説明

ディスク識別子選別装置

【課題】ソフトウェア的な対処に頼らず、市販の再生装置、記録装置を用いてなされるカジュアルコピーを効率的に防止することができる光ディスクを提供する。
【解決手段】デジタルデータが記録されている光ディスクであり、ランレングス抑制型符号化方式に基づく3T〜14T(Tは0.133μm)の連続長を有する凹凸部列が形成されている。この途中には、ランレングス抑制型符号化方式に基づかない連続長を有する凹部又は凸部が記録されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク、再生装置、及びディスク識別子選別装置に関し、光ディスクに記録されたデータの著作権を保護する場合の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲームソフト、映画等のデジタル著作物を光ディスクに記録して販売する業者がもっとも警戒するのは、一般ユーザによるカジュアルコピーである。カジュアルコピーとは、いわゆるパソコンと、市販の再生装置と、市販の記録装置とを接続して、CD-ROM,DVD-ROM等の光ディスクに記録されたデータを読み出して、ハードディスクやCD-R,DVD-R等の記録可能型ディスクに記録するというユーザの行為である。特別な設備を用いずともカジュアルコピーは実現されるので、多くのユーザがカジュアルコピーを行えば、販売業者は多大な打撃を被ることとなる。そのため、光ディスクの製造を行う製造業者は、光ディスクに記録すべきデータを光ディスク固有の識別情報を用いて暗号化する等、ソフトウェア的な対処を光ディスクに記録すべきデータに施して、カジュアルコピーの防止に最善の注意を払っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−191218号公報
【特許文献2】特開2000−76659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで光ディスク固有の識別情報で暗号化する等の対処は効果的であるが、暗号化の過程を解析するリバース技術の発展も目覚ましく、ソフトウェア的な対処が半永久的に有効であるとは断言できない。仮に光ディスクの記録時における暗号化過程を解析し、これを復号してしまうような暗号化解読プログラムが登場し、一般公衆に頒布されれば、暗号化解読プログラムをインストールしたパソコンと、市販の再生装置と、記録装置とからなるシステムにより、デジタル著作物がコピーされてしまう。このように、デジタル著作物を保護するためのソフトウェア的な対処は、この保護を打ち破るようなプログラムが一般公衆に頒布された場合に、カジュアルコピーを防止することができず、カジュアルコピーの防止は万全であるとはいえなかった。
【0005】
本発明の目的は、ソフトウェア的な対処に頼らず、市販の再生装置、記録装置を用いてなされるカジュアルコピーを効率的に防止することができる光ディスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明に係る光ディスクは、デジタルデータが記録されている光ディスクであって、前記デジタルデータに対応するデータ用ピット列が形成されており、デジタルデータがオリジナルであることを証明する証明用ピットが組み込まれているデータ領域とを含み、前記データ用ピット列は、所定の規則を満たす連続長を有する凹部と、同連続長を有する凸部とからなり、前記証明用ピットは、所定の規則を満たさない連続長を有している。
【発明の効果】
【0007】
以上発明したように、本発明にかかる光ディスクは、デジタルデータが記録されている光ディスクであって、前記デジタルデータに対応するデータ用ピット列が形成されており、デジタルデータがオリジナルであることを証明する証明用ピットが組み込まれているデータ領域とを含み、前記データ用ピット列は、所定の規則を満たす連続長を有する凹部と、同連続長を有する凸部とからなり、前記証明用ピットは、所定の規則を満たさない連続長を有している。
【0008】
証明用ピットは、デジタルデータを符号化する際の符号化方式に基づかない物理特徴を有しているので、特別な改造が施されない限り、市販の記録装置はデータ用ピットを記録可能型ディスクに記録できたとしても、証明用ピットを記録可能型ディスクに記録することはできない。この記録可能型ディスクに記録されたデータを再生する再生装置は、光ディスクにおける証明用ピットの存在を確認することにより、正当な製造販売業者によりデジタル著作物が記録されたオリジナルの光ディスクであるか、カジュアルコピーによりデジタル著作物が記録された記録可能型ディスクであるかを判定することができる。そしてカジュアルコピーによりデジタル著作物が記録された記録可能型ディスクについては一切再生を行わず、オリジナルのデータが記録された光ディスクについて再生を行うという制御を実現することができる。
【0009】
ここで前記所定の規則は、0ビットの連続個数が第1の個数以上第2の個数以下になるよう、デジタルデータを変換するランレングス抑制型の符号化方式に基づいていて、前記データ用ピット列における凸部及び凹部は、前記第1の個数に対応する第1の長さ以上、第2の個数に対応する第2の長さ以下の連続長を有しており、証明用ピットは、凸部と、又は凹部であり、第1の長さを下回る連続長を有していてもよい。かかる証明用ピットを光ピックアップを用いて読み取った場合に得られるRF信号は、ピークレベル、ボトムレベルが充分なレベルにならず、それらは補正された上で2値化されて記録可能型ディスクに記録される。よって補正後の2値化信号を、ハードディスクやCD-R、DVD-R等に記録したとしても、これらのディスクがオリジナルのディスクとして認識されることはない。
【0010】
ここで前記所定の規則は、0ビットの連続個数が第1の個数以上第2の個数以下になるよう、デジタルデータを変換するランレングス抑制型の符号化方式に基づいていて、前記データ用ピット列における凸部及び凹部は、前記第1の個数に対応する第1の長さ以上、第2の個数に対応する第2の長さ以下の連続長を有しており、証明用ピットは、凹部であり、第2の連続長を上回る連続長を有していてもよい。証明用ピットは、第2連続長を上回っているので、特別な改造が施されない限り、市販の記録装置は第1連続長〜第2連続長の範囲にある凹凸部を記録可能型ディスクに記録できたとしても、証明用ピットを記録可能型ディスクに記録することはできない。また証明用ピットを読み取った際のRF信号は、データ領域を読み取った際のRF信号と比較して、LOW区間が長く継続する。LOW区間の長さを計測するという簡単な処理により、再生装置はこれから再生しようとする光ディスクが、正当な製造販売業者による正当なものか否かを判断することができる。
【0011】
また、レーザ加工された加工部分を有する光ディスクを以下のように構成しても良い。即ち、レーザ加工された加工部分を有する光ディスクであって、光ディスクにおける加工部分以外の領域には、凹部及び凸部の羅列が形成されていて、凹部及び凸部は、第1の長さ以上第2の長さ以内の連続長を有し、反射膜がコーティングされており、前記加工部分には、第2連続長を上回る連続長を有する第1凹部と、又は、第2連続長を上回る連続長を有する凹凸部列であって、凸部に反射膜が存在しない第1凹凸部列が含まれるように構成しても良い。レーザ加工という簡易な加工によりオリジナルディスクであることの証明用のピットを形成することができるので、証明用ピットを設けるにあたってのコストパフォーマンスは低廉なものとなる。
【0012】
ここで前記加工部分は、第1凹部と、又は、第1凹凸部列の他に、第2連続長を上回る連続長を有する凹凸部列であって、凸部における反射膜の連続長が第1連続長に満たない第2凹凸部列を含み、前記第1凹部と、又は、第1凹凸部列は、加工部分を光ピックアップを用いて読み取った際に得られるRF信号のレベルを、第1、第2の閾値と比較することにより加工部分から検出されており、その位置及び連続長は光ディスク上の特定領域に記録されていてもよい。凸部に反射膜が残っているようなピット列ではなく、第2連続長を上回る連続長を有する凹部と、或は、凸部に反射膜が存在しない凹凸部列の位置・長さが特定領域に記録されることになる。凸部に反射膜が残っているようなピット列の位置・長さは特定領域から除外されるので、光ディスクがオリジナルであるか否かを検出する際の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る光ディスク1の外観を示す図である。
【図2】(a)光ディスク1の断面構造を示す。 (b)凹部及び凸部と、1ビット、0ビットとの対応関係を示す図である。
【図3】(a)データ領域におけるピットの具体的な長さを示す図である。 (b)データ領域2における凹凸部列にレーザ光を照射された際、得られるRF信号を示す図である。
【図4】1T〜2Tの連続長を有するピークA、ピークBを示す図である。
【図5】第1実施形態に係る再生装置の内部構成を示す図である。
【図6】RF信号、2値化信号M,H,L、EX-OR演算回路54の演算結果、検出信号を示す図である。
【図7】階段状の側面C,Dを有する凹部を示す図である。
【図8】RF信号、2値化信号M4,H4,L4、EX-OR演算回路54の演算結果、検出信号を示す図である。
【図9】加工部分6を拡大して示す図である。
【図10】(a)lengthXの連続長を有する凹部のみからなるトラック円弧を示す図である。
【0014】
(b)lengthXの連続長を有する凹凸部列であって、凸部に反射膜が存在しないものである。
(c)途中に3T以上の反射膜を残した凸部が存在する凹凸部列のタイプを示す図である。(d)2T未満の反射膜を残した凸部を含む凹凸部列を示す。
【図11】(a)図10(a)のタイプのトラック円弧を読み取った際に得られるRF信号を示す図である。
【0015】
(b)図10(d)のタイプを有するトラック円弧から読み取られたRF信号である。
【図12】(a)図9に示した加工部分から、どのようにディスク識別子が選別されるかを示す図である。 (b)図12(a)の物理特徴情報が記録された状態の特定領域3を示す図である。
【図13】本実施形態に係る光ディスクの製造工程図である。
【図14】ディスク識別子選別装置の内部構成を示す図である。
【図15】(a)N個の加工部分のそれぞれに含まれるY本のトラック円弧についてのY本の物理特徴情報を示す図である。
【0016】
(b)ディスク識別子設定部18によりOK/NGが設定された物理特徴情報の一例を示す図である。
【図16】(a)複数レベル2値化部16の内部構成を示す図である。 (b)ディスク識別子選別部17の内部構成を示す図である。
【図17】(a)図10(d)のタイプの凹凸部列に対して、設定された閾値M、閾値H、閾値Lの一例を示す図である。
【0017】
(b)RF信号と、3つの2値化信号M,H,Lを示す図である。
【図18】図10(a)、図10(b)に示した形状を有するトラック円弧を光ピックアップで読み取った場合に出力されるRF信号を示す図である。
【図19】(a)図17(b)に示した2値化信号についてのLOW区間を示す図である。
【0018】
(b)図18に示した2値化信号についてのLOW区間を示す図である。
【図20】第2実施形態に係る光ディスクの再生装置の内部構成を示す図である。
【図21】反射膜が1T〜2Tだけ残した凸部を示す図である。
【図22】(a)ディスク表面に光の反射を抑える低反射物質が塗付または貼付された凹凸部列を示す図である。
【0019】
(b)充分な振幅レベルに達していないピークH、ピークIを有するRF信号を示す図である。
【図23】第3実施形態における再生装置により変更される前の閾値を示す図である。
【図24】第3実施形態における再生装置により変更された後の閾値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以降、本発明に係る光ディスク、ディスク識別子選別装置、再生装置についての実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る光ディスク1の外観を示す図である。光ディスク1上の領域は大きく2つに分けられ、デジタル著作物を構成するデジタルデータが記録されるデータ領域2と、特定領域3とからなる。データ領域2には、著作権保護のための加工部分4、5、6、7、8がN個(N=5)存在している。
【0021】
図2(a)に光ディスク1の断面構造を示す。図2(a)に示すように光ディスク1は、ピットの凸凹を形作る基板9と、基板9上にアルミ蒸着により形成される反射膜10と、基板9と反射膜10とを保護する透明材質である保護層11とからなる。基板9には、凹部及び凸部の列が形成されている。図2(b)は、凹部及び凸部と、記録時に用いる"1"と"0"というビット情報の連なり(ビット系列)との対応関係を示す図である。ビット情報の間隔をTで表す。本図に示すように、ビット情報1の場合にピットの反転(矢印↓↑に示すエッジの部分) が起きるよう記録されている。凹部と、凸部の連続長は、ビット情報1の間隔で表現できる。図2(b)の例では、凸部pt1の連続長は4Tとなり、凸部pt2の連続長は6Tとなる。一般に、ディスクから再生される信号の低周波成分の低減のためにピットの最大反転間隔が制限され、高帯域化の防止のためにピットの最小反転間隔は制限される。この制限を満たすために本実施形態では、元のデジタルデータに、変調方式の1つである8/16変調方式を施した後のデータを記録時のビット系列として用い、ビット情報1の場合にピットの反転が起きるよう記録されている。8/16変調方式とは、所定の変換テーブルを用いて、デジタルデータを構成する8ビットデータを16ビットデータに変換するという符号化であり、DVDに採用されている符号化方式として知られている。勿論、デジタルデータを構成する8ビットデータを14ビットデータに変換するというEFM(Eight to Fourteen Modulation)方式であっても良い。8/16変調が施されれば、元のデジタルデータを構成する8ビットデータは"1001"〜"1 0000 0000 001"といった1と1との間に0ビットが2個から10個含まれるビット配列からなる16ビットデータに変換される。このことより、凹部および凸部の連続長は3T〜11Tの範囲となる。変換された16ビットデータは、同期符号が付与されて光ディスクに記録される。
【0022】
ここで同期符号は8/16変調では出現しない"1 0000 0000 0000 01"のパターンを含んでおり、元のデジタルデータと区別されている。これは14Tのピットに相当する。以上のことから、デジタルデータは、3T〜14Tの連続長を有するピット列として光ディスクに記録される。データ領域におけるピットの具体的な長さを図3(a)に示す。
データ領域2における凹凸部列にレーザ光を照射され、その反射光が電気的に変換されれば図3(b)に示すようなRF(Radio Frequency)信号が得られる。一般にRF信号は、レーザー光を凹凸部列に照射した際に得られる反射波を、光電変換することにより得た電気信号であって、その振幅が均等化された(イコライジングされた)信号をいう。このRF信号を閾値Mで2値化することにより、2値化信号が得られ、この2値化信号に8/16復調処理、誤り訂正処理が施されて、デジタル著作物を構成するデータを得ることができる。続いて加工部分4〜8について説明する。図4は、加工部分6に含まれる凹部と、凸部を示す図である。本実施形態において加工部分6には、図4に示すように1T〜2Tの連続長を有する凹部と、同じく1T〜2Tの連続長を有する凸部とが、lengthX隔てて存在する。これら凸部と、凹部は、ディスク作成時に規定された記録波形よりも短い記録波形を用いることにより、容易に形成される。1T〜2Tという連続長は、3T〜14Tという通常のピット列の連続長より短い。光ピックアップを用いて読み取った際のRF信号は、通常の凹凸部列を読み取った際のRF信号のように、充分な明レベル、暗レベルに達しない。そのようなRF信号から得られる2値化信号は、市販の再生装置により再生され得ず、市販の記録装置により他の光ディスクに記録されないことに留意すべきである。つまり市販の再生装置は、3T〜14Tの凹凸部列を光ディスクから読み取り、また市販の記録装置は、3T〜14Tの凹凸部列を記録可能型ディスクに記録する。通常の長さより短い凹部と、凸部からRF信号を読み取った際に得られる2値化信号を、市販の再生装置、記録装置は規範外の2値化信号であるとして、再生処理、記録処理において、誤り訂正処理を施し、規範内の2値化信号に変換する。よって1T〜2Tの連続長を有する凹部と、凸部が、カジュアルコピーにて記録可能型ディスクに記録されることは有り得ない。
【0023】
1T〜2Tの連続長を有する凹部と、凸部が存在することこそ、この光ディスクが正規の製造業者により製造されたオリジナル光ディスクであることの証しであり、lengthXの間隔を隔てて存在する1T〜2Tの連続長の凹部と、1T〜2Tの連続長を有する凸部をディスク識別子という。この光ディスクの再生のために正規に製造・販売される再生装置は、再生すべき光ディスクからディスク識別子を読み取り、1T〜2Tの凹部と、1T〜2Tの凸部の間隔がどれだけであるかを判定することにより、再生すべき光ディスクがオリジナルのものか、カジュアルコピーにより違法にデジタル著作物が記録された記録可能型ディスクであるかを判定することができる。以上で第1実施形態に係る加工部分についての説明を終える。続いて第1実施形態における特定領域3についての説明を行う。
【0024】
特定領域3は、加工部分のうち、ディスク識別子に対応する1T〜2Tの凸部から1T〜2Tの凹部までの長さ及びディスク識別子の位置が、物理特徴情報として記録されている。図4に示すディスク識別子の物理特徴情報が、特定領域3に記録されているので、光ディスクを再生しようとする正規な再生装置は、この物理特徴情報を参照することにより、光ディスクのどこに、参照すべきディスク識別子が存在するのかを知ることができる。また物理特徴情報には、1T〜2Tの凹部と、1T〜2Tの凸部との間隔(ディスク識別子の長さ)が示されているので、ディスク識別子において、凹部から凸部までの間隔を知ることができる。
【0025】
続いて第1実施形態に係る光ディスクの再生装置について説明する。図5は、第1実施形態に係る再生装置に内部構成を示す図である。本再生装置は、図5に示すようにシステム制御部50(物理特徴情報読取部51、個数判定部59を含む)、信号再生部52、複数レベル2値化部53、EX-OR演算部54、フィルタ55、カウンタ56、比較器57、カウンタ58を備える。
【0026】
システム制御部50は、CPUやメモリ、メモリに格納されるプログラムにより構成され、再生装置の統合制御を行う。物理特徴情報読取部51は、光ディスクが装填され、これを再生する旨が指示されれば、特定領域3からN個の物理特徴情報を読み取り、それぞれの物理特徴情報に示される位置から、物理特徴情報に示される長さだけ、光ディスクの凹凸部列の形状を信号再生部52に読み出させる。
【0027】
信号再生部52は、光ピックアップを用いて凹凸部列にレーザー光を照射し、その反射光を受光することにより、RF信号を得る。図4の凹凸部列の形状を読み取った際に得られるRF信号の一例を図6に示す。ピットA、ピットBは、連続長が2T未満であるので、これにレーザー光を照射した際の反射光はおのおの十分な明レベル、暗レベルに到達しない。そのため、第1段目に示すようにこの反射光から得られるRF信号には充分な振幅を有さないX部と、Y部が現れる。
【0028】
複数レベル2値化部53は、閾値M、閾値L、閾値Hを用いてRF信号を2値化する。図6の第1段目にはRF信号と、閾値M、閾値L、閾値Hとの対応関係が示されている。図6の第2段目には、閾値Mを用いて2値化した場合に得られる2値化信号M3、第3段目には、閾値Hを用いて2値化した場合に得られる2値化信号H3、第4段目には、閾値Lを用いて2値化した場合に得られる2値化信号L3が示されている。
【0029】
ピークX、ピークYを有するRF信号を閾値Mを用いて2値化したため、2値化信号M3には、ピットXに対応するHIGH区間や、ピットYに対応するLOW区間が全く存在しない。閾値Hを用いてRF信号を2値化した場合の2値化信号H3には、ピットAに対応するHIGH区間は存在しないが、ピットBに対応するLow区間は現れる。閾値Lを用いてRF信号を2値化した場合の2値化信号L3には、ピットAに対応するHIGH区間は存在するが、ピットBに対応するLow区間は存在しない。
【0030】
EX-OR演算回路54は、2値化信号H3と2値化信号L3の排他的論理和をとる。第4段目、第3段目に示された2値化信号L3と、2値化信号H3とについてEX-OR演算を行えば、図6の第5段目に示されるような信号が得られる。フィルタ55は、EX-OR演算回路54のEX-OR演算結果のうち、HIGHレベルの長さが所定値以上であるもののみを通過する。第5段目のEX-OR演算結果の信号に含まれるHIGH区間のうち、所定の幅を有するもののみを通過すると、第6段目のような検出信号が得られる。
【0031】
カウンタ56は、フィルタ55から出力された2値化信号において、ピークAに対応するHIGH区間からピークBに対応するHIGH区間までのLOW区間の長さをカウントする。比較器57は、カウンタ56によりカウントされたLOW区間の長さを、物理特徴情報に示される連続長と比較し、一致すれば、検出信号をカウンタ58に出力する。これにより比較器57から出力された検出信号の個数Mがカウンタ58によりカウントされる。
【0032】
カウンタ58は、比較器57から出力された検出信号の個数Mをカウントする。個数判定部59は、BCAに存在する物理特徴情報の総数Nと、カウンタ58によりカウントされた検出信号の個数Mとの比率M/Nを算出して、比率M/Nと所定の閾値とを比較する。比率M/Nが閾値を上回るなら、この光ディスクを再生する。比率M/Nが閾値を下回るなら、この光ディスクを再生しない。仮に真正な光ディスクの内容がカジュアルコピーされて複製物が記録された記録可能型ディスクが再生装置に装填されたとしても、再生装置は、記録可能型ディスクを再生することはない。 以上のように本実施形態によれば、市販の再生装置、記録装置が再生、記録することができない1T〜2T以下の連続長を有する凹部と、又は凸部をディスク識別子として用いるので、この光ディスクに記録されたデータを再生する再生装置は、これらディスク識別子の存在を確認することにより、再生すべき光ディスクが正当な製造販売業者によりデジタル著作物が記録された光ディスクであるか、カジュアルコピーによりデジタル著作物が記録された記録可能型ディスクであるかを判定することができる。
【0033】
尚、本実施形態では、階段上の壁面を有する凹部を設けてもよい。図7は、階段状の側面C,Dを有する凹部を示す図である。側面C、Dの段差は、凹部の深さに対して、ほぼ半分の深さに存在する。一般にレーザー光の波長をλとすると、凹部の深さはλ/4として表現される。側面C、Dの段差は、凹部の深さλ/4に対して、ほぼ半分の位置であるλ/8に設けられることとなる。かかる側面C、Dは、通常の3T〜14Tの連続長を有する凹部の端部に、YAGレーザを照射することにより加熱を行い、アルミ反射膜10を溶解して、さらに基板9を変形させることにより、形成される。これら側面C、Dにレーザー光を照射した際、得られるRF信号は、3T未満の凹部にレーザー光を照射した際に得られるRF信号と同様であり、3T未満の凹部を検出したのと同様の手順を経て検出することができる。図8は、ピークC、ピークDを含む凹凸部列を読み取ることにより得られたRF信号が2値化される過程を示す図である。図8の第1段目は、RF信号と、3つの閾値M、閾値L、閾値Hとを示す。第2段目は、閾値Mを用いてRF信号を2値化することにより得られた2値化信号M4、第3段目は、閾値Hを用いてRF信号を2値化することにより得られた2値化信号H4、第4段目は、閾値Lを用いてRF信号を2値化することにより得られた2値化信号L4を示す。第5段目は、2値化信号M4、2値化信号H4に対してEX-OR演算回路54がEX-OR演算を行った結果を示し、第6段目は、フィルタ55からの検出信号を示す。
【0034】
(第2実施形態)
第1実施形態では、1T〜2Tの連続長を有する凹部と、凸部をディスク識別子に用いたが、15Tを上回る連続長を有する凹部を、ディスク識別子に用いることを提案する。先ず、第2実施形態における加工部分について説明する。本実施形態における加工部分は、YAGレーザー(イットリウム(Yttrium) アルミニウム(Aluminum) ガーネット(Garnet))によりレーザ加工された部分である。
【0035】
図9は、第2実施形態に係る加工部分6を拡大して示す図である。本図において加工部分6には、lengthXの連続長を有する螺旋トラックの円弧が、Y本含まれている。加工部分においてトラック円弧同士の間隔は0.79μmであり、この加工部分の大きさは、上述した誤り訂正符号にて訂正可能な大きさに定められている。加工部分に含まれるトラック円弧の形状は、図10(a)〜図10(d)に示す4つのタイプの何れかに分類される。図10(a)は、lengthXの連続長を有する凹部のみからなるトラック円弧を示す図である。lengthXは、15T以上の長さである。元々は3T〜14Tの連続長を有する凹凸部列が存在していたが、YAGレーザの照射により、凸部が破線に示すように溶融されたため、得られたものである。
【0036】
図10(a)のタイプでは、凹部がlengthX継続しているので、光ピックアップを用いて読み取った際のRF信号は、通常の凹凸部列を読み取った際のRF信号より、LOW区間が長く継続する。図11(a)は、図10(a)のタイプのトラック円弧を読み取った際に得られるRF信号を示す図である。通常より長くLOW区間が継続するようなRF信号から得られる2値化信号は、市販の再生装置により再生され得ず、市販の記録装置により他の光ディスクに記録されないことに留意すべきである。つまり市販の再生装置は、3T〜14Tの凹凸部列を光ディスクから読み取り、また市販の記録装置は、3T〜14Tの凹凸部列を記録可能型ディスクに記録する。通常の長さより長い凹部からRF信号を読み取った際、そのRF信号から得られる2値化信号を市販の再生装置、記録装置は規範外の2値化信号であるとして、再生処理、記録処理において、誤り訂正処理を施し、規範内の2値化信号に変換する。よってlengthXの連続長を有するトラック円弧が、カジュアルコピーにて記録可能型ディスクに記録されることは有り得ない。lengthXの連続長を有するトラック円弧が存在することこそ、この光ディスクが正規の製造業者により製造されたオリジナル光ディスクであることの証しであり、第2実施形態では、これをディスク識別子という。この光ディスクの再生のために正規に製造・販売される再生装置は、再生すべき光ディスクからディスク識別子を読み取り、RF信号のLOW区間がどれだけ継続するかを判定することにより、再生すべき光ディスクが正規なものか、カジュアルコピーにより違法にデジタル著作物が記録された記録可能型ディスクであるかを判定することができる。
【0037】
図10(b)は、lengthXの第1連続長を有する凹凸部列であって、凸部に反射膜が存在しないものである。凹部の反射膜が、残っているか、完全に溶解しているかは問わない。凸部に反射膜が存在しないので、この図10(b)の凹凸部列を読み取った際のRF信号の形状は、図10(a)の凹部を読み取った際のRF信号の形状と同一となる。即ち、通常の凹凸部列から読み取ったRF信号より、LOW区間が長く継続する。LOW区間が通常より長く継続することから、図10(b)のタイプのトラック円弧もディスク識別子に相応しい。
【0038】
図10(c)は、途中に3T以上の反射膜を残した凸部が存在する凹凸部列のタイプを示す。凹部の連続長lengthX1,X2であり、lengthXに満たない。従って、図10(c)に示すように、lengthX未満の連続長を有する凹部として認識される。図10(d)は、2T未満の反射膜を残した凸部を含む凹凸部列を示す。この図10(d)のタイプを有する凹凸部列であっても、凹凸部列の形状を読み取った際のRF信号は、図10(a)、図10(b)同様、LOW区間が所定期間以上継続することになる。しかし1T、2Tの反射膜が凸部に存在するので、これを読み取った際のRF信号には、これら残存する反射膜に対応するピーク部が現れる。図11(b)は、図10(d)のタイプを有するトラック円弧から読み取られたRF信号を示す図である。このRF信号には、1T、2Tの反射膜に対応するピークP、ピークQが現れる。ピークPが再生時に検出されれば、これが再生装置により、lengthXの連続長を有する凹部ではなく、図10(c)に示すようなlengthX未満の連続長を有する凹凸部列として認識されることも有り得る。
【0039】
図10(d)のタイプのトラック円弧は、再生時に図10(c)のタイプと誤認識される恐れがあるので、加工部分内に存在するとはいえ、ディスク識別子には相応しくない。図12(a)は、図9に示した加工部分から、どのようにディスク識別子が選別されるかを示す図である。加工部分に含まれるY本のトラック円弧のうち、address α6から存在するlengthXのトラック円弧が図10(a)、図10(b)のタイプであり、その他のトラック円弧は図10(c)、図10(d)のタイプであるので、このaddress α6から存在するlengthXのトラック円弧がディスク識別子として選別されていることがわかる。
【0040】
以上で、加工部分についての説明を終える。続いて特定領域3について説明する。特定領域3は、加工部分に含まれるY本のディスク識別子のうち、ディスク識別子となるものの位置及び長さが、物理特徴情報として記録されている。図12(a)の物理特徴情報が記録された状態の特定領域3の内容を図12(b)に示す。図12(a)に示すように特定領域3には、ディスク識別子についての位置であるaddress α6と、ディスク識別子の連続長であるlengthXとを含む物理特徴情報が記録されている。図10(a)、図10(b)のタイプに該当するディスク識別子の物理特徴情報が、特定領域3に記録されているので、光ディスクを再生しようとする正規な再生装置は、この物理特徴情報を参照することにより、光ディスクのどこに、参照すべきディスク識別子が存在するのかを知ることができる。また物理特徴情報には、ディスク識別子の長さが示されているので、ディスク識別子を読み取った際のRF信号においてLOW区間がどれだけ継続するかも知ることができる。
【0041】
以上で、本実施形態に係る光ディスクについての説明を終える。続いて本実施形態に係る光ディスクの製造工程について説明する。図13は、本実施形態に係る光ディスクの製造工程図である。この工程は、基板成形工程S1、反射膜成膜工程S2、保護膜コーティング工程S3、貼り合わせ工程S4、レーベル印刷工程S5を経て製造される点は、通常の光ディスクと同様である。これらの工程の後になされるレーザ加工工程S6、ディスク識別子選別工程S7、物理特徴情報記録工程S8が、本実施形態特有の工程である。
【0042】
レーザ加工工程S6は、光ディスクにYAGレーザを照射することにより、加工部分をN個得る工程である。ディスク識別子選別工程S7は、YAGレーザの照射により得られた各加工部分の中から、ディスク識別子を検出し、検出されたディスク識別子の連続長と、位置とを示す物理特徴情報を得る工程である。
物理特徴情報記録工程S8は、レーザ加工工程で得られた物理特徴情報を、特定領域3に記録する工程である。YAGレーザにより加工を行うレーザ加工工程S6、特定領域3へのディスク識別子の記録を行う物理特徴情報記録工程S8は、既存の光ディスク製造設備で実現することができる。ディスク識別子選別工程S7は、図14に示すディスク識別子選別装置を用いることにより実現される。以下、このディスク識別子選別装置について説明する。図14においてディスク識別子選別装置は、ディスク識別子選別装置の統合制御を行うシステム制御部12(物理特徴情報記憶部13、物理特徴情報読取部14、ディスク識別子設定部18を含む)と、信号再生部15と、複数レベル2値化部16と、ディスク識別子選別部17とを備える。
【0043】
システム制御部12は、CPUやメモリ、メモリに格納されるプログラムにより構成され、ディスク識別子選別装置の統合制御を行う。物理特徴情報記憶部13は、N個の加工部分に含まれるそれぞれのディスク識別子の位置、長さを示す物理特徴情報を記憶している。図15(a)は、N個の加工部分のそれぞれに含まれるY本のトラック円弧についてのY本の物理特徴情報を示す図である。物理特徴情報記憶部13は、トラック円弧のアドレスや長さを物理特徴情報として記入することができる物理特徴情報欄と、ディスク識別子として相応しいか否か(OK/NG)を示すOK/NG欄が対応づけられている。
【0044】
物理特徴情報読取部14は、物理特徴情報記憶部13に記憶されている物理特徴情報に従って、N個の加工部分に含まれるY本のトラック円弧のそれぞれについて凹凸部列を読み取るよう、信号再生部15を制御する。信号再生部15は、物理特徴情報読取部14から指示されたトラック円弧の位置、及びトラック円弧の連続長に従い、トラック円弧における凹凸部列の形状を読み取り、RF信号を得る。
【0045】
複数レベル2値化部16は、信号再生部15により読み取られたRF信号を、3つの閾値M,L,Hを用いて2値化して、3つの2値化信号M,L,Hを出力する。図17(a)は、図10(d)のタイプの凹凸部列に対して設定された閾値M、閾値H、閾値Lの一例を示す。ディスク識別子選別部17は、複数レベル2値化部16から出力される3つの2値化信号M,L,Hを参照することにより、形状が読み取られたトラック円弧が図10(a)、図10(b)のタイプに該当するか、図10(c)、図10(d)のタイプに該当するかを判定し、図10(a)、図10(b)のタイプに該当する場合は、ディスク識別子設定部18に検出信号を出力する。
【0046】
ディスク識別子設定部18は、図10(a)、図10(b)のタイプに該当すると判定されたトラック円弧についての物理特徴情報のOK/NG欄をOKと設定し、図10(c)、図10(d)のタイプに該当すると判定されたトラック円弧についての物理特徴情報のOK/NG欄をNGと設定する。図15(b)に、ディスク識別子設定部18によりOK/NGが設定された物理特徴情報の一例を示す。
【0047】
続いて複数レベル2値化部16の内部構成について説明する。図16(a)は、複数レベル2値化部16の内部構成を示す図である。図16(a)に示すように、複数レベル2値化部16は、コンパレータ21、コンパレータ22、コンパレータ23から構成される。コンパレータ21は、RF信号の振幅に対して中央付近に閾値を設け、RF信号を閾値Mに基づき2値化して、2値化信号M1を出力する。RF信号の振幅から閾値を設定するのは、凹凸部列からの反射光のレベルが、光ピックアップの種類により異なるからである。図17(b)の第1段に、RF信号に対する閾値Mの設定例を示す。図17(b)の第2段に、コンパレータ21により読み取られたRF信号をコンパレータ21が2値化することにより得られる2値化信号M1を示す。尚閾値は、予め固定値として決めておいてもよい。
【0048】
コンパレータ22は、RF信号を閾値Lに基づき2値化して、2値化信号L1を出力する。図17(b)の第1段に、RF信号に対する閾値Lの設定例を示す。閾値Lは、閾値Mに対してオフセットαだけ低い。閾値Mより低く閾値Lよりは高いピークQは、閾値Mでは2値化されなかったが、閾値Lを用いた場合は、2値化されることとなる。図17(b)の第4段に、コンパレータ22の2値化により得られる2値化信号L1を示す。本図における2値化信号L1には、ピークQを2値化して得られたパルス波Q1が含まれていることがわかる。
【0049】
コンパレータ23は、RF信号を閾値Hを用いて2値化する。図17(b)の第1段に、RF信号に対する閾値Hの設定例を示す。閾値Hは、閾値Mよりオフセットαだけ高い。そのため、閾値Mによる2値化では2値化されていたピークPが、閾値Hを用いた2値化では2値化されていない。図17(b)の第1段に、RF信号に対する閾値Hの設定例を示し、図17(b)の第3段に、コンパレータ23による2値化で得られた2値化信号H1を示す。2値化信号M1は位置A0からLOW区間が初まり、位置A1でLOW区間が終わる。2値化信号H1は位置A2からLOW区間が始まり、位置A3でLOW区間が終わるので、LOW区間が長く継続していることがわかる。一方2値化信号L1は、位置A4からLOW区間が始まり、位置A5でLOW区間が終わるので、LOW区間が2値化信号M1より短いことがわかる。
【0050】
図10(a)、図10(b)に示した形状を有するトラック円弧を光ピックアップで読み取った場合に出力されるRF信号を図18に示す。図17(b)のRF信号と比較して、図18のRF信号が異なるのは、ピークP、ピークQが存在しない点である。これを閾値M、閾値L、閾値Hで2値化した場合の2値化信号L2、2値化信号H2は似たような形状となる。
これらの事実から、図10(d)の凹凸部列から読み取られたRF信号を2値化した際の2値化信号M1,L1,H1は、LOW区間の長さに差違があり、図10(a)、図10(b)の凸部から読み取られたRF信号を2値化して得られた2値化信号M2,L2,H2は、LOW区間の長さが揃っていることがわかる。続いてディスク識別子選別部17の内部構成について説明する。図16(b)は、ディスク識別子選別部17の内部構成を示す図である。図16(b)に示すようにディスク識別子選別部17は、カウンタ31、カウンタ32、比較器33、比較器34からなる。
【0051】
カウンタ31は、2値化信号H1,H2のLOW区間の長さを計測して、計数値xを出力する。カウンタ32は、2値化信号L1,L2のLOW区間の長さを計測して、計数値yを出力する。比較器33は、計数値x及び計数値yを、14Tという凹凸部列の上限長と比較し、計数値x及び計数値yが上限長を上回れば、その旨を比較器34に出力する。
比較器34は、14Tという上限長を上回ると判定された計数値xと、ピットの上限長を上回ると判定された計数値yとの差分x-yが、所定の閾値を上回るか否かを判定する。例えば図18のようにピークP、ピークQを含まないRF信号を2値化して得られた2値化信号H2、2値化信号L2では、LOW区間の長さがほぼ等しいので、計測値x、計測値yもほぼ等しくなり、測定値の差分x-yが閾値を下回る。
【0052】
逆に、ピークP、ピークQを含むRF信号を2値化して得られた2値化信号H1、2値化信号L1では、LOW区間の長さが大きく異なり、測定値の差分x-yが所定の閾値を上回る。差分x-yが閾値を下回れば、比較器34はトラック円弧が図10(a)、図10(b)のタイプに該当することを通知し、差分x-yが閾値を上回れば、トラック円弧が図10(d)のタイプに該当することを通知する。加工部分に含まれるY本のトラック円弧について以上の処理を繰り返せば、図10(a)、図10(b)のタイプを有するトラック円弧のみが選別され、その位置及び長さが後段の物理特徴情報記録工程で特定領域3に記録されることとなる。図10(d)のタイプが除外され、図10(a)、図10(b)のタイプを有するトラック円弧がディスク識別子として選別されるので、ディスク識別子の検出を安定的に行うことができる。
【0053】
図19(a)は、図17(b)に示した2値化信号についてのLOW区間を示す図であり、図19(b)は、図18に示した2値化信号についてのLOW区間を示す図である。これらの図において、黒い区間の長さが、カウンタ31、カウンタ32により計測され、これらの差分x-yが比較器34により比較されることとなる。続いて、光ディスクについての再生装置について説明する。図20は、第2実施形態に係る光ディスクの再生装置の内部構成を示す図である。本図に示すように再生装置は、システム制御部40(物理特徴情報読取部41、個数判定部47を含む)、信号再生部42、単一レベル2値化部43、カウンタ44、比較器45、カウンタ46を備える。
【0054】
システム制御部40は、CPUやメモリ、メモリに格納されるプログラムにより構成され、再生装置の統合制御を行う。物理特徴情報読取部41は光ディスクが装填され、これを再生する旨が指示されれば、特定領域3からN個の物理特徴情報を読み取り、それぞれの物理特徴情報に示される位置から、物理特徴情報に示される長さだけ、光ディスクの凹凸部列の形状を信号再生部42に読み出させる。
【0055】
信号再生部42は、物理特徴情報読取部41から指示された位置、及び連続長に従い、各トラック円弧における凹凸部列の形状を読み取り、RF信号を得る。単一レベル2値化部43は、信号再生部42により読み取られたRF信号を、1つの閾値Mを用いて2値化して、2値化信号Mを出力する。カウンタ44は、単一レベル2値化部43から出力された2値化信号MのLOW区間の長さをカウントする。
【0056】
比較器45は、カウンタ44によりカウントされた2値化信号MのLOW区間の長さを、物理特徴情報に示されているトラック円弧の連続長と比較し、両者が一致すれば、検出信号をカウンタ46に出力する。カウンタ46は、比較器45から出力された検出信号の個数Mをカウントする。
個数判定部47は、BCAに存在する物理特徴情報の総数Nと、カウンタ46によりカウントされた検出信号の個数Mとの比率M/Nを算出して、比率M/Nと所定の閾値とを比較する。比率M/Nが閾値を上回るなら、この光ディスクを再生する。比率M/Nが閾値を下回るなら、この光ディスクを再生しない。仮にオリジナルの光ディスクの内容がカジュアルコピーされて複製物が記録された記録可能型ディスクが再生装置に装填されたとしても、再生装置は、記録可能型ディスクを再生することはない。
【0057】
以上のように本実施形態によれば、市販の再生装置、記録装置が再生、記録することができない15T以上の連続長を有する凹部と、又は凹凸部列をディスク識別子として用いるので、この光ディスクに記録されたデータを再生する再生装置は、lengthXの連続長を有するディスク識別子の存在を確認することにより、再生すべき光ディスクが正当な製造販売業者によりデジタル著作物が記録されたオリジナル光ディスクであるか、カジュアルコピーによりデジタル著作物が記録された記録可能型ディスクであるかを判定することができる。
【0058】
尚、図21に示すように、反射膜が1T〜2Tだけ残した凸部をディスク識別子としてもよい。反射膜が1T〜2Tだけ残った凸部は、レーザー光を照射した場合でも、RF信号の振幅が充分な振幅レベルに達しない。このように不充分な振幅を閾値Lを用いて検出することにより、光ディスクがオリジナルかどうかの判定を行ってもよい。
また図22(a)に示すように、ディスク表面に光の反射を抑える低反射物質が塗付または貼付された凹凸部列をディスク識別子としても良い。かかる凹凸部列の両端をレーザー光を用いて読み取ろうとすると、充分なレベルの反射光を得ることができず、RF信号の振幅も、十分なレベルにならない。更にディスクの面振れ等が発生すれば、RF信号を2値化した際の2値化信号にバラツキが生じる。図22(b)は、充分な振幅レベルに達していないピークH、ピークIを有するRF信号を示す図である。ピークH、ピークIは、凹凸部列の端部に対応するものなので、このピークH、ピークIを、閾値Mではなく、より低い閾値Lを用いて2値化して、2値化信号を得て、この2値化信号から、ピークH、ピークIに対応するパルスを検出することにより、光ディスクがオリジナルかどうかの判定を行う。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態は、特定領域3において物理特徴情報と共に閾値設定情報を記録しておくことを提案する。閾値設定情報は、物理特徴情報に示される位置から、物理特徴情報に示される長さだけ凹凸部列を読み取るにあたって、通常の閾値Mより低い閾値Lの設定を再生装置に命じる情報である。第3実施形態の再生装置は、特定領域3をアクセスする際、物理特徴情報と共に閾値設定情報を読み出す。物理特徴情報に示される位置、長さに従い凹凸部列をアクセスする間、閾値を閾値Mから閾値Lに変更する。物理特徴情報に位置、長さが示される凹凸部列のアクセスが終われば、閾値を閾値Lから閾値Mに戻す。図23、図24に変更前の閾値、変更後の閾値を示す。閾値を閾値Mから閾値Lに変更させたので、充分なレベルを有さないE部と、F部と、G部が検出されていることがわかる。
【0060】
以上のように本実施形態によれば、閾値を変化させることにより、複数のコンパレータを備えることなく、ディスク識別子を好適に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、光ディスクに記録されたデータの著作権保護に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 光ディスク
2 データ領域
3〜8 加工部分
9 基板
10 反射膜
11 保護層
12 システム制御部
13 物理特徴情報記憶部
14 物理特徴情報読取部
15 信号再生部
16 複数レベル2値化部
17 ディスク識別子選別部
18 ディスク識別子設定部
21 コンパレータ
22 コンパレータ
23 コンパレータ
31 カウンタ
32 カウンタ
33 比較器
34 比較器
40 システム制御部
41 物理特徴情報読取部
42 信号再生部
43 単一レベル2値化部
44 カウンタ
45 比較器
46 カウンタ
47 個数判定部
50 システム制御部
51 物理特徴情報読取部
52 信号再生部
53 複数レベル2値化部
54 EX-OR演算回路
55 フィルタ
56 カウンタ
57 比較器
58 カウンタ
59 個数判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに形成された凹凸部列をディスク識別子として選別するディスク識別子選別装置であって、
レーザー光を用いて光ディスクにおける凹凸部列の形状を読み取ることにより、第1の長さ以上第2の長さ以下の連続長を有する凹部及び凸部に対応するピークと、第1の長さ未満の連続長を有する凸部に対応するピークとを含むRF信号を得る信号再生手段と、
第1の長さ未満の連続長を有する凸部に対応するピークのレベルより低い第1の閾値を用いてRF信号を2値化することにより、HIGH区間、LOW区間を複数含む第1の2値化信号を得る第1の2値化手段と、
第1の長さ以上第2の長さ以下の連続長を有する凸部に対応するピークのレベルよりは低いが、第1の長さ未満の連続長を有する凸部に対応するピークのレベルよりは高い第2の閾値を用いてRF信号を2値化することにより、HIGH区間、LOW区間を複数含む第2の2値化信号を得る第2の2値化手段と、
第1の2値化手段から出力される第1の2値化信号のLOW区間の長さと、第2の2値化手段から出力される第2の2値化信号のLOW区間の長さとの差分が、所定の長さを上回るか否かを判定することにより、凹凸部列がディスク識別子として相応しいか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とするディスク識別子選別装置
【請求項2】
第1の2値化信号は、第1の長さ以上第2の長さ以下の連続長を有する凸部から、第1の長さ以上第2の長さ以下の連続長を有する凸部までに存在する凹部に対応するLOW区間を含み、
第2の2値化信号は、第1の長さ未満の連続長を有する凸部から、第1の長さ未満の連続長を有する凸部までに存在する凹部に対応するLOW区間を含む
ことを特徴とする請求項記載のディスク識別子選別装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−289397(P2009−289397A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206594(P2009−206594)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【分割の表示】特願2001−114455(P2001−114455)の分割
【原出願日】平成13年4月12日(2001.4.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】