説明

ディスク装置の誤挿入防止装置

【課題】ディスクが装填されたときに、挿入口の内側で一対の規制突起が所定の間隔で位置することで、ディスク駆動中に別のディスクが装填されるのを規制するものにおいて、規制突起が所定の間隔に復帰できないときにディスクの装填動作が開始されるのを防止できる「ディスク装置の誤挿入防止装置」を提供する。
【解決手段】ディスクDがローラ5で搬送されているときに、規制突起21,22が所定の間隔に復帰できないときは、検知動作部材61により検知リンク部材51がロックされ、ディスクDが搬送されても検知リンク部材51によって検知スイッチ55が動作しない。よって、ディスクの装填動作が開始されず、ディスクが装填されなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクがディスク駆動部に装填された後に、さらに他のディスクが導入されるのを防止する規制手段が設けられたディスク装置の誤挿入防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CDやDVDなどのディスクが、挿入口から挿入されるいわゆるスロットイン方式のディスク装置では、ディスクがディスク駆動部に装填されて駆動されているときに、新たなディスクが前記挿入口から挿入されないように規制することが必要である。
【0003】
以下の特許文献1には、挿入口の内側に一対の検知ピンが設けられ、この検知ピンが、挿入されるディスクの直径よりも短い間隔に設定されるディスク装置が開示されている。このディスク装置は、前記一対の検知ピンの間隔が、ディスクの直径よりも狭く設定されるようにばね部材により付勢されている。ディスクを一対の検知ピンの間に挿入すると、ディスクの円形の周縁部に倣うようにして一対の検知ピンが広がり、検知ピンよりも奥側に位置する搬送ローラによってディスクがディスク駆動部に向けて搬送される。
【0004】
ディスク中心がディスク駆動部に装填される位置まで搬送されると、一対の検知ピンがばね部材によって初期の対向間隔に復帰する。また、ディスク中心がディスク駆動部に装填される位置へ移動したことが検知されると、搬送ローラを支持するローラブラケットが回動して、搬送ローラがディスクから離れる。このときローラブラケットに設けられた拘束部材によって一対の検知ピンが、その間隔が広がらないように拘束される。
【0005】
ディスクがディスク駆動部に装填されて回転駆動されているときに、前記検知ピンがディスクの直径よりも狭い間隔で拘束されることにより、別のディスクが挿入口から挿入されるのを防止できるようになっている。
【特許文献1】特開平8−180540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来のディスク装置では、挿入口から挿入されたディスクが搬送ローラで搬送されてディスク駆動部に装填された後に、一対の検知ピンが何らかの障害によりその対向間隔が初期の位置へ戻らないことが想定される。例えば一対の検知ピンを初期の間隔に戻すばねの力が弱くなったり、あるいは低温下で使用されて機構の動きが鈍くなるなどが原因で、一対の検知ピンが初期の位置へ戻れないことが想定される。
【0007】
このような状態で、ディスクがディスク駆動部に装填され、さらに搬送ローラがディスクから離れ、ローラブラケットが回動すると、前記拘束部材によって一対の検知ピンが確実に拘束されない場合がある。そのため、ディスクがディスク駆動部で駆動されているときに、別のディスクが挿入口から挿入されると、この別のディスクによって検知ピンが広げられて、このディスクの挿入が許容されて、駆動中のディスクと、新たに挿入されたディスクとが干渉してディスクを損傷する問題が生じることになる。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、ディスクが搬送手段で搬送された後に、一対の規制突起が初期の間隔に復帰できないときに、ディスクがディスク駆動部まで搬送されないようにして、ディスクの駆動中に、別のディスクが挿入されるのを確実に防止できるようにしたディスク装置の誤挿入防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、ディスクを搬入する搬送手段と、装填位置に搬入されたディスクが装填されるディスク駆動部と、搬入されるディスクの縁部に押されて移動するストッパ部材と、が設けられたディスク装置において、
前記搬送手段に向けて挿入されるディスクの外周縁によってその間隔が広げられる一対の規制突起と、前記一対の規制突起の間隔を前記ディスクの直径よりも短い初期位置に設定する付勢手段と、ディスクが前記装填位置へ向けて移動し、前記規制突起が前記初期位置に復帰できたときに、この規制突起を間隔が開かないように拘束する拘束部材と、
ディスクが規制突起の間を通過した後に前記規制突起が前記初期位置に復帰できないときに、この規制突起に連動して前記ストッパ部材の移動を途中位置で規制する検知動作部材とが設けられ、前記途中位置で規制された前記ストッパ部材によってディスクが前記装填位置へ移動するのが阻止されることを特徴とするものである。
【0010】
第1の本発明のディスク装置の誤挿入防止装置では、ディスクが挿入された後に、一対の規制突起が所定の間隔の初期位置まで復帰できないときには、ディスクが装置奥側へ移動できなくなる。そのため、一対の規制突起が初期位置へ戻らずに拘束されていない状態で、ディスクがディスク駆動部に装填される問題が生じるのを防止できるようになる。
【0011】
第2の本発明は、ディスクを搬入する搬送手段と、装填位置に搬入されたディスクが装填されるディスク駆動部と、ディスクが前記装填位置へ移動したときにスイッチ手段を動作させる検知部材と、前記スイッチ手段の動作によってディスクの装填動作を始動し、あるいはディスクの回転駆動を始動する制御部と、が設けられたディスク装置において、
前記搬送手段に向けて挿入されるディスクの外周縁によってその間隔が広げられる一対の規制突起と、前記一対の規制突起の間隔を前記ディスクの直径よりも短い初期位置に設定する付勢手段と、ディスクが前記装填位置へ向けて移動し、前記規制突起が前記初期位置に復帰できたときに、この規制突起を間隔が開かないように拘束する拘束部材と、
ディスクが規制突起の間を通過した後に前記規制突起が前記初期位置に復帰できないときに、この規制突起に連動して前記検知部材を前記スイッチ手段を動作させない位置で規制する検知動作部材とが設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
第2の本発明のディスク装置の誤挿入防止装置では、ディスクが挿入された後に、一対の規制突起が所定の間隔の初期位置まで復帰できないときには、ディスクをディスク駆動部に装填する動作が開始されず、あるいはディスクがディスク駆動部に装填されたとしてもディスクの回転駆動が開始されない。よって、一対の規制突起が初期位置へ戻らずに拘束されていない状態で、ディスクが駆動されるのを防止できる。
【0013】
例えば、前記規制突起は、可動支持部材に支持されており、規制突起が前記初期位置に復帰できないときに、前記可動支持部材の動作によって、前記動作検知部材が規制位置に設定されるものである。
【0014】
また、本発明では、一対の規制突起は互いに連動し、その間隔が広がる方向へ互いに同じ距離だけ移動するものが好ましい。
【0015】
本発明は、例えば、前記搬送手段は、ディスクに搬入力を与えるローラと、このローラを支持するローラブラケットとを有し、前記ローラブラケットに前記拘束部材が設けられて、前記ローラがディスクから離れるときに、前記拘束部材によって前記規制突起が拘束されるものである。
【0016】
ただし、前記拘束部材が、ローラブラケット以外の機構部品によって拘束位置へ動作させられるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、一対の規制突起が所定の間隔の初期位置へ復帰できないときに、ディスクがディスク駆動部に向けて移動するのを防止でき、またはディスクが駆動され始めるのを防止できる。よって、一対の規制突起が何らかの原因で初期位置へ復帰できず且つ拘束部材で拘束されなかったとしても、ディスクを駆動しているときに、一対の規制突起の間を通過して新たな別のディスクが挿入されるのを防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の実施の形態として車載用のディスク装置を示す平面図、図2は図1に示すディスク装置のディスク導入部の構造を示す分解斜視図、図3は、一対の規制突起が初期位置に復帰して、ディスクがディスク駆動部に装填された状態を示す平面図、図4は一対の規制突起が初期位置に復帰できず、ディスクがディスク駆動部に装填されない状態を示す平面図、図5は、一対の規制突起が初期位置に復帰して拘束部材で拘束された状態を示す部分平面図、図6(A)(B)は、拘束部材による規制突起の拘束動作を示す側面図である。
【0019】
車載用のディスク装置1は、板金製の筐体2を有している。筐体2はいわゆる1ディン(DIN)サイズ、または2ディンサイズの外部ケースに収容できる大きさである。図1に示すように、筐体2は前面2a、背面2b、右側面2c、左側面2dを有しており、図2に示すように底面2eおよび図示しない天井面とを有している。このディスク装置1は、車室内のインストルメントパネルなどに埋設され、前面2a側に設けられた化粧ノーズ部がインストルメントパネルに現れる。
【0020】
筐体2は、背面2bの方向が奥側でありディスクDの搬入方向である。また筐体2の前面2aには、横方向に延びる細長のスリット状のディスク挿入口が設けられている。
【0021】
筐体2内の前記前面2aの内側には、搬送手段3が設けられている。搬送手段3は、図2に示すように、筐体2の天井面の内側に設置されたガイドトップ4と、このガイドトップ4との間にディスクDを挟み込むローラ5とを有している。ガイドトップ4は、摩擦係数の小さい合成樹脂材料により射出成形されたものである。
【0022】
前記ローラ5は合成ゴムなどで形成され、ローラ軸6の外周面に対して回動自在に支持されている。ローラ5に軸と直交する加重が作用しているときには、ローラ5とローラ軸6との摩擦力によって、ローラ軸6とローラ5とが一緒に回転し、ローラ5に過大な回転抵抗力が作用すると、ローラ軸6がローラ5の穴内でスリップして空まわりできるようになっている。
【0023】
ローラ軸6の両端部は、板金製のローラブラケット7の支持片7a,7bに回転自在に支持されている。一方の支持片7bの外側には、ローラ軸6に固定された歯車8が設けられている。筐体2内に設けられた図示しない搬送モータからの動力は図示しない減速歯車列から前記歯車8に伝達されて、ローラ軸6が両方向へ回転駆動される。
【0024】
図2に示すように、ローラブラケット7の前記支持片7a,7bの前端部には支持軸9a,9bが固定され、この支持軸9a,9bが、筐体2の右側面2cに形成された支持穴2fと、左側面2dに形成された支持穴2gに回転自在に支持されている。また、前記支持片7a,7bの後部はスプリング11によって上方へ付勢されており、このスプリング11の付勢力によって、前記ローラブラケット7は、前記ローラ5がガイドトップ4に圧接する方向へ付勢されている。
【0025】
前記ローラブラケット7には、左右両側の支持片7aと支持片7bとを連結する連結板7cが設けられており、この連結板7cに、前方へ向けて突出する一対の拘束部材15,15が一体に形成されている。この拘束部材15,15は、横方向に一定の間隔を空けて対向し、対向側に前後方向に延びる拘束部15a,15aが形成され、この拘束部15a,15aと逆側には傾斜部15b,15bが形成されている。なお、拘束部材15,15が、ローラブラケット7と別体に形成されて、前記ローラブラケット7に固定されているものであってもよい。
【0026】
筐体2の前面2aと前記ローラ5との間には、ディスクDの二重挿入を防止する規制手段20を構成する一対の規制突起21と22が設けられている。この規制突起21と22は、筐体2の天井面側から底面2eに向けて垂直に配置されている。
【0027】
図1に示すように、右側の規制突起21は、可動支持部材23の先端に固定されている。この可動支持部材23は、筐体2の天井面に設けられた支持軸24を支点として前記天井面に沿って回動自在に支持されている。左側の規制突起22は、可動支持部材25の先端に固定されている。この可動支持部材25は、筐体2の天井面に設けられた支持軸26を支点として前記天井面に沿って回動自在に支持されている。
【0028】
両可動支持部材23と25は、連結部材27で連結されて互いに同期して動作する。連結部材27の一端は、前記可動支持部材23に連結軸28aを介して回動自在に連結され、他端は、可動支持部材25に連結軸28bを介して回動自在に連結されている。前記連結軸28aは、支持軸24よりも奥側に配置され、連結軸28bは、支持軸26よりも前方に配置されている。その結果、右側の可動支持部材23の反時計方向の回動動作と、左側の可動支持部材25の時計方向への回動動作が互いに同期する。よって、右側の規制突起21と左側の規制突起22が互いに離れる方向へ移動するときに、規制突起21と規制突起22は、同じ速度で同じ距離だけ移動する。
【0029】
図1に示すように、左側の可動支持部材25は、付勢部材であるスプリング29によって反時計方向へ付勢されている。よって、右側の可動部材23は前記スプリング29によって時計方向へ付勢されている。可動支持部材23は、図1に示す位置でストッパ31に当たってそれ以上時計方向へ回動しないように規制されている。ストッパ31で規制されているときに、規制突起21と規制突起22は初期位置である。初期位置にある規制突起21と規制突起22との間隔Wは、このディスク装置1に装填されるディスクDの直径よりも短い。
【0030】
図5に示すように、筐体2内では、搬送手段3を構成するローラ5よりも奥側に位置するディスク駆動部35が設けられている。このディスク駆動部35には、ディスクDの中心穴がクランプされる回転駆動部36と、回転駆動部36で駆動されるディスクDの記録面に沿って移動する光ヘッド37とが設けられている。また、図示省略するが、前記回転駆動部36に対してディスクの中心穴をクランプするクランパと、このクランパをクランプ方向へ動作させるクランプアームとが設けられている。
【0031】
筐体2内には、ストッパ手段40が設けられている。このストッパ手段40には、ローラ5によって搬入されるディスクDの縁部によって装置奥側へ押されるストッパ部材41が設けられている。このストッパ部材41は合成樹脂材料などで形成されたものであり、その上面には、横方向に間隔を開けて、摺動突起42a,42bおよび42cが一体に突出形成されている。
【0032】
筐体2内の天井面またはその付近の所定個所例えば前記クランプアームには、前後方向に延びる案内溝2h,2i,2jが、互いに平行に直線状に延びて形成されている。前記摺動突起42a,42bおよび42cは、それぞれ前記案内溝2h,2i,2jに摺動自在に案内され、その結果、ストッパ部材41は、筐体2の天井面または前記クランプアームに沿って前後方向へ摺動自在に支持されている。
【0033】
前記ストッパ部材41の下面には、横方向に間隔を空けて一対の当接部43a,43bが一体に突出形成されている。この当接部43a,43bは、ローラ5で搬送されるディスクDの搬入経路上に位置しており、図4に示すように、ローラ5によってディスクDが筐体2の奥側へ搬送される際に、ディスクDの縁部が前記当接部43a,43bに当たり、ディスクDの搬送力によって、ストッパ部材41が装置の奥方向へ向けて押される。
【0034】
なお、ディスクDが排出されている待機状態では、図1に示すように、ストッパ部材41が、筐体2内において前方向へ移動させられた位置で待機する。ストッパ部材41を前記位置へ移動させて待機する機構については省略している。
【0035】
図1に示すように、前記ストッパ部材41には、中間リンク部材45が連結されている。この中間リンク部材45には、長穴46が形成されており、前記ストッパ部材41の上面に一体に突出形成された摺動軸47が前記長穴46内に摺動自在に挿入されている。また、摺動軸47が長穴46から離脱できないように抜け止め機構が設けられている。
【0036】
また、前記中間リンク部材45の上面には、摺動支持軸48が突出しており、この摺動支持軸48が、筐体2の天井面または前記クランプアームに形成された円弧状の支持長穴2kに摺動自在に挿入され、且つ摺動支持軸48が前記支持長穴2kから離脱できないように抜け止め機構が設けられている。
【0037】
前記中間リンク部材45には、検知リンク部材51が連結されている。検知リンク部材51は、筐体2の天井面またはクランプアームに固定された固定軸52に回動自在に支持されている。検知リンク部材51の一端は、連結ピン53を介して前記中間リンク部材45に回転自在に連結されている。また、検知リンク部材51の他端には、ロックピン54が固定されている。図3に示すように、筐体2内には検知手段を構成する検知スイッチ55が設けられており、検知リンク部材51が固定軸52を支点として時計方向へ回動したときに、この検知リンク部材51によって前記検知スイッチ55が動作させられる。
【0038】
筐体2の天井面の下には検知動作部材61が設けられている。この検知動作部材61には、横方向に延びる長穴61aが形成され、この長穴61aが、筐体2の天井面に固定された軸62に摺動自在に支持されている。その結果、検知動作部材61が横方向((ア)−(イ)方向)へ摺動自在に支持されている。また、検知動作部材61には引っ張りスプリング63が連結されており、この引っ張りスプリング63の弾性力によって、検知動作部材61は、常に右方向((ア)方向)へ付勢されている。また、検知動作部材61には、前記ロックピン54と嵌合可能なロック凹部64が形成されている。
【0039】
左側に配置されている前記可動支持部材25の奥側の端部には、押圧部25aが一体に設けられている。図1に示すように、左側の可動支持部材25が反時計方向へ回動して、規制突起22が間隔Wを形成する初期位置にあるときに、可動支持部材25の前記押圧部25aによって、前記検知動作部材61が(イ)方向へ押圧されて移動させられる。
【0040】
次に上記ディスク装置1のディスク搬送動作について説明する。
(ディスク挿入待機)
ディスクDの挿入を待機しているときは、図1に示すように、スプリング29の付勢力によって、左側の可動支持部材25が反時計方向へ回動し、これに連動して右側の可動支持部材23が時計方向へ回動し、可動支持部材23の時計方向への回動がストッパ31で規制されている。その結果、規制突起21と規制突起22は初期位置にあり、その対向間隔はWに設定されている。
【0041】
また、ストッパ部材41は、筐体2の前方すなわち前面2aに近づく位置へ移動させられている。
【0042】
ディスクDの挿入を待機しているときは、図6(A)に示すように、ローラブラケット7が反時計方向へ回動し、ローラブラケット7に支持されているローラ5がスプリング11の付勢力によってガイドトップ4に圧接されている。ローラブラケット7が回動している結果、ローラブラケット7の連結板7cに形成されている一対の拘束部材15,15が筐体2の底面2eに向けて回動し、拘束部材15,15が、規制突起21と規制突起22の回動奇跡から外れて、規制突起21と規制突起22の回動が邪魔されないようになっている。
【0043】
(正常なディスク装填動作)
図1のように、待機状態において、筐体2の前面2aに形成されたディスク挿入口からディスクDが挿入されると、ディスクDの外周縁が規制突起21と規制突起22との間に入り込み、規制突起21と規制突起22とが、前記外周縁を滑って、その間隔が互いに離れるように移動する。すなわち、規制突起21を支持している可動支持部材23が反時計方向へ回動し、規制突起22を支持している可動支持突起25が時計方向へ回動する。
【0044】
可動支持部材23または25の回動によって挿入検知スイッチが動作させられ、制御部がこの検知信号を受けると、前記制御部の制御動作によって、図示しない搬送モータが始動し、搬送モータの回転力が減速歯車列を介して歯車8に伝達され、ローラ軸6が回転駆動される。
【0045】
ディスクDは、ローラ5とガイドトップ4とで挟持されているため、ローラ軸6の回転力がローラ5からディスクDに伝達され、ディスクDが筐体2内を奥方向へ向けて搬送される。ディスクDが筐体2内へ搬送されるのにしたがって、規制突起21と規制突起22は、ディスクDの外周縁を滑って、その間隔が互いに離れる方向へ移動する。ディスクDの中心が、規制突起21と規制突起22とを結ぶ線を越えると、スプリング29の力によって、規制突起21と規制突起22は、ディスクDの外周縁を摺動して互いに接近する方向へ移動する。
【0046】
また、搬送されるディスクDの搬送方向の前方に向けられている周縁部が、ストッパ部材41の当接部43a,43bに当たると、その後は、搬送されていくディスクDに押されて、ストッパ部材41が筐体2内を奥側に向かって移動させられる。
【0047】
図3に示すように、ストッパ部材41が、ディスクDに押されて筐体2内を奥方向へ向けて移動していくと、ストッパ部材41に設けられた摺動軸47が中間リンク部材45の長穴46内を摺動して、中間リンク部材45に反時計方向への回動力が与えられる。このとき、中間リンク部材45に設けられた摺動支持軸48が、筐体2の天井面またはクランプアームに形成された支持長穴2kを奥側に向けて摺動する。摺動支持軸48が支持長穴2kの奥側端部に移動すると、その後、中間リンク部材45は、前記摺動支持軸48を支点として反時計方向である(ウ)方向へ回動させられる。そして、中間リンク部材45に連結ピン53を介して連結されている検知リンク部材51が、固定軸52を支点として、時計方向である(エ)方向へ回動しようとする。
【0048】
図1から図3に示す正常な動作では、ローラ5によって搬送されていくディスクDの中心が、規制突起21と規制突起22を結ぶ線を越えると、その後は、スプリング29の付勢力によって、可動支持部材25が反時計方向へ回動させられ、可動支持部材23が時計方向へ回動させられて、規制突起21と規制突起22が、その間隔がWとなる初期位置へ復帰する。
【0049】
図3に示すように、規制突起22が初期位置へ正常に復帰できると、検知リンク部材51に(エ)方向への回動力が作用した時点または作用する前の時点で、左側の可動支持部材25の押圧部25aによって検知動作部材61が(イ)方向へ押され、この検知動作部材61に形成されたロック凹部64が、検知リンク部材51のロックピン54から外れ、検知リンク部材51のロックが解除される。
【0050】
よって、検知リンク部材51が、ロック凹部64にロックされることなく、(エ)方向へ回動できる。そのため、中間リンク部材45も(ウ)方向へ回動でき、よって、ストッパ部材41が筐体2の奥側へ移動して、ディスクDは、その中心穴が回転駆動部36にクランプ可能な装填位置へ移動できる。
【0051】
図3に示すように、ディスクDが前記装填位置へ移動し、ストッパ部材41が奥側の正規の位置へ移動すると、(エ)方向へ回動する検知リンク部材51によって検知スイッチ55が動作させられ、制御部では、ディスクDが装填位置へ移動したと認識する。この認識により、制御部によって図示しないモード切替モータが始動させられ、ディスクDの中心穴を回転駆動部36にクランプする動作が行われ、さらに、図6(B)に示すように、ローラブラケット7が時計方向へ回動させられて、ローラ5がディスクDの下面から離れる。そして、搬送モータが停止し、ローラ軸6の回転が停止する。
【0052】
図6(B)に示すように、ローラブラケット7が時計方向へ回動すると、ローラブラケット7の連結板7cに設けられている一対の拘束部材15,15が筐体2の上方へ向けて回動していく。このとき、図5に示すように、規制突起21と規制突起22は、その間隔がWの初期位置へ戻っているため、規制突起21の右側に拘束部材15の拘束部15aが位置し、規制突起22の左側に拘束部材15の拘束部15aが位置し、一対の拘束部材15,15によって、規制突起21と規制突起22とが外側から挟まれた状態となる。
【0053】
その後は、規制突起21と規制突起22との間隔がWに維持され、それ以上間隔を広げることができなくなる。そのため、別のディスクDが筐体2の前面2aのディスク挿入口から挿入されたとしても、規制突起21と規制突起22が、別のディスクの進入を阻止する。別のディスクDが誤って挿入されることがなくなり、回転駆動部36にクランプされて回転中のディスクDと、別のディスクDとが当たるのを防止できるようになる。
【0054】
(規制突起が初期位置へ復帰できない異常が発生したとき)
ディスクDがローラ5の回転によって筐体2の奥方向へ向けて搬送され、ディスクDの中心が規制突起21と規制突起22を結ぶ線を通過した後に、規制突起21と22が初期位置へ復帰できないことが有りえる。例えば、規制突起21と22を復帰させるスプリング29の弾性力が低下したり、低温環境下での使用により、機構の動作が鈍くなったときなどに規制突起21と22が初期位置に復帰できない現象が発生し得る。
【0055】
図4はこのような異常が発生した状態を示している。
図4では、ディスクDが筐体2の内方へ移動したのにも関わらず、可動支持部材23が時計方向へ十分に回動できず、可動支持部材25が反時計方向へ十分に回動できず、規制突起21と規制突起22の間隔がW1(W<W1)に広がったままとなって、規制突起21と規制突起22がディスクDの外周縁から離れている。
【0056】
図4に示すように、可動支持部材25が完全に時計方向へ回動できないときには、可動支持部材25の押圧部25aによって検知動作部材61を(イ)方向へ押すことができず、検知動作部材61は、引っ張りスプリング63の付勢力によって(ア)方向へ移動したままとなる。
【0057】
この場合、搬送されるディスクDでストッパ部材41が筐体2の奥側へ向けて押され、中間リンク部材45に摺動支持軸48を支点とする(ウ)方向への回動力が作用し、さらに検知リンク部材51に(エ)方向への付勢力が作用したときに、ロックピン54がロック凹部64に嵌合してロックされているため、検知リンク部材51がそれ以上(エ)方向へ回動できなくなる。
【0058】
このように、検知リンク部材51の回動がロックされると、検知リンク部材51によって検知スイッチ55が動作させられないため、前記モード切替モータが始動しなくなり、ディスクDが回転駆動部36にクランプされない。また、検知リンク部材51がロックされると、中間リンク部材45もそれ以上(ウ)方向へ回動できなくなるため、ストッパ部材41が図4の位置から奥方向へ移動できず、ディスクDが装填位置まで移動できなくなる。
【0059】
このとき、ローラブラケット7は、図6(A)に示すように反時計方向へ回動したままであり、ローラ5がディスクDに圧接し且つローラ軸6が回転し続けている。しかし、ディスクDが途中で止まっているためローラ5が回転できず、ローラ5に対してローラ軸6がスリップ回転する。制御部では、ディスクが挿入口から挿入されたことが検知されたときにタイマーを始動し、所定時間内にディスクDが回転駆動部36に装填されたか否かを監視している。例えば、前記所定時間内にローラブラケット7が図6(B)に示すように完全に時計方向へ回動したか否かを検知することによって、ディスクDの装填動作が完了したか否かを検知することができる。
【0060】
前記のように、検知リンク部材51がロックされると、ディスクDが挿入されたことが検知されてから所定時間以内にディスクの装填動作を完了できない。このときは、制御部は、搬送モータを逆転させるように制御し、ローラ軸6をディスク搬出方向へ回転させ、ローラ5の回転力によってディスクDを挿入口から排出するなどのリカバリー動作を行う。このリカバリー動作として、前記のようにローラ5の回転力によりディスクDを挿入口へ一端戻し、さらに再度ローラ軸6をディスク搬入方向へ駆動して、ディスクDを筐体2内へ搬送するリトライ動作が行われてもよい。
【0061】
以上の動作により、規制突起21と規制突起22が間隔Wの初期位置へ復帰できないときには、ディスクDが装填位置まで移動できず、また検知スイッチ55が動作しないため、ディスククランプ動作が行われなくなる。すなわち、ディスクが回転駆動部36にクランプされて回転駆動されるときには、規制突起21と規制突起22が必ず間隔Wの初期位置へ復帰し、その位置で拘束部材15,15で拘束されていることになる。そのため、ディスクDが回転駆動部36にクランプされ回転駆動されているときに、別のディスクが挿入口から挿入されても規制突起21と規制突起22の間隔が広げられることがなく、別のディスクと回転中のディスクとが当たる現象を防止できる。
【0062】
なお、前記実施の形態では、前記検知スイッチ55が動作しないと、モード切替モータが始動せず、回転駆動部36へのディスククランプ動作が行われず、またローラブラケット7が図6(B)に示す位置へ回動しなくなる。しかし、本発明は前記実施の形態に限られるものではなく、例えば、規制突起21と22が初期位置に復帰できないときであっても、ディスクDが回転駆動部36に装填され、さらには、ローラブラケット7が図6(B)の状態に回動できるようにし、ただし、検知リンク部材51によって検知スイッチ55が動作されないときには、回転駆動部36が回転始動しないように構成することも可能である。
【0063】
前記実施の形態では、ディスクDが装填位置まで搬入されたことを検知するための手段として電気的且つ機械的なスイッチ55が使用されている。しかし本発明では、検知リンク部材51が(エ)方向へ回動したときにこの検知リンク部材51に押されて駆動されるスイッチレバーが設けられ、検知リンク部材51の回動力がスイッチレバーによって装填機構に伝達されるものであって、このスイッチレバーがスイッチ55に代わるスイッチ手段であってもよい。
【0064】
この場合、装填機構がスイッチレバーによって押されて前記搬送モータの動力伝達経路である減速歯車列と噛み合い、その後は、搬送モータの動力により装填機構が移動し、前記クランパの下降(チャッキング)動作やローラブラケット7の回動動作が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態のディスク装置のディスク挿入待機状態を示す平面図、
【図2】筐体の前方に位置する搬送手段と規制突起との関係を示す斜視図、
【図3】ディスクが正常に装填された状態を示す平面図、
【図4】ディスクが搬入された後に、規制突起が初期位置へ復帰できない異常発生状態を示す平面図、
【図5】初期位置にある規制突起が拘束部材で拘束された状態を示す平面図、
【図6】(A)(B)はローラブラケットの動作を示すものであり、(A)はディスク搬送中、(B)は、ローラがディスクから離れた状態である。
【符号の説明】
【0066】
1 ディスク装置
2 筐体
3 搬送手段
4 ガイドトップ
5 ローラ
6 ローラ軸
7 ローラブラケット
20 規制手段
21,22 規制突起
23,25 可動支持部材
25a 押圧部
27 連結部材
35 ディスク駆動部
36 回転駆動部
40 ストッパ手段
41 ストッパ部材
45 中間リンク部材
51 検知リンク部材
54 ロックピン
61 検知動作部材
64 ロック凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを搬入する搬送手段と、装填位置に搬入されたディスクが装填されるディスク駆動部と、搬入されるディスクの縁部に押されて移動するストッパ部材と、が設けられたディスク装置において、
前記搬送手段に向けて挿入されるディスクの外周縁によってその間隔が広げられる一対の規制突起と、前記一対の規制突起の間隔を前記ディスクの直径よりも短い初期位置に設定する付勢手段と、ディスクが前記装填位置へ向けて移動し、前記規制突起が前記初期位置に復帰できたときに、この規制突起を間隔が開かないように拘束する拘束部材と、
ディスクが規制突起の間を通過した後に前記規制突起が前記初期位置に復帰できないときに、この規制突起に連動して前記ストッパ部材の移動を途中位置で規制する検知動作部材とが設けられ、前記途中位置で規制された前記ストッパ部材によってディスクが前記装填位置へ移動するのが阻止されることを特徴とするディスク装置の誤挿入防止装置。
【請求項2】
ディスクを搬入する搬送手段と、装填位置に搬入されたディスクが装填されるディスク駆動部と、ディスクが前記装填位置へ移動したときにスイッチ手段を動作させる検知部材と、前記スイッチ手段の動作によってディスクの装填動作を始動し、あるいはディスクの回転駆動を始動する制御部と、が設けられたディスク装置において、
前記搬送手段に向けて挿入されるディスクの外周縁によってその間隔が広げられる一対の規制突起と、前記一対の規制突起の間隔を前記ディスクの直径よりも短い初期位置に設定する付勢手段と、ディスクが前記装填位置へ向けて移動し、前記規制突起が前記初期位置に復帰できたときに、この規制突起を間隔が開かないように拘束する拘束部材と、
ディスクが規制突起の間を通過した後に前記規制突起が前記初期位置に復帰できないときに、この規制突起に連動して前記検知部材を前記スイッチ手段を動作させない位置で規制する検知動作部材とが設けられていることを特徴とするディスク装置の誤挿入防止装置。
【請求項3】
前記規制突起は、可動支持部材に支持されており、規制突起が前記初期位置に復帰できないときに、前記可動支持部材の動作によって、前記動作検知部材が規制位置に設定される請求項1または2記載のディスク装置の誤挿入防止装置。
【請求項4】
一対の規制突起は互いに連動し、その間隔が広がる方向へ互いに同じ距離だけ移動する請求項1ないし3のいずれかに記載のディスク装置の誤挿入防止装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、ディスクに搬入力を与えるローラと、このローラを支持するローラブラケットとを有し、前記ローラブラケットに前記拘束部材が設けられて、前記ローラがディスクから離れるときに、前記拘束部材によって前記規制突起が拘束される請求項1ないし4のいずれかに記載のディスク装置の誤挿入防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−99833(P2006−99833A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281984(P2004−281984)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】