説明

ディスプレイモジュール及びその製造方法と表示装置

【課題】発光素子とマイクロレンズとの位置合わせ精度を高くし、更に、特別な装置を必要としない簡単な方法を用いてレンズアレイを形成する。
【解決手段】基板11上に配設され、駆動信号により駆動されて発光して光を放射する複数のLED31、各LED31上に位置決めされて形成された複数の柱状の第1のレンズ支柱21、及び各第1のレンズ支柱21上に設けられた第2のレンズ支柱22とを覆って頂部が球面状に形成された複数のレンズ部23を有し、各LED31から放射された光を収束するレンズアレイ20と、基板11上に設けられ、各LED31を選択的に駆動する駆動回路とを備えるディスプレイモジュールDM10およびDM10を備える表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイモジュール(以下、「DM」という。)及びその製造方法とDMを用いた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自己発光素子として、発光ダイオード(以下、「LED」という。)、有機エレクトロルミネセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)、無機EL素子等があり、非自己発光型素子として、液晶等がある。
【0003】
複数の自己発光素子が2次元マトリクス状に配置された自己発光素子アレイによる表示装置は、ライトバルブ式(例えば、液晶等)と比較して光損失が少ないために効率が高い。直視型の表示装置においては、バックライトを使用しないために軽量化や薄型化が可能である。又、ヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」という。)、プロジェクタ、リアプロジェクション等の投射型表示装置において、液晶等の非自己発光型素子を映像素子に使用する場合は、光源が必要であるが、自己発光型の場合では映像素子自体が光源となるので、光源及び光学系を必要としない。従って、装置の小型化が可能となる。
【0004】
例えば、表示倍率5倍のHUDで発光素子アレイを用いる場合、発光素子の配光特性のうち光軸方向からの角度10°〜20°が利用可能角度であるのに対して、平面に配列された発光素子アレイの配光特性は、基本的にはランバーシアン分布である。この場合の光利用効率は、3%〜5%程度と極めて低いという問題がある。
【0005】
光利用効率を高めるためには、発光素子アレイ上にマイクロレンズアレイを形成することで、配光特性の広がり角を狭め、HUDの利用可能角度に入射する光を増やそうとすることが考えられる。更に、発光素子アレイ上にオンチップマイクロレンズアレイを形成するため、ボンディングパッド上はレンズ材料を除去する必要がある。
【0006】
発光素子アレイ上のオンチップマイクロレンズアレイの作成方法としては、例えば、下記の特許文献1に記載されているガラス成形型を利用して成形を行い、露光及び現像によりパターンニングを行う方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−327182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の特許文献1に記載されたガラス成形型を用いてマイクロレンズアレイを形成し、このマイクロレンズアレイを自己発光素子アレイ上に転写してDMを製造する場合、転写時における自己発光素子アレイとマイクロレンズアレイとの位置合わせ精度を高くすることが難しい。その他、ガラス成形型の剥離性や、マイクロレンズアレイにおける光軸方向のギャップを確保するためにスペーサを形成しなければならないので、製造工程数が多くなるといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のうち第1の発明のDMは、基板上に形成され、駆動信号により駆動されて光を放射する複数の発光素子が配列された発光素子アレイと、レンズアレイと、駆動回路と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記レンズアレイは、前記各発光素子上にそれぞれ位置決めされて形成された柱状の複数の第1のレンズ支柱と、前記各第1のレンズ支柱上にそれぞれ形成された頂部が曲面状の複数の第2のレンズ支柱と、前記各第1のレンズ支柱及び前記各第2のレンズ支柱とを覆って頂部が曲面状に形成された複数のレンズ部とを有し、前記各発光素子から放射された前記光を収束するものである。又、前記駆動回路は、前記基板上に設けられ、発光素子を選択的に駆動する回路である。
【0011】
第2の発明のDMは、前記第1の発明のDMと同様に、基板上に形成され、駆動信号により駆動されて光を放射する複数の発光素子が配列された発光素子アレイと、レンズアレイと、駆動回路とを備えたことを特徴とする。
【0012】
前記レンズアレイは、各発光素子上にそれぞれ位置決めされて形成された柱状の複数の第1のレンズ支柱と、前記各第1のレンズ支柱上にそれぞれ形成された2つ以上の第2のレンズ支柱と、前記各第1のレンズ支柱及び前記各第2のレンズ支柱を覆って頂部が2つ以上の曲面により形成された複数のレンズ部とを有し、前記各発光素子から放射された前記光を前記各頂部によりそれぞれ収束するものである。又、前記駆動回路は、前記基板上に設けられ、前記各発光素子を選択的に駆動する回路である。
【0013】
第3の発明のDMの製造方法は、複数の発光素子が配列された発光素子アレイを基板上に形成する工程と、前記各発光素子上に、柱状の第1のレンズ支柱をそれぞれ形成する工程と、前記第1のレンズ支柱及び前記基板上に、レンズ支柱材料を被着する工程と、前記レンズ支柱材料に熱処理を施し、前記レンズ支柱材料を軟化させて、前記各第1のレンズ支柱間を埋めることによって、前記各第1のレンズ支柱の頂部に曲面レンズ支柱をそれぞれ形成する工程と、前記各曲面レンズ支柱に対し、フォトリソグラフィを施すことによって、縦断面が上部曲線形状の柱状の第2のレンズ支柱をそれぞれ形成する工程と、前記第1のレンズ支柱、前記第2のレンズ支柱及び前記基板上に、レンズ部材料を被着する工程と、前記レンズ部材料に熱処理を施し、前記レンズ部材料のみを軟化させて、前記各第1のレンズ支柱間を埋めることによって、前記各第2のレンズ支柱の頂部に曲面レンズをそれぞれ形成する工程と、前記各曲面レンズに対し、フォトリソグラフィを施すことによって、重合体レンズをそれぞれ形成する工程と、前記各発光素子を駆動する駆動回路を、前記基板上に固定する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
第4の発明のDMの製造方法は、複数の発光素子が配列された発光素子アレイを基板上に形成する工程と、前記各発光素子上に、柱状の第1のレンズ支柱をそれぞれ形成する工程と、前記第1のレンズ支柱及び前記基板上に、レンズ支柱材料を被着する工程と、前記レンズ支柱材料に対し、フォトリソグラフィによるパターニング処理を施し、複数の第2のレンズ支柱を形成する工程と、前記複数の第2のレンズ支柱及び前記基板上に、レンズ部材料を被着する工程と、前記レンズ部材料に熱処理を施し、前記レンズ部材料のみを軟化させて、前記各第1のレンズ支柱及び前記各第2のレンズ支柱の間を埋めることによって、前記各第2のレンズ支柱の頂部に曲面レンズをそれぞれ形成する工程と、前記各曲面レンズに対し、フォトリソグラフィによるパターニング処理を施し、重合体レンズをそれぞれ形成する工程と、前記各発光素子を駆動する駆動回路を、前記基板上に固定する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
第5の発明の表示装置は、前記第1又は第2の発明のDMを備え、前記レンズアレイからの出射光を表示することを特徴とする。
【0016】
第6の発明の表示装置は、前記第1又は第2の発明のDMと、前記レンズアレイからの出射光を所定箇所へ投影して表示させる光学系と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のうち第1の発明のDM、及び第3の発明のDMの製造方法によれば、発光素子上に第1のレンズ支柱を形成し、更に、第1のレンズ支柱上に第2のレンズ支柱を形成し、この第1及び第2のレンズ支柱をレンズ部で覆ってレンズアレイを形成しているので、特別な装置を必要としない簡単な方法を用いてレンズアレイを形成することができる。しかも、発光素子とレンズアレイにおけるレンズとの位置合わせ精度を高くすることができるので、DMの光利用効率を高めることができる。
【0018】
第2の発明のDM、及び第4の発明のDMの製造方法によれば、レンズアレイが、2つ以上の頂部を有する曲面により形成された複数のレンズ部を有するので、発光素子の光軸とレンズアレイにおけるレンズの光軸とを任意に調整でき、DMの光利用効率を高めることができる。
【0019】
第5及び第6の発明の表示装置によれば、光利用効率の良いDMを用いているので、光利用効率の良い表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1−1】図1−1は本発明の実施例1における図2中のDMの製造工程を示す模式的な断面図である。
【図1−2】図1−2は本発明の実施例1における図2中のDMの製造工程を示す模式的な断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1におけるDMの全体を示す斜視図である。
【図3】図3は図2中のDMの等価回路を示す回路図である。
【図4】図4は本発明の実施例1における発光素子アレイチップを示す拡大平面図である。
【図5】図5は図4中の1画素の構造を示すI1−I2線拡大断面図である。
【図6】図6は本発明の実施例2における発光素子アレイチップを示す拡大平面図である。
【図7】図7は図6中の1画素の構造を示すI3−I4線拡大断面図である。
【図8−1】図8−1は本発明の実施例2における図2中のDMの製造工程を示す模式的な断面図である。
【図8−2】図8−2は本発明の実施例2における図2中のDMの製造工程を示す模式的な断面図である。
【図9】図9は本発明の実施例2の変形例を示す発光素子アレイチップの拡大平面図である。
【図10】図10は図9中の1画素の構造を示す拡大平面図である。
【図11】図11は図10中の1画素の構造を示すI5−I6線拡大断面図である。
【図12】図12は本発明の実施例2の他の変形例を示す発光素子アレイチップの拡大平面図である。
【図13】図13は図12中のI7−I8線拡大断面図及びI9−I10線拡大断面図である。
【図14】図14は本発明の実施例3における投射型表示装置を示す概略の構成図である。
【図15】図15は本発明の実施例4における前面投射型表示装置を示す概略の構成図である。
【図16】図16は本発明の実施例5における背面投射表示装置を示す概略の構成図である。
【図17】図17は本発明の実施例6における表示装置を示す概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0022】
(実施例1のDMの構成)
図2は、本発明の実施例1におけるDM10の全体を示す外観の斜視図である。
【0023】
DM10は、基板11を有している。基板11は、例えば、Si,GaAs,GaP,InP,GaN,ZnO等の半導体基板、AlN,Al等のセラミック基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、Cu,Al等の金属基板、プラスチック基板等で構成されている。基板11の表面には、図示しない配線パターン及びLEDマイクロディスプレイ(以下、「LMD」という。)12が形成されている。LMDは、複数の薄膜半導体発光素子(例えば、「LED」)等により構成されている。更に、個々の薄膜半導体発光素子上には、図示しないマイクロレンズが形成されており、これらの複数のマイクロレンズにより、マイクロレンズアレイが構成されている。基板11が導電性材料の場合、基板表面と配線パターンとの間及び基板表面と複数の薄膜半導体発光素子との間には、絶縁層が形成されている。
【0024】
基板11上には、LMD12を駆動するための駆動回路13と、フラット型フレキシブルケーブル14とが固定されている。LMD12と駆動回路13とは、図示しない配線パターンにより相互に接続されている。駆動回路13の基板11側には、バンプ形成された端子があり、例えばフェイスダウンで異方性導電樹脂(ACF)を用いて圧着することで、基板11上に形成された図示しない配線パターンと電気的に接続される。
【0025】
フラット型フレキシブルケーブル14と駆動回路13とは、基板11上に形成された図示しない配線パターンにより相互に接続されている。フラット型フレキシブルケーブル14と配線パターンとは、例えば、異方性導電樹脂(ACF)を用いて圧着することにより、電気的に接続されている。
【0026】
基板11の裏側には、図示しないヒートシンクや金属筐体が取り付けられている。基板11の裏側とヒートシンクや金属筐体との間には、図示しない絶縁性の放熱シートが設けられ、LMD12や駆動回路13からの熱を効率よく放熱するようになっている。
【0027】
DM10内の駆動回路13は、フラット型フレキシブルケーブル14を介して、図示しない外部の制御回路と電気的に接続されている。フラット型フレキシブルケーブル14は、DM10内の駆動回路13と図示しない外部の制御回路とを接続する代表例にすぎず、DM10内の駆動回路13と図示しない外部の制御回路との接続は、フラット型フレキシブルケーブル14に限定されるものではない。
【0028】
(DMの等価回路)
図3は、図2中のDM10の等価回路を示す回路図である。
【0029】
DM10は、パッシブ型m行k列LEDドットマトリックスにより構成されたLMD12と、駆動回路13とを備えている。駆動回路13は、表示制御手段13aと、アノードドライバ13bと、カソードドライバ13cと、カソードドライバ332dとを有している。表示制御手段13a、アノードドライバ13b、及びカソードドライバ13c,13dは、一体化されていることが望ましい。
【0030】
LMD12は、パッシブ型m行k列LEDドットマトリックスにより構成されている。LMD12において、列方向には、k本のアノード配線32が並列に配置され、これらと交差する方向には、m本のカソード配線33が並列に配置されている。
【0031】
k本のアノード配線32とm本のカソード配線33との交差箇所に、m×k個のLED31(1,1)〜(m,k)が接続されている。なお、LED31に付された添え字(m,k)は、行方向のm番目、列方向のk番目のLED31を表している。
【0032】
これらのk本のアノード配線32は、アノードドライバ331に接続されている。m本のカソード配線33は、隣接したカソード配線33とは異なるカソード接続配線33a,33bに接続されている。奇数番目のカソード配線33は、m/2本のカソード配線33aを介して、カソードドライバ13cと接続されている。又、偶数番目のカソード配線33は、m/2本のカソード配線33bを介して、カソードドライバ13dと接続されている。
【0033】
表示制御手段13aは、図示しない外部の制御回路等から与えられる表示データ等を解析し、その表示データをLMD12上の所定の位置に表示させるためのマトリックスデータに変換する。すなわち、表示する画像データが、各マトリクスの交点で与えられるLED31の画素単位のドットデータとした場合、そのドット座標を与えるアノード駆動信号とカソード駆動信号とを発生する。又、上記のような各フレーム単位での駆動や、駆動比(デューティ)制御も行う。
【0034】
表示制御手段13aは、例えば、所定の演算機能を有するプロセッサや複合論理回路と、前記プロセッサ等が外部の制御回路等とのデータの授受を行うためのバッファと、外部の制御回路等からのデータを記憶するための記憶回路と、制御回路へのタイミング信号、表示タイミング信号や記憶回路等への読み出し書き込みタイミング信号等を与えるタイミング信号発生回路(発振回路)と、記憶回路からの読み出しや、あるいはこれを加工することにより得られた表示データを駆動信号として出力する駆動信号出力回路と、外部から与えられる表示機能や制御コマンド等を格納する各種レジスタ等と、により構成することができる。
【0035】
アノードドライバ13bは、表示制御手段13aから供給されるアノード駆動信号(例えば、発光する又は発光しないを意味する発光データ)に応じて、LMD12の各アノード配線32に接続されているLED31の列に電流を供給する機能を有している。
【0036】
アノードドライバ13bは、例えば、アノード駆動信号を入力して、直並列変換したパラレル発光データを出力するシフトレジスタを有し、この出力側に、ラッチ回路が接続されている。ラッチ回路は、シフトレジスタから出力されたパラレル発光データをラッチする回路であり、この出力側に、定電流回路が接続されている。ラッチ回路の出力と出力イネーブル信号により、定電流回路から所望の電流を供給する。この定電流回路の出力側に、複数のアノード配線32が接続されている。
【0037】
カソードドライバ13c,13dは、表示制御手段13aから供給されるカソード駆動信号に基づき、各カソード配線33に接続されているLED31の行を走査する機能を有し、例えば、セレクタ回路等で構成されている。
【0038】
(実施例1のレンズ付き発光素子の構造)
図4は、本発明の実施例1における発光素子アレイチップを示す拡大平面図である。
【0039】
この図4では、図2中のLMD12におけるDM10の4×4マトリックス画素の部分的な平面が示されている。LMD12は、基板11上に形成された薄膜半導体発光素子である複数のLED31と、このLED31上に位置決めされて形成された光収束用の複数のレンズ(例えば、マイクロレンズ)15とを有している。更に、基板11上には、行方向(横方向)に形成された帯状のカソード配線33と、層間絶縁膜42によりカソード配線33と絶縁して列方向(縦方向)に形成された帯状のアノード配線32とを有している。マイクロレンズ15の形状は、円形であって個々のレンズが分離されているが、隅の丸い方形や、画素内が埋まるような形状でもよい。
【0040】
図5は、図4中の1画素の構造を示すI1−I2線拡大断面図である。
基板11上には、平滑化層43を介して、ほぼ方形のLED31が接合されている。LED31は、例えば、平滑化層43上に接合されたN型半導体層44と、発光領域45とを有している。発光領域45には、活性層45aが形成され、その表面に、P型半導体層45p等が形成されている。平滑化層43上において、帯状のカソード配線33は、N型半導体層44のNコンタクト部44nまで延長されてオーミック接触している。
【0041】
発光領域45の周辺は、絶縁膜46により覆われている。絶縁膜46上には、層間絶縁膜42を介して帯状のアノード配線32の層が列方向(縦方向)に形成されている。アノード配線32は、発光領域45のP型半導体層45pと、P型半導体層45pとの接触箇所であるPコンタクト部32pで、オーミック接触している。
【0042】
このLMD12の構造では、例えば、図示しない成長基板上に薄膜半導体のLED31を形成し、このLED31を剥離して基板11へ接合し、この基板11側でLEDドットマトリックス構造を形成する。基板11とLED31の界面には、絶縁層となる平滑化層43が形成されている。これにより、各画素のLED31を電気的に分離することができ、マトリックス構造を形成することが可能となる。LED31上には、マイクロレンズ15が形成されている。
【0043】
(実施例1のDMの構成)
図1−1(a)〜(d)及び図1−2(e)〜(h)は、本発明の実施例1における図2中のDM10の製造工程を示す模式的な断面図である。
【0044】
図1−2(h)に示すように、DM10は、基板11上に複数のLED31がマトリックス状に配置されたLMD12を有している。LMD12における各LED31上にマイクロレンズ15が形成され、このマイクロレンズ15によって、マイクロレンズアレイ20が形成されている。
【0045】
マイクロレンズアレイ20の外周部には、ディスプレイ表示に寄与しないダミーマイクロレンズ24が形成されている。図1−2では、ダミーマイクロレンズ24がマイクロレンズアレイ20の外周に1個のみ形成されているが、複数個でもよい。又、ダミーマイクロレンズ24は、形成しなくてもよい。
【0046】
LMD領域外25は、パッド領域であり、例えば、駆動回路13のバンプ接続のためのパッド領域、フラット型フレキシブルケーブル14と配線パターンとの接続のためのパッド領域、LMD発光試験用のパッド領域、カソード接続配線、アノード接続配線等のために、ダミーマイクロレンズ24が形成される領域を除いて、マイクロレンズ及びレンズ材料が除去されている。
【0047】
マイクロレンズアレイ20は、各LED31上に位置決めされて形成された複数の縦断面がほぼ方形の柱状の第1のレンズ支柱21と、この各第1のレンズ支柱21上に形成された第2のレンズ支柱(例えば、上部曲面形状レンズ支柱)22と、各第1のレンズ支柱21及び各第2のレンズ支柱22を覆って頂部が曲面状に形成された複数のレンズ部23とを有し、各LED31から出射された光を収束する構成になっている。
【0048】
このような構成のDM10における製造方法の工程例(1)〜(8)を、図1−1(a)〜(d)及び図1−2(e)〜(h)を参照しつつ、以下説明する。
【0049】
(実施例1のDMの製造方法)
(1) 図1−1(a)のLED素子アレイ形成工程
【0050】
図1−1(a)の工程において、デバイス搭載用の基板11を用意する。基板11は、例えば、Si,GaAs,GaP,InP,GaN,ZnO等の半導体基板、AlN,Al等のセラミック基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、Cu,Al等の金属基板、プラスチック基板等を使用できる。
【0051】
基板11上に、図3及び図4に示すような複数のLED31がマトリックス状に配置されたLMD12を形成すると共に、図3に示すようなアノード配線32、カソード配線33、及びパッド領域25を形成する。
【0052】
LED31としては、例えば、AlN,GaN,InN,InP,GaP,AlP,AlAs,GaAs,InAs等のIII−V属化合物半導体材料やその混晶半導体材料でエピタキシャル成長されたもの、ZnO,ZnSe,CdS等のII−VI属化合物半導体材料でエピタキシャル成長されたもの、或いは有機系材料で形成されたもの等がある。
【0053】
LED31の電極、アノード配線32、カソード電極33、図示しない各接続配線、図示しない各パッド領域等の配線材料は、例えば、Au,Ti/Pt/Au,Ti/Au,AuGeNi/Au,AuGe/Ni/Au,Au系メタル配線、或いはAl,Ni/Al,Ni/AlNd,Ni/AlSiCu,Ti/Al等のAl系メタル配線を使用できる。更に、酸化物系の透明電極を用いることもできる。
【0054】
(2) 図1−1(b)の第1のレンズ支柱形成工程
図1−1(b)の工程において、基板11上に、レンズ支柱12の材料である図示しないレジストを所定の厚みで形成し、必要に応じて露光前熱処理を行う。基板面内の均一性を確保するため、ドライフィルムレジスト(以下「DFR」という。)を用いてラミネート(貼合装置)による転写、又は、スプレーコート法による塗布により形成することが望ましい。
【0055】
レンズ支柱21の材料は、エプキシ系,シリコーン系,フッ素系樹脂、又はアクリル系樹脂のネガタイプ化学増幅型の厚膜レジスト又はDRFが望ましい。
【0056】
DFRは、フィルム状のエッチングレジストであり、例えば、ベースフィルム上に塗布したフォトレジスト層を乾燥後、保護フィルムをフォトレジスト層にラミネートして形成されている。このDFRは、フィルム状に加工した感光性樹脂を、厚さ20〜25μmのベースフィルムと保護フィルムの間に挟み込んだ三層構造になっている。ベースフィルムは、紫外線(UV)透過性に優れ、高透明で平坦な二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが適している。又、保護フィルムは、フォトレジスト層に対して、適度の離型性を有し、低フィッシュアイで平面性の良好なLDPEフィルムを使用することが好ましい。
【0057】
次に、フォトリソ工程により、図示しないレジストをパターンニングし、図1−1(b)に示す各LED31に対応した位置に、所定間隔隔てて縦断面がほぼ方形である柱状のレンズ支柱21を形成する。
【0058】
(3) 図1−1(c)の曲面レンズ支柱形成のためのDFRの中空転写工程
図1−1(c)の工程において、レンズ支柱部の材料であるDFRをレンズ支柱21上及び基板11上に、中空構造になるように転写(以下、これを「中空転写」という。)する。
【0059】
レンズ支柱部の材料としては、エポキシ系又はアクリル系樹脂のネガタイプ化学増幅型の厚膜DFRが好ましい。なお、レンズ支柱材料及びレンズ部材料には、同じ材料を用いても良く、異なる材料を用いても良い。
【0060】
詳しくは、図1−1(c)に示すように、中空転写後、各レンズ支柱21間に、中空構造曲面レンズ支柱材料(露光前の曲面レンズ支柱)23aが入り込み、その下の部分に曲面レンズ支柱形成空隙17が形成されるように行う。例えば、ラミネータにより、ラミネート室を減圧し、所定の温度及び圧力で行う。
【0061】
(4) 図1−1(d)の曲面レンズ支柱形成のための熱処理工程
本実施例1におけるレンズ支柱材料及び曲面レンズ部材料は、ネガ型レジストであり、塗布又は転写、露光前熱処理、露光、露光後熱処理、及び現像からなるフォトリソ工程により、パターンニングされる。フォトリソ工程において、露光、露光後熱処理、及び現像の工程を経た前記ネガ型レジスト(これを「重合体材料」という。)は、重合体となる。そのため、露光、露光後熱処理、及び現像の工程を経ていない前記ネガ型レジスト(これを「前駆体材料」という。)と比較すると、重合体材料の方が分子同土の結合が強くなる。従って、前駆体材料と重合体材料とでは軟化温度点が異なり、前駆体材料の方が低温で軟化する。
【0062】
DFRの中空転写工程後、中空構造曲面レンズ支柱材料22aは前駆体材料であり、フォトリソ工程を経たレンズ支柱22bは重合体材料である。
【0063】
曲面形状をなす前駆体曲面レンズ支柱材料22bの形状は、重合体であるレンズ支柱21の形状を維持させ、レンズ支柱材料22aのみを軟化させて曲面レンズ支柱形成空隙17部分に落ち込むことを利用する。そのため、熱処理の温度としては、前駆体曲面レンズ支柱材料が軟化し、レンズ支柱21の形状が保持される温度を選択する。
【0064】
以上より、中空構造曲面レンズ支柱材料22aに熱処理を施すことで、図1−1(d)に示すように、曲面レンズ支柱形成空隙17を埋めるように曲面形状をなす前駆体曲面レンズ22bが形成される。DFRの厚みとレンズ支柱21の厚みの関係が曲面形状や支柱厚みを決定する。更に、この厚みと曲面形状がレンズ部の形状を決定するパラメータの一つとなる。
【0065】
(5) 図1−2(e)の第2のレンズ支柱形成工程
図1−2(e)の工程において、曲面形状となったレンズ支柱材料22bに露光、露光後熱処理、現像を施すことで、縦断面が上部曲線形状であり、柱状の重合体である第2のレンズ支柱22がパターニング形成される。第2のレンズ支柱22は、LED素子及び第1のレンズ支柱21に対応した位置の第1のレンズ支柱21上に形成される。
【0066】
(6) 図1−2(f)のレンズ部形成のためのDFRの中空転写工程
図1−2(f)の工程において、レンズ部23の材料であるDFRを、第1のレンズ支柱21、第2のレンズ支柱22、及び基板11上に中空転写する。
【0067】
レンズ部の材料としては、エプキシ系、シリコーン系、フッ素系樹脂、又はアクリル系樹脂のネガタイプ化学増幅型の厚膜レジスト又はDRFが望ましい。なお、第1のレンズ支柱21の材料、第2のレンズ支柱21の材料及びレンズ部23の材料には、同じ材料を使用してもよく、異なる材料を用いてもよい。
【0068】
詳しくは、図1−2(f)に示すように、中空転写後、各第1のレンズ支柱21、及び第2のレンズ支柱22の間に、中空構造レンズ部材料(露光前のレンズ部)23aが入り込み、その下の部分にレンズ部形成空隙18が形成されるように行う。例えば、ラミネータにより、ラミネート室を減圧し、所定の温度及び圧力で行う。
【0069】
(7) 図1−2(g)のレンズ部形成のための熱処理工程
図1−2(g)の工程において、前駆体材料であるレンズ部23bの形成は、重合体である第1のレンズ支柱21及び第2のレンズ支柱22の形状を維持させ、中空構造レンズ部材料23aのみを軟化し、第1のレンズ支柱21及び第2のレンズ支柱22の形状が保持される温度を選択する。
【0070】
以上より、中空構造レンズ部材料23aに熱処理を施すことで、図1−2(g)に示すように、レンズ部形成空隙18を埋めるように、曲面形状をなす重合体のレンズ部23bが形成される。
【0071】
DFRの厚みと、第1のレンズ支柱21及び第2のレンズ支柱22の厚みと、第2のレンズ支柱22の形状によってレンズ部23の形状が決定される。従って、所望の曲率半径と光軸方向のギャップが得られる最適な厚みの組み合せや、第2のレンズ支柱22の形状を選択する必要がある。
【0072】
(8) 図1−2(h)の最終工程
図1−2(h)の工程において、マイクロレンズ形状となった前駆体レンズ24bに露光、露光後熱処理、及び現像を施すことで、LMD領域外25及びマイクロレンズ20の間の空隙19が除去された重合体であるレンズ部23が形成される。フォトリソ工程により空隙19を除去したが、設計によっては除去しない構造を形成することも可能である。
【0073】
次に、レンズ部23にベーク処理を施すことによって、第1のレンズ支柱21、第2のレンズ支柱22、及びレンズ部23からなる所望のマイクロレンズアレイ20及びダミーマイクロレンズアレイ24が得られる。なお、LMD領域外25における各パッド領域等の上に残渣が生じた場合は、酸素やアルゴン等によるプラズマ処理を施すことで除去できる。
【0074】
(実施例1のDMの動作)
図1〜図5のDM10において、表示すべき情報が図3の表示制御手段13aに入力されると、表示制御手段13aは、その表示すべき情報に応じてアノードドライバ13bにアノード駆動信号を供給する。すると、LMD12の第1行目に含まれるLED31の各々についての発光データが、アノードドライバ13b内のシフトレジスタに順次格納される。シフトレジスタに格納された発光データは、このシフトレジスタによりパラレル発光データに変換された後、ラッチ回路に格納される。ラッチ回路の出力信号と出力イネーブル信号により、定電流回路から所望の電流を、アノード配線32を経由して各LED31に供給する。
【0075】
このとき、表示制御手段13aから供給されるカソード駆動信号が、カソードドライバ13c,13dに入力されると、このカソードドライバ13c,13d内のセレクト回路により、LMD12の第1行目のカソード配線33が選択される。そのため、LMD12の第1行目のアノード配線32から第1行目に含まれるLED31に、駆動電流が供給され、第1行目に含まれるLED31の各々が、発光データに応じて発光動作し、光を放射する。
【0076】
これらの各LED31から放射された光は、図1−2(h)のマイクロレンズアレイ20における各レンズ部23で収束されて外部へ出射される。
【0077】
このような発光動作がカソード配線33の数(即ち、LED31の行数分)だけ複数繰り返され、表示すべき情報を含む1画素分の画像の光が出射される。
【0078】
(実施例1の効果)
本実施例1のDM10及びこの製造方法によれば、次の(a)〜(h)のような効果がある。
【0079】
(a) 通常のフォトリソ工程と同様に、マイクロレンズアレイ20のパターニングが可能である。特に、LED31上に第1のレンズ支柱21を形成し、この第1のレンズ支柱21上に、第2のレンズ支柱22を形成し、レンズ部23で覆ってマイクロレンズアレイ20を形成しているので、LED31とマイクロレンズ15との位置合わせ精度を高くすることができる。
【0080】
(b) 特別な装置を必要としない簡単な方法を用いて、マイクロレンズアレイ20を形成することができる。
【0081】
(c) 従来のような成形型を用いることなく、レンズ厚みが例えば10μm以上のレンズを形成できる。
【0082】
(d) 第1のレンズ支柱21及び第2のレンズ支柱22の設計により、レンズ形状の曲率と光軸方向のギャップを任意に調整可能である。
【0083】
(e) 第1のレンズ支柱21と第2のレンズ支柱22との2段構造にしているので、縦横比(アスペクト比)の高いレンズを形成することができる。
【0084】
(f) レンズ形成前に第2のレンズ支柱を形成することで、レンズ外周においても曲率の制御を安定させることができる。
【0085】
(g) 図1−1(c)及び図1−2(f)の中空転写工程では、各レンズ支柱21,22間に前駆体材料が入り込む構造になっているので、各レンズ支柱21,22との密着力が向上し、レンズ支柱21,22と前駆体材料との間に強固な密着力が生じる。この密着力により、その後の熱処理による曲面形状形成工程において、加熱された空隙により生じる破裂や、レンズ支柱と前駆体材料との剥がれを防止できると共に、空隙内の空気を円滑に外側に逃がすことが可能になる。
【0086】
(h) 第1のレンズ支柱21と第2のレンズ支柱22との2段構造にしているので、頂点付近が各LED31間隔に比べて細くなり、中空構造前駆体レンズ部23aが熱により空隙18の部分に落ち込む量が大きくなる。そのため、より半球に近いマイクロレンズ15が形成可能である。更に、マイクロレンズ15が半球に近い形状であっても、レンズ外周における曲率を安定に制御することができる。
【0087】
(実施例1の変形例)
実施例1は、第1のレンズ支柱21及び第2のレンズ支柱22の2段構造であるが、図1−1(c),(d),1−2(e)の工程を複数回繰り返すことにより、3段以上の多段構造としてもよい。多段構造にすることにより、レンズ曲率と光軸方向のギャップの調整が可能になるという効果がある。
【実施例2】
【0088】
本発明の実施例2のDM10全体の外観及びDM10の等価回路は実施例1と同様であるので、その説明は割愛し、本実施例2の実施例1と異なる点について、以下説明する。
【0089】
(実施例2のレンズ付き発光素子の構造)
図6は、本発明の実施例2における発光素子アレイチップを示す拡大平面図である。
【0090】
この図6では、図2中のLMD12におけるDMの4×4マトリックス画素の部分的な平面が示されている。LMD12は、基板11上に形成された複数のLED31と、この各LED31上に位置決めされた複数のマイクロレンズ15とから構成されている。
【0091】
LED15は、ほぼ方形の発光領域45を有しており、発光領域45はPコンタクト電極32pによって図中上下2つの領域に分割されている。
【0092】
図6に示すマイクロレンズ15の形状は、ほぼ円形であり個々のレンズが分離されているが、隅の丸い方形や、画素内が埋まるような形状でも良い。発光領域43の形状はほぼ方形であるが、長方形、楕円、隅の丸い方形や多角形であってもよい。
【0093】
図7は、図6中の1画素の構造を示すI3−I4線拡大断面図である。
基板11上には、平滑化層43を介して、ほぼ方形のLED素子31が接合されている。平滑化層43上において、帯状のカソード配線33は、Nコンタクト電極33nを有し、N型半導体層44のNコンタクト部44aでオーミック接触している。
【0094】
発光領域45は、Pコンタクト電極32pによって図中左右の2つの領域に分割されている。図中左側の発光領域を左発光領域45lとし、図中右側の発光領域を右側発光領域45rとする。更に、図7において、発光領域45の中心、左発光領域45lの中心、及び右発光部45rの中心のそれぞれには、中心線50、中心線50l、及び中心線50rを有している。マイクロレンズ15は、中心線50lを光軸中心とする曲面レンズの一部分15lと、中心線50rを光軸中心とする曲面レンズの一部分15rとを有している。
【0095】
(実施例2のDMの製造工程)
図8−1(a)〜(c)及び図8−2(d)〜(g)は、本発明の実施例2における図2中のDM10の製造工程を示す模式的な断面図である。
【0096】
本発明の実施例2のDM10における製造方法の工程例(1)〜(7)を、図8−1(a)〜(c),図8−2(d)〜(g)を参照しつつ、以下説明する。
【0097】
(1)〜(3) 図8−1(a)〜(c)の工程
図8−1(a)〜(c)の工程は、LED31上にアノード配線が描かれている以外は、実施例1の図1−1(a)〜(c)の工程と同じであるので、説明を割愛する。
【0098】
(4) 図8−2(d)の第2のレンズ支柱形成工程
図8−2(d)は、第1のレンズ支柱21上に、複数の第2のレンズ支柱(22l,22r)22が形成された状態を示している。図8−1(c)の工程において、第1のレンズ支柱21及び基板11上に空中転写されたDFRを、フォトリソ工程により、パターニングする。
【0099】
詳しくは、各第1のレンズ支柱21上に、第1のレンズ支柱21の中心から所定間隔だけ隔てた左側に第2のレンズ支柱22lと、第1のレンズ支柱21の中心から所定間隔だけ右側に第2のレンズ支柱22rとを形成する。
【0100】
第1のレンズ支柱21及び第2のレンズ支柱22l,22rの位置及び横断面の大きさにより、レンズ部23の高さや複数の曲面が結合したレンズ部23の各曲率を任意に制御することが可能である。
【0101】
(5) 図8−2(e)のレンズ部形成のためのDFRの中空転写工程
図8−2(e)の工程において、レンズ部23の材料であるDFRをレンズ支柱、第1のレンズ支柱22l,22r、及び基板11上に中空転写する。
【0102】
詳しくは、図8−2(e)に示すように、中空転写後、第2のレンズ支柱22l・22rの間に、中空構造レンズ部材料(露光前のレンズ部)23aが入り込み、その下の部分に部分曲面レンズ部形成空隙17が形成されるように行う。
【0103】
更に、複数の第2のレンズ支柱22の間、及び各第1のレンズ支柱21の間に、中空構造レンズ部材(露光前のレンズ部)23aが入り込み、その下の部分にレンズ部形成空隙18が形成されるように行う。例えば、ラミネータにより、ラミネート室を減圧し、所定の温度及び圧力で行う。
【0104】
(6) 図8−2(f)のレンズ部形成のための熱処理工程
図8−2(f)の工程において、DFRの中空転写工程後、中空構造レンズ部材料23aは前駆体材料であり、フォトリソ工程を経た第1のレンズ支柱21及び複数の第2のレンズ支柱22は重合体材料である。
【0105】
曲面形状をなす前駆体レンズ部23bの形状は、重合体である第1のレンズ支柱21及び第2のレンズ支柱22の形状を維持させ、中空構造レンズ部材料23aのみを軟化させて部分曲面レンズ部形成空隙17及び曲面レンズ部形成空隙18部分に落ち込むことを利用する。
【0106】
そのため、熱処理の温度としては、中空構造レンズ部材料23aが軟化し、第1のレンズ支柱21及び複数の第2のレンズ支柱22の形状が保持される温度を選択する。
【0107】
以上より、中空構造レンズ部材料23aに熱処理を施すことで、図8−2(f)に示すように、部分曲面レンズ部空隙17及び曲面レンズ部形成空隙18を埋めるようにレンズ部23の形状が形成される。レンズ部23の1画素のレンズ15の形状は、図7で示すように、中心線50lを光軸中心とする曲面レンズ15lと、中心線50rを光軸中心とする曲面レンズ15rとが結合した形状である。
【0108】
DFRの厚み、及び温度条件を変えることによって、レンズの高さや複数の曲面が結合した曲面レンズ部15の各曲率を任意に制御することが可能である。
【0109】
(7) 図8−2(g)の最終工程
図8−2(g)の工程において、複数の曲面が結合した曲面レンズ形状となった前駆体レンズ部23bに露光、露光後熱処理、及び現像を施すことで、LMD領域外25が除去された重合体であるレンズ23が形成される。
【0110】
図8−2(g)の工程においては各マイクロレンズ20がパターニングされておりマイクロレンズ空隙19が存在するが、隣接する各マイクロレンズ15がつなげっている構成とすることも可能である。
【0111】
次に、ベーク処理を施すことによって、第1のレンズ支柱21と複数の第2のレンズ支柱22とレンズ部23からなる所望のマイクロレンズアレイ20、及びダミーマイクロレンズアレイ24が得られる。なお、LMD領域外25における各パッド領域等の上に残渣が生じた場合は、酸素やアルゴン等によるプラズマ処理を施すことで除去できる。
【0112】
(実施例2のDMの動作)
実施例2のDM20は、図7に示したように、LED31の発光領域45がPコンタクト電極32pによって、2分されている。2分された発光領域45のうち、左発光領域45lの中心にある左発光領域中心軸50lは単レンズ15lの頂部を貫く形状であり、右発光領域45rの中心にある右発光領域中心軸50rは単レンズ15rの頂部を貫く形状である。
【0113】
これらの各LED31から放射された光は、左発光領域45lと右発光領域45rのそれぞれの中心と一致する光軸上にある複数のマイクロレンズ15で収束されて外部へ出射される。
【0114】
(実施例2の効果)
本実施例2のDM及びこの製造方法によれば、本実施例1と同様の効果に加え、次の(i)〜(k)のような効果がある。
【0115】
(i)第2のレンズ支柱22を複数形成することにより、複数の部分曲面が結合したレンズ23を形成することができる。
【0116】
(j)発光領域が複数に分離されている場合、分離した発光領域のそれぞれの光軸に頂部のあるレンズ15を形成することができるため、光利用率の高いDMを提供できる。
【0117】
(k)図8−2(e)及び図8−2(f)の中空転写工程では、各レンズ支柱間に前駆体材料が入り込む構造になっているので、各支柱との密着力が向上し、第1のレンズ支柱及び第2のレンズ支柱と、前駆体材料との強固な密着力が生ずる。この密着力により、その後の熱処理による曲面形状形成工程において、加熱された空隙により生じる破裂や、レンズ支柱と前駆体材料との剥がれを防止できると共に、空隙内の空気を円滑に外側に逃がすことが可能になる。
【0118】
(実施例2のDM変形例の構造説明)
実施例2の図6〜図8において、LED31が1個接続された場合について述べたが、2個以上のLEDが直列に接続された場合も、同様の動作を行うことができる。
【0119】
図9は、本発明の実施例2の変形例を示す発光素子アレイチップの拡大平面図である。
この図9では、LED31内に、LED31−1と31−2とが直列に接続されてLED31を構成する場合のLMD12における4×4マトリックス画素を示す部分的な平面図である。LED31が2個のLEDが直列接続された点以外は、図6と同様である。
【0120】
図10は、図9中の1画素の構造を示す拡大平面図である。
アノード配線32から延長されたPコンタクト電極32pは絶縁層46上に形成されLED31−1のP型半導体層45pにオーミック接続される。LED31−1のN型半導体層44上には、オーミック接合されたNコンタクト電極33nが形成されている。LED31−1とLED31−2は、LED31−1のNコンタクト電極33nと、LED31−2のPコンタクト電極32pとを、直列接続配線47を介し接続することで、電気的に接続している。LED31−2のPコンタクト電極32pとP型半導体層45pとはオーミックに接合している。LED31−2のN型半導体層44上には、Nコンタクト電極33nがオーミックに接合され、カソード配線33へ接続されている。
【0121】
図11は、図10中の1画素を示すI5−I6線拡大断面図である。
基板11上には、平滑化層43を介して、LED31−1及びLED31−2が接合されている。LED31−1及びLED31−2は、例えば、平滑化層43上に接合されたN型半導体層44l及び44rと、活性層45al及び45arを有し、表面にはP型半導体層45pl及び45pr等を有する。LED31−1及び31−2の周辺は、図示しない絶縁膜により覆われている。LED31−2におけるN型半導体44rは、Nコンタクト電極33naとオーミック接合され、カソード配線33へ接続される。
【0122】
LED31は、LED31−1とLED31−2の2つの素子に分割されており、LED31−1の発光領域の中心軸を発光領域中心軸50−1とし、LED31−2の発光領域の中心軸を発光領域中心軸50−2とする。マイクロレンズ15は、発光領域中心軸50−1を光軸中心とする曲面レンズの一部分15−1と、発光領域中心軸50−2を光軸中心とする曲面レンズの一部分15−2とを結合した形状である。
【0123】
実施例1と同様にして、発光データに応じて、LED31−1及びLED32−2から光が放射される。放射された光は、マイクロレンズ15の一部分15−1及びマイクロレンズ15の一部分15−2でそれぞれ収束されて外部に出射される。
【0124】
(実施例2のDMの他の変形例の構造説明)
図12は、本発明の実施例2の他の変形例を示す発光素子アレイチップの拡大平面図である。
【0125】
この図12では、LED31内に4個のLEDが直列に接続された場合の、図2中のLMD21における4×4マトリックス画素を示す部分的な平面が示されている。図12において、LED素子31a,31b,31c及び31dが直列接続されている。LED31aはアノード配線に接続され、分割LED31dはカソード配線に接続されている。
【0126】
図13(a)は、図12中のI7−I8線拡大断面図であり、図13(b)は、図12中のI9−I10線拡大断面図である。図13(a)及び図13(b)のように、LED31内の4つの各発光領域45の中心にレンズの光軸が合う構造とすることにより、光を効率よく外部へ出射することができ、光利用率の高いマイクロレンズアレイを提供できる。
【実施例3】
【0127】
(実施例3の投射型表示装置の構成)
図14は、実施例1又は2のDM10を用いた本発明の実施例3における投射型表示装置60を示す概略の構成図である。
【0128】
この投射型表示装置60は、例えば、HUDであり、車両、航空機等において、速度計、燃料計等の各種計器の表示情報、ナビゲーション装置の地図情報、撮影装置が取得した画像情報等の各種の情報を表示するものであり、筐体61を有している。筐体61は、この上面に窓61aが生成されており、例えば、車両内のインストルメントパネルの裏側に組み込まれている。筐体61内の下部には、実施例1又は2のDM10が配置されている。
【0129】
DM10の出射光面側の上部には、そのDM10から出射された画像の光を投射する光学系(例えば、反射用平面鏡62及び拡大用凹面鏡63)が配置されている。平面鏡62は、DM10から出射された画像の光を所定方向(例えば、ほぼ水平方向)に反射するものであり、この平面鏡62の反射方向に凹面鏡63が配置されている。凹面鏡63は、平面鏡62からの反射光を拡大し、筐体61の窓61aを通して上方のウィンドシールドガラス(W/S)64へ結像するものである。
【0130】
(実施例3の投射型表示装置の動作)
投射型表示装置60であるHUDにおいて、表示すべき情報がDM10中の図3の表示制御手段13aに入力されると、この表示制御手段13aが、その表示すべき情報に応じて、アノード駆動信号をDM10中の図3のアノードドライバ13bに供給すると共に、カソード駆動信号を、DM10中の図2のカソードドライバ13c,13dに供給する。すると、DM10中のLMD12が発光し、マイクロレンズアレイ20を通して、表示すべき情報を含む画像の光が出射される。
【0131】
DM10の発光によって出射された光は、図14中の平面鏡62で反射されて凹面鏡63によって拡大された後、ウィンドシールドガラス64に照射される。すると、運転者65の視線におけるウィンドシールドガラス64の前方に、DM10が発光した画像の虚像66が表示される。これにより、運転者65は、視線を前方からそらすことなく、DM10が発光した画像に含まれる各種の情報を視認することができる。
【0132】
(実施例3の効果)
本実施例3の投射型表示装置60によれば、実施例1又は2のDM10を使用しているので、LMD12で発光した光の配光特性の広がり角度がマイクロレンズアレイ20で狭められ、指向性が改善されて光利用効率が向上する。そのため、DM10の発光面から画像投射面までの光路長が長くなっても、DM10から出射される画像の光を効率良く投射できる。しかも、構造が簡単で、小型化が可能な投射型表示装置60としてのHUDを実現できる。
【実施例4】
【0133】
図15は、実施例1又は2のDM10を用いた本発明の実施例4における前面投射型表示装置を示す概略の構成図である。
【0134】
この前面投射型表示装置70は、例えば、前面投射型プロジェクタであり、実施例1又は実施例2のDM10を備え、このDM10から出射された光が、光学系(例えば、投影レンズ)71により拡大されて前面のスクリーン72上に表示される。そのため、実施例3とほぼ同様の効果がある。
【実施例5】
【0135】
図16は、実施例1又は2のDM10を用いた本発明の実施例5における背面投射型表示装置を示す概略の構成図である。
【0136】
この前面投射型表示装置80は、例えば、背面投射型プロジェクタであり、実施例1又は2のDM10を備え、このDM10から出射された光が、光学系(例えば、投影レンズ81及び反射鏡82)により、拡大されて反射され、背面からスクリーン83上に表示される。そのため、実施例3とほぼ同様の効果がある。
【実施例6】
【0137】
図17は、実施例1又は2のDM10を用いた本発明の実施例6における表示装置を示す概略の構成図である。
【0138】
この表示装置90は、例えば、眼鏡に装着されるヘッドマウントディスプレイであり、実施例1又は実施例2のDM10がケース91に収容されている。ケース91には、接眼光学系が取り付けられている。接眼光学系は、例えば、プリズム92を有し、このプリズム92の下端部に、シート状のホログラム光学素子93が装着されている。
【0139】
この表示装置90では、DM10から出射された光が、プリズム92の内部で全反射されながら下端部に設けられたホログラム光学素子93へと導かれる。ホログラム光学素子93は、光を干渉させ、使用者の目94に虚像を結ばせる。これにより、使用者は、DM10から出射された画像を観察することができ、実施例3とほぼ同様の効果がある。
【0140】
(実施例の他の変形例)
実施例1又は2のDM10は、図示以外の構成や製造方法に変更してもよい。例えば、発光素子にLEDを用いて構成したが、このLEDに代えて、有機系材料で形成されたEL素子や、無機系材料で形成されてEL素子等を用いてもよい。これにより、実施例1、2とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【0141】
実施例1又は2のDM10は、実施例3〜6で説明した形態に限定されず、例えば、マイクロレンズアレイ以外に投影光学系を用いない、所謂、直視型表示装置にも適用が可能である。この場合、指向性が高く、特定方向に向けて解像度の高い表示装置とすることができる。
【符号の説明】
【0142】
10 DM
11 基板
12 LMD
13 駆動回路
13a 表示制御手段
13b アノードドライバ
13c,13d カソードドライバ
14 フラット型フレキシブルケーブル
15 マイクロレンズ
17、18、19 レンズ支柱間空隙
20 マイクロレンズアレイ
21 第1のレンズ支柱
22 第2のレンズ支柱
23 レンズ部
24 ダミーレンズアレイ
25 LMD領域外
31 LED素子
32 アノード配線
32p Pコンタクト電極
33 カソード配線
33n Nコンタクト電極
42 層間絶縁膜
43 平滑化層
44 N型半導体層
44n Nコンタクト部
45 発光領域
45a 活性層
45p P型半導体層
46 絶縁層
50,50l,50r,50−1,50−2,50a,50b,50c,50d
マイクロレンズの中心線
60 投射型表示装置
70 前面投射型表示装置
80 背面投射型表示装置
90 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成され、駆動信号により駆動されて光を放射する複数の発光素子が配列された発光素子アレイと、
前記各発光素子上にそれぞれ位置決めされて形成された柱状の複数の第1のレンズ支柱と、前記各第1のレンズ支柱上にそれぞれ形成された頂部が曲面状の複数の第2のレンズ支柱と、前記各第1のレンズ支柱及び前記各第2のレンズ支柱を覆って頂部が曲面状に形成された複数のレンズ部とを有し、前記各発光素子から放射された前記光を収束するレンズアレイと、
前記基板上に設けられ、前記各発光素子を選択的に駆動する駆動回路と、
を備えたことを特徴とするディスプレイモジュール。
【請求項2】
基板上に形成され、駆動信号により駆動されて光を放射する複数の発光素子が配列された発光素子アレイと、
前記各発光素子上にそれぞれ位置決めされて形成された柱状の複数の第1のレンズ支柱と、前記各第1のレンズ支柱上にそれぞれ形成された2つ以上の第2のレンズ支柱と、前記各第1のレンズ支柱及び前記各第2のレンズ支柱を覆って頂部が2つ以上の曲面により形成された複数のレンズ部と、を有し、前記各発光素子から放射された前記光を前記各頂部によりそれぞれ収束するレンズアレイと、
前記基板上に設けられ、前記各発光素子を選択的に駆動する駆動回路と、
を備えたことを特徴とするディスプレイモジュール。
【請求項3】
複数の発光素子が配列された発光素子アレイを基板上に形成する工程と、
前記各発光素子上に、柱状の第1のレンズ支柱をそれぞれ形成する工程と、
前記第1のレンズ支柱及び前記基板上に、レンズ支柱材料を被着する工程と、
前記レンズ支柱材料に熱処理を施し、前記レンズ支柱材料を軟化させて、前記各第1のレンズ支柱間を埋めることによって、前記各第1のレンズ支柱の頂部に曲面レンズ支柱をそれぞれ形成する工程と、
前記各曲面レンズ支柱に対し、フォトリソグラフィを施すことによって、縦断面が上部曲線形状の柱状の第2のレンズ支柱をそれぞれ形成する工程と、
前記第1のレンズ支柱、前記第2のレンズ支柱及び前記基板上に、レンズ部材料を被着する工程と、
前記レンズ部材料に熱処理を施し、前記レンズ部材料のみを軟化させて、前記各第1のレンズ支柱間を埋めることによって、前記各第2のレンズ支柱の頂部に曲面レンズをそれぞれ形成する工程と、
前記各曲面レンズに対し、フォトリソグラフィを施すことによって、重合体レンズをそれぞれ形成する工程と、
前記各発光素子を駆動する駆動回路を、前記基板上に固定する工程と、
を有することを特徴とするディスプレイモジュールの製造方法。
【請求項4】
複数の発光素子が配列された発光素子アレイを基板上に形成する工程と、
前記各発光素子上に、柱状の第1のレンズ支柱をそれぞれ形成する工程と、
前記第1のレンズ支柱及び前記基板上に、レンズ支柱材料を被着する工程と、
前記レンズ支柱材料に対し、フォトリソグラフィによるパターニング処理を施し、複数の第2のレンズ支柱を形成する工程と、
前記複数の第2のレンズ支柱及び前記基板上に、レンズ部材料を被着する工程と、
前記レンズ部材料に熱処理を施し、前記レンズ部材料のみを軟化させて、前記各第1のレンズ支柱及び前記各第2のレンズ支柱の間を埋めることによって、前記各第2のレンズ支柱の頂部に曲面レンズをそれぞれ形成する工程と、
前記各曲面レンズに対し、フォトリソグラフィによるパターニング処理を施し、重合体レンズをそれぞれ形成する工程と、
前記各発光素子を駆動する駆動回路を、前記基板上に固定する工程と、
を有することを特徴とするディスプレイモジュールの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載のディスプレイモジュールを備え、前記レンズアレイからの出射光を表示することを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載のディスプレイモジュールと、
前記レンズアレイからの出射光を所定箇所へ投影して表示させる光学系と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
前記所定箇所は、スクリーン、又はハーフミラーであることを特徴とする請求項6記載の表示装置。
【請求項8】
前記所定箇所は、ホログラム光学素子であることを特徴とする請求項6記載の表示装置。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−11803(P2013−11803A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145526(P2011−145526)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】