説明

ディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法

【課題】少ない工程で効率的にフィルタ部材同士を貼り合せ、電磁波遮蔽フィルタでは全4辺に接地用露出部を残す形でディスプレイ用光学フィルタを製造する。
【解決手段】電磁波遮蔽フィルタの第1のフィルタ部材10Aに剥離シート3が仮接着された連続帯状の剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASを準備し、光学フィルタのフィルタ層4の貼り合せ面に接着剤層5を備えた枚葉物の第2のフィルタ部材10Bを準備し、剥離シート付き第1のフィルタ部材を搬送中に切断刃23でハーフカットして第1のフィルタ部材を第2のフィルタ部材より大きめに剥離シート上で枚葉化した後、剥離プレート24で剥離シートを剥離して折り返して巻き取り、剥離シートで搬送される第1のフィルタ部材を第2のフィルタ部材に圧着ローラ25で貼り合せれば接地用露出部2Eが形成されたディスプレイ用光学フィルタ10が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイ用光学フィルタを、二枚のフィルタ部材を少ない工程で効率的に貼り合せて作製できる製造方法に関する。特に、フィルタ部材として電磁波遮蔽フィルタ部材とその他の光学フィルタ部材とを、電磁波遮蔽フィルタ部材の4辺全周囲に接地用露出部は残して光学フィルタを貼り合せることが出来る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイとして、旧来のブラウン管(CRT)ディスプレイ以外に、フラットパネルディスプレイ(FPD)となる、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(以後PDPとも言う)、電界発光(EL)ディスプレイ等の各種ディスプレイが実用されている。
【0003】
そして、ディスプレイの前面(観察者側面)には、例えばPDPでは、ディスプレイからの電磁波放出が強い為、該電磁波は遮蔽し画像光は透過させる電磁波遮蔽フィルタを配置している。更に、ディスプレイから放出される波長590nm近辺のネオン光が画像の色相に影響しない様にするネオン光吸収フィルタ、ディスプレイから放出される赤外線によるリモートコントローラの誤動作を防ぐ、赤外線吸収フィルタ等を配置している。また、画像の色相を調整する色補正フィルタ、外光反射を防止する反射防止フィルタなど、ディスプレイの前面には各種の光学フィルタが配置されている。また、これらの光学フィルタは、可能な限り光透過率の低下を小さくする為に、各フィルタ間に間隙(空気層)を空けずに、粘着剤層などの樹脂層で密着積層した状態で配置されることが多い。
【0004】
また、特に電磁波遮蔽フィルタの場合は、光学性能のみの単なる光学フィルタとは異なり、フィルタの四方周縁部に接地用の電極を取り出す接地領域を設ける必要がある。また、該接地領域は露出した接地用露出部として設けることが多い。この為、電磁波遮蔽フィルタ部材と、反射防止フィルタなどその他の光学フィルタ部材との積層は、該接地用露出部が形成される様に、貼り合せる必要がある。また、ディスプレイ用光学フィルタは、ディスプレイ前面に配置時は枚葉物となるが、製造時は、基材がガラス板等の板状の枚葉物は別として、基材がフレキシブルでロール・ツー・ロールでの生産方式が可能な、連続帯状シート(乃至はフィルム)で、製造されることが多い。
従って、この場合、或る製造段階では、連続帯状シートから枚葉シートなど枚葉物になるが、連続帯状シート形態の光学フィルタ部材を、いずれかの製造段階で(連続帯状シートで又は枚葉物として)貼り合せ、また、接地用露出部を露出させることになる。
【0005】
そこで、接地用露出部を形成できる貼り合せ方法として、例えば、次の様な方法がある。
先ずは、電磁波遮蔽フィルタと、光学フィルタ(以下、電磁波遮蔽機能を持たないその他の光学フィルタを単に「光学フィルタ」とも言うことにする。)との2種類のフィルタ部材を、それぞれ連続帯状シートのロールから巻き出して、それぞれ所定の寸法の枚葉シートに裁断する。しかもこのとき、光学フィルタの方は電磁波遮蔽フィルタの周縁部の接地領域が露出して接地用露出部となる様に電磁波遮蔽フィルタの寸法よりも一回り小さい寸法で裁断する。そして、寸法の異なるフィルタ部材同士を貼り合せることで、寸法の大きい電磁波遮蔽フィルタの4辺に電極取り出し用の接地用露出部を露出させる、という方法がある。なお、貼り合せ用の接着剤は、寸法を小さくする光学フィルタ側に接着剤層として設けておくことで、接着剤層が接地用露出部を覆うこともなく、貼り合せが出来ることになる(特許文献1)。
ここで、図7は、この様な枚葉のフィルタ部材同士の貼り合せを説明する断面図である。各フィルタ部材の構成は、図7(A)の様に、第1のフィルタ部材10Aは透明基材1上に導電体パターン層2を有し、第2のフィルタ部材10Bはフィルタ層4の貼り合せ側の面に接着剤層5を有する例である。また、寸法は、第1のフィルタ部材10Aが第2のフィルタ部材10Bに対して、一回り大きい。そして、これら部材同士を貼り合せると、図7(B)の様に、前記接着剤層5によって、第1のフィルタ部材10Aの導電体パターン層2の側の面で、第2のフィルタ部材10Bが積層され、且つ、第1のフィルタ部材10Aの4辺全周囲では、導電体パターン層2が露出している接地用露出部2Eが形成される、という貼り合せ方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−36107号公報(0082、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の様な、従来のディスプレイ用光学フィルタに於けるフィルタ部材同士の貼り合せは、連続帯状シートのロールから巻き出した夫々のフィルタ部材を、所定の寸法の枚葉シートに裁断する枚葉化工程が2回と、フィルタ部材同士を貼り合せる貼り合せ工程が1回と、全体で合計3回の独立した工程が必要である。つまり、3工程が必要である。しかも、フィルタ部材同士の貼り合せ工程では、枚葉シートを1枚ずつ作業者が人手によって位置合せし、不要となる保護フィルムや粘着剤層の剥離シートを剥がす作業も必要があり、生産効率も悪かった。
【0008】
一方、ロールから巻き出した連続帯状シートのフィルタ部材同士を、連続帯状シートのままで連続的に貼り合せ、そして、ロールに巻き取る、ロール・ツー・ロールの生産方式での貼り合せ方法も考えられるが、この方法では枚葉シート1枚ごとに、電磁波遮蔽フィルタの全4辺の周縁部で接地用露出部2Eを露出させることができない。このため、貼り合せ後に巻き取られたロールから連続帯状シートを巻き出して、所定の寸法の枚葉シートに裁断した後、露出されていない接地領域から接地用の電極を取り出したり、或いは露出されていない接地領域上に積層されているシートを何らかの方法で剥離除去して露出させて接地用露出部を形成したりする、煩雑な工程が必要になるという問題があった。又、この様な方法では、一方のフィルタ部材が可撓性の無い板材の場合には適用不能であると云う問題も有った。
【0009】
すなわち、本発明の課題は、ディスプレイ用光学フィルタを、二つのフィルタ部材の貼り合せによって製造する際に、少ない工程で効率的に貼り合せることができる方法を提供することであり、しかも、片方のフィルタ部材が電磁波遮蔽フィルタであるときに、その全4辺周囲に接地用露出部を残して貼り合せることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明では、次の様な構成の、ディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法とした。
〔1〕2枚のフィルタ部材を貼り合せてディスプレイ用光学フィルタを製造する、ディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法において、
(a1)第1のフィルタ部材は連続帯状シートで、その貼り合せ面に連続帯状シートである剥離シートが仮接着された剥離シート付き第1のフィルタ部材として準備し、
(a2)第2のフィルタ部材は枚葉物又は連続帯状シートで、フィルタ層の貼り合せ面に接着剤層を備えた部材として準備し、
(b)前記剥離シート付き第1のフィルタ部材をロールから巻き出して搬送する途中で、ハーフカット加工を施して、該剥離シートはその厚みの全部又は一部を残し且つ該第1のフィルタ部材は全厚みを切断して、ディスプレイ一画面分に対応した所定の寸法に枚葉化し、
(c)次いで、剥離シート付き第1のフィルタ部材から該剥離シートのみを剥離して折り返して搬送し、
(d)一方、枚葉化された上記第1のフィルタ部材は、上記剥離シートと先端部分の下流側から分離しつつ上流側は分離前の状態の該剥離シートによって支持して搬送し、第1のフィルタ部材を、その貼り合せ面が第2のフィルタ部材の接着剤層面に向く様にして第2のフィルタ部材の所定の位置に圧着ローラで順次圧着していくことで、
第1のフィルタ部材と第2のフィルタ部材とを貼り合せて、ディスプレイ一画面分毎に対応可能なディスプレイ用光学フィルタを製造する、
(e)少なくとも上記(b)、(c)及び(d)の各操作を同一製造装置上で行う、ディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法とした。
【0011】
〔2〕上記〔1〕に於いて、更に、
上記(a1)での上記第1のフィルタ部材が、少なくとも透明基材と該透明基材上に形成された導電体パターン層とを含む電磁波遮蔽フィルタ部材であり、
上記(a2)での上記第2のフィルタ部材が、少なくとも接着剤層と、電磁波遮蔽機能以外の1又は2以上の光学フィルタ機能を担うフィルタ層とを含む光学フィルタ部材であり、
上記(b)での第1のフィルタ部材をハーフカット加工で枚葉化するときの所定の寸法を、上記第2のフィルタ部材の所定の寸法に対して搬送方向で大きくし、
上記(d)で貼り合せるときの第1のフィルタ部材の幅を第2のフィルタ部材の幅よりも大きくして、第1のフィルタ部材の4辺全周囲に第2のフィルタ部材が積層されていない接地用露出部が形成された、ディスプレイ一画面分毎に対応可能なディスプレイ用光学フィルタを作製する、
ディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法とした。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明によれば、第1のフィルタ部材と第2のフィルタ部材との2種類のフィルタ部材の貼り合せを、ロールから巻き出した連続帯状シートの第1のフィルタ部材を枚葉化するハーフカット加工を、貼り合せと同一製造装置上でインラインで行うので、工程数を1工程減らせる。従って、連続帯状シートの第1のフィルタ部材と、枚葉物の第2のフィルタ部材とを貼り合せて、ディスプレイ一画面分の枚葉物のディスプレイ用フィルタを製造する際は、一台の製造装置上で1工程で行える。その結果、従来に比べて少ない工程で効率的に貼り合せが出来る。しかも、一時的に仮接着しておく剥離シートも従来多用されている保護フィルムを流用又は保護フィルムに代えて設けておくだけなので、剥離シートを仮接着する追加の工程も必要とせず、且つ該剥離シートも同一製造装置上で機械で剥離するので、人手で保護フィルムを剥がしてフィルタ部材同士を貼り合せる場合に比べて、精度良く且つ効率的であり、生産効率高く貼り合せできる。且つ本発明は、第2のフィルタ部材が可撓性のあるシート(乃至)でも可撓性の無い板でも適用可能である。
(2)また、2枚のフィルタ部材として、電磁波遮蔽フィルタ部材と、それ以外の光学フィルタ機能を備えた光学フィルタ部材とを、効率的に貼り合せることができる。しかもその際、電磁波遮蔽フィルタ部材を第1のフィルタ部材とし、光学フィルタ部材を第2のフィルタ部材として、電磁波遮蔽フィルタ部材のディスプレイ一画面分に対応した枚葉シートの4辺周囲に接地用露出部を残して、光学フィルタ部材を効率良く従来に比べて少ない工程で貼り合せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法を、概念的に説明する説明面であり、図中特に(A)は第1のフィルタ部材の一形態例を示す拡大断面図、(B)は貼り合せ後で枚葉物となったときのディスプレイ用光学フィルタの一形態例を示す平面図。
【図2】第1のフィルタ部材の図1とは別の形態例を示す断面図。
【図3】第2のフィルタ部材の図1とは別の形態例を示す断面図。
【図4】ハーフカットの状況を説明する断面図。
【図5】剥離プレートでの剥離シートと第1のフィルタ部材の分離状況を説明する断面図。
【図6】引抜プライマ方式凹版印刷法による第1のフィルタ部材(電磁波遮蔽フィルタ部材)の一形態を例示する断面図。
【図7】従来のディスプレイ用光学フィルタの貼り合せ方法の一例を概念的に説明する説明面。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
《A.実施形態》
本発明による、ディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法について、図1〜図5を参照して、実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、第1のフィルタ部材10Aは、電磁波遮蔽機能を有する電磁波遮蔽フィルタ部材であり、第2のフィルタ部材10Bは、電磁波遮蔽機能以外の光学フィルタ機能として、コントラス向上機能と光反射防止機能の2機能を備えた光学フィルタ部材の例でもある。
【0016】
(a1)第1のフィルタ部材の準備:
第1のフィルタ部材10Aが電磁波遮蔽フィルタ部材である場合、図1(A)の断面図で例示の様な層構成、例えば、透明基材1はポリエチレンテレフタレートフィルムの連続帯状シートで、この透明基材1の片面に導電体パターン層2を導電性組成物(例えば銀ペーストなど)をメッシュ状に印刷形成した印刷フィルムを用いることができる。また、図1(A)の層構成以外にも、例えば、図2の断面図で例示の様な層構成の電磁波遮蔽フィルタ部材などでも良い。
図2に例示の第1のフィルタ部材10Aは、図1で例示の構成に対して、導電体パターン層2が形成されてない側の透明基材1の面に、画像光の色補正用に可視光域で着色された粘着剤層6と、その粘着剤層面を一時的に保護するセパレータフィルム7が積層された構成である。なお、粘着剤層6とセパレータフィルム7の積層は、例えば、粘着剤層6の両面をセパレータフィルム7で保護した連続帯状の粘着フィルムから、片方のセパレータフィルム7を剥離して露出させた該粘着剤層6を、透明基材1の面に積層する。なお、セパレータフィルム7自体は公知のものであるが、後述する剥離シート3を使うこともできる。
なお、これら例示の第1のフィルタ部材10Aは、いずれも連続帯状シートとして準備する。また、導電体パターン層2のパターンの平面視形状は、代表的には正方格子状のメッシュ形状である。該パターンのメッシュ形状は第1のフィルタ部材10Aの搬送方向(長手方向)に連続して(ディスプレイ一画面分に対応した額縁状の部分を全面ベタとした接地領域を設けないパターンで)形成されたものでも良い。
【0017】
そして、上記の様な第1のフィルタ部材10Aの導電体パターン層2が形成された側の面に対して、連続帯状の剥離シート3をラミネートすることで、剥離シート3が仮接着された連続帯状シートの剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASを準備することができる。
該剥離シート3には、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムの片面に、搬送時やハーフカット加工時は接着しているが、剥離時は容易に剥離可能な程度の弱い接着力で仮接着可能な弱粘着剤層を形成したものを利用できる。また、この剥離シート3は、従来から使用時まで仮接着してフィルタ部材の表面を保護しておく保護フィルムとしても使っても良い。
【0018】
(a2)第2のフィルタ部材の準備:
一方、第2のフィルタ部材10Bは、図1左下で図示の如く、少なくとも、フィルタ層4の片面に貼り合せ用の接着剤層5が積層された構成の部材である。フィルタ層4は、各種フィルタ機能が複合化されたものでも良く、例えば、図3の断面図で例示の如く、反射防止フィルタ4aとコントラスト向上フィルタ4bとが積層されたもの等である。なお、接着剤層5は粘着剤層でも良く粘着剤層も含む。この様な構成の第2のフィルタ部材10Bは、例えば、連続帯状シートの形態で作られたフィルタ層4に対して、連続帯状の粘着シートを、該粘着シートの粘着剤層である接着剤層5の面で、ラミネートすることで作製することができる。さらに、その際、ラミネートした後、一旦、ロールに巻き取った物から、巻き出して裁断して、ディスプレイ一画面分に対応した所定の寸法の枚葉シートとして、枚葉物の形態で準備することができる。
【0019】
(各フィルタ部材の貼り合せ製造装置への装填)
そして、図1で概念的に示す様に、前記した剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASの連続帯状シートを巻き取ったロール21と、前記第2のフィルタ部材10Bを枚葉に裁断した枚葉シートを、貼り合せ製造装置に装填する。この際、第2のフィルタ部材10Bの枚葉シートは、搬送ステージ26aに載置する。
なお、搬送ステージ26aは上面が水平な面で、この面に第2のフィルタ部材10Bを載置して、第2のフィルタ部材10Bを搬送する。図1では、搬送ステージ26aは、図面の左から右に向けて水平に移動して、第2のフィルタ部材10Bを圧着ローラ25の貼り合せ部まで搬送し、その後、貼り合わされたディスプレイ用光学フィルタ10を図面右方向に排出する。搬送ステージ26aの駆動は、図1では、搬送ステージ26aを載せて移動させる多数の搬送ローラ26bによって駆動される。これら、搬送ステージ26a及び搬送ローラ26bが、第2のフィルタ部材10Bに対する搬送機構として、貼り合せ製造装置に備わっている。
【0020】
(b)ハーフカット加工による枚葉化:
そして、連続帯状シートの剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASは、ロール21から巻き出して圧着ローラ25に向かって搬送する経路の途中で切断刃23によってハーフカットする。ハーフカットは、第1のフィルタ部材10Aの側から入れて、剥離シート3は厚みの全部又は一部を残して切断し、第1のフィルタ部材10Aはその厚みの全部を切断する。このハーフカットによって、第1のフィルタ部材10Aのみがディスプレイ一画面分に対応した所定の寸法に裁断されて、剥離シート3上で枚葉化する。また、ハーフカットは、通常、連続帯状シートの(シート)幅方向に平行に、連続帯状シートの全幅に入れる。
【0021】
ハーフカットでは第1のフィルタ部材10Aの全厚みを切断するが、ここで「全厚み」について更に説明する。図4はハーフカットの状況を説明する断面図である。同図では、切断刃23に対向して第1のフィルタ部材10Aを挟む様に受けローラ23aを設けてあり、これら切断刃23及び受けローラがハーフカット手段となっている。受けローラ23aによって、精度良い深さでハーフカットを入れられる様になっている。なお、ハーフカット手段は、図4の方式に限定されず任意であり、公知のハーフカット手段を適宜採用することもできる。
また、同図の第1のフィルタ部材10Aは、透明基材1の片面に形成された導電体パターン層2が(仮接着する剥離シート3が積層されていない状態では)露出し、凹凸面となった構成の部材である。そして、この導電体パターン層2の凹凸面に剥離シート3が積層され仮接着して、剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASとなっている。また、このとき、該導電体パターン層2の凹凸面の凹部(導電体パターン層2の非形成部であり図面で白い部分)の凹みに、剥離シート3が完全に追従しないと、空隙が残る。
そして、第1のフィルタ部材10Aの「全厚み」が切断されるとは、この様な凹凸面が導電体パターン層2によって形成されるフィルタ部材のときは、透明基材1と導電体パターン層2との合計の厚み、つまり空隙部分も含めて捉えた全厚みTtでも良いが、導電体パターン層2の厚みを除いた透明基材1の全厚みである、中実部分のみで捉えた実体的な全厚みTrでも良い。なお、実体的な全厚みTrでのハーフカットのときは、導電体パターン層2の実体部分を全て切断できてないことを意味する。しかし、導電体パターン層2に対する支持体として強度的により強い透明基材1の全厚み(=Tr)は切断されているので、第1のフィルタ部材10Aは、容易に枚葉に分断できる。
【0022】
なお、ハーフカットするときは、位置及び切断深さを、より正確にハーフカットできる様に、剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASの搬送を一時的に停止しても良い。なお、この場合は搬送は間欠送りである。また、搬送を一時停止するときは、圧着ローラ25による圧力印加部分である貼り合せ部分で、第1のフィルタ部材10Aと第2のフィルタ部材10Bとが貼り合せ最中でないとき、例えば、貼り合せない部分として接地用露出部2Eの部分(画面外の部分)が圧着ローラ25直下の時とすると良い。これは、貼り合せ最中に圧着ローラ25の回転を一時停止すると、圧着ローラ25直下となった部分が、幅方向に凹凸が延びた跡が付き易いからである。
【0023】
(c)剥離シートの剥離操作:
そして、図5の断面図で示す様に、上記ハーフカット加工による枚葉化操作を経た後の、剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASは、その剥離シート側に設置された剥離手段である剥離プレート24によって、剥離シート3のみが今までの搬送方向とは概ね逆方向に90度を超える大きな角度で折り返されて搬送されていく。折り返された剥離シート3は、図1の場合では、ロール22まで搬送されロール22に巻き取って回収される。一方、剥離シート3が剥離された後の、枚葉シートとなっている第1のフィルタ部材10Aは、折り返されることなく、まだ剥離シート3と分離されていない上流側部分で剥離シート3によって支持されて、剥離シート3と分離した搬送方向下流側の先端部分が剥離シートに対して自由端となって、今までの搬送方向に概ね進行する。
【0024】
(d)貼り合せ加工:
そして、剥離プレート24で剥離された後の第1のフィルタ部材10Aが、その上流側で剥離シート3で支持されて搬送されていくと同時に、一方、第2のフィルタ部材10Bも搬送速度を剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASと同じにして、貼り付け開始位置が互いに所定の位置で位置合せされる様に同期して搬送されている。そして、第1のフィルタ部材10Aが第2のフィルタ部材10Bの所定の貼り合せ面と接触して、貼り合せが始まる。
更に、図1に戻って説明すると、圧着ローラ25で、枚葉シートの第1のフィルタ部材10Aを、第2のフィルタ部材10Bの接着剤層5の面に、連続的に圧着していくことで、第1のフィルタ部材10Aと第2のフィルタ部材10Bとが所定の位置関係で貼り合せられる。なお、図1では圧着ローラ25での貼り合せ前後での第1のフィルタ部材10Aの厚み方向での描画を変えてあり、貼り合せ前はより単純化して描画してある。
そして、同図の場合、第2のフィルタ部材10Bは、枚葉物として供給したので、得られたディスプレイ用フィルタ10は、既に枚葉物となっている。つまり、図1(B)の平面図で示す様な、枚葉物のディスプレイ用光学フィルタ10が得られる。
【0025】
また、貼り合せ加工のとき、第1のフィルムタ部材10A及び第2のフィルタ部材10Bは、各々所定の寸法の枚葉物となっている。この為、第1のフィルタ部材10Aを第2のフィルタ部材10Bよりも、搬送方向及び幅方向において、4辺全周囲近辺に接地用露出部2Eを露出できる程度に一回り大きくしておくことで、第2のフィルタ部材10Bを第1のフィルタ部材10Aの中央に位置する様に位置合せして貼り合せると、図1(B)の平面図の如く第1のフィルタ部材10Aの4辺全周囲に接地用露出部2Eの部分を残して、貼り合せることができる。
【0026】
なお、第1のフィルタ部材10Aを第2のフィルタ部材10Bよりも搬送方向に於いて一回り大きい寸法にするのは、ハーフカットの時である。一方、搬送方向に直交する幅方向に於いて一回り大きい寸法にするのは、製造装置に装填するロール21の連続帯状シートのシート幅を、一回り大きい寸法のものにすると良い。或いは、装填するロール21は更に広い幅のものとして、これを巻き出して貼り合せ加工までの搬送経路途中でスリット加工して、所定の一回り大きい寸法の幅にしても良い。
【0027】
(e)同一製造装置上での連続加工:
以上の様に、本発明では、連続帯状シートである第1のフィルタ部材10Aの枚葉化と、第1のフィルタ部材10Aと第2のフィルタ部材10Bとの貼り合せ加工が、同一製造装置上で1ラインで行うので、1工程でこれら全ての操作が完了し、効率的にディスプレイ用フィルタを貼り合せで製造できることになる。
【0028】
また、この様にして得られた、図1(B)に例示の様なディスプレイ用光学フィルタ10は、四角形(長方形)の全4辺の全周囲で、導電体パターン層2が露出した接地用露出部2Eを貼り合せ時に残した部分として有するフィルタである。つまり、該接地用露出部2Eは、該接地用露出部2E上に貼り合せられてしまった第2のフィルタ部材10Bを剥離することで露出したものではなく、貼り合せ時に残して貼り合せすることで露出されたものである。従って、貼り合せ後に剥離して露出させる場合に比べて、導電体パターン層2を誤って切断してしまう様なことがなく、信頼性の高い接地部となる。
【0029】
《B.各部材の詳細》
上記実施形態では、第1のフィルタ部材10Aが図1や図2の様な構成の電磁波遮蔽フィルタ部材であり、第2のフィルタ部材10Bが図1や図3の様な構成の光学フィルタ部材であったが、ここでは、これら各部材のその他の形態について、更に説明する。
【0030】
先ず、第1のフィルタ部材10Aと、第2のフィルタ部材10Bが備えるフィルタ機能は、通常は互いに異なるフィルタ機能の部材を用いるが、同じフィルタ機能の部材を用いることもできる。例えば、2枚重ねでフィルタ機能を強化する、コントラスト向上フィルタ等で面方向での異方性を有する場合に同じフィルタを面方向の向きを互いに変えて交差して重ねる等である。
また、第1のフィルタ部材10A、及び第2のフィルタ部材10Bのいずれも、複数のフィルタ機能を複合化させた部材であり得る。
なお、本発明で「部材」というのは、ディスプレイ用フィルタの一構成要素となる材料である点で「部材」と称するものであり、該フィルタ部材単独で、ディスプレイ用フィルタとして使えるものも含む。
また、第1のフィルタ部材10Aと第2のフィルタ部材10Bの違いは、第1のフィルタ部材10Aの方は連続帯状シートで準備され使用されるのが必須であるという形状要素の点にある。
従って、第1のフィルタ部材10Aが備えるフィルタ機能と、第2のフィルタ部材10Bが備えるフィルタ機能の、各フィルタ機能について、基本的には夫々特に限定はない。
但し、前記実施形態では、第1のフィルタ部材10Aが電磁波遮蔽機能を有し、第2のフィルタ部材10Bが電磁波遮蔽機能以外のフィルタ機能(光学フィルタ機能)を有する形態であった。従って、以下の説明では、電磁波遮蔽機能は、第1のフィルタ部材10Aの欄で説明し、その他の光学フィルタ機能は、第2のフィルタ部材10Bの欄で、便宜上説明するが、どちらの部材に属するかは、以下の説明に限定されるものではない。
【0031】
〔剥離シート付き第1のフィルタ部材〕
剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASの第1のフィルタ部材10Aとしては、ディスプレイ用フィルタとして従来公知のものを用途に応じて適宜選択採用することができる。例えば、透明基材1と導電体パターン層2とを含む第1のフィルタ部材10Aである。そこで、以下では、この透明基材と導電体パターン層について説明し、その後で、剥離シートについて説明する。
【0032】
[透明基材]
第1のフィルタ部材10Aとして例示した、連続帯状の透明基材1は、ロールに巻き取り可能な点で、樹脂シート(乃至フィルム)が使用される。なお、「シート」は「フィルム」に対して一般に厚い物を意味することがあるが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の区別は特にない。
上記樹脂シートの樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、透明基材1の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
【0033】
[導電体パターン層]
導電体パターン層2は、透明基材1上にパターン状に形成された電磁波遮蔽機能を担う層であり、kHz〜GHz帯域を中心とした所謂電波領域の電磁波は遮蔽し可視光線は透過するフィルタ機能を有する。
導電体パターン層2としては特に制限はなく、公知のもので良い。例えば、金属箔など金属層をエッチングして形成した金属メッシュ層、或いは、導電性組成物(導電ペースト、導電インキとも呼ばれる)を印刷形成した導電性組成物層などである。
上記金属層の金属は代表的には銅であるがアルミニウム等でもよい。また、上記導電性組成物は導電性粒子と樹脂バインダとを含む液状の組成物(導電性ペースト、導電性インキ等とも呼ばれる)であり、該導電性粒子には、金、銀、白金、銅、アルミニウム等の粒子や、樹脂粒子や無機非金属物粒子等の低導電性粒子の表面を前記金属で被覆した金属被覆粒子などでもよい。
また、上記樹脂バインダの樹脂(バインダ樹脂)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、熱硬化性樹脂にはメラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などを用いることができる。電離放射線硬化性樹脂にはアクリレート系又はメタクリレート系のもの等を用いることが出来る。又、電離放射線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。
【0034】
なお、導電体パターン層2のパターンの平面視形状は、公知の形状など任意であり、例えば、メッシュ形状(単位格子が六角形や四角形などの格子模様)、ストライプ形状(直線状縞模様、螺旋模様など)などの幾何学形状である。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的である。導電体パターン層2の非形成部である開口部9(図6参照)の形状は、メッシュ形状が例えば正方格子形状では正方形、ストライプ形状では帯形状となる。また、パターンの線幅、つまり導電体パターン層2の形成部の線幅は、電磁波遮蔽性能などの観点から通常は5〜50μmである。格子やストライプ等の幾何学模様のパターンの周期は通常100〜500μmである。また、導電体パターン層2の開口率〔(導電体パターン層2の開口部9の合計面積/導電体パターン層2の開口部9及び導電体パターン層2の形成部を含めた全被覆面積)×100で定義〕は、電磁波遮蔽性能及び可視光透過性との両立の点から、50〜95%程度である。
【0035】
なお、導電体パターン層2を導電体組成物層として印刷形成する場合、国際公開第2008/149969号のパンフレットで開示された「引抜プライマ方式凹版印刷法」を利用すると高精細にできる点で好ましい。なお、この凹版印刷法は、凹版版面の凹部内に充填したインキ(導電ペースト)を引き抜いて、被印刷物への転移を促進させる、電離放射線硬化性樹脂等からなるプライマ層を、印刷の最中に流動状態で作用させて版面上で固化させてから、離版し印刷する方法である。
【0036】
そして、この様な、「引抜プライマ方式凹版印刷法」による印刷物が、他の印刷法に見られない大きな特徴は、図6の断面図で例示する様に、プライマ層8と導電体パターン層2との界面について、プライマ層8は、導電体パターン層2の形成部での厚さが導電体パターン層2の非形成部での厚さよりも厚い形状となることである。なお、非形成部の厚さは、形成部の厚さの影響のない部分の非形成部つまり開口部9の中央部での厚さで捉える。なお、同図に例示の第1のフィルタ部材10Aは、透明基材1上にプライマ層8を介して導電体パターン層2が形成された構成のものである。
【0037】
なお、上記プライマ層8は透明な樹脂層で、その樹脂には熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができるが、固化が迅速な点で紫外線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
【0038】
[剥離シート]
剥離シート3は、不透明でも良いので紙製や不透明な樹脂シート製でも良いが、フィルタ部材の品質確認が容易な点で、透明なものが好ましく、この点で、透明な樹脂シート製が好ましい。該透明な樹脂シートとしては、前記透明基材で列記した樹脂シート等を用いることができる。
剥離シート3は、第1のフィルタ部材10Aに、貼り合せ直前まで仮接着されており、仮接着された状態ではロール状態や、それを巻き出して搬送時、またハーフカット時も容易に剥離して脱落しない程度の弱い接着力で、接着している必要がある。この様な、剥離シート3は、樹脂シートの面に、弱粘着力の弱粘着剤層を形成したシートを利用できる。また、弱粘着剤層の弱粘着剤としては、公知のも、例えば、アクリル系、シリコーン系等の公知の弱粘着剤を用いることができる。
【0039】
ここで、上記の様な適度な接着力の一例を例示すれば、剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASを、搬送方向に長さ30cm、搬送方向と直交する幅方向に25mmの短冊状に切り出した、試験片について、該試験片から剥離シート3を180度剥離試験に準拠して剥離速度300mm/minの速度で剥がしたときに、50mN以上、且つ250mN以下であることが好ましい。
なお、上記180度剥離試験は、JIS K6854−2(接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離)に準拠した試験である。
接着力が50mN未満と弱すぎると、製造装置上で所定寸法にハーフカットする際等に不意に剥がれ易くなる。また、接着力が250mNを超過し強すぎると、剥離シート3を剥離プレート24などの剥離手段でスムーズに剥離しにくくなる。従って、弱接着力とは、上記試験法にて、50〜250mNの接着力が好ましい。
また、上記剥離試験にて、剥離した後の剥離シート3の搬送方向での伸縮量が±2mm以内であることが望ましい。伸縮量がこの範囲を外れると、プラス(伸び)側とマイナス(縮み)側も含めて、第1のフィルタ部材10Aを剥離シート3で支持して安定的に搬送できなくなる。一定の速度で安定的に搬送できないと、一定の速度で貼り合せできず、接着剤層5にムラが生じ易くなる。
【0040】
なお、図1で例示した、剥離シート付き第1のフィルタ部材10ASは、第1のフィルタ部材10Aが透明基材1と導電体パターン層2からなる形態例であり、更に剥離シート3は導電体パターン層2の側に仮接着した形態例であった。しかし、剥離シート3を仮接着する面は、第1のフィルタ部材10Aの表裏いずれの面でも良く、透明基材1側の面でも良い。
【0041】
〔第2のフィルタ部材〕
第2のフィルタ部材10Bは、少なくともフィルタ層4と貼り合せの為の接着剤層5を有する部材であれば、特に制限はない。フィルタ層4としては、各種フィルタ機能を有する公知の各種フィルタを適宜採用できる。
【0042】
また、第2のフィルタ部材10Bは第1のフィルタ部材10Aの様に、連続帯状シートである事は必須ではない。また、第2のフィルタ部材10Bは、枚葉物としては樹脂シートの他に、ガラス板やプラスチック板の板でも良い。従って、第2のフィルタ部材10Bが、前記第1のフィルタ部材10Aで例示した様に透明基材1を含む場合は、該透明基材1としては、樹脂シート等の有機系材料以外に、ガラス、セラミック等の無機系材料、或いは有機系材料と無機系材料を積層乃至は混合した複合材料でも良い。なお、この透明基材1は、第2のフィルタ部材10Bに於いては、フィルタ層4に含まれる概念である。
【0043】
[フィルタ層]
フィルタ層4のフィルタ機能としては、光学フィルタ機能が代表的である。光学フィルタ機能としては、公知の光学フィルタ機能、例えば、近赤外線を吸収する近赤外線吸収機能、紫外線を吸収する紫外線吸収機能、或いは、視覚上の効果が得られる、PDPのネオン光を吸収するネオン光吸収機能、表示画像を好みの色調に補正する色補正機能などの特定光透過機能、反射防止機能(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、などである。なお光学フィルタ機能としては、これら機能の1又は2以上を、単層又は多層構成によって実現することができる。
【0044】
これら各種の光学フィルタ機能を実現するには、例えば、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色補正機能などは、これら機能に応じた色素(近赤外線吸収色素、ネオン光吸収色素、色補正色素)を用い、紫外線吸収機能は紫外線吸収剤を用いるなど、公知の材料・方法で実現できる。例えば、これら材料を樹脂中に分散させた樹脂層として形成することができる。
また、第2のフィルタ部材10Bのフィルタ機能の一つとして、前記導電体パターン層、つまり電磁波遮蔽機能があっても良い。
【0045】
また、ここでのフィルタ層4としては、本来は光学的なフィルタ機能のことを意味するが、本発明では、光学機能以外の機能層も含めることにする。例えば、導電体パターン層2や光学フィルタの表面を保護する表面保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層などである。
【0046】
《C.変形形態》
本発明は、上記説明した以外の形態として、例えば、次の様な変形形態もとり得る。
【0047】
片方のフィルタ部材が導電体パターン層2を有する電磁波遮蔽フィルタ部材である場合、該フィルタ部材を第2のフィルタ部材10Bとして、(接地用露出部2Eの形成はひとまず置いておき)貼り合せても良い。
また、第1のフィルタ部材10Aと第2のフィルタ部材10Bとの所定の寸法に大小関係を持たせるとき、どちらを大きくするかは目的に応じて決めれば良い。なお、同じ所定の寸法として貼り合せることも可能であるが、電磁波遮蔽フィルタ部材の場合は接地用の電極の取り出し処置が必要となる。
また、第2のフィルタ部材10Bは、実施形態では枚葉物であったが、連続帯状シートとして準備し、ロールから巻き出した連続帯状シートを、貼り合せ製造装置上で裁断して枚葉シートに裁断した後、この枚葉シートを図1の様に、搬送ステージ26aにロボットで載置しても良い。この場合、第1のフィルタ部材10Aと共に第2のフィルタ部材10Bの枚葉化も、貼り合せと同一製造装置上でインラインで連続して1工程で出来るので、各枚葉化工程と貼り合せ工程の合計3工程を1工程に減らせる。
この様に、本発明の貼り合せによる製造方法は、その他の工程を含んでも良い。
また、接地用露出部2Eの形成が必要ないときなど、第2のフィルタ部材10Bは連続帯状シートのまま貼り合せまで行い、貼り合せ後に裁断して枚葉化することもできる。
また、貼り合せの最中は、前記実施形態では回転する圧着ローラ25は位置固定されていたが、貼り合せ対象物は静止させて圧着ローラ25を貼り合せ面に沿って移動させても良い。
【0048】
又、前記実施形態(図1参照)に於いては、第2のフィルタ部材10Bの搬送は、搬送ローラ26bで駆動される搬送ステージ26a上に載置して搬送したが、この形態には限定されず、例えば、図1に於いて、搬送ローラ26b上に直接第2のフィルタ部材10Bを載置して搬送することも出来る。
又、前記実施形態(図1参照)に於いては、第1のフィルタ部材10Aのハーフカットは、切断刃23と第1のフィルタ部材10Aを挟んで設けた受けローラ23aとによって行ったが、この形態には限定されず、例えば、図1に於いて、受けローラ23aに代えて第1のフィルタ部材10Aの全幅以上を有する幅の平板状或いは曲面板状の受け板を用いて、ハーフカット箇所の近傍の第1のフィルタ部材10Aを広面積で支持し、且つ第1のフィルタ部材10Aの該受け板とは反対側面に於いて、切断刃23のシート送り方向の前後を第1のフィルタ部材10Aの全幅以上の幅を有する平板状或いは曲面板状の押さえ板で圧着し、第1のフィルタ部材10Aが浮いたり、位置ズレしたり、皺が発生したりすることを防止しつつハーフカットすることも出来る。
【0049】
《D.用途》
本発明によるディスプレイ用光学フィルタ10は、特に、テレビジョン受像製造装置、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの各種画像表示製造装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽用途、反射防止用途、熱線遮蔽用途、紫外線遮蔽用途、遮光用途等にも使用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 透明基材
2 導電体パターン層
2E 接地用露出部
3 剥離シート
4 フィルタ層
4a 反射防止フィルタ
4b コントラスト向上フィルタ
5 接着剤層
6 粘着剤層
7 セパレータフィルム
8 プライマ層
9 開口部
10 ディスプレイ用光学フィルタ
10A 第1のフィルタ部材
10AS 剥離シート付き第1のフィルタ部材
10B 第2のフィルタ部材
21 (巻き出し)ロール
22 (巻き取り)ロール
23 ハーフカット加工用の裁断刃
23a ハーフカット加工用の受けローラ
24 剥離プレート(剥離手段)
25 圧着ローラ
26a 搬送ステージ(搬送手段)
26b 搬送ローラ(搬送手段)
Tr 中実部分のみで捉えた実体的な全厚み
Tt 空隙部分も含めて捉えた全厚み


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のフィルタ部材を貼り合せてディスプレイ用光学フィルタを製造する、ディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法において、
(a1)第1のフィルタ部材は連続帯状シートで、その貼り合せ面に連続帯状シートである剥離シートが仮接着された剥離シート付き第1のフィルタ部材として準備し、
(a2)第2のフィルタ部材は枚葉物又は連続帯状シートで、フィルタ層の貼り合せ面に接着剤層を備えた部材として準備し、
(b)前記剥離シート付き第1のフィルタ部材をロールから巻き出して搬送する途中で、ハーフカット加工を施して、該剥離シートはその厚みの全部又は一部を残し且つ該第1のフィルタ部材は全厚みを切断して、ディスプレイ一画面分に対応した所定の寸法に枚葉化し、
(c)次いで、剥離シート付き第1のフィルタ部材から該剥離シートのみを剥離して折り返して搬送し、
(d)一方、枚葉化された上記第1のフィルタ部材は、上記剥離シートと先端部分の下流側から分離しつつ上流側は分離前の状態の該剥離シートによって支持して搬送し、第1のフィルタ部材を、その貼り合せ面が第2のフィルタ部材の接着剤層面に向く様にして第2のフィルタ部材の所定の位置に圧着ローラで順次圧着していくことで、
第1のフィルタ部材と第2のフィルタ部材とを貼り合せて、ディスプレイ一画面分毎に対応可能なディスプレイ用光学フィルタを製造する、
(e)少なくとも上記(b)、(c)及び(d)の各操作を同一製造装置上で行う、
ディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法。
【請求項2】
上記(a1)での上記第1のフィルタ部材が、少なくとも透明基材と該透明基材上に形成された導電体パターン層とを含む電磁波遮蔽フィルタ部材であり、
上記(a2)での上記第2のフィルタ部材が、少なくとも接着剤層と、電磁波遮蔽機能以外の1又は2以上の光学フィルタ機能を担うフィルタ層とを含む光学フィルタ部材であり、
上記(b)での第1のフィルタ部材をハーフカット加工で枚葉化するときの所定の寸法を、上記第2のフィルタ部材の所定の寸法に対して搬送方向で大きくし、
上記(d)で貼り合せるときの第1のフィルタ部材の幅を第2のフィルタ部材の幅よりも大きくして、第1のフィルタ部材の4辺全周囲に第2のフィルタ部材が積層されていない接地用露出部が形成された、ディスプレイ一画面分毎に対応可能なディスプレイ用光学フィルタを作製する、
請求項1に記載のディスプレイ用光学フィルタの貼り合せによる製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−210924(P2011−210924A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76714(P2010−76714)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】