に対応するプログラムは、光ディスク83に対するトラッキングエラーとフォーカスエラーとの比率又はオフトラック信号のデューティ比を検出する検出部81、及び検出した比率又はデューティ比に基づき光ディスク83が再生可能であるか否かを判別する判別部82としてコンピュータを機能させる。
【0059】
ディスク再生方法90に対応するプログラムは、光ディスク83に対するトラッキングエラーとフォーカスエラーとの比率又はオフトラック信号のデューティ比を検出するS91、及び検出した比率又はデューティ比に基づき光ディスク83が再生可能であるか否かを判別するS92をコンピュータに実行させる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更(付加及び削除も含む。)が可能であることは言うまでもない。
【0061】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、拡張ないし一般化の範囲で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を拡張ないし一般化の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【符号の説明】
【0062】
80:ディスク判別装置
81:検出部
82:判別部
83:光ディスク
84:トラッキングエラーバランス調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに対するトラッキングエラーとフォーカスエラーとの比率又はオフトラック信号のデューティ比を検出する検出部、及び
検出した前記比率又は前記デューティ比に基づき前記光ディスクが再生可能であるか否かを判別する判別部、
を備えることを特徴とするディスク判別装置。
【請求項2】
前記判別部は、トラッキングエラーに対するフォーカスエラーの比率が所定の閾値以下であるとき、前記光ディスクは再生可能なディスクであると判断することを特徴とする請求項1記載のディスク判別装置。
【請求項3】
前記判別部は、フォーカスエラーに対するトラッキングエラーに対する比率が別の所定の閾値以上であるとき、前記光ディスクは再生可能なディスクであると判断することを特徴とする請求項1記載のディスク判別装置。
【請求項4】
前記検出部が検出する前記比率におけるトラッキングエラー又は前記デューティ比は、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボをそれぞれオン及びオフにしてトラッキングゲインを調整するトラッキングゲイン調整期間のものであり、
前記判別部は、前記トラッキングゲイン調整期間の終了後に、判別を実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスク判別装置。
【請求項5】
前記トラッキングゲイン調整期間におけるトラッキングゲインの調整が一定期間内に終了しないときには、前記調整期間を途中終了させ、次に、トラッキングエラーバランスを別の値へ調整してから、トラッキングゲイン調整期間を新たに開始するトラッキングエラーバランス調整部、
を備えることを特徴とする請求項4記載のディスク判別装置。
【請求項6】
前記トラッキングエラーバランス調整部が調整する前記別の値には、基準値を挟んで相互に反対側の第1及び第2の値が用意され、
前記トラッキングエラーバランス調整部は、トラッキングエラーバランスを基準値に対して一方の側の第1の値にして実施したトラッキングゲイン調整期間におけるトラッキングゲインの調整が一定期間内に終了しないときに、トラッキングエラーバランスを前記基準値に対して他方の側の第2の値に変更することを特徴とする請求項4記載のディスク判別装置。
【請求項7】
光ディスクに対するトラッキングエラーとフォーカスエラーとの比率又はオフトラック信号のデューティ比を検出する検出ステップ、及び
検出した前記比率関係又はオフトラック信号のデューティ比に基づき前記光ディスクが再生可能であるか否かを判別する判別ステップ、
を備えることを特徴とするディスク判別方法。
【請求項8】
光ディスクに対するトラッキングエラーとフォーカスエラーとの比率又はオフトラック信号のデューティ比を検出する検出部、及び
検出した前記比率又は前記デューティ比に基づき前記光ディスクが再生可能であるか否かを判別する判別部、
としてコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−198454(P2011−198454A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34305(P2011−34305)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(508209990)J&Kカーエレクトロニクス株式会社 (98)
【Fターム(参考)】