ディーゼルパティキュレートフィルタ
【課題】触媒貴金属の使用量を抑えつつ、効率的にPMを燃焼させるとともに、一酸化炭素の排出を抑制し得るディーゼルパティキュレートフィルタを提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジンの排気通路に配設され、パティキュレートを燃焼させるための触媒貴金属を有するパティキュレート酸化触媒が設けられたディーゼルパティキュレートフィルタにおいて、パティキュレート酸化触媒はジルコニウムを主成分とするとともにセリウムを除く希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物とアルミナとを含む。ジルコニウム系複酸化物およびアルミナはそれぞれ触媒貴金属を担持している。
【解決手段】ディーゼルエンジンの排気通路に配設され、パティキュレートを燃焼させるための触媒貴金属を有するパティキュレート酸化触媒が設けられたディーゼルパティキュレートフィルタにおいて、パティキュレート酸化触媒はジルコニウムを主成分とするとともにセリウムを除く希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物とアルミナとを含む。ジルコニウム系複酸化物およびアルミナはそれぞれ触媒貴金属を担持している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気通路に配設されるとともに排気ガスを流通させることによりパティキュレートを捕集し、このパティキュレートをパティキュレート酸化触媒によって燃焼浄化させるディーゼルパティキュレートフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレート(以下、PMという)は環境に与える影響が大きいため、このPMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFという)が排気通路に設けられた自動車が増加してきている。このようにDPFを設ける場合、エンジン出力や燃費を維持するために、DPFに捕集されたPMを除去する必要がある。
【0003】
そのための手段として、例えばDPFとして一般に用いられているウォールフロータイプの円筒状のフィルタにおいて、排気ガス流出側の流路における内壁面に白金(Pt)担持アルミナおよびNOxトラップ材が配設され、NOxトラップ材に吸収されていたNO2によってPMを燃焼させるものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、フィルタの排気ガス流路における内壁面に酸素吸蔵能を有するセリウム−ジルコニウム複酸化物が塗布されるとともに該複酸化物に酸化触媒作用を有する触媒貴金属を担持させ、瞬間的に切り換えられたリッチ空燃比雰囲気で上記複酸化物から活性酸素が放出され、この活性酸素によってPMを燃焼させる技術も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−94434号公報
【特許文献2】特開2003−334443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの特許文献に記載のDPFでは、比較的低い燃焼温度でPMを燃焼させることができるとされているものの、さらにPM燃焼温度を低下させるために、効率的かつ短期間にPMを排除してDPFを再生することが求められている。
【0006】
ところで、この種のDPFでは、その上流側にHC等を酸化させる酸化触媒が設けられることが多く、ディーゼルエンジンにおけるリッチパージ制御等により増量された燃料をこの酸化触媒で燃焼させることによりDPFに導入される排気ガス温度を上昇させ、PM燃焼を促進させる手段などが講じられている。したがって、この増量された燃料噴射期間を短縮させ、或いは燃料噴射量を低減するためにもPMを酸化燃焼させるDPFの再生を短期間に効率よく行うことが求められている。ここで、PMの酸化燃焼を短期間に効率よく行うために、白金等の触媒貴金属などを担体に担持させ、この触媒貴金属担持量を増量することも考えられるが、触媒貴金属の担持量を増量させると、コスト増になるばかりでなく、触媒貴金属の分散度合が低下してシンタリングが生じ易くなることも懸念される。
【0007】
一方、このようにPM燃焼量が多くなるのに伴い、PMが不完全燃焼することにより一酸化炭素の排出量が増加することも懸念され、このPMの不完全燃焼に対する対策が講じられることも求められる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、触媒貴金属の使用量を抑えつつ、効率的にPMを燃焼させるとともに、一酸化炭素の排出を抑制し得るディーゼルパティキュレートフィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究の結果、ジルコニウムを主成分とするとともにセリウムを除く希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物が、酸素イオン伝導性を有し、このジルコニウム系複酸化物を、上記酸素吸蔵能を有するセリウム−ジルコニウム複酸化物に替えてパティキュレート酸化触媒に含有させることにより、PM(パティキュレート)の酸化反応の継続性を向上させることができ、これによりPM燃焼速度を向上させてPMを効率的かつ短期間に燃焼させることができることを見出すとともに、このPMの不完全燃焼ガスを触媒貴金属担持アルミナで確実に酸化させることにより不完全燃焼ガスの排出を可及的に抑制し得ることを見出し、本件発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)は、ディーゼルエンジンの排気通路に配設され、パティキュレートを燃焼させるための触媒貴金属を有するパティキュレート酸化触媒が設けられたディーゼルパティキュレートフィルタにおいて、上記パティキュレート酸化触媒はジルコニウムを主成分とするとともにセリウムを除く希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物とアルミナとを含み、上記ジルコニウム系複酸化物およびアルミナはそれぞれ上記触媒貴金属を担持していることを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、触媒貴金属が担持されたジルコニウム系複酸化物によって、フィルタに堆積したPMを効率的かつ短期間に燃焼させることができる。これは次の理由によるものと推測される。
【0012】
すなわち、上記ジルコニウム系複酸化物は酸素イオン伝導性を有することから、DPF内部にPMが付着してその表面に局部的に酸素濃度が低い部位を生ずると、当該部位に酸素濃度の高いところから酸素イオンが当該複酸化物を介して移動し、活性酸素(O2−)となって順次放出される。
【0013】
ジルコニウム系複酸化物には触媒貴金属が担持されているため、この触媒貴金属によるPMの酸化反応にこの活性酸素が利用され、つまりこの活性酸素がPMを酸化して火種を形成する。この火種が形成されると、その周囲の酸素が欠乏するが、上述したようにジルコニウム系複酸化物を介して酸素イオンが順次移動し、この欠乏部位に活性酸素が継続的に供給されるので、この火種を中心にして燃焼領域が周囲に拡大することになる。
【0014】
このように、ある部位で生じた火種が継続的に燃焼して燃焼領域を拡大させるので、低い温度でもPMを効率的に酸化燃焼させることができると考えられる。このため、DPFの再生(PMの燃焼浄化)にあたり、エンジン或いはDPFに燃料を供給する場合でもこの燃料噴射量を減少させることができ、これによりフィルタの再生を効率的かつ短期間に行うことができ、燃費を向上させることができる。
【0015】
しかも、後に実験データで示すように、パティキュレート酸化触媒に含まれる触媒貴金属について、セリウム−ジルコニウム複酸化物と同等の燃焼速度を実現するための使用量を低減することができ、このパティキュレート酸化触媒、ひいてはディーゼルパティキュレートフィルタを低コストで製造可能となる。
【0016】
また、このような酸素イオン伝導性を有する材料を用いてこのように効率的にPMを燃焼させると、PM燃焼量が多くなり、この燃焼量の増加に伴ってPMの不完全燃焼による一酸化炭素の排出割合の増加が懸念される。しかも、実験によりパティキュレート酸化触媒に酸素イオン伝導性を有する複酸化物が含まれていると、特に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)について十分に酸化させることができず、従来のセリウム−ジルコニウム複酸化物に比べてライトオフ性能および通常運転時における浄化性能に劣る場合があることが判明した。
【0017】
しかしながら、この発明によれば、パティキュレート酸化触媒に触媒貴金属を担持させたアルミナを含み、この触媒貴金属によってジルコニウム系複酸化物によって十分に酸化されなかった一酸化炭素や炭化水素について完全に燃焼させることができ、パティキュレート酸化触媒としてのライトオフ性能、および浄化性能を十分に改善することができる。特に、冷間運転時にはこの触媒貴金属担持アルミナによる一酸化炭素の燃焼熱によって更に雰囲気温度を上昇させてジルコニウム系複酸化物をより活性化させることができるものと考えられ、これにより一層酸化反応が活性化される。
【0018】
なお、この発明においてジルコニウム系複酸化物の希土類金属からセリウムを除外しているのはセリウム−ジルコニウム複酸化物は主に酸素吸蔵材として機能し酸素イオン伝導性が小さいためである。
【0019】
この場合、上記ジルコニウム系複酸化物は、セリウムを除く希土類金属が含まれていればよいが、カーボン燃焼速度を向上させてより効率的にPMを燃焼させる観点から、このジルコニウム系複酸化物にイットリウムを除く希土類金属が含まれているのが好ましい(請求項2)。
【0020】
この発明において、上記アルミナにおける触媒貴金属の担持量は、特に限定されるものではないが、後述する実験データで明らかになるように、ライトオフ性能および浄化性能をより効果的に改善するためには、この担持量は、触媒貴金属の総質量に対して40質量%以上90質量%以下の範囲に設定されているのがよく(請求項3)、さらに好ましくは触媒貴金属の総質量に対して50質量%以上80質量%以下に設定されているのがよい(請求項4)。
【0021】
上記アルミナに担持される触媒貴金属としては、Ptを例示することができる(請求項5)。そして、後述する実験データで明らかになるように、アルミナに担持される触媒貴金属として上記PtにさらにPdを追加することが、ライトオフ性能や、PMが燃焼した際に生じる一酸化炭素の浄化性能を改善する点で好ましい(請求項6)。さらにこの場合、上記PtとPdとは、異なるアルミナに別々に担持されていることが、より好ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0022】
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、触媒貴金属の使用量を抑えることにより製造コストを抑制しつつ、フィルタに堆積されたPMを効率的かつ短期間に燃焼させることができるとともに、ライトオフ性能や浄化性能を十分に改善することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。図1はディーゼルエンジンの排気通路1にDPF3を組み付けた状態で示している。この図において、排気通路1を構成する排気管は、図外のディーゼルエンジン本体に排気マニホールドを介して接続される。そして、ディーゼルエンジン本体から排出される排気ガスは、白抜き矢印で示すように、排気通路1中を図1で左側から右側へ流れる。
【0024】
上記排気通路1には、排気ガス中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼルパティキュレートフィルタ)3が設けられている。図2および図3はこのDPF3を模式的に表す説明図である。
【0025】
上記DPF3は、外形が円筒状に形成された所謂ウォールフロータイプのフィルタであって、コーディエライトやSiC,Si3N4等のセラミックスにより、多数の流通孔5a(図4参照)が形成された多孔質壁5で区画して排気経路に沿って互いに平行に延びる多数のセル4(通路)を有するハニカム状に形成されたフィルタ本体6と、千鳥状に一部のセル4bの上流端側と他のセル4aの下流端側とを目封止する目封止部15とを備える。したがって、DPF3は、図3に矢印で示すように、上流端側が開口した上流側セル4aから流入した排気ガスが多孔質壁5を通って下流端側が開口した下流側セル4bへ流れて排出され、その間にPMが捕集されるようになっている。なお、このDPF3に替えて、炭化ケイ素等の耐熱性材料を用いた、従来から知られている三次元網目構造担体を用いるものであってもよい。
【0026】
この排気ガスが流通するDPF3の内部流路には、図4に示すように、その内壁面にPMを燃焼させるパティキュレート酸化触媒がコーティングされることにより、酸化触媒層8が形成されている。パティキュレート酸化触媒には、PMを燃焼させるための触媒貴金属と、この触媒貴金属を担持する担体として、ジルコニウム(Zr)を主成分とするジルコニウム系複酸化物とアルミナ(Al2O3)とが含まれている。アルミナはLa等の希土類金属で安定化されたものが耐熱性の点で好ましく、さらには比表面積として250m2/g以上を有するものが触媒貴金属のシンタリングを防止する上で好ましい。なお、上記ジルコニウム系複酸化物とアルミナとを混合して用いる場合、これらジルコニウム系複酸化物およびアルミナをともに10g/L〜50g/Lの範囲で含有させることが好ましい。これは、ジルコニウム系複酸化物の含有量が上記範囲以下であるとPM燃焼性能が充分に発揮されず、また、アルミナの含有量が上記範囲以下であるとPtやPdを担持する場合にこれら触媒貴金属の分散度合が低くなり、その結果ライトオフ性能およびPM燃焼の際に生じる一酸化炭素の浄化性能の向上度合いが芳しくなくなるためであり、さらには、ジルコニウム系複酸化物およびアルミナの含有量が上記範囲以上であると、DPF3にパティキュレートが捕集堆積した場合に背圧が高くなってしまうためである。これらのアルミナおよびジルコニウム系複酸化物はそれぞれ所定量の触媒貴金属を担持させた後に混合されてDPF3の内部流路にコーティングされている。なお、このパティキュレート酸化触媒から構成される酸化触媒層8はフィルタ本体6の内部流路の全域に亘って形成されるものであってもよいし、内部流路の上流側、特に上流側セル4aおよび流通孔5aの内壁面に形成されるものであってもよい。
【0027】
触媒貴金属は、白金(Pt),パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等から選択される少なくとも一種が例示され、例えば白金(Pt)について上記複酸化物にジニトロジアミン白金硝酸溶液を加えて混合し、蒸発乾固法によってこの複酸化物に担持される。ジルコニウム系複酸化物およびアルミナ(Al2O3)のそれぞれには、同種の触媒貴金属、例えば後述する実施例ではそれぞれに白金(Pt)が担持されている。この複酸化物に対する触媒貴金属の担持量は、例えば白金(Pt)についてジニトロジアミン白金硝酸溶液の濃度や量を調整することによって調節することができる。なお、担持する触媒貴金属は異種のものであってもよい。
【0028】
ジルコニウム系複酸化物は、その含有物のうちジルコニウム(Zr)の含有率が最大となるように調整され、セリウム(Ce)を除く希土類金属、好ましくはセリウム(Ce)に加えてイットリウム(Y)を除く希土類金属が含まれている。このジルコニウム系複酸化物に含まれる希土類金属は、3価で安定な金属であることが好ましく、上記セリウム(Ce)およびイットリウム(Y)を除く、Sc,Y,La,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luであり、中でもスカンジウム(Sc)、ネオジム(Nd)およびイッテルビウム(Yb)から選択される少なくとも一種の金属であることが好ましい。この希土類金属の中からイットリウム(Y)が除外されるのが好ましいのは、イットリウムを含むジルコニウム系複酸化物が含まれたパティキュレート酸化触媒は後述するようにそのカーボン燃焼速度が従来の酸素吸蔵能の高いセリウム−ジルコニウム複酸化物が含まれたパティキュレート酸化触媒に比べて速いものの、他の希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物が含まれたものに比べて遅く、したがって、カーボン燃焼速度を高めてPMをより効率的に燃焼させる観点から、このジルコニウム系複酸化物にはセリウム(Ce)に加えてイットリウム(Y)も除かれるのが好ましい。
【0029】
なお、上記各複酸化物に含まれる希土類金属からセリウム(Ce)が除外されているのは、セリウムが4価で安定となり、また所定の条件において後述するような酸素イオン伝導性を発揮せず、電子移動媒体として機能する場合があることから、酸素イオン伝導性を有効に発揮させることが困難だからである。
【0030】
この酸化触媒層8を形成するには、上記したようにジルコニウム系複酸化物およびアルミナのそれぞれに同種の触媒貴金属(例えば白金)を担持させた後、この触媒貴金属担持ジルコニウム系複酸化物および触媒貴金属担持アルミナを混合するとともにこの混合酸化物を水およびバインダと混合してスラリーを生成し、このスラリーをフィルタ本体6の内部流路の内壁面にコーティングして、エアブローにより余分なスラリーを除去した後、乾燥、焼成する。この酸化触媒層8の層厚等は、スラリーの粘度や濃度等により調整可能である。
【0031】
なお、酸化触媒層8を形成するパティキュレート酸化触媒に2種以上のジルコニウム系複酸化物あるいはそれ以外の複酸化物が含まれるものであってもよく、その場合には各複酸化物に触媒貴金属が担持されるのが好ましい。この場合には、例えばセリウム(Ce)を主成分とするとともにセリウム(Ce)を除く希土類金属またはアルカリ土類金属が含まれたセリウム系複酸化物を含むものとしてもよい。
【0032】
このパティキュレート酸化触媒に含まれるジルコニウム系複酸化物は、酸素イオン伝導性を有している。この酸素イオン伝導性を有する複酸化物を用いたパティキュレート酸化触媒によってPMを酸化させるメカニズムは次のように推測される。図4は多孔質壁5を拡大して示す断面図であり、図5はPMの酸化メカニズムを示す説明図である。
【0033】
ディーゼルエンジン本体から排気ガスが排出され、DPF3にPMが捕集されると、この酸化触媒層8上にPMとしてのカーボン9が堆積する。このカーボン9は多孔質で酸素と結合しやすい特性を有するため、酸素過剰条件下では、このカーボン9が堆積した酸化触媒層8の表面部分において酸素の放出/脱離が起こり、この表面部分の酸素濃度が低下し、他の部分に対して微視的な酸素濃淡差を生じる。
【0034】
このように酸化触媒層8の表面のある部分の酸素濃度が低下すると、この酸化触媒層8を構成するジルコニウム系複酸化物が酸素イオン伝導性を有するため、酸素濃度が高い複酸化物内部から酸素イオンO2−が当該酸素濃度が低下している表面部分に移動する。この酸素イオンO2−は酸化触媒層8の表面に達して活性酸素となり、その結果、複酸化物表面にカーボンの酸化反応を生じ易いところが局所的に生ずる。
【0035】
そして、反応条件が最も整った部位において、カーボン9の酸化反応が始まる。この酸化反応が始まるとそこに火種10を生じ、この火種10によってその周囲の酸素は欠乏して酸素欠乏空間11が形成される。酸素欠乏状態となると、通常はカーボン9の酸化反応、すなわち火勢が弱まりやがて火種10は消失するが、当実施形態のDPF3ではPM酸化触媒層8を構成するパティキュレート酸化触媒が酸素イオン伝導性を有するジルコニウム系複酸化物を含有して構成されるため、この複酸化物の働きによって酸素欠乏空間11に活性酸素が継続的に供給されることにより、カーボン9の酸化反応は促進され、火種10を中心として燃焼領域が拡大していく。
【0036】
すなわち、酸素過剰雰囲気下では、酸素欠乏空間11とその周囲との間で酸素濃淡差を生じるとともに、この濃度差に基づき酸化触媒層8の複酸化物内部の微視的領域で電荷のアンバランスが生じ、これに伴ってこのPM酸化触媒層8のジルコニウム系複酸化物を介して酸素濃度の高い部分からこの酸素欠乏空間11へと酸素イオンが移動される。そして、この酸素イオンが酸素欠乏空間11に活性酸素として放出され、これによりカーボン9と活性酸素との結合燃焼、すなわち酸化が促進されることになる。したがって、酸化触媒層8の表面の一部で生じた火種10は消失することなく、燃焼領域を拡大させていくので、カーボン9であるPMを効率的かつ短期間に燃焼浄化することができ、またこのためPMの燃焼温度を実質的に低下させることができる。
【0037】
ここで、ジルコニウム系複酸化物に希土類金属としての3価の金属が含まれるので、ジルコニウム系複酸化物の内部では、図5に示すように、ジルコニウムの一部を3価の金属(図中の黒丸で示す)で置換しているため、酸素イオン空孔が存在し、酸素イオンはこの空孔を介して搬送されることになる。なお、この図5においては、アルミナは省略されている。
【0038】
ところで、カーボン9はジルコニウム系複酸化物から放出される活性酸素と反応して、その全てが二酸化炭素となって放出されず、その一部が不完全燃焼して一酸化炭素として放出されることがある。すなわち、PMは一部において不完全燃焼して不完全燃焼ガスを放出し、この不完全燃焼ガスの割合はPM燃焼量が多くなるに伴って増加する。しかも、酸素イオン伝導性を有する複酸化物がパティキュレート酸化触媒に含まれる場合には、例えば従来のセリウム−ジルコニウム複酸化物を含むパティキュレート酸化触媒に比べて一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)の酸化性能に劣り、このためライトオフ性能や通常運転時の浄化性能に劣ることがあるということを実験により知見するに至った。
【0039】
しかしながら、当実施形態のDPF3のように、酸化触媒層8を形成するパティキュレート酸化触媒に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を酸化させるための触媒貴金属が担持されたアルミナ(Al2O3)が含まれているので、このPMの不完全燃焼ガス等は、触媒貴金属担持アルミナと接触してこの触媒貴金属担持アルミナによって直ちに酸化されて一酸化炭素(CO)が二酸化炭素(CO2)に変換されるとともに、炭化水素(HC)が水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に変換されて排出されるものと考えられる。しかも、PMは専らDPF3の内部流路の上流側において捕集燃焼されるとともに、この酸化触媒層8がDPF3の内部流路の略全域にわたって形成されているので、専ら上流側で発生したPMの不完全燃焼ガスが下流側に流れ、下流側セル4bの内壁面に形成された酸化触媒層8における触媒貴金属担持アルミナによって効果的に酸化されると推測される。したがって、当実施形態のDPF3では、雰囲気温度が比較的低い場合でもPMの不完全燃焼ガス等の有毒ガスの排出を大幅に抑制してライトオフ性能および通常運転時の浄化性能を大幅に改善することができる。
【0040】
また、この酸化触媒層8における不完全燃焼ガス酸化反応は、次の理由により、ジルコニウム系複酸化物によるカーボン9の酸化反応に寄与していると推測される。すなわち、触媒貴金属担持アルミナによって不完全燃焼ガスである一酸化炭素ガスの酸化反応が起こると反応熱を生じるとともに、この反応熱に基づいてジルコニウム系複酸化物が活性化されこれによりジルコニウム系複酸化物による酸化反応を促進するものと考えられ、これによりこの酸化触媒層8におけるカーボン燃焼速度を向上させることができるものと考えられる。
【0041】
このような効果を確認するため、DPF3におけるPMの燃焼性能についての評価のために行った実験とその結果を、次に説明する。
【0042】
(A)評価実験1(カーボン燃焼速度評価実験)
ジルコニウム系複酸化物におけるカーボン燃焼速度の評価実験のために、パティキュレート酸化触媒に含まれるジルコニウム系複酸化物の成分および含有比率を変更した複数のサンプルを調製した。すなわち、ジルコニウム系複酸化物について10種類のサンプル、およびこの比較のために3種類のサンプルの触媒層表面にそれぞれ模擬PMであるカーボンブラックを堆積させ、これらについて雰囲気温度が590℃におけるカーボン燃焼速度を測定する実験を行った。
【0043】
なお、ここでは、アルミナ(Al2O3)を混合することなく、触媒貴金属の全量をパティキュレート酸化触媒に含まれる複酸化物または酸化物に担持させたものを用いている。なお、本実験のDPF担体(フィルタ本体6)として、セルの構造が12mil/300cspiの炭化ケイ素製のDPF担体から見かけ体積25ccの円筒形にくり抜いたものを用いた。
【0044】
(サンプル調製方法)
まず、各サンプルの調製方法について説明する。
【0045】
ジルコニウム系サンプルの調製にあたっては、ジルコニウム酸化物に対して各々異なる希土類金属の酸化物を、その含有量を変化させて計10種類のジルコニウム系複酸化物を用意する。これらのジルコニウム系複酸化物は、イオン交換水に混合する各金属の硝酸塩を溶解し、アンモニアにより調整したアルカリ性溶液を滴下し、各金属元素を含む沈殿を生成し、濾過、水洗、乾燥、焼成を行って生成される。そして、これらのジルコニウム系複酸化物に触媒貴金属としての白金(Pt)を担持させる。この白金の担持量は、50g/L(DPF3の1L当たり50g)のジルコニウム系複酸化物に対して0.5g/Lに設定している。一部のサンプルでは図6に示すようにこの白金担持量を50g/Lのジルコニウム系複酸化物に対して1.0g/L、2.0g/Lに設定したものも用意し、それぞれについてカーボン燃焼速度の測定を行っている。
【0046】
すなわち、ZrO2−Y2O3(Y2O3:3mol%)、ZrO2−Yb2O3(Yb2O3:3mol%)、ZrO2−Nd2O3(Nd2O3:3mol%)、ZrO2−Sc2O3(Sc2O3:3mol%)、ZrO2−Yb2O3(Yb2O3:8mol%)、ZrO2−Nd2O3(Nd2O3:8mol%)、ZrO2−Sc2O3(Sc2O3:8mol%)、ZrO2−Yb2O3(Yb2O3:12mol%)、ZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)、ZrO2−Sc2O3(Sc2O3:12mol%)の各複酸化物粉末の各々に、ジニトロジアミン白金硝酸溶液を加えて混合し、蒸発乾固法によってPtをジルコニウム系複酸化物に担持させた。
【0047】
これを乾燥させた後、乳鉢で粉砕し、電気炉において500℃の大気雰囲気で2時間加熱焼成を行ってジルコニウム系複酸化物からなるジルコニウム系触媒粉末(Pt担持複酸化物粉末)を得た。この得られたPt担持複酸化物を水およびバインダと混合してスラリーとし、目封止部15によって目封止されたフィルタ本体6にこのスラリーを吸引するとともにエアブローによって余分なスラリーを除去することによりウォッシュコートし、乾燥させてから電気炉により500℃の大気雰囲気で2時間加熱を行って焼成して、フィルタ本体6の内部流路の略全域に酸化触媒層8が形成されたジルコニウム系のサンプルを得た。
【0048】
比較のためのサンプルとして、それぞれジルコニウム酸化物(ZrO2)(第一稀元素化学工業社製)、セリウム酸化物(CeO2)(日揮ユニバーサル社製)、ジルコニウム−セリウム複酸化物(Zr0.63Ce0.37O2)(阿南化成社製)を上記ジルコニウム系複酸化物と同様に、白金(Pt)を担持させ、このPt担持酸化物をスラリーとし、吸引、除去、乾燥、焼成を行って、フィルタ本体6の内部流路の略全域に酸化物触媒層が形成されたサンプルを得た。なお、この比較例の白金担持量は、上記各複酸化物の担持量よりも多めに設定され、それぞれ酸化物50g/L(DPF3の1L当たり)に対して2.0g/Lに設定されている。
【0049】
(カーボン燃焼速度評価実験)
こうして得られた各サンプルにつき、800℃の大気圧条件下で24時間放置するエージング処理を施し、模擬排気ガスを流通させるモデルガス流通触媒評価装置にセットした状態でカーボン燃焼性能評価を調べるカーボン燃焼速度評価実験を行った。
【0050】
この実験としては、PMの燃焼性能を求める指標として、PMの代わりにカーボンブラック粉末(片山化学工業社製)をDPF3に堆積させ、模擬排気ガスを流しながら昇温させた際にDPF3内部でのカーボン燃焼によって排出される、CO2およびCOの濃度を用いて評価を行った。このカーボンブラック粉末の堆積は、10g/L相当のカーボンブラック粉末に10ccのイオン交換水を加え、スターラーを用いて5分間攪拌混合し、十分にカーボンブラック粉末を分散させる。これにサンプルであるフィルタ本体6の上流端側を浸すと同時に、浸した端面と逆側よりアスピレーターにより吸引を行った。この吸引により除去できない水分を、浸した端面側よりエアブローにより除去し、乾燥器にて150℃の温度で2時間かけて乾燥させた。
【0051】
上記モデルガス流通触媒評価装置においては、15℃/minの割合で600℃まで昇温させつつ、酸素ガスおよび水蒸気がそれぞれガスの総流量に対して10体積%含まれ残りが窒素ガス等とされた模擬排気ガスをその空間速度が80000/hとなるように流通させ、DPF3の出口部直後におけるCO,CO2濃度を測定した。そして、このCO,CO2濃度に基づいて次式に定めるカーボンの燃焼速度を求めた。なお、このカーボン燃焼速度は担体(DPF3)1L当たりに燃焼するカーボン量を示している。
【0052】
【数1】
【0053】
この結果を図6に示す。なお、図6は各サンプルについてのカーボン燃焼速度の測定結果をグラフ化したものである。
【0054】
この図6によれば、ジルコニウム系複酸化物によってパティキュレート酸化触媒が構成されたジルコニウム系サンプル(図6中ではZr系サンプル)は、各比較サンプルよりも良好なカーボン燃焼速度が測定された。すなわち、比較サンプルはいずれもそのカーボン燃焼速度が0.45g/hを下回る結果となったが、ジルコニウム系サンプルはいずれもそのカーボン燃焼速度が0.45g/hを上回る結果となった。
【0055】
特に、Pt担持量が0.5g/Lのジルコニウム系サンプルとPt担持量が2.0g/Lの比較サンプルとを比較しても、Pt担持量が少ないジルコニウム系サンプルの方がカーボン燃焼速度が高いことが分かる。すなわち、パティキュレート酸化触媒にジルコニウム系複酸化物を含有させることにより少ないPt担持量でも良好なカーボン燃焼速度を得ることができることが分かる。
【0056】
また、同じジルコニウム系サンプルでも、ジルコニウム(Zr)にイットリウム(Y)を除く希土類金属、例えばイッテルビウム(Yb)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)を含有する場合には、ジルコニウム−イットリウム複酸化物よりも高いカーボン燃焼速度を得ることができることが分かる。
【0057】
このようにジルコニウム系サンプルが比較サンプルに対して良好なカーボン燃焼速度が得られたのは、ジルコニウム系サンプルについてはパティキュレート酸化触媒に含まれるジルコニウム系複酸化物が酸素イオン伝導性を有することが最大の要因であると推測される。この酸素イオン伝導性は、次の理由により生じるものと考えられる。すなわち、ジルコニウム系複酸化物には一部が3価の金属に置換されており、ジルコニウムという4価の金属原子による結晶格子に、3価の金属原子で置き換わっているため、図5に示すように酸素欠損部(酸素イオン空孔部)を生じ、この酸素欠損部を通じて酸素イオンが伝導されるものと考えられる。
【0058】
したがって、図6に示すように、ジルコニウム系複酸化物に混合される希土類金属の含有量が高くなると、酸素イオン伝導性が高まることから、カーボン燃焼速度が向上しているものと考えられる。なお、このPMの燃焼メカニズムは上述したのでここでは省略する。
【0059】
(B)評価実験2(Pt担持用担体の配合比率変化がライトオフ性能に与える影響)
次に、パティキュレート酸化触媒におけるPt担持用担体としてのジルコニウム系複酸化物およびアルミナの配合比率の変化がライトオフ性能に与える影響を実験により調べた。具体的には、Pt担持ジルコニウム系複酸化物とPt担持アルミナとの配合比率を変化させたサンプルを複数個調製し、各サンプルにつき模擬排気ガスを流通させ、このときのライトオフ性能を評価した。このライトオフ性能の評価は、各サンプルについて、DPF3の下流側で検出されるガスの各成分(HC、CO)濃度が上記模擬排気ガスにおける当該成分濃度の半分になった時点(浄化率が50%になった時点)のDPF3の入口での模擬排気ガス温度(ライトオフ温度)に基づいて行っている。
【0060】
サンプルの調製にあたっては、まずアルミナとジルコニウム系複酸化物としてのZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)とのそれぞれに触媒貴金属としての白金(Pt)を担持させる。このPt担持量は、原則としてアルミナに対する担持量とジルコニウム系複酸化物に対する担持量とが等しくなるように設定されている。ただし、後述するように、アルミナの配合比率が0質量%である場合にはPt担持ジルコニウム系複酸化物にアルミナに担持させる分のPtをそのまま混合させるものとし、一方、アルミナの配合比率が100質量%である場合にはPt担持アルミナにジルコニウム系複酸化物に担持させる分のPtをそのまま混合するものとしている。
【0061】
そして、各Pt担持酸化物を質量比(Al2O3:ZrO2−Nd2O3)で0:1,1:2,1:1,2:1,1:0の割合で、言い換えるとパティキュレート酸化触媒の全体に対するアルミナの配合比率を0質量%(ZrO2−Nd2O3のみ50g/L)、約33質量%(Al2O3が16.7g/L、ZrO2−Nd2O3が33.3g/L)、50質量%(Al2O3が25g/L、ZrO2−Nd2O3が25g/L)、約67質量%(Al2O3が33.3g/L、ZrO2−Nd2O3が16.7g/L)、100質量%(Al2O3のみ50g/L)と変化させて混合し、これらの混合粉末をそれぞれDPF3の内部流路にコーティングさせて5種類のサンプルを調製した。各酸化物に対するPt担持方法や、各酸化物を混合して得られた混合粉末のDPF3の内部流路に対するコーティング方法は、上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)におけるサンプルと同様であり、ここではその説明を省略する。
【0062】
上記方法により得られた各サンプルをモデルガス流通触媒評価装置にセットし、模擬排気ガスをその空間速度が50,000/hとなるように流通させるとともに、15℃/minの割合で昇温させ、DPF3の出口部直後におけるHC,CO濃度が50%となった時点でのDPF3の入口側の模擬排気ガス温度を測定した。このときの模擬排気ガスは、酸素ガス(O2)、水蒸気(H2O)、二酸化炭素ガス(CO2)、炭化水素(HC)、一酸化炭素ガス(CO)、一酸化窒素ガス(NO)、窒素ガス(N2)によって構成され、ここでは各ガスがこの順番でガスの総流量に対して、10体積%、10体積%、4.5体積%、200ppmC(カーボン換算)、400ppm、500ppm、その残り分、それぞれ含まれている。
【0063】
このライトオフ性能の測定結果を図7に示す。この図7によれば、パティキュレート酸化触媒の総質量に対するPt担持アルミナ(Pt/Al2O3)の割合が高くなればなるほど、ライトオフ温度が低下していることが分かり、したがってライトオフ性能を向上させるためにはPt担持アルミナの割合を増加させることが好ましいことが分かった。このようにパティキュレート酸化触媒におけるPt担持量の総量が等しいにもかかわらず、ライトオフ性能が変化しているのは、ジルコニウム系複酸化物とアルミナのそれぞれに担持された触媒貴金属のうち、アルミナに担持された触媒貴金属の方が一酸化炭素ガス等の有害ガス(CO、HC)を酸化させる機能が強いためと推測される。
【0064】
したがって、ライトオフ性能を低下させる観点からはパティキュレート酸化触媒におけるPt担持アルミナの量を増量させることが好ましいが、反面、ジルコニウム系複酸化物の量が低下すると、カーボン燃焼速度の低下も懸念される。したがって、カーボン燃焼速度を維持させつつ、ライトオフ性能を改善するためには、パティキュレート酸化触媒(Pt担持アルミナとPt担持ジルコニウム系複酸化物とを加えたもの)におけるPt担持アルミナの割合は、パティキュレート酸化触媒の総質量に対して40質量%以上で、90質量%以下が好ましく、さらに好ましくは50質量%以上で、80質量%以下がよい。
【0065】
(C)評価実験3(Pt担持率の変化がライトオフ性能および浄化性能に与える影響)
続いて、パティキュレート酸化触媒におけるPt担持用担体としてのジルコニウム系複酸化物とアルミナとの配合比率を一定にして、このジルコニウム系複酸化物とアルミナとに担持させる触媒貴金属の割合を変化させ、この変化がライトオフ性能および浄化性能に与える影響を実験により調べた。具体的には、触媒貴金属としてのPtを担持させるジルコニウム系複酸化物とアルミナとの配合比率を1:1に固定し、ジルコニウム系複酸化物とアルミナとに予め担持させるPtの総担持量を一定にして各担体(ジルコニウム系複酸化物およびアルミナ)への担持量を変化させたサンプルを複数個調製し、各サンプルにつき模擬排気ガスを流通させ、このときのライトオフ性能および浄化性能を評価した。このライトオフ性能の評価は上記評価実験2と同様であり、一方、浄化性能の評価は、DPF3の入口での模擬排気ガス温度が300℃であるときのCO,HC各成分の浄化率に基づいて行っている。
【0066】
サンプルの調製にあたっては、まずアルミナとジルコニウム系複酸化物としてのZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)とをそれぞれ同量の25g/Lずつ用意し、各担体粉末のそれぞれに総量が0.5g/L(DPF3の1Lあたりの質量)の触媒貴金属としての白金(Pt)を所定の割合で分配して担持させる。すなわち、担体としてのアルミナ粉末に総量が0.5g/LのPtのうちの何割かを担持させ、もう一方の担体であるジルコニウム系複酸化物の粉末に残りのPtを担持させる。そして、各Pt担持酸化物を混合し、これらの混合粉末をそれぞれDPF3の内部流路にコーティングさせることによってサンプルを調製した。各酸化物に対するPt担持方法や、各Pt担持酸化物を混合して得られた混合粉末のDPF3の内部流路に対するコーティング方法は、上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)におけるサンプルと同様であり、ここではその説明を省略する。
【0067】
そして、上記調製方法においてアルミナに担持させるPtの割合(Pt担持率)を変化させ、以下の5種類のサンプルを得た。
・(サンプルNo.1)
アルミナへのPt担持率=0%としたもの。すなわち、0.5g/LのPtを全てジルコニウム系複酸化物に担持させ、アルミナにはPtを担持させないもの。
・(サンプルNo.2)
アルミナへのPt担持率=25%としたもの。すなわち、0.375g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に、0.125g/LのPtをアルミナにそれぞれ担持させたもの。
・(サンプルNo.3)
アルミナへのPt担持率=50%としたもの。すなわち、0.25g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に、0.25g/LのPtをアルミナにそれぞれ担持させたもの。
・(サンプルNo.4)
アルミナへのPt担持率=75%としたもの。すなわち、0.125g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に、0.375g/LのPtをアルミナにそれぞれ担持させたもの。
・(サンプルNo.5)
アルミナへのPt担持率=100%としたもの。すなわち、ジルコニウム系複酸化物にはPtを担持させず、0.5g/LのPtを全てアルミナに担持させたもの。
【0068】
そして、上記各サンプルをモデルガス流通触媒評価装置にセットし、ライトオフ性能(ライトオフ温度)および浄化性能(300℃における浄化率)を測定した。
【0069】
この測定結果を図8に示す。この図8によれば、アルミナに対するPtの担持率が高くなれば高くなるほど、ライトオフ温度が低下していることが分かるとともに浄化率が向上していることが分かる。したがって、ライトオフ性能および浄化性能を向上させるためにはアルミナに対するPt担持率を増加させることが好ましいことが分かった。このようにパティキュレート酸化触媒におけるPt担持量の総量が等しいにもかかわらず、ライトオフ性能や浄化性能が変化しているのは、ジルコニウム系複酸化物とアルミナのそれぞれに担持された触媒貴金属のうち、アルミナに担持された触媒貴金属の方が一酸化炭素ガス等の未燃ガス(CO、HC等)を酸化させる機能が強いためと推測される。
【0070】
(D)評価実験4(Pt担持率の変化がPM燃焼性能に与える影響)
上記評価実験3で用いた5種類のサンプル(No.1〜No.5)と同じサンプルを用いてカーボン燃焼速度評価実験を行うことにより、アルミナに対するPt担持率の変化がジルコニウム系複酸化物のPM燃焼性能に与える影響について調べた。この実験は、上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)における条件に基づいて行った。
【0071】
この実験結果を図9に示す。この図9によれば、アルミナに対するPt担持率が0%のときには、アルミナを混合せずに単にジルコニウム系複酸化物であるZrO2−Nd2O3にPtを担持させた場合のカーボン燃焼速度と略同等となることが分かった。そして、このアルミナに対するPt担持率を0%から増加させると、カーボン燃焼速度は一旦低下してからアルミナに対するPt担持率が25%周辺において上昇してその担持率が75%辺りでピークを迎え、再び低下して遂には最低レベルに至ることが分かった。
【0072】
このようにアルミナに対するPt担持率を0%から増加させると、カーボン燃焼速度が一旦低下するのは、ジルコニウム系複酸化物に担持されたPtがカーボン燃焼速度に大きく関与していると考えられ、このジルコニウム系複酸化物に対するPt担持量が減少していることに基づくものと推測される。一方、アルミナに対するPt担持率が25%からさらに増加させることによりカーボン燃焼速度が一転上昇するのは次の理由によるものと考えられる。
【0073】
すなわち、Pt担持ジルコニウム系複酸化物(Pt担持ZrO2−Nd2O3)によってPMとしてのカーボンが燃焼(酸化)され、このカーボン燃焼時における不完全燃焼ガスがPt担持アルミナによって酸化(完全燃焼)される場合に反応熱を生じ、この反応熱に基づいてジルコニウム系複酸化物が活性化され、カーボン燃焼速度の上昇に寄与するからと推測される。なお、アルミナに対するPt担持率が低い間は、このPt担持アルミナにおける反応熱によるジルコニウム系複酸化物の活性効果が十分に得られず、このためカーボン燃焼速度が一旦低下するものと考えられる。
【0074】
したがって、アルミナとジルコニウム系複酸化物とに適当な割合で触媒貴金属を担持させるとカーボン燃焼速度を上昇させつつ、ライトオフ性能および浄化性能を十分に改善することが分かる。具体的に、この図9によれば、アルミナに対するPt担持率は40%以上で、90%以下が好ましく、さらに好ましくは50質量%以上で、80質量%以下がよい。中でも、アルミナに対するPt担持率が60%〜80%の範囲内に設定するとカーボン燃焼速度を極めて高い状態で維持することができ、PMをより効率的に燃焼させることができる。
【0075】
(E)評価実験5(触媒貴金属としてのPdの追加がライトオフ性能に与える影響)
これまでの評価実験1〜4では、アルミナおよびジルコニウム系複酸化物の各担体に、触媒貴金属としていずれも白金(Pt)を担持させたが、この評価実験5では、上記各担体のうちのアルミナに、白金(Pt)に加えてパラジウム(Pd)を担持させ、このパラジウム(Pd)の追加がライトオフ性能に与える影響について調べた。具体的には、アルミナにPtおよびPdを担持させたサンプル(ただしジルコニウム系複酸化物にはPtのみを担持させた)に対してライトオフ性能(ライトオフ温度)の測定を行い、これをアルミナおよびジルコニウム系複酸化物の各担体にこれまで通りPtのみを担持させたサンプルにおけるライトオフ性能と比較した。
【0076】
サンプルの調製にあたっては、まず、ジルコニウム系複酸化物としてのZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)とアルミナとをそれぞれ同量の25g/Lずつ用意し、ジルコニウム系複酸化物にはPtのみを担持させる一方、アルミナにはPtおよびPdの2種類の触媒貴金属を担持させる。具体的に、PtおよびPdをアルミナに担持させる作業は、アルミナの粉末にジニトロジアミン白金硝酸溶液およびジニトロジアミンパラジウム硝酸溶液を同時に加えて混合し、蒸発乾固法で乾固させることにより行った。そして、これを乾燥させて乳鉢で粉砕し、電気炉において500℃の大気雰囲気で2時間加熱焼成を行うことにより、PtおよびPdをともに担持したアルミナの粉末(Pt・Pd担持アルミナ)を得た。なお、このようにして得られたPt・Pd担持アルミナと上記Pt担持ジルコニウム系複酸化物との混合粉末をDPF3の内部流路にコーティングする方法は上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)におけるサンプルと同様であり、ここではその説明を省略する。そして、このようにして得られたサンプル(PtおよびPdをアルミナに担持させたサンプル)と比較するためのものとして、アルミナおよびジルコニウム系複酸化物の各担体にこれまで通りPtのみを担持させたサンプルも用意し、以下の2種類のサンプルを得た。
・(サンプルNo.6)
0.250g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に、0.750g/LのPtをアルミナにそれぞれ担持させたもの。すなわち、上記評価実験3におけるサンプルNo.4と比較して、ジルコニウム系複酸化物およびアルミナに担持させるPtの量をそれぞれ2倍に増やしたもの。
・(サンプルNo.7)
0.125g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に担持させる一方、アルミナには0.375g/LのPtおよび0.3g/LのPdを担持させたもの。すなわち、上記評価実験3におけるサンプルNo.4と比較して、アルミナに担持させる触媒貴金属として0.3g/LのPdをさらに追加したもの。
【0077】
そして、これら各サンプルをモデルガス流通触媒評価装置にセットし、ライトオフ性能(ライトオフ温度)を測定した。その結果を図10に示す。なお、この図10では、上記評価実験3でサンプルNo.4について測定したライトオフ性能(ライトオフ温度)についても合わせて表記している。この図10によれば、Ptに加えてPdをアルミナに担持させたサンプルNo.7のライトオフ温度が最も低く、よってライトオフ性能が最も優れていることが分かる。一方、触媒貴金属がPtのみであるサンプルNo.6は、サンプルNo.4の2倍のPt担持量を有するのにも関わらず、ライトオフ性能の改善がわずかしか見られない。これに対し、PtおよびPdをアルミナに担持させたサンプルNo.7は、トータルの触媒貴金属の量がサンプルNo.6よりも少ないにも関わらず(サンプルNo.6のトータルのPt担持量1.0g/Lに対し、サンプルNo.7のトータルのPt・Pd担持量は0.8g/Lと少ない)、サンプルNo.6と比較してライトオフ性能が大幅に向上している。このことから、ライトオフ性能をより効果的に改善するには、Ptに加えてさらにPdをアルミナに担持させることが、Ptの担持量をむやみに増やすよりも有効であることが分かった。
【0078】
(F)評価実験6(PtおよびPdの担持形態の相違がライトオフ性能に与える影響)
上記評価実験5では、触媒貴金属としてのPtとPdとを同じアルミナに担持(共存担持)させたサンプルを用いて実験を行ったが、この評価実験6では、PtとPdとを異なるアルミナに別々に担持(分離担持)させたサンプルを用いて実験を行うことにより、PtおよびPdの担持形態の相違がライトオフ性能に与える影響について調べた。
【0079】
サンプルの調製にあたっては、まず、ジルコニウム系複酸化物としてのZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)とアルミナとをそれぞれ同量の25g/Lずつ用意し、ジルコニウム系複酸化物にはPtのみを担持させる一方、アルミナにはPtとPdの2種類の触媒貴金属を別々に担持(分離担持)させる。具体的に、PtとPdとを分離担持させる作業は、アルミナの粉末を所定の質量比で2つに分け、このうちの一方のアルミナにジニトロジアミン白金硝酸溶液を加えて混合するとともに、残りのアルミナにジニトロジアミンパラジウム硝酸溶液を加えて混合し、それぞれを蒸発乾固法で乾固させることにより行った。そして、これらを乾燥させて乳鉢で粉砕し、電気炉において500℃の大気雰囲気で2時間加熱焼成を行うことにより、Ptを担持したアルミナの粉末(Pt担持アルミナ)とPdを担持したアルミナの粉末(Pd担持アルミナ)とを別々に得た。なお、このようにして得られたPt担持アルミナおよびPd担持アルミナと、上記Pt担持ジルコニウム系複酸化物とからなる混合粉末をDPF3の内部流路にコーティングする方法は、上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)におけるサンプルと同様であり、ここではその説明を省略する。
【0080】
そして、上記調製方法においてPt担持アルミナとPd担持アルミナの質量比を変化させることにより、以下の3種類のサンプルを得た。具体的には、各アルミナに担持させるPtおよびPdの量は0.375g/Lと0.3g/Lでそれぞれ固定し、担体としてのアルミナの質量比を変化させることにより(換言すれば、PtとPdとの担持濃度を変化させることにより)下記3種類のサンプルを得た。なお、ジルコニウム系複酸化物には0.125g/LのPtを担持させた。すなわち、この評価実験6で用いる各サンプルは、PtとPdとを異なるアルミナに分離担持させた点を除けば、上記評価実験5のサンプルNo.7と触媒貴金属の種類や量において同一である。
・(サンプルNo.8)
Pt担持アルミナとPd担持アルミナとの質量比を3:1としたもの。
・(サンプルNo.9)
Pt担持アルミナとPd担持アルミナとの質量比を1:1としたもの。
・(サンプルNo.10)
Pt担持アルミナとPd担持アルミナとの質量比を1:3としたもの。
【0081】
そして、これら各サンプルをモデルガス流通触媒評価装置にセットし、ライトオフ性能(ライトオフ温度)を測定した。その結果を図11に示す。この図11によれば、サンプルNo.8〜No.10のいずれについても、上記評価実験5においてPtとPdとを同じアルミナに共存担持させたサンプルNo.7(図10)と比較して、特にCOに対するライトオフ温度が大幅に低下してライトオフ性能が飛躍的に向上していることが分かる。なお、このような効果は、Pt担持アルミナとPd担持アルミナとの質量比が1:1であるNo.9のサンプルにおいて最も顕著であった。このように、PtとPdとを異なるアルミナに分離担持させることにより、PtとPdとを同じアルミナに共存担持させるよりも飛躍的にライトオフ性能を改善できることが分かった。
【0082】
(G)評価実験7(一酸化炭素の浄化性能の比較)
この評価実験7では、上記評価実験3〜6におけるサンプルNo.1〜No.10を用いて、PM燃焼時に発生する一酸化炭素(CO)の量について調べた。具体的には、各サンプルの触媒層表面に模擬PMであるカーボンブラックをそれぞれ堆積させ、模擬排気ガス(成分等は上記評価実験1と同様)を流通させながら上記カーボンを雰囲気温度590℃下で燃焼させるとともに、当該燃焼に伴って発生するCOの量をDPF3の出口部直後において測定した。
【0083】
この測定結果を図12に示す。なお図12では、サンプルNo.1について測定されたCOの量を1としたときの相対値を記載している。この図12によれば、PtとPdとを異なるアルミナに分離担持させたサンプルNo.8〜No.10におけるCO量が、基準であるサンプルNo.1におけるCO量と比較してわずか15%程度にまで低減されており、COの浄化性能の点でこれらサンプルNo.8〜No.10が最も優れていることが分かる。また、この次にCOの浄化性能に優れているのはPtとPdとを同じアルミナに共存担持させたサンプルNo.7であり、このサンプルNo.7のCO量(0.33)は、上記サンプルNo.8〜No.10に比べて2倍程度に増加しているものの、触媒貴金属がPtのみである他のどのサンプル(No.1〜No.6)におけるCO量よりも小さい値に抑えられている。以上のことから、Ptに加えてさらにPdをアルミナに担持させること(より好ましくはPtとPdとを分離担持させる)ことが、CO浄化性能の改善にも有効であることが分かった。
【0084】
以上、当実施形態のDPF3によれば、このDPF3に堆積したPMを効率的かつ短期間に燃焼させることができる。すなわち、パティキュレート酸化触媒に含有されるジルコニウム系複酸化物が酸素イオン伝導性を有することから、DPF3内部にPMが付着してその表面に局部的に酸素濃度が低い部位を生ずると、当該部位に酸素濃度の高いところから酸素イオンが当該複酸化物を介して移動し、活性酸素(O2−)としてこの酸素欠乏部位に酸素が供給され、PMを継続的かつ効率的に燃焼させることができ、DPF3の再生(PMの燃焼浄化)にあたり、エンジン或いはDPFに燃料を供給する場合でもこの燃料噴射量または噴射期間を減少させることができ、これによりフィルタの再生を効率的かつ短期間に行うことができ、燃費を向上させることができる。
【0085】
しかも、パティキュレート酸化触媒に含まれるPtなどの触媒貴金属について、従来のセリウム−ジルコニウム複酸化物と同等の燃焼速度を実現するために使用する量を低減することができ、触媒貴金属の使用量を節約してこのパティキュレート酸化触媒、ひいてはディーゼルパティキュレートフィルタを低コストで製造可能となる。
【0086】
また、このような酸素イオン伝導性を有する材料を用いてこのように効率的にPMを燃焼させると、PM燃焼量が増加し、この燃焼量の増加に伴ってPMの不完全燃焼による一酸化炭素の排出割合の増加が懸念される。しかも、実験によりパティキュレート酸化触媒に酸素イオン伝導性を有する複酸化物が含まれていると、特に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)について十分に酸化させることができず、従来のセリウム−ジルコニウム複酸化物に比べてライトオフ性能および通常運転時における浄化性能に劣る場合があることが判明したが、上記実施形態のDPF3によれば、パティキュレート酸化触媒にPtなどの触媒貴金属を担持させたアルミナを含み、この触媒貴金属によってジルコニウム系複酸化物によって十分に酸化されなかった一酸化炭素や炭化水素について完全に燃焼させることができ、パティキュレート酸化触媒としてのライトオフ性能、および浄化性能を十分に改善することができる。特に、冷間運転時にはこの触媒貴金属担持アルミナによる一酸化炭素等の燃焼による反応熱よって更に雰囲気温度を上昇させてジルコニウム系複酸化物をより活性化させることができ、これにより一層酸化反応を活性化させることができる。
【0087】
なお、以上に説明したDPF3は、本発明に係るDPFの一実施形態であって、その具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0088】
例えば、上記実施形態におけるDPF3の上流側(排ガス流れ方向上流側)にHC,COおよびNOを酸化する酸化触媒を設けるようにしてもよく、この場合にはこの酸化触媒から排出されるNO2によってPMをさらに燃焼させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】ディーゼルエンジンの排気通路にDPFおよび酸化触媒を組み付けた状態を示す説明図である。
【図2】当実施形態のDPFを模式的に示す正面図である。
【図3】同DPFを模式的に示す縦断面図である。
【図4】DPFの多孔質壁を拡大して示す断面図である。
【図5】PMの燃焼メカニズムを示す説明図である。
【図6】各Pt担持粉末から形成されたパティキュレート酸化触媒によるカーボン燃焼速度を示すグラフである。
【図7】アルミナとジルコニウム系複酸化物との配合比とライトオフ性能との関係を示すグラフである。
【図8】アルミナとジルコニウム系複酸化物に対するPt担持率とライトオフ性能および浄化性能との関係を示すグラフである。
【図9】アルミナとジルコニウム系複酸化物に対するPt担持率とカーボン燃焼速度との関係を示すグラフである。
【図10】PtおよびPdをアルミナに担持させたサンプルにおけるライトオフ性能と、Ptのみをアルミナに担持させたサンプルにおけるライトオフ性能とを比較するためのグラフである。
【図11】PtおよびPdを異なるアルミナに分離担持させた各サンプルにおけるライトオフ性能を示すグラフである。
【図12】PM燃焼時に発生するCOの量を各サンプルについて比較するための表である。
【符号の説明】
【0090】
1 排気通路
3 DPF
6 フィルタ本体
7 酸化触媒層
15 目封止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気通路に配設されるとともに排気ガスを流通させることによりパティキュレートを捕集し、このパティキュレートをパティキュレート酸化触媒によって燃焼浄化させるディーゼルパティキュレートフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレート(以下、PMという)は環境に与える影響が大きいため、このPMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFという)が排気通路に設けられた自動車が増加してきている。このようにDPFを設ける場合、エンジン出力や燃費を維持するために、DPFに捕集されたPMを除去する必要がある。
【0003】
そのための手段として、例えばDPFとして一般に用いられているウォールフロータイプの円筒状のフィルタにおいて、排気ガス流出側の流路における内壁面に白金(Pt)担持アルミナおよびNOxトラップ材が配設され、NOxトラップ材に吸収されていたNO2によってPMを燃焼させるものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、フィルタの排気ガス流路における内壁面に酸素吸蔵能を有するセリウム−ジルコニウム複酸化物が塗布されるとともに該複酸化物に酸化触媒作用を有する触媒貴金属を担持させ、瞬間的に切り換えられたリッチ空燃比雰囲気で上記複酸化物から活性酸素が放出され、この活性酸素によってPMを燃焼させる技術も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−94434号公報
【特許文献2】特開2003−334443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの特許文献に記載のDPFでは、比較的低い燃焼温度でPMを燃焼させることができるとされているものの、さらにPM燃焼温度を低下させるために、効率的かつ短期間にPMを排除してDPFを再生することが求められている。
【0006】
ところで、この種のDPFでは、その上流側にHC等を酸化させる酸化触媒が設けられることが多く、ディーゼルエンジンにおけるリッチパージ制御等により増量された燃料をこの酸化触媒で燃焼させることによりDPFに導入される排気ガス温度を上昇させ、PM燃焼を促進させる手段などが講じられている。したがって、この増量された燃料噴射期間を短縮させ、或いは燃料噴射量を低減するためにもPMを酸化燃焼させるDPFの再生を短期間に効率よく行うことが求められている。ここで、PMの酸化燃焼を短期間に効率よく行うために、白金等の触媒貴金属などを担体に担持させ、この触媒貴金属担持量を増量することも考えられるが、触媒貴金属の担持量を増量させると、コスト増になるばかりでなく、触媒貴金属の分散度合が低下してシンタリングが生じ易くなることも懸念される。
【0007】
一方、このようにPM燃焼量が多くなるのに伴い、PMが不完全燃焼することにより一酸化炭素の排出量が増加することも懸念され、このPMの不完全燃焼に対する対策が講じられることも求められる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、触媒貴金属の使用量を抑えつつ、効率的にPMを燃焼させるとともに、一酸化炭素の排出を抑制し得るディーゼルパティキュレートフィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究の結果、ジルコニウムを主成分とするとともにセリウムを除く希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物が、酸素イオン伝導性を有し、このジルコニウム系複酸化物を、上記酸素吸蔵能を有するセリウム−ジルコニウム複酸化物に替えてパティキュレート酸化触媒に含有させることにより、PM(パティキュレート)の酸化反応の継続性を向上させることができ、これによりPM燃焼速度を向上させてPMを効率的かつ短期間に燃焼させることができることを見出すとともに、このPMの不完全燃焼ガスを触媒貴金属担持アルミナで確実に酸化させることにより不完全燃焼ガスの排出を可及的に抑制し得ることを見出し、本件発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)は、ディーゼルエンジンの排気通路に配設され、パティキュレートを燃焼させるための触媒貴金属を有するパティキュレート酸化触媒が設けられたディーゼルパティキュレートフィルタにおいて、上記パティキュレート酸化触媒はジルコニウムを主成分とするとともにセリウムを除く希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物とアルミナとを含み、上記ジルコニウム系複酸化物およびアルミナはそれぞれ上記触媒貴金属を担持していることを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、触媒貴金属が担持されたジルコニウム系複酸化物によって、フィルタに堆積したPMを効率的かつ短期間に燃焼させることができる。これは次の理由によるものと推測される。
【0012】
すなわち、上記ジルコニウム系複酸化物は酸素イオン伝導性を有することから、DPF内部にPMが付着してその表面に局部的に酸素濃度が低い部位を生ずると、当該部位に酸素濃度の高いところから酸素イオンが当該複酸化物を介して移動し、活性酸素(O2−)となって順次放出される。
【0013】
ジルコニウム系複酸化物には触媒貴金属が担持されているため、この触媒貴金属によるPMの酸化反応にこの活性酸素が利用され、つまりこの活性酸素がPMを酸化して火種を形成する。この火種が形成されると、その周囲の酸素が欠乏するが、上述したようにジルコニウム系複酸化物を介して酸素イオンが順次移動し、この欠乏部位に活性酸素が継続的に供給されるので、この火種を中心にして燃焼領域が周囲に拡大することになる。
【0014】
このように、ある部位で生じた火種が継続的に燃焼して燃焼領域を拡大させるので、低い温度でもPMを効率的に酸化燃焼させることができると考えられる。このため、DPFの再生(PMの燃焼浄化)にあたり、エンジン或いはDPFに燃料を供給する場合でもこの燃料噴射量を減少させることができ、これによりフィルタの再生を効率的かつ短期間に行うことができ、燃費を向上させることができる。
【0015】
しかも、後に実験データで示すように、パティキュレート酸化触媒に含まれる触媒貴金属について、セリウム−ジルコニウム複酸化物と同等の燃焼速度を実現するための使用量を低減することができ、このパティキュレート酸化触媒、ひいてはディーゼルパティキュレートフィルタを低コストで製造可能となる。
【0016】
また、このような酸素イオン伝導性を有する材料を用いてこのように効率的にPMを燃焼させると、PM燃焼量が多くなり、この燃焼量の増加に伴ってPMの不完全燃焼による一酸化炭素の排出割合の増加が懸念される。しかも、実験によりパティキュレート酸化触媒に酸素イオン伝導性を有する複酸化物が含まれていると、特に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)について十分に酸化させることができず、従来のセリウム−ジルコニウム複酸化物に比べてライトオフ性能および通常運転時における浄化性能に劣る場合があることが判明した。
【0017】
しかしながら、この発明によれば、パティキュレート酸化触媒に触媒貴金属を担持させたアルミナを含み、この触媒貴金属によってジルコニウム系複酸化物によって十分に酸化されなかった一酸化炭素や炭化水素について完全に燃焼させることができ、パティキュレート酸化触媒としてのライトオフ性能、および浄化性能を十分に改善することができる。特に、冷間運転時にはこの触媒貴金属担持アルミナによる一酸化炭素の燃焼熱によって更に雰囲気温度を上昇させてジルコニウム系複酸化物をより活性化させることができるものと考えられ、これにより一層酸化反応が活性化される。
【0018】
なお、この発明においてジルコニウム系複酸化物の希土類金属からセリウムを除外しているのはセリウム−ジルコニウム複酸化物は主に酸素吸蔵材として機能し酸素イオン伝導性が小さいためである。
【0019】
この場合、上記ジルコニウム系複酸化物は、セリウムを除く希土類金属が含まれていればよいが、カーボン燃焼速度を向上させてより効率的にPMを燃焼させる観点から、このジルコニウム系複酸化物にイットリウムを除く希土類金属が含まれているのが好ましい(請求項2)。
【0020】
この発明において、上記アルミナにおける触媒貴金属の担持量は、特に限定されるものではないが、後述する実験データで明らかになるように、ライトオフ性能および浄化性能をより効果的に改善するためには、この担持量は、触媒貴金属の総質量に対して40質量%以上90質量%以下の範囲に設定されているのがよく(請求項3)、さらに好ましくは触媒貴金属の総質量に対して50質量%以上80質量%以下に設定されているのがよい(請求項4)。
【0021】
上記アルミナに担持される触媒貴金属としては、Ptを例示することができる(請求項5)。そして、後述する実験データで明らかになるように、アルミナに担持される触媒貴金属として上記PtにさらにPdを追加することが、ライトオフ性能や、PMが燃焼した際に生じる一酸化炭素の浄化性能を改善する点で好ましい(請求項6)。さらにこの場合、上記PtとPdとは、異なるアルミナに別々に担持されていることが、より好ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0022】
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、触媒貴金属の使用量を抑えることにより製造コストを抑制しつつ、フィルタに堆積されたPMを効率的かつ短期間に燃焼させることができるとともに、ライトオフ性能や浄化性能を十分に改善することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。図1はディーゼルエンジンの排気通路1にDPF3を組み付けた状態で示している。この図において、排気通路1を構成する排気管は、図外のディーゼルエンジン本体に排気マニホールドを介して接続される。そして、ディーゼルエンジン本体から排出される排気ガスは、白抜き矢印で示すように、排気通路1中を図1で左側から右側へ流れる。
【0024】
上記排気通路1には、排気ガス中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼルパティキュレートフィルタ)3が設けられている。図2および図3はこのDPF3を模式的に表す説明図である。
【0025】
上記DPF3は、外形が円筒状に形成された所謂ウォールフロータイプのフィルタであって、コーディエライトやSiC,Si3N4等のセラミックスにより、多数の流通孔5a(図4参照)が形成された多孔質壁5で区画して排気経路に沿って互いに平行に延びる多数のセル4(通路)を有するハニカム状に形成されたフィルタ本体6と、千鳥状に一部のセル4bの上流端側と他のセル4aの下流端側とを目封止する目封止部15とを備える。したがって、DPF3は、図3に矢印で示すように、上流端側が開口した上流側セル4aから流入した排気ガスが多孔質壁5を通って下流端側が開口した下流側セル4bへ流れて排出され、その間にPMが捕集されるようになっている。なお、このDPF3に替えて、炭化ケイ素等の耐熱性材料を用いた、従来から知られている三次元網目構造担体を用いるものであってもよい。
【0026】
この排気ガスが流通するDPF3の内部流路には、図4に示すように、その内壁面にPMを燃焼させるパティキュレート酸化触媒がコーティングされることにより、酸化触媒層8が形成されている。パティキュレート酸化触媒には、PMを燃焼させるための触媒貴金属と、この触媒貴金属を担持する担体として、ジルコニウム(Zr)を主成分とするジルコニウム系複酸化物とアルミナ(Al2O3)とが含まれている。アルミナはLa等の希土類金属で安定化されたものが耐熱性の点で好ましく、さらには比表面積として250m2/g以上を有するものが触媒貴金属のシンタリングを防止する上で好ましい。なお、上記ジルコニウム系複酸化物とアルミナとを混合して用いる場合、これらジルコニウム系複酸化物およびアルミナをともに10g/L〜50g/Lの範囲で含有させることが好ましい。これは、ジルコニウム系複酸化物の含有量が上記範囲以下であるとPM燃焼性能が充分に発揮されず、また、アルミナの含有量が上記範囲以下であるとPtやPdを担持する場合にこれら触媒貴金属の分散度合が低くなり、その結果ライトオフ性能およびPM燃焼の際に生じる一酸化炭素の浄化性能の向上度合いが芳しくなくなるためであり、さらには、ジルコニウム系複酸化物およびアルミナの含有量が上記範囲以上であると、DPF3にパティキュレートが捕集堆積した場合に背圧が高くなってしまうためである。これらのアルミナおよびジルコニウム系複酸化物はそれぞれ所定量の触媒貴金属を担持させた後に混合されてDPF3の内部流路にコーティングされている。なお、このパティキュレート酸化触媒から構成される酸化触媒層8はフィルタ本体6の内部流路の全域に亘って形成されるものであってもよいし、内部流路の上流側、特に上流側セル4aおよび流通孔5aの内壁面に形成されるものであってもよい。
【0027】
触媒貴金属は、白金(Pt),パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等から選択される少なくとも一種が例示され、例えば白金(Pt)について上記複酸化物にジニトロジアミン白金硝酸溶液を加えて混合し、蒸発乾固法によってこの複酸化物に担持される。ジルコニウム系複酸化物およびアルミナ(Al2O3)のそれぞれには、同種の触媒貴金属、例えば後述する実施例ではそれぞれに白金(Pt)が担持されている。この複酸化物に対する触媒貴金属の担持量は、例えば白金(Pt)についてジニトロジアミン白金硝酸溶液の濃度や量を調整することによって調節することができる。なお、担持する触媒貴金属は異種のものであってもよい。
【0028】
ジルコニウム系複酸化物は、その含有物のうちジルコニウム(Zr)の含有率が最大となるように調整され、セリウム(Ce)を除く希土類金属、好ましくはセリウム(Ce)に加えてイットリウム(Y)を除く希土類金属が含まれている。このジルコニウム系複酸化物に含まれる希土類金属は、3価で安定な金属であることが好ましく、上記セリウム(Ce)およびイットリウム(Y)を除く、Sc,Y,La,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luであり、中でもスカンジウム(Sc)、ネオジム(Nd)およびイッテルビウム(Yb)から選択される少なくとも一種の金属であることが好ましい。この希土類金属の中からイットリウム(Y)が除外されるのが好ましいのは、イットリウムを含むジルコニウム系複酸化物が含まれたパティキュレート酸化触媒は後述するようにそのカーボン燃焼速度が従来の酸素吸蔵能の高いセリウム−ジルコニウム複酸化物が含まれたパティキュレート酸化触媒に比べて速いものの、他の希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物が含まれたものに比べて遅く、したがって、カーボン燃焼速度を高めてPMをより効率的に燃焼させる観点から、このジルコニウム系複酸化物にはセリウム(Ce)に加えてイットリウム(Y)も除かれるのが好ましい。
【0029】
なお、上記各複酸化物に含まれる希土類金属からセリウム(Ce)が除外されているのは、セリウムが4価で安定となり、また所定の条件において後述するような酸素イオン伝導性を発揮せず、電子移動媒体として機能する場合があることから、酸素イオン伝導性を有効に発揮させることが困難だからである。
【0030】
この酸化触媒層8を形成するには、上記したようにジルコニウム系複酸化物およびアルミナのそれぞれに同種の触媒貴金属(例えば白金)を担持させた後、この触媒貴金属担持ジルコニウム系複酸化物および触媒貴金属担持アルミナを混合するとともにこの混合酸化物を水およびバインダと混合してスラリーを生成し、このスラリーをフィルタ本体6の内部流路の内壁面にコーティングして、エアブローにより余分なスラリーを除去した後、乾燥、焼成する。この酸化触媒層8の層厚等は、スラリーの粘度や濃度等により調整可能である。
【0031】
なお、酸化触媒層8を形成するパティキュレート酸化触媒に2種以上のジルコニウム系複酸化物あるいはそれ以外の複酸化物が含まれるものであってもよく、その場合には各複酸化物に触媒貴金属が担持されるのが好ましい。この場合には、例えばセリウム(Ce)を主成分とするとともにセリウム(Ce)を除く希土類金属またはアルカリ土類金属が含まれたセリウム系複酸化物を含むものとしてもよい。
【0032】
このパティキュレート酸化触媒に含まれるジルコニウム系複酸化物は、酸素イオン伝導性を有している。この酸素イオン伝導性を有する複酸化物を用いたパティキュレート酸化触媒によってPMを酸化させるメカニズムは次のように推測される。図4は多孔質壁5を拡大して示す断面図であり、図5はPMの酸化メカニズムを示す説明図である。
【0033】
ディーゼルエンジン本体から排気ガスが排出され、DPF3にPMが捕集されると、この酸化触媒層8上にPMとしてのカーボン9が堆積する。このカーボン9は多孔質で酸素と結合しやすい特性を有するため、酸素過剰条件下では、このカーボン9が堆積した酸化触媒層8の表面部分において酸素の放出/脱離が起こり、この表面部分の酸素濃度が低下し、他の部分に対して微視的な酸素濃淡差を生じる。
【0034】
このように酸化触媒層8の表面のある部分の酸素濃度が低下すると、この酸化触媒層8を構成するジルコニウム系複酸化物が酸素イオン伝導性を有するため、酸素濃度が高い複酸化物内部から酸素イオンO2−が当該酸素濃度が低下している表面部分に移動する。この酸素イオンO2−は酸化触媒層8の表面に達して活性酸素となり、その結果、複酸化物表面にカーボンの酸化反応を生じ易いところが局所的に生ずる。
【0035】
そして、反応条件が最も整った部位において、カーボン9の酸化反応が始まる。この酸化反応が始まるとそこに火種10を生じ、この火種10によってその周囲の酸素は欠乏して酸素欠乏空間11が形成される。酸素欠乏状態となると、通常はカーボン9の酸化反応、すなわち火勢が弱まりやがて火種10は消失するが、当実施形態のDPF3ではPM酸化触媒層8を構成するパティキュレート酸化触媒が酸素イオン伝導性を有するジルコニウム系複酸化物を含有して構成されるため、この複酸化物の働きによって酸素欠乏空間11に活性酸素が継続的に供給されることにより、カーボン9の酸化反応は促進され、火種10を中心として燃焼領域が拡大していく。
【0036】
すなわち、酸素過剰雰囲気下では、酸素欠乏空間11とその周囲との間で酸素濃淡差を生じるとともに、この濃度差に基づき酸化触媒層8の複酸化物内部の微視的領域で電荷のアンバランスが生じ、これに伴ってこのPM酸化触媒層8のジルコニウム系複酸化物を介して酸素濃度の高い部分からこの酸素欠乏空間11へと酸素イオンが移動される。そして、この酸素イオンが酸素欠乏空間11に活性酸素として放出され、これによりカーボン9と活性酸素との結合燃焼、すなわち酸化が促進されることになる。したがって、酸化触媒層8の表面の一部で生じた火種10は消失することなく、燃焼領域を拡大させていくので、カーボン9であるPMを効率的かつ短期間に燃焼浄化することができ、またこのためPMの燃焼温度を実質的に低下させることができる。
【0037】
ここで、ジルコニウム系複酸化物に希土類金属としての3価の金属が含まれるので、ジルコニウム系複酸化物の内部では、図5に示すように、ジルコニウムの一部を3価の金属(図中の黒丸で示す)で置換しているため、酸素イオン空孔が存在し、酸素イオンはこの空孔を介して搬送されることになる。なお、この図5においては、アルミナは省略されている。
【0038】
ところで、カーボン9はジルコニウム系複酸化物から放出される活性酸素と反応して、その全てが二酸化炭素となって放出されず、その一部が不完全燃焼して一酸化炭素として放出されることがある。すなわち、PMは一部において不完全燃焼して不完全燃焼ガスを放出し、この不完全燃焼ガスの割合はPM燃焼量が多くなるに伴って増加する。しかも、酸素イオン伝導性を有する複酸化物がパティキュレート酸化触媒に含まれる場合には、例えば従来のセリウム−ジルコニウム複酸化物を含むパティキュレート酸化触媒に比べて一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)の酸化性能に劣り、このためライトオフ性能や通常運転時の浄化性能に劣ることがあるということを実験により知見するに至った。
【0039】
しかしながら、当実施形態のDPF3のように、酸化触媒層8を形成するパティキュレート酸化触媒に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を酸化させるための触媒貴金属が担持されたアルミナ(Al2O3)が含まれているので、このPMの不完全燃焼ガス等は、触媒貴金属担持アルミナと接触してこの触媒貴金属担持アルミナによって直ちに酸化されて一酸化炭素(CO)が二酸化炭素(CO2)に変換されるとともに、炭化水素(HC)が水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に変換されて排出されるものと考えられる。しかも、PMは専らDPF3の内部流路の上流側において捕集燃焼されるとともに、この酸化触媒層8がDPF3の内部流路の略全域にわたって形成されているので、専ら上流側で発生したPMの不完全燃焼ガスが下流側に流れ、下流側セル4bの内壁面に形成された酸化触媒層8における触媒貴金属担持アルミナによって効果的に酸化されると推測される。したがって、当実施形態のDPF3では、雰囲気温度が比較的低い場合でもPMの不完全燃焼ガス等の有毒ガスの排出を大幅に抑制してライトオフ性能および通常運転時の浄化性能を大幅に改善することができる。
【0040】
また、この酸化触媒層8における不完全燃焼ガス酸化反応は、次の理由により、ジルコニウム系複酸化物によるカーボン9の酸化反応に寄与していると推測される。すなわち、触媒貴金属担持アルミナによって不完全燃焼ガスである一酸化炭素ガスの酸化反応が起こると反応熱を生じるとともに、この反応熱に基づいてジルコニウム系複酸化物が活性化されこれによりジルコニウム系複酸化物による酸化反応を促進するものと考えられ、これによりこの酸化触媒層8におけるカーボン燃焼速度を向上させることができるものと考えられる。
【0041】
このような効果を確認するため、DPF3におけるPMの燃焼性能についての評価のために行った実験とその結果を、次に説明する。
【0042】
(A)評価実験1(カーボン燃焼速度評価実験)
ジルコニウム系複酸化物におけるカーボン燃焼速度の評価実験のために、パティキュレート酸化触媒に含まれるジルコニウム系複酸化物の成分および含有比率を変更した複数のサンプルを調製した。すなわち、ジルコニウム系複酸化物について10種類のサンプル、およびこの比較のために3種類のサンプルの触媒層表面にそれぞれ模擬PMであるカーボンブラックを堆積させ、これらについて雰囲気温度が590℃におけるカーボン燃焼速度を測定する実験を行った。
【0043】
なお、ここでは、アルミナ(Al2O3)を混合することなく、触媒貴金属の全量をパティキュレート酸化触媒に含まれる複酸化物または酸化物に担持させたものを用いている。なお、本実験のDPF担体(フィルタ本体6)として、セルの構造が12mil/300cspiの炭化ケイ素製のDPF担体から見かけ体積25ccの円筒形にくり抜いたものを用いた。
【0044】
(サンプル調製方法)
まず、各サンプルの調製方法について説明する。
【0045】
ジルコニウム系サンプルの調製にあたっては、ジルコニウム酸化物に対して各々異なる希土類金属の酸化物を、その含有量を変化させて計10種類のジルコニウム系複酸化物を用意する。これらのジルコニウム系複酸化物は、イオン交換水に混合する各金属の硝酸塩を溶解し、アンモニアにより調整したアルカリ性溶液を滴下し、各金属元素を含む沈殿を生成し、濾過、水洗、乾燥、焼成を行って生成される。そして、これらのジルコニウム系複酸化物に触媒貴金属としての白金(Pt)を担持させる。この白金の担持量は、50g/L(DPF3の1L当たり50g)のジルコニウム系複酸化物に対して0.5g/Lに設定している。一部のサンプルでは図6に示すようにこの白金担持量を50g/Lのジルコニウム系複酸化物に対して1.0g/L、2.0g/Lに設定したものも用意し、それぞれについてカーボン燃焼速度の測定を行っている。
【0046】
すなわち、ZrO2−Y2O3(Y2O3:3mol%)、ZrO2−Yb2O3(Yb2O3:3mol%)、ZrO2−Nd2O3(Nd2O3:3mol%)、ZrO2−Sc2O3(Sc2O3:3mol%)、ZrO2−Yb2O3(Yb2O3:8mol%)、ZrO2−Nd2O3(Nd2O3:8mol%)、ZrO2−Sc2O3(Sc2O3:8mol%)、ZrO2−Yb2O3(Yb2O3:12mol%)、ZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)、ZrO2−Sc2O3(Sc2O3:12mol%)の各複酸化物粉末の各々に、ジニトロジアミン白金硝酸溶液を加えて混合し、蒸発乾固法によってPtをジルコニウム系複酸化物に担持させた。
【0047】
これを乾燥させた後、乳鉢で粉砕し、電気炉において500℃の大気雰囲気で2時間加熱焼成を行ってジルコニウム系複酸化物からなるジルコニウム系触媒粉末(Pt担持複酸化物粉末)を得た。この得られたPt担持複酸化物を水およびバインダと混合してスラリーとし、目封止部15によって目封止されたフィルタ本体6にこのスラリーを吸引するとともにエアブローによって余分なスラリーを除去することによりウォッシュコートし、乾燥させてから電気炉により500℃の大気雰囲気で2時間加熱を行って焼成して、フィルタ本体6の内部流路の略全域に酸化触媒層8が形成されたジルコニウム系のサンプルを得た。
【0048】
比較のためのサンプルとして、それぞれジルコニウム酸化物(ZrO2)(第一稀元素化学工業社製)、セリウム酸化物(CeO2)(日揮ユニバーサル社製)、ジルコニウム−セリウム複酸化物(Zr0.63Ce0.37O2)(阿南化成社製)を上記ジルコニウム系複酸化物と同様に、白金(Pt)を担持させ、このPt担持酸化物をスラリーとし、吸引、除去、乾燥、焼成を行って、フィルタ本体6の内部流路の略全域に酸化物触媒層が形成されたサンプルを得た。なお、この比較例の白金担持量は、上記各複酸化物の担持量よりも多めに設定され、それぞれ酸化物50g/L(DPF3の1L当たり)に対して2.0g/Lに設定されている。
【0049】
(カーボン燃焼速度評価実験)
こうして得られた各サンプルにつき、800℃の大気圧条件下で24時間放置するエージング処理を施し、模擬排気ガスを流通させるモデルガス流通触媒評価装置にセットした状態でカーボン燃焼性能評価を調べるカーボン燃焼速度評価実験を行った。
【0050】
この実験としては、PMの燃焼性能を求める指標として、PMの代わりにカーボンブラック粉末(片山化学工業社製)をDPF3に堆積させ、模擬排気ガスを流しながら昇温させた際にDPF3内部でのカーボン燃焼によって排出される、CO2およびCOの濃度を用いて評価を行った。このカーボンブラック粉末の堆積は、10g/L相当のカーボンブラック粉末に10ccのイオン交換水を加え、スターラーを用いて5分間攪拌混合し、十分にカーボンブラック粉末を分散させる。これにサンプルであるフィルタ本体6の上流端側を浸すと同時に、浸した端面と逆側よりアスピレーターにより吸引を行った。この吸引により除去できない水分を、浸した端面側よりエアブローにより除去し、乾燥器にて150℃の温度で2時間かけて乾燥させた。
【0051】
上記モデルガス流通触媒評価装置においては、15℃/minの割合で600℃まで昇温させつつ、酸素ガスおよび水蒸気がそれぞれガスの総流量に対して10体積%含まれ残りが窒素ガス等とされた模擬排気ガスをその空間速度が80000/hとなるように流通させ、DPF3の出口部直後におけるCO,CO2濃度を測定した。そして、このCO,CO2濃度に基づいて次式に定めるカーボンの燃焼速度を求めた。なお、このカーボン燃焼速度は担体(DPF3)1L当たりに燃焼するカーボン量を示している。
【0052】
【数1】
【0053】
この結果を図6に示す。なお、図6は各サンプルについてのカーボン燃焼速度の測定結果をグラフ化したものである。
【0054】
この図6によれば、ジルコニウム系複酸化物によってパティキュレート酸化触媒が構成されたジルコニウム系サンプル(図6中ではZr系サンプル)は、各比較サンプルよりも良好なカーボン燃焼速度が測定された。すなわち、比較サンプルはいずれもそのカーボン燃焼速度が0.45g/hを下回る結果となったが、ジルコニウム系サンプルはいずれもそのカーボン燃焼速度が0.45g/hを上回る結果となった。
【0055】
特に、Pt担持量が0.5g/Lのジルコニウム系サンプルとPt担持量が2.0g/Lの比較サンプルとを比較しても、Pt担持量が少ないジルコニウム系サンプルの方がカーボン燃焼速度が高いことが分かる。すなわち、パティキュレート酸化触媒にジルコニウム系複酸化物を含有させることにより少ないPt担持量でも良好なカーボン燃焼速度を得ることができることが分かる。
【0056】
また、同じジルコニウム系サンプルでも、ジルコニウム(Zr)にイットリウム(Y)を除く希土類金属、例えばイッテルビウム(Yb)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)を含有する場合には、ジルコニウム−イットリウム複酸化物よりも高いカーボン燃焼速度を得ることができることが分かる。
【0057】
このようにジルコニウム系サンプルが比較サンプルに対して良好なカーボン燃焼速度が得られたのは、ジルコニウム系サンプルについてはパティキュレート酸化触媒に含まれるジルコニウム系複酸化物が酸素イオン伝導性を有することが最大の要因であると推測される。この酸素イオン伝導性は、次の理由により生じるものと考えられる。すなわち、ジルコニウム系複酸化物には一部が3価の金属に置換されており、ジルコニウムという4価の金属原子による結晶格子に、3価の金属原子で置き換わっているため、図5に示すように酸素欠損部(酸素イオン空孔部)を生じ、この酸素欠損部を通じて酸素イオンが伝導されるものと考えられる。
【0058】
したがって、図6に示すように、ジルコニウム系複酸化物に混合される希土類金属の含有量が高くなると、酸素イオン伝導性が高まることから、カーボン燃焼速度が向上しているものと考えられる。なお、このPMの燃焼メカニズムは上述したのでここでは省略する。
【0059】
(B)評価実験2(Pt担持用担体の配合比率変化がライトオフ性能に与える影響)
次に、パティキュレート酸化触媒におけるPt担持用担体としてのジルコニウム系複酸化物およびアルミナの配合比率の変化がライトオフ性能に与える影響を実験により調べた。具体的には、Pt担持ジルコニウム系複酸化物とPt担持アルミナとの配合比率を変化させたサンプルを複数個調製し、各サンプルにつき模擬排気ガスを流通させ、このときのライトオフ性能を評価した。このライトオフ性能の評価は、各サンプルについて、DPF3の下流側で検出されるガスの各成分(HC、CO)濃度が上記模擬排気ガスにおける当該成分濃度の半分になった時点(浄化率が50%になった時点)のDPF3の入口での模擬排気ガス温度(ライトオフ温度)に基づいて行っている。
【0060】
サンプルの調製にあたっては、まずアルミナとジルコニウム系複酸化物としてのZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)とのそれぞれに触媒貴金属としての白金(Pt)を担持させる。このPt担持量は、原則としてアルミナに対する担持量とジルコニウム系複酸化物に対する担持量とが等しくなるように設定されている。ただし、後述するように、アルミナの配合比率が0質量%である場合にはPt担持ジルコニウム系複酸化物にアルミナに担持させる分のPtをそのまま混合させるものとし、一方、アルミナの配合比率が100質量%である場合にはPt担持アルミナにジルコニウム系複酸化物に担持させる分のPtをそのまま混合するものとしている。
【0061】
そして、各Pt担持酸化物を質量比(Al2O3:ZrO2−Nd2O3)で0:1,1:2,1:1,2:1,1:0の割合で、言い換えるとパティキュレート酸化触媒の全体に対するアルミナの配合比率を0質量%(ZrO2−Nd2O3のみ50g/L)、約33質量%(Al2O3が16.7g/L、ZrO2−Nd2O3が33.3g/L)、50質量%(Al2O3が25g/L、ZrO2−Nd2O3が25g/L)、約67質量%(Al2O3が33.3g/L、ZrO2−Nd2O3が16.7g/L)、100質量%(Al2O3のみ50g/L)と変化させて混合し、これらの混合粉末をそれぞれDPF3の内部流路にコーティングさせて5種類のサンプルを調製した。各酸化物に対するPt担持方法や、各酸化物を混合して得られた混合粉末のDPF3の内部流路に対するコーティング方法は、上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)におけるサンプルと同様であり、ここではその説明を省略する。
【0062】
上記方法により得られた各サンプルをモデルガス流通触媒評価装置にセットし、模擬排気ガスをその空間速度が50,000/hとなるように流通させるとともに、15℃/minの割合で昇温させ、DPF3の出口部直後におけるHC,CO濃度が50%となった時点でのDPF3の入口側の模擬排気ガス温度を測定した。このときの模擬排気ガスは、酸素ガス(O2)、水蒸気(H2O)、二酸化炭素ガス(CO2)、炭化水素(HC)、一酸化炭素ガス(CO)、一酸化窒素ガス(NO)、窒素ガス(N2)によって構成され、ここでは各ガスがこの順番でガスの総流量に対して、10体積%、10体積%、4.5体積%、200ppmC(カーボン換算)、400ppm、500ppm、その残り分、それぞれ含まれている。
【0063】
このライトオフ性能の測定結果を図7に示す。この図7によれば、パティキュレート酸化触媒の総質量に対するPt担持アルミナ(Pt/Al2O3)の割合が高くなればなるほど、ライトオフ温度が低下していることが分かり、したがってライトオフ性能を向上させるためにはPt担持アルミナの割合を増加させることが好ましいことが分かった。このようにパティキュレート酸化触媒におけるPt担持量の総量が等しいにもかかわらず、ライトオフ性能が変化しているのは、ジルコニウム系複酸化物とアルミナのそれぞれに担持された触媒貴金属のうち、アルミナに担持された触媒貴金属の方が一酸化炭素ガス等の有害ガス(CO、HC)を酸化させる機能が強いためと推測される。
【0064】
したがって、ライトオフ性能を低下させる観点からはパティキュレート酸化触媒におけるPt担持アルミナの量を増量させることが好ましいが、反面、ジルコニウム系複酸化物の量が低下すると、カーボン燃焼速度の低下も懸念される。したがって、カーボン燃焼速度を維持させつつ、ライトオフ性能を改善するためには、パティキュレート酸化触媒(Pt担持アルミナとPt担持ジルコニウム系複酸化物とを加えたもの)におけるPt担持アルミナの割合は、パティキュレート酸化触媒の総質量に対して40質量%以上で、90質量%以下が好ましく、さらに好ましくは50質量%以上で、80質量%以下がよい。
【0065】
(C)評価実験3(Pt担持率の変化がライトオフ性能および浄化性能に与える影響)
続いて、パティキュレート酸化触媒におけるPt担持用担体としてのジルコニウム系複酸化物とアルミナとの配合比率を一定にして、このジルコニウム系複酸化物とアルミナとに担持させる触媒貴金属の割合を変化させ、この変化がライトオフ性能および浄化性能に与える影響を実験により調べた。具体的には、触媒貴金属としてのPtを担持させるジルコニウム系複酸化物とアルミナとの配合比率を1:1に固定し、ジルコニウム系複酸化物とアルミナとに予め担持させるPtの総担持量を一定にして各担体(ジルコニウム系複酸化物およびアルミナ)への担持量を変化させたサンプルを複数個調製し、各サンプルにつき模擬排気ガスを流通させ、このときのライトオフ性能および浄化性能を評価した。このライトオフ性能の評価は上記評価実験2と同様であり、一方、浄化性能の評価は、DPF3の入口での模擬排気ガス温度が300℃であるときのCO,HC各成分の浄化率に基づいて行っている。
【0066】
サンプルの調製にあたっては、まずアルミナとジルコニウム系複酸化物としてのZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)とをそれぞれ同量の25g/Lずつ用意し、各担体粉末のそれぞれに総量が0.5g/L(DPF3の1Lあたりの質量)の触媒貴金属としての白金(Pt)を所定の割合で分配して担持させる。すなわち、担体としてのアルミナ粉末に総量が0.5g/LのPtのうちの何割かを担持させ、もう一方の担体であるジルコニウム系複酸化物の粉末に残りのPtを担持させる。そして、各Pt担持酸化物を混合し、これらの混合粉末をそれぞれDPF3の内部流路にコーティングさせることによってサンプルを調製した。各酸化物に対するPt担持方法や、各Pt担持酸化物を混合して得られた混合粉末のDPF3の内部流路に対するコーティング方法は、上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)におけるサンプルと同様であり、ここではその説明を省略する。
【0067】
そして、上記調製方法においてアルミナに担持させるPtの割合(Pt担持率)を変化させ、以下の5種類のサンプルを得た。
・(サンプルNo.1)
アルミナへのPt担持率=0%としたもの。すなわち、0.5g/LのPtを全てジルコニウム系複酸化物に担持させ、アルミナにはPtを担持させないもの。
・(サンプルNo.2)
アルミナへのPt担持率=25%としたもの。すなわち、0.375g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に、0.125g/LのPtをアルミナにそれぞれ担持させたもの。
・(サンプルNo.3)
アルミナへのPt担持率=50%としたもの。すなわち、0.25g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に、0.25g/LのPtをアルミナにそれぞれ担持させたもの。
・(サンプルNo.4)
アルミナへのPt担持率=75%としたもの。すなわち、0.125g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に、0.375g/LのPtをアルミナにそれぞれ担持させたもの。
・(サンプルNo.5)
アルミナへのPt担持率=100%としたもの。すなわち、ジルコニウム系複酸化物にはPtを担持させず、0.5g/LのPtを全てアルミナに担持させたもの。
【0068】
そして、上記各サンプルをモデルガス流通触媒評価装置にセットし、ライトオフ性能(ライトオフ温度)および浄化性能(300℃における浄化率)を測定した。
【0069】
この測定結果を図8に示す。この図8によれば、アルミナに対するPtの担持率が高くなれば高くなるほど、ライトオフ温度が低下していることが分かるとともに浄化率が向上していることが分かる。したがって、ライトオフ性能および浄化性能を向上させるためにはアルミナに対するPt担持率を増加させることが好ましいことが分かった。このようにパティキュレート酸化触媒におけるPt担持量の総量が等しいにもかかわらず、ライトオフ性能や浄化性能が変化しているのは、ジルコニウム系複酸化物とアルミナのそれぞれに担持された触媒貴金属のうち、アルミナに担持された触媒貴金属の方が一酸化炭素ガス等の未燃ガス(CO、HC等)を酸化させる機能が強いためと推測される。
【0070】
(D)評価実験4(Pt担持率の変化がPM燃焼性能に与える影響)
上記評価実験3で用いた5種類のサンプル(No.1〜No.5)と同じサンプルを用いてカーボン燃焼速度評価実験を行うことにより、アルミナに対するPt担持率の変化がジルコニウム系複酸化物のPM燃焼性能に与える影響について調べた。この実験は、上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)における条件に基づいて行った。
【0071】
この実験結果を図9に示す。この図9によれば、アルミナに対するPt担持率が0%のときには、アルミナを混合せずに単にジルコニウム系複酸化物であるZrO2−Nd2O3にPtを担持させた場合のカーボン燃焼速度と略同等となることが分かった。そして、このアルミナに対するPt担持率を0%から増加させると、カーボン燃焼速度は一旦低下してからアルミナに対するPt担持率が25%周辺において上昇してその担持率が75%辺りでピークを迎え、再び低下して遂には最低レベルに至ることが分かった。
【0072】
このようにアルミナに対するPt担持率を0%から増加させると、カーボン燃焼速度が一旦低下するのは、ジルコニウム系複酸化物に担持されたPtがカーボン燃焼速度に大きく関与していると考えられ、このジルコニウム系複酸化物に対するPt担持量が減少していることに基づくものと推測される。一方、アルミナに対するPt担持率が25%からさらに増加させることによりカーボン燃焼速度が一転上昇するのは次の理由によるものと考えられる。
【0073】
すなわち、Pt担持ジルコニウム系複酸化物(Pt担持ZrO2−Nd2O3)によってPMとしてのカーボンが燃焼(酸化)され、このカーボン燃焼時における不完全燃焼ガスがPt担持アルミナによって酸化(完全燃焼)される場合に反応熱を生じ、この反応熱に基づいてジルコニウム系複酸化物が活性化され、カーボン燃焼速度の上昇に寄与するからと推測される。なお、アルミナに対するPt担持率が低い間は、このPt担持アルミナにおける反応熱によるジルコニウム系複酸化物の活性効果が十分に得られず、このためカーボン燃焼速度が一旦低下するものと考えられる。
【0074】
したがって、アルミナとジルコニウム系複酸化物とに適当な割合で触媒貴金属を担持させるとカーボン燃焼速度を上昇させつつ、ライトオフ性能および浄化性能を十分に改善することが分かる。具体的に、この図9によれば、アルミナに対するPt担持率は40%以上で、90%以下が好ましく、さらに好ましくは50質量%以上で、80質量%以下がよい。中でも、アルミナに対するPt担持率が60%〜80%の範囲内に設定するとカーボン燃焼速度を極めて高い状態で維持することができ、PMをより効率的に燃焼させることができる。
【0075】
(E)評価実験5(触媒貴金属としてのPdの追加がライトオフ性能に与える影響)
これまでの評価実験1〜4では、アルミナおよびジルコニウム系複酸化物の各担体に、触媒貴金属としていずれも白金(Pt)を担持させたが、この評価実験5では、上記各担体のうちのアルミナに、白金(Pt)に加えてパラジウム(Pd)を担持させ、このパラジウム(Pd)の追加がライトオフ性能に与える影響について調べた。具体的には、アルミナにPtおよびPdを担持させたサンプル(ただしジルコニウム系複酸化物にはPtのみを担持させた)に対してライトオフ性能(ライトオフ温度)の測定を行い、これをアルミナおよびジルコニウム系複酸化物の各担体にこれまで通りPtのみを担持させたサンプルにおけるライトオフ性能と比較した。
【0076】
サンプルの調製にあたっては、まず、ジルコニウム系複酸化物としてのZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)とアルミナとをそれぞれ同量の25g/Lずつ用意し、ジルコニウム系複酸化物にはPtのみを担持させる一方、アルミナにはPtおよびPdの2種類の触媒貴金属を担持させる。具体的に、PtおよびPdをアルミナに担持させる作業は、アルミナの粉末にジニトロジアミン白金硝酸溶液およびジニトロジアミンパラジウム硝酸溶液を同時に加えて混合し、蒸発乾固法で乾固させることにより行った。そして、これを乾燥させて乳鉢で粉砕し、電気炉において500℃の大気雰囲気で2時間加熱焼成を行うことにより、PtおよびPdをともに担持したアルミナの粉末(Pt・Pd担持アルミナ)を得た。なお、このようにして得られたPt・Pd担持アルミナと上記Pt担持ジルコニウム系複酸化物との混合粉末をDPF3の内部流路にコーティングする方法は上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)におけるサンプルと同様であり、ここではその説明を省略する。そして、このようにして得られたサンプル(PtおよびPdをアルミナに担持させたサンプル)と比較するためのものとして、アルミナおよびジルコニウム系複酸化物の各担体にこれまで通りPtのみを担持させたサンプルも用意し、以下の2種類のサンプルを得た。
・(サンプルNo.6)
0.250g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に、0.750g/LのPtをアルミナにそれぞれ担持させたもの。すなわち、上記評価実験3におけるサンプルNo.4と比較して、ジルコニウム系複酸化物およびアルミナに担持させるPtの量をそれぞれ2倍に増やしたもの。
・(サンプルNo.7)
0.125g/LのPtをジルコニウム系複酸化物に担持させる一方、アルミナには0.375g/LのPtおよび0.3g/LのPdを担持させたもの。すなわち、上記評価実験3におけるサンプルNo.4と比較して、アルミナに担持させる触媒貴金属として0.3g/LのPdをさらに追加したもの。
【0077】
そして、これら各サンプルをモデルガス流通触媒評価装置にセットし、ライトオフ性能(ライトオフ温度)を測定した。その結果を図10に示す。なお、この図10では、上記評価実験3でサンプルNo.4について測定したライトオフ性能(ライトオフ温度)についても合わせて表記している。この図10によれば、Ptに加えてPdをアルミナに担持させたサンプルNo.7のライトオフ温度が最も低く、よってライトオフ性能が最も優れていることが分かる。一方、触媒貴金属がPtのみであるサンプルNo.6は、サンプルNo.4の2倍のPt担持量を有するのにも関わらず、ライトオフ性能の改善がわずかしか見られない。これに対し、PtおよびPdをアルミナに担持させたサンプルNo.7は、トータルの触媒貴金属の量がサンプルNo.6よりも少ないにも関わらず(サンプルNo.6のトータルのPt担持量1.0g/Lに対し、サンプルNo.7のトータルのPt・Pd担持量は0.8g/Lと少ない)、サンプルNo.6と比較してライトオフ性能が大幅に向上している。このことから、ライトオフ性能をより効果的に改善するには、Ptに加えてさらにPdをアルミナに担持させることが、Ptの担持量をむやみに増やすよりも有効であることが分かった。
【0078】
(F)評価実験6(PtおよびPdの担持形態の相違がライトオフ性能に与える影響)
上記評価実験5では、触媒貴金属としてのPtとPdとを同じアルミナに担持(共存担持)させたサンプルを用いて実験を行ったが、この評価実験6では、PtとPdとを異なるアルミナに別々に担持(分離担持)させたサンプルを用いて実験を行うことにより、PtおよびPdの担持形態の相違がライトオフ性能に与える影響について調べた。
【0079】
サンプルの調製にあたっては、まず、ジルコニウム系複酸化物としてのZrO2−Nd2O3(Nd2O3:12mol%)とアルミナとをそれぞれ同量の25g/Lずつ用意し、ジルコニウム系複酸化物にはPtのみを担持させる一方、アルミナにはPtとPdの2種類の触媒貴金属を別々に担持(分離担持)させる。具体的に、PtとPdとを分離担持させる作業は、アルミナの粉末を所定の質量比で2つに分け、このうちの一方のアルミナにジニトロジアミン白金硝酸溶液を加えて混合するとともに、残りのアルミナにジニトロジアミンパラジウム硝酸溶液を加えて混合し、それぞれを蒸発乾固法で乾固させることにより行った。そして、これらを乾燥させて乳鉢で粉砕し、電気炉において500℃の大気雰囲気で2時間加熱焼成を行うことにより、Ptを担持したアルミナの粉末(Pt担持アルミナ)とPdを担持したアルミナの粉末(Pd担持アルミナ)とを別々に得た。なお、このようにして得られたPt担持アルミナおよびPd担持アルミナと、上記Pt担持ジルコニウム系複酸化物とからなる混合粉末をDPF3の内部流路にコーティングする方法は、上記カーボン燃焼速度評価実験(評価実験1)におけるサンプルと同様であり、ここではその説明を省略する。
【0080】
そして、上記調製方法においてPt担持アルミナとPd担持アルミナの質量比を変化させることにより、以下の3種類のサンプルを得た。具体的には、各アルミナに担持させるPtおよびPdの量は0.375g/Lと0.3g/Lでそれぞれ固定し、担体としてのアルミナの質量比を変化させることにより(換言すれば、PtとPdとの担持濃度を変化させることにより)下記3種類のサンプルを得た。なお、ジルコニウム系複酸化物には0.125g/LのPtを担持させた。すなわち、この評価実験6で用いる各サンプルは、PtとPdとを異なるアルミナに分離担持させた点を除けば、上記評価実験5のサンプルNo.7と触媒貴金属の種類や量において同一である。
・(サンプルNo.8)
Pt担持アルミナとPd担持アルミナとの質量比を3:1としたもの。
・(サンプルNo.9)
Pt担持アルミナとPd担持アルミナとの質量比を1:1としたもの。
・(サンプルNo.10)
Pt担持アルミナとPd担持アルミナとの質量比を1:3としたもの。
【0081】
そして、これら各サンプルをモデルガス流通触媒評価装置にセットし、ライトオフ性能(ライトオフ温度)を測定した。その結果を図11に示す。この図11によれば、サンプルNo.8〜No.10のいずれについても、上記評価実験5においてPtとPdとを同じアルミナに共存担持させたサンプルNo.7(図10)と比較して、特にCOに対するライトオフ温度が大幅に低下してライトオフ性能が飛躍的に向上していることが分かる。なお、このような効果は、Pt担持アルミナとPd担持アルミナとの質量比が1:1であるNo.9のサンプルにおいて最も顕著であった。このように、PtとPdとを異なるアルミナに分離担持させることにより、PtとPdとを同じアルミナに共存担持させるよりも飛躍的にライトオフ性能を改善できることが分かった。
【0082】
(G)評価実験7(一酸化炭素の浄化性能の比較)
この評価実験7では、上記評価実験3〜6におけるサンプルNo.1〜No.10を用いて、PM燃焼時に発生する一酸化炭素(CO)の量について調べた。具体的には、各サンプルの触媒層表面に模擬PMであるカーボンブラックをそれぞれ堆積させ、模擬排気ガス(成分等は上記評価実験1と同様)を流通させながら上記カーボンを雰囲気温度590℃下で燃焼させるとともに、当該燃焼に伴って発生するCOの量をDPF3の出口部直後において測定した。
【0083】
この測定結果を図12に示す。なお図12では、サンプルNo.1について測定されたCOの量を1としたときの相対値を記載している。この図12によれば、PtとPdとを異なるアルミナに分離担持させたサンプルNo.8〜No.10におけるCO量が、基準であるサンプルNo.1におけるCO量と比較してわずか15%程度にまで低減されており、COの浄化性能の点でこれらサンプルNo.8〜No.10が最も優れていることが分かる。また、この次にCOの浄化性能に優れているのはPtとPdとを同じアルミナに共存担持させたサンプルNo.7であり、このサンプルNo.7のCO量(0.33)は、上記サンプルNo.8〜No.10に比べて2倍程度に増加しているものの、触媒貴金属がPtのみである他のどのサンプル(No.1〜No.6)におけるCO量よりも小さい値に抑えられている。以上のことから、Ptに加えてさらにPdをアルミナに担持させること(より好ましくはPtとPdとを分離担持させる)ことが、CO浄化性能の改善にも有効であることが分かった。
【0084】
以上、当実施形態のDPF3によれば、このDPF3に堆積したPMを効率的かつ短期間に燃焼させることができる。すなわち、パティキュレート酸化触媒に含有されるジルコニウム系複酸化物が酸素イオン伝導性を有することから、DPF3内部にPMが付着してその表面に局部的に酸素濃度が低い部位を生ずると、当該部位に酸素濃度の高いところから酸素イオンが当該複酸化物を介して移動し、活性酸素(O2−)としてこの酸素欠乏部位に酸素が供給され、PMを継続的かつ効率的に燃焼させることができ、DPF3の再生(PMの燃焼浄化)にあたり、エンジン或いはDPFに燃料を供給する場合でもこの燃料噴射量または噴射期間を減少させることができ、これによりフィルタの再生を効率的かつ短期間に行うことができ、燃費を向上させることができる。
【0085】
しかも、パティキュレート酸化触媒に含まれるPtなどの触媒貴金属について、従来のセリウム−ジルコニウム複酸化物と同等の燃焼速度を実現するために使用する量を低減することができ、触媒貴金属の使用量を節約してこのパティキュレート酸化触媒、ひいてはディーゼルパティキュレートフィルタを低コストで製造可能となる。
【0086】
また、このような酸素イオン伝導性を有する材料を用いてこのように効率的にPMを燃焼させると、PM燃焼量が増加し、この燃焼量の増加に伴ってPMの不完全燃焼による一酸化炭素の排出割合の増加が懸念される。しかも、実験によりパティキュレート酸化触媒に酸素イオン伝導性を有する複酸化物が含まれていると、特に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)について十分に酸化させることができず、従来のセリウム−ジルコニウム複酸化物に比べてライトオフ性能および通常運転時における浄化性能に劣る場合があることが判明したが、上記実施形態のDPF3によれば、パティキュレート酸化触媒にPtなどの触媒貴金属を担持させたアルミナを含み、この触媒貴金属によってジルコニウム系複酸化物によって十分に酸化されなかった一酸化炭素や炭化水素について完全に燃焼させることができ、パティキュレート酸化触媒としてのライトオフ性能、および浄化性能を十分に改善することができる。特に、冷間運転時にはこの触媒貴金属担持アルミナによる一酸化炭素等の燃焼による反応熱よって更に雰囲気温度を上昇させてジルコニウム系複酸化物をより活性化させることができ、これにより一層酸化反応を活性化させることができる。
【0087】
なお、以上に説明したDPF3は、本発明に係るDPFの一実施形態であって、その具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0088】
例えば、上記実施形態におけるDPF3の上流側(排ガス流れ方向上流側)にHC,COおよびNOを酸化する酸化触媒を設けるようにしてもよく、この場合にはこの酸化触媒から排出されるNO2によってPMをさらに燃焼させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】ディーゼルエンジンの排気通路にDPFおよび酸化触媒を組み付けた状態を示す説明図である。
【図2】当実施形態のDPFを模式的に示す正面図である。
【図3】同DPFを模式的に示す縦断面図である。
【図4】DPFの多孔質壁を拡大して示す断面図である。
【図5】PMの燃焼メカニズムを示す説明図である。
【図6】各Pt担持粉末から形成されたパティキュレート酸化触媒によるカーボン燃焼速度を示すグラフである。
【図7】アルミナとジルコニウム系複酸化物との配合比とライトオフ性能との関係を示すグラフである。
【図8】アルミナとジルコニウム系複酸化物に対するPt担持率とライトオフ性能および浄化性能との関係を示すグラフである。
【図9】アルミナとジルコニウム系複酸化物に対するPt担持率とカーボン燃焼速度との関係を示すグラフである。
【図10】PtおよびPdをアルミナに担持させたサンプルにおけるライトオフ性能と、Ptのみをアルミナに担持させたサンプルにおけるライトオフ性能とを比較するためのグラフである。
【図11】PtおよびPdを異なるアルミナに分離担持させた各サンプルにおけるライトオフ性能を示すグラフである。
【図12】PM燃焼時に発生するCOの量を各サンプルについて比較するための表である。
【符号の説明】
【0090】
1 排気通路
3 DPF
6 フィルタ本体
7 酸化触媒層
15 目封止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気通路に配設され、パティキュレートを燃焼させるための触媒貴金属を有するパティキュレート酸化触媒が設けられたディーゼルパティキュレートフィルタにおいて、
上記パティキュレート酸化触媒はジルコニウムを主成分とするとともにセリウムを除く希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物とアルミナとを含み、上記ジルコニウム系複酸化物およびアルミナはそれぞれ上記触媒貴金属を担持していることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項2】
上記ジルコニウム系複酸化物は、イットリウムを除く希土類金属が含まれていることを特徴とする請求項1記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
上記アルミナにおける触媒貴金属の担持量は、触媒貴金属の総質量に対して40質量%以上90質量%以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
上記アルミナにおける触媒貴金属の担持量は、触媒貴金属の総質量に対して50質量%以上80質量%以下に設定されていることを特徴とする請求項3記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項5】
上記アルミナに担持される触媒貴金属は、少なくともPtを含むことを特徴とする請求項3または請求項4記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項6】
上記アルミナに担持される触媒貴金属は、さらにPdを含むことを特徴とする請求項5記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項7】
上記触媒貴金属としてのPtとPdとは、異なるアルミナに別々に担持されていることを特徴とする請求項6記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気通路に配設され、パティキュレートを燃焼させるための触媒貴金属を有するパティキュレート酸化触媒が設けられたディーゼルパティキュレートフィルタにおいて、
上記パティキュレート酸化触媒はジルコニウムを主成分とするとともにセリウムを除く希土類金属が含まれたジルコニウム系複酸化物とアルミナとを含み、上記ジルコニウム系複酸化物およびアルミナはそれぞれ上記触媒貴金属を担持していることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項2】
上記ジルコニウム系複酸化物は、イットリウムを除く希土類金属が含まれていることを特徴とする請求項1記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
上記アルミナにおける触媒貴金属の担持量は、触媒貴金属の総質量に対して40質量%以上90質量%以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
上記アルミナにおける触媒貴金属の担持量は、触媒貴金属の総質量に対して50質量%以上80質量%以下に設定されていることを特徴とする請求項3記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項5】
上記アルミナに担持される触媒貴金属は、少なくともPtを含むことを特徴とする請求項3または請求項4記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項6】
上記アルミナに担持される触媒貴金属は、さらにPdを含むことを特徴とする請求項5記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項7】
上記触媒貴金属としてのPtとPdとは、異なるアルミナに別々に担持されていることを特徴とする請求項6記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−83224(P2007−83224A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101004(P2006−101004)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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