説明

ディスプレイを具えた携帯端末機器

【課題】キャビネットに曲げモーメントが加わっても、有機ELディスプレイの封止状態を保ち、画像を正しく表示させる機器を提供する。
【解決手段】キャビネット2内の凹面21に、蓋体52と基板50を溶着させて構成される有機ELディスプレイ5を配備し、凹面21の底面と基板50の間には少なくとも2枚のクッション3、3が設けられ、該クッション3、3は互いに離れて設けられている。クッション3上には、有機ELディスプレイ5の基板50との摩擦が少ない摩擦低減層30が形成され、基板50はクッション3上を滑り可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイを具えた携帯端末機器、具体的には薄手の有機ELディスプレイを貼り付けて構成される携帯端末機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、以前に出願人が開示した携帯端末機器(1)である携帯電話の斜視図である(特許文献1参照)。ディスプレイ(5)を具えたキャビネット(2)は、支持箱体(7)上を矢印D方向にスライド可能に設けられている。支持箱体(7)上には、操作釦(70)(70)が設けられ、機器(1)は操作釦(70)(70)が露出した開位置にて操作される。
このディスプレイ(5)として、近年画像の美しさ、薄さ等に鑑みて、有機ELディスプレイ(5)を具えた機器が開示されている(特許文献2参照)。図6は、図5をA−A線を含む面にて破断し矢視した断面図である。キャビネット(2)の上面には、第1凹面(20)が形成され、該第1凹面(20)内に第2凹面(21)が形成される。キャビネット(2)の開位置にて、支持箱体(7)の端部(71)はディスプレイ(5)の下方に位置して、キャビネット(2)の背壁(22)が端部(71)に接する。
【0003】
第1凹面(20)には強化ガラスから形成された、スクリーンと呼ばれる透明カバー(4)が取り付けられ、該透明カバー(4)の下面には、有機ELディスプレイ(5)がSVR(スーパービューレジン)と呼ばれる接着剤にて固定される。有機ELディスプレイ(5)は第2凹面(21)内に配備される。
有機ELディスプレイ(5)の下面と、第2凹面(21)の底面との間には、1枚のシート状のクッション(3)が配備され、該クッション(3)は有機ELディスプレイ(5)の下面及び背壁(22)上面の両方に貼り付けられる。
有機ELディスプレイ(5)は図7に拡大して示すように、ガラス製の基板(50)上に、下面に凹部(51)を形成したガラス製の蓋体(52)を被せ、蓋体(52)の周縁部をガラス溶着(53)して形成される。基板(50)上には陰極である背面電極(54)が蒸着され、その上に凹部(51)内に位置する電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層、陽極(何れも図示せず)が形成される。凹部(51)内は不活性ガスが充填されて、背面電極(54)の酸化を防いでいる。仮に、背面電極(54)が酸化すると、画像が正しく表示されないから、基板(50)と蓋体(52)の周縁部は堅く溶着(53)されて封止状態を保ち、溶着部(53)から空気を流入させない必要がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−110670号公報
【特許文献2】特開2004−180271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示すように、開位置にて、キャビネット(2)に下向きに力が加わると、端部(71)を中心とした曲げモーメントMが発生する。この曲げモーメントMにより、背壁(22)が撓るように上向きに曲がることがある。クッション(3)は有機ELディスプレイ(5)の下面及び背壁(22)上面の両方に貼り付けられているから、背壁(22)の撓りがクッション(3)を撓らせる。この撓みが有機ELディスプレイ(5)に伝わり、有機ELディスプレイ(5)の基板(50)と蓋体(52)を外す向きの力が作用する。これにより、溶着部(53)が外れ、凹部(51)内に空気が入り、画像が正しく表示されない虞れがある。
本発明の目的は、キャビネット(2)に曲げモーメントMが加わっても、有機ELディスプレイ(5)の封止状態を保ち、画像を正しく表示させる機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
キャビネット(2)内の凹面(21)に、蓋体(52)と基板(50)を溶着させて構成されるディスプレイ(5)を配備し、凹面(21)の底面と基板(50)の間には少なくとも2枚のクッション(3)(3)が設けられ、該クッション(3)(3)は互いに離れて設けられている。
クッション(3)上には、ディスプレイ(5)の基板(50)との摩擦が少ない摩擦低減層(30)が形成され、基板(50)はクッション(3)上を滑り可能である。
【発明の効果】
【0007】
1.クッション(3)(3)は互いに離れて設けられているから、キャビネット(2)の背面の撓みはクッション(3)(3)を介して、有機ELディスプレイ(5)の基板(50)に伝わらない。これにより、キャビネット(2)背面の撓みによる、有機ELディスプレイ(5)の基板(50)と蓋体(52)との外れが防止され、画像が正しく表示されない虞れを防ぐことができる。
2.また、キャビネット(2)背面が撓んでも、基板(50)とクッション(3)は互いに滑ることができるから、基板(50)はキャビネット(2)の背面に追随して動かない。これによっても、有機ELディスプレイ(5)の基板(50)と蓋体(52)との外れが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施例を図を用いて説明する。
図1は、キャビネット(2)と透明カバー(4)の分解斜視図、図2は、キャビネット(2)と透明カバー(4)の平面図である。尚、キャビネット(2)が支持箱体(7)上にスライド可能に配備される構成は、図5に示す従来の構成と同じである。また、有機ELディスプレイ(5)は、基板(50)と蓋体(52)をガラス溶着して形成される点も同じである。
キャビネット(2)は矩形状であって、上面に第1凹面(20)が形成され、該第1凹面(20)内に第2凹面(21)が形成される。キャビネット(2)はマグネシウム製であるが、他の金属から形成されてもよい。第2凹面(21)の底面には2枚のシート状のクッション(3)(3)がキャビネット(2)の長手方向に沿って互いに離れて取り付けられ、第2凹面(21)の長手方向の中央部にはクッション(3)は配備されない。
第1凹面(20)内にて、第2凹面(21)の周縁部には、厚さ約0.25mmの両面接着テープ(6)が貼られ、該両面接着テープ(6)によって、第2凹面(21)の周縁部に強化ガラスから形成された透明カバー(4)が取り付けられる。該透明カバー(4)の下面には、有機ELディスプレイ(5)がSVR(スーパービューレジン)と呼ばれる接着剤にて固定される。有機ELディスプレイ(5)は、第2凹面(21)内に配備されて、下面がクッション(3)に接する。尚、後記の如く、有機ELディスプレイ(5)はクッション(3)には貼り付けられない。
【0009】
図3は、図2をB−B線を含む面にて破断し矢視した断面図である。キャビネット(2)内にて、第2凹面(21)の下側は、背壁(22)を構成する。開位置にて、キャビネット(2)に下向きに力が加わると、端部(71)を中心とした曲げモーメントMが発生する。この曲げモーメントMにより、背壁(22)が上向きに撓るように曲がることがある。
しかし、クッション(3)(3)は互いに離れて設けられているから、背壁(22)の撓みはクッション(3)(3)を介して、有機ELディスプレイ(5)の基板(50)に伝わらない。特に、背壁(22)の撓りが最大となる第2凹面(21)の長手方向の中央部にクッション(3)が配備されていないから、背壁(22)の最大撓みは基板(50)に伝わらない。これにより、キャビネット(2)背面の撓みによる、有機ELディスプレイ(5)の基板(50)と蓋体(52)との外れが防止され、画像が正しく表示されない虞れを防ぐことができる。
【0010】
図4は、図3のC部を拡大した図である。クッション(3)上にはPET(ポリエチレンテレフタレート)材から形成された摩擦低減層(30)が形成され、この摩擦低減層(30)は基板(50)に接着されておらず、摩擦低減層(30)は基板(50)に対して滑ることができる。基板(50)がクッション(3)上を滑ることができるように、基板(50)と第2凹面(21)の周壁との間には隙間が空いている。
キャビネット(2)に下向きに力が加わって、端部(71)を中心とした曲げモーメントMが発生した場合には、背壁(22)が上向きに撓むから、クッション(3)には背壁(22)の上向きの撓みを受けて、左右何れかに引っ張る力が働く。しかし、この際、クッション(3)は基板(50)、即ち有機ELディスプレイ(5)に対して滑るから、基板(50)には左右に引く力は加わらない。換言すれば、基板(50)とクッション(3)は互いに滑るから、基板(50)はキャビネット(2)の背壁(22)に追随して動かない。これによっても、有機ELディスプレイ(5)の基板(50)と蓋体(52)との外れが防止される。
即ち、本例にあっては、クッション(3)(3)を互いに分離することと、クッション(3)上に基板(50)を貼り付けないことの両方により、背壁(22)の撓みが有機ELディスプレイ(5)の基板(50)に伝わらないようにしている。
【0011】
尚、背壁(22)はキャビネット(2)の一部であるから、背壁(22)が撓むと、キャビネット(2)の全体が撓む。有機ELディスプレイ(5)は透明カバー(4)に取り付けられ、透明カバー(4)はキャビネット(2)に取り付けられているから、キャビネット(2)の撓みが透明カバー(4)を介して、有機ELディスプレイ(5)に伝わるとも考えられる。
しかし、前記の如く、透明カバー(4)は両面接着テープ(6)によってキャビネット(2)に取り付けられており、キャビネット(2)が撓んでも、両面接着テープ(6)が緩衝材となって、キャビネット(2)の撓みは直接には、透明カバー(4)には伝わらない。即ち、両面接着テープ(6)の厚み分だけ、キャビネット(2)の撓みは吸収され、有機ELディスプレイ(5)の基板(50)と蓋体(52)との溶着が外れることを防いでいる。
即ち、キャビネット(2)に曲げモーメントMが加わっても、両面接着テープ(6)の厚みや硬化したSVRの弾性によって、透明カバー(4)から有機ELディスプレイ(5)に伝わるモーメントは弱くなる。
また、有機ELディスプレイ(5)とクッション(3)は接着されておらず、更に、クッション(3)(3)は互いに分離しているから、背壁(22)からのモーメントも有機ELディスプレイ(5)には伝わりにくい。
これにより、両面接着テープ(6)にて透明カバー(4)をキャビネット(2)に固定しているにも拘わらず、キャビネット(2)のモーメントによる撓みは有機ELディスプレイ(5)に伝わりにくくなる。
【0012】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
クッション(3)(3)の枚数は2枚に限定されず、互いに離れていれば何枚でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】キャビネットと透明カバーの分解斜視図である。
【図2】キャビネットと透明カバーの平面図である。
【図3】図2をB−B線を含む面にて破断し矢視した断面図である。
【図4】図3のC部を拡大した図である。
【図5】従来の携帯電話の斜視図である。
【図6】図6は、図5をA−A線を含む面にて破断し矢視した断面図である。
【図7】有機ELディスプレイの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0014】
(1) 携帯端末機器
(2) キャビネット
(3) クッション
(4) 透明カバー
(5) ディスプレイ
(6) 両面接着テープ
(40) 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット(2)内の凹面(21)に、蓋体(52)と基板(50)を溶着させて構成されるディスプレイ(5)を配備し、凹面(21)の底面と基板(50)の間には少なくとも2枚のクッション(3)(3)が設けられ、該クッション(3)(3)は互いに離れて設けられていることを特徴とする携帯端末機器。
【請求項2】
クッション(3)上には、ディスプレイ(5)の基板(50)との摩擦が少ない摩擦低減層(30)が形成され、基板(50)はクッション(3)上を滑り可能である、請求項1に記載の携帯端末機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−239784(P2009−239784A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85425(P2008−85425)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】