説明

デコリン由来ペプチド

【課題】 新規な細胞増殖調節剤を提供すること。
【解決手段】 次式:
Cys Pro X1 Arg Cys Gln Cys His Leu Arg Val Val Gln Cys (配列番号1)
[式中,X1はPheまたはTyrであり,1番目のCysと7番目のCys,および5番目のCysと14番目のCysは,それぞれジスルフィド結合している]
または次式:
Cys X2 X3 Pro Gly His X4 X5 X6 Lys Ala Ser Tyr Ser Gly Val Cys (配列番号2)
[式中,X2はProまたはArgであり,X3はProまたはAlaであり,X4はAsnまたはProであり,X5はThrまたはSerであり,X6はLysまたはArgであり,1番目のCysと16番目のCysはジスルフィド結合している]
で表されるペプチドを有効成分として含有するヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,細胞増殖を調節する作用を有するペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
デコリンは細胞外マトリックスタンパク質の一種であり,SLRP(small leucine-rich proteoglycan)ファミリーに属する。このファミリーは13種類のメンバーによって構成される。SLRPタンパク質はいずれも分子量約40 kDaであり,20-30アミノ酸残基からなるロイシン・リッチ・リピートを6-10回繰り返す中央部ドメインを共通構造とする。SLRPファミリー構成員はN末端とC末端にシステインに富むドメインを有し,N末端の特徴的なシステインの配置により,さらに4種類のクラスに分類される。デコリンはビグリカン(biglycan),アスポリン(asporin)とともにクラスIに分類され,N末端のシステインはCX3CXCX6Cの配置をとる。
【0003】
デコリンはSLRPファミリーの最初のメンバーとして発見されたタンパク質であり,359アミノ酸の長さである。その遺伝子配列およびアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3および4に示す(GenBank受託番号AF138300, NM_133507)。デコリンの構造および機能の解析が進められており,コラーゲン,表皮成長因子(EGF)受容体,インスリン様成長因子-I (IGF-I)受容体,トランスフォーミング成長因子-β (TGF-β)等のタンパク質と結合し,コラーゲン原線維の形成と安定化に関与するほか,細胞増殖,分化,アポトシスを制御することが知られている。これらの多様な生理活性の中でも,特にその細胞増殖抑制能は注目を集め,デコリン遺伝子をがんの遺伝子治療に用いることが試みられている [Reed, C.C., et al. Oncogene 24, 1104-1110 (2005)]。最近,IozzoのグループはデコリンがEGF受容体の分解を促進する機構を提唱している [Zhu, J.X., et al. J Biol Chem 280, 32468-32479 (2005)]。
【0004】
しかしながら,これまでのところ,デコリンを含むSLRPファミリー・クラスIで保存されているN末端のCX3CXCX6C構造の機能と役割に関しては,ほとんど明らかにされていない。
【0005】
【非特許文献1】Reed, C.C., et al. Oncogene 24, 1104-1110 (2005)
【非特許文献2】Zhu, J.X., et al. J Biol Chem 280, 32468-32479 (2005)
【非特許文献3】Scott, P.G., et al. Proc Natl Acad Sci 101, 15633-15638 (2004)
【非特許文献4】Schonherr, E., et al. J Biol Chem 280, 15767-15772 (2005)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは,デコリンを含むSLRPファミリー・クラスIで保存されている領域の部分ペプチドを合成し,その細胞増殖に対する効果を調べたところ,驚くべきことに,細胞の種類によってその増殖を抑制する作用を示す場合と,増殖を促進する作用を示す場合があることを見いだした。
【0007】
本発明は,次式:
Cys Pro X1 Arg Cys Gln Cys His Leu Arg Val Val Gln Cys (配列番号1)
[式中,X1はPheまたはTyrであり,1番目のCysと7番目のCys,および5番目のCysと14番目のCysは,それぞれジスルフィド結合している]
または次式:
Cys X2 X3 Pro Gly His X4 X5 X6 Lys Ala Ser Tyr Ser Gly Val Cys (配列番号2)
[式中,X2はProまたはArgであり,X3はProまたはAlaであり,X4はAsnまたはProであり,X5はThrまたはSerであり,X6はLysまたはArgであり,1番目のCysと16番目のCysはジスルフィド結合している]
で表されるペプチドを有効成分として含有するヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤を提供する。
【0008】
特に好ましくは,本発明のヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤は,
Cys Pro Phe Arg Cys Gln Cys His Leu Arg Val Val Gln Cys (配列番号5),
Cys Pro Pro Gly His Asn Thr Lys Lys Ala Ser Tyr Ser Gly Val Cys (配列番号6)
のいずれかのアミノ酸配列を有する。
【0009】
本発明のヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤は,例えば,食道がん由来のT.Tn,TE2,胃がん由来のMKN74等の癌細胞の増殖を抑制する一方で,線維芽細胞NIH3T3の増殖をむしろ促進する作用を有する。このことから,本発明にかかるペプチドは,選択性をもって癌細胞の増殖を抑制すると予測され,癌および神経変性疾患などの治療に有用であると考えられる。また,癌細胞を増殖させる危険が少ないことから,再生医療において用いるのにも有用であると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかるペプチドは,次式:
Cys Pro X1 Arg Cys Gln Cys His Leu Arg Val Val Gln Cys (配列番号1)
[式中,X1はPheまたはTyrであり,1番目のCysと7番目のCys,および5番目のCysと14番目のCysは,それぞれジスルフィド結合している]
または次式:
Cys X2 X3 Pro Gly His X4 X5 X6 Lys Ala Ser Tyr Ser Gly Val Cys (配列番号2)
のアミノ酸配列を有する。
【0011】
本発明においては,これらのペプチドの各アミノ酸残基は,ジスルフィド結合に関与するシステイン残基を除き,保存的に置換されていてもよい。保存的置換とは,アミノ酸が同様の特性を有する別のアミノ酸で置換され,そのためペプチド化学分野の当業者によってポリペプチドの2次構造およびハイドロパシー特性が実質的に変化しないことが予期されるような置換をいう。互いに保存的置換であるアミノ酸の群としては一般に以下のものが知られている:(1)グリシン,アスパラギン,グルタミン,システイン,セリン,トレオニンおよびチロシン;(2)アラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,プロリン,フェニルアラニン,メチオニンおよびトリプトファン;(3)グリシン, アラニン, セリン, トレオニンおよびメチオニン;(4)ロイシン, イソロイシンおよびバリン;(5)グルタミンおよびアスパラギン;(6)グルタミン酸およびアスパラギン酸;(7)アルギニン, リジンおよびヒスチジン;(8)フェニルアラニン, トリプトファンおよびチロシン。
【0012】
さらに,本発明にかかるペプチドは,上記のアミノ酸配列に加えて,付加的な配列がさらに含まれていてもよい。当業者であれば,ヒト癌細胞増殖抑制剤または線維芽細胞増殖促進剤としての所望の作用効果を奏するためには,そのN末端側およびC末端側にそれぞれどの程度の配列の付加が許容されるかを当然に理解することができる。したがって,例えば,本発明にかかるペプチドのN末端側および/またはC末端側に,製剤化を容易にするアミノ酸配列や,融合蛋白質としてペプチドを発現させるのに便利なアミノ酸配列や,ペプチドの製造および精製に便利なアミノ酸配列などが付加されていてもよい。また,本発明にかかるペプチドは,化学的に修飾された誘導体であってもよく,ポリマーや糖鎖が付加されていてもよい。誘導体の例としては,例えば,ポリエチレングリコール誘導体や,アミノ酸がアセチル化,グアニジン化,カルバミル化またはビオチン化されている誘導体などを挙げることができる。
【0013】
本発明にかかるペプチドは,通常の化学的合成法,タンパク分子の酵素的分解法,目的のアミノ酸配列をコードする塩基配列を発現するように形質転換した宿主を用いる遺伝子組換え技術などにより製造することができる。
【0014】
目的とするペプチドを化学的合成法で製造する場合には,通常のペプチド化学においてよく知られる方法によって製造することができ,例えば,ペプチド合成機を使用して,固相合成法により合成することができる。このようにして得られた粗ペプチドは,タンパク質化学において通常使用されている精製方法,例えば,塩析法,限外ろ過法,逆相クロマトグラフィー法,イオン交換クロマトグラフィー法,アフィニティークロマトグラフィー法などによって精製することができる。
【0015】
ペプチドを遺伝子組換え技術で生産する場合には,例えば,合成またはクローニングした目的のアミノ酸配列をコードするDNA断片を適当な発現ベクターに組込む。次にこの発現ベクターを用いて微生物や動物細胞を形質転換して,得られた形質転換体を培養することによって,所望のペプチドを得ることができる。使用できる発現ベクターとしては,当該技術分野においてよく知られているプラスミド,ウイルスベクターなどを用いることができる。
【0016】
このペプチド生産技術における発現ベクターを用いた宿主細胞の形質転換方法としては,当該技術分野においてよく知られる方法,例えば,塩化カルシウム法,リン酸カルシウム共沈殿法,DEAEデキストラン法,リポフェクチン法,エレクトロポレーション法などを使用することができる。
【0017】
本発明にかかるペプチドは,その使用形態に応じて,例えば,経口または静脈投与や皮下投与など経皮経路で投与することができる。その剤形としては,例えば,錠剤,顆粒剤,ソフトカプセル剤,ハードカプセル剤,液剤,油剤,乳化剤などが挙げられる。
【0018】
本発明のペプチドを含むヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤は,細胞の種類によりその増殖を促進または抑制するため,細胞増殖の異常により引き起こされる疾患,例えば癌や神経変性疾患の治療,ならびに再生医療において有用である。本発明のヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤は,当業者に公知の方法で製剤化することができる。例えば,薬学的に許容しうる担体もしくは媒体,具体的には,滅菌水や生理食塩水,植物油,乳化剤,懸濁剤,界面活性剤,安定剤,香味剤,賦形剤,ベヒクル,防腐剤,結合剤などと適宜組み合わせて,一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
【0019】
経口投与用には,本発明のペプチドまたはその誘導体を当該技術分野においてよく知られる薬学的に許容しうる担体と混合することにより,錠剤,丸薬,糖衣剤,カプセル,液体,ゲル,シロップ,スラリー,懸濁液等として処方することができる。担体としては,当該技術分野において従来公知のものを広く使用することができ,例えば,乳糖,白糖,塩化ナトリウム,グルコース,尿素,澱粉,炭酸カルシウム,カオリン,結晶セルロース,ケイ酸等の賦形剤;水,エタノール,プロパノール,単シロップ,グルコース液,澱粉液,ゼラチン溶液,カルボキシメチルセルロース,セラック,メチルセルロース,リン酸カリウム,ポリビニルピロリドン等の結合剤,乾燥澱粉,アルギン酸ナトリウム,寒天末,ラミナラン末,炭酸水素ナトリウム,炭酸カルシウム,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ラウリル硫酸ナトリウム,ステアリン酸モノグリセリド,澱粉,乳糖等の崩壊剤;白糖,ステアリンカカオバター,水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩類,ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン,澱粉等の保湿剤;澱粉,乳糖,カオリン,ベントナイト,コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク,ステアリン酸塩,ホウ酸末,ポリエチレングリコール等の潤沢剤等を用いることができる。さらに錠剤は,必要に応じ,通常の剤皮を施した錠剤,例えば,糖衣錠,ゼラチン被包錠,腸溶被錠,フィルムコーティング錠,あるいは二重錠,多層錠とすることができる。
【0020】
非経口投与用には,本発明の抽出物または化合物またはその塩を当該技術分野においてよく知られる薬学的に許容しうるベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0021】
注射剤用の水溶性ベヒクルとしては,例えば生理食塩水,ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液,例えばD-ソルビトール,D-マンノース,D-マンニトール,塩化ナトリウムが挙げられ,適当な溶解補助剤,例えばアルコール,具体的にはエタノール,ポリアルコール,例えばプロピレングリコール,ポリエチレングリコール,非イオン性界面活性剤,例えばポリソルベート80(TM),HCO-50と併用してもよい。
【0022】
油性ベヒクルとしてはゴマ油,大豆油があげられ,溶解補助剤として安息香酸ベンジル,ベンジルアルコールと併用してもよい。また,緩衝剤,例えばリン酸塩緩衝液,酢酸ナトリウム緩衝液,無痛化剤,例えば,塩酸プロカイン,安定剤,例えばベンジルアルコール,フェノール,酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常,適当なアンプルに充填させる。
【0023】
本発明のヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤の適当な投与経路には,限定されないが,経口,直腸内,経粘膜,または腸内投与,または筋肉内,皮下,骨髄内,鞘内,直接心室内,静脈内,硝子体内,腹腔内,鼻腔内,または眼内注射が含まれる。投与経路および投与方法は,患者の年齢,症状により適宜選択することができる。
【0024】
本発明のヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤は,例えば,一回につき体重1kgあたり0.1μgから10mgの範囲で投与することができる。本発明のヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤の個々の患者に対する投与量および投与間隔は,患者の体重,症状,投与経路などを考慮して医師により決定される。
【0025】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが,本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
細胞としては,ras-NIH3T3(Ha-rasで形質転換したNIH3T3細胞),decorin/ras-NIH3T3(Ha-rasで形質転換したNIH3T3細胞にデコリン遺伝子を過剰発現させた細胞),coup/ras-NIH3T3(Ha-rasで形質転換したNIH3T3細胞にcoup遺伝子を過剰発現させた細胞),T.Tn(食道癌細胞),TE-2(食道癌細胞),ECGI-10(食道癌細胞),MKN74(胃癌細胞),PC6(肺癌細胞)およびA431(類表皮癌)を用いた。細胞は血清を加えたDMEM中で,37℃でCO2インキュベータ中で維持した。
【0027】
図1に示すペプチドを合成した。図中,S-S 結合で架橋されているシステインは線で結ばれている。N1 と N2 は2箇所,eh,em,E1,E2 は1箇所の架橋を含む。すべてのペプチドはアミノ末端がビオチン化され,カルボキシ末端がアミド化されている形で合成した。
【0028】
各ペプチドを培養液(無血清)に溶解して培養細胞に加え,MTT アッセイ法により細胞の増殖に及ぼす影響を調べた。MTT アッセイ法は,原法(Mosmann, T. J. Immunol. Methods 65, 55-63, 1983)に準じてHiwasa らの方法(Hiwasa et al., FEBS Lett. 552, 177-183, 2003)により行なった。以下にその手順を示す。
【0029】
ペプチドは培養液(無血清)に最大濃度の 100 倍で溶解して用いた。MTT 溶液(シグマ社製)は,リン酸緩衝液(PBS)に5 mg/mlで溶解し,ろ過滅菌して-20℃に保存した。STOP 溶液として,0.04 N HCl,イソプロパノール中を用いた。
1. 96穴プレートの2〜11の列に 50 μl の無血清培地を入れる。12 は 100 μl 入れる。
2. 1 の列は 98 μl の無血清培地を入れる。
3. 1 の列に薬剤を各 2 μl ずつ入れる。
4. 1 → 9 の列において倍々希釈する。CO2 インキュベーターに入れて保存。
5. 細胞をトリプシン溶液ではがし,2倍濃度の血清を含む培地でサスペンドし,コールターカウンターで測定して細胞濃度(cells/ml)を計算する。
6. 細胞を2倍濃度の血清を含む培地で希釈して 1 ×105 cells/ml または 5 ×104 cells/ml に調整する。プレート1枚あたり 6 ml 以上準備する。
7. 11 → 1 のウエル に 50 μl の細胞浮遊液を加える。リザーバーはプレート毎に変える。
8. 穏やかに攪拌する。
9. CO2 インキュベーターに入れ,3 〜4日間培養する。
10. 12 → 1 の列に MTT(5 mg/ml,PBS中)を 10 μl 加える。
11. 37℃,CO2 インキュベーター中で 4 時間培養する。
12. STOP 溶液(0.04 N HCl,イソプロパノール中)を 150 μl 加えてよく混ぜる。
13. ラップで包み,室温で 2 時間以上置く。
14. リーダーで測定する。測定波長 570 nm ,対照波長 655 nm。
15. 第 10 と 11 列は 100 % コントロール,第 12 列は 0 % コントロールとして各濃度(2測定値の平均値)の%を計算する。
【0030】
MTTアッセイの結果を図2−18に示す。
図2:ペプチド N1 と N2 は ras-NIH3T3 細胞(マウス線維芽細胞)の増殖を促進した。血清濃度 1%,培養期間3日間で1.5 倍程度に促進した。
【0031】
図3:ペプチド N1 と N2 は ras-NIH3T3 細胞(マウス線維芽細胞)の増殖を促進した。血清濃度 0.5%,培養期間4日間で3倍程度まで促進した。
【0032】
図4:ペプチド N1 と N2 は decorin-導入 ras-NIH3T3 細胞(マウス線維芽細胞)の増殖を促進した。血清濃度 0.5%,培養期間4日間で3倍程度まで促進した。
【0033】
図5:ペプチド N1 と N2 は coup-TF1-導入 ras-NIH3T3 細胞(マウス線維芽細胞)の増殖を促進した。血清濃度 0.5%,培養期間4日間で 2.6 倍程度まで促進した。
【0034】
図6:ペプチド N1 と N2 は T.Tn 細胞(ヒト食道癌細胞)の増殖を阻害した。血清濃度 1%,培養期間3日間で 40% 程度に抑制した。
【0035】
図7:ペプチド N1 と N2 は TE-2 細胞(ヒト食道癌細胞)の増殖を阻害した。血清濃度 1%,培養期間3日間で 20% 程度に抑制した。
【0036】
図8:ペプチド N1 と N2 は ECGI-10 細胞(ヒト食道癌細胞)の増殖を阻害した。血清濃度 1%,培養期間3日間で 30% 程度に抑制した。
【0037】
図9:ペプチド N1 と N2 は MKN74 細胞(ヒト胃癌細胞)の増殖を阻害した。血清濃度 1%,培養期間3日間で 40% 程度に抑制した。
【0038】
図10:ペプチド N1 と N2 は PC6 細胞(ヒト肺癌細胞)の増殖をわずかに阻害した。血清濃度 1%,培養期間3日間で 80% 程度に抑制した。
【0039】
図11:ペプチド N1 と N2 は A431 細胞(ヒト子宮癌細胞)の増殖をわずかに阻害した。血清濃度 1%,培養期間3日間で 80% 程度に抑制した。
【0040】
図12:ペプチド eh と em は ras-NIH3T3 細胞(マウス線維芽細胞)の増殖をわずかに促進した。 E1 はやや阻害した。
【0041】
図13:ペプチド eh と em は T.Tn 細胞(ヒト食道癌細胞)の増殖をわずかに促進した。E1 はやや阻害した。
【0042】
図14:ペプチド E1 は TE-2 細胞(ヒト食道癌細胞)の増殖を阻害した。eh と em はやや促進した。
【0043】
図15:ペプチド E1 は ECGI-10 細胞(ヒト食道癌細胞)の増殖をやや阻害した。em はやや促進した。
【0044】
図16:ペプチド E1 は MKN74 細胞(ヒト胃癌細胞)の増殖をやや阻害した。
【0045】
図17:ペプチド em は PC6 細胞(ヒト肺癌細胞)の増殖をやや阻害した。eh と E1 は影響がなかった。
【0046】
図18:ペプチド E1 は A431 細胞(ヒト子宮癌細胞)の増殖を阻害した。eh と em は影響がなかった。
【0047】
以上の結果より,ペプチドN1およびN2は,癌細胞の増殖を抑制し,繊維芽細胞の増殖を促進する作用を有することが明らかとなった。また,ペプチドehおよび em は,N1およびN2と同様の効果を有するが,その作用が弱い傾向にあることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のヒト癌細胞増殖抑制剤および線維芽細胞増殖促進剤は,細胞増殖の異常により引き起こされる疾患(癌,神経変性疾患等)の治療,ならびに再生医療において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は実施例で用いたペプチドの構造を示す。
【図2】図2は本発明にかかるペプチドN1 と N2 がras-NIH3T3 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図3】図3は本発明にかかるペプチドN1 と N2 がras-NIH3T3 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図4】図4は本発明にかかるペプチドN1 と N2 がdecorin-導入 ras-NIH3T3 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図5】図5は本発明にかかるペプチドN1 と N2 がcoup-TF1-導入 ras-NIH3T3 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図6】図6は本発明にかかるペプチドN1 と N2 がT.Tn 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図7】図7は本発明にかかるペプチドN1 と N2 がTE-2 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図8】図8は本発明にかかるペプチドN1 と N2 がECGI-10 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図9】図9は本発明にかかるペプチドがMKN74 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図10】図10は本発明にかかるペプチドN1 と N2 がPC6 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図11】図11は本発明にかかるペプチドN1 と N2 がA431 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図12】図12は本発明にかかるペプチドeh と em がras-NIH3T3 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図13】図13は本発明にかかるペプチドeh と em がT.Tn 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図14】図14は本発明にかかるペプチドeh と em がTE-2 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図15】図15は本発明にかかるペプチドeh と em がECGI-10 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図16】図16は本発明にかかるペプチドeh と em がMKN74 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図17】図17は本発明にかかるペプチドeh と em がPC6 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図18】図18は本発明にかかるペプチドeh と em がA431 細胞の増殖に及ぼす影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
Cys Pro X1 Arg Cys Gln Cys His Leu Arg Val Val Gln Cys (配列番号1)
[式中,X1はPheまたはTyrであり,1番目のCysと7番目のCys,および5番目のCysと14番目のCysは,それぞれジスルフィド結合している]
または次式:
Cys X2 X3 Pro Gly His X4 X5 X6 Lys Ala Ser Tyr Ser Gly Val Cys (配列番号2)
[式中,X2はProまたはArgであり,X3はProまたはAlaであり,X4はAsnまたはProであり,X5はThrまたはSerであり,X6はLysまたはArgであり,1番目のCysと16番目のCysはジスルフィド結合している]
で表されるペプチドを有効成分として含有するヒト癌細胞増殖抑制剤。
【請求項2】
次式:
Cys Pro X1 Arg Cys Gln Cys His Leu Arg Val Val Gln Cys (配列番号1)
[式中,X1はPheまたはTyrであり,1番目のCysと7番目のCys,および5番目のCysと14番目のCysは,それぞれジスルフィド結合している]
または次式:
Cys X2 X3 Pro Gly His X4 X5 X6 Lys Ala Ser Tyr Ser Gly Val Cys (配列番号2)
[式中,X2はProまたはArgであり,X3はProまたはAlaであり,X4はAsnまたはProであり,X5はThrまたはSerであり,X6はLysまたはArgであり,1番目のCysと16番目のCysはジスルフィド結合している]
で表されるペプチドを有効成分として含有する線維芽細胞増殖促進剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−137841(P2007−137841A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336110(P2005−336110)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度文部科学省「ベンチャー開発戦略研究センター」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】